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Ⅱ. 仮想通貨ビジネスと 仮想通貨 仮想通貨交換業 の該当性 1. 仮想通貨 該当性 仮想通貨法における 仮想通貨 の定義は 大要以下の通りである 7 仮想通貨 (i) 物品を購入し 若しくは借り受け 又は役務の提供を受ける場合に これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ かつ

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当事務所は、本書において法的アドバイスを提供するものではありません。具体的案件については個別の状況に応じて弁護士にご相談頂きますようお願い申し上げます。 © 2017 Mori Hamada & Matsumoto. All rights reserved.

1 森・濱田松本法律事務所 弁護士 末廣 裕亮 TEL. 03 6266 8570 yusuke.suehiro@mhmjapan.com 2017 年 3 月号

FinTech ニュースレター(No. 5)

―仮想通貨法に関する政省令案・ガイドライン案の

押さえておくべきポイント―

Ⅰ.仮想通貨法に関する政省令案の公表 Ⅱ.仮想通貨ビジネスと「仮想通貨」 「仮想通貨交換業」の該当性 Ⅲ.政省令案・ガイドライン案のポイント

Ⅰ.仮想通貨法に関する政省令案の公表

近時、FinTech の一分野として、インターネットを通じて電子的に取引される仮想通 貨が注目を浴びている。昨年5 月 25 日に成立した仮想通貨法1は、日本の法体系に初め て仮想通貨を取り入れ、仮想通貨の交換所や取引所等を運営する事業者に、仮想通貨交 換業者として登録を義務付けることとした。 昨年12 月 28 日、この仮想通貨法の細目を定める政令案2・府令案3が公表され、仮想 通貨交換業の事務要領等に関して新設されるガイドライン案4と共に、パブリックコメ ントに付された5。これらは、法施行に合わせ、本年4 月頃に施行される予定である。 仮想通貨法の経過措置として、仮想通貨法の施行時点で仮想通貨交換業を行っている 事業者は、施行日後 6 か月の間に登録申請を行えば足りるとされている6。しかし、必 要となる社内の体制整備や社内規則の策定等を考えると、6 か月という期間は必ずしも 余裕のあるものではない。事業者は、政省令案・ガイドライン案の内容を踏まえつつ、 当局への事前相談等も含め計画的に準備することが必要となる。他方で、ガイドライン 案は、「仮想通貨」「仮想通貨交換業」の該当性について一定の解釈指針を示しており、 仮想通貨を用いたビジネスを行う事業者にとって、無視できないものと言える。 そこで、本レターでは、仮想通貨法に関する政省令案・ガイドライン案について、仮 想通貨を用いたビジネスに携わる事業者が押さえておくべきポイントを紹介する。 1 「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」 という)による改正後の「資金決済に関する法律」(以下「改正資金決済法」又は「仮想通貨法」という) 2 「資金決済に関する法律施行令」の改正案(以下「政令案」という) 3 新設される予定の「仮想通貨交換業者に関する内閣府令」案(以下「府令案」という) 4 新設される予定の「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16 仮想通貨交換業者関係)」案(以 下「ガイドライン案」という) 5 金融庁のウェブサイト(http://www.fsa.go.jp/news/28/ginkou/20161228-4.html)参照 6 改正法附則 8 条

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Ⅱ.仮想通貨ビジネスと「仮想通貨」

「仮想通貨交換業」の該当性

1.「仮想通貨」該当性

仮想通貨法における「仮想通貨」の定義は、大要以下の通りである7。 【仮想通貨】 (i) 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの 代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の 者を相手方として購入及び売却を行うことができるもの(これと相互に交換を 行うことができるものも含む)で、 (ii) 電子的に記録された財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転することが できるものであり、 (iii) 法定通貨建で表示され、又は法定通貨をもって債務の履行等が行われる通貨建 資産には該当しないもの 「仮想通貨」該当性の判断にあたってポイントとなるのは、①不特定の者に対する 弁済手段であるかどうか、②不特定の者に対する購入・売却が可能であるかどうか(す なわち、流通性が認められるか)である。ガイドライン案でもこの点が強調されてお り、①について、「発行者と店舗等との間の契約等により、代価の弁済のために仮想 通貨を使用可能な店舗等が限定されていないか」、「発行者が使用可能な店舗等を管理 していないか」等、②について、「発行者による制限なく、本邦通貨又は外国通貨と の交換を行うことができるか」、「本邦通貨又は外国通貨との交換市場が存在するか」 等を考慮要素とすることが示唆されている8。そのため、電子マネーやゲーム内通貨、 ポイントなどは「仮想通貨」に該当しないこととなる。 なお、ガイドライン案は、新規に発行する仮想通貨の売り出しを行う場合(いわゆ るクラウドセールの場合)に、発行段階で流動性に欠けるとしても、当該仮想通貨を 取り扱うことが適切でないとは限らないとする9。そのため、「仮想通貨」のメルクマ ールとしての「流動性」の有無やこれを取り扱う事業者における仮想通貨交換業の該 当性については、慎重な検討を要する場合もあろう。 7 改正資金決済法 2 条 5 項、6 項参照 8 ガイドライン案 I-1-1 9 ガイドライン案 I-1-2

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2.仮想通貨ビジネスと規制に関する留意点

法令における「仮想通貨交換業」の定義は以下の通りとなっており10、典型的には、 仮想通貨を法貨と交換する販売所や仮想通貨の売買の場を提供する取引所等を運営 する事業者が想定される。「仮想通貨の保管」は含まれないため、仮想通貨のウォレ ットを提供するサービスは、「仮想通貨交換業」に該当しない。 【仮想通貨交換業】 (1) 仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換 (2) (1)に掲げる行為の媒介、取次ぎ又は代理 (3) その行う(1)(2)に掲げる行為に関し、利用者の金銭又は仮想通貨の管理をする こと 近時、仮想通貨を用いたビジネスは広がりをみせており、上記の「仮想通貨交換業」 に該当するかどうかや、他の規制を含めた金融規制上の位置付けが明確でないものも 多い。そのため、ガイドライン案も、仮想通貨を利用するビジネスに関して、他の金 融規制を含めた留意点をいくつか例示する。 たとえば、仮想通貨を利用した資金の送金サービスや、仮想通貨を決済の手段に用 いるサービスといったものが考えられ、実際にサービスを提供している事業者も存在 する。ガイドライン案では、事業者が、「金銭の移動を行うことを内容とする依頼を 受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行する場合」には、「為替 取引」に該当し、資金決済法37 条に基づく資金移動業者の登録が必要となり得るた め留意が必要とされている11。 また、仮想通貨の取引所等の中には、差入証拠金に基づくレバレッジ取引を行うこ とができるものもある。ガイドライン案は、仮想通貨を用いた先物取引等の取引のう ち、現物の受渡を伴わず、差金決済のみが行われる差金決済取引について、法の適用 を受ける「仮想通貨の交換等」には該当しないことを明記する12。これに対し、仮想 通貨を用いた信用取引等を行うに際して、仮想通貨の買付資金について事業者が貸付 けを行うようなサービスについては、貸金業登録が必要となり得る13。なお、レバレ ッジ取引に関して、ガイドライン案は、後述する利用者に対する情報提供の内容とし てレバレッジ取引によるリスクの大きさ等も説明事項の例として挙げているほか14、 利用者保護のための措置としても、適切なレバレッジ倍率やロスカットルール等を設 定することが考えられるとする15。 10 改正資金決済法 2 条 7 項 11 ガイドライン案 I-1-2 12 ガイドライン案 I-1-2 13 ガイドライン案 I-1-2 参照 14 府令案 17 条、ガイドライン案 II-2-2-1-2(2)① 15 府令案 18 条、ガイドライン案 II-2-2-1-2(5)

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4 なお、仮想通貨交換業者は、他の事業との兼業や、役員の兼職は規制されていない ため、他業を行うことは可能である。 【仮想通貨ビジネスと規制上の留意事項の例】 ① 仮想通貨を資金の移動に用いる場合 ⇒資金移動業の規制との関係に留意が必要 ② 仮想通貨の先物取引(差金決済取引の場合) ⇒原則として規制無し ③ 信用取引(信用買い) ⇒貸金業の規制との関係に留意が必要

Ⅲ.政省令案・ガイドライン案のポイント

1.仮想通貨交換業者の登録申請

仮想通貨交換業を行う事業者は、改正資金決済法に従い登録を要する。もっとも、 既述の通り、法施行時にサービスを開始している事業者の登録申請については、6 か 月間の猶予期間が認められる。また、事業者は、改正資金決済法の施行前においても 登録申請書等を提出し、登録を受けるための準備行為を行うことができる16。登録申 請について、標準処理期間は2 か月間とされた17 (1)登録申請書の記載事項・添付書類 仮想通貨交換業者の登録申請書には、事業者の商号・住所や事業内容・方法等所 定事項の記載が求められるところ18、府令案は、登録申請書の記載事項の一部や、添 付書類の具体的な内容を明らかにする。 特徴的なものとして、たとえば、「取り扱う仮想通貨の概要」が登録申請書の記載 事項とされ19、「取り扱う仮想通貨の概要を説明した書類」20が添付書類となること が明記された。具体的には、府令案の登録申請書様式において、仮想通貨の名称・ 単位、仮想通貨の仕組み(仮想通貨の発行方法や取引の認証方法等、仮想通貨の仕 様)、発行者の有無、取り扱う仮想通貨が有するリスクその他利用者が認識すべき当 該仮想通貨の特性等の記載を要するものとされている21。ホワイトペーパー等に基づ き準備することが考えられるが、流通量の少ない仮想通貨についてどのような記載 内容・方法等によるべきか実務上悩ましい場合が生じるかもしれない。 また、登録申請書記載事項のうち、「仮想通貨交換業の内容及び方法」については、 仮想通貨交換業の名称、取扱仮想通貨の名称、事業の内容、仮想通貨と法定通貨又 は他の仮想通貨の交換レートの決定方法、営業日・営業時間、利用者が支払うべき 16 府令案附則 2 条 17 府令案 36 条 1 項 18 改正資金決済法 63 条の 3 第 1 項 19 府令案 5 条 1 号 20 府令案 6 条 11 号 21 府令案別紙様式第 1 号第 7 面

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5 手数料等を記載するものとされている22。加えて、添付資料として、仮想通貨交換業 に関する組織図、計算書類、収支見込みの資料(開始後3 年分)、社内規則、利用者 との契約、委託先との契約等が求められている23。資金移動業者の登録についても同 様の書類提出が求められており、当該登録の実務運用も参考になろう。 (2)登録要件 法令で定める仮想通貨交換業者の登録に必要な要件は、概要以下の通りである24 【仮想通貨交換業者の登録要件の概要】 ① 株式会社又は外国仮想通貨交換業者であること(国内に営業所を有する外国会 社で、国内における代表者を置くもの) ② 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要と認められる内閣府令で 定める基準に適合する財産的基礎を有すること ③ 仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要な体制、改正資金決済法 の規定を遵守するために必要な体制の整備が行われていること ④ 他の仮想通貨交換業者が現に用いている商号若しくは名称と同一の商号若しく は名称又は他の仮想通貨交換業者と誤認されるおそれのある商号若しくは名称 を用いていないこと ⑤ 他に行う事業が公益に反しないこと ⑥ 法人及び役員が法に定める欠格要件に該当しないこと 上記のうち、財産的基礎に関する要件(上記②)は、府令案において以下のよう に明確化された25。体制整備(上記③)については下記2.以下にて詳述する。 【必要な財産的基礎】 ・ 資本金の額が 1,000 万円以上であること ・ 純資産額(貸借対照表上の資産-負債)が負の値でないこと

2.体制整備

仮想通貨交換業者は、仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行するために必要な体制 や、改正資金決済法の規定を遵守するために必要な体制の整備を行うことが求められ る。以下では、政省令案・ガイドライン案において特徴的なポイントを説明する26 22 府令案別紙様式第 1 号第 5 面 23 府令案 6 条 24 改正資金決済法 63 条の 5 第 1 項(条文の構造上は、登録拒否要件として定められている) 25 府令案 9 条 26 法令における行為規制の概要や網羅的な解説については、たとえば、堀天子『実務解説 資金決済法 [第2 版]』(商事法務、2016 年)317 頁以下を参照されたい。

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6 【仮想通貨交換業者の体制整備の主要項目】 ・ 経営管理 ・ 法令等遵守(コンプライアンス)態勢 ・ 反社会的勢力への対応 ・ システム管理 ・ 利用者情報管理 ・ 分別管理 ・ 外部委託先管理 ・ 利用者説明、情報提供 ・ その他利用者保護のための措置 ・ 事務リスク管理、帳簿書類作成・保存 ・ 苦情処理、金融 ADR ・ 障害者への対応 ・ 監督への対応(当局への報告書提出等) ・ 犯罪収益移転防止法への対応(本人確認等) (1)分別管理 仮想通貨交換業者は、利用者の金銭・仮想通貨を自己の金銭・仮想通貨と分別し て管理しなければならない27。府令案は、以下の通り、分別管理の具体的なルールを 定める28 【仮想通貨交換業者の分別管理】 <金銭の分別管理> ① 預金銀行等への預金又は貯金をして 管理する方法(利用者の金銭であるこ とを名義で明らかにすることが必要。 ガイドライン案では、帳簿上の利用者 財産の残高と、利用者財産を分別管理 している銀行等の口座残高を毎営業 日照合し、差異が生じた場合には 2 営業日以内に解消することが望まし いとされている29) ② 信託業務を営む金融機関への金銭信 託で元本補填の契約のあるもので管 理する方法(利用者区分管理信託。府 令案において、詳細な要件と管理額等 <仮想通貨の分別管理> ① 自己で管理する場合 ・ 利用者の仮想通貨と自己の固有財 産である仮想通貨とを明確に区分 ・ 利用者の仮想通貨についてどの利 用者の仮想通貨であるかが直ちに 判別できる状態(数量が自己の帳簿 により直ちに判別できる状態を含 む)で管理 ② 第三者をして管理させる場合 当該第三者において以下を行わせ る ・ 利用者の仮想通貨と自己の固有財 産である仮想通貨とを明確に区分 27 改正資金決済法 63 条の 11 28 府令案 20 条 29 ガイドライン案 II-2-2-2-2(1)④

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7 を毎日算定する必要がある旨が規定 されている30) ・ 利用者の仮想通貨についてどの利 用者の仮想通貨であるかが直ちに 判別できる状態(数量が自己の帳簿 により直ちに判別できる状態を含 む)で管理 <分別管理監査> 毎年1 回以上、公認会計士又は監査法人の監査(分別管理監査)を受けなければな らない31 利用者資産の分別管理については、実務運用とも関連するため事業者の関心も高 いと思われる。 仮想通貨の分別管理に関し、自己分と利用者分の明確な区分は求められているも のの、利用者「毎」の数量については帳簿上の管理で足りるとされたため、利用者 分の仮想通貨を利用者毎に別々のウォレットで管理し、取引の都度ブロックチェー ンにおいて反映するようなことまでは求められていない。一方で、ガイドライン案 は、仮想通貨交換業者が管理する帳簿上の利用者財産の残高と、ブロックチェーン 等のネットワーク上の利用者財産の有高を毎営業日照合し、不足が生じた場合には5 営業日以内に解消することが望ましいとする32。 また、ガイドライン案は、仮想通貨の分別管理について、自己分と利用者分につ き暗号鍵等の保管場所を区別することを求めるほか、利用者分については、その利 便性等を損なわない範囲で、可能な限り、仮想通貨を管理・処分するために必要な 暗号鍵等をインターネット等の外部のネットワークに接続されていない環境で管理 することを求める33。仮想通貨がインターネット上で集中するとハッカーの攻撃を受 けて仮想通貨が盗まれるリスクが高まるため、実務上は、流動性を持たせる少額分 についてのみインターネット上のウォレット(「ホットウォレット」などと呼ぶ)で 管理し、長期資産として保有する残りをインターネットから切り離されたウォレッ ト(「コールドウォレット」などと呼ぶ)で管理することが望ましいと考えられてお り、ガイドライン案もこのような実務認識に基づくものと評価されよう。 なお、仮想通貨交換業者は、後述する利用者に対する取引時の情報提供において、 分別管理義務が設けられている旨及び分別管理の方法を具体的に説明することが求 められている34。 (2)外部委託先管理 仮想通貨交換業を行う事業者はいわゆるスタートアップ企業も多く、自ら全ての 業務を行うのではなく、業務の一部を第三者に委託することが想定される。 30 府令案 21 条、22 条 31 府令案 23 条 32 ガイドライン案 II-2-2-2-2(1)③ 33 ガイドライン案 II-2-2-2-2(1)⑥、⑦ 34 ガイドライン案 II-2-2-1-2(2)⑥

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8 そのため、仮想通貨交換業者の登録に際しては、委託先の商号・名称や委託業務 の内容を登録申請書に記載するとともに35、委託契約を添付書類に含めることが求め られている36。また、仮想通貨交換業者は、業務の一部を第三者に委託した場合には、 委託する業務の内容に応じて、以下の措置を講じなければならないとされている37。 【外部委託先管理】 ・ 当該業務を適正かつ確実に遂行することができる能力を有する者に委託するた めの措置 ・ 委託先における当該業務の実施状況を、定期的に又は必要に応じて確認するこ と等により、委託先が当該業務を適正かつ確実に遂行しているかを検証し、必 要に応じ改善させる等、委託先に対する必要かつ適切な監督等を行うための措 置 ・ 委託先が行う仮想通貨交換業に係る利用者からの苦情を適切かつ迅速に処理す るために必要な措置 ・ 委託先が当該業務を適切に行うことができない事態が生じた場合には、他の適 切な第三者に当該業務を速やかに委託する等、仮想通貨交換業の利用者の保護 に支障が生じること等を防止するための措置 ・ 仮想通貨交換業者の業務の適正かつ確実な遂行を確保し、当該業務に係る利用 者の保護を図るため必要がある場合には、当該業務の委託に係る契約の変更又 は解除をする等の必要な措置を講ずるための措置 改正資金決済法や政省令案は、委託する業務については特段制限を設けていない。 他方で、たとえば分別管理を第三者に行わせる場合には、委託先において、既述の ガイドライン案の要請事項を遵守させることが求められるなど38、業務委託により、 仮想通貨交換業者が免責されるわけではない点に留意が必要である。 (3)利用者に対する説明・情報提供 改正資金決済法や政省令案は、仮想通貨交換業者に対し、利用者保護のための措 置の一つとして、以下の利用者に対する説明・情報提供の義務を課し、情報提供の 対象事項も具体的に定める39。「書面の交付その他の適切な方法」によるものとされ ており、電子メール等の電磁的方法は排除されておらず、ガイドライン案も、イン ターネットを通じた取引の場合に、利用者がパソコンの画面上に表示される説明事 項を読み、その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする方法を例示する40。 35 改正資金決済法 63 条の 3 第 1 項 9 号 36 府令案 6 条 16 号 37 府令案 15 条 38 ガイドライン案 II-2-2-2-2(1)⑧ 39 改正資金決済法 63 条の 10、府令案 16 条、17 条 40 ガイドライン案 II-2-2-1-2(1)①

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9 【利用者に対する説明・情報提供】 ① 仮想通貨と本邦通貨又は外国通貨との誤認防止のための説明(事前説明) ② 仮想通貨の取引の内容や手数料等の情報提供(単発の取引前・反復継続取引に 関する契約締結前) ※反復継続取引に関する契約締結としては、ウォレットの開設等が想定される ③ 金銭・仮想通貨の受取時の情報提供(受領時) ④ 反復継続取引について、取引の記録、管理する利用者の金銭の額及び仮想通貨 の数量についての定期的な情報提供(3 か月に 1 度以上) 上記②の取引時に提供する情報には、「取り扱う仮想通貨の価値の変動」や「取引 について利用者の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事由」を直接の原因として 損失が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由を含むものとされており41、 いわゆるリスクファクターの開示が求められている。ガイドラインでは、仮想通貨 の特性(電子機器その他の物に電子的方法により記録される財産的価値であり、電 子情報処理組織を用いて移転するものであること)や、サーバー攻撃による仮想通 貨の消失・価値減少リスクがあることが説明事項として例示されている42。改正資金 決済法の成立前から、ウェブサイト上にリスクファクターを説明するページを設け る取引所もあったが、今後は、これら法令等の要請に従った実務運用が求められる ことになる。 そのほかにも、ガイドライン案は、単発の取引時における説明事項として、金銭・ 仮想通貨の預託の方法や、取引に関する金銭・仮想通貨の状況を確認する方法等を 例示し、また、反復継続的な取引に関する契約締結時の説明事項の具体例として、 暗証番号の設定その他のセキュリティに関する事項や口座開設契約等により利用者 毎に仮想通貨交換業者が受け入れられる金額に上限がある場合の上限金額を挙げる 43。いずれも府令案において取引・契約の「内容に関し参考となると認められる事項」 44とされているものの具体例を示すものであり、実務運用にあたってはこれらガイド ラインの記載にも留意が必要となる。 (4)帳簿書類の作成・保存、報告書の提出 仮想通貨交換業者は、以下の帳簿書類の作成・保存が義務付けられている45。 【帳簿書類】 【保存期間】 ① 仮想通貨交換業に係る取引記録 ・ 取引日記帳 10 年 41 府令案 17 条 2 項 5 号、6 号 42 ガイドライン案 II-2-2-1-2(2)① 43 ガイドライン案 II-2-2-1-2(2)④⑤ 44 府令案 17 条 1 項 12 号、2 項 4 号 45 改正資金決済法 63 条の 13、府令案 26 条から 28 条まで

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10 ・ 媒介又は代理に係る取引記録 ・ 自己勘定元帳 ② 総勘定元帳 ・ 利用者勘定元帳 ・ 仮想通貨管理明細簿(金銭・仮想通貨の保管を行う場合) ③ 顧客勘定元帳(反復継続取引に関する契約を締結する場合) ※いずれも府令案で具体的な記載事項が列挙されている ④ 利用者の金銭の額及び仮想通貨の数量の記録 ⑤ 信託財産の額の記録(利用者区分管理信託により金銭を分別管理 する場合) ⑥ 分別管理監査の結果に関する記録 5 年 【保存方法】 <原則> ・ 国内において保存 <例外> ・ 帳簿書類が外国の営業所において作成された場合に、作成後遅滞なく国内にお いてその写しを保存しているとき ・ 電磁的記録をもって作成され、かつ、国内の営業所において記録事項を表示さ れたものを遅滞なく閲覧することができる状態に置いているとき 加えて、仮想通貨交換業者は、以下の通り、仮想通貨交換業に関する報告書及び 利用者財産の管理に関する報告書を、当局に対して定期的に提出しなければならな い46 【提出書類】 【提出頻度/期限】 ① 仮想通貨交換業に関する報告書(事業概況書 及び仮想通貨交換業に係る収支の状況を記載 した書面) ※貸借対照表、損益計算書及びこれらについ ての監査報告書の添付が必要 各事業年度 /事業年度末日から3 か月以内 ※ 監査報告書の添付は、法施 行日が属する事業年度の翌 事業年度分からで足りる47 ② 利用者財産の管理に関する報告書 ※残高証明書、分別管理監査の監査報告書の 添付が必要 3 か月毎 /期間経過後1 か月以内 46 改正資金決済法 63 条の 14、府令案 29 条、30 条 47 府令案附則 3 条

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3.犯罪収益移転防止法への対応(本人確認等)

仮想通貨交換業者は、改正法により犯罪収益移転防止法48上の特定事業者として指 定され、他の特定事業者と同様に、取引時確認義務、本人確認記録及び取引記録等の 作成義務、疑わしい取引の届出、体制整備(研修の実施、社内規則の整備、統括管理 者の選任等)等が義務付けられている49。 犯収法施行令案50は、仮想通貨交換業を特定業務に指定し、取引時確認を行う必要 が生じる特定取引の内容について、以下を挙げる51。 【取引時確認が必要となる特定取引】 ① 仮想通貨の交換等を継続的に若しくは反復して行うこと又は保管を行うことを 内容とする契約の締結(例:ウォレットの開設) ② 仮想通貨の交換等に係る仮想通貨の価額が 200 万円を超えるもの ③ 仮想通貨交換業に関し管理する顧客等の仮想通貨を当該顧客等の依頼に基づい て移転させる行為であって、移転に係る仮想通貨の価額が10 万円を超えるもの 上記③は、仮想通貨の移転の取引であり、改正資金決済法における仮想通貨交換業 の範囲には本来含まれないものである。しかし、犯罪収益移転防止法における取引時 確認等の対象とされたため、上記 2.(4)の帳簿書類にも取引の内容や相手方を特定す るに足りる事項を記載・記録する必要があろう。 なお、改正法の施行前に取引時確認に相当する確認を行っている利用者については、 一定の要件を満たせば、取引時確認を改めて行うことは必要とされていない52

セミナー情報

 セミナー 『金融機関とFinTech 企業が取り組むオープン・イノベーションに 係る論点整理』 開催日時 2017 年 3 月 22 日(水) 13:30~16:30 講師 湯川 昌紀、飯島 隆博 主催 FN コミュニケーションズ 48 「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下「犯罪収益移転防止法」又は「犯収法」という) 49 「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令」の改正案 50 犯収法 4 条、6 条、7 条、8 条、11 条 51 犯収法施行令案 6 条 14 号、7 条 1 項 1 号ヨからレまで 52 改正法の施行令案附則 6 条

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12  セミナー 『仮想通貨を用いたビジネスに取り組む上で押さえておくべき法律 上のポイント』 開催日時 2017 年 4 月 19 日(水) 13:30~16:30 講師 末廣 裕亮、青山 慎一 主催 FN コミュニケーションズ

文献情報

 論文 「FinTech 深化に向けた制度のデザイン――新しい金融パラダイム 実現のために 第 4 回 ブロックチェーン技術を用いたスマート コントラクトの検討」 掲載誌 NBL 1093 号 著者 増島 雅和  論文 「FinTech 深化に向けた制度のデザイン――新しい金融パラダイム 実現のために 第3 回 仮想通貨の私法上の取扱いについて」 掲載誌 NBL 1090 号 著者 末廣 裕亮  論文 「17 年 1 月から金融機関等に求められる CRS(共通報告基準)の 実務対応」 掲載誌 週刊金融財政事情 3196 号 著者 石川 貴教(共著)  論文 「反社会的勢力から、あるいは反社会的勢力『排除』から、どう企 業を守っていくべきか?」 掲載誌 月刊ザ・ローヤーズ 2017 年 1 月号 著者 矢田 悠  論文 「顧客本位の業務運営のための7 大原則徹底研究」 掲載誌 銀行実務 Vol.47 No.2 著者 小田 大輔、石川 貴教、吉田 和央、篠原 孝典、湯川 昌紀、白根 央  論文 「実務相談 銀行法[第 50 回]大口信用供与等規制(1) 規制の概 要と目的等、信用供与等限度額を超過した場合の取扱い、グループ ベースの管理と情報授受規制」 掲載誌 金融法務事情 No.2059 著者 小田 大輔

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当事務所は、Mori Hamada & Matsumoto(Thailand)Co., Ltd.を通じ、タイの大

手法律事務所であるChandler & Thong-ek Law Offices Limited(チャンドラー・

アンド・トンエック法律事務所、以下 CTLO)と経営統合し、CTLO の名称を

Chandler MHM Limited(以下 CMHM)へ変更し、2017 年 1 月 4 日より業務を開 始いたしました。

当事務所は、2015 年 4 月にバンコクオフィス(Mori Hamada & Matsumoto

(Thailand)Co., Ltd.)を開設し、日本人弁護士 4 名、タイ人弁護士 1 名の体制 でアドバイスを提供してまいりましたが、タイ市場においてさらに強固な基盤を 確立し、東南アジアにおける多種多様な法務需要に幅広く応えるべく、今般の経 営統合を機に、飛躍的に体制を充実させてまいります。 当事務所のパートナーであり、海外M&A や国際取引・通商実務に精通した河井 聡弁護士がCMHM のマネージング・パートナーに、CTLO のマネージング・パ ートナーであるNiwes Phancharoenworakul 弁護士とともに就任いたしました。 さらに、当事務所の東京オフィス、シンガポールオフィス、及びジャカルタデス クにて執務していた日本人弁護士3 名も CMHM に拠点を移し、より一層の体制 強化を行いました。 その結果、CMHM は、既に CTLO に在籍しているタイ人・米国人等の弁護士と 合わせ、50 名を超える陣容となり、日本の法律事務所の拠点としてはタイ国内 はもとより東南アジア地域で群を抜いた規模となります。 当事務所は、今後とも、東京、大阪、名古屋、福岡、北京、上海、シンガポール、 ヤンゴン、ジャカルタそしてCMHM の各拠点の全弁護士が一丸となって、より 一層クライアントの皆様のお役に立てるよう尽力してまいりますので、何卒宜し くお願い申し上げます。  新人弁護士(29 名)が入所しました

(14)

当事務所は、本書において法的アドバイスを提供するものではありません。具体的案件については個別の状況に応じて弁護士にご相談頂きますようお願い申し上げます。 © 2017 Mori Hamada & Matsumoto. All rights reserved.

14  設樂 隆一 弁護士が入所しました 当事務所は、2017 年 2 月 15 日付で、本年 1 月に知的財産高等裁判所長を退官し た設樂 隆一 弁護士を客員弁護士として迎えました。 設樂弁護士は、東京地方裁判所知的財産権部や知的財産高等裁判所等で知的財産 訴訟実務に携わり、また、知的財産高等裁判所長として知的財産訴訟に関する国 際的な活動においても中心的な役割を果たしてこられました。 設樂弁護士の入所により、当事務所は、知的財産紛争において、更に充実したリ ーガルサービスを提供できるよう努めてまいる所存です。  パートナーおよびオブ・カウンセル就任のお知らせ 本年1 月 1 日付にて、下記の 4 名の弁護士がパートナーに就任いたしました。 【パートナー】 田中 光江、塙 晋、渡辺 邦広、小島 冬樹 また、同日付で3 名の弁護士がオブ・カウンセルに就任いたしました。 【オブ・カウンセル】 柴田 久、原 潔、孫 彦 今後ともクライアントの皆様により良いリーガル・サービスを提供するため、 日々研鑽に努めて参ります。引き続きご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願いいたし ます。  村上 博隆 公認会計士・税理士が入所しました 2017 年 3 月 1 日付で、村上 博隆 公認会計士・税理士が、森・濱田松本法律事 務所・MHM 税理士事務所に加入しました。 村上公認会計士・税理士は、東京国税局に勤務した後、有限責任監査法人トーマ ツにて勤務し、東京国税局では法人税、消費税、源泉所得税及び印紙税等に関す る税務調査等を、有限責任監査法人トーマツでは、会計監査や株式公開支援業務 等を担当してきました。 村上公認会計士・税理士の入所により、法務と一体となった税務サービスを、さ らに充実した体制で提供できるように、努めてまいる所存です。 (当事務所に関するお問い合せ) 森・濱田松本法律事務所 広報担当 mhm_info@mhmjapan.com 03-6212-8330 www.mhmjapan.com

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