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3次元物体認知の処理系の検討 −身体表象操作課題における教示の効果から− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)3 次元物体認知の処理系の検討 ―身体表象操作課題における教示の効果から ― キーワード:身体表象,心的回転,能動的運動,視覚の処理系 行動システム専攻 鈴田. 英彦. 力(KV-21DA1),プログラムは exPanel 1 を使用し. はじめに 実験 1 は,手を刺激とした左右同定課題における教. た . 反応キーボードは自作 .. 示の効果を検討したものである.実験2と実験3は,. 刺激. 男性の右手をデジタルカメラで取り込み,反. 実験 1 の結果から提起された問題にそれぞれ対応して. 転させ左手を作成 . 左右それぞれ親指が上にある状態. いる.実験の結果から,最終的に,心理学的な視覚の. を0度として,右手刺激は時計回りに,左手刺激は反. 2 つの処理系について言及する.. 時計回りに45度ずつ回転させる . 刺激の総数は 16.. 1.. のキーを押してください」と教示,条件 B では「握手. 教示 問題と目的. 心的回転をキーワードとする研究において,運動と. 条件 A では「右手なら右のキーを左手なら左. するほうの手のキーを押してください」と教示した.. の関係からの検討が試みられている . 例えば,実際の 対象操作と心的回転の比較実験の必要性を説き,その 関連性を示した実験がある( Wohlscläger . A & 0度. Wohlscläger . A ,1998) . 運動と心的回転の関係を. 45度. 90度. 135 度. 225 度. 270 度. 315 度. 取り扱ったこの実験は,われわれのイメージ操作が日 常行っている運動に大きく依存していることを示唆し ている . このことから考えるならば,心的回転が生じ る理由を探るためには,日常の運動経験は検討すべき. 180 度. もののひとつになってくるであろう . イメージ研究が. Figure 1.. 実験 1 で使用した右手刺激. 身体や運動との関係において語られるようになる流れ 手続き. を受け,鈴田・大神(2001)は,手を刺激とした身体. 被験者の顔と画面の距離は約60∼90センチ. 表象操作実験において,日常的な教示におけるパフォ. であった . まず凝視点が 800 ミリ秒表示され,その後. ーマンスの効果を検討したが,いくつかの点で改善の. に刺激が提示された . 刺激は被験者が反応するまで提. 余地があることが指摘されている.. 示され,反応後は 100 ミリ秒の時間が置かれた . 反応 は両親指でキーを押すことによって行われ,反応時間. 2.. 実験 1 :手を使用する左右同定課題. と正否が記録された . 各被験者に練習試行が16回行わ. 手を刺激をとした,左右同定課題において,「握. れた後に本試行が行われた . 本試行は前半と後半に分. 手」するように反応する条件(条件 B )とそのような. けられ,間に 1 分間の休憩がはさまれた . 本試行は前. 想定をしない条件(条件 A )のパフォーマンスの比較. 半・後半それぞれ32試行で合計64試行であった . 終了. を行う.先行実験で取り扱えなかった,「誰の手をイ. 後,内省報告を聞き取り,手の動かしにくさを質問紙. メージしたのか」を内省報告で,心理的な手の動かし. により調査した . 内省報告の聞き取り. にくさと反応時間の関係を質問紙から検討する. (方法)被験者. 九州大学学生・大学院生男女各10. 手の動かしにくさについての質問紙. 名 . 全員が右利きで,かつ正常な視力を有していた . 被験者は条件 A 群と条件 B 群に振り分けられた. 装置. ノートパソコン( PC-LW43H/14DA ),外部出. 左右判断の理由,最容認刺. 激,方略等についての質問を行った . 実験で使用し. た手の写真を使用し,非常に動かしやすいを1,非常 に動かしにくいを7として角度ごとの動かしにくさを 測定した . 1. 立命館大学. 星野祐司.

(2) (結果と考察)データを見たところ,男女間のひらき が大きかったので,男女別に分析する. 条件A 右. 条件A 左. 条件B 右. 条件B 左. Table. 3 1 5 度. 条件 条件A 条件A 条件A 条件A 条件A 条件A 条件A 条件A 条件A 条件A 条件B 条件B 条件B 条件B 条件B 条件B 条件B 条件B 条件B 条件B. 反 応 1500 時 間 1000 ︵ ミ リ 500 秒 ︶ 0 0 度. 4 5 度. 9 0 度. 1 3 5 度. 1 8 0 度. 2 2 5 度. 2 7 0 度. 角度. Figure 2. 男性における実験 1 の平均反応時間 男性で分散分析を行った結果,条件の主効果 ( F(1,38) =8.04,p<.05 ) ,刺激の左右の主効果 ( F(1,38)=38.47, p<.01 ) ,角度の主効果 ( F(7,266)=51.29,p<.01 ) が有意で あった.交互作用は見られなかった.下位検定を行っ た結果,条件 A と条件 B の平均反応時間には5%水準 で差があった.このことから男性において条件 B の被 験者は,条件 A よりも有意に速く反応することが示さ れた.左右角度別には,右 0 度,右45度,右 135 度, 右 180 度,右 225 度,右 270 度,左 135 度,左 180 度 に5%水準で差が見られた.また,刺激の左右におい て両条件とも5%水準で差が見られ,両群とも,右手 刺激の方が有意に速く反応することが示された. 条件A 右 反 4000 応 時 3000 間 ︵ 2000 ミ リ 1000 秒 0 ︶. 0 度. 条件A 左. 4 5 度. 9 0 度. 条件B 右. 1 3 5 度. 1 8 0 度. 2 2 5 度. 反応していた.また,右 0 度から右 225 度まで,左 0 度から 180 度までに5%水準で差が見られた.. 条件B 左. 2 7 0 度. 3 1 5 度. 角度. Figure 3. 女性における実験 1 の平均反応時間 次に女性の結果をみると,男性が全体的に反応時間が 速くなっているのに対して,女性は,角度の影響が大 きい.女性において分析を行った結果,条件の条件の 主効果 ( F(1,38)=10.58,p<.01 ) ,刺激の左右の主効果 ( F(1,38)=27.11,p<.01 ) ,角度の主効果 ( F(7,266)=23.12 ,p<.01 ) が有意であり,交互作用は見られなかった. 下位検定を行った結果,5%水準で条件 B の方が速く. 1. 実験 1 の被験者の内省報告 性別 男 男 男 男 男 女 女 女 女 女 男 男 男 男 男 女 女 女 女 女. 方略 しない 他人 他人 自から他 他人 自分 他人 自から他 他人 他から自 自分 自分 自分 自分 自分 自分 自分 自分 自分 自分. 最容認刺激 135度 0度,90度 0度 0度 0度 270度 90度 0度 270度 90度 0度 0度 0度 0度 0度,315度,45度 0度 0度 0度 315度,45度 315度,45度. Fig.2 と Fig.3 より,男性は全体的に反応時間が短縮 されているのに対し,(交互作用は見られなかった が)女性は角度によってその度合いが異なると思われ る.内省報告の表から,女性において,条件間に,も っともわかりやすかった刺激の認知に差がみられる. 男性において条件間に差がないことから,この最容認 刺激の違いが反応時間短縮への角度の影響に関係して いる可能性がある.それに対し,自分の手をイメージ するのか,他人の手をイメージするのかの方略の違い は,条件間で異なっており,全体的な反応時間短縮に 関係している可能性が示唆された. 次に,心理的な手の動かしにくさについて考察して みる. Fig.4 は,実験 1 の被験者の心理的な右手の動 かしにくさを図示したものである.評点が高い角度ほ ど動かしにくいと考えられていることを示している. 7 6 5 評4 定 値3 2 1 0 角度. 0 度. Figure 4.. 4 5 度. 9 0 度. 1 3 5 度. 1 8 0 度. 2 2 5 度. 男. 女. 2 7 0 度. 3 1 5 度. 右手の心理的な動かしにくさ. 心理的な動かしにくさがパフォーマンスにどのように 影響したのかを見るために,条件 A の右手の反応時間.

(3) との関連を調べた.男性の相関係数( r=.76 )は5% 水準で有意であり,女性の相関係数( r=.89 )は1% 水準で有意であった.女性の方が,心理的な手の動か しにくさと反応時間との関連が強いことがわかる. 3. 実験2:方略の統制 実験 1 の結果をいくつかの視点から考察した結果,そ の差異を説明するもののひとつとして,イメージした 手が自分のものであったのか,他人の手であったのか の方略の違いによる可能性が示唆された.この可能性 をより詳しく検討するために,条件 A と同じ教示条件 で,かつ自己の手をイメージする群が必要となる.そ こで,実験2では刺激を変更することでこの問題にア プローチする. (方法)被験者 九州大学生・大学院生男女各 5 名 装置 実験 1 と同様 刺激 男性の右手を指先が画面奥になるようにデジ タルカメラで撮影し,反転させて左手を作成 . 実験 1 と同様に処理を施した . 刺激総数は 16.. れた.平均反応時間は 5 %水準で有意な差がみられ, 条件 B の方が速かった.方略を統制しても,条件 B の 方が速く反応していることから,実験 1 における結果 は,イメージの自他ではない可能性が示唆された.た だし,男性のみで分析を行うと,条件間に主効果 ( F(1,38)=4.00,ns )はなく,右 225 度と右 270 度の みに5%水準で差が見られた.. 実験2男右. 実験2男左. 実験2女右. 実験2女左. 条件B 男右. 条件B 男左. 条件B 女右. 条件B 女左. 3000 反 応 時 2000 間 ︵ ミ リ 1000 秒 ︶ 0 角度. 0度. 180 度 Figure 5.. 45度. 90度. 135 度. 225 度 270 度 315 度 実験2で使用された右手刺激. 教示 実験 1 の条件 A と同様 . 手続き ほぼ実験 1 と同様 . 異なるのは条件 A のみ 使用すること,質問紙を使用しないことである . 内省 報告は実験 1 と同様のものを用いた . (結果と考察) Table 2 実験2の被験者の内省報告 群 性別 方略 最容認刺激 実験2 男 自分 0度 実験2 男 自分 0度 実験2 男 自分 0度,180度 実験2 男 自分 0度 実験2 男 0度 実験2 女 自分 0度 実験2 女 自分 0度 実験2 女 自分 0度,90度 実験2 女 自分 0度,90度 実験2 女 自分 0度,270度 自分の手をイメージしたと報告した被験者は10人中 9 人であり,実験2で試みた方略の統制は成功している とおもわれる.実験2と条件 B をあわせて分析を行っ た結果,条件の主効果(F(1,76)=4.35,p<.05)が見ら. 0 度. 4 5 度. 9 0 度. 1 3 5 度. 1 8 0 度. 2 2 5 度. 2 7 0 度. 3 1 5 度. Figure 6. 実験2と条件 B の平均反応時間 4. 実験3:実験状況下の手について 実験 1 から,心理的な手の動かしにくさがパフォーマ ンスに影響することが示された . また,最容認刺激も 何らかの影響をもっていると考えられる.では,実験 中の被験者の手はどのような影響を持っているのだろ うか.手の平の向きを変化させることによって,この 問題にアプローチすることにする . (方法)被験者 九州大学生・大学院生男女各 5 名 装置 実験 1 と同様 刺激 実験 1 と同様 . 教示 実験 1 の条件 B を用いる . 手続き ほぼ実験 1 と同様 . 異なる点は,反応キー ボードを机の上におき,被験者は手の甲を上にした状 態でその上に手を乗せてもらうことである . この操作 により,被験者の手は実験中つねに手の甲が上にある 状態に保たれた . (結果と考察) 実験 1 の条件 B の結果とあわせて分析したところ,条 件の主効果( F(1,76)=.781,ns )は見られず,性別( F(1,76)=34.74,p<.01 )と左右 ( F(1,76)=102.86,p<.01 ) と角度 ( F(7,532)=65.93,p<.01 ) の主効果が見られ た.男女とも90度と 270 度に統計的な差が見られなか った.このことから,統計的には実験状況下における 手の方向は影響を持たなかったと思われる..

(4) しかし,内省報告からは,被験者の刺激に対する認知 に変化がみられている.手の運動が心的回転に影響を 及ぼすとの先行研究(Wohlscläger, A. 2001)から,運 動による手の操作等が今後の課題となるだろう. Table 群 実験3 実験3 実験3 実験3 実験3 実験3 実験3 実験3 実験3 実験3. 3. 実験3の被験者の内省報告 性別 方略 最容認刺激 男 自分 0度 男 自分 270度 男 自分 0度,270度 男 自分 0度 男 しない 0度 女 しない 0度 女 自分 0度 女 自分 270度 女 自分 270度 女 自分 0度. いるとは考えない. 脳機能イメージングにおける処理系の研究の問題点 として,個人の内部において経験されているものを実 験者が想定しながらおこなっていることがあげられる (茂木,1997) . この点に関して,個人内の経験を整 理することで,心理学の観点からこの問題に寄与でき るのではないだろうか. そこで,本研究で取り扱った 要因を整理しながら,本研究における心理学的な処理 系について考えていくことにしよう. 本研究で取り扱った要因を表にした(Table4).負 荷とは,被験者が行っているであろうイメージの操作 量の多寡を,方略の違いとは,運動のイメージが一人 称プロセスであったのか否かを,能動的運動は能動的 に運動したことのある過去の経験の高低(ここでは握 手)を,手と手の表象は実験状況における手の位置と 判断に必要な標準的であると思われる表象とが一致し ているか否かをそれぞれ意味している.. 5. 総合考察 本研究では2種類の教示がパフォーマンスにどのよう に影響するのか検討してきた.いくつかの改善によ Table り,先行実験で残されていた問題に近づくことがで 条件A きたと思われる. 条件B 実験2 実験3 条件 B の結果 握手. 刺激. 条件 A の結果 Figure 7. 本研究の概観. Fig.7 を用いて考察する.まず条件 A は,提示された 視覚刺激のみを認知の判断対象としている.それに対 し,条件 B は提示された視覚刺激に握手という行為が 付与されているものを判断の対象としている. 言い換えれば,条件 B の被験者は,行為を介して刺 激を認知したのに対し,条件 A の被験者は,そのよう な行為を介さずに刺激を認知していたのであろう. 行場(1995)は,行動のためのパターン処理と認識 のためのパターン処理が独立しており,異なった脳内 表現がとられている可能性を示唆した . この言葉を借りるならば,条件 B はより行動のため のパターン認識を行い,条件 A はより認識のためのパ ターン認知を行っていたとも考えられる.行為と認識 は本来分離不可能であるが,MarrとGibsonの理論が並 存している可能性が示唆されていることもあり,言葉 が不適切であると思われるが,行為のための処理系と 認識ための処理系を想定することとする . 行為のための処理系は, Fig.7 の条件 B の結果を引 き出した矢印に相当する.そして,条件 A の結果を引 き出した矢印に相当するのは認識のための処理系であ る.ただし,脳内表現がそれぞれの処理系で異なって. 4. 本研究における諸要因 負荷 方略の違い 能動的運動 手と手の表象 多 三人称 低 少 一人称 高 一致 少 一人称 低 一致 少? 一人称 高 不一致. 実験 1 において,条件 A と条件 B の平均反応時間の差 が,運動のイメージの差である可能性が示唆されたこ とから,実験2でその統制を試みた.その結果,イメ ージを統制した実験2と条件 B の平均反応時間に差が 見られた.つまり,実験 1 における条件 A と条件 B の 平均反応時間の差は,イメージの差ではない.このこ とから,行為のための処理系には能動的運動が深く関 係している可能性があると思われる.今後は,この表 の条件をひとつひとつ増やしていくこと,例えば,三 人称プロセスで能動的運動が高く,イメージの操作量 が少ないものと多いものを補うことが必要である. 引用文献 行場. 1995. 理学1. 視覚パターン認知 知覚と運動. 乾敏郎(編)認知心. 東京大学出版会. pp.138. 茂木健一郎. 1997. 脳とクオリア. 鈴田・大神. 2001. 日常的教示が身体表象操作におよ. ぼす影響. 日経サイエンス. 九州大学心理学研究(紀要)第 2 巻. 153 − 158 Wohlscläger,A. & Wohlscläger,A. 1998 Mental and Manual Rotation. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance Vol . 24, No . 2,397-412 Wohlscläger, A. 2001 Mental object rotation and the planning of hand movements. Perception & Psychophysics. Vol. 63(4).

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参照

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