異文化感受性に関する研究―中国人性格測定尺度に基づく中国人の異文化感受性特性に関する検討 [ PDF
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(2) モデルは6つの段階からなり、 「自文化中心的段階」 ,. は、主に CPAI の正常性格尺度に対象として検討する。. 「文化相対的段階」の大きく二つあって,そこにそれぞ. 4. 本研究における仮説. れ三つずつのステージがあります。6つの段階には、そ. 1,中国人は自文化中心的異文化感受性より文化相対的. れぞれの段階の中に、更に異なる形態を表す下位カテゴ. 異文化感受性の傾向が強いであろう.. リーがある。自文化中心的段階では自分の文化が現実の. 2,中国人の人際関係特徴と異文化感受性の間に顕著な. 中心である。一番初めの「否定」の段階では、自分の文. 関係があるであろう.. 化が自分にとって唯一の現実であり、異質なものからは. 5.方法. 心理的、 物理的距離を保つことでその存在を避けている。. Chen(2000)によると、Hammer と Bennett の原文の. 「防衛」の段階では、自分の文化が唯一絶対正しい経験. 異文化感受性発達尺度の73項目を基に、主因子を代表. であり、文化的に異質なものは否定される。 「最小化」の. 的な36項目の尺度を用いた[6]。翻訳版では、Peng. 段階では、自分の世界観が普遍的なものとして経験され. (2004)の研究によると、Hammer と Bennett の許可を得. るため、表面的な違いを受け入れつつも、他の文化も深. て原文の IDI を中国語に翻訳したものを使用することに. い所では本質的に自分の文化と違わないものと考える。. した[7].CPAI には,直接に中国人性格測定尺度の中に人. それが自文化中心的段階,すなわち自分自身の物差しし. 際関係尺度を抽出し、さらに、中国人特徴をもつ面子因. か適用していないという状態である。 The Developmental Model of Intercultural Sensitivity (DMIS) 自文化中心的段階 文化相対的段階 違いから 違い 違いへ 違いと 違いの 違いの の の の の 否定 最少化 防衛 受容 適応 統合. 子も抽出してから、77項目の新しい CPAI 尺度を作成し. 隔分 絶離. 侮優逆 蔑越転. 身 体 的 普 遍 性. 超 越 的 普 遍 性. 行 動 の 違 い 尊 重. 価 値 の 違 い 尊 重. 共多 感元 主 義. 建 文 脈リ設 上テ的 のIマ D 評 ジ 価 ナ. [Milton Bennett, (1993) より作成] 図1:異文化感受性モデル. た。データ収集は、中国長沙湘雅医科大学心理学専攻が 協力し、2007年9月初に、長沙市児科病院に来た子 供患者の親を対象として行われた。一方、同年9月末に 劉陽市内の国際会社の社員を対象として行われた。(統 合:男性=247名、女性=232名、平均年齢=41.74 歳、標準差=5.31歳) 。 6.結果 1)異文化感受性発展尺度の因子分析 収 集さ れ た IDI 尺 度のデ ータ の分 析は、 統 計 Software――Spss13.0 を使用して行われた。使用された 統計方法は、バリマックス回転による主因子法 (Principal Component Factor Analysis)であり、. 3.中国人性格測定尺度(The Chinese Personality. とりわけその確認的因子分析(Confirmatory Factor. Assessment Inventory, CPAI). Analysis)の形で行われた結果、6因子が抽出された。. CPAI は中華文化の特徴を基に、張妙清達(1996). 各下位尺度のクロンバックの ɑ 係数は.84 ~.72 の範囲. により開発された本土化性格尺度[3]。この尺度は22の. にあり、高い内的整合性を示した。. 正常性格尺度、12の臨床尺度と3の効度尺度を含まれ. 2)中国人性格測定尺度の因子得点. る。CPAI は欧米理論の主に因子がある、たとえば、外向. Cheung(1996)のモデルによると、各因子の評定値. 性、リーダシープ、情緒化等;一方、欧米尺度になく、. の平均を下位尺度得点とした。クロンバックの ɑ 係数. 中華文化特徴を持つ因子がある。例えば、面子、人情、. (Cronbach’s Alpha)で表わされている各下位尺度の. 「中庸」など。CPAI 作成は中国 mainland で代表的な被. 内的整合性は.60 以上にあり、高い内的整合性を示して. 験者群(1998名男女) 、さらに香港でランダムの被験. いる。. 者群(446名男女)、標準モデルを制定するために、予. 3)年齢と性による IDI の違い. 備的な因子分析(Exploratory Factor Analysis)を通し. 自文化中心に対する感受性の分析結果とは,性の主. て、4つの正常性格因子を見つけられた――信頼性. 効果が見られた、一方、年齢と性の交互作用も見られな. ( Dependability )、 人 際 関 係 ( Interpersonal. かった。 文化相対的に対する感受性の分析結果とは, 性. Relatedness)、リーダシープ(Social Potency)と独立. と年齢両方の主効果が見られなかった。一方、総体的女. 性(Individualism) 。また、臨床性格尺度の中に二つ臨. 性の得点の平均値(5.656)は男性の(5.410)より高い. 床 因 子 を 見 つ け ら れ た ― ― 情 緒 問 題 ( Emotional. ということを示した。さらに、参加者総体的文化相対的. Problem)と行動問題(Behavioral Problem) 、本研究で 2.
(3) 感受性得点(5.50)が著しく高い、文化相対的な傾向を. によって、伝統対現在は顕著な差異がみられた. 明らかになった。. (F(2,489)=2.555、 p<.001)。HSD の結果によると,. 4)CPAI の各因子による異文化感受性の違い. 「最少化」については低得点組>高得点組,低得点. IDI の6つの下位尺度ごとに、CPAI の6つの因子に. 組>中得点組。より伝統またはより現代を重視する. よって異なった特徴を示すかどうかを検討するために、. 人は文化の伝統性にあまり意見がない人より、文化. CPAI の因子がグループ内平均連結法による三つのグル. の差異に対する認知が強く、自分の文化意識を守る. ープを得た―――高得点グループ(高27%)、中得点グ. ために、異文化に「最少化」をする傾向があると考. ループ(中46%)、低得点グループ(低27%)を含ま. えられた。. れていた。次に、得られた三つのグループを分けた CPAI. ⑤ 人情:Wilks’ Lambda 係数は .948、文化相対的の. の因子は独立変数、IDI の6つの下位因子を従属変数と. 3因子によって、人情の顕著な群間差異が見られた。. した一元配置の分散分析(ONE-WAY ANOVA)を行った。最. (受容:F(1,501)=6.478,適応:F(1,501)=7.661, 統. 後、Tukey の HSD 法(5%水準)による多重比較と行っ. 合:F(1,501)=23.179 p<.001)人情の得点によると、. た。. 2グループだけ分けた。高得点組と低得点組を取っ. ① 面子:自文化3因子「否定」 、「防衛」 、「最少化」と. た。HSD の結果によると、人情の低得点組は「受容」. もに「面子」因子の有意な群間差が見られた。(否定:. 「適応」 「統合」がともに高く、高得点組はともに低. F(2,486)=9.643, 防衛:F(2,486)=8.800, 最少化:. く、人情を重視する人はに対して、中国独特的な自. F(2,486)=20.534 p<.001)。Tukey の HSD 法(5%水準). 文化内の関係をもっと重視し、人情という行動が当. による多重比較を行ったところ、面子の低得点組は. 然的に考えるので、異文化からの不理解を避けるた. 「否定」「防衛」「最少化」がともに高く、高得点組は. めに、異文化に対する「受容」「適応」または「統合」. ともに低く、面子を重視する人は多文化の人間の葛. という傾向が弱いということと考えられる。. 藤と不理解がある時、自分の面子を維持するため、. ⑥ 中庸: Wilks’ Lambda 係数は .923 、文化相対的. 面子をあまり重視しない人よりも異文化に対する. 3因子によって、中庸の顕著な群間差異が見られた。. 「否定」「防衛」または「最少化」という傾向が弱い. (受容:F(2,490)=7.707,適応:F(2,490)=13.120,. ということと考えられる。. 統合:F(2,490)=4.441 p<.001)。HSD の結果による. ② 家族適応: Wilks’ Lambda 係数は.962、認知適応. と、中庸の高得点組は「否定」「防衛」「最少化」がと. と統合によって、家族適応の顕著な群間差異が見ら. もに著しく高く、低と中得点組の得点の差異が顕著. れた(認知適応:F(2,490)=3.184,統合:F(2,490). ではなく、中庸を重視する人に対して、外来文化の. = 2.588 p<.001)。HSD の結果によると,「認知適応」. 個人主義に対する非常に反対し、異文化間コミュニ. については低得点組>高得点組。「統合」についても. ケーションのとき、顕著的、または示好的な行動を. 低得点組>高得点組。家族適応をを重視する人は文. 避けるために、「受容」「適応」または「統合」という. 化総体に対する重視程度が低く、異文化との統合も. 傾向が弱いということと考えられる。. 有意的に認識できないと、認知適応と統合の異文化. 7.結果の考察. 感受性傾向が弱いと考えられた。. 本研究で明らかになったことについて以下にまとめる.. ③ 防衛:Wilks’ Lambda 係数は.883、防衛は自文化3. IDI 尺度について. 因子ともに顕著な群間差異が見られた(「否定」:. ①. 自文化中心的な異文化感受性(例として,項目8国. F(2,495)=10.689,「防衛」 :F(2,495)=12.789,「最少. 際問題を気にかけることは、私にとってあまり重要. 化」:F(2,495)=13.736,p<.001) 。HSD の結果による. ではない)は低い,下位尺度―「否定」 ,「防衛」 ,「最. と、CPAI の防衛の低得点組は「否定」「防衛」「最少. 少化」という異文化感受性因子も低い得点が得られ. 化」がともに高く、高得点組はともに低く、CPAI の. た.3つの尺度間の相関関係も見られた.. 防衛を重視する人はに対して、自身の能力を自信を. ②. 文化相対的な異文化感受性(例として,項目13私. 持つ、他人または他の文化からの威脅の感じが弱く、. は、しばしば自分と他人とのコミュニケーションの. 「否定」「防衛」または「最少化」という傾向が弱い. とり方を、相手の文化的背景に合わせる)が高い,. ということと考えられる。. 下位尺度―「受容」,「認知適応」 ,「統合」という異. ④ 伝統対現在:Wilks’ Lambda 係数は .959、最少化. 文化感受性因子も高い得点が得られた.3つの尺度 3.
(4) 間の相関関係もみられた.. 合」という傾向が弱いであろう。⑥ 中庸を重視する人. 全体的に,男子の方が自文化中心的な異文化感受性. はに対して、外来文化の個人主義に対する非常に反対し、. が低い .. 異文化間コミュニケーションのとき、顕著的、または示. 異文化感受性と年齢の間に有意な関係が見つけら. 好的な行動を避けるために、「受容」「適応」または 「統合」. れなかった.. という傾向が弱いであろう。一方、異文化感受性による. CPAI 尺度について. 性と年齢両方の主効果が見られなかった。総体的女性の. ① 面子と防衛の人間関係特徴にとって他の特徴より重. 得点の平均値は男性のより高いということを示した。中. 視になった.② 全体的に,人情に対する注目度が一番. 国人総体の文化相対的感受性得点が4の平均値よりも著. 低い.③ 家族適応,現在的な意識と中庸3つの人間関. しく高いが見られた、中国人の文化相対的な傾向がある. 係特徴を持つ方が少ない.. ということを明らかになった。. ③ ④. CPAI と IDI の関係について. 本研究の限界としては、対象者の偏りと地域性に加. ① 面子を重視していることが低い自文化中心的な異文. えて、IDI の中国語訳の影響が考えられる。原文にでき. 化感受性につながる.② 家族適応がよく方が文化相対. る限り忠実に翻訳した質問用紙を用いたが、表現の分か. 的な異文化感受性が低い.③ 自身の能力を自信を持つ. りにくいものが含まれたかもしれない。今後の課題とし. 方,自身がない方より自文化中心的な異文化感受性が弱. て、より広い地域、社員以外を対象としたもっと大きな. い.④ 伝統性または現在性を意識された方ほど,文化. サンプル数でテストされることが必要がある。また、中. の伝統性に対してあまり意見がない方が文化差の「最小. 国人を対象とした面接調査を行い、それぞれの発達段階. 化」という意識を持つ.⑤ 人情を重視する方は文化相. において、その段階に異文化感受性の発達情況が位置付. 対的な異文化感受性が低い.⑥ 中庸の意識を持つ方が. けられる、と判断される対象者からの報告をまとめて、. 文化相対的な異文化感受性が低い.. 新しいモデル作成の作業が必要である。さらに、CPAI の. 8.討論. 中国人性格尺度を基に、そこから DMIS には含まれていな. 本研究の分析結果が示唆していることは、IDI によ. い中国文化独特的な意味と次元を明らかにしていく調査. る異文化感受性の測定について、中国人を対象とした場. が必要となるであろう。. 合、異文化感受性の理想的モデルの構築ができなかった が、中国人性格測定尺度の独特的な人際関係尺度の測定. 参考文献:[1]近藤祐一 (1997) 「異文化コミュニケーシ. について、中国人の異文化感受性によって、人際関係の. ョン研修」,「異文化コミュニケーション・ハンドアップ」 ,. 態度の差異が見られた。この結果は中国人の人際関係態. 有 斐 閣 選 書 .[2]Brislin,R.&. 度と異文化感受性の関係を明らかにした。① 面子を重. Intercultural. 視する人は多文化の人間の葛藤と不理解がある時、自分. introduction. Thousand Oaks, CA: Sage. [3]Cheung,. の面子を維持するため、面子をあまり重視しない人より. F.M., Leung, K., Fan, R., Song, W.Z., Zhang, J.X. &. も異文化に対する「否定」「防衛」または「最少化」とい. Zhang, J.P. (1996).Development of the Chinese. う傾向が弱いであろう。② 家族適応をを重視する人は. Personality Assessment Inventory (CPAI). Journal of. 文化総体に対する重視程度が低く、認知適応の異文化感. Cross-Cultural Psychology, 27, 181-199. [4] 山本志. 受性傾向が弱いであろう。③ より伝統またはより現代. 都 (1998) 「異文化センシティビティ.モデル. を重視する人は文化の伝統性にあまり意見がない人より、. を日本人に適用するに当たって:再定義の必要性につい. 文化の差異に対する認知が強く、自分の文化意識を守る. て」、異文化コミュニケーション研究会編「異文化コミュ. ために、異文化に「最少化」をする傾向があるであろう. ニケーション」 Vol. 2, 77-100. [5] Hammer, M. R.. と考えられた。④ CPAI の防衛を重視する人はに対して、. Bennett. 自身の能力を自信を持つ、他人または他の文化からの威. sensitivity: The intercultural development inventory.. 脅の感じが弱く、 「否定」「防衛」または「最少化」という. In S.M. [6] CHEN GM, STAROSTA WJ. (2000) The. 傾向が弱いであろう。 ⑤ 人情を重視する人はに対して、. development and validation of the intercultural. 中国独特的な自文化内の関係をもっと重視し、人情とい. communication. う行動が当然的に考えるので、異文化からの不理解を避. Communication,(3):1-15. [7] 彭世勇 (2006) 国籍与职. けるために、異文化に対する「受容」「適応」または「統. 业对跨文化敏感度的影响, 浙江大学学报,Vol 36,No.1 4. (1998).. Yoshida,T.(1994).. communication. A. measure. sensitivity. training:. of. An. intercultural. scale.. Human.
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