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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

養豚経営における生産効率および新技術導入効果に 関する研究:ベトナム紅河デルタからの証拠

グエン, ティ, リー

http://hdl.handle.net/2324/4110559

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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氏 名 Nguyen Thi Ly

論 文 名 STUDY ON PRODUCTION EFFICIENCY AND IMPACTS OF NEW TECHNOLOGIES IN PIG FARM HOUSEHOLD:

EVIDENCE FROM RED RIVER DELTA OF VIETNAM

(養豚経営における生産効率および新技術導入効果に関する研究:ベ トナム紅河デルタからの証拠)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 南石 晃明 副 査 九州大学 教授 矢部 光保 副 査 九州大学 教授 福田 晋

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

ベトナムにおける養豚経営は畜産業における最も重要な部門の 1つであり、国内における肉需要 への対応と共に、農家所得向上の面でも大きな役割を果たしている。こうした養豚経営の重要性に 鑑みベトナム政府は、その大勢を占める小規模経営に焦点を当て養豚経営の発展に資するため多様 な政策を展開している。具体的には、経営規模の拡大、生産効率の向上、環境保全型の新生産技術 および生産管理法の導入等が促進されている。しかしならが、生産効率が低く、新技術の導入率が 低い小規模零細農家においては、これらの施策の効果は限定されている。

このような背景から、本研究では、養豚農家における生産効率を計測すると共にその決定要因を 解明する。また、養豚農家における新技術の導入の決定要因および導入効果を解明すると共に、新 技術が生産効率に及ぼす効果を解明する。

こうした研究目的のため、養豚経営が盛んな紅河デルタ地域において、2種類の大規模な農家ア ンケート調査を実施し、収集された 2 つの独自データセットに、DEA、 Logit、Probit、Tobit な どの経営科学手法および計量経済学手法を適用し解析を実施した。第1アンケート調査は、2014 年8~9月にフンイエン省のティエンルー地区で実施し、サンプル総数(農家数)は 161戸であっ た。第2アンケート調査は、2018年4月にフンイエン省におけるVietGAHP推進地区で実施した。

サンプル総数(農家数)は230戸であり、そのうち114農家はVietGAHP導入農家、116農家は従 来型のGAP取組みをしていない農家である。

本研究の主要な結論を以下に示す。まず、第 1アンケート調査データに基づく解析では、養豚一 貫生産における全体的な技術効率は平均的には高い(80.4%)といえるが、広い範囲(52.6%~

100%)で分布していることが明らかになった。また、養豚経営における全体的な技術効率の非効 率性は、規模効率ではなく技術効率の低下の結果であることも明らかになった。さらに、技術効率 に影響を与える主な要因は、肥育豚一頭あたりの生体重、妊娠・哺育育成・肥育期間、農家世帯主 の教育、養豚経験、養豚飼養従事家族人数、養豚所得、融資の利用可能性、および獣医サービスの 利用可能性であることも明らかになった。これらの結果から、養豚農家の効率向上には、生産規模 拡大よりも、生産管理技能の向上が有効であるとの結論が得られる。こうした視点からは、繁殖セ ンター利用による生産拡大も検討に値するといえる。また、優秀養豚経営の事例研究に基づく技能 向上のための養豚農家育成訓練プログラムが技能向上に有効と考えられた。非効率的な農家では、

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発情兆候の早期発見や子豚の早期離乳が繁殖・肥育期間の短縮に有効と考えられた。

また、第1アンケート調査データに基づく解析では、農家帯主の教育、農協等への帰属、農場規 模、世帯所得などが、新技術の一種であるバイオガスの導入に正の影響を与える主な要因であるこ とが明らかになった。ただし、一部の非常に高度な教育を受けている農家や、より近代的な肥料管 理技術を求める可能性のある高収入の農家世帯にはこれに該当しない。これらの結果は、バイオガ ス装置のメリットに関する教育と意識向上プログラムを実施する必要があることを示唆している。

さらに、特に低所得農家には金融プログラムが有効であることが示唆された。

次に、第2アンケート調査データに基づく解析では、生産管理技術の一種であるVietGAHPの導 入において、農家世帯主の性別、普及研修、農家世帯収入、獣医サービスが促進要因であることが 明らかになった。その一方で、農場規模、養豚飼養従事家族人数、農外所得、バイオガス導入が制 約要因であることも明らかになった。さらに、VietGAHP 導入は、その必須農作業実践項目 15 の うち 9項目、オプション農作業実践項目 14のうち8項目にプラスの影響を与えることも明らかに なった。これらの結果は、養豚経営に関する公的な GAP プログラムを通じて食品の安全性と環境 保護の目標を達成するために、農家世帯主の性別(男性)、普及研修、家計資産、獣医サービスなど の導入要因が、政府の政策が焦点を当てるべき主要な柱であることを示唆している。

また第2アンケート調査データに基づく解析では、養豚農家の技術効率、配分効率およびコスト 効率の平均がそれぞれ 89.2 %、84.6%、75.3%であることが明らかになった。また、コストの非 効率性は、それぞれ配分非効率性と技術非効率性が原因であることも明らかになった。さらに、生 産 規 模 の 拡 大 に 伴 い 、 配 分 効 率 と コ ス ト 効 率 が 大 幅 に 向 上 し 、 新 生 産 管 理 技 術 の 一 種 で あ る

VietGAHPの導入により、技術効率が向上することも明らかになった。これらの調査結果は、養豚

経営においてGAP(適正農業規範)などの新生産管理手法の導入を促進する施策が、農業経営の発 展に有効であることを示している。

以上要するに、本研究の結果から以下の5点を解明した。第1に、養豚経営における全体的な技 術効率のレベルは高いが農家間の変動は大きく、低効率の農家では改善の余地が大きい。第 2 に、

生産規模拡大は、規模の経済性により配分効率とコスト効率を改善する。第 3にVietGAHPのよう な新生産管理技術の導入は技術効率の向上に貢献する。第4に、VietGAHPは、難易度の高い農作 業実践の取組みに大きな変化をもたらす。第 5に,農家所得は新技術導入に影響を与える主要因で ある。これらの知見に基づいて、以下の4点の含意が得られた。第1に養豚経営の発展は、経営規 模拡大と共に、技術や技能の向上に注力することで実現される。第2に養豚経営の新技術導入を促 進 す る た め に は 、 低 所 得 農 家 の 資 金 援 助 策 定 が 有 効 で あ る 、 第 3 に 養 豚 経 営 の 効 率 向 上 に は VietGAHP導入が有効である。第4にVietGAHP導入を促進するためには、技術・技能向上や獣医 サービス充実に資する政策が重要である。

これらの新たな知見は、農業経営学の発展に寄与する価値ある業績であり、博士(農学)の学位 に値すると認める。

参照

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