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「市町村間の補助金競争が企業集積に与える影響」

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市町村間

市町村間

市町村間

市町村間の

の補助金競争

補助金競争

補助金競争が

補助金競争

が企業集積

企業集積に

企業集積

企業集積

に与

与える

える

える

える影響

影響

影響

影響

- 要 旨 - 近年,各市町村は税収増加,公共サービスの供給の向上,産業基盤の整備やインフラの充実,生産・所得・ 雇用・人口の増加等を 目的 に,企業誘致のための優遇 措置政策を実 施している.しかし,こうした優遇措 置政 策 は,企 業 が地 域 間 を 移 動す るだけで,国 あるいは都 道府 県 レベ ル ではなんら 便 益を もたらさ ない可 能 性 が ある. 本研究では,各市町村が実施している企業立地優遇措置政策が企業集積に与える影響について,理論及 び実証分析を行った.理論分析の結果,企業誘致を目的とした政策の実施は,囚人のジレンマを引き起こし, 各 市町 村 が協 調 して政 策を 実 施す る場合 よりも低い社 会 厚 生し かもたらさ ない可 能 性 があるこ と が示さ れ た. 一方,実証分析の結果,企業立地優遇措置政策や都市属性が企業の立地選択の決定要因の一つであること が示された.また,シミュレーション分析によって,すべての市町村が政策を導入しない場合と現状の企業集積 の状 況 を 比 較 す るこ と で,企 業 立 地 優 遇 措 置 政 策 の評 価 を 行 っ た.そ の結 果 ,企 業 立 地 優 遇 措 置 政 策 の実 施 は,市町 村間 の補 助金 競 争を 引き起こし,都道 府県 内 の企業 集 積にほと んど 貢献 しない,あ るいは企 業集 積が阻害されている都道府県が確認された.

keyword

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企業誘致,優遇政策,補助金競争,集積,囚人のジレンマ,立地選択

2012

(

平成

平成

平成

平成

24

)2

政策研究大学院大学

政策研究大学院大学

政策研究大学院大学

政策研究大学院大学

まちづくり

まちづくりプログラム

まちづくり

まちづくり

プログラム

プログラム

プログラム

MJU11021

藤澤

藤澤

藤澤

藤澤

(2)

【目

次】

第 第第 第1章章章章....はじめにはじめにはじめにはじめに ... 1 第 第第 第2章章章章....製造業製造業製造業と製造業と企業立地とと企業立地企業立地企業立地のののの現状把握現状把握現状把握現状把握 ... 3 2-1.我が国における製造業の現状 ... 3 2-2.企業の立地選択に関する決定要因の整理 ... 3 2-3.国の産業立地政策 ... 5 第 第第 第3章章章章....企業立地優遇措置政策企業立地優遇措置政策企業立地優遇措置政策に企業立地優遇措置政策に関にに関関関するするする理論分析する理論分析理論分析理論分析 ... 6 第 第第 第4章章章章....企業企業の企業企業ののの立地選択立地選択立地選択立地選択のの決定要因のの決定要因決定要因に決定要因にに関に関する関関するするする実証分析実証分析実証分析実証分析 ... 9 4-1.企業立地選択モデル ... 9 4-2.利用するデータ ... 11 4-3.推定結果 ... 13 4-3-1.推定結果(独立の政策として実施した場合) ... 13 4-3-2.推定結果(複数の政策を同時に実施した場合) ... 14 第 第第 第5章章章章....企業集積企業集積の企業集積企業集積ののの変化変化変化変化にに関にに関関関するするするする分析分析分析分析(シミュレーションシミュレーション分析シミュレーションシミュレーション分析分析分析) ... 15 5-1.企業集中度(HHI)の算出方法 ... 15 5-2.企業集中度(HHI)の算出結果 ... 16 第 第第 第6章章章章....企業集積企業集積企業集積の企業集積ののの効果効果に効果効果ににに関関関関するするするする実証分析実証分析実証分析実証分析 ... 17 6-1.実証モデル ... 17 6-2.利用するデータ ... 17 6-3.推定結果 ... 18 第 第第 第7章章章章....おわりにおわりにおわりにおわりに ... 19 【 【【 【参考文献参考文献参考文献】参考文献】】】 ... 20 【 【【 【参考論文参考論文参考論文】参考論文】】】 ... 20 【 【【 【参考資料参考資料参考資料】参考資料】】】 ... 21

(3)

1

章.

.はじめに

はじめに

はじめに

はじめに

近年,多 くの市町村 は税収 増加,公 共サービスの供給 向上,産 業基 盤の整備 やイ ンフラの充実,生 産・所得・雇用・人口の増加等を目的に,企業誘致のための優遇措置政策を実施している.廣瀬(2008) によると,地方公共団体間の企業誘致競争は,地域資源の有効利用や新規参入,起業を促進するもの である場合,有益であるとしている.しかし,赤井他(2003)は,何らかの付加価値を伴わない企業の地域 間移動の場合 ,企業 誘致は地域間の所得 移転でし かなく,国全 体としては,ゼロサム ・ゲームにすぎな い.地方公共団体間の競争の結果を評価する視点は,一国(社会)全体からであるべきで,一地域の損 得のみに注目するのは誤りであるとしている.菅野他(2007)は,現在の企業誘致競争について触れ,地 方自治 体間 の企 業誘 致競 争 が過熱し ているこ と ,地 方自 治体の企業 誘致 補助 金の金 額が高 騰してい ることを指摘している. 本研究 は,各市 町村が実 施 している企業立地 優遇措 置 政策が企業集 積に与える影 響について,理 論及び実証分析を行う.理論分析の結果,企業立地優遇措置政策の実施は,囚人のジレンマを引き起 こし,各市町村が協調して政策を実施する場合よりも低い社会厚生しかもたらさない可能性があることが 示された.一方,実証分析の結果,企業立地優遇措置政策や都市属性が企業の立地選択の決定要因 の一 つ であ るこ と が明 ら かと なっ た.また,シミュレー ショ ン分 析 によっ て,企 業 立 地 優 遇 措置 政 策 の実 施が市町 村間の補助金 競争 を引き起こし,都道府 県内の企業集 積にほと んど 貢献しない,あ るいは集 積を阻害している都道府県が確認された.以上の結果を踏まえ,集積の経済を考慮できる立場として, 行政は企業立地優遇措置政策を実施し,管理できる主体を市町村よりも広域的なエリアで設定すること が望ましい. 先 行 研 究 につ いて,集 積 の経 済 と 立 地 選 択 の決 定 要 因に関 す る実 証 分 析 の研 究 は数 多 くあ るが, 企 業 立 地 優 遇 措 置 政 策 に 関 す る研 究 は少 ない. 集 積 の 経 済 に関 す る先 行 研 究 で は ,Marshall(1890) が産 業 集 積 にお ける外 部 経 済 の重 要 性 につ いて議 論 し ている.亀 山(2006)によると ,外 部 経 済 は,地 理的に集中した産業は特化した中間財の供給者を地域内に維持できること.同業種の労働者を雇用す る企 業 が集 中 するこ と で,労働 市 場 が完 備さ れ る.企 業は労 働 力 を 見 つ けや す く,労 働 者 は失 業 の継 続の恐れがなくなること.地理的に近接していることで,新しい技術や情報を入手できることの 3 要素か ら なっ ていると し ている.立 地 選 択 の決 定 要 因 に関 す る先 行 研 究 では, 深 尾 ・ 岳(1997)は,電 機 メー カ ーを研究対象として,海外を含めた86の選択肢から企業が立地場所を選定するという設定で,コンディ ショナル・ロジット分析を用いて実証分析している.労働コスト・経済集積・1人あたりインフラがマイナス, 産業集積がプラスに有意な結果として得られている.また,岳(2000)は,都道府県の持っている属性のう ち,賃 金,地 価,集積 利益 及 び政策 上の優 遇措 置が地 域 間の立 地選択 にいかに影響 を及 ぼしたかに ついて研究している.工場立 地動向調査 結果報告 書にお ける業種別の立地 データを 使い,コンデ ィシ ョナル・ロジット分析を用いて実証分析している.立地する選択者側の企業属性と交通整備水準につい ては考 慮され ていないが,企 業の立 地 選 択には,賃 金・ 地 価がマイナス,集 積利 益 と 政 策 上の優 遇措 置がプラスに有意な結果として得られている.田邉・松浦(2006)は,交通社会資本が工場立地選択に与 える影響を明らかにするため,有価証券報告書等を使い,研究している.工場の設立年・所在地を特定 す るこ と で事 業 所 デ ー タを 作 成 ,コン デ ィショ ナル ・ ロジッ ト分 析 を 用 いて実 証 分 析 し ている.立 地 選 択

(4)

に最も重要な決定要因は,本社までの移動時間であり,その他に,空港・港湾・新幹線駅まで一定の時 間 内 に到 達 できるこ と も挙 げ ている.企 業 誘 致 政 策 に関 す る先 行 研 究 で は,廣 瀬(2008)は,企 業 誘 致 政策に対する具体的なメリットとデメリットを検討している(表1参照).地域視点から見た場合のメリットとし て,深澤(2006)は,誘致した企業自体の生産性や雇用による直接的な効果,関連産業における経済波 及 効 果 , 雇 用 の 誘 発 効 果 を 通 じ て , 事 業 税 ・ 住 民 税 等 の 税 収 増 加 を も た ら す と し て い る . ま た , 赤 井 (2003)は,増 収 によっ て 地 方 公 共 サー ビ スの 供 給 が高 ま り,産 業 基 盤 の整 備 や 生 活 イ ン フ ラ の充 実 に 寄与するとしている.さらに,廣瀬(2008)は,進出企業を中核として,地域固有の経済・経営資源が有機 的に結合し,産業集積が形成されることをメリットとして挙げている.しかし,同時にデメリットとして,優遇 措 置 政 策 が与 え る企 業 へ のイ ン セン ティブの提 供 は,必 ず し も企 業 立 地 の決 定 要 因 と し て機 能 し てい ないことも指摘している.これまでの既存研究では,企業集積に着目し,統計的な分析手法を用いて企 業立地優遇措置政策の効果を評価している研究はない. 本研究の構成は次のとおりとする.まず,第 2 章で我が国における製造業の現状,企業立地の決定 要因の整理,産業立地政策に関する国の法制度や構想について,統計データを示しながら概観する. 第3章では,企業立地優遇措置政策による囚人のジレンマの状況について,理論モデルを用いて説明 する.第 4 章では,企業立地選択の決定要因を検証するため,企業立地選択モデルを用いて実証分 析を行い,結果を示す.第5章では,シミュレーション分析によって,企業立地優遇措置政策による企業 集積の変化を把握し,政策評価を行う.第 6 章では,都市特性が企業集積に与える影響を明らかにす るため,実証分析を行う.第7章で政策提言と今後の課題をまとめる. 表1 :企業誘致施策の論点 メリット デメリット・課題 地 域 の 視 点 財 政 〇企業誘致により,事業税・住 民税等の税収が増加する. 〇 自 主 財 源 比 率 が 高 ま り , 交 付税への依存が低下する. 〇 税 収 の 増 加 に よ り , 地 方 の 公共サービスの供給が高まる. 〇補助金等のインセンティブの提供は必ずしも企業立地の決定的要因ではない. 〇歳入が特定企業や産業の動向に左右され,変動しやすくなる. 地 域 経 済 〇 企 業 進 出 に よ り , 生 産 , 所 得,雇用,人口等が増加する. 〇 進 出 企 業 を 中 核 と し て , 地 域固有の経済・ 経営資源が有 機 的に結合 し ,産 業集積が 形 成される. 〇域外から進出してきた企業が生産活動の担い手となる場合には,原材料や部 品等を域外から調達する割合が,地元企業による生産の場合よりも高くなる傾向 がある. 〇雇用増の多くが,域外からの雇用・非正規雇用,外国人等である場合がある. 〇巨大工場の進出は,中小零細企業の倒産,閉鎖等を招く場合がある. 〇地元住民の理解や環境への配慮が不十分である場合,トラブルを生む恐れが ある. 〇特定の企業や産業への過度の依存は,景気循環や産業構造の変化への対応 力を弱め,地域の安定性を脅かす. 国 の 視 点 〇 自 治 体 間 の 企 業 誘 致 競 争 は , 企 業 進 出 が , 地 域 資 源 の 有 効利 用や , 新規参 入 ,起 業 を 促 進 す る も の で あ る 場 合 に は,有益である. 〇自治体間の企業誘致競争が,何らかの付加価値を伴わない企業の地域間移 動であるならば,企業誘致は地域間の所得移転でしかなく,国全体としては,ゼロ サム・ゲームにすぎない. 〇地方への企業誘致促進のためには,国による規制や地方交付税のあり方を改 め,地方の権限を強めることが重要である. 〇グローバルな企業誘致競争の中で,外資規制や企業買収ルール等のあり方を 見直し,国としての魅力を高めることが必要である. (出典)廣瀬信己(2008)『企業立地と地域経済の活性化-大阪府・福岡県の取り組みを中心に-』国立国会図書館調査及び立法考査局 レファレンス,p68.

(5)

2

章.

.製造業

製造業

製造業 と

製造業

と企業立地

企業立地

企業立地

企業立地の

の現状把握

現状把握

現状把握

現状把握

本章では,2-1.で,研究対象業種である製造業の現状を把握し,2-2.で,多くの市町村で企業立地優 遇政策の対象 となっている移 転企業等の立 地選択に対す る決定要因を 整理,2-3.で,国が実施してい る産業立地政策を時系列的に把握する. 2-1....我我我我がががが国国における国国におけるにおけるにおける製造業製造業製造業製造業ののの現状の現状現状現状 本 研 究 の対 象 業 種 で あ る 製 造 業 の 現 状 把握を行う.図 2 は,経済産業省が実施し て い る 工 業 統 計 調 査 の 結 果 を 用 い て , 1970年から2009年までの製造業に関わる 従業者数及び事業所数(従業員4人以上) を時系列的に表したグラフ である.1990 年 以 降 ,2004 年 から の 一 時 的 な 回 復 は 見 ら れ る が , 従 業 者 数 及 び 事 業 所 数 は 急 激 な 減少 傾 向にあ る.2009 年の製造 業 の事 業 所数は23.5 万事業所で,ピーク時の 1990 年に比べ46%の減少,従業者数は77.4万 人で,同31%の減少となっている. 次に,多くの市町村で企業立地優遇政策 の対 象 と なっ ている 工 場 の立 地 につ いて現 状把握を行う.図 3 は,経済産業省が実施 している工場立地動向調査の結果を用いて, 調査を開始した1974年から2010年までの 工 場 の敷 地 面 積 及 び 立 地 件 数 を 時 系 列 的 に表 し たグ ラ フ であ る.2010 年 の工 場 立 地 件 数 は,調 査 開 始以 降 ,過 去 最低 であ っ た. また,工場 立地 件数 ,敷 地面 積と もに 2008 年から3年連続で減少している. 2-2....企業企業企業企業のののの立地選択立地選択立地選択立地選択にに関にに関関関するするするする決定要因決定要因の決定要因決定要因ののの整理整理整理整理 企業の立地選択の決定要因について整理する.図4は,経済産業省が実施(財団法人日本立地セン ターに委託:平成18年度工業立地適正化等調査)した2007年の地域経済分析調査(企業立地関係調 査)の結 果 である.企 業が立 地に際し て重要 視し ている項 目 は,「 土地 の広さ」(69.8%),「 土地 の価格」 (68.5%),「 交 通 条 件 が良 い」(60.8%),「 作 業 者 等 の確 保 が容 易 」(45.9%)等 であ り,本 研 究 で着 目 し て いる優遇措置政策は,「優遇措置の充実」(23.0%)と決して高い数値ではない.また,図5は同省が実施 200000 250000 300000 350000 400000 450000 500000 6000000 7000000 8000000 9000000 10000000 11000000 12000000 従業者数 事業所数 図2:製造業の現状 (人) (事業所) 図3:全国の工場立地動向 0 1000 2000 3000 4000 5000 0 10000 20000 30000 40000 50000 敷地面積 立地件数 (件) (ha)

(6)

している工場立地動向調査(2010 年)の結果である.工場の立地地点選定理由として,「工業団地であ る」(130 件),「地価」(124 件),「本社・他の自社工場への近接性」(124 件)等があり,優遇措置政策は, 「国・地方自治体の助成」(87 件)と決して多い件数ではない.いずれの調査結果からも,優遇措置政策 は企業立地の決定的要因になっていないことが分かる. 130 129 124 91 89 87 72 72 69 65 58 41 26 17 17 9 3 1 0 20 40 60 80 100 120 140 工業団地である 地価 本社・他の自社工場への近接性 周辺環境からの制約が少ない 人材・労働力の確保 国・地方自治体の助成 地方自治体の誠意・積極性・迅速性 高速道路を利用できる 関連企業への近接性 市場への近接性 その他 原材料等の入手の便 経営者等の個人的なつながり 流通業・対事業所サービス業への近接性 空港・港湾・鉄道等を利用できる 工業用水の確保 学術研究機関の充実(産学共同等) 他企業との共同立地 出典:経済産業省地域経済産業グループ「地域経済分析調査(企業立地関係調査)報告書」経済産業省,2007,p.16 図4:企業の立地理由(地域経済分析調査) 図5:企業の立地理由(工場立地動向調査) 69.8% 68.5% 60.8% 45.9% 32.0% 28.8% 23.0% 23.0% 12.6% 11.3% 10.8% 9.9% 9.9% 9.0% 7.7% 5.9% 5.0% 3.2% 3.2% 2.7% 0.5% 6.8% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 土地の広さ 土地の価格 交通条件(道路・港湾・漁港・鉄道)が良い 作業者等の確保が容易 地元自治体の対応の迅速さ 取引先企業に近接 自然環境が良い 優遇措置の充実 市場に近接 地盤が良い 電力・エネルギー施設が整備されている 十分な水を確保できる(上水道・工業水道・井戸) 経営者の地縁等 技能者、技術者の確保が容易 排水設備が整備されている 都市的機能(住環境の整備)の充実 立地後のアフターケアへの期待 情報通信インフラ設備が整備されている 大学・産業支援機関が存在 同業他社の集積 廃棄物処理・リサイクル設備が整備されている その他 (件)

(7)

2-3....国国国国のののの産業立地政策産業立地政策産業立地政策産業立地政策 我が国 は,産 業 と自 然 環 境・ 地域 社 会 との調和 を 図りつ つ,全 国的 に適 正 な産 業 配 置を 実 現させる ため,表2に示すような産業立地政策を講じてきた. 武田(2011)は,戦後からの国の産業立地政策をまとめている.戦後,国は復興を主な政策目的として, 1959 年「工業等制限法」,1960 年「太平洋ベルト地帯構想」,1962 年「新産業都市建設促進法」が計 画 ・ 制 定さ れ てきた.し かし,高 度 経 済 成 長 が進 む につれ,大 都 市 や そ の周 辺地 域 の過 密 と地 方 の過 疎という問題を引き起こした.そこで,大都市圏への諸機能の集中を是正し,地域経済の活性化を推進 するため,いくつかの政策が打ち出された.1972年「工業再配置促進法」,1983年「高度技術工業集積 地域開発促進法」(テクノポリス法),1986年「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に 関する臨時措置法」(民活法),1988 年「地域産業の高度化に寄付する特定事業の集積の促進に関す る法律」(頭脳立地法),1992 年「地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関す る法律」(地方拠点法)等である. 1990年代に入り,産業立地政策は大きな転換を迎えることになった.生産効率の向上や経営のスリム 化が進 んだことによって,国 内製造拠 点の統 廃合が進み ,労働集 約的な業種や 工程 は,より人 件費等 の生産コストが低いと いわれ る海外,特にアジア地域に進 出した.ここで,「国内産業の空洞化」が懸念 さ れ る よ う に なっ た . 企 業 立 地 が 低 迷 し , 結 果 と し て , 市 町 村 間 で限 ら れ た企 業 の 立 地 案 件 を 奪 い合 う形 が で き , 企 業 誘 致 の た め の 優 遇 措 置 政 策 に よ る 競 争 が 過熱し始めたと考えられる. 2000 年代に入り,市町村間における優遇措置政策 の競 争 を さ ら に過 熱 さ せ たと考 え ら れ る政 策 が打 ち出 さ れ た.(財)東 北 産 業 活 性 化 セン ター(2008)は,企 業 立地促進法への取り組みとして説明している.2001 年 に,IT・ バイ オ・ ナ ノ・ 環 境 ,ものづ くり等 の 新 たな産 業 集積を形成し、国の競争力向上を図る目的として計画 された「産業クラスター計画」,2007 年に,既存の工場 の用 途 変 更 を 含 む 工 場 の新 増 設 を 図 り, 地 域 の 特 性 を活かした個性ある産業集積の育成を目的として制定 された「企業立地促進法」である.これまでの産業立地 政 策 は,国 が指 定 し た特 定の地 域 にイン センティブを 与 え て 立 地 を 誘 導 す るタイ プ で あ っ たが ,現 在 は, 産 業 集 積 に 対 し て 地 域 が 主 体 的 に 取 り 組 み , 地 域 ア イ デンティティーを活かす政策タイプへと変化してきた. 表2:産業立地政策の流れ 制定年 法制度及び構想・計画 1959年 工場等制限法 1960年 太平洋ベルト地帯構想 1962年 新産業都市建設促進法 1972年 工業再配置促進法 1983年 工業集積地域開発促進法 (テクノポリス法) 1986年 民間事業者の能力の活用による特定施 設の整備の促進に関する臨時措置法 (民活法) 1988年 地域産業の高度化に寄付する特定事業 の集積の促進に関する法律 (頭脳立地法) 1992年 地 方 拠 点 都 市 地 域 の 整 備 及 び 産 業 業 務施設の再配置の促進に関する法律 (地方拠点法) 2001年 産業クラスター計画 2007年 企業立地促進法

(8)

3

章.

.企業立地優遇措置政策

企業立地優遇措置政策

企業立地優遇措置政策に

企業立地優遇措置政策

に関

関する

する

する

する理論分析

理論分析

理論分析

理論分析

本 章 では,各 都 市 が企 業 誘 致 を 目 的 と し た政 策 を 実 施 す るこ と により,市 町 村 間 で 発 生 す る企 業誘 致 競 争 を 理 論 的 に分 析 す る .各 都 市 は 税 収 増 加 ,産 業 基 盤 の 整 備 ,イ ン フ ラ の充 実 ,生 産 ・ 所 得 ・ 雇 用・人口の増加等に伴う便益を勘案し,地域の社会厚生の最大化 1 を目的として誘致政策を策定するも のとする.しかし,両者が同様のことを考えて政策を実施すると,結果として,互いに何もしなかった当初 の状態よりも,悪化してしまう可能性がある.これが,囚人のジレンマの構造である. 都市Aと都市Bが,企業誘致を目的として,インフラ整備等の政策を実施するケースを考える.都市 が得る利得を とする.企業数は測度1と設定する.このとき,企業シェア は各都市の企業数と考える ことができる.各都市の利得は企業数に (都市が 1 企業から得られる便益)をかけたものから, を引 いたものと する.ここ で と は,規 模が の政策 を 実 施す る際 に必 要 と なるコスト を 表し ている.(ただし , 線形であることを仮定している). が小さいとは,例えば,起債時の調達金利が低いことなどを指してい る. は政策が両都市で実施されない場合( = = 0)に実現する都市Aに立地する企業数で,企業 が選定する都市の立地場所としての魅力を表す.ここでは,都市Aの方が都市Bよりも高い(α 0.5)と 想定する. ここで,都市Aと都市Bが政策 , を実施したときの企業シェア , を以下のように定義する. = α(1 + ) + (1 α)(1 + (1 + ) ) ・・・・・(1) = α(1 + (1 )(1 + ) + (1 α)(1 + ) ) ・・・・・(2) このとき,各都市の利得 , は以下のようになる. = = (1 + ) + (1 )(1 + (1 + ) ) ・・・・・(3) = = (1 + (1 )(1 + ) + (1 )(1 + ) ) ・・・・・(4) ここで,都市Aと都市Bはそれぞれの利得 , が最大化するように政策 , を策定する.このとき, 式(3),(4)から,max , max を解くと,都市Aと都市Bの最適反応 ( ), ( )が以下の ように導出される. 1 吾郷(2009)「2次元空間における立地競争について」 では,企業の移転先を決定する要因は,利潤の最大化と している.

(9)

( ) = 1 + (1 α) α + α (1 + ) ( 1 + ) ・・・・・(5) ( ) = (1 α)(1 + ) + (1 )(1 + ) ( 1 + ) ・・・・・(6) ここで,式(5),(6)で導出した都市Aと都市Bの最適戦略 ( ), ( )から,都市Aと都市Bが 互いの政策投資コスト , を変える必要がない点,即ちナッシュ均衡 , は以下のようになる. = (1 ) 2 ( (1 α) + (1 ) + α) ( ( + ) ) ・・・・・(7) = (1 )( (1 α) + (2 )(1 ) α) α ・・・・・(8) こ こ で,両 都 市 のコスト 係 数が対 称 的 な場 合( = = )を 考 え ると , , は以 下 のように導 出 さ れ る.なお,ナッシュ均衡は( { , 0}, { , 0})とする. = (1 ) ・・・・・(9) = (1 ) ・・・・・(10) 式(9),(10)の結果から, = = の場合,都市Aと都市Bは都市の立地場所としての魅力αに関 係なく,同じ規模の政策を実施することが示された.このとき,都市 Aと都市 B は政策投資コストに伴う 実質的な費用 , だけ損をしていることになる.なお,v を所与としたときに,正の投資が実行され るのは,コスト係数 が十分に小さいとき( < α(1 α))である. 都市Aと都市Bの最適反応を図6に示す.( = 10, = 0.7, = 0.2と設定) 図6:都市Aと都市Bの最適反応 最適な 投資水準 45° 都市Aの 最適戦略( ) 相手地域の 投資水準 都市Bの 最適戦略(s )

(10)

次に,都市Aと都市Bでコスト係数が異なるケース( )の政策投資水準を図7に示す. 図7:コスト係数と政策投資水準の変化 図7の結果から,当初から都市の立地場所としての魅力 が高い都市Aのコスト係数 が都市Bのコ スト係数 よりも低い場合( < ),都市Aは多くの政策投資水準(コスト)を支出し,結果として企業数 の比はさらに偏っていることが分かる.反対に,都市の立地場所としての魅力 が低い都市Bのコスト係 数 が都市Aのコスト係数 よりも低い場合( > ),都市Bは多くの政策投資水準(コスト)を支出し, 結果として企業数の比は0.5に近い方向に変化する. ここで,式(7),(8)の結果から,以下のように導出できる. 1 + 1 + = ・・・・・(11) 式(11)から,都市Aと都市Bの政策投資水準の比は都市の立地場所としての魅力 に関係なく,都市 のコスト 係 数 の比( )によっ て決 定 さ れ るこ と が分 かる.ここ で,効率性の比を (= )と す ると , 都市Aと都市Bの企業数は以下のように導出できる. =1 (1 ) ・・・・・(12) =1 (1 ) ・・・・・(13)1 式(12),(13)の結果から,企業数は都市の立地場所としての魅力 と効率性の比 のみで決定されるこ とが分かる. 都市Bの政策 投資水準( ) 都市Aの政策 投資水準( ) ( > ) ( = ) ( < ) 45°

(11)

ここで,企業集積の指標である企業集中度(HHI:Herfindahl Hirschman Index)を都市Aと都市Bの2 都市について算出する.なお,本章ではHHIを算出する際,100で除してから2乗する.均衡において, 正の投資が行われている場合の企業集中度を ,投資が行われていない場合を とする. = ( + ) + ( + ) =( )(1 (1 ))+ (1 ) ・・・・・(14) 都市Aと都市Bの投資水準が = = 0のときの企業集中度( )はα + (1 α) となることから, どのようなfの条件で > 0, < 0が成立するか,式(14)を用いて検証する. 政 策 が実 施 さ れ るこ と によって,企 業 集 中 度 が増 加 す る場 合( > 0)は,以 下 の条 件 を 満たした場合である. 0 < <(1 ) または > 1 ・・・・・(15) こ こ で,都 市のコスト 係数 は,都 市 の財 政 力 指 数 と 関 連 付けて説 明 す るこ と ができる.都 市 の財 政 力 指数が高 い場合 ,財源に余 裕があるため,政策投 資に関 わるコストを 低 く抑えることができる.反 対に, 財政力指数が低い場合,財源に余裕がないため,コストが高くなる.式(15)の結果から,都市のコスト係 数の比 が集 積す るか否 かに影 響を 与 えるこ とが明ら かと なっ たが,こ れ は 財 政 力指 数 の分 布 が集 積の 程度に影響を与えることを示唆している.

4

章.

.企業

企業の

企業

企業

の立地選択

立地選択

立地選択

立地選択の

の決定要因

決定要因

決定要因

決定要因に

に関

関する

する

する実証分析

する

実証分析

実証分析

実証分析

本章では,企業立地優遇措置政策が企業の立地選択の決定要因に与える影響を検証するため,実 証分 析を 行 う.4-1.では,企 業立 地選 択 モデ ル を 示し,4-2.では,利用 するデ ータの説 明を 行 う.4-3.で は,企業 立地 優 遇措 置政 策 を単独 の政 策 とした場合 と 複 数の政 策を 同時 に実 施した場合の推定 結果 を示す. 4-1....企業立地選択企業立地選択企業立地選択企業立地選択モデルモデルモデルモデル 本研究では,企業立地優遇措置政策が企業の立地選択の決定要因に与える影響を検証するため, 企業立 地選 択 モデ ルを 定式 化する.企 業が = 1,2,3・・・, の都市に立 地を選 択し たと きに得られ る利 潤 は,以下のように表すことができる. = + + + は 地域に立地した場合の利 潤を決定する変数である. は都市の観察できない属性を 表し, は企業の地域 に対する選好である.

(12)

ここで, は,第 一種 極値分 布 に従うと仮 定すると,各企業 はもっ とも高い利潤を 生み 出 す都市 を選 択する.その場合,企業iが都市jを選択する確率は,以下のように表すことができる. = = ( + + ) ( + + ) このと き,各 都 道 府 県内 で観 察し た場 合 ,企 業 の選択 確 率 は各 市 町村 の企 業シェアと同 一 であるた め, は都市 の企業シェア に一致する.ここで, は都市 の事業所数, は各都道府県の全事業所 数とすると, は以下のように表すことができる.なお,本研究の分析対象は,都道府県レベルとする 2 . = なお,立地選択は各地 域で得られる相対的な利潤に注目しているので,ここでは都市 を基準とする. このとき,都市 と都市 の企業シェアの比率は = = ( ( + + )) となり,両辺対数をとると,以下の推定式が得られる. = +( ) 推定では,( )を誤差 項として考 える.なお,誤差項の平均 は都道府県 ごとに異なると考え られ るので,推定 式には都 道府 県ダミーを 含める.推 定 では, として,説 明 変数 と コント ロー ル変 数 を代入 する.被説 明変 数 は,各市 町 村にお ける企 業立 地 選択の決定 要因 を表 す指 標とし て,企業シェア比と する.説明変数について,分析(a)では,企業立地優遇措置政策ダミー(policy)を用いた.各市町村が 5 分類した企業立地優遇措置政策(表3 参照)のいずれかを実施している場合は1,実施していない場合 は0とした.分析(b)では,固定資産税や都市計画税等の税制優遇を表す税制政策ダミー(tax_policy), 事業用 地取得 費・施設 設置 等への補 助金 を表す 補助 金 政策ダミー(subsidy_policy),新規雇 用者に対 する奨励 金 等を 表 す雇 用 促 進政 策ダミー(employment_policy),設備 投 資の資金 等 に対す る融 資 や貸 付 ,利 子 補 給 等 を 表 す 融 資 ・貸 付 政 策 ダ ミー(loan_policy),イ ン フラ 整 備 ・ 用 地の提 供・金 融 機 関 へ の 2 工場立地動向調査(2009)の結果から,新規や移転によって立地した企業のうち94.5%は,移転元と移転 先が同一の都道府県であった.本研究では,他の都道府県への移転は考慮しないものとして,研究対象を 都道府県レベルとした.

(13)

表3:企業立地優遇措置政策の分類表 分析(a):分類化しない場合 分析(b):政策を5分類した場合 企業立地優遇措置政策 ①税制優遇措置政策 ②補助金優遇措置政策 ③雇用促進優遇措置政策 ④融資・貸付優遇措置政策 ⑤地方公共団体協力支援措置政策 斡旋 等を 表 す地 方 公共 団体 協力 支援 政 策ダミー(government_policy)を用いた.市 町 村が各政 策につ いて,実施している場合は1,実施していない場合は0とした.企業立地優遇措置政策は企業の立地要 因として影響があると考えられるので,いずれの政策ダミーも予想される符号はプラスである.コントロー ル変数は都市属性として,1990年の事業所数(office),人口1人あたりの課税所得額(taxable_gain),可 住地面積(lives_area),全体開発面積(development_area),耕地面積(arable_area),行政面積1km

2 あた りの舗装道路延長(主要道路)(paved_road),政令指定都市・中核市・特例市までの距離(city_dis),空港 3 までの距離(airport_dis),港湾 4 までの距離(port_dis),都道府県ダミー(prefecture_dum)を用いた.加え て,表 3 にあるように,企業立地優遇措置政策を細分化し,各政策の立地に与える影響の違いを分析 する. 各市町村が実施する企業立地優遇措置政策のメニューを表3に示す. 4-2....利用利用利用利用するするするするデータデータデータデータ 被説明変数の算出方法は,式(16)に示す.算出に使われる「事業所数」は,経済産業省大臣官房調 査 統 計 グ ルー プ構 造 統 計 室(工 業 統 計 班)によっ て公 開 さ れ ている『 工 業 統 計 調 査(市 区 町 村 編)2009 年』によるものである.コントロール変数に用いたデータを以下に示す.「1990 年の事業所数」は,既存 の企業集積を表す指標として用いた.出典は,被説明変数と同様である.なお,1990年と2009年の市 区町村の違いは,(財)国土地理協会の都道府県別市町村変更情報を用いて,整合を図った.「人口 1 人あたりの課税対象所得額」は,労働者の能力水準を表す指標として用い,総務省自治税務局市町村 税課で公開されている『市町村税課状況等の調べ』の「課税対象所得」を「人口」で割ることにより算出し た.「可住 地面 積」は,労働 者の雇用 確保の容易性 を表 す指標 として用 い,総 務省 統 計局『国勢 調査』 に記 載さ れている「総 面 積」 から ,農 林水 産 省 大臣 官 房 統計 部『 世 界 農林 業 セン サス 林業 地 域調 査 報 告書』に記載されている「林野面積」と国土交通省国土地理院『全国都道府県市区町村別面積調』に記 載されている「主要湖沼面積」を差し引いた面積とする.「全体開発面積」と「耕地面積」は,企業集積及 び 工場 等 の立 地可 能 エリア確 保の容 易 性 を表 す 指 標 と して用 いた.「 全体 開 発 面 積 」は,国 土 交 通省 国土政策局『国土数値情報ダウンロードサービス』にアップロードされている「工業用地(全体開発面積)」 を利用した.「耕地面積」は,農林水産省大臣官房統計部生産流通消費統計課『耕地及び作付面積統 3 空港は,空港法第4条第1項各号に掲げる拠点空港のうち,空港整備法及び航空法の一部を改正する法律附則第 3 条第1項に規定する特定地方管理空港を除いた空港を示す. 4 港湾は,国際戦略港湾,国際拠点港湾,重要港湾のいずれかを示す.

(14)

計』に記載されている「耕地面積」を利用した.「行政面積 1km 2 あたりの舗装道路延長(主要道路)」は, 交 通 イ ン フ ラ (道 路 )の整 備 水準 を 表 す 指 標 とし て用 い,国 土 交 通 省 道 路 局 企 画 課 『 道 路 統 計 年 報 』に 記 載 さ れ ている「 舗 装 道 路 実延 長 ( 主 要 道 路 ) 」 を 利 用し ,総 務 省 統 計 局 『 国 勢 調 査』 に記 載 さ れ ている 「総面積」で割ることにより算出した.「政令指定都市・中核市・特例市までの距離」は,都市の利便性及 び立地場所としての魅力を表す指標として用いた.「空港までの距離」及び「港湾までの距離」は,交通 利便性(輸送コストの縮減)を表す指標として用いた.国土交通省国土政策局『国土数値情報ダウンロー ド サー ビ ス 』 にアッ プロー ド され ている「 市 町 村 役 場 等 及び 公 的 集 会 施 設 」 ・ 「 空 港」 ・「 港 湾 」 を 利 用 し , 各市町村役場から最も近い,政令指定都市・中核市・特例市のいずれかの都市までの直線距離,空港 までの直線距離,港湾までの距離を ArcGIS9により計測した.地域ごとに異なる要因をコントロールする ため,「都道府県ダミー」を用いた. ( ) = = ( 都市が選 択される確率 都市 が選択される確率 ) = 都市 の企業シ ェア 都市 の企業シェア ・・・・・(16) ここで,都市 は,各都道府県に属 する市町村の平均事業所 数 に一番近い値を示す 市町村 として設 定した. 被説明変数,説明変数,コントロール変数の基本統計量は表4のとおりである. 表4:基本統計量 平均値 標準偏差 最小値 最大値 ln(企業シェア) -0.592 1.182 -4.463 3.498 企業立地 優遇措 置政策 ダミー -0.078 0.451 -1 1 税制政策 ダミー -0.096 0.556 -1 1 補助金政 策ダミー -0.217 0.578 -1 1 雇用促進 政策 ダミー -0.248 0.632 -1 1 融資・貸 付政策 ダミー 0.017 0.428 -1 1 地方公共 団体協 力支援 政策 ダミー 0.014 0.217 -1 1 事業所数(1990年) 8.171 679.757 -838 17637 人口1人あたり課税 所得額 0.057 2.088 -0.678 80.075 可住地面 積 6.118 89.278 -208.750 701.120 全体開発 面積 27.715 424.691 -615.000 12809.400 耕地面積 1.883 45.368 -144.000 632.000 1km 2 あたりの 舗装道 路実延 長(主要 道路) 0.688 0.385 0.073 2.520 政令指定 都市・中核市・特例市ま での 距 離 4.217 52.486 -111.581 524.328 空港までの距離 -7.960 47.852 -128.114 537.059 港湾までの距離 -2.617 25.338 -84.191 327.717 観測数 1568

(15)

4-3推定結果推定結果推定結果推定結果 本節では,企業立地優遇措置政策を独立した政策として実施した場合と複数の政策を同時に実施し た場合ついて推定結果を示す. 4-3-1....推定結果推定結果(推定結果推定結果((独立(独立独立独立ののの政策の政策として政策政策としてとして実施として実施実施実施したしたしたした 場合場合場合場合)))) 5 分類した企業立地優遇措置政策が各々独立した政策として実施している場合について,分析(a), (b)の推定結果 5 はそれぞれ表5,6のとおりである. 5 ***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を満たしていることを示す. 表5:分析(a)の推定結果 (a)企業立地優遇 措置政 策(分類 なし) 被説明変 数 ln(企業シェア比) 説明変数 係数 標準誤差 企業立地 優遇措 置政策 ダミー 0.3727914 *** 0.0620618 事業所数(1990年) 0.0002353 *** 0.0000361 人口1人あたり課税 所得額 0.0006824 0.0096529 可住地面 積 0.0127241 *** 0.0006749 全体開発 面積 0.0000531 0.0000512 耕地面積 -0.0093361 *** 0.0012937 1km 2 あたりの 舗装道 路実延 長(主要 道路) 0.9125858 *** 0.0748058 政令指定 都市・中核市・特例市ま での 距 離 -0.0024776 *** 0.0005684 空港までの距離 0.0002843 0.0007188 港湾までの距離 -0.0041012 *** 0.0010139 定数項 -1.796008 *** 0.2242342 地域ダミー( 都道府 県) yes 修正済みR2値 0.5606 観測数 1568 表6:分析(b)の推定結果 (b)企業立地優 遇措置 政策(5分類) 被説明変 数 ln(企業シェア比) 説明変数 係数 標準誤差 税制政策 ダミー 0.0449123 0.0466003 補助金政 策ダミー 0.3004125 *** 0.0497228 雇用促進 政策 ダミー 0.3389134 *** 0.0499518 融資・貸 付政策 ダミー 0.1367917 ** 0.0631371 地方公共 団体協 力支援 政策 ダミー -0.1311058 0.1168556 事業所数(1990年) 0.0002537 *** 0.0000349 人口1人あたり課税 所得額 0.0023599 0.0093133 可住地面 積 0.0116262 *** 0.0006589 全体開発 面積 0.0000444 0.0000494 耕地面積 -0.0090117 *** 0.0012498 1km 2 あたりの 舗装道 路実延 長(主要 道路) 0.8826774 *** 0.0725835 政令指定 都市・中核市・特例市ま での 距 離 -0.0019269 *** 0.0005495 空港までの距離 -0.0001931 0.0006941 港湾までの距離 -0.003253 *** 0.000982 定数項 -1.970386 *** 0.2193829 地域ダミー( 都道府 県) yes 修正済みR2値 0.5916 観測数 1568

(16)

以上の分析結果から,企業立地選択の決定要因として,企業立地優遇措置政策は1%の水準で統計 的に有意にプラスであり,特に,補助金政策,雇用促進政策は 1%,融資・貸付・利子補給政策は 5%の 水準 で統計 的に有 意にプラ スであ っ た.これ は,企 業 立 地優 遇 措置 政 策が企業 の立 地選 択の決 定要 因の一つであることを表す.また,コントロール変数とした都市属性では,事業所数(1990年),可住地面 積,耕地面積,行政面積 1km2あたりの舗装道路実延長(主要道路),政令指定都市・中核市・特例市ま での距離,港湾までの距離 が 1%の水準で統計的に有意であった.これは,雇用者・ 従業員の居住地・ 工場 等 の立 地 可 能エリアの確保 が容易 であ るこ と,交 通 インフラ の整備 水 準 ,都 市の利便 性 や 魅力の 高さ,輸送コストの縮減が重要であることを表す.企業は地域全体の特色を見極めて立地を決定してい る可能性が高いことが明らかとなった. 4-3-2....推定結果推定結果(推定結果推定結果(複数((複数複数の複数のの政策の政策政策を政策を同時をを同時同時に同時ににに実施実施した実施実施したしたした 場合場合場合)場合))) 4-3-1.で,企業立地選択の決定要因を分析する際,企業立地優遇措置政策を各々独立した政策とし て分 析し た.し かし ,現 状 は,立 地し た企 業が優 遇 措置 政策 の適用 条 件に該 当し ていた場 合 ,複数 受 けるこ と が可 能 であ る.そのため,分 析 には複 数 の政 策 を 考 慮 す る必 要 があ る.ここでは,全 国 の市 町 村に多く見られる複数の政策パターンを設定し,分析した.推定結果を表7に示す. 表7:推定結果 複数の政 策を同時に 実施 した場合 被説明変 数 ln(企業シェア) 説明変数 係数 標準誤差 税制政策 ダミー 0.0131937 0.0753067 補助金政 策ダミー 0.2937678 *** 0.0763674 雇用促進 政策 ダミー 0.283012 0.4522821 融資・貸 付政策 ダミー 0.2318583 * 0.1319854 地方公共 団体協 力支援 政策 ダミー -0.1341878 0.1176086 税制政策 ×補助 金政策 ダミー 0.0665789 0.1014377 税制政策 ×雇用 促進政 策ダミ ー 0.242412 0.4829313 補助金政 策×雇 用促進 政策 ダミー 0.0533468 0.4602112 補助金政 策×融 資・貸 付政策 ダミー -0.1318751 0.1669392 税制政策 ×補助 金政策 ×雇用 政策 -0.2747419 0.49427 税制政策 ×雇用 政策× 融資政 策 -0.2542638 0.4346046 補助金政 策×雇 用政策 ×融資 ・貸付 政策 0.1174424 0.1797374 税制政策 ×補助 金政策 ×雇用 政策× 融資・貸 付政策 0.1248228 0.4684938 事業所数(1990年) 0.0002537 *** 0.0000352 人口1人あたり課税 所得額 0.0026318 0.0093438 可住地面 積 0.0116545 *** 0.0006632 全体開発 面積 0.000046 0.0000496 耕地面積 -0.0090492 *** 0.0012624 1km 2 あたりの 舗装道 路実延 長(主要 道路) 0.88387 *** 0.0733856 政令指定 都市・中核市・特例市ま での 距 離 -0.0018996 *** 0.000553 空港までの距離 -0.000187 0.0006978 港湾までの距離 -0.0031986 *** 0.0009856 定数項 -0.951586 *** 0.2285479 地域ダミー( 都道府 県) yes 修正済みR2値 0.5902 観測数 1568

(17)

以上の推定結果から,複数の政策を同時に実施した場合,いずれの値も統計的に有意な結果として 得ることはできなかった.そのため,本研究では,企業立地 優遇措置政策を各々独立した政策として分 析を進める.なお ,コントロー ル変数の有意 水準 は,独立 の政策として実施した場 合の分析と同様の結 果が得られた.

5

章.

.企業集積

企業集積の

企業集積

企業集積

の変化

変化

変化

変化に

に関

関する

する

する分析

する

分析

分析

分析

(

シミュレーション

シミュレーション分析

シミュレーション

シミュレーション

分析

分析

分析

)

本 章 では,前 章 の推 定 結 果を 用 いたシミュレー ショ ン 分析 を 行 うこ と で,政 策を 導 入し ない場 合の企 業の立地パターンを計算し,さらに,実際のケース(企業立地優遇措置政策が実施された場合)と政策を 導入しない場合の各都道府県の企業集中度を表すハーフィンダール指数(HHI:Herfindahl Hirschman

Index)を算出し,企業立地優遇措置政策が都道府県レベルの企業集積に与えた影響を評価する.5-1. では,企業集中度(HHI)の算出方法を示し,5-2.では,算出結果を示す. 5-1....企業集中度企業集中度企業集中度企業集中度(HHI)のの算出方法のの算出方法算出方法算出方法 都道府県mの企業集中度を表すハーフィンダール指数( )の算出方法は,以下のとおりである. 企業集中度( ) = ( F ) = 都市1の事業所数 都道府県 の事業所数 × 100 +・・・+ 都市 の事業所数 都道府県 の事業所数 × 100 ま た , 実 際 の ケ ー ス(政 策 が 実 施 さ れ た 場 合)の 企 業 集 中 度 を , 政 策 を 導 入 し な い 場 合 を とすると,変化率rは式(17)のように示すことができる.なお,変化率rは,企業集積に着目し た政策評価の指標として用いた. は,立地選択モデルの政策ダミーにかかる係数を0として, 算出した. = ・・・・・(17) r > 1.0の場合は,企業立地優遇措置政策は企業集中度を増加させる効果があることから,企業集積 に効 果 があ るこ と を 示 す .一方 ,r 1.0の場 合 は,企 業 集 中 度を 減 少 ,もし くは同 じ であ ること から ,政 策は企業集積に対して逆効果,もしくは効果がないことを示す.

(18)

5-2....企業集中度企業集中度企業集中度企業集中度(HHI)のののの算出結果算出結果算出結果算出結果 各都道 府県 につ いて,企 業 立地優 遇措 置政 策を 実施さ れた場 合の企業 集中 度(HHI with ),政 策を導 入しない場合の企業集中度(HHI without ),変化率(r)の算出結果を表 8 に示す.また,都道府県数と変化 率を表したヒストグラムを図8,都道府県別の変化率を図9に表す. HHI政策実施 HHI政策未実施 変化率 HHI_with HHI_without r 北海道 2137.533 1583.745 1.350 青森県 669.504 555.786 1.205 岩手県 1151.138 1277.558 0.901 宮城県 1420.303 1299.338 1.093 秋田県 941.817 873.476 1.078 山形県 831.862 856.399 0.971 福島県 1116.013 881.891 1.265 茨城県 378.899 319.449 1.186 栃木県 971.322 1002.122 0.969 群馬県 821.027 732.353 1.121 埼玉県 582.872 526.733 1.107 千葉県 376.311 353.450 1.065 神奈川県 7930.725 7791.249 1.018 新潟県 5353.421 4572.526 1.171 富山県 4969.646 4770.477 1.042 石川県 1190.926 933.186 1.276 福井県 1324.133 1201.683 1.102 山梨県 571.512 563.236 1.015 長野県 1322.272 760.756 1.738 岐阜県 451.083 404.956 1.114 静岡県 5036.792 4701.478 1.071 愛知県 6966.508 7093.899 0.982 三重県 995.647 870.275 1.144 HHI政策実施 HHI政策未実施 変化率 HHI_with HHI_without r 滋賀県 660.062 634.905 1.040 京都府 3103.722 3191.140 0.973 大阪府 9453.681 9429.069 1.003 兵庫県 2337.735 3012.750 0.776 奈良県 378.901 363.321 1.043 和歌山県 983.657 704.647 1.396 鳥取県 1519.298 1063.901 1.428 島根県 956.018 787.998 1.213 岡山県 3731.200 3550.576 1.051 広島県 1799.469 1700.577 1.058 山口県 1074.654 912.210 1.178 徳島県 880.974 652.321 1.351 香川県 1547.606 1499.184 1.032 愛媛県 1165.456 1087.061 1.072 高知県 899.723 537.804 1.673 福岡県 1579.380 989.604 1.596 佐賀県 1267.111 1016.760 1.246 長崎県 1056.011 967.779 1.091 熊本県 1360.202 1140.009 1.193 大分県 1681.599 1346.874 1.249 宮崎県 1497.068 1366.749 1.095 鹿児島県 1086.983 936.516 1.161 沖縄県 500.969 420.031 1.193 東京都に ついてはデータ制約の ため 削除 図8:都道府県数と変化率 1 5 16 11 6 3 1 1 1 1 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 表8:企業集中度(HHI)比較表 図9:都道府県別の変化率 0.7 - 1.0 1.0 - 1.1 1.1 - 1.2 1.2 - 1.3 1.3 - 1.4 1.4 - 1.5 1.5 - 1.8

(19)

企業集積に着目し,各都道府県における企業立地優遇措置政策を評価した結果,研究対象46都道 府県 6 のうち,岩手県・山形県・栃木県・愛知県・京都府・兵庫県の 6 都道府県(13.0%)で政策によって, 企業 集 中度(HHI)が減少し ているこ と が確認さ れ た.また,企業 集 中度(HHI)の変化 率 は1.0 < r 1.1 と低 く、あ まり効果 がないと考 えられる都 道府 県 は,16 都道府 県(34.8%)あっ た.全 国 の都道 府 県の約 半数にあたる 22 都道府県(47.8%)で,企業立地優遇措置政策が企業集積に対して逆効果,もしくはあ まり効果がないことが明らかと なった.これらの都道府県 は,市町村間の政策 競争により,囚人のジレン マの構造に陥っている可能性が高いと考えられる.

6

章.

.企業集積

企業集積

企業集積の

企業集積

の効果

効果に

効果

効果

に関

関する

する

する実証分析

する

実証分析

実証分析

実証分析

本 章 では,都 市 特 性 が企 業 集 積 の効 果 に与 え る影 響 を明 ら かにす るため,実 証 分 析 を 行 う.6-1.で 実証モデルを示し,6-2.で利用するデータの説明,6-3.で推定結果を示し考察する. 6-1実証実証実証実証モデルモデルモデルモデル 都市特性が企業集積の効果にどのような影響を与えるか観察するため,実証モデルを以下に示す. = + ( _ ) + ( _ ) + ( _ ) + ( _ _ ) + ( ) + 被 説 明 変 数 は , 式(17)で 算 出 し た 企 業 集 中 度 の 変 化 率 r で あ る . 説 明 変 数 は , 「 政 策 実 施 割 合 」 (policy_rate),「(政 策 実 施 割 合) 2 」(policy_rate 2 ),「 財 政 力 指 数(平 均)」(financial_index),「 財 政 力 指 数 (標準偏差)」(financial_index_dev)とする.コントロール変数は,「市町村数」(municipalities)とする. 6-2....利用利用利用利用するするするするデータデータデータデータ 被説明変数である「企業集中度の変化率」は,企業立地優遇措置政策による政策効果を表す指標と して用 いた. 説明 変 数に用 いたデ ータを 以下 に示 す.「 政策 実施 割 合」 は,企業 立 地優 遇措 置 政策の 導 入 度 合 い を 表 す 指 標 と し て用 い,各 都 道 府 県 内 に 属 す る市 町 村 のうち ,企 業 立 地 優 遇 措 置 政 策 を 実施している市町村数の割合を示す.「(政策実施割合) 2 」は,企業立地優遇措置政策の導入度合いの 変化を表す指標として用い,政策実施割合を 2 乗することで算出した.「財政力指数(平均)」は,各都 道府県に属する市町村の財 政状況を表す 指標 として用 い,総務省 自治財政 局財務 調査課『市町村別 決 算状 況 調』に記 載さ れている「財 政 力 指数」 を 利 用し ,都 道府 県 に属 す る市 町 村の財 政力 指 数の平 均値とした.「財政力指数(標準偏差)」は,各都道府県に属する市町村の財政力指数のばらつきを表す 指標して用い,「財政力指数(平均)」と同様のデータから,標準偏差を算出した.コントロール変数として, 「 市 町 村 数」 を用 いた.総 務省 『 市 町 村合 併 資 料 集』 に記載 さ れている「「 平 成 の合併」による市 町 村数 の変化」を利用した. 6 分析は,データ制約上,東京都を除く全国の都道府県とする.

(20)

被説明変数,説明変数,コントロール変数の基本統計量は,表9のとおりである. 6-3....推定結果推定結果推定結果推定結果 実証モデルの推定結果は,表10のとおりである. 以上の分析結果から,市町村の財政力指数(平均)は1%の水準で統計的に有意にプラスで,企業集 中 度 の変 化 率 に影 響 が あ る .財 政 力 指 数 が高 い市 町 村 が多 い都 道 府 県 の場 合 は, 企 業 集 中 度 が減 少するという結果であり,政策により企業が分散していることを表す.反対に,財政力指数が低い市町村 が多い都道府県の場合は,企業集中度が増加するという結果であり,政策により企業 が集積しているこ とを表す.理論分析の結果で示唆したように,企業立地優遇措置政策による企業集積への影響は確か に各都道府県の財政力指数の分布の違いに影響を受けていることが明らかとなった. 表9:基本統計量 平均値 標準偏差 最小値 最大値 変化率 1.154206 0.187895 0.7759472 1.738102 政策実施 割合 84.42617 17.50213 37.2093 100 政策実施 割合2 7427.443 2588.555 1384.532 10000 財政力指 数(平均) 0.5660077 0.2067182 0.2675758 1.127407 財政力指 数(標準偏 差) 0.227895 0.0757234 0.1196467 0.4571376 市町村数 36.52174 25.67553 15 179 観測数 46 表10:推定結果

被説明変 数 変化率r=HHIwith/HHIwithout

説明変数 係数 標準誤差 政策実施 割合 0.0197917 0.0138496 政策実施 割合 2 -0.0001387 0.000095 財政力指 数(平均) -0.5152228 *** 0.1847525 財政力指 数(標準偏 差) 0.4259971 0.4187767 市町村数 0.0015928 0.0010029 定数項 0.6494944 0.4797472 修正済みR2値 0.204 観測数 46

(21)

7

章.

.おわりに

おわりに

おわりに

おわりに

本研究 では,各市 町村が実 施している企 業立地 優遇措 置政策が企業集 積に与える影響につ いて, 理論及び実証分析を行った.理論分析の結果,単純化された2つの都市による理論モデルの場合,企 業誘致を目的とした政策の実施は,2つの都市に囚人のジレンマの構造を引き起こし,各都市が協調し て政策を実施する場合よりも低い社会厚生しかもたらさない可能性があると示された.また,企業集積の 程度は財政状況に影響を受けることも示され,特に,財政力指数の分布の違いが企業集積の程度に影 響を与えることが示唆された.また,実証分析の結果,企業立地優遇措置政策や都市属性が立地選択 の決 定要 因の一つ であるこ と が示され た.さらに,シミュレーション 分 析によっ て,す べ ての市 町 村が政 策を導入しない場合と現状の企業集積の状況を比較した結果,都道府県内の企業集中度を減少させ, 集積 を阻 害している,あ るいはあ まり効果 がなく,企業 集 積にほと んど 貢献し ていない都道 府県が全国 で約半数確認された.これは,囚人のジレンマの構造に陥っている可能性が高いと考えられる.最後に, 企 業 立 地 優 遇 措 置 政 策 によ る企 業 集 積 へ の影 響 は,理 論 モデ ル で示 唆 し たように , 確 かに各 都 道 府 県の財政力指数の分布の違いに影響を受けていることが明らかとなった. 以上の結果 から ,企 業誘 致 に関わる今 後の行 政の役 割 は,集積 の経 済を享 受 できる立場 として,企 業立地優遇措置政策を実施し,管理できる主体を設定することであり,その政策主体は市町村レベルよ りも広域的なエリアとすることが望ましいと考えられる. 今後の展 望として,本研究 には,次 のような課題が残され ている.第 一に,企業属 性が考慮されてい ない点である.企業の動学的意思決定,資本金や売上等の企業規模を把握することによって,より正確 な企 業 動向 が分 析 可 能 となる.第 二に,製 造 業以 外 の業 種を 研 究対 象 とし ていない点 である. 製造 業 以外(研究開発施設・流通業務施設,環境関連施設等)の業種も優遇措置の対象としている市町村があ る.製造業以外の企業も把握することで,より詳細な企業集積を算出することができる.第三に,市町村 レベ ル の実 証分 析 は行っ たが,国や 都道 府 県レベ ルでの分 析を 行っ ていない点 である.広 いエリアの 分析を行うことによって,より正確な政策主体のエリアを設定できる可能性がある.

(22)

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参考文献

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表 3 :企業立地優遇措置政策の分類表  分析 (a) :分類化しない場合 分析 (b) :政策を 5 分類した場合 企業立地優遇措置政策  ①税制優遇措置政策  ②補助金優遇措置政策  ③雇用促進優遇措置政策  ④融資・貸付優遇措置政策  ⑤地方公共団体協力支援措置政策 斡旋 等を 表 す地 方 公共 団体 協力 支援 政 策ダミー(government_policy) を用いた.市 町 村が各政 策について,実施している場合は1,実施していない場合は0とした.企業立地優遇措置政策は企業の立地要 因として

参照

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