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NIVIR による脂質結合性夕ンパク質の構造生物学的研究

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Academic year: 2021

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(1)

博士(薬学)畠中(市川)さおり

学 位 論 文 題 名

NIVIR による脂質結合性夕ンパク質の構造生物学的研究

―PKCQ のシステインリッチドメインおよび      ダニ アレルゲン Derf2 の構造解析―

学位論文内容の要旨

【序論】

  タンパク質の機能は分子表面や内部の化学的性質や構造によって決まるため、立体 構造解析は機能を理解する上でしばしば重要な役割を果たす。特に脂溶性リガンドを 結合するタンパク質は、リガンドが分子表面だけでなく分子内部や分子間・ドメイン 間接触面に結合することが多く、結合により立体構造や酵素活性、細胞内局在などが 大きな影響を受けるため、それらのメカニズムの理解や薬剤による制御のために構造 生物学には大きな貢献が期待できる。本研究では、核磁気共鳴(NMR)法を用いて異 なる2種のタンパク質の立体構造解析を行なうとともに、脂質様リガンドとの結合部 位について検討した。

【 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼCaの 制 御 ド メ イ ンCRD2のNMRに よ る 構 造 解 析 】 .   プロテインキナーゼC (PKC)は、ホルモンや神経伝達物質など種々の細胞外刺激に よる細胞内情報伝達系でタンパク質をりン酸化する酵素である。その酵素活性はホス ファチジルセリン(PS)やジアシルグリセロール(DAG)の存在下で飛躍的に高まり、

また発ガンプロモーターである12‑伊テトラデカノイルホルボール13―アセテート (TPA)のようなホルボールエステルによっても活性化される。本研究では、cPKCに属 するPKCaの2番目のCRD (CRD2、ア ミノ酸65残基)の立体構造解析をNMRを用いて 行なった。その結果、CRD2は2つの小さなpシートと1つのaヘリックスからなり、シ ートの内1っは3つのpストランドがねじれた配置をとっていることがわかった。ま たその上にはへアピンループが覆いかぶさるように位置していた。立体構造から得ら れた知見と、PKCファミリーや相同性タンパク質CRDの一次配列の比較から、このへ アピンループがジアシルグリセロールやホルボールエステルとの結合に関与している と推定した。

【 ダ ニ ア レ ル ゲ ン Derf2 の 立 体 構 造 と 機 能 の 解 析 】

コナヒョウヒダニDermatophagoides farinae やヤケヒョウヒダニD .

     ー141 ー

(2)

pteronyssinusとい った ハ ウス ダス ト中 のダ ニは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息な ど の症 状を 引き 起こ す最 も重 要な アレ ルゲ ンの発生源である。 グループ2アレルゲン   (Derf2とDerp2) は ダ ニ 抽 出 物 中 の 主 要 ア レ ル ゲ ン で あ る が 、 そ の 生 物 学 的 機 能 は 全 く わ か っ て い な い 。 本 研 究 で は 、Derf2( ア ミ ノ 酸129残 基 ) の 立 体 構 造 解 析 をNMRを 用 い て 行 な っ た 。 そ の 結 果 、Derf2がs―typeの イ ム ノ グ ロ ブ リ ン ブ ォ ー ル ド を もつ 単一 ドメ イン タン パ ク質 であ るこ とが わか った 。グ ルー プ2ア レ ル ゲ ン は 、 近 年MLタ ン パ ク 質 に 分 類 さ れ た。 その 構造 類似 性の 比 較か ら、 グル ー プ2ア レ ル ゲ ン がロ シー トを 二枚 貝の よう に開 閉し てり ガン ドと 結 合す る可 能性 が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、Derf2が 大 腸 菌C株 の 表 面 に 結 合 す る こ と を 実 験 で 見 出 し た 。Derf2に は 塩 基 性 残 基 の ク ラ ス タ ー が あ り 、 ま た 他 のMLタ ン パ ク 質 は 脂 質 を 結 合 す る こ と な ど か ら 、 グ ル ー プ2ア レ ル ゲン はり ポ多 糖の りピ ドA部 分の よう な 構造 の脂 質と 結合 する かも しれ ない と考 えた 。

【Derf2の抗体認識部位の 解析】

    IgEはア レル ゲン の 部分 配列ではなく 立体構造を認識している。アレルゲンの 立体構造による情報はエピトープ解析に有用であり、アレルゲン特異的免疫療法(減 感作 療法)のための安全かつ効果的な新し い治療ワクチンの開発に役立っと期待さ れ る 。 あ る 患 者 血 清 で 調 べ ら れ た43種 の 変 異 体Derf2のIgE結 合 能 の 結 果 を 用 いて 、立 体構 造にIgEエ ピト ープ 領域 をマ ップ した 。ま た、患者血清IgEの結合を 阻 害 する2種 のモ ノク ロー ナ ルIgG抗 体の エピ トー プをNMRに より 調べ た。 抗原 抗 体複 合体 は結 合強 度が 高く 高分 子量になるため、NMRシグナルの直接観測が困難で ある が、 界面 活性 剤を 適用 する ことでこの問題を解決し、2種のモノクローナル抗 体のエピトープを検出することに成功した。

【 総括 およ び展 望】

NMRに よ る 立 体 構 造 解 析 か らDerf2の 生物 学的 機能 を考 察 し、 また 実際 にア レル ギ ー反 応が 起こ る際 のIgEエピ トー プの解析について検討した。ここで「なぜアレ ル ゲン がアレルゲンになるの か」という問題は、非常に興味深い問題である。食物 や 花粉 などが多種多様なタン パク質を含んでいるにも関わらず、なぜ一部のタンパ ク 質だ けがアレルゲン性を示 すのかについては、未だによくわかっていない。アレ ル ゲン の立体構造はさまざま であるが、機能的に見ると、脂質結合タンパク質や生 体 防御 関連タンパク質が多い という傾向が見受けられる。今後も立体構造解析を含 め 、ア レルゲンの生物学的機 能を視野に入れた研究が進むことで「アレルゲンがな ぜ ア レ ル ゲ ン に な る の か 」 と い う 問 題に 近付 ける ので は ない かと 考え てい る。

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(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

稲垣 五十嵐 川原 森岡

学 位 論 文 題 名

文彦 靖之 裕之 弘志

NMR に よ る 脂 質 結 合 性 夕 ン パク 質 の 構造 生 物 学的 研 究

‑PKCa のシステインリッチドメインおよび      ダニアレルゲ ンDerf2 の構造解析―

  タンパク質の機能は分子表面や内部の化学的性質や構造によって決まるため、立体構造解 析は機能を理解する上でしぱしば重要な役割を果たす。特に脂溶性リガンドを結合するタン パク質は、リガンドが分子表面だけでなく分子内部や分子間・ドメイン間接触面に結合する ことが多く、結合により立体構造や酵素活性、細胞内局在などが大きな影響を受けるため、

構造生物学的研究はそれらのメカニズムの理解や薬剤による制御を考える上で不可欠とな っている。

  申 請者は核 磁気共 鳴(NMR)法を用いて2種の脂質結合性夕ンパク質の立体構造解析を行 い,脂質様リガンドとの結合部位にっいて検討した。一っはプロテインキナ←ゼC (PKC)dの シ ステイン リッチ ドメイン(CRD)であり、もうーっはダニ主要アレルゲンDerf2である。

まず,PKCがジアシルグリセロールやホルボールエステルに結合することに着目し、申請者 はCRDドメインがそれらの脂溶性物質と結合する部位を調べることを目的として立体構造 解析を行なった。一方、ダニアレルゲンDerf2はアレルギーに関わることはよく知られて いたが、本来の生物学的機能については全く未知であり、結合するりガンドにっいても全く 情報がなかった。しかし立体構造解析を進める内に、その構造的特徴や類縁タンパク質との 構造類似性により、未知であった機能の推定が可能となった。構造生物学的アプローチとし てユニークなものであり、今後、機能未知の蛋白質が数多く報告されることを考えると、申 請者の方法論の有用性は高いと考える。

  博士論文の構成として,申請者は第1章で脂質結合性タンパク質の立体構造解析の意義に っいて述べ、またNMRによる立体構造解析の概要を述べた。第2章では、脂質結合タンパク 質 として知 られるPKCa,の2番目のCRD (CRD2、アミノ酸65残基)の立体構造解析をNMRを     ‑ 143―

(4)

用い て行な った。そ の結果、CRD2は2つの小さなDシートと1つのdヘリックスからなり、

シー卜の内1っは3つのpストランドがねじれた構造をとっていることを明らかにした。ま たその上にはヘアピンループが覆いかぶさるように位置していた。立体構造から得られた知 見と、PKCファミリーや相同タンパク質CRDのー次配列の比較から、このへアピンループが ジアシルグリセロールやホルボールエステルとの結合に関与していると推定した。第3章で は、 申請者 はダニ主 要アレ ルゲンDerf2(ア ミノ酸129残基)の立体構造解析をNMRを用 いて おこな ぃ,その 結果、Derf2がs−typeのイムノグロブリンフオールドをもつ単一ド メイ ンタン パク質で あるこ とを示し た。グル ープ2アレル ゲン(Derr2とDerp2)は、近 年MLタンパク質に分類された。その構造類似性の比較から、グループ2アレルゲンがロシ ートを二枚貝のように開閉してりガンドと結合する可能性が示唆された。また、Derf2が 大腸 菌C株の表面 に結合することを実験で見出している。Derf2には塩基性残基のクラス ターがあり、また他のMLタンパク質は脂質を結合することなどから、グループ2アレルゲ ンはりポ多糖のりビドA部分のような構造の脂質と結合するかもしれなぃと考えた。第4章 では 、第3章で明 らかにな ったDerf2の立体 構造に基づき、IgE抗体のエピトープを解析 し た 。 ま たIgE抗 体 の 結合 を 阻 害す る2種類 の 抗Derf2モノ ク ロ ーナ ル 抗 体とDerf2 との結合実験をNMRを用いて行ない、エピトープ領域を検出した。第5章では、第3章と第 4章をっなぐまとめの章として「なぜアレルゲンがアレルゲンになるのか」にっいて考察を 進めている。動植物の主要アレルゲンには脂質結合タンパク質や生体防御関連タンパク質が 多いことに触れ、Derf2の生物学的機能とアレルギーとの関係について考察し、本研究の 成果をまとめると同時に、今後の研究について展望している.

  以上 ,申請 者はNMRによる 構造解析 を通し て,PKCocのCRDドメインの構造を明らかに し,ジアシルグリセロール結合部位を明らかにし,PKCaの膜ーのターゲット機構を議論し た.なお,この研究は1998年度のJ.B.論文賞を授与されたことを付記する,申請者の特 筆すべき研究は,機能未知のタンパク質に対する構造に基づく推論である.  Derf2の研究 より,MLファミリータンパク質の一般的な性質まで議論を展開した,MD2はTLR4結合タン パク 質とし てLipidAとの 結合部位 として注 目を浴びており,配列相同性より,Derf2が 脂質結合性゛タンパク質であることを示唆した,  Derf2はアトピー 陛皮膚炎のアレルゲンと して知られているが,MD2同様にLipidAとの結合により,自然免疫系を亢進させる働きを 持っことも考えられる,このような機能とアレルギーの関連については今後の検討が必要で あるが,構造からのアプローチとしてユニークな研究を展開している,以上より,申請者の 研究は博士論文にふさわしいものと考える,

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参照

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