2019年 3月修了
早稲田大学大学院商学研究科
修 士 論 文
題 目
キャッチアップ・プロセスにおける後発企業の戦略対応に関する研究
〜ファーウェイのキャッチアップ事例を中心に〜
研究指導 ビジネスモデルと競争戦略 指導教員 井上 達彦
学籍番号 35171064-6
氏 名 李 萌
概要書
中国経済の高度成長と共に、世界中に中国企業の存在感が益々大きくなっている。多 くの企業が徐々に発展し、既に一部分の中国後発企業はキャッチアップすることを達成 した。キャッチアップの先行研究の早期には主に韓国、台湾など新興工業国に集中した が、近年には中国を代表とする移行経済体(Transitional economy)のキャッチアップ に研究の焦点をシフトしている。したがって、より複雑な環境において中国の後発企業 は如何にキャッチアップを達成する研究には意義がある。Hobday et al(2004)は後発 企業のキャッチアップ戦略の選択について、後発企業は「キャッチアップ戦略のジレン マ」を直面することを指摘した。また、技術、需要、政策など外部環境が変わることに よって「機会の窓」が開かれ、後発企業の対応は業界のリーダーシップの変化を引き起 こし、キャッチアップの結果にも影響を与えることがわかった(Lee and Malerba ,2017)。しかし、後発企業はキャッチアッププロセスの異なる段階において、企業はど のような対応をしてキャッチアップが成功しやすいかについて十分研究されていない。
本研究はキャッチアップ全体的なプロセスに着目し、異なる段階において、後発企業は どのような戦略を選択するのは有効であることを明らかにした。
本研究は中国通信企業ファーウェイ(華為技術、HUAWEI)を研究対象として取り上げ、
ファーウェイのキャッチアッププロセスを考察した。本論文は六章構成で展開される。
第一章では、キャッチアップに関する研究背景を回顧し、問題の所存と研究の意義と目 的を明確にした。第二章では、キャッチアップの発生原因、影響要因、モデルおよびパ ターンなど今までキャッチアップの研究焦点の変遷を整理した上で、本研究を位置づけ た。そして、キャッチアップのプロセスに着目し、技術と知識、事業環境および後発企 業の戦略対応などの分析視点に基づいて、本研究の分析フレームワークを構築した。第 三章では、研究対象ファーウェイを選んだ理由を記述し、データソースと分析プロセス を述べた。第四章では、ファーウェイの交換機事業、通信ネットワーク事業、端末事業 という三つ主要事業のキャッチアップ・プロセスを分析し、各発展段階において産業の 技術環境、市場状況、政策、およびで外部知識へのアクセスなどファーウェイが直面し た事業環境を解明した。そして、キャッチアップの各段階において、ファーウェイが採 用した戦略を分析した。第五章では、三つ主要事業のキャッチアップ・プロセスを比較
し、命題を導出した。第六章では、本研究の理論と実務的な貢献を示した一方、研究の 限界点と展望を提示した。
分析の結果、当時の技術環境と直面した事業環境の変化に対応するために、ファーウ ェイは常に自社の戦略を調整していた。ファーウェイのキャッチアップの初期において、
時間やコスト効率性を重視するため、先発企業の発展経路に依存する戦略を取った。中 後期において、自社の中核能力を構築するため、独自の発展経路を創造する戦略を採用 した。したがって、後発企業は単一のキャッチアップ戦略を一貫するより、能動的に戦 略の選択と調整することが重要であることを明らかにした。ファーウェイの事例分析を 通して、後発企業は一つのキャッチアップ戦略を一貫するより、経路依存と経路創造と いう二つパターンの組み合わせがキャッチアップに成功させるの一つの考え方であるこ とを導出された。
本研究は主に 2 つ学術的な貢献があると考えられる。第一、後発企業キャッチアップ の戦略対応の分析フレームワークを提示したう上で、キャッチアップの異なる段階にお いて効果的なキャッチアップパターンを示したことである。第二、中国に代表される新 興市場の文脈において、中国通信業界の技術環境、市場環境、政策環境など事業環境の 俯瞰的な分析を通して、後発企業キャッチアップ戦略のメカニズムを明らかにしたこと である。また、実務的な示唆について、他の後発企業にキャッチアップ戦略の選択に有 益な方向性を提示することである。特に、中国多くの後発企業が「技術導入—後退−技術 再導入—再後退」というサイクルを繰り返し、自主的な研究開発能力の欠如という問題 を直面した。そのため、他の後発企業がキャッチアップ戦略的な選択を直面している際 に、ファーウェイの R&D 能力の構築、市場の開拓など様々な方面から参照することがで き、より効果的に先発企業を追いつくことが期待できる。
目次
第一章 研究背景 5
第一節 問題の所存 5
第二節 研究の意義と目的 7
第二章 先行研究 8
第一節 キャッチアップに関する先行研究 8
第一項 マクロレベルからミクロレベルへ 8
第二項 キャッチアップのプロセスとパターン 9
第三項 キャッチアップのリスクとチャンス 11
第四項 機会の窓と戦略の対応 12
第五項 ビジネスモデルのイノベーションとキャッチアップの関係性 13
第二節 先行研究の限界点と問題意識 14
第三節 理論フレームワークの構築 15
第一項 技術と知識 16
第二項 事業環境 16
第三項 戦略の対応 18
第三章 リサーチ・デザイン 19
第一節 研究対象 19
第二節 データソース 20
第三節 分析プロセス 21
第四章 事例分析 22
第一節 ファーウェイの会社紹介 22
第一項 基本情報 22
第二項 事業内容 24
第三項 発展プロセス 25
第四項 企業文化 28
第二節 交換機事業のキャッチアップについて 30
第一項 交換機事業の発展プロセス 30
第二項 交換機事業発展の技術環境 32
第三項 ファーウェイが直面した事業環境 35
第四項 ファーウェイの戦略対応 37
第五項 まとめ 42
第三節 通信ネットワーク事業のキャッチアップについて 44
第一項 通信ネットワーク事業の発展プロセス 44
第二項 通信ネットワーク事業発展の技術環境 47
第三項 ファーウェイが直面した事業環境 49
第四項 ファーウェイの戦略対応 51
第五項 まとめ 62
第四節 端末事業のキャッチアップについて 63
第一項 端末事業の発展プロセス 63
第二項 端末事業発展の技術環境 65
第三項 ファーウェイが直面した事業環境 67
第四項 ファーウェイの戦略対応 68
第五項 まとめ 77
第五章 分析結果と命題導出 79
第六章 貢献と限界点 83
第一節 学術的な貢献 83
第二節 実務的な貢献 83
第三節 限界 84
参考文献 86
第一章 研究背景
第一節 問題の所存
キャッチアップ(Catch-up)に関する研究は長年に亘る経営学分野に注目されている。
キャッチアップに関する研究は国というマクロレベルの概念から始まり、後発国は先進 国にキャッチアップを成功した要因を提示した。産業レベルや企業レベルというミクロ レベルまでキャッチアップがたくさん議論され、市場と技術という両方の短所を克服し た後発企業はいかに先発企業をキャッチアップすることが注目される(Hobday,
1995;Kim,L.1997)。NICs(Newly Industrialized Countries)と考えられる国は経済 の飛躍によって、それらの国のキャッチアップの現象が世界中に大きく注目を集め、従 来ャッチアップの研究対象としての韓国、台湾から、新興国に研究の焦点をシフトして 行く。特に、中国を代表とする移行経済体(Transitional economy)は徐々に韓国が代 表する新興工業国を置換え、近年のキャッチアップ研究の一つの焦点と見られる。
Hoskisson et al(2013)は新興経済体を分類し、伝統的な新興国と新興工業国の中間 に位置するミドル層新興国に着目し、グローバル化しているミドル層新興国は将来研究 の一つ重要な方向性を提示した。早期キャッチアップの先行研究は韓国、台湾など新興 工業国に集中しており、その背景は中国の後発企業が最初に直面した技術や事業環境が 大きく異なり、より複雑な環境において中国企業は如何にキャッチアップまたリープフ ロッグを達成する研究には意義がある。
中国経済の高度成長と共に、世界中に中国企業の存在感が益々大きくなった。「改革 開放」という政策の推進に亘る 30 年以来、多くの中国企業が徐々発展し、世界のトッ プレベルに追いつきを達成し、既に一部の中国企業が世界的な競争において支配的な地 位を占めている。例えば、通信設備、マイクロコンピューター、高速列車、ドローンな どの産業が該当する。一般的に、中国の後発企業は「逆方向研究」が得意であり、先進 国の先発企業の発展経路をフォローしながら、手本となる先発企業の製品や技術を模倣 することによってキャッチアップできたことがよく観察される。それは Kim(1997)が韓 国産業のキャッチアップを分析した上で重複的な模倣、創造的な模倣、イノベーション という技術発展のプロセスを提唱した。また、先発企業から技術を導入することによっ
て研究開発の時間や能力のギャップを埋め、自社のイノベーション能力を高めるのは後 発企業がよく使うパターンである(Ernst and Kim,2002)。先発企業から技術を導入し 吸収した上で、多くの中国後発企業は現地市場のニーズに基づいて製品の機能を改善す る。しかし、ほとんどの中国企業、特に製造業は、自主的なノベーション能力とコア技 術の如という深刻な問題に直面した。いかに「技術導入—後退−技術再導入—再後退」と いうサイクルの束縛を抜け出すことは課題である。以上の現状のキャッチアップの研究 は模倣レベルからイノベーションレベルという新しい段階に進んでいることを明らかに した。
発展途上国の後発企業は主に二つ典型的な欠点がある。一つは技術、科学研究開発は 国際的な主要な拠点から外れたことである。もう一つは需要の高い消費者や最も重要な 国際市場、クラスター、ネットワーク、工業地域などから切り離したことである。後発 企業はこの二つの欠点を補うため、異なるキャッチアップ戦略をとることが考えられる。
しかし、どのようなキャッチアップ戦略をとるのかはキャッチアップの結果に大きく影 響を与える。後発企業がキャッチアップする際に、戦略のジレンマという問題を直面し ている企業が多いように見えた。要するに、先発企業が新しい製品や市場を創出するこ とに依存し、自社のコスト・リーダーシップから生まれた「キャッチアップの競争優位」
に基づいて試行錯誤するのか?あるいは、最先端の製品やシステムを研究開発するため に自社の R&D 能力を培うことによって、グローバル市場で先発企業と直接に競合するの か(Hobday,Rush and Bessant,2004)。さらに、技術、需要、政策など外部環境が変わ ることによって「機会の窓」が開かれ、先発企業と後発企業の異なる対応は業界のリー ダーシップの変化を引き起こし、キャッチアップの結果にも影響を与えることが指摘さ れた(Lee and Malerba,2017)。しかし、後発企業はキャッチアッププロセスの異なる段 階において、どのような対応をしてキャッチアップが成功しやすいかについて十分研究 されていない。すなわち、どのような背景の下、後発企業はどのようなキャッチアップ を選択すれば、キャッチアップの競争優位を獲得することができるのかがこの論文の問 題意識となる。本研究はキャッチアップ全体的なプロセスを見ると、異なる段階におい て、後発企業はどのような戦略を選択するのは一番有効であることを明らかにしたい。
第二節 研究の意義と目的
本研究は事例研究の手法(Eisenhardt,1989;Yin,1994)を従い、中国通信企業ファー ウェイの事例分析を行う。ファーウェイの三つ主要事業のキャッチアッププロセスの分 析を通して、ファーウェイはいかに技術体制と事業環境の変化に対応し、どのような戦 略を選択することでキャッチアップを達成したことを解明したい。さらに、ファーウェ イの三つ主要事業のキャッチアップ戦略をパターン化することで後発企業に対する戦略 の選択に新しい方向性を提示したい。
第二章 先行研究
第一節 キャッチアップに関する先行研究
第一項 マクロレベルからミクロレベルへ
キャッチアップという概念はマクロレベ(Abramovitz,1986;Akamatsu,1962;Gerschen –kron,1962;Vernon,1966)の研究から始まった。発展途上国は先進国の経済をどのよ うにキャッチアップして、工業化を進化させたのか、モデル化が検討された。よく知ら れているガーシェンクローン・モデルは、発展途上国は先進国の技術を借りたり、導入 することで工業かが始まり、先進国との技術ギャップを徐々に埋めるモデルである。発 展途上国は後発の利便性を持っているため、工業化のスピードは先進国より早い(Gers –chenkron,1962)。また、Vernon(1966)は工業化製品のプロダクト・ライフサイクル に着目し、導入期、成長期、成熟期という三段階の変化は先進国と発展途上国の競争優 位の変化に影響を与えることを論じた。つまり、新製品を研究開発した先進国は市場導 入期において、少量かつ高価格で市場を主導し独占する。そして、成長期の製品は大量 生産体制によって標準化ができるため、市場競争が激しくなる。成熟期には製品の生産 技術が発展途上国に流入し、発展途上国でも生産販売可能になる。その段階は賃金水準、
労働力など生産要素から考えると、発展途上国が断然有利であり、発展途上国から先進 国に逆輸出するようになる。似たような研究は Akamatsu(1962)がアジア特に日本産業 の発展状況を分析した上で「輸入—国内生産—輸出—逆輸出」という雁行形態論が多く知 られる。プロダクト・ライフサイクルに基づいた研究から、「参入(entry)—追い上げ
(catch−ing up)-先行(forging ahead)-後退(falling behind)」という標準的な 4 つの段階が定義された(Abramovitz,1986)。末廣(2000)は「①後発国は先発工業国 の開発した知識や技術を導入できる後発性の利益を持つこと、②工業製品の輸入から開 始しなければならないこと」という2点が「キャッチアップ型工業化」の特徴として指 摘した。つまり、国レベルというマクロレベルでのキャッチアップに関する研究は、発 展途上国はいかに先進国から導入した技術や知識に「後発性の利益」を発揮しながら、
先進国との経済的な格差を埋めるのかが広く議論された。しかし、彼らの研究によって、
後発国のキャッチアップは単一経路であり、いかに技術と市場の不利を克服することに 焦点を当てている。この克服過程には後発国の政府の役割が求められる一方、企業の組 織学習能力や人的資源管理など内部要因も必要とされる(赤羽,2014)。
1990 年代 NIEs など新興工業国の経済発展に伴い、産業、企業あるいはミクロレベル のキャッチアップに関する研究が急速に増えた。例えば、韓国の半導体、携帯電話産業
(Lee and Lim,2001)、台湾の液晶パネル(Mathews, 2002;赤羽,2014)、中国の交換 機通信産業(Mu and Lee,2005)など代表的な研究がある。それらの研究は産業の技術 や知識の環境において、後発国の異なる産業は先進国の先発企業をキャッチアップする 現象を引き起こした要因を分析した。企業レベルに関するキャッチアップの研究には、
後発企業は後発の優位性を利用し、組織学習、外部知識の獲得、政府の介入また政策の 変化など様々な原因でキャッチアップを可能にすることを明らかにした(Malerba &
Nelson, 2012)。さらに、最近の研究は技術的な環境が比較的に安定している業界にお いて、後発企業がビジネスモデルのイノベーションによって先発企業のキャッチアップ を成功する一つの要因として提示された(Zhu, Zhang and Lin,2017)。
第二項 キャッチアップのプロセスとパターン
キャッチアップの初期研究には、後発国は先発国の旧世代技術を導入、適応すること によってキャッチアップのスピードが速くなることが頻繁に観察された。そのため、基 本的にはキャッチアップは固定かつ単一な軌道に沿った技術を累積するプロセスと見な される(Perez & Soete,1988)。しかし、NIEs など新興工業国のキャッチアップを観察 した結果、それらの国の後発企業は単純に先発企業の技術発展のプロセスに従うことだ けではないことが明らかにした。例えば、Kim(1997)は韓国産業のキャッチアップの経 験から、先発企業の製品や技術を「重複的な模倣」、次は「創造的な模倣」、最後は
「イノベーション」段階に至るというようなダイナミックなプロセスを提示した。また、
Mathews(2002; 2003)は台湾の後発企業の発展プロセスが OEM、ODM、OBM の順に従っ ていたことを確認した。一方、韓国企業は台湾企業とは対照的に、OEM、OBM、そして ODM の手順に従っていた。多くの韓国企業が最終組立者として自社ブランドを立ち上げ、
事業を展開したが、 OBM 輸出に駆けつけた後、彼らは製品差別化と品質向上の重要性を 認識していた(Lee,2005)。
キャッチアップに関する研究は単一要因からプロセスに注目した研究が増えた。Lee
& Lim(2001)は韓国 D-RAM、自動車、携帯電話、家電製品、PC、工作機械など 6 つの産 業キャッチアップを選定し、異なる産業の間に技術的なキャッチアップの三つのパター ンをまとめた。下記の図のように、第1のパターンは「先発企業と同じ発展経路をとる ことによって先発企業より早く進む」という経路追随(path-following catch-up)で ある。第2のパターンは「後発企業が先発企業のある段階を飛ばすことによって時間を 節約する」というステージスキップ(stage-skipping catch-up)である。第3のパタ ーンは「後発企業が独自の技術開発の道を模索する」という経路創造(path-creating catch-up)である。つまり、後発企業は先発企業の経路を辿った後に、技術能力を高め るために自分の新しい経路を創造することを意味する。径路追随と比べ、第 2、3 パタ ーンはリープフロッグの意味を含める。
図 1 Lee & Lim(2001)より引用
Wang and Kimble(2011)は Lee & Lim が提唱された技術的なキャッチアップ三つの パターンに基づき、パラダイム変化のリープフロッグ(Paradigm-Changing Leapfrogs)
という Catch-up の四つ目のパターンを提案した。この考え方は、戦略マネジメントの 文献に見られる破壊的なイノベーションの考え方に似ている。破壊的な技術は、新しい、
そしてしばしば目に見えない価値提案を導入することによって市場を混乱させる。当初、
そのような技術の可能性は限られているように見える。しかし、技術が発達するにつれ、
主流の消費者のニーズを満たすようになる。先発企業は新しい価値の提案に追い付けず、
リーダーの地位を失ってしまう。後発企業が新しい技術のパラダイムを確立されること によって先発企業を追いつくことができる。
Catch upのパターン 定義 path-following catch-
up
後発企業は先発企業と同じ経路をとる。しかし、過去の 経験から、後発企業は先発企業よりも短期間で進むこと ができる。
stage-skipping catch- up(leapfrogⅠ)
後発企業は先発企業の発展経路をある程度をたどる。し かし、いくつかのステージをスキップして時間を節約す る。これは、技術のトレンドが新しい軌道に向かって動 き出していることから、後発企業が先発企業に比べて有 利になり、ギャップを縮小できるチャンスを与えられ る。このパターンでは、後発企業は古い技術の段階を飛 ばすことで時間とお金を節約することができる。
path-creating catch- up(leapfrogⅡ)
後発企業は、先発企業の最初の経路を辿った後、先発企 業とのギャップを埋めるために危険で不確実な道を選 ぶ。このパターンでは、支配的な技術にもかかわらず、
後発企業は新興技術と合致し、優位技術の代替としてこ の新技術に投資し、技術開発の独自の道を模索すること を意味する。
Paradigm-Changing Leapfrog
新規参入者は既存技術と異なる新しい技術パラダイムを 確立する。この考え方は、戦略マネジメント文献に見ら れる破壊的なイノベーションの考え方に似ている。
表1 Lee & Lim(2001)、Wang & Kimble(2011)より筆者作成
第三項 キャッチアップのリスクとチャンス
後発企業はキャッチアップする際に後発優位性を享受する一方、市場と技術という二 つの不利な点がある(Hobday, 1995; Hobday, 2003)。まず、後発企業は参入が遅かった ため、最先端の技術や研究開発の中心から離れ、先発企業との技術と市場シェアのギャ ップは短時間で埋めることが非常に困難である。そして、技術面にもかかわらず、先発 企業が高い製品品質やマーケティング能力によって主流となる消費者を取り囲み、市場
シェアをほとんど占めている。その場合には、後発企業は市場へのアクセスが非常に限 られている。以上 2 点の不利に対して、後発企業は二つのリスクを直面する。(Lee,K., Lim,C.& Song,W.,2005)。一つはいくつかの代替技術から適切な技術を選択するリスク であり、もう一つは新しい製品を生産する技術に基づいた初期市場を創出するリスクで ある。Lee et al(2005)の研究により、リスクをうまく低減すれば、リープフロッグ を達成する可能性も大きくなる。したがって、Lee et al(2005)は韓国の後発企業が デジタル TV 産業に参入したケースから、市場の規模がまだ小さいうちに標準化するこ とによって技術面のリスクを回避したことを明らかにした。また、技術が未熟であり、
市場ニーズが不明確な場合に、韓国政府の引導と支援がキャッチアップのリスクを低減 させる一つの有力な手段として強調された。
しかし、先発企業は過去の成功に固執し、新しい技術、破壊的なイノベーションや新 し市場ニーズを迅速に対応できず、「既存者の罠(incumbent trap)」(Chandy and Tellis,2000)に陥ってしまい、後発企業に追いつかれる可能性もある。Perez & Soete
(1988)が提唱した「機会の窓(Opportunity Window)」の概念により、新しい技術パ ラダイムの発生は後発国または後発企業にキャッチアップのチャンスを与える。後発者 はこの「機会の窓」をうまく利用することによって市場シェアを拡大し、新しい技術を 積極的に発展することが期待できる。
第四項 機会の窓と戦略の対応
今まで数多くの業界では、先発企業は技術、製品、市場の優位性を維持することに失 敗し、後発企業にキャッチアップされ、さらに後発企業は先発者の地位を奪う現象が観 察されている。それらの業界における後発企業が先発企業に追いつき、時間を経て、リ ーダーシップの連続的な変化という現象がキャッチアップのサイクルと定義される
(Lee & Malerba,2017)。ここで議論されているキャッチアップは主に市場シェアのギ ャップを実質的に埋めることを意味する。Lee & Malerba(2017)は Perez & Soete
(1988)の研究に基づき、①技術と知識の変化、②需要の変化、③制度と公共政策の変 化が機会の窓の三つの次元として概念を拡張した。需要の窓(demand window)は新し いニーズの出現、ローカルニーズの大きな変化、ビジネスサイクルの大きな変化によっ
て開かれる。制度と公共政策の窓(institutional/public policy window)は政府の公 的介入や制度的条件の大幅な変更によって開かれる。Lee & Malerba(2017)は機会の 窓が開いた際に、後発企業と先発企業は機会の窓に対する「対応」が業界内のリーダー シップの変化を引き起こし、キャッチアップの結果にも関連することを指摘した。後発 企業の「対応」は、学習プロセス、R&D 能力、組織、戦略など様々な内部要素の相互作 用によって大きく異なる可能性がある。また、産業間のネットワークや政府の役割など 外部要素も非常に重要であることを示唆した。
先行研究から見ると、後発企業がどのような対応あるいは戦略を採用するのかがキ ャッチアップの結果に大きく左右している。後発企業は一般的に模倣または従属的な技 術戦略をとることが多く、戦略の決定と選択は主にコーポレートガバナンスに依存する
(Y.,Xiao, A.,Tylecote ,J.,Liu,2012)。彼らの研究によって、模倣戦略は自社 R&D 能力を構築することより容易であると考えられる。しかし、長期的な視点で見ると、自 社の土台が徐々に侵食され、結局キャッチアップが失敗する現象は中国の企業で良く観 察されている。Giachetti and Marchi (2017)は 1980 年から 2012 年まで世界の携帯電 話業界におけるモトローラ、ノキア、サムスン三社の間リーダーシップの変遷に着目し、
重要な機会の窓が開かれた時点で「積極的」な競争行動を展開する企業にとっては、リ ーダーシップの変化の可能性が大きいことを示している。
第五項 ビジネスモデルのイノベーションとキャッチアップの関係性
技術面と政策面が恵まれない場合に、後発企業はビジネスモデルのイノベーションに よって一時的なキャッチアップを達成することが可能である。ビジネスモデルのイノベ ーションは、製品やプロセスの革新とは根本的に異なる現象であり、異なる方法で起こ り、異なる競争構造につながる(Habtay, 2012; Markides, 2006)。ビジネスモデルのイ ノベーションは、しばしば技術革新よりも産業進化に重要な役割を果たす(Magretta, 2002)。また、ビジネスモデルのイノベーションは後発企業が業界で変化を起こすこと を可能にする重要な戦略的ツールとして認識される(Zott & Amit, 2008)。ビジネスモ デルと企業戦略の両者が非常に密接に関連しているため、戦略の違いがビジネスモデル の構造にも体現している。例えば、Zott & Amit(2008)は企業の製品市場戦略とその
ビジネスモデルとの間の適合性を調査するため、新奇性を重視するビジネスモデルと効 率性を重視するビジネスモデルという二つタイプを分類した。新奇性を重視するビジネ スモデルは差別化戦略を中心にしているが、効率性を重視するビジネスモデルはコス ト・リーダーシップ戦略と結びつけることができる。Zott & Amit(2008)はビジネス モデルと製品市場戦略はお互いの代替品ではなく、補完品であることを示唆した。Zhu, Zhang and Lin(2017)は 1998 年〜2008 年中国モバイルハンドセット市場に関する観察 を通して、技術革新能力が限られている後発企業は、効率性を重視するビジネスモデル のイノベーションによって、先発企業の市場シェアを一時的にキャッチアップすること ができることを発見した。
したがって、ビジネスモデルは、価値創造や価値獲得に重点を置いて、企業がどのよ うにビジネスを行っているかを説明するため、新しい分析単位として考えられる(Zott, Amit & Massa,2011)。以上の先行研究は効率性を重視する戦略に基づきビジネスモデ ルのイノベーションが一時的なキャッチアップに有利であることを示したが、長期的に キャッチアップの成果を維持することが困難である。それは、多くの後発企業にとって 大きな問題であり、特に中国でよく観察される現象である。
第二節 先行研究の限界点と問題意識
実際に、後発企業のキャッチアップがダイナミックなプロセスであり、外部と内部の 両方から戦略の選択を影響している。Hobday et al(2004)は後発企業のキャッチアッ プ戦略の選択について、「キャッチアップ戦略のジレンマ」を指摘した。つまり、先発 企業が新しい製品や市場を創出することに依存し、自社のコスト・リーダーシップから 生まれた「キャッチアップの競争優位」に基づいて試行錯誤するのかあるいは、最先端 の製品やシステムを研究開発するために自社の R&D 能力を培うことによって、グロー バル市場で先発企業と直接競合するのかに注意を払わないといけない。多くの後発企業 にはある程度の知識ベースと革新的能力が持っているのは前提となり、現実と一層合致 している。ある程度のイノベーション能力と知識ベースを備えた後発企業をキャッチア ップするために、企業はどんな戦略を取れば有効であるについて十分に研究されてない。
したがって、後発企業はキャッチアップの各段階において、どのような戦略を選択する のは有効であることはこの論文の中心的な問題となる。
第三節 理論フレームワークの構築
この論文の中心的な問題を答えるために、本稿はキャッチアップ戦略の分析フレーム ワークを構築した。この分析フレームワークに基づいて、まず変化し続ける技術環境と 事業環境という外部環境を分析する。そして、外部環境における後発企業が R&D と市場 の可能性を予測し、企業はどのような戦略を採用し対応するのかを明らかにしたい。そ の結果、後発企業はどのようにしてキャッチアップを達成するのかを確認したい。
図
2
先行研究に基づいて筆者作成第一項 技術と知識
技術要因はキャッチアップに影響を与えるの一つの重要な要素として、広く議論され た。Nelson(1982)は初めて技術体制は産業イノベーションに対する大きな影響を与え ることを指摘した。技術体制は技術的機会、技術イノベーションの専有可能性、技術的 進歩の累積性、知識ベースの特性の四つの基本的要素の組み合わせによって定義する
(Breschi,Malerba and Orsenigo,2000)。Lee and Lim(2001)は技術体制とキャッチ アップの関連性を提示し、技術体制が企業のイノベーションに影響する一方、後発企業 のキャッチアップを成功させるチャンスを与えることを論じた。彼らは技術軌道の予測 可能性は技術体制の新しい要素として追加し、外部知識ベースへのアクセスの程度も考 慮した。中国現地企業は、獲得した技術を同化して技術力を向上させる努力の強さを高 める必要があることを見出した(He and Mu,2012)。
近年、製品アーキテクチャ理論に着目し、アジア後発企業のキャッチアップを分析す る研究が増えている。製品アーキテクチャとは製品の機能と部品の構成、また機能と部 品の対応関係に関する設計思想である(Ulrich,1995)。基本的には、モジュラー型と インテグラル型という二つタイプに分けられる。モジュラー型とは一つの機能が一つの 部品と対応することに対して、インテグラル型とは一つの機能は複数の部品に対応する ことである。また、複雑なエンジニアニングシステムにおいて、モジュラーアーキテク チャが広範に採用されると、業界の進化を促進する作用がある(Baldwin and
Clark,2004)。藤本(2004)は「部品のコピーと改造を通じて製品のアーキテクチャを 換骨奪胎してしまう力」を「疑似オープン・アーキテクチャ」に定義し、この能力は中 国後発企業のキャッチアップに有利な条件を与えたことを主張した。
第二項 事業環境
市場要素は後発企業のキャッチアップのもう一つ重要な外部要因と考えられる。Mu
& Lee(2005)は中国の通信業界を考察し、中国の後発企業の競争優位の源泉は市場の 成功であることを指摘した。国内の市場において、中国の後発企業は市場のセグメント
化や比較的安価な労働コストを活用することによって、民間企業は農村部など低所得市 場を拠点として自社の製品を展開し、外資合併会社など先発企業との競争を回避するこ とができる(Q.Mu,K.Lee,2005)。数多くの事例から見ると、企業が最先端の技術を提 供するより最適なサービスを市場に提供することは顧客の心を掴むことができる。常に 変化している顧客のニーズに応え、最も効果的なソリューション(必ずしも最も効率的 ではないかもしれない)を提供した後発企業はキャッチアップを成功する可能性も高く なる(Zhu, Zhang and Lin,2017)。
後発企業は市場面と技術面の不利を直面しているにも関わらず、政府の関与によっ て局面の打開をはかることができる。政府は、公的 R&D 活動、補助金、減税、輸出サ ポート、規制、公的基準などさまざまな形で介入する(Lee and Malerba,2017)。政府 主導の下で研究開発が行われ、後発企業は資金面の優遇を得るだけではなく、技術力も 大きく成長することが期待される。台湾のエレクトロニクス産業が外資先発企業の下請 けサプライヤーからの世界重要なコンポーネントになり、政府の研究機関と連携し R&D 活動を行なったことがキャッチアップの成功に大きな役割を発揮した(Amsden and Chu,2003)。新しい技術の出現が後発企業にキャッチアップのチャンスを与える一方、
その新興技術の市場価値が未知数であり、新技術への莫大な研究開発投資が大きなリス クとなる。その場合、政府の主導による共同研究や産業標準化などの手段かリスクを軽 減し、後発企業に研究開発しすい環境を整える。韓国デジタル TV 産業のキャッチアッ プの経験から見ると、政府の協力や支援はデジタル TV 産業がリープフロッグをできた 一つの原因と言える(Lee,Lim and Song,W.,2005)。Mu & Lee(2005)が中国交換機産 業の発展初期において、中国政府の市場保護と外資合併会社の促進政策は知識の普及を 引き起こさせ、後発企業に技術の吸収と適応させる環境を形成されることを指摘した。
一方、民間企業の市場参入を規制する産業政策は、産業キャッチアップの結果に直接の 影響を与える。例えば、産業の規制を緩和する場合に、新規参入者(後発企業)および 既存企業(先発企業)の競争を増加する可能性があることを示唆している。
(X.He,Q.Mu,2011)。
第三項 戦略の対応
前述したように、セクターの発展によって、産業内に知識と技術の変化、需要の変化、
また制度と公共政策の変化という三つの変化が出現する可能性がある(Lee and
Malerba,2017)。後発企業はこれらの「機会の窓」、企業能力の存在及び戦略の妥当性 の組み合わせによって、産業内のリーダーシップの変化を決定する。言い換えれば、機 会の窓を直面した後発企業はいかに自社の経営資源を整合し能力を高め、適切な戦略を 取ることがキャッチアップの結果を決定すると考えられる。アナログの携帯電話分野の 先駆者モトローラとデジタル携帯電話分野の先駆者ノキアのケース(Giachetti and Marchi,2010;Giachetti,2013)から、全ての企業が機会の窓に対して反応が早いとは限 らないことが解明された。特に、先発企業は既存の技術に固執する傾向があり、既存利 益を維持するために、新しい技術に対抗する。対照的に、後発者は技術基盤まだ浅いた め、最新の技術を選択する自由度が高くなる。後発企業が機会の窓をうまく掴むによっ て、キャッチアップを成功することも期待される。
後発企業の競争力は、新市場への迅速な参入、高水準のエンジニアリングによる製造、
最高の統合設計による迅速な市場に導入する能力に関わる(Amsden and Chu,2003)。し かし、多くの後発企業は自分自身の能力が先発企業より弱いため、全ての方面でキャッ チアップという目標を立てたとしても、失敗する可能性が非常に大きい。後発企業は十 分な経営資源を持っていないため、特定の分野に力を注ぐ必要がある(Shin,J.- S,2017)。Shin(2017)後発企業は生産と研究開発を強化するために、先発企業と競争 している間に膨大な投資を継続する必要がある一方、破産のリスクも提示した。
第三章 リサーチ・デザイン
本研究はキャッチアッププロセスを着目し、プロセスの各段階において後発企業がど のような環境に置かれ、どのような戦略を選択することが有効であることを調査したい。
事例研究は「いかに」、「なぜ」の質問を答えるに適合し、理論の構築や拡張には有用 な研究方法である(Eisenhardt,1989;Yin,1994)。具体的なキャッチアップの事例に対 して詳しく調べ、分析することによって、背後の因果関係を解明し、キャッチアップ理 論に新しい発見を提示したい。常に変化している各要素を全体的な視点で捉えるため、
事例研究が本研究にとって適切な研究手法である(Yin,1994)。
事例研究は定量分析のような有効性を保証するため、ランダムにサンプルを抽出する のではなく、事例の典型性と独特性を評価する。そのため、典型性のある単一事例を用 い、事例を深く縦断的に分析を行い、因果関係を明らかにしたい。キャッチアップの全 体的なプロセスに着目し、各段階に有効なキャッチアップ戦略を洗い出し、パターン化 にするのは本稿の目的であるため、単一事例研究を行う。
第一節 研究対象
本稿では、中国通信企業ファーウェイ(華為技術、HUAWEI)を研究対象として取り上 げた。まず、キャッチアップの現象は様々な業界の間に出現したが、中国の通信業界に おけるキャッチアップの現象に注目した。本稿では、技術環境と事業環境の変化に対し て、後発企業はいかに対応し、キャッチアップしたのかを分析したいので、技術環境が 非常に重要な分析要素として扱っている。通信業界は業界のイノベーションの頻度が高 く、技術的な軌道の流動性も高いと考えられる。また、通信業界は技術の不確実性が高 いため、他の業界より複雑な技術体制、より激しい競争環境が持っているため、本稿の 研究目的と理論フレームワークと一致する。
そして、ファーウェイをケースとして選択する理由は二つある。一つは典型性を備え ていることである。ファーウェイは後発企業としてキャッチアップの成果が高く、各年 代のコア技術の変遷と共に三つの主要事業を形成し、完全なプロセスを持っている。も う一つは、事例として特殊性が備えていることである。ファーウェイは中国の民間企業
であり、創業時は自社の R&D 能力がなかった。その後、代理販売から世界有数の通信機 器・ソリューション提供者に変身した一方、中国の多くの後発企業の「技術導入—後退—
技術再導入—再後退」というサイクルの外に飛び出すことができた。その背後の原因を 解明する価値があるため、ファーウェイを事例として選んだ。さらに、本稿はファーウ ェイの三つ主要事業のキャッチアップ・プロセスを分析し、単一事例の中で複数の分析 を行うことで、単一事例の物足りなさを補足した。
第二節 データソース
データソースは一次データと二次データに構成される。一次データはインタビューで、
二次データはファーウェイの CEO 講演資料、ファーウェイの現職管理者の書籍、信頼性 が高い関連記事やネット資料によって収集した。さらに、上記の情報源に加え、公式ウ ェブサイトや公式出版物など、他の公開情報も使用することでデータの信頼性を高めた。
多大な二次データを収集、分析した後、半構造化インタビューを実施した。ファーウ ェイの現職者 2 人(マーケティング部門 1 人、研究開発者 1 人)がインタビュー対象と して、毎回約 1 時間のインタビューを 3 回行った。最低限の質問範囲を決めていたが、
質問の内容は事前にインタビュー対象に見せない、固定した順序で質問しないことによ って語り手の積極性を喚起した。オープンエンドの質問はコンテンツや語り手の特性に よって柔軟に調整できる(Miller,Cardinal and Glick,1997)。また、インタビューの 内容は 24 時間以内にクロスチェックし、文書化した。インタビューの対象と質問方向 は下記の図に整理した。
部門 質問方向
Y さん マーケティング 市場調査の方向性
研究開発とのつながり L さん 研究開発 R&D の流れ
技術の選択 表 2 インタビューデータより筆者作成
第三節 分析プロセス
まず、ファーウェイのキャッチアップに重要な意義があるの交換機事業、通信ネット ワーク事業、端末事業という三つの事業の発展プロセスを着目し、当時の技術変革の背 景やファーウェイが直面した各事業環境について縦断的な分析を行う。そして、当時の 技術や事業環境の下でファーウェイの対応を分析し、キャッチアップが到達した結果を 調べる。キャッチアップの結果の測定について、技術能力と市場シェアのキャッチアッ プを分離することが難しいため、Lee and Lim(2001)が提唱した定性的な測定尺度を 参照し、市場と技術の両方からキャッチアップの結果を分析したい。技術面には、新製 品に着目し、製品の新規性や到着な技術水準によって評価する(Tushman & Murmann,
1998)。市場面には、市場シェアを調査した上でキャッチアップの成果を分析する。
その次、ケース全体にわたる比較研究を行い、それぞれの事業キャッチアッププロセ スの分析から得られた見解を比較しながら、理論的な発見を抽出する。最後、各事業の キャッチアッププロセスをパターン化にし、分析結果の上で各段階において有効な戦略 を提示する。
第四章 事例分析
第一節 ファーウェイの会社紹介
第一項 基本情報
ファーウェイ(華為技術、HUAWEI)は 1987 年中国の深センに設立された従業員持株 制の民間企業である。今は世界有数の情報通信技術(ICT)ソリューションプロバイダ ーとして、世界中の通信事業者、企業、個人コンシューマーに競争力かつ価値の高いの 製品、サービスを提供しているために努力している。ファーウェイは 18 万の従業員を 擁し、170 カ国以上、300 通信事業者に製品やソリューションを提供し、世界トップ 50 社の中で 45 社はファーウェイの製品やソリューションを使っている。2017 年の売上高 は 6036 億人民元(約 10 兆 4366 億円)、純利益は 475 億人民元(約 8205 億円)、営業 活動によるキャッシュフローは 963 億人民元(約 1 兆 6656 億円)である。今まで、B to B 事業が堅実なペースで成長している一方、自社開発したスマートフォンを大ヒット し、B to C 事業でも大きな成功を収めた。2013 年、ファーウェイは通信機器メーカー エリクソンの売り上げを超え、世界最大の通信機器メーカーになった。2017 年、出荷台 数・売上高共に世界 3 大スマートフォンメーカーの一つとしての地位を確保し、「フォ ーチュン・グローバルに 500」で 83 位にランクインした。2018 年、第2四半期世界市 場におけるのスマートフォン出荷量はアップルを抜き、世界 2 位になった(IDC 調べ)。
アメリカファスト・カンパニー誌の「世界で最も革新的な企業 50 社」に4回ランクイ ンをした。(2010 年、2011 年、2016 年、2017 年)1
1 ファーウェイ公式サイトから抜粋
図 3 ファーウェイの「2017 アニュアルレポート」より引用
図 4 ファーウェイの「2017 アニュアルレポート」より引用
第二項 事業内容
ファーウェイは通信事業者向けネットワーク事業、法人向け ICT ソリューション事業、
またコンシューマー向け端末事業という三つの主要事業が展開している。通信事業者向 けネットワーク事業の代表的な製品は無線ネットワーク、クラウドコアネットワーク、
固定ネットワークである。法人向け ICT ソリューション事業はアクセス・ネットワーク、
スイッチ、ルーターなど製品ラインを備え、法人にクラウドデータセンター、エンター プライズ IoT などのソリューションも提供している。三つの事業のうち、一番多く知ら れるのはコンシューマー向け端末事業であり、「HUAWEI Mate 10 Pro」「honor」
「HUAWEI nova」など大ヒットスマートフォン、「HUAWEI MateBook X」などの PC、タブ レットなど、多数の製品が iF デザイン・アワード 2018 を受賞した。2中国市場だけでは なく、世界市場のリーダー地位を確保した。
図 5 2017 年度ファーウェイ事業別売上
出所:ファーウェイの「2017 アニュアルレポート」により引用
2ファーウェイの「2017 アニュアルレポート」から抜粋
図 6 2017 年度ファーウェイ地域別売上
出所:ファーウェイの「2017 アニュアルレポート」により引用
2017 年、現有事業の延長線上でファーウェイは新しいグラウト事業を立ち上げた。長 年の研究開発に亘って、AI 技術を基盤に企業向けインテリジェンスプラットフォームを 構築した。今後も今まで備った経営資源に基づき、オープンなクラウドエコシステムや パートナーシップを益々強固になるために積極的に活動を取り組んでいる。
第三項 発展プロセス
ファーウェイの発展プロセスは、大きな四つの変革に分けられる。3その考え方に基づ き、ファーウェイの発展プロセスは創業生存期、事業拡張期(グローバル化)、ビジネ スモデル転換期、組織変革期という四つの段階で構成される。
第一段階である創業生存期は 1987 年から 1995 年であり、いかに競争激しい通信機器 業界で生き残ることが当時のファーウェイのミッションであった。1987 年、CEO 任正非 は中国解放軍を退職し、21000 人民元(約 33 万円)を集め、ファーウェイ技術を設立し 起業した。初期、ファーウェイは香港企業「鸿年」が製造した構内交換機 PBX の販売代 理として中国の地方市場に輸入することで資金を得た。1988 年、任正非は危機感を感じ て、代理販売から構内交換機の製造へ変身することを決意し、PBX 構内交換機の自主研
3 「万字長文:任正非、ファーウェイの血を洗う」http://edu.sina.com.cn/bschool/2016-10-10/doc-
究開発を手掛けた。その後、ホテルや中小企業に向け PBX 交換機の自主研究開発に続き、
商品化した。当時の中国交換機市場において、民間企業のほとんどはデジタル交換機の 自主研究開発経験がなかったため、外国先発企業は中国交換機市場の莫大な発言権が持 っていた。任正非が通信技術の重要性を認識し、全ての資本金をデジタル局用交換機 C&C08 の自主研究開発に投入した。1993 年末、デジタル局用交換機 C&C08 の商用化が始 まり、値段は外国製品の 3 分の 2 であり、中国の地方市場を迅速に獲得した。1995 年、
ファーウェイのコア事業は地方農村部市場から徐々に都市部へ転換していた。
第二段階は 1996 年から 2004 年であり、当時ファーウェイのミッションは農村部から 都市部へ自社の市場シェアを拡大することであった。1997 年、ファーウェイは香港の和 氏通信と契約することによって香港の通信市場に参入し、自社のデジタル局用交換機 C&C08 のグローバルの展開にチャンスをえた。同年、ロシアにも進出した。しかし、フ ァーウェイの野望はそれだけでは済まなかった。1998 年から、ファーウェイは将来事業 の焦点を世界主要市場—欧州とアメリカに当てた。最初の契約はわずか 38 ドルだったが、
2001 年に海外市場の売上高が1億ドルに達し、スウェーデン、アメリカなどで R&D セン ターを立ち上げた。2002 年さらに海外市場の売上高は 5 億 5200 万米ドルまで増加した。
この時期はファーウェイの発展史にとって極めて重要な意義を持ち、人的資源管理シス テム、研究開発システム、経営管理システムに関する改革は全てこの時期に始まった。
ある意味この段階はファーウェイの発展史の上で非常に困難な時期であり、外部環境が 変動した一方、ファーウェイの内部組織も大きく変化した。2000 年ファーウェイが初め て 200 億元の売上高を達成し、営業利益は 29 億元に超えて当時中国通信電機ランキン グ 100 の一位となった。任正非は会社で「ファーウェイの冬」という内部講演でファー ウェイの将来の発展方向とリスクを分析し、会社の改革の要点や意義を提示した。根本 的な管理改革により、ファーウェイは海外進出にも挑戦し成功した。2003 年、端末事業 部門を設立し、事業内容をさらに拡大した。
第三段階は 2005 年から 2010 年であり、ファーウェイはビジネスモデルの転換期であ り、グローバル企業として国際舞台でさらなる成長した。2005 年、海外市場での受注は 初めて国内の売上高を超えた。この期間に、ファーウェイは単に通信機器を販売するの ではなく、通信ソリューションプロバイダーとして世界中の顧客に最適なソリューショ ンを提供することを目指した。そのため、2006 年ファーウェイは新しいロゴを発表し、
お客様志向、イノベーションのための R&D 投資、WIN-WIN 関係の構築などのミッション
を明確にした。この時期注目すべきなのは 2 点である。一つはライバルに対する認識が 変わったことである。もう一つは顧客市場に基づいて組織変革を行われることである。
実力があったとしても、新規市場に参入する場合に、市場や文化に関する知識が足りな い。そのような状況において、欧米など主流市場で成功を収めるために、ライバルと直 接に戦うのではなく、ライバルと協働する方針に転換した。例えば、2007 年にシマンテ ックと合弁企業を設立し、ストレージおよびセキュリティ製品とソリューションを開発 した。 海底ケーブルのエンドツーエンドケーブルソリューションを提供するために、
Global Marine との合弁会社を設立した。2007 年末、ファーウェイはすべての欧州のト ップ通信事業者とパートナーシップを構築した。2010 年、B to B の企業であったファ ーウェイは B to C 事業をもっと消費者のニーズにフィットさせるために、端末事業の 戦略方向を調整し、中間消費層に向けブランドコンセプトを発表した。消費者向け事業
(携帯電話、チップ)、端末設備、インターネット業務を整理した上で、従来の事業部 制組織から消費者ビジネスグループ(Business Group)という新しい事業ビジネスモデ ルを立ち上げた。
第四段階は 2011 年から現在であり、クラウド管理統合を追求する組織変革期間であ る。ファーウェイが情報、デジタル技術、自動化の進化と共に、ミッションやビジョン、
戦略も進化した。ファーウェイの 2017 年アニュアルレポートによると、「私たちはあ らゆる人、家庭、組織にデジタル化の価値を提供し、全てが繋がったインテリジェント な世界を実現する」というミッションを発表した。ファーウェイは分散しているデジタ ル世界と一貫しているインテリジェント世界を連結させる橋渡しとして、引き続き顧客 志向、イノベーションを進め、ICT インフラとインテリジェントを統合する基盤を作る ために努力した。2017 年、ファーウェイはパブリッククラウド戦略を定義した。8 月に は、内部組織の再編を発表し、クラウドビジネス部門(以下は Cloud BU)を第 1 レベル の部門にアップグレードし、以前より大きなビジネスの自律性を獲得した。以前クラウ ドビジネス部門は第 2 レベル部門であり、製品およびソリューション部門の一員であっ た。9 月に、ファーウェイは中国のパブリッククラウド市場の1位となり、3 年連続で 世界トップ 5 に入ったことを発表した。「Cloud BU は、今後 5 年間に新しい組織形態、
新しい運用形態、新しい運用背景、新しい顧客志向のアプローチを望んでいる。」とフ
ァーウェイクラウド事業の副社長兼 CEO 徐直軍が言った。4しかし、現在ファーウェイは パブリッククラウドの市場シェアがまだ小さい。一方、ライバルであるアリババは 40%
を占めている。これから 2、3 年はファーウェイにとって重要な時期であり、大きな経 営発展の課題に直面するだろう。
第四項 企業文化
創業から今まで 30 年の間に、中国の農村市場から 170 カ国に進出した実績から見る と、ファーウェイは他の中国企業にとって学ぶ価値があると言える。ファーウェイの発 展を支えているのは「オオカミ文化」という企業文化である。1998 年、任氏は会社内部 会議で「オオカミ文化」を提唱し、ファーウェイの「オオカミ文化」が始まった。会議 では、任はオオカミの「鋭敏なセンス、犠牲を恐れず進撃精神、強いグループ意識」と いう三つの特徴にまとめた。ファーウェイが推奨している「オオカミ文化」は、学習、
イノベーション、ベネフィット、団結といういくつかのキーワードで要約される。常に 鋭敏な感覚で市場や技術の風潮を感知し、利益を生まれるためにグループ一丸で奮闘す ることがファーウェイの行動方針である。ファーウェイが効果的なマーケティング戦略 を採用し、チーム作戦の方法で強力な競合相手を競争し、継続的な成長のチャンスを得 た。
また、ファーウェイが常に危機感が持つことは「オオカミ文化」によって反映する。
2000 年度ファーウェイの売上高は 220 億人民元に達し、純利益は 29 億人民元で中国通 信企業の中で第 1 位となった。この絶好調な時期において5、任氏はファーウェイの従業 員たちに、「ファーウェイの冬」6という内部講演で「冬が来る」を思い起こさせた。任 氏は下記のように述べている。
4 「余承東は 3 月にファーウェイ端末事業 CEO を解任」
http://news.ifeng.com/a/20180204/55752157_0.shtml 2018 年 11 月 8 日に最終アクセス
5ファーウェイの公式サイトから抜粋 https://www.huawei.com/jp/about-huawei/corporate- information/milestone 2018 年 11 月 8 日に最終アクセス
6 「ファーウェイの冬 百度百科」
https://baike.baidu.com/item/%E5%8D%8E%E4%B8%BA%E7%9A%84%E5%86%AC%E5%A4%A9#1 2018 年 11 月 8 日に 最終アクセス
「業界的には今は春な時期だが、冬は必ず来る、だから春と夏にいると冬を心配する必 要がある。IT 業界の冬は他の企業にとって影響はそこまで大きくないが、ファーウェイ のような若い企業とって発展の冬だと思う。会社は十年間に順調に成長しているので、
挫折経験が少ない。しかし、挫折を体験しないと、いかに正しい方向に移行することが わからない。苦難を経験していないのは私たちの最大の弱点である。私たちは、失敗に 対応する心理の準備と能力の準備両方とも欠ける。危機は人が意識していないうちに起 こる。すべての従業員が自分の目線で物事を考えるのはやめてほしい。広い視野を持っ ていないと変化を正しく扱うことができない。変化を正しく対応できないと会社は倒産 する可能性が高い。」
したがって、ファーウェイが成功を収めたとしても、非常に変化激しい通信業界にお いて常に危機感を持っている。「冬が来る」という講演の影響を受け、冷静かつ慎重な 態度で、一時的なキャッチアップに満足せず、長期的な目標を立てキャッチアップを目 指することがわかった。
第二節 交換機事業のキャッチアップについて
第一項 交換機事業の発展プロセス
表 3 交換機事業の発展プロセス 出所:ファーウェイの公式サイトより筆者作成
1987 年末、44 歳の任正非が国有企業から退職し、パートナー5 人と出資し、資本金が わずか 2.1 万人民元(約 32 万円)で深センに株式会社ファーウェイ技術(華為技術)
を設立した。「技術」という名乗ったが、創業初期、実は貿易をすることが多く、会社 を存続させるために、ダイエット薬と墓石も販売した。当時のファーウェイは、方向性 やビジョンが不明確であり、儲かればなんでも取り上げる会社であった。1988 年、偶然 なチャンスで、任は中国遼寧省ある農村部の電信局の局長との連絡を取り、彼の紹介に よって香港鴻年という交換機メーカーが生産した HAX-100 交換機の販売代理になった。
ここから通信機器販売の道を切り開いた。代理販売者として香港でユーザー用交換機を 輸入し、その後は中国内地に転売するだけで利益を得ることができる。1990 年代の中国 市場には、電話通信に対する巨大な需要があったため、ファーウェイがわずか 3〜4 年 で数百万人民元の資金を蓄積し、全国まで販売ネットワークを拡大した。
しかし、代理販売として販売スキル以外に研究開発など専門知識が必要ではないため、
業界の参入障壁が低かった。その結果、1989 年、200 社以上の企業がユーザー用交換機 の生産と販売に参入した。輸出入政策の制限や製造元からリスクに直面したため、しば しば入荷できない状況も生じた。また、不良品がある場合は、短時間に修理することは できないので、顧客に素早く対応するのは難しかった。そのため、任氏は、自主的な研 究開発能力がなければ、会社の運命は常に他の人の手に委ねられることを意識し、代理 販売から自社生産開発への変身することを決意した。
1989 年末、ファーウェイがホテルや小企業向けのユーザー用交換機の自社生産開発を 始まった。技術と人材が不備のため、国有企業から部品を購入することで製品を組立後 にファーウェイのブランドを貼り付け、最初の製品 BH01 を作り上げた。しかし、部品 のメーカーは部品の供給を保証できない状況が多く、主要部品は外部資源に依頼するよ り自社生産することは収益性が高い。したがって、1990 年、ファーウェイが自社の研究 開発能力を構築するために、中国の華中技術大学と清華大学から人材を招き、ユーザー 用交換機の自主生産開発プロジェクトを開始した。約 1 年間の試行錯誤を通して、先発 企業の部品を分解、研究するによって BH03 というユーザー用交換機を自主製造できる ようになった。そして、華中技術大学の教授郭平を次の自主研究開発プロジェクトのマ ネジャーに任命された。郭は研究開発の責任者として務めただけではなく、華中技術大 学の同期鄭宝用もファーウェイに紹介した。鄭宝用の主導の下で、HJD48、HJD−04 とい う構内ユーザー用交換機の自主製造ができ、自社の R&D 能力も大幅に拡大した。1992 年、
HJD シリーズ交換機の成功が 1 億人民元の売上高を達成した。当時経験が浅かった研究 開発チームの努力で、HJD シリーズは輸入製品との同じレベルの高い技術水準が持って おり、第一歩としてキャッチアップの技術基盤を築いた。
構内ユーザー用交換機の成功から、ファーウェイが局用デジタル交換機の自主研究開 発を開始した。そして、鄭宝用が率いた若者に構成された約 300 人のプロジェクトは当 時世界最先端の技術に挑戦し、国内と業界内の基準に基づいてデジタル交換機を開発し た。71993 年、ファーウェイの初の局用デジタル交換機 C&C08 の自主製造を成功するこ とでファーウェイが初めて世界通信技術の最前線に立つことを可能にした。都市部まで 全国の市場に大規模な参入することができるようになった。さらに、1994 年に売上高は 8 億人民元で、2003 年まで累積売上高は 1000 億人民元を達成し、世界一番売れるデジ
タル交換機になった。C&C08 の自主研究開発の成功がファーウェイの R&D の原点として、
非常に重要な意義がある。
第二項 交換機事業発展の技術環境
ファーウェイの交換機事業のキャッチアップを分析するために、当時世界通信産業の 環境の様々な変化に着目する。
まず、技術環境の変化について分析する。Perez and Soete(1988)は新しい技術パ ラダイムの出現が後発企業にキャッチアップの機会の窓を提供することを提唱した。す なわち、新しい技術パラダイムの出現が、先発企業と後発企業が同じようなチャンスを 与え、この変化に対する対応の違いは業界のリーダーシップを決める(Lee and
Malerba
,2017)。1990 年代における、電話通信の主要技術はアナログからデジタルへの技術イ ノベーションは後発企業に大きなキャッチアップの機会を与えた。
電話交換機は手動交換機、ステップ・バイ・ステップ交換機、クロスバ交換機、アナ ログ電子交換機、デジタル交換機という順序で進化していた。8アナログ交換機からデジ タル交換機への技術進化は、製造の経験がなかったのファーウェイに通信機器メーカー への転換に有利な条件を提供した。アナログ技術が主流となった時代に、ステップ・バ イ・ステップ交換機の製造はスイッチ、リレー、ラチェットなどの様々な部品が必要と され、部品間に機能を整合し、経済性よくデザインすることに工夫する必要がある。9部 品とのインタフェースなど一連の技術をうまく整合するには、擦り合わせ能力が非常に 求められる。一般的に、擦り合わせ能力が主導する産業に暗黙知が多いため、技術基盤 が浅いの後発企業にとって参入することが困難である。また、生産資源やコア技術は基 本的に先発企業の内部に蓄積されるため、後発企業にとって、短時間に技術の能力のキ ャップを埋める可能性が低く、キャッチアップするのは難しいと考えられる。
8「NTT 西日本 電話交換機の歴史と仕組み」https://www.ntt-west.co.jp/kids/shikumi_phone/yougo.html 2018 年 12 月 12 日に最終アクセス
9「電話交換システム-電子情報通信学会知識ベース」 http://www.ieice- hbkb.org/files/05/05gun_04hen_02.pdf 2018 年 12 月 12 日に最終アクセス