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打製骨器論―旧石器時代の探究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 文 学 ) 小 野 学 位 論 文 題 名

打製骨器論一旧石器時代の探究 学位論文内容の要旨

本 論文は ,IV部・10章で 構成さ れてい る,

第I部 (第1章 ) は ,実 質 的 な 作 業 にさ き だ って, 比較作 業の もつ意 義と方 法の検 討がお こな われる , 旧 石器時 代の研 究をお こなう 場合 ,自然 史と人 類史の 比較 対照という視点も必要となり,両者が重層性・

累 積性を 持っも のとし て扱う 必要 があることを指掃rずる,世界各地に分布している資料を比較する場合,

分 布論を 構成す る理論 ・実践 の手 法が未 開拓で あり, 空間 と時間 を厳密 に限定 し,そ の枠 内で作 業を展 開 する必 要性の あるこ とも指 摘さ れる.

  第I【 部(第2〜4章) では ,骨の 変形・破砕・風化などの現象にかかわる基礎的なデータが提示される,

第2章 では ,1910年 代 の 人 工 ・自 然 破 砕 の 論争か ら,現 在の研 究の 成立ま での流 れが紹 介さ れる. 第3 章 では, 打製骨 器の主 要な原 料と なるス パイラ ル剥片 の定 義をお こない ,それ がパイ プ状 の構造 をもつ 骨 ( 管 状 骨) か ら 骨 髄 を摘 出 す る 目 的で 打 撃を くわえ た際に 形成さ れる ことを 指摘し ,ウシ の骨 を対 象 とた変 形・破 砕の実 験結果 にも とづい て,ス パイラ ル剥 片が動 的な加 撃によ って形 成さ れるこ とを証 明 す る . さら に 第4章 では , ア メ リ カ合 衆 国ワ イオ ミング 州キャ スパ1意跡 の資料 の観察 にも とづい て 実 験結果 を裏づ け,ス パイラ ル剥 片に詳 細な観 察をく わえ る.さ らに, 実験で は観察 でき なかっ た風化 に ともな う骨の 劣化の プ口セ ス, 打製骨 器製作 の様相 を具 体的に 検討し ,打製 骨器に も石 器と同 様の手 法 で製作 されたCurated Tool, 破砕を うけ た骨そ のもの や簡単 に加 工した &pedi弧T(dのふ たつの カテ ゴ リ ー が ある が , 前 者 はき わ め て 稀 な存 在 で, 後者が 圧倒的 な比率 を占 めるこ とをあ きらか にす る,

  第m部 ( 第5〜8章 ) の 内 容 は, 打 製 骨 器 の具体 的な記 述・検 討で ある, 第5章の冒 頭でド イツ語 圏で の 研究の 流れを 概観し たのち ,打 製骨器 の素材 (管状 骨・ 長骨剥片),二次加工・研磨の状態(片面・両 面 )を基 礎的な 基準と し,さ らに 石器と 対応す る形態 をも っもの は対応 する石 器の名 称を 準備す るとい う 二重の 分類枠 を適用 するこ とを 提案す る.続 けて, 前期 ・中期 ・後期 旧石器 時代の 区分 に触れ ,ルヴ ア ロ ア 技 法の 一 般 化 を 中期 旧 石 器 の 指標 と し て , およ そ30万 年前 ・ 酸 素 同 位体 ス テ ー ジ(I)9まで を 前期旧 石器・ それ以 後を中 期旧 石器と するこ と,石 刃技 法の盛 行を指 標とし て,〔 )IS3の中 葉・約4 万 年 前 を 中 期 ・ 後 期 旧 石 器 の 境 界 と す る こ と を 述 べ た の ち , 具 体 例 の 記 述 ・ 検 討 に は い る ,   ヨ ー口ッ パで最 古の 打製骨 器が出 土して いるフ ォン タナ・ ラヌッ ツィオ 遺跡 (イタ リア) をはじ め,

前 期 旧 石 器 時 代5遺 跡 , 中 期旧 石 器 時 代3遺 跡 , 後 期 旧石 器 時 代1遺跡 の 事 例 の 紹 介が 行 な わ れ る,

  前 期旧石 器時代 の事 例とし ては, 継続的 な調査 が行 われて いるピ ルツィ ンク スレー ベン遺 跡が詳 細に 紹 介され ている .この 遺跡は ,約40万年前 の温暖 期の もので,湖畔に立地しており,湖岸の活動ゾーン・

住 居跡と 炉跡ゾ ーン・ 作業場 ゾー ン・中 央部の 礫敷き ゾー ンなどのことなった活動域が識別されている,

住 居 は プ ラン が 楕 円 形 のも の1基 ・ 円形 の も の .2基 で , 径3〜4mで, 出入り 口に 接して 炉が作 られて い る.多 量の石 器が出 土して いる が,ハ ンガリ ーのヴ ェル テシュ セレー シュと 同様に きわ めて小 形で,

狩 猟 具 と いう よ り は 工具と 考え るべき だとい う,打 製骨器 は130点出 土して おり, 二次加 工の ある剥 片 に つ い で ,ス ク レ イ パ ー・ 楔 が 多 い が形 の 整 っ た ハン ド ア ッ ク スも1点 出土し ている ,骨器 の素 材は ア ンティ クウス 象が90%を占めるが,出土している獣骨のうちもっとも多いのは犀(27ワ。)で,象は11% に 過ぎな い.骨 の緻密 質の厚 い象 の意図 的な選 択は, フォ ンタナ ・ラヌ ッツイ オ,カ ステ ル・デ ィ・グ イ ード, ケアリ ッヒな どの諸 遺跡 と共通 する, そして ,レ ーデ, ヴァイ ンベル クなど の諸 遺跡の 資料か ら ,中期 旧石器 時代に アンテ ィク ウス象 が絶滅 すると ,マ ンモス が利用 される ように なる という 状況を

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う かがう こと カrで きる .

  打 製骨 器は, ヨー 口ッバ でも後 期旧石 器時 代初頭 まで製 作・使 用され てい た.こ の時期 は,磨 製骨 器 が 普 及 する時 期でも ある が,そ の出現 は中期 旧石器 時代 にさか のぼり ,グ口 ーセ ・グ口 ッテ洞 穴,フ ォ ー ゲ ル ヘルト 洞穴な ど, ムステ ィエ期 の遺跡 から磨 製骨 製尖頭 器が出 土して おり ,中期 旧石器 時代末 期 か ら 後 期 旧 石 器 時 代 初 期 に か け て , 打 製 ・ 磨 製 の 共 存 す る 時 期 を 想 定 す る こ と が で き る ,   後 期旧 石器時 代に 入って 磨製骨 器が普 及す る原因 は,溝 切り技 法の確 立に 求めら れる. 骨器の 原料 に 平 行 な 溝を切 り,骨 ・角 ・牙な どの楔 を打ち 込んで 板状 の素材 を生産 するも ので ,溝切 りには 石刃を 素 材 と す る工具 カ坏可 欠な 存在と なる, つまり ,オー リニ ヤック 文化期 に石刃 技法 が確立 した結 果,磨 製 骨 器 が 普 及 し, 本 格 的 な 耐久 性の 高い道 具CUIated Tooと しての 磨製 骨器が 普及し たこと が,画 期的 な 意 味を持 って いたこ とを指 摘する .

  第6章 では, イン ド・中 国・韓 国・シ ベリ ア等, アジア 各地の 資料を 検討 ・紹介 する,スクレイパー・

尖 頭 器 などが 中心と なり ,石器 と共通 する形 態のも のは 見られ ない, これは ,中 国・金 牛山を のぞけ ば 大 部 分 の資料 が後期 旧石 器時代 のもの である ことに よる .そし て,東 アジア では ,ロシ ア・ベ レリョ フ 遺 跡 ( 約12卿 年 前 ) の よう に , 後 期 旧石 器 時 代 末 期まで 打製骨 器が用 いら れてい ること が地域 的な 特 徴 で , さきに 指摘し たヨ ーロッ パでの 動向と は一致 しな い,マ ンモス など大 形草 食獣の 絶滅が ヨーロ ッ パ よ り 遅 れ る こ と が 原 因 と な っ て い る 可 能 性 を 指 摘 す る が , 確 定 的 と は 言 え な い .   第7章で は , は じ めに 日 本 での 打製骨 器研 究の状 況を紹 介し, 長野県 立が 鼻遺跡 (野尻 湖底) の調 査 成 果 と ともに 打製骨 器の 内容を 紹介し ,遺跡 の性格 に検 討をく わえる .立が 鼻遺 跡の堆 積層は 上部・ 中 部 ・下部に大別され,上層が16,000〜39,000年前,中層が41,000年前後,下層が43,0叩〜瓢000年前とい う 年 代 測定結 果が得 られ ている .動物 化石は ,ナウ マン 象の比 率が圧 倒的に 高く ,オオ ツノジ カがこ れ に 次 ぐ .打製 骨器は ,中 層下部 と下層 上部か ら検出 され ており ,素材 はいず れも ゾウで ,二次 加工の あ る 剥片が もっ とも多 く,ス クレイ パーが これ にっく ゛が, 骨製ク リーヴァーが一例出土しており,これに ス クレイ バー ・錐な どの石 器がと もなう .

  小 野氏 は,立 が鼻遺 跡で生 活面 が保存 されて いると 解釈で きる 場合があることを指摘し,中層下部の,

1個 体 分 の ナウ マ ン ゾ ウ 遺体 の 周辺か ら骨製 クリー ヴァ ー・骨 剥片と チップ が石 器とと もに出 土して い る 事 例 に 注 目を 向 け る , この 地 点 を 中 心と し て 長 さ40m.幅10〜15mの範囲 に, 頭骨・ 肋骨・ 四肢骨 な ど が ブ 口ック 状に集 中し ており ,頭骨 ととも に槍の 可能 性のあ る木器 が出土 して いる. 小野氏 は,出 土 し て い る 象 の遺 体 が 同 一 個体 に 由 来 し ,肉 食 獣 の 噛み 痕もな いこと から, この 部分が 狩猟解 体場Km. h耐 崗ngSiteであ る と 判 断 を しめす .さら に骨製 クリー ヴァ ー製作 にとも なうチ ップ の存在 にもと づぃ て , 狩 猟・解 体によ って 打製骨 器素材 を獲得 し,そ れを 加工し た道具 を用い てさ らに解 体作業 をすす め る ,とい う循 環的な プ口セ スが成 立して いる こと指 摘する ,

  第8章で は , 前 半 で打 製 骨 器の 素材と 形態 をめぐ る問題 ,後半 で骨器 ・木 器・石 器の相 互関係 の問 題 に 検 討 を く わえ , 第m部 を総 括 する, まず, ビルツ イン クスレ ーベン ,立が 鼻遺 跡,キ ャスパ ーなど の 資 料 か ら,き わめて 少数 の石器 と対応 するも の,大 多数 を占め る使い 捨ての 不定 形のも の,さ らに圧 倒 的 な 比 率を占 める破 砕骨 片とい うのが ,地域 にも年 代に もかか わりの ない普 遍的 な状況 である と指摘 す る , っ づいて 僅少な がら 見出さ れる石 器と対 応可能 な形 態の打 製骨器 が,打 製石 器製作 のなか で形成 さ れ た 規 範をこ となっ た素 材に適 用した もので あるこ とを 指摘し ,技術 的・形 態的 な共通 性の反 面で, 異 質 な素材 を採 用した 結果, 異なる 機能を 果た してい ること を指摘 する ,

  後 半部 では, はじめ にニー ダー ザクセ ン州シ ェーニ ンゲン で発 見され た約400.∞ 年前の狩猟解体場の 事 例を中Jふ として ,動 物遺体 ・木製 の槍・ 石製ス クレ イパー のあい だに, 狩猟 対象・ 狩猟用具・狩猟用 具 の 工 具とい う有機 的な 関係を 想定で きるこ とを指 摘す る.っ づけて シェー ニン ゲン・ ピルツ インク ス レ ー ペ ン・ヴ ェルテ シュ セレー シュな どの石 器の検 討に もとづ いて, 木製の 槍が 唯一の 効果的 な狩猟 用 具 で , 石器は 槍の加 工・ 解体処 理に用 いられ ていた とい う見解 を導く .そし てフ リソン による 解体実 験 の 結 果 にもと づいて ,打 製骨器 が解体 処理に 効果を 発揮 するこ とを指 摘した のち ,マー ニアが 提案し た   「 道具 の作り 分け・ 使い分 けモ デル」 に批判 的な検 討をく わえ ,すでに発達したホモ・エレクトゥスの 段 階 に は,対 象の違 いに もとづ く骨器 ・木器 ・石器 の使 い分け が確立 してお り, 中期旧 石器時 代以降 に も 基本的 に踏 襲され て行く ことを 指摘す る.

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  9章 で は , 現 生 デ ー タ に よ る 古 生 態 復 原 の 基 盤 が 「 斉 一 性 原 理 」 に あ る こ と を指 摘 し た の ち , ア フリ カ ゾ ウ ・ ア ジ ア ゾ ウ の 生 態 に 関 す る デ ー タ を 検 討 し , 日 常 的 な 行 動 圏 と 特 定 の 条 件 の も と で の 長 距 離 移 動 と い う ふ た つ の 要 因 が , ゾ ウ の 行 動 範 囲 を 決 定 し て し ゝ る こ と を 指摘 す る . そ し て 野尻 湖 周 辺 に 生 息 し て い た ナ ウ マ ン ゾ ウ の 古 生 態 の 復 原 に は , 起 伏 に 富 ん だ 地 域 に 生 息 し , 山 地 を 超 え て 移 動 す る 南 イ ン ド の ア ジ ア ゾ ウ の 観 察 デ 一 夕 が , 平 坦 な 乾 燥 地 域 に 生 息 す る ア フ リ カ ゾ ウ よ り 適 合 的 で あ る と 判 断 す る . そ の 前 提 の も と に , 野 尻 湖 と 武 蔵 野 台 地 と の 距 離 に も っ づ い て 最 大 移 動 距 離160 ‑200km, 高 温 季 の 野 尻 湖 周 辺 ・ 低 温 季 の 武 蔵 野 台 地 , こ の ふ た つ の 生 息 圏 の あ い だ の 季 節 的 移 動 と い う モ デ ル を 提 案 す る .   10章 で は , 仮 説 の 追証 / 反 証 . 「 中 位 理論 」 を め く ゛ る 問題 ・ 自 然 の 支 配 /自 然 へ の 適 応 の テ ーマ に そ っ て 理 論 的 な 検 討 が 行 わ れ , 第9章 ま で の 具 体 的 な 叙 述 ・ 分 析 の 成 果 を 整 理 ・ 統 合 す る , 小 野 氏 は , 考 古 学 が , 生 物 学 な ど と 同 様 , 経 験 科 学 で あ り , デ ー 夕 群 の 性 質 に よ っ て 追 証 / 反 証 の プ 口 セ ス に 一 種 の 非 対 称 性 が 介 在 す る こ と を , 氏 自 身 が 提 示 し た 野 尻 湖 周 辺 の ゾ ウ の 古生 態 モ デ ル に も とづ ぃ て 指 摘 す る , っ づ け て , 武 谷 三 男 の 認 識 の3段 階 論 を 援 用 し , 現 象 論 ・ 実 体 論 ・ 本 質 論 を ビ ン フ オ ー ド の 理 論 階 梯 に 対 置 す る , そ し て , 考 古 学 の 場 合 , 「 法 則 」 も 経 験 則 の レ ベ ル に と どま る の で あ っ て ,本 質 論 に は 目 的 論 が 滑 り こ む 危 険 が 大 き く , 実 体 論 の 段 階 の 多 様 陸 を み と め る , そ の 限 界 を 追 求 す る こ と が 生 産 的 で あ っ て , 本 質 論 は フ イ ー ド ・ パ ッ ク の 参 照 点 と し て 機 能 を 期 待 す べ き だ , と の 見 解 を し め す .   打 製 骨 器 を 対 象 と し た 研 究 は , 傍 流 と い う よ り も , 学 界 の 関 心 の 対 象 外 に あ る の が 現 状 で あ る , こ の よ うな 状 況 の も と で 小野 氏 が 打 製 骨 器 を 関心 の 中 心 に 据 え ,英 文 サ ブ タ イ ル(an altemative perspoctive on palaeolithic)に あ る よ う に , 異 な っ た 視 点か ら の 旧 石 器 社 会像 の 構 成 を 試 み た こと は , ま こ と に ユニ ー ク で 野 心 的 で さ え あ る と い え る . 本 委 員 会 は , 第 一 に こ こ に 見 ら れ る 氏 の 意 欲 を 高 く 評 価 す る ,   打 製 骨 器 の 存 在 を 強 調 す る 研 究 者 は 皆 無 で は な い . と く に 北 米大 陸 で は , い わ ゆるFirst Americanの 問 題 と か ら め て , 打 製 骨 器 の 存 在 を 強 調 す る 研 究 者 が い る , し か し そ の 大 部 分 は 経 験 的 あ る い は 主 観 的 な 判 断 に も と づ ぃ て お り , 十 分 な 説 得 陸 が と ば し い . 氏 は , 先 行 研 究 の 成 果 を 消 化 す る と と も に , み ず か ら 実 験 研 究 を お こ な い , そ こ で 得 ら れ た 所 見 を , 北 米 大 陸 の パ レ オ イ ン デ ィ ア ン 期 の キ ャ ス パ ー 遺 跡 資 料 を 検 討 す る こ と に よ っ て , 補 強 ・ 補 足 し , 骨 の 変 形 ・ 破 砕 ・ 劣 化 等 , 打 製 骨 器 研 究 の 基 礎 と な る デ 一 夕 群 を 学 界 共 通 の 財 産 と し て 提 示 し て い る , 委 員 会 は こ の 点 も 本 論 文 の 重 要 な 意 味 で あ る と 評 価 す る ,   氏 の 分 析 に よ っ て , 打 製 骨器 の ふ た つ の カ テ ゴル 一 , す な わ ちCurated1olとExpedient Toolが こ と な っ た 歴 史 的 な 意 味 を 持 っ て い る こ と が 明 ら か に な る , 石 器 と 対 応 す る形 態 を そ な え たCLUated Toolは , す で に ホ モ ・ 工 レ ク ト ゥ ス 段 階 か ら 解 体 処 理 の た め の 道 具 と し て , 道 具 の 作 り 分 け ・ 使 い 分 け の シ ス テ ム の な か で 明 確 な 位 置 を 占 め て い る . し か し , 後 期 旧 石 器 時 代 に 石 刃 技 法 が 成 立 ・ 普 及 す る と と も に , 狩 猟 用 具 と し て の 磨 製 尖 頭 器 に 特 化 し , ヨ ー 口 ッ パ で は 急 速 に 消 滅 し てゆ く , 一 方 ,Expehent110dは パ レ オ イ ン デ ィ ア ン 期 , す な わ ち 北 米 大 陸 で 後 期 旧 石 器 時 代 末 期 に 対 比 さ れ る 時 期 ま で 存 続 し , そ れ 以 後 も 狩 猟 民 社 会 で 存 続 す る こ と が 予 想 さ れ る , こ こ で ,QlmtedTdの 生 産 ・ 使 用 の な か で 石 刃 技 法 が 果 し た 役 割 が 浮 か び 上 が り , 石 刃 技 法 の 出 現 を 指 標 と す る 旧 石 器 時 代 の 画 期 の 設 定 が 妥 当 な も の で あ る こ と を 確 認 す る こ と が で き る . こ と な っ た 視 点 か ら の 旧 石 器 時 代 像 の 提 示 , と い う 氏 の 意 図 は 十 分 に 実 現 し て い る と い え る . 武 谷 の 三 段 階 認 識 論 に も と づ く 考 古 学 の 理 論 的 側 面 に か か わ る 氏 の 見 解 も ユ ニ ー ク な も の で あ り , 議 論 の た め の 議 論 で は な く , 研 究 内 容 を 豊 か な も の に す る と い う 目 的 を 前 提 と し た 生 産 的 な 議 論の 展 開 を 目 指 す 姿勢 が 明 確 に な っ て いる .

  批 判 を く わ え る 余 地 が な い わ け で は な い . 第1章 で 氏 が 提 案 す る 比 較 の 方 法 は 氏 が 比 較 考 古 学 に 言 及 し て い る に も か か わ ら ず , き わ め て 正 統 的 な 考 古 学 研 究 の 枠 組 み に と ど ま っ て い る , そ の 結 果 , 打 製 骨 器 の な か のO] 悶 制TOolExpentT1の こ と な っ た 意 味 が , 読 者 の 読 み と り に 任 さ れ て い る と 批 判 す るこ と も で き よ う .

  し か し こ れ は , す で に 指 摘 し た 本 論 文 の 積 極 的 な 意 味 に く ら べて マ イ ナ ー な 問 題で あ る , 本 委 員 会 は,

こ の 論 文 が 博 士 ( 文 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 充 分 な 内 容 を 備 え て い る 点 で 全 員 の 見 解 の 一 致 を 見 た 次 第 で ある ,

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学位論文審査の要旨 主査    教授    林    謙作 副査    教授    菊地俊彦 副査   助教授   小杉   康

学 位 論 文 題 名

打製骨器論―旧石器時代の探究

  本論文の意図は,旧石器時代の打製骨器をめぐる諸問題を検討し,旧石器文化に新しい視点から検 討を加えることにある.後期旧石器時代以降に顕著な存在となる磨製骨器については,すでに膨大な 研究 の 蓄積 があ るが ,打 製 骨器 に対 する関心は低調であ り,本格的な研究はきわめて 少ない.

  小野氏は,まず牛骨を対象として,荷重・加撃による骨の変形゜破砕過程の実験をおこない,人為 的に破砕された骨の特徴を把握する.ついで北米パレオインディアン期のキャスパー遺跡の資料を検 討し,実験結果の裏づけをおこなうとともに,実験によっては観察できなかった経年変化による骨の 劣化にともなう現象をも観察記載する.

  打製骨器の具体的な記述分析のなかでは,中欧を中心とするヨー口ッバの資料にもとづいて,圧倒 的な比率を占める人為的に破砕した骨片,やや多数の二次加工のある骨器,ごく少数の石器と共通す る形態の骨器という構成が普遍的な姿であること,中期旧石器時代末期・後期旧石器時代初期が,打 製・磨製の骨器の移行期にあたり,後期旧石器時代に入って溝切り技法の確立とともに,ヨーロッパ では打製骨器は急速に消滅にむかうことが明らかにされる.これに対して,インド亜大陸をふくむア ジアでは,後期旧石器時代に入っても打製骨器が残存し,シベリアでは更新世末期の事例も報告され ているが,その原因はまだ明らかでない.日本では,長野県立が鼻遺跡(野尻湖底)の資料のなかに 骨製クリーヴァーなど原位置を保っている資料カ靖!在することを指摘し,この遺跡がナウマンゾウを 対象とした狩猟・解体の場であったことを論証する.そしてドイツ・ビルツインクスレーベンの資料 にもとづくマーニアの提出したモデルに検討をくわえ,前期旧石器時代のホモ゜工レクトゥス段階で,

すでに労働対象による道具の作り分け・使い分けが確立していたこと,そのなかで打製骨器は狩猟獣 の解体を主要な用途としていたが,石刃技法の確立とともに石製工具・骨製工具が発達した結果,溝切り 技法による磨製尖頭器が骨器の主流を占めるにいたり,ヨー口ッパでは打製骨器は急激に凋落するこ とを指摘する.

  ついで,アフリカ象゜アジア象の生態に関するデータを紹介・検討し,象の行動が日常的な行動圏の なかと.周期的な長距離移動のふたつの要因を含むことを指摘し,それにもとづいて野尻湖周辺にナウ マン象が生息したのは高温季に限られ,低温季には武蔵野台地に移動した,という仮説を提示し,.これ によって,北関東地方の大規模な旧石器時代遺跡の存在を説明できることを指摘する,さらに,この 仮説の論証を例として,武谷三男の認識の三段階論を援用して,メ夕・セオリーへの接近を強調する ビンフオードの主張に批判をくわえ,考古学が経験科学である以上,実体論の段階での分析・仮説の 構築が,もっとも生産的であるとの主張を展開する.

‑ 4一

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本論文は,これまで注目を浴びることの少なかった打製骨器に焦点をあて,明確な判定と分類の基準 を提示し,あわせて打製骨器の主要な機能とその歴史的な意味を明らかにしている.審査委員一同は,

こ の 論 文 の 内 容 が 博 士 ( 文 学 ) の 学 位 を 授 与 す る に 十 分 な も の と 意 見 の 一 致 を 見 た .

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参照

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