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テイムール帝国前半期の研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 文 学 ) 川 口 琢 司

学 位 論 文 題 名

テイムール帝国前半期の研究 学位論文内容の要旨

1)論文の主旨

  本論文は中央アジアのテイムール帝国(1370〜1507)前半期におけるテュルク(=トル コ)系支配層の政治的意義の検討を課題として、写本史料の細部にわたる綿密な検証を通 し て テ イ ム ‐ ル 帝 国 前 半 期 の 支 配 層 の 特 質 を 解 明 し た も の で あ る 。

2)論文の構成

    はじめに  .  ●  .  ●  .  ●  ●  ‥  .  .  .  .  .  ●  ●  ●  ・  1     1. テ ィ ム ー ル 帝 国 の 時 代 ・ . .  ・ . . ・ . ・ . . . . ・ . . ・ .1     2.本研究の視座.  ・.....・・...・...5

    3.本研究の展開.  .・..・.・.・.・.8

    第1章 テ ィ ム ー ル 帝 国 と モ ン ゴ ル . . . . . ・ ・ . ・ ・ . . . . . ・ .10     1.ハン制度...  ..........・10

    2.テ イ ム ー ル 帝 国 の 対 モ ン ゴ ル 婚 姻 政 策 . ・ . . . . .. . . .. .  17     第2章 テ イ ム ー ル の 後 継 者 問 題 ・  . . . . ・ ・ ・ . . . ・ . ・ .56     1. ジ ャ ハ ー ン ギ ー ル の 息 子た ち  . ・ .. ・ .・ . . .. . . .. . .56     2.ア ミ ー ラ ー ン シ ャ ー の 反 乱   .   ・ ・ ・ ・ . . ・ . . ・ .  58     3.ピ ー ル ・ ム ハ ン マ ド の 後 継 者 指 名 ま で . . ・ . ・ . . ・ . ・ . . .62     4.ハ リー ル ・ス ル タ ーン と スユ ン ・ ベグ  ・. . ・・ . . .・ . ・・ .  65     5.テ イ ム ー ル 死 後 の 内 乱 と シ ャ ー ル フ 政 権 の 成 立 . . ・. . ・ ・・ .  67     第3章 イ ス カ ン ダ ル の 無 名 氏の 史 書を め ぐ って ・ ・. . ・ .. . .. ・  75     1. イ ス カ ン ダ ル の 無 名 氏 の史 書 .. . . .. ・ .・ . . .. ・ .. ・  78     2.『 ムン タ ハブ ッ タ ワー リ ーヘ ・ ム イー ニ ー』  .・ . ・ ・・ ・ ・. .・86     3.ト プ カ プ 宮 殿 博 物 館 附 属 図 書 館 蔵B.411. . . ・ . . . ・ . ・ ・ ・95     第4章 シ ャラ フ ッ ディ ー ン・ ア リ ー・ ヤ ズ ディ ー の史 書 の 独創 性 ・. .・108     1.『 序 章 』 に つ い て の 先 行 研 究  . . ・ . . ・ . ・ ・ . ・ . ・ ・  109     2.『 序 章 』 に み え る テュ ル ク・ モ ン ゴル 伝 承 .・ ・ .・ ・ . .. ・ ・  112     3.四 ウ ル ス 概 念 の 成 立 .   ・ ・ .   . ・ . . ・ . ・ . . . ・ 116     4.史 書 『 ウ ル ー セ ・ ア ル パ ア 』 と ウ ル グ ・ ベ グ ・ ・ . . . . . . ・ .120     第5章 ハ ー フ ウ ズ ・ ア ブ ル ー の 『 マ ジ ュ マ ッ タ ワ ー1」 ー フ 』 所 載 の テ ュ     ル ク ・ モ ン ゴ ル 諸 部 族 誌 .   ・ . ・ ・ . . . ・ ・ ・ . ・ . ・132     1. ト プ カ プ 宮 殿 博 物 館 附 属 図 書 館 蔵Hazine 1659. ・ ・ . ・ . . . ・133     2.テ ュ ル ク ・ モ ン ゴ ル 諸 部 族 誌 の 記 述 . . ・ ・ . . . ・ ・ . ・ . . .134     3.テ ュ ル ク ・ モ ン ゴ ル 諸 部 族 誌 の 検 討 . ・ ・ . . . ・ ・ . . . . ・ ・137     第6章 テ イ ム ー ル 帝 国 に お け る 一 貴 顕 の 実 像 . . ・ .. ・ ・ ・・ . ・.147     1.『シャムスルスフン』  ..・....・・..  147

6ー

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  2.ア ミール・シャーマリク  ・..

第7章 テ ィム ー ル 帝国 の グラ ームた ち        . . ・     1 5 5        . ・ .     1 9 2

  1.ティムールとグラtーム......・.........・・.・192   2.ハリール・スルターン政権・..・・・..・...・.....197   3.サイード・ホージャの反乱・・.・・...........・・199 おわりに  ..  .....................223

文献目録  .  .  ●  ●  ●  .  ●  ●  ●  .  I  ●  ●  ●  ●  .  ●  .  ●  ●  .  ●  ●  .  ●  ●  .  .  ●  226     (A4判40字X36行、全240頁。400字詰め原稿用紙換算864枚)

3)本論文の内容

    「はじめに」において、ティムール帝国の成立期・全盛期にあたる前半期の支配層であ るティムール朝の王族やアミールとよぱれる貴顕たちの人物研究に焦点をあて,ベルシャ 語による年代記の写本史料の文献学的研究を通して、それらの人物の系譜と婚姻関係につ いて検証しようとする著者の方法論が提示されている。

  第1章「ティム・ール帝国とモンゴル」では、ティムール帝国の創始者であるティムール とテイムール帝国前半期の歴代の君主はチンギス・ハン家出身の女性と結婚してキュレゲ ン(女婿)を名乗り、それによってテイムール家とチンギス・ハン家の結び付きを強調す るこ と に よっ て テイ ム ール帝園 の支配の 正統性を 主張した ことを明ら かにして いる。

  第2章「テ イムール 帝国の後継者問題」では、テイムールの孫ハリール・スル夕一ンが 実カで帝国の実権を掌握して王権を継承したが、ティムールの四男シャールフがこれに対 抗して内乱となり、勝利したシャールフが政権を確立したことについて、著者はシャール フ の 母 方 の 系 譜 を 写 本 史 料 の 系 図 の 比 較 研 究 を 通 し て 検 討 し て い る 。   第3章「イ スカンダ ルの無名氏の史書をめぐって」では、ティムールの孫でイランのフ アールス地方の総督を務めたイスカンダルに献呈された無名氏1ごょる題名のない歴史書を めぐって、無名氏はイスカンダルこそがテイムール朝の後継者に相応しいという立場から この歴史書を記述したことを指摘している。

  第4章「シ ャラフッ ディーン・アリー・ヤズディーの史書の独創性」では、シャラフッ ディーン・アリー・ヤズディーによるテイムールの伝記『ザファル・ナーメ』は、二ザー ムッディーン・シャーミーによるティムールの伝記『ザファル・ナーメ』の記述を大幅に 増補・改 訂し、流 麗で装飾 的な文体 に改めら れたものであることを明らかにしている。

  第5章「ハ イフェズ ・アプルーの『マジュマッタワーリーフ』所載のテュルク・モンゴ ル諸部族 誌」では 、トプカ プ宮殿博 物館附属 図書館所蔵 の写本Hazine1659の 第3部に記 述されているテュルク・モンゴル諸部族誌の記述の検討を通して、テイムール帝国のアミ ール た ち がど の 部族 の 出身かと いう問題 について 、その記 述の概要を まとめて いる。

  第6章「テ イムール 帝国における一貴顕の実像」では、ティムール帝国初期に宮廷に書 記として仕えたタージュッサルマ一二ーによって著わされた歴史書『シャムスルフスン』

の記述の検討を通して、テイムール帝国前半期を代表する有カなアミール(高位の軍事・

行 政 職 に 就 い た 人 物 ) だ っ た シ ャ ー マ リ ク の 政 治 活 動 に つ い て 詳 述 し て い る 。   第7章「テ イムール 帝国のグラームたち」では、グラームとよばれる奴隷起源でありな がら、政治的・軍事的に重要な高位のアミールになったグラーム出身者のティムール帝国 史における位置づけの作業を試み、それによってティムール帝国の諸政権の特質を明らか にしている。

    「おわりに」において、本論文ではティムール帝国前半期のテュルク系支配層に関する 政治史研 究を意図 して設定 した3つの 課題、す なわち、1.ティムールの後継者問題とシ ヤールフ 政権成立 のダイナミズム、2.テイムール帝国の史書におけるテュルク・モンゴ ル伝承と モンゴル 帝国史の創造、3.部族・グラーム出身のアミールと政権の質的変化・

政権 交 代 との 関 わり の 問 題が 、 史 料の 検 討を 通 し て解 明 され た と 述べ ら れて い る。

    ―  ワ  ―

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    菊 池俊彦 副査    教授    三 木    聰 副査   助教授   字山智彦 副査   助教授   森本一夫

学 位 論 文 題 名

テイムール帝国前半期の研究

1)論 文の 研究 成果 の 特色

  本 論 文 は 中 央 ア ジ ア の テ イ ム ー ル 帝 国 (1370〜1507)前半 期に おけ るテ ュル ク( 〓ト ル コ ) 系 支 配 層 の 政 治 的 意義 の検 討を 課題 と して 、写 本史 料の 細部 にわ たる 綿密 な検 証を 通 し て テ イ ム ー ル 帝 国 前 半 期 の 支 配 層 の 特 質 を 明 ら か に し た 研 究 で あ る 。   テ イ ム ー ル 帝 国 史 研 究 は 我 が 国 で は1960年 代 後 半 か ら 本 格 的 に 開 始 さ れ 、1980年代 か ら は 海 外 の 写 本 史 料 を 利用 した 詳細 な研 究 が相 次い で発 表さ れる よう にな った 。口 シア で は 帝 政 時 代 の20世 紀 初 め か ら そ の よ う な 写 本 史 料 に 基 づ く 長 い 研 究 史 が あ る 。ま た近 年 で は ア メ リ カ で 多 く の 研究 業績 が発 表さ れ てい る。 申請 者川 口琢 司氏 はこ れま で何 度に も わ た っ て ト ル コ 共 和 国 イス タン ブル のト プ カプ 宮殿 博物 館附 属図 書館 、ロ シア 共和 国連 邦 サ ン ク ト ベ テ ル ブ ル ク の科 学ア カデ ミー 東 洋学 研究 所、 ウズ ベキ スタ ン共 和国 夕シ ュケ ン ト の 科 学 ア カ デ ミ ー 東 洋学 研究 所、 イギ リ スの ロン ドン の大 英博 物館 、フ ラン ス共 和国 パ り の 国 民 図 書 館 、 イ ラ ン・ イス ラー ム共 和 国テ ヘラ ンの 国立 図書 館と マシ ュハ ドの イマ ー ム レ ザ 一 廟 附 属 図 書 館 等を 訪ね て、 そこ に 所蔵 され てい るテ イム ール 帝国 関連 の写 本史 料 を 現 地 調 査 し て い る 。 これ によ り、 写本 の 記述 の細 部の 相違 に着 目し て、 写本 の比 較検 討 を 行な った 。

  本 論 文 が テ イ ム ー ル 帝国 前半 期の テュ ル ク系 支配 層が どの よう にテ ュル ク・ モン ゴル の 伝 統 を 取 り 込 ん で 支 配 の正 統性 を得 よう と した か、 とい う支 配層 の政 策の 特質 につ いて 、 テ イ ム ー ル 帝 国 の 史 書 の記 述の 綿密 な検 証 を通 して 解明 した こと は大 きな 成果 であ る。 テ イ ム ー ル が チ ン ギ ス ・ ハン 家の 女性 と結 婚 する 婚姻 政策 を採 るこ とに よっ て「 チン ギス 統 原 理 」 に 依 拠 す る 支 配 の正 統性 を獲 得し た こと は、 従来 の研 究で も十 分に 指摘 され てい た が 、 本 論 文 に 見 ら れ る よう なチ ンギ ス・ ハ ン家 とテ イム ール 家の 系譜 を写 本史 料に よっ て 細 部に まで わた って 詳細 にた どっ た研 究は 初め て であ る。

  ま た 王 族 出 身 で は な く、 部族 出身 のア ミ ール たち の出 自を テュ ルク ・モ ンゴ ル部 族誌 に 関 す る 写 本 史 料 の 記 述 の検 討を 通し て明 ら かに した 点は 、今 後の テイ ムー ル帝 国史 研究 に お ける 諸部 族の 活動 の研 究の 基礎 とな るこ とだ ろ う。

  さら にこ れま で注 目さ れる こと のな かっ たテ イ ムー ル帝 国のグラーム(奴隷起源の小姓)

に 丶二 冫いて初めて採り上げ、グラーム出身の有カなア ミール(高位の軍事・行政職に就いた 人 物 ) の 活 動 の 事 績 を たど った 研究 は、 今 後の テイ ムー ル帝 国史 研究 に新 たな 一面 を拓 く も のと して 評価 され よう 。

  本 論 文 は テ イ ム ー ル 帝国 史研 究で は先 進 的な 口シ アの 研究 者の 研究 成果 を十 分に 踏ま え

8−

(4)

ており、国際的にも通用する内容の研究成果となっている。

2)審査委員会の所見

  審査 委員 会で は、第1章から第4章までのテイムール家の統治政策の特質と第5章から 第7章までの部族誌・アミールの事績・グラームの問題の研究の関連性が読み取れないこ と 、ま た第5章 ・第6章・第7章の相互の関連性についても読み取りにくいことが指摘さ れた。また第1章においてテイムールの後継者たちがキュレゲン(女婿)の称号を帯びる ことの意義の検討が不十分であること、第3章の3つの史書の著者が同一人物であること の論証が不十分であること、第7章でグラームがアミールになることができた経緯の説明 が不十分であること、などが指摘された。

  しかしながら、このような批判は本論文の全体からは小さな瑕疵に過ぎず、本論文によ って新たに提起された仮説を退けるものではない。

  よって、審査委員会は申請論文が博士(文学)の学位を授与するに相応しいとの結論に 達した。

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参照

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