2015 年 9 月 2 日 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部 ―為替管理関連―
みずほ中国 ビジネス・エクスプレス
( 第 401 号 )中国人民銀行、
外貨リスク準備金の預入を要求
強い元安圧力を緩和する狙いか
平素より格別のご高配を賜りまして誠にありがとうございます。 中国人民銀行(PBOC)は、2015 年 8 月 31 日付で『外貨予約マクロプルーデンス管理の強化に関する 通達』(銀発[2015]273 号、以下『273 号通達』という)を公布しました。顧客向けに外貨予約(外貨買 い人民元売り予約)を取り扱う金融機関に対し、2015 年 10 月 15 日より PBOC に外貨リスク準備金を預 け入れるよう求めました。外国為替市場におけるドル買い元売りの強い元安圧力を緩和する狙いがある ものとみられます。 元買いドル売り介入を実施か PBOC は 2015 年 8 月 11 日に突如、イ ンターバンク市場における人民元対米 ドル仲値(基準値)を前日比 1.86%元 安の 1 ドル 6.2298 元に設定。同時に声 明を発表し、今後は前日のインターバ ンク市場の為替レート終値を参考する ことで、より市場の実勢を反映した仲 値を設定することを明らかにしました。 PBOC による突然の元安設定を受け、市 場では一時、レートが元安に大きく振 れ、これに伴って 8 月 14 日の基準値は 8 月 10 日比で 4.6%元安となる 1 ドル 6.3975 元まで調整されま した(図表 1 参照)。 市場では、今回の基準値調整の目的を人民元の切り下げによる輸出促進とする見方が強く、中国経済 の減速が一段と鮮明化していることや PBOC がさらなる切り下げを行うとの見通しからドル買い元売り 6.00 6.05 6.10 6.15 6.20 6.25 6.30 6.35 6.40 6.45 Ja n-1 4 Ma r-1 4 M ay -14 Ju l-14 Sep -14 No v-14 Ja n-1 5 Ma r-1 5 M ay -15 Ju l-15 (RMB/USD) PBOC基準値 市場終値 元安 元高 基準値調整で 元安進行 【図表 1】人民元対ドル為替レートの推移 出所:PBOC、中国外貨取引センターの元安圧力が強くなっています。これに対し、PBOC は為替レートの安定を図るため、元買いドル売りの 介入を実施し、元安を抑え込んでいるとみられており、それに伴って外貨準備高も大きく減少している ものと考えられています。 PBOC を含む金融機関による外 貨買い取りで市場に放出された 人民元の総額を示す外国為替資 金残高は 2015 年 7 月、前月比マ イナス 2491 億元と、統計公表以 来最大の減少を記録しました(図 表 2 参照)。これは、PBOC を含む 金融機関が市場から人民元を吸 収し、一方で外貨を放出している、 すなわち元買いドル売りが進ん でいることを示しています。8 月 の外国為替資金残高の減少は、8 月 11 日以降の為替介入によって 相当な額に上っている可能性があります。 準備金率は外貨予約契約額の 20% 『273 号通達』によると、顧客向けに外貨予約を取り扱う金融機関(ファイナンス・カンパニーを含 む)は毎月、前月の外貨予約(外貨買い人民元売り予約)の契約総額に基づいて PBOC に外貨リスク準備 金を預け入れなければなりません。外貨リスク準備金率は 20%となっており、預け入れた準備金は PBOC の専用口座で 1 年間凍結されます。準備金の金利は、0%に設定されています。 外貨リスク準備金の預入は、外貨予約取扱に係るコストの上昇に直結します。『273 号通達』は元安要 因となる外貨予約取引を抑制することが目的と言え、過度の元安を容認しない当局の強い意向をうかが うことができます。 * 『273 号通達』の詳細については、3 ページからの日本語仮訳と 6 ページからの中国語原文をご参照く ださい。 【みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部 月岡直樹】 6,837 4,416 1,892 661 -1184 22 11 -1,083 422 -1565 324 -937 -2,491 -4,000 -2,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000 0 5 10 15 20 25 30 35 07-0 2 07-0 6 07-1 0 08-0 2 08-0 6 08-1 0 09-0 2 09-0 6 09-1 0 10-0 2 10-0 6 10-1 0 11-0 2 11-0 6 11-1 0 12-0 2 12-0 6 12-1 0 13-0 2 13-0 6 13-1 0 14-0 2 14-0 6 14-1 0 15-0 2 15-0 6 外国為替資金残高新規増減(億元、右軸) 外国為替資金残高(兆元、左軸) (兆元) (億元) 【図表 2】外国為替資金残高の推移 出所:中国人民銀行、CEIC
(日本語仮訳)
中国人民銀行
銀発[2015]273 号
外貨予約マクロプルーデンス管理の強化に関する通達
中国人民銀行上海本部、各分行・営業管理部、各省都(首府)都市中心支行、深圳市中心支行;国家外 貨管理局各省・自治区・直轄市分局・外貨管理部、深圳・大連・青島・アモイ・寧波市分局;国家開発 銀行、中国輸出入銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行、交通銀行、招商銀行、 上海浦東発展銀行、中信銀行、興業銀行、中国民生銀行、中国光大銀行、華夏銀行、広発銀行、平安銀 行、浙商銀行、渤海銀行、中国郵政貯蓄銀行: マクロプルーデンス管理の枠組みを完善化し、マクロ金融リスクを防止し、金融機関の穏健な経営を 促進するため、中国人民銀行は顧客向け外貨予約業務を展開する金融機関に対して外貨リスク準備金を 徴収することを決定した。ここに関連事項について以下のように通知する。 1、 外貨リスク準備金率 2015 年 10 月 15 日より、顧客向け外貨予約業務を展開する金融機関(ファイナンス・カンパニーを 含む)は外貨リスク準備金を積み立てなければならず、準備金率は暫定的に 20%とする。 2、 口座 中国人民銀行上海本部は、「金融機関外貨リスク準備金」専用口座を開設し、金融機関が積み立てる 外貨リスク準備金の預入に用いる。 3、 積立 (1) 中国人民銀行上海本部は、外貨リスク準備金資金の徴収および返還等の日常管理に責任を負う。 (2) 上海の法人金融機関および外資銀行支店は、中国人民銀行上海本部の営業部門に「外貨リスク 準備金積立申告表」(書式は付属文書を参照)を提出する。中国人民銀行上海本部の営業部門の 審査に合格して公章を捺印した後、金融機関は中国人民銀行上海本部への資金振替手続を行う。 (3) 上海以外の地域の法人金融機関および外資銀行支店は、その所在地の中国人民銀行の省都(首 府)都市中心支行以上の分支機構(深圳市の場合、深圳市中心支行に相当する。以下同)の営 業部門に「外貨リスク準備金積立申告表」を提出する。中国人民銀行の関連分支機構の営業部門の審査に合格して公章を捺印した後、金融機関は中国人民銀行上海本部への資金振替手続を 行う。同時に、中国人民銀行の関連分支機構の営業部門は、上述の申告表を上海本部の営業部 門にファックスする。 (4) 顧客向け外貨予約業務は、米ドルで計算して外貨リスク準備金を積み立て、非米ドル通貨業務 は米ドルに換算して積み立てる。各種通貨間の換算率は、国家外貨管理局が毎月公布する『各 種通貨対米ドル換算率』に基づき計算する。換算率が未公布の場合、国家外貨管理局が確定す る各種通貨対米ドル換算率の方法を参照して計算する。 4、 考課 (1) 中国人民銀行は、金融機関の外貨リスク準備金に対して月ごとに考課する。金融機関は、毎月 15 日まで(祝祭日の場合は繰延)に外貨リスク準備金を中国人民銀行上海本部が開設する外貨 リスク準備金専用口座に振り替えなければならない。 金融機関の外貨リスク準備金計算公式は「当月の外貨リスク準備金積立額=前月の外貨予約契 約額×外貨リスク準備金率」とする。 (2) 国家外貨管理局各分局、外貨管理部は、毎月 8 日まで(祝祭日の場合は繰延、このうち 10 月は 10 日とする)に対応する中国人民銀行の省都(首府)都市中心支行以上の分支機構の営業部門 に管轄区内で顧客向け外貨予約業務を展開する金融機関のリストおよび各金融機関の前月の外 貨予約契約額等の関連データを提供しなければならない。 (3) 法人金融機関および外資銀行支店は、毎月 10 日まで(祝祭日の場合は繰延、このうち 10 月は 12 日とする)に「外貨リスク準備金積立申告表」を所在地の中国人民銀行の省都(首府)都市 中心支行以上の分支機構の営業部門に送付しなければならない。 (4) 金融機関による中国人民銀行での外貨リスク準備金の凍結期間は 1 年とする。金融機関が月ご とに積み立てた外貨リスク準備金の凍結期間満了後、中国人民銀行は期間満了当月の 15 日(祝 祭日の場合は繰延)に資金を当該金融機関の指定口座に返還する。 (5) 国家外貨管理局各分局、外貨管理部は、金融機関による顧客向け外貨予約業務の資格審査・批 准通過後の 5 営業日以内に、金融機関リストを対応する中国人民銀行の省都(首府)都市中心 支行以上の分支機構に提供しなければならない。中国人民銀行の関連分支機構は、直ちに本通 達を上述の金融機関に転送しなければならない。
5、 利率 外貨リスク準備金の利率は、暫定的に 0%とする。 6、 その他 中国人民銀行は、法に基づき金融機関による外貨リスク準備金政策の執行における規定違反行為に 対して処理を行う。 本通達は、印刷・配布の日より実施する。国家外貨管理局各分局、外貨管理部は、通達の印刷・配 布の日より管轄区内の顧客向け外貨予約業務を展開する金融機関のリストを対応する中国人民銀行 の省都(首府)都市中心支行以上の分支機構に提供しなければならない。 中国人民銀行の分支機構は、本通達を印刷・配布の日より管轄区内の顧客向け外貨予約業務を展開 する都市商業銀行、農村商業銀行、農村合作銀行、農村信用社、村鎮銀行、ファイナンス・カンパ ニーおよび外資金融機関に転送すること。 付属文書:外貨リスク準備金積立申告表〔略〕 中国人民銀行 2015 年 8 月 31 日
(中国語原文) 中国人民银行 银发[2015]273 号 关于加强远期售汇宏观审慎管理的通知 中国人民银行上海总部,各分行、营业管理部,各省会(首府)城市中心支行,深圳市中心支行;国家外 汇管理局各省、自治区、直辖市分局、外汇管理部,深圳、大连、青岛、厦门、宁波市分局;国家开发银 行,中国进出口银行,中国工商银行、中国农业银行、中国银行、中国建设银行、交通银行,招商银行、 浦发银行、中信银行、兴业银行、中国民生银行、中国光大银行、华夏银行、广发银行、平安银行、浙商 银行、渤海银行,中国邮政储蓄银行: 为完善宏观审慎管理框架,防范宏观金融风险,促进金融机构稳健经营,中国人民银行决定,对开展 代客远期售汇业务的金融机构收取外汇风险准备金。现就有关事项通知如下: 一、 外汇风险准备金率 从 2015 年 10 月 15 日起,开展代客远期售汇业务的金融机构(含财务公司)应交存外汇风险准备金, 准备金率暂定为 20%。 二、 账户 中国人民银行上海总部设立“金融机构外汇风险准备金”专用账户,用于存放金融机构交存的外汇风 险准备金。 三、 交存 (一) 中国人民银行上海总部负责外汇风险准备金资金的收取及退还等日常管理。 (二) 在上海的法人金融机构和外资银行分行向中国人民银行上海总部营业部门提交“外汇风险准备 金交存申报表”(格式见附件)。中国人民银行上海总部营业部门审查合格并加盖公章后,金融 机构向中国人民银行上海总部办理划款手续。 (三) 在上海以外地区的法人金融机构和外资银行分行向其所在地中国人民银行省会(首府)城市中 心支行以上分支机构(深圳市的相应为深圳市中心支行,下同)营业部门提交“外汇风险准备 金交存申报表”。中国人民银行相关分支机构营业部门审查合格并加盖公章后,金融机构向中 国人民银行上海总部办理划款手续。同时,中国人民银行相关分支机构营业部门将上述申报表
传真至上海总部营业部门。 (四) 代客远期售汇业务按美元计算交存外汇风险准备金,非美元币种业务折算成美元交存。各种货 币之间的折算率按每月国家外汇管理局公布的《各种货币对美元折算率》计算。未公布折算率 的,参照国家外汇管理局确定各种货币对美元折算率的方法计算。 四、 考核 (一) 中国人民银行对金融机构外汇风险准备金按月考核。金融机构应在每月 15 日前(遇节假日顺 延)将外汇风险准备金划至中国人民银行上海总部开立的外汇风险准备金专用账户。 金融机构外汇风险准备金计算公式为:当月外汇风险准备金交存额=上月远期售汇签约额 x 外 汇风险准备金率 (二) 国家外汇管理局各分局、外汇管理部应在每月 8 日前(遇节假日顺延,其中 10 月份为 10 日) 向相应的中国人民银行省会(首府)城市中心支行以上分支机构营业部门提供辖区内开展代客 远期售汇业务的金融机构名单及各金融机构上月远期售汇签约额等相关数据。 (三) 法人金融机构和外资银行分行应在每月 10 日前(遇节假日顺延,其中 10 月份为 12 日)将“外 汇风险准备金交存申报表”报送至所在地中国人民银行省会(首府)城市中心支行以上分支机 构营业部门。 (四) 金融机构在中国人民银行的外汇风险准备金冻结期为 1 年。金融机构按月交存的外汇风险准备 金冻结期满后,中国人民银行在期满当月 15 日(遇节假日顺延)将资金退划该金融机构指定 账户。 (五) 国家外汇管理局各分局、外汇管理部应在金融机构代客远期售汇业务资格审批通过之日起 5 个 工作日内,将金融机构名单提供至相应的中国人民银行省会(首府)城市中心支行以上分支机 构。中国人民银行相关分支机构应立即将本通知转发至上述金融机构。 五、 利率 外汇风险准备金利率暂定为零。 六、 其他
中国人民银行依法对金融机构执行外汇风险准备金政策中的违规行为进行处理。 本通知自印发之日起实施。国家外汇管理局各分局、外汇管理部应于通知印发之日将辖区内开展代客 远期售汇业务的金融机构名单提供至相应的中国人民银行省会(首府)城市中心支行以上分支机构。 请中国人民银行分支机构将本通知于印发之日转发至辖区内开展代客远期售汇业务的城市商业银行、 农村商业银行、农村合作银行、农村信用社、村镇银行、财务公司和外资金融机构。 附件:外汇风险准备金交存申报表〔略〕 中国人民银行 2015 年 8 月 31 日 【ご注意】 1. 法律上、会計上の助言:本資料記載の情報は、法律上、会計上、税務上の助言を含むものではありません。法律上、会計上、税務上の 助言を必要とされる場合は、それぞれの専門家にご相談ください。 2. 秘密保持:本資料記載の情報の貴社への開示は貴社の守秘義務を前提とするものです。当該情報については貴社内部の利用に限定され、 その内容の第三者への開示は禁止されています。 3. 著作権:本資料記載の情報の著作権は原則として弊行に帰属します。いかなる目的であれ本資料の一部または全部について無断で、い かなる方法においても複写、複製、引用、転載、翻訳、貸与等を行うことを禁止します。 4. 免責: (1) 本資料記載の情報は、弊行が信頼できると考える各方面から取得しておりますが、その内容の正確性、信頼性、完全性を保証する ものではありません。弊行は当該情報に起因して発生した損害については、その内容如何にかかわらずいっさい責任を負いません。 また、本資料における分析は仮定に基づくものであり、その結果の確実性或いは完結性を表明するものではありません。 (2) 今後開示いただく情報、鑑定評価、格付機関の見解、制度・金融環境の変化等によっては、その過程やスキームを大幅に変更する 必要がある可能性があり、その場合には本資料で分析した効果が得られない可能性がありますので、予めご了承下さい。また、本 資料は貴社のリスクを網羅的に示唆するものではありません。