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精神遅滞児の語彙能力に関する研究(1) : 国語における語彙の構造(その1)

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Academic year: 2021

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(1)Title. 精神遅滞児の語彙能力に関する研究(1) : 国語における語彙の構造( その1). Author(s). 亀畑, 義彦; 大嶋, 謙一. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 39(1): 147-160. Issue Date. 1988-10. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5086. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 精神遅滞児の語桑能力に関する研究 (1) --国語における語桑の構造--その1. 亀. 畑. 義. 彦o大. 嶋. 謙. はじめに 1 ( ) 示唆を与えている, P 偉大な研究者であっ た 刀ypM” , は, 言葉の研究について 次の様な ,A. 「あること ばを聞いて, 思い浮 べる内容が豊かであるか, 貧弱であるかは, そのこと ばがどのよ うな単語群に含まれている かにもよる が, またそれ が過去の経験にもとづいて, どのような連想を ひきおこすかによ っても規定される, このこと ばに含まれている結合系のおかげで, こと ばは深さ や広さのさま ざまな知識の源泉になること ができ, こと ばのこのような意味的結合の豊かさや複雑 さや深さによ って, 人の精神発達の水準を適切に評価する ことができる,」 P.の示唆に含まれる問題を解明するためにはどのような努力 が必要とされるのだろうか. 1 J ypMR ,A. 「結合系」 という内容から, 多様な方面からの努力 が必要であろう, そして, それらが相互に作用 する中から明確な解答 が示唆されるはずである. 80年代初めま でに邦語で発表された言語研究論文173篇を展 9 60年代から19 )のは,1 1 984 村田 孝次( 3 )は ( 1 982 ) , 望している が, その半数の論文 が 「言語発達」 に関す る内容である, 他方, 二宮 昭 ( 「 0年代初めま での精神遅滞児の言語に関する研究論文 を検討した結 果, 言語発達」に 1 976年以降198 関する研 究が主流であることを指摘してい る, 村田の展望 および二宮の展望から知られる ことは健 常児およ び精神遅滞児のい ずれについても, 言語の研究は 「発達」 的観点を中心に研 究されている というこ とである. ただし, 二宮の展望では78篇の論文の検討のう ち, 邦語論文の紹 介は5篇だけ で あ る,. 「発達」 的観点とはどの様なものだろうか, 研究者によって様々 にとらえられている が, 一応の { 4 )によれ ば 「変化発達してく る行動は一見まとまり がなくて, 個人差 ) 1 986 原則がある. 村井潤一( , が大きく, また生育条件や環境因子によっ て非常に異っ てみえる, しかし行動自体 は一種 の構 成ま たは微細 な点まで精巧に整えられた一 つの体 (系) をなすと考えられる, 行動の成熟過程 は行動の 体 (系) が組織化され, 実体化される過程として表わすこと ができる. この体 (系) の力動的形態 学」 が発達の原則であると述 べている. される必要 がある, しかし 言語研究も 「発達」 的に捉えていく場合にはこの原則の範囲内で研究・ 「 的体系がある , 二宮が指摘す るよ 他方, 「言語」 とは文化的遺産であるという 言語」 としての学問 5 ( )「精神遅滞児の言語発達研究では, 単に精神遅滞児の言語発達過程を詳細に分析したり, そ うに, こでみられる様々な障害を 改善する教育 方法を開発していくことだけでなく, それを通して, 精神 薄弱児にとっ て, ひいては人間にとって, 言語とは何なのかということを常に問い続 ける姿勢 が肝 要かと思われる.」 と述べている が, 同感である. 147.

(3) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. 「言語」 とく に国語の特徴を考慮するところか ら見えてく る構造の上に, 言語生活 を豊かに営む , ための条件を考 える必要があ る, それは健常児 にとっ ても また障害児 にと ても共通な条件 でな っ , ければならない, 他方, 障害児, 特に精神遅滞 児の言語 の様相を検討すること によ て これま で っ , 通則とさ れた言語発達 の共通理論とは異っ た側面を考える必要があろう すなわち 「発達障害児の . , 言語獲得 の研究との相互交流も必要 である これらの領域の知見が蓄積されたとき には 言語獲得 , , に関してわれわれが現在もっ ている考え方 を修正しなければならないかも知 れない さらに 発達 , , 障害児の言語発達の促進 に役立つ知見をもた らす言語発達 研究が行われる必要もある ( } 」とする意 ,6 見にま っ たく賛同したい. 尚, 本論は三部に分けて論述しようと考 える 第一部 は「国語における語桑構造 を主題として . 」 , 国語の語桑構造の概略を検討すると共に 発達心理学等々の知見も含めた考察を予定する 第二部 , , は 「動詞絵画語桑検査 (Ve ) の作成」 を主題として, この検査の作 rbs Picture Vocabulary Te t s 成過程と結 果につい て検討する. 第三部は 「精神薄弱児の語桑能力 に関する研究 を主題として 」 , 「絵画語い発達検査 (PVT) 7 ( } 」 と 「動詞絵画語桑検査 (VPVT)」 の検査結果より, 健常児およ び精神遅滞児の語 桑能力の比較と 精神薄弱児 における語桑能力 に関する要因等々 について検討し , た い.. 1 . 国語における語員の実態 はじめに, 国語における語桑 の実態について 主として品詞構成に視点 をあてて検討 する ( } , ,8 「 ( 9 } 第1図 は 日本国語大辞典」の見出し語 約44万語を , 第1図 〔辞典見出し語の品詞別統計〕 品詞別に分類したものである. ( )内の数字は構成比率 を表わしている. この図 によれ ば 国語の語桑の品詞別 ,. 7 1 1 ・ 子見出し 3 9 7 4 4 ( 9 ) o 7 ,. 構成は約7割が名詞である, 次いで固有名 詞が約7% で ある, この両方 を合せると8割が名詞として登録・ されて 「 い る こ と に な る, この図で いることにな の 図 で 子見出し 子 見 出 し」 と分類された語 と 分 類 さ れ た言 名詞 3 2 0 8 2 4 ( 7 3 1 ) ,9. 員 は, あ る 項 目 の 中 で - 字 下 げ改 行 の 形 で 意 味 を 説 明 し て い る も の で, 例 え ば「手 に 汗 を 握 る」「手 も 足 も 出 な い」 等 々, 主 と し て 慣 用 句 に よ っ て 構 成 さ れ て い る 語 桑 で あ. る, また, 「その他」として分類さ れた語桑の品 詞はA表 の通りである, これらの資料を参考にすると 国語の語 , 桑 は圧倒的 に名詞が多いことが理 解される, ただし , A表 代名詞. 助動詞. 形 容詞. 4381 ( 1.00 ). 語素. 形 容動 詞. 170 (0.04 ) 617 (0.14 ). 4760 ( 1,09) 5483 (1.25). 接頭語. 105 (0.02). 接尾語. 副詞. 148. 「その他」 の内わ け) ( 695 (0,16 ). 連 体詞. 180(0.04). 枕詞. 291 ( 0,07) 477 ( 0.11). 感動詞. 926 (0,21). 連語. 2259 (0.52). 接続詞. 243 (0.06 ). 品詞表示 ナシ. 助詞. 305 (0.07 ). 五十音. 613 ( 0,14) 48 ( 0.01).

(4) . 精神遅滞児の語桑能力に関する研究 (1). ると は言 この資料は辞典を分類 しているという性格 から日常生活の中での語桑の実態を表わしてい である, 「 えない, 辞典を使用するのは主として 「読む」 書く」 ための参考とするためだから 使用語桑 れる雑誌の と考えら 次に, 「読む」という日常の言語行動の中でも頻繁に使用されている 化している資 を分類 した資料を検討する, これは先の辞典による資料よりも日常の言語行動を具体 料と考えることができる, 1 0 )は現代雑誌90種の使用 第2図( 語桑について, 品詞別に分 類した ものである, 数字はその 比率を表 わ し て い る, た だ し, こ の 図 に は. など. 助詞, 助動詞, 固有名詞な どは含 まれていない. 異なり語数 は約3 方語,延 べ語数は約41万語である. この図から は, 異なり語 数の品詞 別構成において, 名詞の比率 が先 に見た辞典の名詞比率とほ ぼ同率 に な っ て い る こ と が 知 ら れ る.. しかし, 同じ異なり語数比率の うち, 動詞の比率 は辞典分類の比 第2図 〔雑誌用語の品詞別分布〕 その他形 従 率のほぼ2倍, その他の品 詞でも辞典比率の2倍になっ ている. って, 雑誌では動詞, べ と 容詞などの語 桑の比率 が全体の語桑に比べて, その比重 が重くなると言える, 延 語数で見る , がわ ことをうか 率が高い 動詞の比率 が異なり語数の約2倍となっ ている, これは特定の動詞の使用 が頻繁 せる, 従って, 雑誌という日常的な読み物で は, 語桑使用の実態は限られたいくつかの動詞 は1回限り に使用 されること, 形容詞 が多く使用されること等々 が特徴であろう, 名詞 はこの図で ば この2割とい で使用されたもの が全体の約2割もある, 名詞の語桑数 が多いことを考えるな ら , なお う数字は決して小さい数ではない, このことは, 人名, 地名などの固有名詞を除いてみても, 1回限りで使用される名詞の多い ことを推定させている. 次 に,日 常 の 言 語 行 動 の 中 で,「話 す」. 第3図 〔話 しこと ばの品詞〕. という側面か ら, 談話を分類した資料 1 1 )は実際の談話 について検討する,3図( の録音資料を品詞に分類したものであ る, 分 析 に用 い た 資 料 は延 べ 語 数, 約 8 万 3 千 語 で あ る, た だ し, 助 詞, 助 動 詞 お よ び複 合 語 は除 か れ て い る, こ. 4 4% 動 詞 2 . 司4 。 9% 名 言 , 形容詞5 4% ,. の図 を先の辞典および雑誌の分析と比 較 す る と, 名 詞 の 使用 率 が 極 端 に低 く. なっていること, 感動詞および副詞の 使用 が多く なっていること, そして, 動詞 の 使用 率 が非 常 に高 く な っ て い る. こと等々 が特徴である,. 副 詞1 2 2% 威 , . 形容動詞2 4% .. 連体詞1 6% .. 延べ. , ニュース解説(ラ この談話資料採取と同時に, 比較資料と して座談会, 講義, ニュース(ラ ジオ) 1 2 () ジオ) も録音採取されている. これらを平均文節数で比較す ると, 149.

(5) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. 日常談話の平 均文節数. 3.81 5.49. 座談会 の平均文節数 講義の平均文節数 ニュ ース の平 均 文節数. 9,31 16,48. ニュース 解 説の平均 文節数. 21.02. となっている, このことは対話的な会話の場合 に平均文節数が少なく なり 他方 , , 説明的な話 では 平均文節数が多く なっ ていること を示している . また, 日常談話 に限っ て 平均文節数 を性別 年層別等々 で比較すると , , , 男性同士 の場合の平均文節数 女性同士 の場合の平均文節数. 3.87 3 .62. 若年同士 の場合の平均 文節数 壮年 同士の場合の平均文節数. 3.37 4,09. となっ ている, 若年同士およ び女性同士 の場合の平均文節数が少ない , また, 談話の目的や態度に応 じた資料を分析すると , 事務的 談話の平均文節数. 3, 61 3,77 4 ,17. なごやか な談話 の平均文節数 改ま っ た談話の平均文節数. であると報告 されてい る, そして 談話の全文数の1/3が-文節だ けでできている文で ある, また , 一文節文と二文節文とを合せると全文数 の1/2 四文節文ま でを含め ると全文数 の3/4になるとい , われて いる. こ のことは 日常の対話 ではいかに語が少なく使用 されてい るかを知 , る資料となる. 対話の場面 では双方の話題が限定され 特に説明を必要とするような概念が共有され ているため に, , 主として 「どうだ」 「どうなった」 という状況語もしく は動作語 などで理解が 可能となる結果である とも考え られる. これ に反して, 説明文では概 念を共有させ るため に それについての説明を必要とするた めに文 , 節数が多くなると いう傾向にある . 第4図 〔幼児語の品詞〕. 次に4図は6歳児4名 (男児 1 名, 女 児 3 名) の 幼 稚 園 で , の 生 活 を 除く, 家 庭 の 日 常 生 活. 動 詞 2 0 9% .. ・. ぼる露 ぬ蔀の. 名詞の類43 .2%. .. 名詞の類. 9 30 ・ 簿. 1 2 1% ,. 形容詞の類〃, 4% 内円:異なり 外同:延べ. 感誠司など 15 ,9%. 150. 音まね語2,5%. 場面での話しことばの録音資料 ・ 3 )延 べ 語 を 分 類 したも のである,{ 数 は約 3 万 8 千 語 異 な り 語 数 , は 約 3 千 6 百 語 で あ る, 名 詞 の 類 に は名 詞 ・ 固 有 名 詞 ・ ●数 詞 ・ 代 名 詞 が 含 ま れ て い る, 形 容 詞 の 類 に は形 容 詞 ・形 容動 詞 .連 体 詞 ・ 副 詞 が 含 ま れ て い る, ま.

(6) . 精神遅滞児の語桑能力に関する研究 (1). た, 感動詞の類には感動詞・接続詞が含まれている, この図の内円は異なり語数を品詞分類したものである. 先に検討した雑誌の使用分類資料での異 なり語数分類と類似している. ただし, 幼児語の異なり語数 が少ないこと は, 幼児の語桑の少ない こと, および説明文の少ない ことを表わすものであろう. この図の外円は延 べ語数を品詞分類したものである, この結果は先に検討した談 話資料と類似し ている, 従って, 談話の検討結果 が幼児の会話においても一応当てはまるものと考えることができ る.. 以上,4つの資料をもとにして国語における語桑の実態 を, 主として品詞構成に視点をあてて検討 してきた が, 結論は, 第一 に, 日常の 言語行動にあっても, 量的にまた構成別にも名詞の使用 が高 い 第二に, 特に談話などの対話場面では動詞の使用率 が高まる, 第三に, 日常の言語行動では感 動詞・副詞といった非概念語の使用率 が高まること等々である. 辞典, 雑誌, ニュース, ニュ ース解説, 講義などの言語行動 は比較的静的な言語行動である. そ れは「読む」 「書く」 という行動領域を中心に構成 された言語行動である. これらの静的な言語行動 では主として知識の理解・表出という能力要因に作用される, 従って, その主体である概念すなわ 1 4 }を中心 ( ち「実体語」 ・とする名詞の使用 が量的にも, 構成比率においても高くなることは当然予想さ れることである, 他方, 談話などの言語行動は比較的動的な言語行動である, それは「聞く」「話す」 という行動領域を中心に構成された言語行動である, これらの動的な言語行動では主として作用・ 状態の理 解・表出という能力要因に作用される, 従 って, その主体である動作o状 態すなわち 「動 1 5 ( )を中心とする動詞・形容詞の使用 が量的 にも, 構成比率においても高く なることは当 作・現象語」 然予想されることである, これから, 日常言語行動 と言っ ても, その実態に応じて語桑の構造 が変 化することを考慮 する必要 がある. 特に子 どもの言語行動は主として 「聞く」 「話す」 という動的な言語行動 が中心 である, また, 子 どもの言語行動の内 容は日々変 化していると言われている, この点で, 子どもの語桑の実態は二重 の動的影響によって変化作用を受ける, 次に子 どもの語桑を発達的に検討する,. 2, 子どもの語員発達 1 6 }は 「1歳児の語桑は, はじめは感嘆詞であり, つぎに 子 どもの語桑の発達について, 村田孝次( , そこから名詞 が派生し, つぎに動詞, 形容詞, 副詞がこの順に生じると言われてきた.1歳前半期で は語の大半は名詞であり, 後半期にはいっ て動詞 がほかの品詞を合せて, 名詞とほ ぼおなじ種類数 に達すると言われている, 周知のように, この見解は発達心理学の ほとんど通念となっ ている,」と 1 7 ( )語桑の成長 が子 どもの言語発達を測るための重要な指標である 述 べている,また別の所で同氏 は, として, 語桑の発達に視点を当てた研究方針を次の様に述べている,「語桑量のように, 語桑をあた かも等質な語の単 なる集合としてみるよりも, 語桑の一 つの体系と して, 語桑の内部構造をとらえ ることのほう が, 言語発達についてより具体的な理解をうる助けになる,」そして, そのための研 究 方法として品詞分析が重要であることを指摘している, 子どもの語桑の調査に当 っ て, どのような 単語を知っているのかといっ た, 単に0×式調 査がさかんに行なわれていた従 来の方法と比較する と, 村田 が重視する品詞分析による方法 がはるかに子 どもの保有語桑を構 造化して捉 えることを可 能にする, 国語の語藁が体系をもつことはこれまでの語桑研究の中で明 らかにされてきた ことであ る, この成果を発達心理学 的または臨床的に応用される ことは少なかっ たこと が反省されねばなら 151.

(7) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. ない. 子 どもの語桑発達を構造化するということは, 子 どもが理解したり使用 したりする語の背景 にある意識領域を捉えることである. 言語能力が子 どもの行動体系 に影響を与えているとす るこれ までの心理学の知見は, ただ単に個々の単語の理解また は使用の実態把握だけを資料として その , 説明理論とする には無理 があろう, これまでの知見を子 ども に沿っ て実証するためには 子 どもの , 語桑についての質約o量的研究が積 み重ねられる必要があろう, と同時に国語語桑 の構造を理解す る必要もある, 子 どもの語桑 に視点を当てて, 品詞分析方法を取り入れた研究として長谷川茂ほか( 1 8 ) 村 ( 1974 ) , 1 9 ( ) 中西靖子ほか ( 2 0 ( } 石昭三 ( 1975 ) 1 9 ) などがある 7 8 これらの結果はほぼ一致し ており, 幼児の , , 語桑の内訳は全語桑数 の約半分が名詞であり, 約2割ないし約3割が動詞 その次が形容詞・副詞 , で, 一番 少ないのが接続詞であるとしている, この結果は, 幼児が身の廻りにある実体 について相 当の概念を保有していることを意味する. また動詞の保有が次 に多いということは動作 や状態の把 握が適切になされる可能性を示唆する. 形容詞・副詞が比較的少ないことは 幼児 の言語活動では , 現象事態の把握が苦 手であることを示している, 接続詞の保有数が少なくないということは関係認 識が幼児にとっ て最も苦手であることを示唆する, そして名詞-動詞-形容詞・副詞-接続詞と幼 児の語桑が発達するという知見からは, 幼児の認識活動が 実体の認識-動作・ 状態の認識-現象 , 把握認識-関係性の認識, という方向で拡大していくことを意味している. こ の方向の意味づけは あくまでも村田の指摘を基本と した品詞別分析 により推定したものである. 果して この順 序が正 , 当であるか否かは, 品詞というものが国語の語桑の正しい分類として応用できるかという 点から検 討きれなければならない. また, 発達的視点を重視するあま り, 子どもの認識活動が 例えば実体 の認識だ けを中心とした , 時期があると強調するのは行き過 ぎである. 子どもの語桑能力がどのように測定されてきたのかを諸検査を中心として検討する必要もあろう ,. 3. 諸検査における語桑 の取扱い 言語能力 のなかでも語桑に関する能力 は最も基本的なものである, このこと は これま で精神的 , 発達を診断するために開発さ れてきた諸検査を分析することによっ て明らかとなる. 精神発達を総 2 1 { ) 「マ ッ カ ー シ ー 知 能 発 達 検 査」 合 的 に診 断 す る 検 査 と し て, 「新 版 K 式 発 達 検 査」 ( 2 2 ) 「 , , 1刃ISC‐R 2 3 { ) 「田 中oビネ ー 知 能 検 査 法」 「ポ ー テ ー ジ 乳 幼 児 教 育 プ ロ グ ラ ム ( 2 4 ( ) 知 能 検 査 法」 2 5 , 」 )等 々 が あ る, ,. これらの検査の内容を分析してみると, たとえば 「新版K式発達検査」 では5 7の言価性検査項 目の なかで33項目,58%が語桑 に関する検査項目であり,127の非言語性検査項目のなか にも25項目 20% , の語桑に関する検査項目が挿 入されている. また「マ ッカーシー知能発達検査」 では全433の検査項 目のなかで115項目, 27%が言語能力を問題としているが, この115項目のうち語桑能力 に関するも の が97項目, 約84%を占めている. 「WISC-R知能検査法」では言語性検査項 目114のなかで7 9項目, 69%が語義能力 に関する検査項目であり, 非言語性検査項目191のなかにも37項目 約20%の語桑検 , 査が含まれ ている, 「田中・ビネー知能検査法」 では言語能力 に関する33の検査項目のなかで 2 , 3項 目, 70%が語桑能力検査 である. また 「ポーテージ乳幼児教 育プログラム」 でも 言語能力 に関す , る診断88項目のなかで45項目, 約51%が語桑能力を問題としている. , この様 に, 総合的な精神発達 を問題にするとき 全検査項 目のほ ぼ半分以上が語桑 に関するもの , である. この結果, 精神的発達とり わけ言語能力の診断のなかでいか に語桑能力 が重 要視されてき 152.

(8) . 精神遅滞児の語桑能力に関する研究 (1) た の か が う か が え る.. 他方, 精神的発達のなかで特に言語能力を抽象して, その実態を評 価する検査もいくつか が標準 化されたり, 発表されてきた, 言語能力を全体的に診断する検査として標準化されたものに 「言語 ( 2 6 )がある, これは全11 4の検 査項目で構成されている が, そのうち80項目, 約70%が 発達診断検査」 語桑に関するものである, 検査語 はす べて名詞である, また, 語義の発達を標準尺度化したものと 2 7 ( ) 68語の検査を発達的側面を考慮して配置 し, その語 して 「絵画語い発達検査 (PVT) 」 がある. 8語のうち63語, 約 の理解を得 点化することによ って語桑年齢を算出しようとするものであるが, 6 93%が名詞の検 査語である,. その他, 標準化はされてい ないが言語障害の実態把握 に広く用いられているものと して 「ことば 2 8 ( )がある,全29検査項目のなかで16項目,約5 5%が語藁能力を検 査する項目である, まん」 のテスト えを 検査語 はほとん どが名詞である. 同じく 標準化はされていない が, 精神薄弱児を対象に彼らの言語能力を話すo聞くo読む o 書く 2 9 ( )が という観 点から把握するために発表されたチ ェックリストとして「精神薄弱児の言語能力検査」 ある. 全検 査項目96で構成されてし・るが, このなかで40項目, 約42%が語桑に関するチ ェック項目 である. この検査が他の言語能力検査ほど語桑に関する項目が少ない要因は, 対象児 が精神薄弱児 であることから, 言語能力の基本である発音o姿勢o態度といった言語技能 を重視した構成となっ ていること があげられる, 尚, 検査チェックされる語 桑は名詞が多い, この様に言語能力だけを抽象して診 断するために考案された検査においても, 語桑に関する能力 を評価する項目がほぼ半分を越えて構成されている. この傾向は先に分析した総合的な精神発達診 断検査と同様である. そして, 語桑能力を評価するために用いられた検査語がほとんど名詞である 0 3 )は ( ) 1 979 というのも同 じ傾向である, 名詞が主として検査語 に取り入れた理由として, 河井芳文( 「第一 は自立語としての名詞 が言語構造上, 特に重要な役割を持っ ていることによる. 第二は, 言 語発達 上 の問題である. 幼児の言葉の発達は名詞の習得 から始まる, このことは, 彼らの認識の発 達とも関係している, 彼らは, まず物について知り, 次に物の状態や物と物との関係への認識へと 進んでいく. このことと対応している が, 幼児の言葉の発達も, まず名詞から始まり, や がて動詞 や形容詞, 助動詞等の習得へと進んでいく, 第三は, このことと関係していると考えられる が, 子 どもの文字の読みの習得自体 が, 名詞の読みの習得として始まる点を考慮 したためである, 彼らは, 文字を読み始めるとき, そこに物の名前 を読み取ることに最大の関心を示す,」と説明している. ま 3 1 )に よ る と 検 査 語 と して そ の ほ と ん ど を 名 詞 で 構 成 し た こ と に つ い て,「幼 児 期 に お た 上 野 一 彦 ら( ,. ける語いの発達を質 的にみると,2歳から6歳にか けてその品詞の占めるパーセンテージに大きな変 動はみられない, つまり名詞 が全語いの60%近くを占め, 次に動詞 が20%弱, 副詞が8%弱, 形容 詞が6%前後, あとは助動詞, 感動詞, 接続詞がそれぞれ数%という比較的一定したパーセンテー ジを示 している」ので, 量的に多い名詞を検 査語として採用することが妥当であると説明している, 日本語の語桑の構 造 について は後に触れる が, 果して量 的要因に頼るだけで子どもの語 桑能力の 的確な評価 が可能かどうかは疑問である. 言語能力は周知の通り日常生活に活用されて はじめて評 価されるべきものである. 他方,日本語の語桑構造の動詞の重要性を視点に入れて大規模な実態調査が国 立国語研究所によっ 3 2に の調査は基本的な220語の動詞を選択し, 対語(反対語) ( て昭和44年度に行われている, , 対文(反 語認知)という 3 つ の カ テ ゴ リ ー で 実 施 さ れ た. こ の 対文) , 対絵(絵を見ながら発語, 誘導発語, 構成方法は 「従来の表現語桑, 理解語桑テストはともに, 具体的な場面状況の中での言語と事物と の対応を求めるテストに限られていたし, 表語語集テストと理解語桑テストとの関 連は必ずしも十 153.

(9) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. 3 3 ( )ので 表現および理解という用語の概念規定を明確 にして その理論的背景を持 分でなかっ た」 , っ , た調査方法を採用 した所に特徴がある. 動詞を対象とした調査としてはこれまでに見 られない大規 模なもの であるが, 調査語の選択基準が明確に説明されていない, その他, 動詞を対象として検査と指導という目的に合致させようとしたものに「動作絵カード」 3 4 ( ) がある, これは主として失語症患者 を対象に, 動作の習得と文 の習得とを指導するため に作成され ている. その文型 は主語-目的語-述語 という, あまりにも英文型を主とするもので 果して 日常 , 的な会話として患者の必要度を満足させているのかという点 に疑問が残る . これま で検討 したように, 検査語として, 圧倒的に名詞が採用され ていることを見てきた しか , し, 子どもの日常言語行動 の 実態を把握す るという目的に沿えば 名詞だけを対象とす ることは片 , 手落ちであろう, 確かに, 量的には名詞が多いのであるから これを検査語とす ることは当然であ , る. しかし, 先に検討したよう に, 名詞 は 「実体」 としての知識を問うものである, 子どもの言語 行動 はあくまでも動的 なものである, 是非, 「動作・現象」 を対象とした 「動詞検査」 の標準化が為 されなければならない, と同時に, 名詞, 動詞等々という分類体系が国語の語桑の分類体系を忠実 に反映しているか否かも問わ れなけれ ばならない問題であろう,. 4 . 国語語桑論に関する研究分野 「語桑」 とは 広辞苑によれば 「一 つの言語体系の 互いに他と区別さ れる単語の総体 と説明 , 」 , さ れ て い る,. 従っ て, 語桑論とはあ る国語の中の単語の総体 について体系的に論ずる学問ということ になる . つまり, 「語桑論という のは, 単一語, 複合語, 自立語, 非自立語を問わず ある言語に存在する語 , 3 5 ) の総体を体系的に論ずるものである.{ 」 ということ になる, 3 6 { }によれば 語桑の研究は 第一には母国語 の語桑全体を見わたした上 で見える 宮島達夫( 1977 ) , , 体系の問題, 例えば基本語桑 や語桑の位相などについての問題 第二には単語を不完全ながら切り , 離すことにより分析 が可能な, 一 つの単語と他の単語との関係を見わたす問題 そして第三には第 , 一と第二の問題をつなぐものとして, 語桑論的カテゴリー の問題という 三つの問題分野を区別し , て い る,. 3 7 ( )によれば 語桑論の研究 は言語学の他の分野 に比べて遅れていることを また, 真田信治( 1977 ) , 指摘しながら, 研究範囲の大枠を, 第 一 に語桑体系をめ ざしての記述的研究 第二に語藁量につい , ての計量的研究, 第三に基本語桑・基礎語桑について の研究, 第四に語桑の史的変遷 についての研 究, 第五に幼児語, 専門語 などの語桑 の位相的側面についての研究 という 5 つ に ま と め て い る , , 3 ( 8 )は 語桑の研究の目的は日本語の語桑の性質を解 明し日本語の性格を語桑の面 田中章夫( 1 978 ) , から明らかにすること であるとし, 研究分野を語桑体系論, 計量語桑語 基礎語桑論 語種構成論 , , , 位相語桑論, 対照語桑論, 史的語桑論など7 つをあげている, そして隣接研究部門として辞書につ いての研究や意味 についての研究分野があること を指適している. その他 特定の二つの言語を比 , 較検討するため に, 少数の基礎的単語を統計的に検証する研究分野{ 3 9 }なども語桑論の範囲 に含める こ と が で き る.. 以上,語桑論の研究分野について一般 的概括を行っ たが 語桑の研究そのものは水谷静夫( 4 ( 0 } 197 7) , が指摘す るように1 950年代に改めて見なおされ注目されたものである. その契機となったのは 金 , 4 1 ( }によれば語桑構造を量的に観察 することが可能となったこと 電 子計算機による大 岡 孝( 1977 ) , 154.

(10) . 精神遅滞児の語桑能力に関する研究 (1). 量データ処理 が可能となっ たこと, および 「集合」 という数学的概念が導入されたことによるもの である. この結果, データーの客観的基準 が設定されることになり, 仮説の検証 が論理的 に実証さ れること が可能となった. 4 2 ( }は こ れ ら の 事 情 を 次 の 様 にま と め て い る, 「語 桑 論 の 方 法 が 必 ず し も 常 に inet, A.(1971) Mar t. 言語学に固有のもので はなかっ たのは, 語藁 が表意作用と直接に関係をもっ ているため, 話し手の 意識の表面に最もたやすく現われる言語のレベルであり, 最も密接に文化的進展に結 びついている 言語のレベ ルだからである, しかしながら, 音韻論の技術と同様に, 主観性の汚染を受けない語桑 調査の技術を実験する ことが可能である, 結果については, 文法や音韻のレベ ルにお けるよりも, ずっと複雑な組織 が語桑の中に発見されるであろう,」 4 3に れ以降 語桑論 ( このような方向に先鞭をつけた研究は我国で は国立国語によっ て行なわれた. , は構造の量的観察という 視点から急速に進展することになった, これまで見てきたように, 言語学における語桑論は多くの研究分野を内包し, 研究方法も多様で ある. しかし, 子 どもの側から語桑研究を考えた場合, 研究分野は狭められてくる, ここでの関心 が子 どもの発達ということであり, 教育という観点 が導入されるからである, また語桑 が個 人の問 題として還元 されねばならないからである, ただし, 個人の問題であると言っ ても, 研究 がひと つの法則を追求することが目的である以上, 単に特定個人の言語生活を観察し記述するだけで良いということにはならない, これまでの語桑研 究で明らかにされてきた成果は進んで導入されなけれ ばならない. 4 4 ( )は言語の発達的研究の観点を次のように説明している. すなわち「人間はその 1968 ) 村田孝次( 生まれ育つ地域社会の言語を習得することによってのみ, その社会に適応することができるのであ り, 言語能力とはその地域社会の言語についての能力であるから, その言語を どの程度標準的な形 式に従っ て確保しているかということを調 べ, それをもっ てその人の言語能力と考えることはでき ives ) の中に, 子どもの語藁を見ることが有効である t る.」 こ の 説 明 は標 準 設 定 研 究 (normat udy 4 ( } 語桑は言語能力の基本的な条件の一 つであり, ことを示唆するものである, また村田は別の所で 5 , も必要な知識であること 的確な言語指導計画を立てるために 語桑発達の水準を知ることは 子どもの を述べている, 個人的観点から語桑を研究する場合, 語桑という用語の意味は 「個人 が獲得している語の単 位の 総体」 ということになる. 国語体系における語桑の説明的意味とは多少の差異がある, 個人の保有語桑という流動的な実態の把握は, これまで国立国語研究所でなされてきた 静的な語 4 6 ( )は信頼できる 1975 ) 藁調査とは異なる方法 がとられなければならない. この事に関して村石昭三( 正確な答えは今の段階で 語桑調査がないから子 どもが単語をどのく らい知っているかという問題の はできないと述 べている. 今日まで我国には語桑検査として標準化された検査が 「絵画語い発達検 4 { 7 ) 査(PVT) 」ただ一 つであるという事情を考えるなら ば, 村石の指摘は当然の事である, ある意 味では子どもの語集の実態を捉 えることにどのような効果 があるのだろうかという批判 が暗黙の前 提とされているが故に, この分野での研究 が進んでいない原因ともなっているのではなかろうか, すなわち 「子どもの語桑の総量を知ることは, 専門家にとっては必要である が, 言語指導において は, 必ずしも重要ではなく, かりにそれを知っていても指導すべき子どもの語桑総量 を知っ て比較 することはひと仕事であり, 3歳以上では簡単にはできない.◎」 という主張である, しかし, 言語指導の実践場面を反省するなら ば直ちに理解される事である が, 子 どもの保有語桑 の実態を考慮することなく, 指導者の意図で語桑を指導するという無駄な努力の積み重ねがなされ てきたのではなかろうか, 子ども が知 っているにもかかわらず, 指導者の考えから勝手にこの 「単 155.

(11) . 亀畑 義彦・大嶋 謙一. 語」 は必要 であるからという理由で, くり返し熱心 に指導する, そこには指導者の情熱に反比例し て子 ども の学習意欲 が減退する光景が少なからず見られるのが現実である.確かに個人の保有語桑は 十人十色で,従っ て個人の言語生活の実態に応じた指導がなされなければならないとする主張に誤ま ( 4 9 )は り はなし・が,そこに共通性がないか否かという反省 は当然なされるべきである.岡本夏木( 1985 ) 語桑 は子どもの持つ個性であるとしながらも, それぞれに共通性を見出すことが重要 であると述 べ ている, と同時に, この問題は殆 ど明らかにされていないのが現状 であると指摘している. このよう に, 発達という側面およ び教育という側面, そして子 どもという対象を考えると, 先の 言語学における語桑論の研究分野と重なりのあるものと異なるものがあることが理解される,重なっ た分野は言語能力 の水準, 特に語桑水準の診断という問題から語桑の計量が問題となる. 他方, 異 なっ た分野と は発達しつつある流動的な存在である子どもを対象とすることか ら, 語桑語で述べら れる位相の問題とは別な面の研究が問題となる. また子 どもの語桑 の発達について共通性 ばかりで なく, その特異性も考えるということ になると障害児, 特に精神薄弱児を対象として研究されね ば ならない, 精神薄弱児を対象としてこれ らの問題を比較研究する分野はこれから開発さ れね ばなら なし・重要な分野である. 語桑の研究にあたっ ては, とりわけ国語の語桑構造の特徴を知ることが必 要であろう.. 5. 国語における語員構造の特徴 5 0 ( )は 「語桑が豊かな領域では 下位概念まで基本語 国語の語桑構造について, 田中章夫 ( 1982 ) , , で組織しうるが, 語桑の乏しい領域では基本語で組織できず, 二次的な, いわゆる複合語にたよら ざるを えない. 一方, 語種の面から見ると, 語桑の豊富な領域で は本来語で組織しうるの に対して , 乏しい領域 では借用語が現われやすい, 日本語の場合は, 抽象度の高い上位概念 に漢語 が現われや すい, これは日本語 の語桑構造の一 つの特徴ということができる.」 と述べている. 氏 はまた「語種 の面において, 和語・漢語・外来語と, 三種にわたって, きわめて多様な類義的対応が生ずること 5 1 ( ) 5 2 ( )は は, 日本語の語桑構造の大きな特色である. ) 197 8 」 とも述べている. 同 じく, 田中章夫 ( , 日本語では少数の一群の語が繰り返し使用され る傾向にあることを指摘している. これらの説明 によれ ば, 国語の語桑構造の特徴の第一 は, 和語を中心とした少数 の基本的な語が 語桑の中心 に存在していることが予想される. 5 3 }は国語の語の使用率を分析する中で 使用率が高い語は圧倒的 に和語で ( また, 水谷静夫( 1977 ) , あり, 語の使用率が低下しても和語 の構成比はほ ぼ一 定の水準に落ち着くことを見出している, 5 ( のによれ ば 国語では極めて使用度数の高い語と 極めて使用度数 の低い語があっ 大野 晋( 1974 ) , , て, これらの組 み合せで実際の言語が成り立っており, 使用度数の高い語群 は全体のほぼ5%, 使 用度数の低い語群 は全体の60%にもなると述べて いる. 氏の試算によれば, 使用度数の高い語群 は ほとんどが和語であり, その内基本的な語は2 00ほどであるとしている. 5 5 ) ( 5 6 ( )は国語語桑の特徴を以下の5点にまとめている 金 田一春彦 ( 1957 ) . (1) 上位概念と下位概念とを結ぶ中位の概念をさすこと ば, 例えば形容詞などが量的に乏し し・ ,. (2) 単語の形が長い. (3) 形の定ま らない単語, 例えば 「人」 「ひと」 「ヒト」 などで表わすことのできる単語が多 し・ ,. 156.

(12) . 精神遅滞児の語桑能力に関する研究 (1). (4) 同音語 が多い. (5) 品詞の区別 が比較的明瞭である, 5 7 ( 〉は国語語桑の構造を法則化して, 以下の6法則にまとめている, 1 981 ) 同様に, 樺島忠夫 ( (1) 使用率の高い語には和語の 占める比率 が大きく, 使用率が低くなるにつれて, 借用語の 占める比率 が大きく なる, (2) 文章中の延べ語数の大部分を占める見出語 は, 使用率の高い, 少数の基本的な語群であ る,. (3) 国語において使用率 が高く, 使用範囲も広い基本的な語を200ないし500語集めて作った 基本語桑は, 千年につき90%~80%の率で残存する. (4) 使用率の高し・語群は形の短いもの が多く、 使用率の低い語群は形の長いもの が多 い. (5) 使用率の高い語群 は多義語であって, 語義の多いもの が多く, 使用率の低い語群では語 義 の 少 な い も の が 多 い,. (6) 語桑を構成する見出し語を使用率順に並べると, 使用率の低い部分になる ほど, その部 分における名詞の構成比 が大きくなる, 5 8 )の研究によれば, 英語は主語中心 { ) 1987 その他, 表現方法を英語と国語 とで比較した中島文雄( の文構造をとり, 国語 は述語中心の文構造をとると述 べている, 以上の諸知見は田中章 夫の先述の指摘とほ ぼ類似した内容である. 再びこれらの諸知見を整理して, 国語の語桑構造を見ると, 第一 の特徴は, 日常 言語行動に必要 な語桑は比較的少数の語群で構成されうること. 第二の特徴は, 使用率の高い語群が日常言語行動 00語であると予想できること. 第三の特徴は, これらの では基本的な語であり, ほぼ200語ないし5 基本的な語群は形の短い和語で構 成されていること. 第四の特徴は, これら和語で構成きれた基本 的な語群は歴史的変化の影響を受けることが少ないために, 子孫まで伝わっ ていること, 第五の特 徴は, これらの基本的な語群は多義語であること, すなわち, 名詞であること が少ないこと, 等々 が見出されるだろう, これらの基本的な特徴を考慮しながら品詞別語桑構造を検討すると, 量的にはやはり名詞 が第一 位であり, 第二位 は動詞である, そして第三位は形容詞ということになる. しかし, 名詞の場合は 多義語であることは少なく, 動詞・形容詞に多義語 が多い. 従っ て, 量的重要性としては名詞 が対 象となり, 質的重要性として は動詞・形 容詞が対象となるだろう, 伝達性を考えるなら ば, とりわ け動詞に対する考慮 が特に重要視されね ばならない. なお, これまでは語桑の分類 として, 周知の通り, 今日一般に使用されている品詞概念を用いて 論じてきた, しかし, この概念が国語語桑の分類として果して妥当なものか否かを反省する必要 が ある, と言うのは, 分類概 念の背景に有する考え方によっ て, 語桑分類はかなりの影響 を受 けるか らである,それぞれの言語に は歴史的に妥当な分類概 念が存在するはずである.それを基として我々 は 「ことば」 に対する感覚を持つのである, 例えば 「和語」 という分類概念は国語古来のものであ り, それは名詞o動詞o形 容詞等々の分類を意味しない. そして この概念が子孫まで伝 えられ, 特 に乳幼時期から接してきた語群である, その中には国語 古来の国語に対する感覚 が存在している. これを無視しては国語本来の意味と国語の教育は成り 立たないのではなかろうか, 「わが国の品詞論は 西洋文典の影響をうけて成長した結果, いまだに若干の混迷を残している. , 理論的探究とともに, 国語教育あるいは外国人のための日本語教育のためにも, 一層 の洗 練, 昇華 5 9 ( ) が望まれる, 」 とする意見に同感である, この指摘は語桑をどのように見るのかと言うことにもつながる問題である, 洗練・昇華 は別とし 157.

(13) . 亀畑. 義彦・大嶋 謙一. ても, これま での文法理論を反省し, 自己の立場を明確 にすることが必要である, 本稿では現代二 大文法論といわれている, 橋本進吉博士の文法論と, 時枝誠記博士の文法論とを 言語行動の説明 , を含めて, 語 に関する解説およ び品詞分類の考え方を比較検討しようと思う, また これまでは比 , 較的触れられることのなかった心理学的な背景および一般言語学的 な背景も照合して考察したい ,. 6 , 橋本進吉博士の文法論 6 ( 0 )は言語行動を以下のよう に説明している 橋本 ( 1946 ) . 「言語 は一定の音暮 に一 定の意味が結合したもので 思想 (及び感情) を他人に億 へる篇に用ゐ , られるものである. 今, 我々 が言語を賓際 に用ゐる場合について考 へて見るに 話手が ある事を , , 言語 によっ て博へようとする時 には, その事物を表はす一定の音馨 を口に愛する, 勤手 は その音 , 馨を聞ゐて, その音馨の表 はす事物を心の中に浮べて, 話手が何を偉 へようと欲するかを知るので ある, 即ち, 話手と聞手とでは, 互に違っ た二つのはたらきが行はれるのである. 話手 は思想 (感 情) を人に博 へる鴬に口を動かして現賞に音を愛す る. これは自己の億へようとする事を言語 に代 表せしめて外 にあらはすのであるから裟表作用 (又は表現) といふべき・である. 聞手の方ではその 音を聞ゐて, それが代表する話手 の思想 (感情) を理曾する, これは話手の偉 へようとする事を受 け入れて知るのであるから, 理曾作用 (場合によっ ては解離) と名づけてよか らうと思う これは . どちらも人の行鴬であり行動である. ただ違ふ所は 話手 の方は愛動的 (能動的) であり 聞手の , , 方 は受動的 である雛のみである, かやう に話手の謎表作用と, 聞手の理曾作用と によっ て, 思想の博達が出来 言語がその用を全 , うするのであるが, しかし, 話手 の博へようとする所のものを, 聞手が正しく謬 らず理曾し得る篤 には, 話手・ も聞手も同様 に, 同じ音に謝して同じ意味を結 合させなければならない のである, もし , 話手が或意味を表 はす篇に愛した或音に, 聞手が違 っ た意味を結合させたな ら ば 話手の博へよう , とするものと, 聞手が理曾した所 のものとが一 致せず, 篤に誤解を生ずるか 又は全くわからない , 事になっ て, 正しい傭達が出来なく なるのである. それでは, どうして話手も聞手も同じ意味を結合させる事が出来るかと いふに 話手も聞手も , , 周囲の人から, これまで幾度も その音を聞き, 且つそれにはい つも一定の意味が伴っ てゐる事を経 験して, その音の記憶と, その意味, 即ちそ の音のさし示してゐる事物の記憶とが相伴っ て心の中 に残 っているからである. 之を心理的 にいへ ば, 幾度も現賞 に聞いたその音の感覚から形づくられ たその音の表象と, その意味として いつもその音に伴ふ事物と の表象とが 聯合して心の中に存在 , するからである, それ故話手が或事 を博へる場合に之を示す適富な言語 の意味としての或事物の表 象が話手の意識の表 に喚 び起 されると, 之に聯合さ れてゐるその音馨の表象が直 に喚び起されて , その音を愛する に必要な筋肉を動かして現賞 にその音を口に愛し 又 聞手 は その音を聞けばそ , , , の音の感覚が聞手の心中 に潜在せるその音の表象を喚び起して, 直にこれと聯合せる事物 の表象を 喚び起し, それが何を意味するかを理曾する のである. この音の表象と之 に伴ふ事物の表象との聯 合したものを言語表象といふ. これは純然たる心理的現象 である. しかるに 賓際に言語を使用す , る際の愛表及 び理曾 の作用 はどんな性質 のものかといふに, 話手 の側で 事物表象に伴っ て音馨の , 表象が心に喚 び起されるの は心理的作用であ り, その音馨の表象に基づいて 現責に音を愛する篤 , に筋肉を動かすの は生理的作用 であり, それによって愛した音馨は物理的現象である. 聞手の側に 於て, その音馨を耳で聞く の は生理的作用 であり 之を聞いて生じた音 の感覚によっ てその音の表 , 158.

(14) . 精神遅滞児の語員能力に関する研究 (1). 象が喚 び起され, 同時に之 に伴ふ事物の表象 が意識に浮ぶのは心理的作用である, かやぅに言語を 賓際に用ゐる場合には, 心理的作用の外に, 生理的又物理的の要素 が必要である,」 この説明によれ ば, 言語行動は行動主体の動作現象である生理的作用 (音声化) が主と なり, そ の物理的変換の過程を通して伝達されることになる. 伝達される内容 (意味) はあらかじめ記憶さ れており, 音声を聞く ことによっ て喚起されるものとする, 意味の獲得 は事物の表象と音との連合 によっ て, くり返 し学習されね ばならないとする. いま この連合過程,すなわち 「心理的作用」 を問題とするなら ば,いま ここで橋本進吉 によって説 明された心理的作用 は, 従来の心理学の中で研究されてきた, いわゆる行動主義心理学の内 容に合 6 1 ( ) 致するものである,行動主義心理学では言語行動の 心理過程について 以下のように説明 している. ing research was ly ing verball earn The background theory of l earning under ’ l s rom Hul ionism supplemented i nl ater years by some concepts f general associat ,. theory・ i ioni iat cidea ion ofassoc sm. The bas t radi tar t nthet Bbbinghouss s worki edthi ) iat ions ion (assoc ing could be reconstructed interms ofconnect wasthatremember i h )b t t i d( ‐ d dintothe m n memory y e i t ・con gu amongideas ,theseconnec on wererecor e igui ty of to…be‐ s mental cont . Thi ous occurrence of the two ideas consciousness. igui i ty ( ivecont i ntime or ject ther bythe ob l deas wasal egedl y caused e associated i ingideasinthe mind i rcorrespond sthatarousethe ,orby space) oftheexternalevent ing a ider l econs i tr rom memory) a secondidea whi re evingf the person thinking of( f i t one, rs i ing i igu i rbe ty wascharacter zedbythe ingthi i Ret ssecond modeofcont r evaldur df i i h t t dt t i d r om i r e e e ma e re v latednessbetweenthepromptng eaan i l imi ty orre as ar toccurred,thecontiguousexperiencing ofidea A andB memory .By whatever meansi ion orbond iveconnect i sh on associat togetherinconsciousness was presumedtoestabl ’ ’ from nodeAtonode ”ine i betweent he rinternalrepresentations. Thisassociation,or l ,. th whi l ihood andspeed wi ike ch B comes to ingthel B could varyinstrength,affect senteredinto consciousness, mind.when Ai l f ferente ed ement s th a number ofdi A given element・may be associ ated wi ,denot ime t l lbe orderedin s rength at any one t A-B, A-C, A‐D and so on . The . These wi th i ion wi t ikel ti sto win outincompet yi strongeri sthe A‐B association,the morel i i t f h n i rengthenngo t eassoc a o to iveresponses. Learning consistsingradualst t ernat al l l occur more surely than error responses to the t wi the correct response, so thati imulus t s ,. ここで強調された 「連合」 の過程は, 周知の通り英国経験論の立場から発展さ れた心理学説であ ( 6 2 ) る. この学説の特徴は分析 的であると共に, 感覚主義的, 還元主義的, 機能主義的である こと と さ れ て い る,. 橋本進吉の文法論の背景にはこのように, 行動主義心理学に基づいた行動仮説 が存在している, 氏がその学説で強調したことは 「音声」 ということであっ たが, これも感覚主義, 機能主義を重視 159.

(15) . 亀畑. 義彦・大嶋 謙一. する立場か らは当然の帰結とされるのかも知れない . 同じく行動主義心理学を背景 に 「構造言語学」 という一般言語学理論 を構築 した B1 f l d oomi e ,L は言語学 の研究目的を次のように述べ でいる ( 6 3 ) , To puti i tbr ly ef f ferentsound have d i f ferent meanings, To ,in human speech ,di i tudyth ion ofcertain sounds wi s sco ‐ordinat th certain mean・ngsi tudylanguage stos. ,. ここ に述べられた言語 研究の目的は まさしく橋本進吉の研究方向をさし示 したも のである 氏 , , は国語 の研究を言語学と の関連において 以下のよう に説明している ( 4 ) , .6 「言語一般 に関する問題 を研究する学問を-搬言語 学と名づけ る. 普通 に言語学とい へ ば, かやうな言語 学を指す場合が多い この 一般 言語学 は 各種の言語 研究に饗して根本 , , 概念と一般原則 とを典 へるものであるからして 国語学の研究も亦之 に基づかなければな , らない, しかしなが ら, 一 方に於 て 一般 言語学 に資材を輿 へるものは個々の言語に外 な , らぬから, 国語学の研究は, また一般言語学に寄輿す るところがあ るべ きである ,」 整理するならば, 橋本進吉 の文法論は 一般 言語学と して 「構造言語学 的な研究方向を指針ま 」 , たはモデルとして構築されていると考えられるの ではなかろうか その背景 にある心理学説は行動 , 主義心理 学, すなわち, 刺激-反応理論である 氏の学説を理解 するため には このような考 え方 , , の背景をあらか じめ知っておく必要があろう, 本稿では予定されていた語の説明 およ び品詞の説明などには触れることが できなか た 次稿 , っ . に述べたい, また, 時枝誠記博士の諸説についても次稿 で取り扱いたいと思う その他 本稿 では , , 触れること のできなかっ た 「和語」 「基本語」 「理解と表出」 なども次稿 の課題とする 注. 160. なお引用文献 等については紙面 の関係で次号に記載すること になる ..

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