密 教 文 化
い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性
新霊性文化 の底流
島
薗
進
一、 「ス ピ リ チ ュ ア ル 」 の 流 行 と新 霊 性 文 化 「ス ピ リチ ュ アル ・カ ウ ン セ ラ ー」 と 自 らを位 置 づ け る江 原 啓 之 氏 が 登 場 す る テ レ ビ番 組 「オ ー ラの 泉 」 や 「天 国 か らの手 紙 」 が 高 い視 聴 率 を集 あ て い る。 テ レ ビ出 演 以 前 に 同氏 の 著 書 が ヒ ッ トして い た。 「江 原 啓 之 公 式 サ イ ト」 に よ る と、2001年 刊 行 の 『幸 運 を 引 き よせ る ス ピ リチ ュ ア ル ・ ブ ック』 が70万 部 を超 え るベ ス トセ ラーで 、一 躍 人 気 作 家 とな った と い う。 そ の後 、 「江 原 啓 之 ス ピ リチ ュ ァル 講 座 」 の 他 、 「癒 しの エ ン タ テ イ ンメ ン ト」 と して 「江 原 啓 之 ス ピ リチ ュア ル ・ トー ク」、 「ス ピ リチ ュ アル ・ア ー テ ィス ト」 活 動 と して 「江 原 啓 之 ス ピ リチ ュ アル ・ヴ ォ イ ス」 な どの ラ イ ブを 全 国 各 地 で 開 催 して い る。 テ レ ビに登 場 しな い の で さ ほ ど 目立 た な い が、 「科 学 的 ス ピ リチ ュ ア ル 人生 論 」 を 掲 げ、 著 述 や 講 演 で 静 か な ブ ー ムを 続 けて い る福 島 大 学 経 営 学 類 教 授 の 飯 田 史 彦 氏 も注 目す べ き存 在 だ。2007年5月 現 在 の ウ ェ ブサ イ ト 「飯 田史 彦 研 究 室 へ よ う こそ!」 で は、 飯 田氏 は150万 部 を売 り上 げ7力 国 語 に翻 訳 され た 「生 きが い論 」 シ リー ズの 著者 と して 自己紹 介 して い る。 中 で も 『生 きが い の 創造 』 は96年 に 初版 が刊 行 され、 す で に99年 の文 庫 本 化 の段 階 で40万 部 が売 れ た とい い、2006年9月 の 「決 定 版 」 で は 「わ が 国 に ス ピ リチ ュ ア ル ・ブー ム を 呼 ん だ50万 部 の ベ ス トセ ラー」 と カバ ー に 記 され て い る。 1996年 と いえ ば オ ウ ム事 件 の直 後 の 時 期 で あ り、 「新 新 宗 教 」 の 諸 団 体 が 批 判 を浴 び、 そ れ ま で さ か ん だ った 「精 神 世 界 」 や 「霊 性 」 ブ ー ム に やや か げ りが 見 え て い た。 新 新 宗 教 の代 表 的 教 団 で あ る オ ウム真 理 教 は精 神 世 界 ブー ム と大 い に関 係 が あ る と見 られ て お り、 若 者 を オ ウ ム真 理 教 に導 い た よ うな情 報 を提 供 す る こ と は、 テ レ ビや 新 聞 、 あ る い は 出版 物 に お い て も は ば か られ るよ うな雰 囲気 が あ った 。 当 時 は マ ス コ ミ関 係 者 や 出版 関 係 者 の 間 に、 「精 神 世 界 」 を 誇 大 に宣 伝 して 視 聴 者 や 読 者 を獲 得 す る こ と を慎 も う とす る心 意 が 働 い て い た と思 わ れ る。 と こ ろが 、 そ の同 じ時 期 に 『生 きが い の創 造 』 が売 れ 始 め て い た と い う の は興 味 深 い こ とだ。従 来 の 「精 神 世 界」 の ブ ーム か ら新 た に 「ス ピ リチ ュ ァ ル 」 ブ ー ム へ の シ フ トが 静 か に生 じ始 め て い た と い って よ い だ ろ う。 「精 神 世 界 」 と い う言 葉 が 使 わ れ 出 した の は1970年 代 の末 の こ と だ が、 そ れ か ら1995年 ま で 「精 神 世 界」 は順 調 に人 気 を よ ん で い た。 オ ウム事 件 以 後 は、 それ に か わ って、 そ の後 「ス ピ リチ ュ ア ル」 とか 「ス ピ リチ ュ ア リ テ ィ」 と よ ば れ る もの に期 待 が か け られ る よ う に な り、 現 在 に至 って い る と言 え る。 英 語 の 「spiritual」を 日本 語 に 直 す と 「精 神 」 や 「霊 」 とな る。 だ か ら、 「精 神 世 界 」 と 「ス ピ リチ ュ ア ル」 の両 者 は大 い に 連 続 して い る。 オ ウ ム事 件 を 経 る こ と に よ って、 一時 は あ れ ほ ど危 ぶ まれ たか に思 え た超 常 現 象 ブ ー ムや霊 界 もの が 、 これ ほ ど あ っ さ り と復 権 し、 流 行 現 象 と して 商 業 的 に利 用 され るの は、 日本 人 の忘 れ や す さ と関 わ りが あ るだ ろ う。 私 は1996年 に 『精 神 世 界 の ゆ くえ 』 と い う本 を刊 行 し、 「精 神 世 界 」 が 単 に一 時 的 な流 行 現 象 な の で は な く、 大 き な文 明 史 的 変 化 を反 映 した 現 象 だ と論 じた 。 欧 米 で は 「ニ ュ ー エ イ ジ」 とか 「エ ソ テ リ ック」 な ど とよ ば れ る こ とが 多 い現 象 と密 接 に関 連 して お り、 グ ロ ーバ ル な運 動 、 あ るい は 文 化 と見 た方 が よ い。 そ こで 、 私 は これ らを新 霊 性 運 動 とか 、 新 霊 性 文 化 と総 称 して い る。 「ニ ュ ー ・ス ピ リチ ュ ア リテ ィ」 と言 え ば 、 世 界 の多 く の地 域 で 理 解 が 得 られ る と思 う。 「霊 性 」(spirituality)と は超 越 的 ・神 秘 的 な体 験 に親 しん だ り、 神 仏 や 高 次 の心 的 次 元 に 意 識 を 向 け よ う とす る個 人 の 特 性 を 指 す。 宗 教(reli-い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性-新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 gion)と い う と集 団 や シス テ ムの 方 か ら客 観 的 に見 る語 感 に な る が、 霊 性 と い うと価 値 あ る個 人 の事 柄 と して 主 体 的 に見 る姿 勢 とっ な が る。 「霊 性 」 の 語 はか っ て は伝 統 宗 教 の 中 で の個 人 的 な体 験 や 徳 性 を 指 す 用 語 と して 、 「宗 教 」 と不 可 分 の もの と して用 い られ て きた。 と こ ろが 現 代 で は、 自 らの こ とを 「宗 教 的 で は な いが 、 ス ピ リチ ュ アル だ」 と考 え る人 が増 大 して い る。1970年 代 以 降 、 先 進 国 や 大 都 市 を 中心 に この よ うな意 味 で の霊 性 に 強 い 関心 が あ る とい う人 々 が 目立 っ よ うに な っ た。 瞑想 、 ボ デ ィ ワー ク、 気 、 癒 し、 心 理 療 法、 臨死 体 験 、 輪 廻 転 生 、 神 秘 思 想 な ど に関 心 を もち、 情 報 の学 習 ・交 換 や ゆ るや か な ネ ッ トワ ー クで 支 え合 う。70年 代 頃 ま で は若 者 の運 動 と見 な さ れ が ち だ った が 、 や が て全 世 代 に ま たが る運 動 、 ま た は文 化 現 象 と して見 なせ る よ うな広 が り を もっ よ う に な っ た。 た とえ ば 、 アル コ ール 中 毒 者 の ア ル コ ホ リ ック ス ・ア ノ ニ マ ス の よ うに 「ハ イ ヤ ーパ ワ ー」(「神 」 とよ ば な い)の 力 に よ る 自 己回 復 を 目指 す セル プヘ ル プ運 動 も、 これ に含 め る こ とが で き る。 「ニ ュ ー エ イ ジ」 や 「精 神 世 界 」 の語 は 限 られ た文 化 の背 景 を 担 って お り、 限 定 され た範 囲 の現 象 の み を指 す用 語 あ る か ら、 通 文化 的 な学 術 用語 と して 、 ま た 多 様 な要 素 を包 含 した広 い 現 象 を 指 す 用 語 と して 、 新 霊 性 運 動(new spirituality move-ments)、 新 霊 性 文 化(new spirituality culture)ど よぶ 方 が よ い だ ろ う。
この語 は、 一 方 で 、 新 宗 教 運 動(new religious movements)と 対 比 しよ う とす る も ので あ る と と もに、 か ね て よ りあ った さ ま ざ ま な 霊 性 運 動 が新 た に大 衆 的 な規 模 を も って 大 き く発 展 した と い う意 味 を も含 ん で い る。 二 、 新 霊 性 文 化 の 諸 特 徴 新 霊 性 運 動-文 化 の 当 事 者 の多 く は、 自 らが 世 界 を変 革 し、 人 類 を 進 化 させ て い く新 しい潮 流 に参 加 して い る と考 え て い る。 そ の よ うに 前 途 に大 きな 目標 を掲 げ、 人 々 の熱 意 を か き立 て て 行 動 しよ う と して い る と い う点
で は、 この現 象 は 「運 動 」 とよ べ るよ うな 特 徴 を も って い る。 しか し、 他 方 、 参 加 者 の 中 に は共 同行 動 を行 お う と しな い者 が む しろ多 い。 そ う した 人 々 はそ れ ぞ れ 「自分 が変 わ る」 こ とに主 た る関 心 が あ り、 他 者 と行 動 を 分 け持 ち、 仲 間 と他 者 に対 して責 任 を と る とい う立 場 を 引 き受 け る こ と に そ れ ほ ど熱 心 で は な い。 そ のか わ りに、 個 々人 の意 識 の 変 容 の 集 積 が 、 人 類 全 体 の意 識 の 変 革 に 自動 的 にっ な が って い く とい う考 え が しば しば 見 ら れ る。 こ の よ う に個 人 主 義 的 で 共 同 行 動 が 乏 しい とい う点 で は、 「運 動 」 と い うよ りは消 費 主 義 的 な 「文 化 」 の 新 しい形 態 と見 な した方 が適 切 で あ る。 この よ うに この現 象 は、 本 来 的 に 「運 動 」 と 「文 化 」 の両 面 を も って い るの で 、 「新 霊 性 運 動 」 「新 霊 性 文 化 」 「新 霊 性 運 動 一文 化 」 な ど とよ び う るが、 この 稿 で は 「新 霊 性 文 化 」 とよ ぶ こ と に した い。 で は、 新 霊 性 文 化 は ど の よ うな観 念 や実 践 に よ って 特 徴 づ け られ る だ ろ うか。 ま ず 、 新 霊 性 文 化 の当 事 者 は 自 らが、 伝 統 的 な 宗 教 と近 代 科 学 や合 理 主 義 との双 方 の 欠 点 を 克 服 した新 しい世 界 観 、 あ る い は新 しい運 動 や文 化 に参 与 して い る と 自覚 して い る。 現 代 の支 配 的 な 文 化 が 伝 統 的 な宗 教 や 近 代 科 学 に よ って形 成 され た もの で あ り、 そ れが 困 難 な 行 き詰 ま りを 抱 え て い る と考 え、 そ れ らに か わ る代 替 的 な生 の あ り方 を展 望 しよ う とす る。 これ は 「近 代 以 後 」 へ の転 換 とい う、 現 代 世 界 に広 く行 き渡 って い る文 明 史 的 な 推 移 の意 識 の特 殊 な現 れ と見 る こ とが で き る。 もち ろ ん 自 らの 考 え 方 の源 流 が 遠 い過 去 に見 い だ さ れ る と考 え て い る人 た ち もい る。 しか し、 そ の場 合 で も、 近 代 合 理 主 義 の時 代 を経 た 後 に古 い ものが 新 た に意 味 を見 い だ さ れ た とい う歴 史 的 変 化 の観 念 が重 要 な 役 割 を 果 た して い る。 で は、 そ の変 化 は どの よ う に して 起 こ るか とい う と、 まず は個 々人 が そ れ ぞ れ に 霊 性 的(霊 的 ・精 神 的)、 意 識 的 、 心 理 的 、 あ る い は 身 体 的 な変 化 を体 験 す る こ とに よ って だ と考 え る。 新 霊 性 文 化 は この意 味 で は、 「自 己変 容 」 を主 題 とす る運 動 ・文 化 で あ る。 自 己 の外 部 の 神 々 や 霊 的 存 在 、 大 い な る 自己(Higher Self)や 大 霊(Oversoul)、 気 や 宇 宙 的 エ ネ ル ギ ー、 異 星 人 や宇 宙 意 識 な ど に 関心 が払 わ れ るが 、 そ れ と と もに 、 い や そ れ 以 上 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性-新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 に 、 個 々 人 の 魂 や 心 や 意 識 や 身 体 に体 験 され る変 化 が 重 要 と され る。 強 度 の変 容 体 験 と して、 変 性 意 識 状 態 へ の 関 心 も高 い 。 そ う した 変 化 を 体 験 す る た め に、 さま ざ ま な 実 践 が 行 わ れ る。 瞑想 、 呼 吸 法、 ビジ ュ ア ラ イ ゼ イ シ ョ ン、 ボ デ ィ ワー クな ど で あ る。 これ らは ネ イ テ ィ ブ ・ア メ リカ ンや 世 界 の部 族 宗 教 ・民 俗 宗 教 の 中 の シ ャー マ ニ ズ ム で、 あ る い は イ ン ドや 中 国 や 日本 の 宗教 的伝 統 ・神 秘主 義 的伝 統 の なか で 培 わ れ た もの を応用 した り、 新 しい心 理 学 や 心 理 療 法(セ ラ ピー)の 知 識 を用 い て考 案 さ れ た もの で あ る。 個 々 人 の 変 容 の体 験 は特 殊 な霊 的 体 験 で もあ り うるが 、 よ り 日常 的 な軽 度 の 体 験 で もあ り う る。 た とえ ば、 病 院 の医 師 に よ って 勧 め られ る健 康 法 と は異 な る民 間 健 康 法 や 心 理 療 法 の なか に は、 新 霊 性 文 化 の そ れ に含 ま れ るよ うな もの が 少 な くな い。 た とえ ば、 ヨー ガや 気 功 を学 び、 実 践 して い る人 の なか に は、単 に健 康 の ため にの み そ れ を行 って い る人 もい る。 ま た、 ユ ン グ心 理 学 に よ るセ ラ ピ ーを 、 単 に神 経 症 の 治 療 の 手 段 と して受 け入 れ て い る人 もい る。 他 方 、 そ う した 実 践 や 考 え 方 の なか に何 らか の深 い霊 性 的 ・思 想 的意 味 を見 い だ して い る人 々 もお り、 そ の 両極 の 間 に、 さ ま ざ ま な色 合 い の人 々 が い るだ ろ う。 これ らの バ ラ エ テ ィ ー は、 新 霊 性 文 化 の影 響 を受 け て い る濃 度 の ち が い に よ る もの と見 る こ とが で き る。 同 じよ うな こ と は、 現 代 の娯 楽 文 化 に っ い て もい え る。 映 画 や ビデ オ、 漫 画 やSF、 コ ン ピュ ー ター ゲ ー ム な ど の な か に は、 新 霊 性 文 化 的 な主 題 が ち りばめ られ て い る こ とが 少 な くな い。 オ カル ト雑 誌 や 占い雑 誌 、 ニ ュ ー エ イ ジ音 楽 な ど も、 新 霊 性 文 化 と多 くを共 有 して い る。 これ ら は新 霊 性 文 化 そ の もの で は な い が 、 そ の いわ ば裾 野 を形 成 して お り、 人 々 が新 霊 性 文 化 に入 って い く素地 を 養 う機 能 を果 た して い る。 カ トリ ッ ク社 会 に お いて 聖 者 崇 拝 を 中心 と した 民 俗 文 化 が 教 会 の キ リス ト教 の基 盤 を形 成 して い た よ う に、 現 代 の 大 衆 健 康 文 化 ・セ ラ ピー文 化 や 呪 術 一宗 教 的大 衆 文 化 は 、 新 霊 性 文 化 の基 盤 を形 成 して い る と見 る こ とが で き る。 この現 象 は、 現 代 世 界 の グ ロ ーバ ル 化 の 動 き と密 接 に絡 み合 つて 発 展 し
て きた。 と くに メ デ ィア の発 達 に よ る新 しい コ ミュ ニ ケ ー シ ョンの あ り方 と深 い 関 わ りが あ る。 新 霊 性 文 化 で は、 関 与 者 は集 団 生 活 や人 と人 との対 面 的 接 触 を通 して で は な く、 各 自の 独立 した生 活 空 間 か ら書 物 、 映像 、 メ デ ィア を介 した音(録 音 、放 送 、 電 話)な どを 通 して 、 必 要 な情 報 に接 す る こ とが 多 い。 集 会 、 講 座 、 ワー ク シ ョ ップ な どへ の 参 加 が 求 め られ る場 合 も、 集 団 で の実 践 よ りは個 々人 の実 践 の方 に力 点 が あ る。 知 識 や 実 践 の 提 供 者 と して 生 計 を得 て い る少 数 者 は別 と して、 多 くの参 加 者 は組 織 や 教 団(教 会)に 所 属 して い る と い う よ り、 個 々人 で オ ー デ ィエ ンス や ク ラ イ エ ン トと して情 報 に接 す る と い う姿 勢 が 強 い。 そ こで 当事 者 た ち は、 この 文 化 運 動 が 「ゆ るや か な ネ ッ トワー ク」 か らな る もの と と らえ るの を常 と す る。 この よ う に メ デ ィア を介 して グ ローバ ル に共 有 され る情 報 や文 化 が急 速 に増 大 して い る。 もち ろん それ ぞれ の国 民 文 化 や地 域 文 化 は強 固 に維 持 さ れ て い るの だ が 、 それ らが グ ロ ーバ ル な規 模 で混 じり合 って い る こ とが多 くな って い る。 あ る種 の 文 化 や 情 報 は、 短 い時 間 の 間 に 国境 や 海 を越 え て 広 が って い く。 新 霊 性 文 化 はそ の よ うな 新 しい グ ロー バ ル な情 報 や 文 化 の 一 部 を なす もの と と らえ る こ とが で き る。 グ ロ ーバ ル な情 報 や 文 化 と い っ て も、 そ の発 信 源 と受 容 地 域 とは 区別 で き る もの が 多 い。 新 霊 性 文化 の 場 合 、 発 信 源 と して は ア メ リカ合 衆 国 が きわ め て 重 要 で あ る こ とは い う まで もな い 。 しか し、 ヨー ロ ッパ や 日本 や イ ン ドもそ れ な りに この種 の文 化 や 情 報 を生 み 出 し、 送 り出 して い る。 今 後 は 中 国 な ど も大 き な発 信 源 に成 長 して くるだ ろ う。 そ の意 味 で は、 新 霊 性文 化 は グ ロー バ ル で あ る と と もに、 多 元 的 多 中心 的 な 現 象 と いえ るだ ろ う。 こ の運 動 が 個 人 主 義 的 で あ る こ と と、 グ ロ ーバ ル で 多 元 的 、 多 中 心 的 で あ る こ と に は、 深 い 関 わ りが あ る。 少 数 の リー ダ ー や運 営 関 与 者 は別 と し て、 多 くの 個 々人 は グ ロー バ ル な広 が りを もっ さ ま ざ ま な情 報 や 文 化 資 源 と多 面 的 に つ なが りあ って い る の で あ って 、 一 っ の言 説 や教 義 の 体 系 、 儀 礼、 共 同体 な ど と排 他 的 に関 係 を取 り結 ん で い るの で は な い。 これ は伝 統 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性-新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 的 な宗 教 が 、 一 方 で体 系 化 され た言 説 を 維持 す る聖 職 者 や 知識 人 の集 団 に、 他 方 で 一般 信 徒 の共 同 体 に よ って 支 え られて い た の と異 な って い る。 当事 者 が この 運 動 一文 化 は 宗 教 で は な い と い うの に一 定 の 妥 当 性 が あ るの は、 この よ うな文 化 伝 承 の社 会 的構 成 の あ り方 に よ って い る。 もち ろ ん宗 教 の定 義 を広 げ れ ば、 この 現 象 を 宗 教 と よぶ こ とが で き る の は い うま で もな い。 しか し、 当事 者 が 自 らの 参 与 して い る文 化 運 動 を 「宗 教 」 で はな い何 か と と らえ て い るの は、 ま った く根拠 の な い ことで は な い。 多 くの 当 事 者 が 自 らの ア イ デ ンテ ィテ ィに 深 く関 わ る営 み を 「宗 教 」 で は な い 「霊 性 」 に よ って と らえ て い る こ と を考 慮 して、 エ ミッ ク(emic)な 要 素 を 取 り入 れ っ っ 、 新 霊 性 文 化 の概 念 で よ ぶ の は、 この点 か ら も妥 当 な こ と と考 え る。 さ しあ た り、 この 文 化 運 動 は宗 教 の私 事 化 、 あ る い は公 的領 域 か らの 宗 教 の撤 退 の 流 れ と合 致 す る現 象 の よ うに見 え る。 しか しよ り子 細 に 見 て い く と、 そ う と もい え ず 、新 霊 性 文 化 と公 的 、 制 度 的 領 域 の 間 に は複 雑 な 関 係 が あ る こ とが わ か る。 次 節 で は、 現 代 の公 的 領 域 お け る宗 教 的 な もの の 位 置 と い う観 点 か ら現代 の 宗 教 状 況 を 見 直 し、 そ の文 脈 で 新 霊 性 文 化 が ど の よ うに位 置 づ け られ る か を考 え て い くこ と に した い。 三 、 諸 制 度 領 域 に お け る 再 聖 化 制 度 化 され た宗 教 の変 容 と い う観 点 、 ま た 個 々 人 の 宗教 的 コ ミ ッ トメ ン トとい う観 点 に立 っ と、 こ の一 世 紀 か二 世 紀 ほ どの歴 史 の な か で 、 伝 統 宗 教 の影 響 力 後 退(世 俗 化)と と もに、 伝 統 宗教 か ら新 宗教 へ 、 新 宗 教 か ら 新 霊 性 文 化 へ と い う流 れ が 見 え て くる。 そ こで は共 同体 的 な 宗 教 か らの離 脱 と と もに 、 共 同 体 的 な 宗 教 か らよ り個 人 参 加 的 な 宗教 へ の 変 化 が 見 て 取 れ る。 この 流 れ だ けを 見 る と、 世 俗 化 や宗 教 の私 事 化 の傾 向 だ けが 目立 っ よ うに 見 え る。 しか し、 そ れ と並 ん で、 も う一 っ の過 程 の こ と も考 え て み な くて は な らな い。 それ は、 世 俗 的 な原 理 に よ って成 り立 って い る と見 ら
れ た諸 制 度 が、 宗教 的 な 要 素 を 取 り込 む よ う にな る とい う流 れ で あ る。 これ は近 代 的 な 自由主 義 や合 理 主義 の諸前 提 が 維持 しえ な くな り、 か わ っ て 宗 教 的 な前 提 を含 ん だ観 念 や 実 践 が制 度 内 に取 り込 ま れ るよ う に な る こ とに よ って 起 こ る。 そ の場 合 の宗 教 的 な もの は、 伝 統 宗 教 や新 霊 性 文 化 か ら供 給 され る も のが 多 い。 日本 の伝 統 宗 教 の なか で は、 教 団 的 な 宗 教 以 上 に神 道 的 な ナ シ ョナ リズ ムか ら供 給 され る ものが 重 要 で あ る。 これ は い っ たん は世 俗 化 が 進 ん だ 社 会 の各 領 域 の再 聖 化 とか 、 世 俗 化 が あ ま り進 み そ う に な い社 会 領 域 や 問 題 領 域 の 現 象 と と らえ られ るだ ろ う。主 に 日本 の 場 合 を 念 頭 に置 きな が ら、 い くっ か の 領域 を順 に見 て い くこ と に しよ う。 〈医 療 〉 か っ て 近 代 化 の途 上 で は、 科 学 的 合理 性 に 高 い信 頼 が 寄 せ られ た。 か ら だ を部 分 に還 元 して と らえ、 諸 器 官 の機 能 を と らえ る こ と に力 を注 ぎ、 機 器 を用 い た 巧 み な技 術 で 機 能 回復 を 図 り、 健 康 の維 持 ・増 進 を な し とげ る こと が で き る。 近 代 医 療 は この よ うな科 学 技 術 の威 力 を 自明 の 前 提 と し、 医 学 と病 院 を柱 とす る治 療 制 度 の基 盤 を作 り上 げ、 大 きな成 果 を あ げ て き た。 病 院 は世 俗 主 義 の 王 国 の 一 っ だ った。 しか し、 今 や そ の近 代 医 療 に対 す る不 満 が 強 ま って い る。 近 代 医 学 は人 間 を モ ノ と して 扱 って い るの で はな いか。 人 間 を 自然 か ら、 か らだ を 心 か ら切 り離 し、 部 分 に切 り分 け、 冷 た い体 系 知 によ って 支 配 しよ う と して い る。 精 神 医 療 の 現 場 で さ え、 医 師 と患 者 の人 間 的交 流 は乏 しい。 病 院 で 死 を迎 え る人 や そ の 家 族 に と って、 死 は あ ま りに味 気 な く、 意 味 や 情 緒 を 無 視 して 「処 理 」 され る。 近 代 科 学 の冷 た い合 理 性 を超 え て、 い の ち を育 み、 い とお しむ知 性 や感 性 が 求 め られ て い る。 しか し、 そ の よ うな 温 か い知 性 や 感 性 は霊 性 の次 元 を欠 い て 存 在 し う る もの な の だ ろ うか。 癒 しを もた らす アプ ロ ー チが 求 め られ て い るの だ が、 そ れ は既 成 の 宗 教 集 団 に期 待 され る と と も に、 そ れ 以 上 に組 織 化 され ず に 伝 え られ て き た神 秘 思 想 の伝 統 や アニ ミズ ムの 伝 統 に近 い要 素 を も って い る こ とが 多 い。 伝 統 医 療 や代 替 医 療 は宗 教 や 霊 性 と切 り離 せ な い もの だ っ い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性 -新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 た が 、 今 日の 科 学 的 医 療 は そ う した もの の価 値 を見 直 さ ざ るを え な いだ ろ う。 とす れ ば 、 現 代 医 療 は部 分 的 に再 聖 化 の道 を歩 ん で い く こ とに な る の で はな か ろ うか 。 〈介 護 ・福 祉 ・セ ラ ピー 〉 介 護 や福 祉 を 国 家 に 委 託 す る福 祉 国 家 的 な理 念 の 後 退 が 進 ん で い る。 公 費 で まか なわ れ る介 護 や福 祉 は限 定 され た もの にな らざ る を え な い だ ろ う。 で は、 誰 が どの よ うに して、 介 護 や世 話 を必 要 と して い る人 を助 け る の か。 そ して そ れ は ど の よ うな動 機 に よ って だ ろ うか。 それ が 家 族 で あ る に しろ、 ボ ラ ンテ ィア で あ るに せ よ、 「愛 」 や 「務 め」 の 意 識 を 支 え る の は、 功 利 的 な動 機 だ けで は な い。 「自分 の た め」 に な す の だ と言 わ れ る と して も、 自分 を超 え た な に もの か 、 た とえ ば 「気 」 や 「宇 宙 の エ ネ ル ギ ー 」 や 「い の ち の源 泉 」 との 「っ なが り」 が 感 じ取 られ て い る こ と は な い だ ろ うか 。 「心 の ケ ア」 が 叫 ば れ るの は、 他 者 同 士 の 「癒 し」 を 願 う交 わ りが 求 め られ て い る か らだ が、 そ れ は 自己 を超 え た も の の 働 き にふ れ なが ら 「自 己実 現 」 を図 る こと と理 解 され る こ とが 多 い。 トラ ンス パ ー ソナ ル 心 理 学 と は そ の よ うな心 の ケ アを 提 供 しよ う とす る もの だ。 か っ て の 日本 で 当 然 の こ との よ う に 「両 親 や 家 族 の面 倒 を 見 る こ と」 が 行 わ れ て いた とす れ ば、 それ は 「先 祖 」 や イ エ の霊 との 「っ な が り」 が感 じ取 られ 、 「親 孝 行 」 が 聖 な る義 務 と信 じ られ て い た か らだ った。 確 か に あ った は ず の 「世 俗 道 徳 」 が 見 え に く くな った 時 代 、 で は ど の よ う な 動 機 づ け が な さ れ るの だ ろ うか。 そ こ に宗 教 的 な動 機 づ けが 入 り込 ん で く る の は、 当然 の こ とな の か も しれ な い。 〈教 育 〉 戦後 の 日本 の公 教 育 は教 育 勅 語 を廃 棄 し、 国 家神 道 を排 除 した こと に よ っ て 、 世 俗 主 義 を そ の基 盤 と す る こ とに な った。 しか し、 そ の 世 俗 主 義 に よ る教 育 が満 足 の い くもの で あ るか ど うか、 くり返 し論 議 が 起 こ され た き た。 そ して そ の声 は ます ます 高 ま らざ る を え な い だ ろ う。 道 徳 教 育 は い っ た い何 を基 盤 と して な さ れ るべ き な のか。 特 定 の価 値 体
系 を 教 え込 む こ と は好 ま し くな い と して も、 断 片 的 な 知 識 や 教 訓 の 寄 せ 集 め を 教 え るの で は足 りな い の で は な い か。 道 徳 の 基 盤 と して 歴 史 上 、 き わ め て大 きな役 割 を 果 た して きた宗 教 にっ いて 教 え る必 要 は な いの だ ろ うか 。 諸 外 国 を 見 れ ば 、 公 立 学 校 で 宗 教 にっ い て教 え て い る例 が少 な くな い 。 戦 後 の 日本 が手 本 と して きた ア メ リカ合 衆 国 や フ ラ ンス な ど で も、 宗教 教 育 を 求 め る声 は高 ま って い る。 ア メ リカ合 衆 国 な ど で は、 公 立 学 校 で そ れ が 認 め られ な い と い うの な ら、 む しろ宗 教 教 育 を行 う私 立 学 校 に子 弟 を送 ろ う と い う声 も広 が って い る。 ま た 、 いわ ゆ る宗 教 教 育 とは異 な るが 、知 識 詰 め 込 み に陥 りが ち な現 在 の学 校 教 育 と異 な る全 人 的 な教 育 を行 お うと い う試 み も 目立 って きて い る。 シュ タイ ナ ー教 育 や ホ リス テ ィ ック教 育 や生 と死 の教 育 な ど と よ ばれ る の は、 そ う した もの の 例 で あ る。 それ らは何 ほ どか 「超 越 」 的 な もの の 意 識 に 支 え られ て い る。 こ こ ま で あ げ て きた社 会 の諸 領 域 は公 的 な機 関 に担 わ れ て い る こ とが 多 く、 私 営 で あ る場 合 も公 的 な サ ポ ー トが 求 め られ る こと が多 い。 そ れ ら諸 領 域 で 再 聖 化 と いわ な い ま で も、 聖 な る もの や 超 越 的 な もの が避 けが た い もの と して容 認 され る方 向 性 が確 認 で き る。 医療 、 介 護 、福 祉 、 セ ラ ピー、 教 育 を通 して 公 共 的 な制 度 の なか で、 宗 教 的 な言 説 や 語 彙 や 動 機 が入 り込 も う と して きて お り、 す で に入 り込 ん で い る場 合 に は、 後 退 す る様 子 が 見 え ず 、 む しろ さ らに広 が って い こ うとす る兆 候 が あ る。 四 、 「い の ち の 危 機 」 と 新 霊 性 文 化 以 上 に あ げ た社 会 領 域 、 あ るい は問 題 領 域 は、 いず れ も宗 教 的 な もの が 公 共 空 間 に関 与 して くる領 域 で あ る。 グ ロ ーバ ル化 の な か で、 諸 外 国 と の 対 比 の意 識 が 強 ま り 自国 の制 度 の特 徴 が 自覚 され る と と もに、 国 内 の 合 意 と思 わ れ て い た もの の 基 盤 が 疑 わ れ、 世 論 の 多 元 化 や 葛 藤 が 強 ま る時 代 に 入 って い る。 か っ て 国 内 に存 在 す る合 意 と思 わ れ て い た もの は、 国民 国 家 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性-新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 や 世 俗 主 義 の 自 明性 に依 拠 して い る要 素 が大 きか った。 政 治 的 立 場 を超 え て 分 け もたれ て い る世 俗 的 ナ シ ョナ リズ ムが 、 対 立 す る宗 教 的 な 主 張 や 論 点 を 目立 た ぬ もの に して いた わ けで あ る。 日本 の場 合 、 憲 法 の 信 教 の 自由、 政 教 分 離 の規 定 が 堅 固 な基 礎 を 提 供 す る もの と信 じ られ て き た。 「宗 教 」 が あ る境 界 の 枠 内 に収 ま る もの で 、 公 共 空 間 に はみ 出 して くる こ と はな い とい う意 識 が 支 配 的 だ っ たの で あ る。 と こ ろが 、1980年 代 以 降 、 この 境 界 の 感 覚 が あ や し くな って きて い る。 世 俗 的 な 原 理 で 押 して い け る はず と思 わ れ て い た 多 くの 領 域 で 、 宗 教 的 な もの の 関与 の 不 可避 性 が 自覚 され るよ うに な って きた。 す で に関 与 して い た もの が 自覚 され るよ うに な った と同 時 に、 絶 対 に 関与 を 避 け るべ きだ と い う意 識 が弱 ま って きた。 制 度 的 な次 元 に お い て再 聖 化 の 可 能 性 、 少 な く と もそれ が争 点 と して浮 上 す る可 能 性 が 広 が つて きて い る と いえ るだ ろ う。 新 た な霊 性 の興 隆 は個 人 化 した状 況 に お い て形 成 さ れ て お り、 か つ て の 集 団 的 宗 教 に と ってか わ る もの と見 る こ と もで きる。 これ は 「意 識 の進 化 」 と い っ た展 望 を も って人 類 社 会 全 体 に及 ぶ 広 く緩 やか な ネ ッ トワ ー ク を展 望 す る よ うな、 精 神 世 界 や ニ ュ ー エ イ ジの ス ピ リチ ュ ア リテ ィに お いて 顕 著 で あ る。 しか し、 こ こ ま で に取 り上 げて き た、 医 療 や ケ ア や教 育 に関 わ るス ピ リチ ュ ア リテ ィの興 隆 や 、 セ ル フヘ ル プ(自 助)的 な ネ ッ トワ ー ク の拡 充 にっ い て も ほ ぼ同 様 の こ とが いえ るだ ろ う。 か っ て 宗教 的 文 化 が 提 供 して いた 死生 の ケ アや 喪 の 仕 事 や 悲 しみ の 癒 し の文 化 装 置 が 欠 落 し、 そ れ にか わ って ホス ピ スや ビハ ー ラや 「死 生 学 」 や 「生 と死 を考 え る会 」 の よ う な企 て が起 こ って くる。 ま た 、 か つ て は 宗 教 的 な背 景 を もち価 値 観 の シ ステ ムに よ って納 得 さ れ 、一一定 の 充 足 感 を 与 え る役 割 と して受 容 され て い た女 性 で あ る こ とや病 者 で あ る こ とや 障 害者 で あ る こ と が、 今 で は差 別 に よ る抑 圧 や厳 しい孤 立 と して経 験 され る よ う に な り、 そ こか ら精 神 的 に癒 さ れ な が ら立 ち上 が って い くた め に セ ル プヘ ル プ の 共 同 性 が 形 成 さ れ て い る。 こ う した現 象 は、 精 神 世 界 や ニ ュ ー エ イ ジの一 部 に見 られ るよ うな千 年
王 国 的 ・ユ ー ト ピア的 な ス ピ リチ ュ ア リテ ィと は や や異 な る次 元 に位 置 し て い る。 人 々 の生 活 の 基 礎 的 な ニ ー ズ に応 え よ う と して、 ス ピ リチ ュア リ テ ィが っ む ぎ出 され て い る。新 霊 性 文化 が 登 場 して きた1970年 代 か ら80年 代 に か けて は、 ユ ー ト ピア的 な ビ ジ ョンが優 勢 で あ り、 支 持 者 も比 較 的 学 歴 が 高 い若 者 中 心 だ った。 そ の後 、 新 霊 性 文 化 は老 若 男 女 に、 ま た、 あ ら ゆ る社 会 層 に浸 透 して い った よ うに思 わ れ る。 この こ と は、 新 霊 性 文 化 を 「い の ち の危 機 」 に 対 す る人 々 の反 応 と見 な す こ と に よ って 、 よ りよ く理 解 で き る だ ろ う。 現 代 社 会 で は 「い の ちの 危 機 」 の意 識 が 深 ま って お り、 近 代 合 理 主 義 で は そ れ に 対 処 しきれ な い と感 じられ て お り、 そ の こ とが 人 々 を 宗 教 や 霊 性 へ と 引 き寄 せ て い る と考 え ら れ るの だ。 現 代 人 の平 均 寿 命 は 長 くな った。 日本 の よ うな国 で は戦 争 で い の ち を 落 とす心 配 をす る人 は ほ とん ど い な い。 感 染 症 の 流 行 も以 前 ほ ど恐 ろ しい も の で は な い。 結 核 や コ レ ラを恐 れ る必 要 はあ ま り な い。 破 壊 力 の大 きい新 型 イ ン フル エ ンザ は脅 威 だが 、 ワ ク チ ンや タ ミフ ルで 何 とか な る とい う期 待 もあ る。栄 養 状 態 が よ くな つ た し、整 った 医療 サ ー ビス を受 け られ る。そ の 意 味 で は、現 代 日本 人 は死 の 脅威 か ら遠 ざか っ た と言 え るか も しれ な い。 確 か に事 故 や 災 害 は絶 え な い。 日本 国 民 の多 く は地 震 で い の ち を失 う危 険 は覚 悟 して い る。 日本 が 誇 る技 術 力 の た め か新 幹 線 は比 較 的 安 全 だ が 、 い っ テ ロ に襲 わ れ るか わ か らな い し、 悲 惨 な電 車 の事 故 の ニ ュ ー ス も少 な くな い。 だ が 、 そ れ で も第 二 次 世 界 大 戦 以 前 と比 べ れ ば 、 突 然 、 死 の 脅 威 に見 舞 わ れ る可 能 性 は格 段 に減 った。 そ う い う意 味 で の生 命 の 危 機 は確 か に遠 ざ か った と言 え る だ ろ う。 だ が 、 に もか か わ らず 、生 命 が 脅 か され て い る と感 じる人 は少 な くな い。 「生 命 の危 機 」 が す ぐ近 くに あ る と如 実 に 感 じる。 た とえ ば 、 ホ ー ム レス の 人 々 は度 々襲 撃 を受 け る とい う(生 田 武 志 『「野 宿 者 襲 撃 」 論 』)。少 年 が 何 人 か で襲 う こ とが 多 い。 た ま に報 道 さ れ る こ とが あ る が、 報 道 さ れ な い 例 が た くさ ん あ る と い う。 襲 撃 者 の なか に は社 会 の 屑 を排 除 して清 潔 に い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性-新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 す る こと だ と して襲 撃 を正 当化 して い る者 もい る。 これ に限 らず 、 無 抵 抗 の弱 い立 場 の者 が 陰湿 な攻 撃 や虐 待 に よ って い の ち を落 とす と い う事 件 が 目立 っ。 学 校 で の い じめ に よ る 自殺 、 家 庭 内 の 児 童 虐 待 、 高 齢 者 が 襲 われ る事 件 等 々 で あ る。 襲 う側 もけ つ して 強 い立 場 に い るわ けで は な い。 少 年 が 残 酷 な殺 人 を犯 した例 を詳 し く見 る と、 加 害 者 の 悲 惨 な 内 面 が 浮 か び上 が って くる。 彼 ら自身 、 攻 撃 か ら逃 げ よ う と して 攻 撃 す る側 に回 っ た と思 わ れ る例 も少 な くな い。 ま た、孤 独 に 閉 ざ さ れて 、 誰 か ら もあ るが ま ま に受 け とめ られ て い な い と い う見 放 され 意 識 にっ き動 か され て い た と思 わ れ る例 もあ る。 五 、 「い の ち の 危 機 」 と 宗 教 集 団 2003年7月 、 長 崎 で12歳 の少 年Sが 四 歳 の 幼 児 を 、 誘 拐 して 連 れ て き た 八 階 建 て の駐 車 場 の屋 上 か ら路 上 に投 げ 落 とす とい う事 件 が あ っ た。 防 犯 カ メ ラに映 って い る こ とに気 づ い て動 転 した とい う。 この 子 ど もの 内 面 に っ い て、 評 論 家 の芹 沢 俊 介 は興 味 深 い分 析 を行 って い る(『 家 族 とい う暴 力 』)。少 年Sは 家 庭 で は模 範 的 な子 だ った ら しい。 近 所 の人 の 話 で は、 少 年Sは 会 え ば必 ず 挨 拶 を す る子 だ った。 ま た服 装 が きち ん と して いた 。 そ して 学 校 の成 績 が よか つた。 母 親 に手 を か け さ せ る こ との な い 「い い子 」 だ っ た と い う。 と ころが か って 幼稚 園 に いた と き、 この少 年Sは 手 の っ け られ ない 「困 っ た子 」 だ っ た こ とが あ っ た。 他 の園 児 の玩 具 を横 取 り した り、 人 の 作 った 工 作 物 を ハ サ ミで 切 って 殿 して しま った り、 女 の子 の髪 を切 ろ う と した り した。 注 意 を して も聞 か ず 、 泣 き、 奇 声 を あ げ、 猛 烈 に駄 々 を こね続 けた とい う。 芹 沢 は この 子 は、 親 の い る と き と い な い と きで は ま つた く違 う行 動 を取 る子 だ った の で はな いか と推 測 す る。 こ う した子 は母 親 に対 して 異 様 に配 慮 す る。 母 親 に 見捨 て られ るの で は な いか と い う過 度 の不 安 感 を 抱 い て お り、 そ の不 安 感 は成 長 の ご く初期 に植 え付 け られ た もの で は な い か。
この よ うな二 重 人 格 的 な子 ど も は、 「い い子 」 と 「困 った 子 」 の分 裂 し た 自己像 の 間 で 引 き裂 か れ て お り、 自分 が 何 者 で あ る か わ か らな い とい う 自 己喪 失 状 態 に 陥 って いた の で はな いか と芹 沢 は論 じて い る。 こ う した子 は成 長 の ご く初 期 か ら安 心 して 自分 が 自分 で い られ る場 を もた な か つた の だ と思 わ れ る。 そ の こ と 自体 が あ る種 の虐 待 的状 況 だ。 身 体 的 虐 待 を受 け て い る子 ど もた ち は い っ親 の罵 署 や手 が飛 ん で くるか わ か らな い の で緊 張 状 態 を 強 い られ る。 心 理 的虐 待 を受 けて 自己喪 失 状 態 に あ る子 ど もた ち は、 母 親 の 機 嫌 を いっ も うか が い なが ら、 気 に入 る こ とを し続 けて い な くて は な らな い。 そ もそ も子 ど もが あ るが ま まで そ こ に いて よ い の だ とい う感 覚 を 持 て な い の は、 そ の母 親 自身 が そ う した 感 覚 を も って い な いか らで は な い だ ろ う か。 自 らの存 在 価 値 を 否 定 され るよ うな 経 験 に脅 え て い る の は子 ど もだ け で は な く、 多 くの大 人 が そ うな の で は な い だ ろ うか 。 高 齢 者 は ま す ま す若 い者 た ちの じゃ ま に な らな い か ど うか を気 に す るよ う に な って い る。 重 い 病 気 に な っ た者 や 障 害 者 は、 周 囲 の者 が 自分 た ち の た め に 自分 の した い こ とを犠 牲 に して い る ので は な いか と気 遣 つて い る。 尊 厳 死 にっ いて の議 論 が起 き る と こ ろで は、 高 齢 者 や 障 害 者 は 「い い子 」 で あ る こ と を演 じ続 け る子 ど もた ち と同 じよ う に、 緊 張 状 態 を 余 儀 な くさ れ て い る。 自殺 者 や う っ 病 に苦 しむ人 々 が 感 じて い る こ と と、 心 理 的 虐 待 を受 け て い る子 ど もた ちが 感 じて い る こ と もよ く似 て い るの で は な いだ ろ うか。 現 代 日本 社 会 が 一 見 、 た いへ ん 安 全 で 快 適 で あ る よ うに 見 え な が ら、 「い の ち の 危 機 」 が 蔓 延 して い る と感 じ られ る の は こ う した事 情 に よ る。 自分 が安 心 して そ こ に いて よ い とい う感 覚 を持 て な い人 た ち が増 え て い る。 子 ど も も若 者 も壮 年 者 も障 害 者 も主 婦 も高 齢 者 もそ うで あ る。 彼 らの す べ てが 直接 、 死 に 脅 か され て い るわ けで は な い。 だ が 恐 るべ き孤 独 に脅 か さ れ て い る。 他 者 との いの ちの っ なが りを感 じ と る こ とが で き な い の だ。 比 喩 的 に述 べ れ ば、 人 々 を 生 命 の 源 泉 にっ な ぐパ イ プ が細 くな って しま って い る。 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性 -新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 これ に対 して、 現 代 社 会 の 悪 や 困 難 を 正 面 か ら受 け と め、 人 類 全 体 に及 ぶ 普 遍 的 な連 帯 の構 築 を よ び か けよ う とす るの は、 あ い か わ らず 集 団 的 規 範 を尊 ぶ 救 済 宗 教 で あ る。 現 代 世 界 を広 く見 渡 せ ば 、排 他 主 義 的 な傾 向 が 強 い キ リス ト教 や イ ス ラム の拡 充 は も っ と も 目立 っ現 象 で あ る。 いわ ゆ る 宗 教 復 興 や 原 理 主 義 の広 ま りの も っ と も見 や す い形 態 が こ こに あ る。 ア メ リカの キ リス ト教 はわ か りや す い例 だ が、1960年 代 以 降 、 か っ て教 会 内 で ヘ ゲ モ ニ ーを 握 って い た リベ ラル派 の勢 力 は後 退 し、 福 音 派 の勢 力 伸 長 が 著 しい。 ア メ リカ の福 音 派 キ リス ト教 徒 は キ リス ト教 を信 じな い世 俗 的 エ リー ト や、 世 俗 的 エ リー トと ど こ まで も妥 協 的 な リベ ラ ル派 が 社 会 か らキ リス ト 教 的 な価 値 を遠 ざ けて しま って い る と考 え 、 社 会 に キ リス ト教 的 な価 値 を 取 り戻 す こ とを 目指 す。 彼 ら は他 宗 教 の 価 値 を認 め ず 、 他 の価 値 を奉 ず る 者 と の対 話 や 協力 を肯 ん ぜ ず 、 内 部 の 団 結 を 重 視 す る。 これ は個 人 化 の傾 向 に対 抗 し、 新 た に集 団 化 の道 を 選 び と ろ う とす る傾 向 と言 え るの だ ろ う か 。 日本 で は原 理 主 義 とい う呼 称 に ぴ った りあ て は ま る現 象 は な いが 、 排 他 主 義 的 で 内 閉 的 な宗 教 集 団 の興 隆 は 目立 って い る。新 興 教 団 に 「カ ル ト」 とい う特 徴 付 けが な され る よ うに な つた の は、 この よ うな 状 況 を 反 映 して い る。1970年 頃 まで に発 展 して きた新 宗 教 教 団 は近 代 的 な価 値 に 比 較 的 親 和 的 で 、 外 部 勢 力 との 連 携 に積 極 的 な場 合 が多 か った。 しか し、1970年 代 以 降 に 発 展が 目立 っ 教 団 の なか に は、 世 俗 社 会 の価 値 観 に正 面 か ら対 決 し よ う と した り、 外 部 勢 力 との 連 携 をか た くな に拒 も うと す る もの が 目立 っ て い る。 内部 の 団 結 を 尊 び、 集 団 外 の人 々 と の間 に壁 を設 け よ う とす る の で あ る。 そ の よ う に内 閉 化 す れ ば、 発 展 が 押 しと ど め られ る のが 従 来 の パ ター ンだ った が 、 現 代 の 宗 教 集 団 は内 閉 性 を保 っ こ と に よ って、 か え って 勢 力 拡 充 の力 を持 っ場 合 が 少 な か らず 見 られ る。 だ が、 そ れ は集 団 エ ゴイ ズ ムの 現 れ と受 け取 られ て も しか たが な い。 こ の よ うに宗 教 集 団 が 内 閉性 、 排 他 性 を 強 め れ ば 強 め る ほ ど、 宗 教 で は な い
「霊 性 」 に 期 待 をか け る心 情 も高 ま って い く。 で は、 「い の ち の 危 機 」 に 向 き合 う新 しい霊 性 は どの よ うな と こ ろ に現 れ て きて い る の だ ろ うか。 六 、 「い の ち の 危 機 」 に 向 き 合 う霊 性 こ こで は、 「い の ち の危 機 」 に 向 き合 う霊 性 と い う観 点 か ら、 新 しい霊 性 の 中 で は特 殊 な例 を取 り上 げ る(拙 著 『ス ピ リチ ュア リテ ィの 興 隆 』)。 1990年 代 に私 が 加 わ っ た共 同調 査 研 究 で イ ン タ ビュ ー に応 じた 、 当 時40代 後 半 の女 性 の 語 りで あ る。 仮 に杉 村 康 子 さん と よ ぼ う。杉 村 さん は関 節 の 病 気 で20代 に航 空 会 社 を 辞 め、 今 は 中高 生 に英 語 と数 学 を教 え て い る重 度 身 体 障 害 者 で あ る。 障 害 者 に な って か らの 杉 村 さん の苦 闘 の一 端 は、 次 の よ うな箇 所 に現 れ て い る。 先 ほ ど か ら、 対 処 と い う言 葉 が頻 繁 にで て き ます ね。 非 常 に 能 動 的 で す よ ね。 「パ ッ シブが 大 嫌 い な ん で す よ。 絶 対 に、 ア ク テ ィ ブ に。 受 け 身 は だ め なの で。」 あ る状 況 に、 ご 自分 が ど う対 処 す る か とい う こ とを お 話 しさ れ る 方 って い うの は少 な い。 「そ れ は二 五 年 間 に培 わ れ た もので。 じわ じわ と私 は病 気 に侵 さ れ て き た ん で す よ。 真 っ先 に、 指 の 感 覚 が マ ヒ して。 髪 洗 う時 、 左 手 の フ ァ ンク シ ョンが ま った く失 わ れ る と、 髪 洗 うこ と一一っ と って も、 右 手 で 洗 わ な くち ゃい けな いん で す よね 。 肩 や られ る と届 か な い わ けで す よ。 そ こで ブ ラ シを使 った り とか。 私 に と って は、 一つ 一 っ が ゲ ー ム に な って くる ん で す よ。 背 中 が洗 え な い。 じ ゃあ、 壁 に タ オ ル を ぶ ら下 げ て お いて 体 を動 かせ ば い い とか。 簡単 な こ とで す よ。 だ か ら、 私 に と って は対 処 って い うの は大 層 な こ とで は な くて 、 単 な るゲ ー ムな ん で す よ。 ど う した らい い ん だ ろ う って と ころ か ら、 発 想 って 出 て き ませ ん? 困 った ら、必 ず、知 恵 って 出 て きます で しょ い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性 -新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 う、 困 ら な か っ た ら、 知 恵 っ て 出 て 来 ま せ ん 。 そ れ だ け の こ と で す 。 「仕 事 が な い。 ど う し よ う」 と 思 う の で は な くて 、 あ あ 神 が 与 え た 休 暇 だ な って 思 え ば い い と。 「長 い休 暇 だ な 」 と か っ て 思 う 。」 身 の 回 り の 一 っ 一 っ の こ と を 自 分 の 力 で な し と げ て い く こ と 、 杉 村 さ ん は そ の こ と に 強 い 生 き が い を 感 じて い る 。 自 由 に で き る こ と を 増 や して い く こ と 、 そ れ を 面 白 が る こ と 杉 村 さ ん に と っ て の 自 己 実 現 ・自 己 解 放 と は 、 そ の よ う な 「自 由 の 拡 張 」 と い っ て よ い だ ろ う。 こ れ な しで は 、 自 分 ら し く生 き て い な い と い う も の が あ る ん じ ゃ な い か な と 思 う ん で す け れ ど 「面 白 が る と い う こ と で し ょ う ね 。 何 で も面 白 が る 。 困 っ た な 、 不 便 だ な と い う 時 に 、 ど う した ら 便 利 に 変 え ら れ る ん だ ろ う っ て 。 苦 し い 時 し か 知 恵 は 出 て こ な い で し ょ う。 貧 乏 か ら う る こ と 、 不 自 由 か ら学 ぶ こ と っ て い っ ぱ い あ る し。 困 っ た っ て 考 え る ま え に 、 ま ず ど う し た ら っ て 考 え る こ と が 素 敵 じ ゃ な い で す か。 へ ル プ っ て 言 う 前 に。 自 分 で ど こ ま で 考 え る か が 、 い い 知 恵 が 浮 か ぶ か 楽 し い じ ゃ な い で す か 。 火 事 場 の 馬 鹿 力 み た い な 知 恵 が 出 る。」 自 分 で や り ぬ く と い う よ う な 「そ ん な 信 念 み た い な 肩 に 力 の 入 つ た も の じ ゃ な く て 。 面 白 が る と い う の は 、 状 況 に ど う対 処 す る の か 、 も っ と 楽 な 方 法 は な い か な と か。 簡 単 に 言 え ば 、 床 に も の こ ぼ した ら、 困 っ た な手 で 拭 け な い し、 あ あ 足 で ふ け ば い い か っ て 、 そ っ か ら で す よ。 発 想 を 転 換 す る こ と 。 お 行 儀 が 悪 い と か 、 考 え て られ ま せ ん も の。 プ ロ セ ス を 楽 しむ と 、 一 つ 学 習 す る で し ょ う、 す る と、 今 度 は こ う して み よ う と か、 傷 か 少 な く て す む 。 モ ッ トー?「 人 に 厳 し く 自分 に 甘 く い つ も ニ コ ニ コ腹 黒 く って 」 言 う ん で す よ。 そ ん な こ と 言 っ た ら 叱 ら れ ま す よ ね 。 で も結 構 や っ て ま す 、 そ れ。」 「自 由 の 拡 張 」 と い う と 、 そ れ は 単 に 能 力 を 拡 大 して い く こ と 、 自 分 の 力 の 増 大 を 目指 し、 力 を 行 使 して 喜 ぶ こ と に す ぎ な い で は な い か と疑 わ れ
るか も しれ な い。 現 代 社 会 はそ の よ う な 「自 由 の拡 張 」 の欲 望 に と りっ か れ 、 科 学 技 術 の肥 大 化 を 産 み 出 して そ の 帰 結 に苦 しん で い るの で は な い か と。 事 実 、 この よ うな 発想 を もっ 杉 村 さん に と って 、 宗 教 的 な もの は ほ と ん ど関 心 外 の こ と の よ うだ 。 「私 は、 神 も仏 も信 じた こ と は な い し、 ど ん な 時 に もお 助 け くだ さ い とい つた こ とは な い の で。 そ れ はち ょ っ と遠 慮 し て お りま す。」 杉 村 さ ん は 現 代 的 な 「いの ち の危 機 」 に直 面 しな が ら 日々 を過 ご して い る と言 え る。杉 村 さん の 話 しぶ りか らは、 死 に 直面 して生 き抜 こ う とす る 真 剣 勝 負 の毎 日 とい う気 配 が伝 わ つて くる。 それ は人 を宗 教 や霊 性 に 導 い て行 って 不 思 議 は な い状 況 と も言 え よ う。 と こ ろが 杉 村 さん の思 想 は 、 さ しあ た り ス ピ リチ ュ ア リテ ィや宗 教 的 な もの に向 か わ な い。 独 立 した 自己 が そ れ ぞ れ に 自 己 自身 の た め の実 際 的 な 目標 を 達 成 して い くこ と が す べ て の価 値 の 源 泉 と して 語 られ て い る よ うに見 え る。 しか し、 で は 「自己 自身 の 目標 」 とか 「自分 の た め」 とい う こ と は何 を 意 味 す るの だ ろ うか。 ほ ん と う に 自 己の 喜 び で あ るよ うな もの と は何 か を、 問 うて い け ば、 自ず と 「自己 を 超 え た もの 」 に触 れ ざ る を え な いよ う に な るの で は な いだ ろ うか。 実 は、 杉村 さん の 発 言 の中 に も、 あ え て 見 いだ そ う と思 え ば、 そ の よ う な表現 が 見 い だ せ な い わ けで は な い。 「あ な た に と っ て仲 間 と は何 で す か 」 と い う質 問 に対 して、 杉 村 さん は次 の よ うに 答 え て い る。 「仲 間 と い うよ り も、 「何 で も許 しち ゃ う」 とい う人。 昔 か らの 仲 間 意 識 と言 うか 。仲 間 の優 しさ と い うの は全 然違 う。上 っ面 だ け じゃ な くて …。 何 か あ った 時 の 対 処 の仕 方 の や さ し さた るや。 媚 び るわ けで もな し、 た だ、 本 当 に じわ っ とや さ しさ を感 じる と言 うか 。 だ か ら、 や っ ぱ り仲 間 で す よ。 「仲 間 」 と言 う よ り も…、 何 て 言 うん で し ょ うね 。 言 葉 探 しが 大 変 なん で す け ど…、 「信 頼 」 以 外 の 何 も の で も な い で す よ ね。(中 略)周 り に い い エ ー ル を お くっ て くれ る 人 が い て 、 そ れ だ けで す よ。 言 葉 とい うの は、 た った一 言 で立 ち直 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性 -新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 る こと もあ ります か ら、 そ うい う素 敵 な言 葉 を い っぱ い い た だ い た と い うか。 発 す る言 葉 は素 っ気 な か った り、 乱 暴 で も、 奥 に あ る温 か さ は…、 人 間 一 人 で は生 き られ ませ ん ので 、 どれ だ け お 力 を お 借 り したか と い う…。 こ こ で は 自己 を 超 え た他 者 との 深 い交 わ りが 語 られ て い る。 「素 敵 な言 葉 を い っぱ い い いた だ い た」 り 「お 力 を お借 り した」 の は、 特 定 の他 者 か らで あ るが、 で はそ の 他 者 の や さ しさや 、 そ う した や さ しい他 者 と の交 わ り は ど こか ら来 るの だ ろ うか 。 また 、 自 らもそ の よ う にや さ し くあ りた い とす れ ば、 そ れ は ど の よ う に して 育 て られ るの だ ろ うか。 自 己実 現 や 自己解 放 の考 え方 で生 き方 につ い て語 って い くと、 ど こか で 「自 己 を超 え た もの 」 に ふ れ ざ る を え な くな るの で は な か ろ うか。 そ れ は 自 己実 現 や 自己解 放 の考 え 方 が広 い意 味 で の霊性 と出会 う 「いの ちの 危 機 」 の場 所 で あ る。 障 害 者 の場 合 、 早 くか ら この よ うな 「い の ち の危 機 」 に 向 き合 わ ざ るを え な い立 場 に置 か れ て い る。 だが 、 考 え て み れ ば誰 で もが 死 に往 く者 で あ り、 現 代 の よ うに孤 独 が ゆ きわ た って い る社 会 で は 、 「い の ちの危 機 」 の 中 で 死 ん で ゆ く こと を覚 悟 せ ざ るをえ な いの で はな か ろ うか。 七 、 死 に 往 く者 と ケ ア の 霊 性 死 に往 く者 や そ の 家族 に対 す る ケ ア は、 新 霊 性 文 化 と密 接 に関 連 しつ つ 発 展 して きた現 代 的 な霊 性 の重要 な領 域 の一 っで あ る。 イ ギ リスで シシ リー ・ ソ ン ダー ス が現 代 ホ ス ピス を設 立 した の は1967年 だ が(ド ゥプ レイ 『シ シ リー ・ソ ン ダー ス」)、そ れ は直 ち に諸 方 面 か ら注 目を集 め 、 死 の看 取 りの 実 践 が 世 界 的 な広 が りを も って脚 光 を浴 び るよ うに な つて き た。 同 じ時期 に ス イ ス か らア メ リカ に わ た った エ リザ ベ ス ・キ ュ ブ ラー ・ロ ス は、 死 に 行 く人 と語 り合 って、そ の孤 独 な心 に迫 り(キ ュ ブ ラー ・ロス 『死 ぬ 瞬 間』)、 死 に行 く者 の ケ ア の あ り方 に 巨大 な影 響 を及 ぼ した。 これ らの 試 み に つ い て の 情 報 は、 日本 の 医 療 や ケ ア の現 場 に も じわ じわ と浸 透 して い っ た。
欧米 の ホ ス ピス運 動 にっ いて 詳 しい情 報 に ふ れ る前 に淀 川 キ リス ト教 病 院 の柏 木 哲 夫 ら に よ って 実 験 的 に進 め られ て い た死 に ゆ く患 者 の ケ ア の実 践 だ が 、1977年 に は大 阪 で 「日本 死 の 臨 床 研 究 会 」 も始 め られ た(岡 安 大 仁 『タ ー ミナ ル ケ アの 原 点 』)。1980年 代 に 入 り急 速 に 関心 が 広 が り、 「死 生 学 」 と い う言 葉 が よ く使 わ れ るよ う に な った。 ま た、 「死 の準 備 教 育 」 (デ ス ・エ デ ュケ ー シ ョ ン)の 必 要 性 も説 か れ る よ う にな り、 や が て 「生 と死 の 教 育 」、 「い の ち の教 育 」 な ど と名 前 と内 容 をか え た さ ま ざ ま な試 み もな され る よ うに な って い く。 もち ろん 、 そ こ に は そ うな るべ き必 然 的 な理 由 が あ った 。 医 療 の 発 達 に よ って 「畳 の 上 」 で 死 ぬ 機 会 は急 速 に減 って い った。 だ が 、一 方 、 病 院 で 死 に行 く人 々 に対 して 、 ケ アを す るす べ を知 らな い とい う近 代 医 療 の 重 大 な 欠 陥 が 次 第 に露 わ に な って きた 。 死 と向 き合 うす べ を知 らな い病 院 に 絶 や まさ きふみ お 望 して 、 ホス ピス 医 とな つ た山 崎 章 郎 医 師 に よ る 『病 院 で 死 ぬ とい う こ と』 が 大 ヒ ッ トと な った の は1990年 の こ とで あ るが 、 病 院 で の死 の無 惨 さは、 そ の 頃 に は多 くの人 々 の如 実 な体 験 とな って い た。 看 取 る側 の 苦 境 の 自覚 も高 ま った。1980年 代 に は身 近 な家 族 が死 に 直面 して い た り、 家 族 の死 を経 験 した者 た ち の悲 嘆 に応 じる ケ ア の場 が 切 実 に 求 あ られ るよ う に な って い た。 カ ト リッ クの神 父 で 上 智 大 学 教 授 で もあ る ア ル プ ォ ンス ・デ ー ケ ン教 授 は、1982年 に 「生 と死 を 考 え る セ ミナ ー」 を 開 い た が 、 そ の聴 講 者 が 集 うよ う に な り、 翌 年 、 「生 と死 を 考 え る会 」 が 始 あ られ た。 この集 い は大 きな 反 響 を 呼 び、1996年 の段 階 で 東 京 の 会 員 は 1,500名 を超 え 、 全 国35ヵ 所 で 同 様 の 集 い が 開 か れ る よ うに な って い た 。 並 行 して 、 各 地 で グ リー フ ワー ク(身 近 な人 を喪 っ た人 の痛 み の癒 し)の 集 い が もた れ る よ うに な った(『 死 と ど う向 き合 うか 』)。 デ ー ケ ン は 「死 の準 備 教 育 」 こそ 自 らの ラ イ フ ワ ー クだ とい う。 人 は子 ど もの 時 か ら死 と向 き合 う しか た を学 ん で い くべ き だ と し、 小 学 校 か ら大 学 ま で そ の よ うな 授 業 を カ リキ ュ ラム に組 み 込 も うとす る もの で あ る。 そ して 、 「死 の 準 備 教 育 」 を支 え る学 問 的 な知 の 体 系 が 「死 生 学 」 で あ る。 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性 -新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 デ ー ケ ンは ドイ ツを モ デ ル に この よ うな試 み を 広 げ よ う と したが 、1990年 代 に は 日本 で も 「死 の準 備 教 育 」 や 「死 生 学 」 に 関 わ りが 深 い本 が い くっ も刊 行 さ れ る よ うに な った。 キ リス ト教 色 が 強 い ホ ス ピス や グ リー フ ワー クの広 が りを 追 う よ うに、 日本 の仏 教 界 は ビハ ー ラ(ホ ス ピス の仏 教 版)の 運 動 に乗 り出 す よ うに な る。 長 岡 西 病 院 を拠 点 と して 田宮 仁 が ビハ ー ラの理 念 を提 唱 す るの は1985 年 だ が 、 それ は直 ち に仏 教 教 団 内 に多 くの賛 同者 を見 い だ す。 東 京 の 仏 教 情報 セ ンタ ー の中 に仏 教 ホ ス ピス の会 が で き た の は1987年 で あ り、 デ ー ケ ンの 「生 と死 を考 え る会 」 と類 似 の 「い の ち のっ ど い」 が行 わ れ る よ う に な る。 こ う して1990年 代 に は、 仏 教 が 加 わ っ た多 様 な タ ー ミナ ル ・ケ アや グ リー フ ワ ー クの 試 み が な され る よ う に な る。 だ が、 死 にゆ く者 の ケ ア をめ ぐる霊 性 の 興 隆 は、 キ リス ト教 や仏 教 の 中 の霊 性 の興 隆 に と ど ま ら な い。 特 定 宗 教 の 枠 を超 え て 、 死 を め ぐ る霊 性 が 昂 揚 して い き、新 霊 性 文 化 と ま じりあ って い くよ うな傾 向 も深 ま って い く。 死 に ゆ く者 の ケ アの 運 動 で 日本 は欧 米 に大 き く遅 れ を と って い る と も言 え る が、 宗 教 の枠 を超 え た霊 性 の興 隆 に 発 展 して い くと い う点 で は 欧米 と は異 な る独 自 の動 きを見 せ も した。 同 じ時期 、 日本 で は脳 死 ・臓 器 移 植 を め ぐる議 論 が活 発 に行 わ れ た。 この 間題 は、1970年 代 か ら論 議 さ れ て きた のだ が 、 本 格 的 な議 論 が た た か わ さ れ た の は、1989年 に設 置 され た い わ ゆ る 「脳 死 臨 調 」(臨 時 脳 死 及 び臓 器 移 植 調 査 会)に お い て で 、 そ の1992年 の 答 申 に基 づ き、 「臓 器 の移 植 に関 す る法 律 」 が 公 布 さ れ た の が1997年 の こ とで あ る。 そ こで は、 死 と は何 か にっ い て公 共 空 間 で熱 心 な 討 議 が 行 わ れ 、 多 くの 国 民 もそれ に関 心 を抱 い た。 そ の背 後 に は、 医 師 とい う専 門 家 が管 理 し、 決 定 す る死 は本 来 の 死 で は な い の で は な いか 、 とい う憂 諺 な疑 問 が横 た わ って い た。 脳 死 ・臓 器 移 植 を め ぐる議 論 にあ る種 の 深 み を与 え た作 品 の一 つ に ノ ン サ ク リフ ァイ ス フ ィ ク シ ョ ン作 家 、 柳 田 邦 男 の 『犠 牲 わ が 息 子 ・脳 死 の 一 一 日 』 (1995年)が あ っ た。 こ の 作 品 は ひ き こ も り の 末 に 二 五 歳 で 自 ら の い の ち
を 断 った息 子 、 洋二 郎 が 、脳 死 状 態 で病 院 に と ど ま っ て い た間 の作 家 の思 い を語 った もの で あ る。 洋二 郎 は悲 しい人 生 の終 焉 を迎 え なが ら も、 自 ら の生 の 証 と して臓 器 移 植 も望 ん で い た の で、 作 家 は死 に至 る息 子 の心 情 に 思 い を こ らす と と もに、 脳 死 問題 へ の考 察 を深 め よ う と し、 重 要 な提 言 を も試 み た の だ っ た。 そ れ は 「「二 人 称 の 死 」 の 視 点 を」 と い う言 葉 に要 約 さ れ て い る。 三 人 称 の視 点 で 死 と向 き合 う医 師 の立 場 か らで は な く、 か け が え の な い他 者 の死 と 向 き合 う遺 族 らの 人 々 の視 点 か ら こそ 、 脳 死 と は何 か を考 え るべ きだ と い う主 張 だ った。 柳 田 は死 に お い て 「宗 教 的」 「精 神 的 」 な次 元 が 重 要 で あ る こ とを 強 調 しな が ら、 「人 間 の い の ち に は、 生 物 学 的 な部 分 と精 神 的 ・社 会 的 ・宗 教 的 な 部 分(以 下 、 精 神 的 な いの ち と総 称 す る)と が あ る」 とす る。 そ して 、 二 人 称 の 死 の観 点 か らは、 この 「精 神 的 な い の ち」 の 次 元 が 重 要 で あ る と 論 じ る。 広 い意 味 で の宗 教 に関 わ る次 元 とい い か え て も よ いだ ろ う。 親 子 ・連 れ 合 い ・兄 弟 姉 妹 と い う もの は、 人 生 と生 活 を 密 度 濃 く分 か ち合 って い る。 それ ゆえ に、 家 族 同 士 に は、 他 人 と は異 質 の喜 び、 悲 しみ、 怒 り、 憎 しみ の感 情 が あ る。 そ の こ とは精 神 的 な い の ち を 「共 有 」 して い る こ とを 示 す もの に ほか な らな い(『 犠 牲 』、200ペ ー ジ)。 こ の 「精 神 的」 とい う語 の 意 味 す る と こ ろ は、 ス ピ リチ ュ アル と い う語 の そ れ と た い へ ん 近 い 。 柳 田 は脳 死 問題 を 、 ス ピ リチ ュア ル な 次 元 を尊 び な が ら考 慮 す る よ うに訴 え て い る の で あ る。 'こう して1980年 代 、90年 代(と くに後 者)の 日本 で は、 生 命 倫 理 問 題 が 死 生 学 、 死 生 観 の重 要 な 問題 と して ス ピ リチ ュ アル な関 心 を込 め て 考 察 さ れ る こ と とな っ た。 死 生 の ケ ア と霊 性 に 関 す る関 心 の 高 ま りは先 進 国 に共 通 の現 象 で あ るが 、 日本 で は それ が 脳 死 臓 器 移 植 の 生 命 倫 理 問 題 に 関 わ る 公 的 討 議 と して の 性 格 を も含 み も って 展 開 す る こ と とな っ た。 こ の現 象 は、 誰 もが 直 面 す る死 生 の 危 機 に対 して 、 病 院 と い う近 代 的 な 制 度 が 、 対 処 す る方 策 を もた な い とい う こ と の認 識 と深 く関 わ って い た。 病 院 は人 々 を集 団 的 な拘 束 状 態 に 置 き、 患 者 個 々人 に 向 き合 う こと な く一 い の ち の 危 機 と ケ ア の 霊 性 -新 霊 性 文 化 の 底
流-密 教 文 化 律 に適 用 が可 能 な科 学 的 な 処 置 を 行 う能 力 に長 けて い る。 しか し、 死 生 の 危 機 に向 き合 う個 々人 の 全体 的 な ケ ア、 と りわ け実 存 的 な関心 や ス ピ リチ ュ アル な ニ ー ズ に対 す る ケ アの能 力 は欠如 して いた。 医療 の拡 充 が進 み 、個 々 人 の 生 活 が い よ い よ 医療 に依 存 す る度 合 いを 深 め る と と も に(イ ヴ ァ ン ・ イ リ ッチ 『脱 病 院 化 社 会 』 は これ を 「医 療 化 」 と よぶ)、 新 た に そ こか ら はみ 出 す 個 々人 の実 存 的 次 元 、 ス ピ リチ ュ アル な 次元 が 浮上 して きて 、 死 を め ぐる文 化 運 動 の 一 部 を構 成 す るに至 った の で あ る。 〈参 考 文 献 〉 生 田武 志 『「野 宿 者 襲 撃 」 論 』 人 文 書 院 、2005年 イ ヴ ァ ン ・イ リ ッチ 『脱 病 院 化 社 会 医療 の 限 界 』(金 子 嗣 郎 訳)晶 文 社 、1979 年 (Ivan Illich, Limits to Medicine, Medical Nemesis: The Exploration
of Health, Caldar & Boyars, 1976)
岡 安 大 仁 『タ ー ミナ ル ケ ア の原 点 』 人 間 と歴 史 社 、2001年 島 薗 進 『精 神 世 界 の ゆ くえ 現 代 世 界 と新 霊 性 運 動 』 東 京堂 出 版 、1996年 同 「死 生 学 試 論(一)」 『死生 学 研 究 』2003年 春 号(東 京 大 学 大学 院 人 文 社 会 系 研 究 科)2003年 同 「死 生 学 試 論(二)加 藤 咄 堂 と死 生 観 の 論 述 」 『死 生 学 研 究 』2003年 秋 号(東 京 大 学 大 学 院 人 文 社 会 系 研 究 科)2003年 同 『ス ピ リチ ュ ア リテ ィ の興 隆 一 新 霊 性 文 化 とそ の周 辺 』 岩 波 書 店 、2007年 同 『精 神 世 界 の ゆ くえ一 宗 教 ・近 代 ・霊 性 』(新 版)秋 山書 店、2007年 芹 沢 俊 介 『家族 とい う暴 力 』 春 秋 社 、20O4年 ア ル フ ォ ンス ・デ ー ケ ン 『死 と ど う向 き合 うか 』 日本 放 送 出版 協 会 、1996年 シ ャー リー ・ ドゥプ レ イ 『シ シ リー ・ソ ン ダ ー ス』(若 林 一 美 他 訳)日 本 看 護 協 会 出版 部 、1989年(原 著 、1984年) サ クリファイス 柳 田邦 男 の 「犠 牲 わ が息 子 ・脳 死 の 一 一 日』 文 藝 春 秋 、1995年 山 崎 章 郎 『病 院 で死 ぬ と い う こ と』 主 婦 の 友 社 、1990年 エ リザ ベ ス ・キ ュ ブ ラ ー ・ロス 「死 ぬ 瞬 間 』(川 口正 吉 訳)読 売 新 聞 社 、1971年 (原著 、1969年) 〈キ ー ワー ド〉 死 生 学 ケ アの 霊 性 ス ピ リチ ュア リテ ィ 新 霊 性 文 化 いの ちの 危 機
Threats to Life and the Spirituality of Care: The Undercurrent of the New Spirituality Culture
SHIMAZONO Susumu
In 2006 the term spiritual was extremely popular on Japanese tele-vision. The paranormal entertainment culture that had demonstrated a decline following the incidents concerning AUM Shinrikyo in 1995
英
文
要
密
教
文
化
regained popularity. In the background of this cultural popularity, however, was the emergence of a spiritual phenomenon over a much longer time span. If this may be called the New Spirituality Culture, it had already shown signs of emerging in the 1970s. At the time there was a pronounced desire for a utopian future in the culture mainly borne by the young, and this trend expanded in its social support base to permeate all levels of society. The field of care is representative of this, and the need for spirituality within all systems inclusive of medical care, education, and psychotherapy was recognized. In the background were the social circumstances of increased possibilities for encountering difficult problems within the dismemberment of communities and isolation of individuals. Put differently, the life collectivity of individuals became less robust. Such threats to life were felt to be brought on by modern civilization, and awareness of the limitations of modern civilization increased. Simultaneously, people's expectation towards religion increased, but in the developed countries the trend was to expect more of spirituality than of re-ligions. It is important to understand the increasing interest in the field of terminal care within such trend.