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多層カーボンナノチューブによる生体材料の表面改質

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 歯 学 ) 寺 田 典 子

学 位 論 文 題 名

多層カーボンナノチューブによる生体材料の表面改質 学位論文内容の要旨

〜多層カーボンナノチューブを用いた細胞培養担体の開発〜

[緒言]カーボンナノチ ューブ(CNTs)は、化学的安定性、機械的強度、電気特性だけでな く生物学的、医学的特徴 などにも優れていることから多方面での応用に期待されている。

最近では生物学的、医学 的分野での研究報告が多くみられ、特にCNTsには細胞親和性があ るとの報告から、CNTsを 用いた細胞培養担体の研究も多い。他方、コラーゲンコートされ た 細胞 培養用ディッシュは高 い細胞付着性を持っことから広く使用されている。そこ で 我々は、コラーゲンコー トされたディッシュに細胞親和性のあるCNTsをコートさせ、新た な細胞培養坦体を開発することを目的とし研究を行った。

[材料およぴ実験方法] 精製した多層カーポンナノチューブ(MWCNTs)を分散性を高めるた め、カルボキシル化し、コール酸ナトリウム水溶液(O.l‑l.Ow/v%)にMWCNTsがl‑1000ppmと なるよう均一に分散させ、MWCNTs分散液とした。これをcollagen‑coated dishに注ぎ、数時 間静置後、洗浄、室温乾燥させ、MWCNT‑coateddishを作製した。得られたMW(ニNT‐coatedぬh 表 面をSEMにて 観察 し た。MWCNT.coateddishにマウス骨 芽細胞様細胞(MC3T3.El) を 1×105cells/35mmdishとなるよう播種し、通法にて1_3日間培養し、経時的にGiemsa染色での 光 学顕 微鏡観察、SEM観察、心amerBluemによる細胞活性評価、細胞増殖率の算出を行 つ た。細胞付着性に関しては、0.02%、1%topsin‐EDTAを細胞培養中のdishに作用させ、dish 上の残存細胞数から評価した。

[結果および考察]MWCNTs分散液濃度、作用時間が増せばconagen上のMWCNTsも増すが、

凝集体が生じた。100ppm分散液を3時間作用きせるとcollagenにMWCNTsを均一に凝集体な く付着させることができ た。また、MWCNT‐coateddishは高い透過性を持ち、従来のCNTs を 用 い た 多 く の 細 胞 培 養 担 体 で 困難 であ った 光学 顕 微鏡 細胞 観察 が可 能で あっ た。

MWCNT‐coateddishの細胞活性、細胞増殖率はcouagen‐coateddishと比べやや低いものの、

collagenの高い細胞親和性を 考慮するとほば同等と考えられた。細胞付着性試験では 、 trypsinーEDTA濃度に関係なくc011agenlcoateddish上の細胞が数分で全て剥離したのに対し、

MWCNT‐coateddish上の細胞は30分の処理でもdish上に残存し、高い細胞付着性を示した。

こ の細 胞付 着能 は、MWCNTsと 細胞 との 機械 的結 合 、MWCNTsのカルポキシル化、比表 面 積の増大、細胞接着因子の増大によると考えられた。

〜多層カーボンナノチューブのチタンへの付着応用〜

546 ‑

(2)

[緒言]歯科用インプラントの研究の中でも歯根膜付着型のインプラントの研究は非常に 興味深く、歯槽骨への咬合圧緩衝、咬合圧センサーなどの特性を持っことが考えられる。

実際、インプラント表面改質による歯根膜付着の報告がある。他方、CNTsには生体親和性、

高 い 細 胞 付 着 能 が あ る こ と が 過 去 の 研 究 で も 確 認 さ れ て い る 。 こ の こ と か ら 、 MWCNT‑coated dishの作製方法を歯科用インプラントで頻用されているチタンに応用し、チ タン表面に強固に細胞付着させる研究を行った。

[材料およぴ実験方法]鏡面研磨した16x5xlmmのチタン板(polished Ti plate)を80℃下で 10w/v%の3‐ammopropylロiethoソsilaneを12時間作用させてアミノ化した。O.1%アテロコラ ーゲン水溶液中に4℃下で3時間浸漬し洗浄、室温乾燥させた(c011agen‐coatedTiplate)。次 に、100ppmMWCNTs分散液をcollagen・coatedTiplateに3時間室温で作用させ、洗浄、゛室温 乾 燥さ せMWCNT−coatedTiplateを作 製した。3種の チタン 板の表面 をSEM観察し、 表面 粗 さ を 測 定 し た 。 ま た 、MWCNT‐coatedTiplateのチ タ ン 板の 代 わ りにcoVerglass

(MWCNT−coatedcoverglass)を用いてc011agcnとMW(NTSの付着状態をSEMにて観察した。

さらに各チタン板にMC3T3_E1を8×103ce11s/plateで播種し、通法にて培養後、MWCNTIcoated dishと同様に経時的にSEMでの細胞観察、細胞増殖率の算出を行い,0.02%缸坤sin‐EDTA を用いて細胞付着性を評価した。

[結果 およぴ考 察]MWCNTIcoatedTiplate上に は凝集 体なくMWCNTSが均一に付着してお り、洗浄などの操作で脱落することなく強固に付着していた。表面粗さはMWCNT‐coatedTi plateが最も粗く、数十nmスケールからサブミクロンスケールの凹凸が確認された。断面観 察では、150・300凹lの厚みでcollagenが付着し、その上に薄く一層のMWの冊が付着してい た。MWCNT ̄coatedTiplate上のE1細胞の増殖率は、他の2種類のチタン板よりやや低いが、

経時的に増殖していた。但し、対照としたチタンやcollagenは極めて細胞親和性が高いため、

MWCNTsコート による 細胞親和 性も良 好なものと考えられた。また細胞付着性試験では、

collagen‐coatedTiplatc上 の 細 胞がt卵sin処理10分後には 全て剥離 したの に対し、

MWCNT‐coatedTiplate上では約9%の残存細胞が認められた。このことから、MW(ニNT‐coated Tiplateの非常に高い細胞付着性が確認された。この細胞付着性の要因はMWCNT‐coatedmsh と同じであると考えられた。

[ ま とめ] 適切に処 理したMWCNTs分散液 を用いる ことによ り、MWCNTsを 均一に 凝集体 なく付着させたMWCNT‑coated dishおよO‑Ti plateを作製することが可能であった。両者のコ ート物は洗浄、培養処置、トリプシン処置で剥離することはなく安定し、高い細胞親和性 を 示したこ とから、 細胞培 養に応用 することが可能であると考えられた。MWCNT‑coated dishは、高い細胞付着能を有していることから、通常の培養担体には付着、培養しにくい細 胞も付着させる可能性が推測された。一般にCNTsから成る細胞培養担体は光学的に不透明 であるが、本MWCNT‑coated dishは、光学顕微鏡観察が可能な新たな細胞培養用担体となり える可能性が示唆された。MWCNT‑coated Ti plateは、インプラント表面に応用することに より、表面に高い細胞付着性を付与し、インプラント周囲組織と強固に接着することがで きる可能性が示唆された。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

多層カーボンナノチューブによる生体材料の表面改質

  審 査 は 、 審 査 担 当 者 全 員 出 席 の 元 、 申 請 者 の 研 究 要 旨 の 説 明 後 、 本 研 究 、 提 出 論 文 と そ れ に 関 連 し た 事 項 に つ い て 口 頭 試 問 の 形 式 に て 行 っ た 。 審 査 論 文 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

  カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ(CNTs)は 、 化 学 的 安 定 性 、 機 械 的 強 度 、 電 気 的 特 性 に 優 れ 、 高 い 生 体 適 合 性 も 推 測 さ れ て お り 、 多 方 面 で の 応 用 が 期 待 さ れ て い る 。 そ こ で 我 々 は CNTsをcollagen‑coated dish表 面 に コ ー ト さ せ 、 新 た ぬ 細 胞 培 養 坦 体 を 開 発 し 、 そ の 培 養 特 性 を 評 価 し た 。 さ ら に 同dishの 作 製 技 術 を 歯 科 用 イ ン プ ラ ン ト で 主 に 用 い ら れ る チ タ ン に 応 用 し 、 チ タ ン へ の 細 胞 付 着 性 を 向 上 さ せ る こ と を 目 的 と し た 。   精 製 多 層CNTs(MWCNTs)に 水 酸 基 を 付 与 し 、100ppmと な る よ う コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 に 均 一 に 分 散 後 、collagen‑coated dishに3時 間 作 用 さ せ 、MWCNTsを 凝 集 体 な く 均 一 に コ ー ト さ せ たMWCNT‑coated dishを 得 た 。 得 ら れ たdishは 、 高 い 透 光 性 を 持 ち 、 従 来 のCNTsを 用 い た 担 体 で は 困 難 で あ っ た 光 学 顕 微 鏡 観 察 が 可 能 と な っ た 。 ま た 、 良 好 な 細 胞 増 殖 、 細 胞 活 性 を 認 め 、 通 常 で は 細 胞 が 剥 離 す るtrypsin‑EDTAを 用 い た 細 胞 付 着 性 試 験 で はMWCNT‑coated dish上 の 細 胞 が 多 く 残 存 し て い た 。 ま た 、 鏡 面 研 磨 チ タ ン 板 を ア ミ ノ 化 し 、 ア テ ロ コ ラ ー ゲ ン を 付 着 さ せ 、MWCNT‑coated dishの 作 製 法 と 同 条 件 で MWCNTs分 散 液 を 作 用 さ せ た と こ ろ 、MWCNTsは 凝 集 体 な く 均 一 に コ ー ト さ れ た(MWCNTcoated Ti plate)。MWCNTsは コ ラ ー ゲ ン を 介 し チ タ ン 表 面 に 強 く コ ー ト さ れ 、 通 常 の 培 養 操 作 で は 剥 離 し な か っ た 。 ま た 、 こ の コ ー テ ィ ン グ 層 の 厚 み は150‑300nmで 、MWCNT‑coated Ti plateの 表 面 粗 さ はMWCNTsに よ り 有 意 に 増 加 し た 。MWCNTcoated Ti plateに もdish同 様 、 良 好 な 細 胞 増 殖 と 高 い 細 胞 付 着  ̄ 陸 が 認 め ら れ た 。 こ のMWCNT‑coated dishとTi plateの 付 着 性 は 、 細 胞 とMWCNTs の 機 械 的 結 合 だ け で な く 、MWCNTsに よ る 比 表 面 積 の 増 大 やMWCNTsの カ ル ポ キ シ

政 夫

善 文

川 理

北 亘

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

ル 化が 細胞接 着因子をより多くMWCNTs に吸着させたことに因ると推測された。

   以上のことから、MWCNT‑coated dish の新たな細胞培養用担体としての可能性や、

MWCNTcoated Ti plate の特性から、細胞接着能を有した表面を持っチタン製インプラ ントの開発に応用できる可能性が示唆された。

   論文の審査にあたり、論文申請者による研究の要旨の説明後、本研究ならびに関連 する研究にっいて口頭試問を行った。

   主な質問事項は、

    1 ) MWCNTs の作製法、

    2 ) MWCNTs とコラーゲンの結合様式、

    3 )  MWCNTs 分 散 液 作 製 に用 い た コ ー ル 酸 ナ ト リ ウ ム 水溶 液 の 為 害 性、

    4 )  MWCNT‑coated dish およびTi plate 上でのEl 細胞の活性、増殖について、

    5 )  MWCNT‑coated dish お よ び Ti plate の 細 胞 付 着 能 に っ い て    等であった。

   いずれの質問にっいても、申請者から適切かっ明快な回答、説明がなされた。また

将来の研究の方向性についても示された。このことから、申請者には、研究に対する

立案、遂行、結果の収集とその分析と評価を十分に行う能カが備わっていると考えら

れた。当該研究は、CNTs を生化学培養機器や外科・歯科用インプラント材料にコー

ティングする方法を独自に開発し、それらが優れた細胞付着性・生体適合性を示すこ

とを見出した。研究内容は、特に注目を集めているナノ材料に関する先進的研究であ

り、オリジナリティーにも富むことから、その内容は高く評価された。また、申請者

は、関連分野にも幅広い学識を有し、新たな研究を常に模索する熱意を持ち、研究に

邁進し、関連分野に大きく貢献することが示唆され、将来性にも高い評価が認められ

た。以上のことから、申請者は、博士(歯学)の学位に値するものと認められた。

参照

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