運送品の価額通告制度について
その他のタイトル Sull'lstituto della Dichiarazione di Valore delle Merci trasportate
著者 栗田 和彦
雑誌名 關西大學法學論集
巻 46
号 4‑6
ページ 985‑1020
発行年 1997‑02‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00024542
運送品の価額通告制度について
栗 田 和 彦
目 次 一 は じ め に 二価額通告制度の法的構造 三価額通告制度存続の意義 四 む す び
運送
品の
価額
通告
制度
につ
いて
ニ八 五
われわれは︑さきに︑いわゆる一九二四年船荷証券統一条約︵以下︑旧条約︶第四条第五項第一文あるいは一九七
九年議定書による改正後の同条約︵以下︑新条約︶第四条第五項a文にその典型例をみることができる︑運送人の損
害賠償責任限度額︵以下︑限度額︶制度の合理性について︑ーっぱら︑イタリア憲法裁判所の判断を中心に││'
(1 )
検討する機会を持った︒この制度は︑運送法を特徴づける要素のひとつになっており︑これを論じることなくして︑
( 2)
運送人の損害賠償責任について論じることができないほどの重要性を有している︒
この制度は︑荷主にとっても低額の運送賃の負担で済む︑という利点が認められ︑その導入には︑荷主︵国︶
の合
意ー運送人(国)との妥協|ーがあったのであろうが、本来的には、運送人保護のために生成•発展した制度であ
り、現在、陸•海・空の運送分野において、国際条約・ルールまたは国内法によって、広く採用されている。しかし、
時代の経過とともに︑この制度に対する疑問が生じてきたことも事実である︒この制度を不満とする荷送人︵広くは︑
積荷の利害関係人︶は︑その違憲性を訴え︑あるいは︑運送人の不法行為に基づく全額の損害賠償責任を追及し︑あ
るいは︑限度額を排除するための機会が与えられなかったことを主張するなど︑この制度を超剋するために︑種々の
運送人の限度額制度といっても︑基本的部分において共通していても︑その細部に至るまで一致しているわけでは
ない︒したがって︑この制度の合理性・合憲性を統一的に論証しうる根拠を示すことは︑からなずしも︑容易ではな
い︒しかし︑この制度の合理性・合憲性を論証するための根拠として︑運送品の種類・価額の通告制度︵以下︑価額 試みをなしている︒
は じ め
に
︵九
八七
︶
分を文頭に置き換えているのである︒新条約第四条第五項a
文は
︑^
^
A
o m
i n
s q
ue
•••
( U n l
e s s •••
)"からはじまる文章
になっている︒やはり︑限度額制度の合理性・合憲性を検討する場合︑あるいは︑現行制度と他の制度︵たとえば︑ の機能をより明確なものにするため︑ 通
告制
度︶
制度は︑運送危険の分担をより公平なものにするを忠実に受け入れている︑といいうる︒
︵九 八八
︶
の存在が指摘されている︒すなわち︑法定の限度額が少額であっても︑荷送人は︑価額通告すれば︵割増
運送賃を要求されるにせよ︶︑全額の損害賠償請求権を留保できる︒価額通告するか否かの選択は︑荷送人の私的自
(3 )
治に委ねられており︑その自由選択が認められるかぎり︑限度額制度は違憲とはいい難い︑とするのである︒このよ
うな考えは︑価額通告制度の制度趣旨・立法者の期待した機能ー運送人に限度額制度が認められるだけで
にも低額の運送賃の負担で済む︑という利点が認められるにせよ︶︑限度額を排除し全額の損害賠償請求権を留保し
うる可能性が荷送人に認められなければ︑運送に関する危険の分担は︑明らかに︑運送人に有利であるが︑価額通告
もちろん︑価額通告制度をもって限度額制度の合憲性を承認するための論拠ないし支点とすることについて︑有力
(4 )
な反対意見があることは︑すでにわれわれの指摘したとおりである︒価額通告は︑実際上︑ほとんどなされることが
(5 )
なく︑その実際的な意義について疑問が投じられていることは︑周知の事実に属する︒たとえば︑
︵ほとんど︶ないことから︑価額通告制度を採用しておらず︑限度額
を排除する制度としては︑第六条第四項において︑荷送人と運送人の合意による責任限度額の設定を認めているだけ
(6 )
であ
る︒
これに対して︑船荷証券統一条約は︑その成立の当時より価額通告制度を維持しているだけではなく︑むしろ︑そ
一九六八年議定書第二条により︑旧条約第四条第五項第一文を改め︑但書の部 ルは︑価額通告制度が実際に利用されることが 関法第四六巻第四・五・六号ニ八六
ハンブルク・ルー
︵荷
送人
運送品の価額通告制度について
ニ八 七
ハンブルク・ルールにおけるそれ︶との優劣を論じる場合︑価額通告制度の検証を避けるわけにはゆかない︒
限度額制度の合理性・合憲性について若干の検討を試みたさきの論稿において︑われわれは︑価額通告制度の検証
(7 )
︵8
)
をほとんどなしていない︒本稿は︑価額通告制度について若干の検討を試みるものであり︑いわば︑さきの論稿の続 編にあたる︒なお︑本稿は︑価額通告制度の検証を目的とするため︑
接的には︑旅客運送人の限度額制度およびそれを排除するための制度に係わるものではない︒
(1
)
拙稿﹁運送人の損害賠償責任限度額制度の合理性﹂関西大学法学論集四五巻ニ・三合併号一︱九頁︒
(2
)
とりわけ︑船荷証券統一条約およびそれを摂取した国内法によって規律される物品運送法を特徴づける要素は︑限度額制
度だけではない︒そのほかに︑片面的強行性や法定免責事由などをあげることが可能である︒
(3
)
前掲拙稿・一五一頁以下︒
(4
)
前掲拙稿・一五二頁以下にみた
Ro ma ne ll
i教
授の 意見 など
︒
(5
)
価額通告制度が利用されない主たる理由は︑以下のとおりである︒価額通告をすると︑運送人から割増料金を要求される
が︑荷送人には割増料金を支払うほどのメリットがない︒とりわけ︑CIF売買の売主が荷送人の場合︑船積によって︑運
送品の所有権・危険が買主に移転してしまっており︑その危険も貨物保険でカヴァーされる︒通告した価額が船荷証券に記
載されると︑船荷証券取得者に仕入れ価格を知られることになり︑以後の取引上︑不都合が生じてしまう
(M au ri zi o R ig u z zi , a L re s p on s a bi l i ta l im i t at a de l ve t t or e a m ri tt im o d i m e r ci , i M la no
1
99 3, p a g .
153;
J Q E E
* I
ニ・中←村津さ澄﹁
i l
紐t国[
際海上物品運送法﹂︵近刊︶の第一三条W1①伽︵佐野彰︶などを参照︶︒したがって︑価額通告がなされるのは︑荷送人が
自己の危険でしかも無保険で貨物の運送を依頼する場合くらいであろう
(F ra nc es co B er l i ng i e ri , L im it e d e l d e bi t o d e l v et t o re
: m
od al it a d i c a l co l o , D i ri t t o m a ri t t im o , 1 98 6, p a g .
5 7 2
) ︒
(6
)
ハンプルク・ルール第六条第四項に類似の規定は︑船荷証券統一条約においても︑発見しうる︒旧条約第四条第五項第三
文および新条約第四条第五項g
文で ある
︒
(7
)
頻繁に引用する条約・ルールの規定は︑ここに掲載しておくべきかもしれないが︑紙面節約のため︑航行法第四二三条の
︵九
八九
︶
︵理論的に共有しうる論理があるにしても︶直
①の要件に関していうと︑条約にいう﹁船積前
(a va nt l eu r em ba rq ue me nt : b ef or e s hi pm en t)
﹂は︑﹁船積の時ま
でに﹂の意味であろう︒おそらく︑この解釈に対して︑異論はないもの︑と思われる︒
運送法第一三条第五項は︑﹁運送の委託の際﹂になされるべき︑としている︒この用語の解釈としては︑運送契約締
結の時︑とするか︑運送品の船積の時まで︑とするか議論が分かれうる︒
(a)
私訳
のみ
を掲
げて
おく
︒
﹁運送人によってなされるぺき損害賠償は︑運送品一単位につき︑二0万リラまたは船積前に荷送人によって通告された価額に対応する大きい額をこえることができない︒船積前に荷送人によって通告された価額は︑反証のあるまでは︑運送品の実価と推定されるrしかし︑運送人は︑通告が
不正確であることを立証した場合︑運送品の滅失︑毀損または遅延について︑責任を負わない︒ただし︑不正確が意図的に
なさ
れた
もの
でな
いこ
とが
立証
され
たと
きは
︑こ
のか
ぎり
では
ない
︒﹂
(8
)
前掲拙稿・一五八頁の注*においてのべたとおり︑前掲拙稿において︑前注︵5
︶で
引用
した
R ig u z zi
の研
究を
検討
する
こ
とができなかった︒本稿は︑同氏の研究の第五章に多くを依存している︒
価額通告の要件
旧条約第四条第五項第一文および新条約第四条第五項a文は︑限度額を排除するための価額通告制度が効果を生じ
るための要件として︑大きくいえば︑ふたつを要求している︒すなわち︑①価額の通告が船積前になされること︑お
船積前の通告
よび︑②価額の通告が船荷証券に記載されることである︒ ニ
ー
価 額 通 告 制 度 の 法 的 構 造
関法第四六巻第四•五·六号
一方︑わが国の国際海上物品 ニ
八八
︵九
九
0)
運送
品の
価額
通告
制度
につ
いて
立法担当者は︑前者に解して︑条約と国際海上物品運送法の用語の差異について︑つぎのように説明している︒す
なわち︑﹁条約は﹃船積前に﹄することを要求するが︑これは条約が︑﹃物品を船舶に積み込んだ時からこれを船舶か
ら荷揚げした時までの期間﹄に適用あるものとするためと思われる︒これに対し︑本法は︑運送契約の当初から適用
するものとし︑かつ︑船荷証券の交付のない場合にも適用あるものとするから︑
のみならず︑通告は運送人に対し特別の注意義務を要求するものであり︑運送人としては︑その代償として割増運送
賃を要求し得るものでなければならないから︑通告は遅くとも運賃を定める時までになされるべきものとすべきであ
(1
)
ろう︒この故に︑通告は︑運送の委託の際になされるべきものと定めたのである﹂と︒
﹁運送の委託の際﹂と﹁船積﹂には︑明らかに︑時間的前後関係が認められる︒そして︑立法担当者は︑運送賃が運
送契約の承諾前に決定され︑船積に際しての価額通告に伴う急な変更が困難・不可能なことを理由にしているようで
(2 )
これに対して︑運送品の船積の時まで︑と解する説も有力である︒その論拠は︑詳細に論じられていないが︑条約
に忠実であろうとするためであったり︑また︑船積時における運送賃の変更が可能なことを暗黙の前提としているの
であ
ろう
︒
国際海上物品運送法第二二条第五項の﹁運送の委託の際﹂の解釈としては︑形式的にも︑実質的にも︑立法担当者
の解釈を支持するべきであろう︒ あ
る︒
ニ八 九
一般的な用語方法によれば︑﹁運送の委託の際﹂を﹁船積の時まで﹂という意味に
解することは困難である︒また︑実質的にみても︑価額通告により限度額が排除され全額の損害賠償請求権が留保さ
(3 )
れるかわりに︑割増運送賃を認めるのが公平にかなう︑と考えれば︑通常︑運送賃決定がなされる時︵荷送人の運送
︵九
九一
︶
一般
的な
用語
方法
によ
れば
︑
一概に条約によることができない︒
ろう
︒
担当者の解釈を支持するべきであろう︒少数有力説は︑価額の通告が
﹁国
際海
上物
品運
送法
﹂
︵九
九二
︶ 申込に対して︑運送人が承諾する時︶までに︑荷送人は価額通告をなすべき︑と解するのが妥当であろう︒
一様に認められているように︑国際海上物品運送法上︑価額通告は︑船荷証券の交付が ない場合にも適用されうる︒そして︑船荷証券の交付がない場合︑価額通告は︑荷送人による一方的通告で足り︑運
(4 )
送人の承諾を要しないのである︒もし︑そうであれば︑契約の申込の時点で価額通告をしなかった荷送人が︑船積時 に︵この時すでに契約は締結済みであり︑運送賃も決定済み︶価額通告した場合︑その通告も有効な通告というべき
(5 )
であろう︒このような運送人にとっては抜き打ち的な荷送人による価額通告を排除しうる︑という意味からも︑立法
︵運送の委託の後︶船積までになされた場合︑
(5 )
荷送人または荷受人は︑運送品の損害が船積後に生じたことを立証しなければならない︑と解することによって︑運 送人のこうむる不利益を回避する意図のようである︒しかし︑﹁価額の通知は︑船積までに︑これをなせば足りる﹂
としておきながら︑荷送人・荷受人に︑運送品の損害が船積後に生じたことの立証責任が課せられる
︵転
嫁さ
れる
︶ のか︑根拠が示されていない︒少数有力説のような解釈は︑根拠規定がないかぎり︑成立しえない︑というべきであ
(1)
田中誠二•吉田昂「コメンタール国際海上物品運送法」昭和三九年・ニ―一頁以下。
(2
)
小町谷操三﹁統一船荷証券法論及び国際海上物品運送法註釈﹂昭和三三年・三六二頁︑山戸嘉一
昭和
三三
年・
一五
五頁
︒
(3
)
荷送人の価額通告による限度額の排除と運送人による割増運送賃の請求が運送危険の公平な分担をもたらす︑と考えるのが一般的であろう︒しかし︑割増運送賃の支払は︑事実上要求されるだけであり︑価額通告の法律上の要件になっていない︒
割増運送賃の請求は︑荷送人の価額通告権を制限する︑という考えも成り立ちうるであろう︒この点については︑本稿の四 さらに注意を要するのは︑ 関法第四六巻第四•五・六号
二九
〇
運送品の価額通告制度について Jとになるのは︑事実である︒
二九
のい
にみ
る T u l l
i 0
の見
解を
参照
のこ
と︒
(4)田中•吉田•前掲・ニ―二頁。
(5
)
この場合︑運送人は︑運送品の船積の拒絶または契約の解除をなすことはできない︑と思われる︒すると︑運送人は︑割
増運送賃の請求をなしうるにしても︑繁雑さが伴うことを覚悟しなければならない︒
(6
)
小町谷・前掲・同所︒
船荷証券上の記載
船荷証券統一条約が規定する第二の要件は︑②価額の通告が船荷証券に記載されることである︒②の要件は︑同条
一見︑荷送人が限度額を排除するための必要条件であることは︑自明のことに
(1 )
属するように思われる︒そのような解釈は︑多数説の採用するところである︒
しかし︑その明示的規定にもかかわらず︑②の要件を文字どおりに厳格に解することなく︑価額通告が契約に入っ ていることを当事者が知りうるよう︑価額通告は運送契約およびその条件の証拠となる証券に明示的に記載されるべ
(2 )
きである︑とか︑あるいは︑価額通告が船荷証券自体に記載されることを要求するのは︑過度の形式主義の表れであ
(3 )
り︑運送証券が変化しようとしている時代にはそぐわない︑といった反対意見も存在するようである︒
この反対意見は︑②の要件について︑価額通告が船荷証券自体に記載される必要はなく︑船荷証券以外の証券で あっても運送契約を証拠づける証券に価額通告の記載があれば足りる︑とするものであり︑これにしたがえば︑たと
(4 )
えば︑わが国の実務にいう貨物受取証やフランス海運の
no te de ch ar ge me nt などに価額通告の記載がある場合︑限
度額は排除されることになる︒荷送人の立場からすれば︑限度額排除の可能性が拡大され︑荷送人の保護が充実する 約が明示的に規定するところであり︑
︵九
九三
︶
まで る︑といわなければならない︒
二九
︱︱
︵九
九四
︶
しかし︑貨物受取証や
no
te
de
ch
ar
ge
me
nt
などが運送契約の証拠証券である︑と解しうるにしても︑また︑今日︑
船荷証券が大きく変貌しようとしているのが事実であるにしても︑うえにみた反対意見に与することは困難である︒
(5 )
多数説の形式的理由は︑いうまでもなく︑条約の文言である︒条約は︑価額通告が船荷証券に記載されることを︑
明示的に要求している︒そして︑多数説を採用しても︑運送契約当事者間の運送危険の分担の公平さを壊すことには
ならない︑と思われる︒もし︑反対意見が︑価額通告は船荷証券自体に記載される必要はないが︑運送契約の証拠証
券に記載されなければならない︑というに留まるのであれば︑多数説と反対意見にそれほど大きな差が生じるわけで
はなさそうである︒換言すれば︑反対意見にしたがっても︑荷送人にそれほど大きなメリットは生じないもの︑と思
われる︒たしかに︑船荷証券自体に記載することを要するのと︑船荷証券または運送契約の証拠証券のいずれかに記
載すれば足りる︑というのでは︑理論的には︑大きな差にみえる︒しかし︑船荷証券自体に記載することを要求して
も︑荷送人に大きな負担を強いるわけではない︒もし︑それが大きな負担というのであれば︑運送契約の証拠証券に
記載することを要求することも︑荷送人にとって同様に大きな負担になる︑というべきであろう︒明示的規定を排除
してまでも運送契約の証拠証券に記載すれば足りる︑と解するには︑多数説によった場合の不都合または反対意見に
したがった場合のメリットを論証するべきである︒多数説がたんに形式主義に過ぎる︑というのでは︑説得力に欠け
また︑②の要件について︑反対意見がそこまで意図しているかは別にして︑反対意見を敷術すると︑限度額排除の
ためには︑運送人が運送品の価額を知っていた︵または︑知りえた︶︑という事実があれば足りる︑というところに
(6 )
︵7
)
︵理論的に︶行き着くのであれば︑むしろ︑多数説によるほうが︑公平の確保につながるもの︑と思われる︒ま
関法第四六巻第四・五・六号
運送品の価額通告制度について
た︑条約の立案者も︑とりわけ︑運送人が運送品の価額を知りうる状況にあっただけで︑限度額排除を認める意思は 以上の議論は︑そのまま︑国際海上物品運送法第一三条第五項に関する船荷証券の交付がある場合の議論として︑
(8 )
︵9
)
妥当しうる︑と思われる︒
(1
)
R ig u z zi , op . i t . c , p a g .
163 nota
17にイタリアおよびフランスにおける多数説の支持者が列挙されている︒イタリアでは︑
R ig u z zi , Ri g h et t i , M an
ca︑
フラ ンス では
︑ R ip e r t, Ma ra is , C ha uv ea
uな
どで ある
︒
(2
)
Re ne Ro di er e, Tr ai te general
e d dr o i t maritime,
I I ,
P ar i s 1968•
p .
31 4.
(3
)
Ma rt in e R em on d , Go ui ll ou d, Dr oi t m ar it im e, P a r is
1988•
p .
34 2.
ただし︑本文でみた初版のことばは︑
Re mo nd ' Go ui ll ou d, r D oi t m ar it im e,
2
e d . , P a r is
1993における対応箇所
( p .
38 7)
から除外されている︒基本的姿勢に変化はないに
しても︑厳格に解する説に対して︑若干の譲歩をなすものなのであろうか︒
(4
)
R ig u z zi , op . i t . c , p a g .
1 6 4 n
ot a
20は︑本文にみたような例として︑ルーアン控訴院一九八四年一0月一八日判決およびエ
クザンプロバンス控訴院一九八0
年 一
0月三一日判決をあげている︒しかし︑価額通告が船荷証券に記載されなかった場合︑
限度額が適用される︑とした例︵パリ控訴院一九七三年三月五日判決およびマルセーユ商事裁判所一九七七年七月八日判
決︶も引用している︒
(5
)
R ig u z zi , op . cit••
pa g.
1
64 .
また
︑ Ri gu N Ni .0 p . c it ・
・ lo c o c i t . e
s eg .
によると︑多数説の結論は︑条約第四条第五項a
文の
文言によってだけではなく︑同第五条によっても︑正当化されうる︑という︒
(6
)
証拠証券は︑法律関係の存否・内容を証拠立てる手段のひとつである︒それ以外に代替する証拠手段があれば︑それは不
要のものとなる︒船荷証券自体にではなくとも︑運送契約の証拠証券に記載があれば足りる︑という考えを敷術すれば︑価
額通告がなされたことあるいは運送人が価額を知っていたことが︑運送契約の証拠証券以外の証拠手段によって立証されれ
ば︑②の要件を充足する︑というところにまで︵理論的に︶行き着く可能性を否定できない︒
(7
)
R ig u z zi ,
0 p .
cit••
p ag .
1
65 .
なかったであろう︒
二九 三
︵九
九五
︶
( 8 )
R ig u z zi ,
0
p . c i t . , lo co c i t .
e s e
g .
は︑以上の議論︑とりわけ︑多数説が航行法第四二三条に妥当する旨を主張する︒同条は︑価額通告が船荷証券に記載されるべきことを明示的に要求していない︒船荷証券の交付がない場合にも︑価額通告による限度額排除を認める趣旨︑と思われるが︑同条が旧条約第四条第五項第一文に由来することは明らかである︒その由来の確かさが︑条約における議論を航行法第四二三条のものとしうる︑とするのである︒そして︑船荷証券の交付がある場合の議論
であろうが︑船荷証券に記載されなかった価額通告の意義を認めない考えは︑運送利用者の保護を無にするものではない︑としている︒その根底には︑運送人は︑荷送人が船荷証券に価額の記載を求めた場合︑正当な理由なく︑それを拒絶しえず︑
もし︑不当に拒絶すれば︑運送人は︑限度額の利益を失う︑という考えが存在している︒運送人による価額記載の拒絶の可否については︑ニー三においてみる︒
(9
)
P li n i o M
an ca , S tu di di d ir i t to d el l a navigazione,
o l v
. I I ,
Mi la no
1
96 1, p a g .
199 e
s eg . は
︑R の要 盆叶 につ いて
︑冬 名奴 説を 支
持するが︑船荷証券に記載されない価額通告が効果を有しない理由として︑船荷証券の文言証券性
( le t t er a l it a )
をあげて
いる︒イタリア法にいう文言証券性とわが国にいうそれとの異同は︑大きな課題になりうるであろうが︑筆者は︑②の要件と文言証券性とは直接的な関係はないと考えている︑とだけいっておくことにする︒
ニ ー ニ
価額通告の記載方法 旧条約第四条第五項第一文︵および新条約第四条第五項
a文︶は︑荷送人により通告された運送品の性質および価
額が船荷証券に記載されるべき旨を規定している︒同文については︑
つとに議論が対立しており︑大きく分けると︑
その文言どおり︑運送品の性質および価額の記載を要する︑とする説と︑性質の記載から価額を知りうる場合には価
( 1)
額の記載を要しない︑とする説が存在している︒この議論の対立は︑わが国の国際海上物品運送法第一三条第五項
︵用語が﹁性質﹂ではなく﹁種類﹂に変わっているが︶に移行されうる︒
この議論は︑価額通告を論じる場合︑避けて通ることができないもの︑と思われるが︑イタリアにおいても︑航行
関法第四六巻第四・五・六号
二九四︵九九六︶
運送
品の
価額
通告
制度
につ
いて
額を推測することができない
二九
五
法第四二三条に関して︑相当に議論がなされている︒それらは︑条約および国際海上物品運送法の解釈にも参考とな
議論の概略は、小町谷•前掲・ニ五0頁の注一bに紹介されている。
航行法第四二三条は︑さきにもみたように︑運送品の価額に明示的言及をしているが︑その性質については明示的
︵船荷証券に記載すべき旨の明示的言及がないことについては︑ここでは触れない︶︒このことは︑
航行法の立法者が運送品の性質に大きな意義を認めなかったことを表すようにもみえる︒しかし︑航行法の立法者は︑
そのように考えてはいなかったようである︒結論的にいうと︑航行法第四二三条が運送品の性質に言及していないの
は︑価額通告により限度額排除する場合に︑運送品の性質の通告も求めることは︑意義のとぼしいこと︑考えたから
(1 )
︵二重の手間︶になる︑と考えたからのようである︒すなわち︑運送品の性質は︑船荷証券の
法定記載事項のひとつ
︵航
行法
四六
0条d
文 ︶
であるから︑船荷証券の交付がある場合︑いずれにせよ︵荷送人が価
(2 )
額通告するか否かにかかわらず︶︑船荷証券に記載されているはずである︒あるいは︑荷送人が運送人に対して提出
する船積通告書
(d ic hi ar az io ne d' im ba rc o)
には︑運送品の性質・品質・数量︑包みの数および運送品の記号が記載
されている︵航行法四五七条一項︶ので︑価額通告による限度額排除を求める場合︑改めて︑運送品の性質を通告し
(3 )
なおす必要がない︑と考えたようである︒たしかに︑うえのように考えれば︑航行法第四二三条が運送品の性質につ
いて明示的言及をしなかった理由がみえてくる︒そして︑船荷証券に記載されるべき運送品の性質からは運送品の価
︵少
なく
とも
︑困
難で
ある
︶
ではなく︑余計なこと 言及をしていない
い運送品の性質の記載 (
1
りえよう︒以下にその概略をみることにしよう︒
から︑限度額の排除を欲する場合︑運送品の価額は︑別途
︵九
九七
︶
としない
(4 )
︵はじめて︶︑通告されなければならない︑ということになる︒
海上物品運送法においては︑よりいっそう︑その不可欠性が強調されるぺき︑と思われる︒
価額の明示的記載
︵九
九八
︶
イタリアを代表する海商法学者である
Be rl in gi er
iによると︑航行法第四二三条の規定は︑条約の規定とわずかに
( 5)
異なる
(l ie ve me nt e di ve rs a)
程度でしかない︑という︒明示的に要求していない航行法第四二三条においても︑連
送品の性質は︑価額通告に不可欠である︑と結論づけうるのであれば︑それを明示的に要求している条約および国際
(1
)
An to ni o L ef eb vr e D 'O vi di o, Su l l a r e sp o n sa b i li t d e a
! v e t to r e m ar it ti mo , i n St ud i per i i co di ce de l l a n av i g az i o ne , i M la no
19 51 , p a g .
1 1 0 .
(2
)
R ig u z zi , op . c i t . , p ag .
1
67 .
(3
)
B er l i ng i e ri , f f E e tt i de l l a o
me ss a d e ! v al or e e d el l a natura
e l d l e cose
e l n tr a s po r t o m ar it ti mo , D i ri t t o m a ri t t im o , 1 98 4, pag.
93 .
(4
)
Gi us ep pe Au l e tt a , L im it az io ne i d r es p o ns a b il i t a d e! v et t o re ma ri tt im o, i v R i st a de ! di r i tt o d e l la na vi ga zi on e,
1952 I, pag.
20 4.
(5
)
B er l i ng i e ri , op . i t . c l, oc o c i t .
条約は︑運送品の性質および価額が船荷証券に記載されるべき旨を規定しているが︑その価額の記載が明示的であ
るべき︑とまでは明言していない︒そこで︑運送品の性質の記載からその価額を算定しうる場合︑価額の記載を必要
(b)
︵あるいは︑価額が周知のものである場合︑その周知性が通告を補充する︶
を摂取した国内法についても︑おそらく同じかたちで︑発生しうるであろう︒
関法第四六巻第四・五・六号
と解する説と︑その場合にも価
額の明示的記載を必要とする︑と解する説の対立が生じている︒この議論の対立は︑条約についてのみならず︑それ
二九 六
運送
品の
価額
通告
制度
につ
いて
額を排除したければ︑運送品の
さらに︑つねに価額の明示的記載を要求する立場は︑荷送人に過重な負担を求めるわけではない︒荷送人は︑限度
︵性質と︶価額の明示的記載を運送人に求めれば足りるのである︒また︑つねに価額
の明示的記載を要求する立場は︑荷送人の限度額排除の意思の有無に関する無用な争いの余地を排除しうる︒反対説 において︑明示的・具体的記載に及ばない︒ 三条第一項などがその典型︶
︱一
九七
条約の規定およびそれと類似した文言を有する国内法の規定︵国際海上物品運送法第一五条第五項や航行法第四二
の文言は︑おそらく︑後者の説に加担するであろう︒うえにみた規定のなかに︑前者の
(1)
説の論拠となるべきような文言を発見することは︑困難というべきであろう︒そして︑この議論に関して︑最近のイ
(2 )
タリアの判例は︑後者の説に固まっているようである︒たしかに︑それらの規定は︑運送品の価額を明示的に記載す るべき︑とまではいっていない︒しかし︑たとえば︑条約の﹁船荷証券に記載されている場合﹂との文言は︑通常の 解釈方法によれば︑少なくとも︑第一義的には︑具体的な数額をもってする明示的記載がある場合をいうもの︑と思 われる︒黙示的ないし間接的記載で足りる︑との解釈は︑規定の適用拡大を図るための例外的・補充的解釈の印象を
(3 )
そして︑つねに価額の明示的記載を要求する立場は︑価額通告制度の制度趣旨に︑よりよく適合している︑と思わ れる︒すなわち︑運送人が運送品に関する危険︵価額︶を正確に了知し︑それに応じる割増運送賃を算定・徴取する ことにより︑運送の危険の分担の公平を図る︑というところに︑価額通告制度の制度趣旨を認めるのであれば︑たと
え︑運送品の性質の記載からその価額を算定しうる場合があるにしても︑その算出方法は︑迅速性・簡便性・正確性 免
れえ
ない
︒
⑯│
1
つねに価額の明示的記載を必要とする
︵九
九九
︶
⑯│ 2
運送品の価額の周知性は価額の通告を補充しない 利益を主張することが困難になる︑と思われる︒ は︑この争いの余地を残すことになる︑と思われる︒
(1
00
0 )
反対説によると︑その性質からその価額を算出しうる運送品についてその性質の記載だけがある船荷証券が発行さ
れた場合︑運送人は︑限度額排除の意思を明示的に表示しなかった荷送人に対しては︑限度額の利益を主張すること
は可能であるにしても︵反対説を徹底すれば不能になるかもしれないが︶︑その船荷証券所持人に対して︑限度額の
(1
)
Ri gu zz i, op . c i t . , lo co ci t . は︑国でみた議論︵運送品の性質からは運送品の価額を推測することができないから︑限度額 の排除を欲する場合︑運送品の価額は︑通告されなければならない︶が︑つねに価額の明示的記載を必要とする︑と解する
説の論拠になりうる旨を主張する︒
(2
)
Ri gu zz i,
0
p . c i t . , pa g.
168
no ta
26 27 e
によると︑この議論に関する破棄院判決は紹介されていないが︑いくつかの下級 審判決が紹介されている︒その紹介によると︑イタリア判例に興味深い変遷がみられる︒一九四九年と一九五三年に後者を
支持する判決︵計二例︶があり︑一九五0
年代に前者を支持する判決が六例あり(‑九四九年にも一例︶︑その後︑ふたた び︑後者を支持する判決が一九七五年に一例と一九八
0年
代に 二例 あっ たよ うで ある
︒
(3
)
Ri gu zz i, op . c i t . , pa g.
1
68 .
つねに価額の明示的記載を必要とする︑と解する説は︑必然的に︑運送品の価額の周知性が価額の通告を補充する︑
との主張も受け入れない︒
Ri gu zz
iは︑反対説︵運送品の価額の周知性が価額の通告を補充する︶を支持しえない理
由を以下のようにのべている︒﹁航行法第四二三条は︑条約の立法者が使用した包
(p ac ka ge )
という表現を運送品の単位
(u ni ta i d ca ri co )
という要約した文言に統一しており︑運送実行の態様がどのようなも
のであれ︑すべて貨物の海上運送に運送人の限度額の適用範囲を拡大する意図を確かに有していたのであるから︑条 関法第四六巻第四・五・六号
二九 八
および単位
(u ni t)