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『在明の別』論 : 人物造型からみるその志向と構想

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

『在明の別』論 : 人物造型からみるその志向と構想

小松, 明日佳

http://hdl.handle.net/2324/4474905

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(文学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

(様式6-2)

氏 名 小松 明日佳

論 文 名 『在明の別』論 ――人物造型からみるその志向と構想――

論文調査委員

主 査 九州大学 教授 辛島 正雄 副 査 九州大学 准教授 川平 敏文 副 査 九州大学 准教授 青木 博史 副 査 九州大学 教授 静永 健

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は、物語文学史において、戦後になって「天下の孤本」が紹介されたことで、平安再末 期の物語として注目されるようになった『在明の別』を対象に、研究の歴史が浅いことに鑑み、誤 脱の多い本文を丁寧に辿り、従来の解釈を検証しつつ、人物造型を分析することによって、その主 題性や、作品の構造を解明しようとしたものである。『在明の別』は全三巻からなるが、そのうち 巻一が、藤原摂関家の嫡男・右大将を中心に、巻二・巻三は、右大将の子である左大臣を中心に物 語が展開する。

右大将は、藤原氏の氏神である「春日の神」の加護のもとに、女子として誕生しながら、男装を して嫡男として生きている。彼には、「家の繁栄」のため、結婚して男女の子をもうけることが求 められ、それがいかにして実現するかを、巻一では描く。具体的には、望まぬ妊娠をした美しい姫 君を見出して、自邸に連れ出し、妻としたのであり、その妻が、男女一人ずつ子を生み、後継ぎが 確保される。その男子が、巻二以降の中心人物となる左大臣である。また、右大将のままでは天皇 家の外戚となれないため、その正体が帝によって暴露されることとなり、右大将は死去と偽り、女 の姿で入内、二人の皇子が誕生する。帝の譲位後はそれぞれが帝と東宮となり、右大将であった母 は「女院」と呼ばれる。左大臣は、そのような女院に憧れながら、藤原摂関家の繁栄のために生き る。

『在明の別』では、『源氏物語』や『今とりかへばや』からの顕著な摂取・変容の跡が随所に見 られるが、それらを対比・検討することにより、この物語の志向するところを炙り出そうとする。

その結果、「帚木」巻から始まる三帖の影響が甚大であり、人物相互の関係性の大枠を借りる一方、

その運命については必ずしも粉本に束縛されず、全体として、女たちの主体的な言動が印象に残る 描き方であるのに反して、男たちの存在感が減退していることを明らかにする。また、右大将の活 躍する巻一を、あえて全体の序章と位置付けることによって、左大臣の関わる女たちが、かつて右 大将と何らかの交渉のあった女たちであることと緊密に結び付くところに、重層的な作品の構造を 見出している。さらには、右大将=女院の造形を通して、従来の〈女の物語〉が辿り着いた、男と の関係に苦悩する女の物語の、その先を望み見ようとしている、と説く。

以上のように、本論文は、難解な本文を有する『在明の別』を丹念に読み解きながら、人物造型 の特徴や先行文学とのかかわりについて論じたものであり、従前の研究を推し進めた所も多く、今 後の発展が期待される。よって、本調査委員会は、本論文の提出者が博士(文学)の学位を授与さ れるに十分な能力を有することを認めるものである。

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