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「貨物自動車運送事業安全性評価事業(G マーク制度)が荷主の事業者選択と事故に与える影響」

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貨物自動車運送事業安全性評価事業(G マーク制度)が

荷主の事業者選択と事故に与える影響

【要旨】 1990 年に始まったトラック運送市場の規制緩和は,事業者間の競争を促し,運賃の低廉 化とサービス水準の向上をもたらした.一方,事業者の利潤が減少したことから,一部の 事業者は安全運行に十分な費用をかけることができなくなり,過労運転や過積載等の違法 行為を原因とする事故が増加した.このような背景から,2003 年施行の改正貨物自動車運 送事業法の国会審議において,事業者の安全性を評価するシステムを整備するという内容 の附帯決議がなされ,2003 年 7 月に全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が運営する貨 物自動車運送事業安全性評価事業(通称:G マーク制度)が開始された. 本稿では,本事業の政策目標は,「情報の非対称」および「負の外部性」の解消と捉え られることから,その効果を検証するために,荷主の事業者選択と事故に与える影響に着 目し,事業者の保有車両台数および都道府県の事故件数を用いた実証分析を行った. 分析の結果,荷主は安全性優良事業所(G マーク取得事業所)に認定された事業者との 取引を増加させていること,安全性優良事業所の割合が高い都道府県ほど事業用トラック による事故発生率が少ないことが示された.しかし,後者については有意水準が低く,そ の一因として認定の取得が進んでいないことが挙げられる.事業者を対象にヒアリングを 行ったところ,現在の認定基準には安全性が高くても小規模事業者というだけで適合が困 難な評価項目があることが分かった.そこで,G マーク制度の政策効果を高めるため,よ り多くの安全性の高い事業者による認定取得を促す方策および荷主に G マーク取得事業者 選択を促す方策について提言する. 2015 年(平成 27 年)2 月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU14608 砂田 将之

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1. はじめに ... 1 2. トラック交通事故の特徴と貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 ... 1 2.1 トラック交通事故の特徴 ... 1 2.2 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 ... 4 3. G マーク制度の効果に関する仮説 ... 7 3.1 荷主の行動に与える影響 ... 7 3.2 事故に与える影響 ... 7 4. G マーク制度導入の効果に関する実証分析 ... 8 4.1 G マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉える推定モデル ... 8 4.1.1 推定モデルの概要 ... 8 4.1.2 変数の説明 ... 9 4.1.3 推定結果 ... 10 4.2 G マークがトラック運送市場の安全性に与える影響を捉える推定モデル ... 10 4.2.1 推定モデルの概要 ... 10 4.2.2 変数の説明 ... 11 4.2.3 推定結果 ... 12 5. 考察 ... 13 6. G マーク取得の便益と費用の検証 ... 13 6.1 G マーク取得により得られる便益 ... 14 6.1.1 取引の増加 ... 14 6.1.2 インセンティブ制度の活用 ... 14 6.2 G マーク取得に伴う費用 ... 15 6.2.1 「安全性に対する法令の順守状況」 ... 15 6.2.2 「事故や違反の状況」 ... 16 6.2.3 「安全性に対する取り組みの積極性」 ... 17 7. 政策提言 ... 19 8. おわりに ... 20 謝辞 ... 21 【参考文献】 ... 21

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1

1.

はじめに

1990 年に始まったトラック運送市場の規制緩和は,事業者間の競争を促し,運賃の低廉 化とサービス水準の向上により,消費者余剰の増加をもたらした.一方,規制緩和による 事業者の増加と不況に伴う消費者のコスト削減意識の高まりにより,事業者の利潤は減少 した.そのため,過労運転や過積載等の違法行為を行うことによって労働力や車両の使用 効率を高め,利益を確保しようとする事業者が増加し,これらを原因とする交通事故が増 加するようになった.このような背景から,2003 年施行の改正貨物自動車運送事業法の国 会審議において,事業者の安全性を評価するシステムを整備するという内容の附帯決議が なされ,2003 年 7 月に貨物自動車運送事業安全性評価事業(通称「G マーク制度」,以下「G マーク制度」という)が開始された. G マーク制度は,安全性の高いトラック事業者を事業所単位で安全性優良事業所(以下 「G マーク取得事業所」という)として認定する制度である. 本稿では,G マーク制度が,政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく する」,「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのかについ て,推定モデルを用いた実証分析により明らかにする. 本稿の構成は次のとおりである.第 2 章では事業用トラックによる交通事故の特徴と G マーク制度の概要について述べる.第 3 章では G マーク制度が荷主による事業者選択と事 故に与える影響について仮説の設定を行う.第 4 章では G マーク制度が荷主による事業者 選択と事故に与える影響について実証分析を行う.第 5 章では実証分析結果の考察,第 6 章では G マーク取得の便益と費用の検証を行い,第 7 章では第 5 章および第 6 章に基づい た政策提言を示す.第 8 章では本稿の結論と今後の研究課題について述べる. G マーク制度に関する先行研究には次のものがある.嶋本(2014)は,事業用トラック による死亡事故の要因分析において,所属する事業所が G マークを取得している場合には, 死亡者数が少ないことを示した.しかし,荷主の事業者選択や G マーク普及率と事故の関 係を分析した研究は確認できなかった.

2.

トラック交通事故の特徴と貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要

2.1 トラック交通事故の特徴 トラック運送事業用自動車(以下「事業用トラック」という)を第 1 当事者1とする交通 事故は 2012 年では 23,539 件発生しており,全自動車交通事故の 3.9%を占めている(図 1). このうち死亡事故は 388 件であり,全自動車交通死亡事故の 11.4%を占めており,事業用 トラックが事故を起こした場合に死亡事故等の重大な事象に至る確率が高いことが分かる. このように,トラック運送の「負の外部性」が自動車交通全般と比較して格段に大きいこ と が , 自 動 車 貨 物 運 送 事 業 法 等 に よ る ト ラ ッ ク 運 送 事 業 に 対 す る 規 制 の 根 拠 の ひ と 1 最初に交通事故に関与した車両等の運転者又は歩行者のうち,当該交通事故における過失が重い者をい い,また過失が同程度の場合には人身損傷程度が軽い者をいう.(出典:警察庁ウェブサイト)

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つと考えられる 近年の事業用トラックの事故件数の推移をみると, 年から 事業用トラックによる事故件数に影響する要因には ラックへのスピードリミッター取り付け義務化 強化などの法令改正 加した一因として指摘されている 緩和である. 2 データは, 3 同上. つと考えられる. 近年の事業用トラックの事故件数の推移をみると, 年から 2005 年には 事業用トラックによる事故件数に影響する要因には ラックへのスピードリミッター取り付け義務化 強化などの法令改正 加した一因として指摘されている 緩和である. データは,(財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」 同上. . 近年の事業用トラックの事故件数の推移をみると, 年には 37,000 件前後,その後減少傾向となっている(図 事業用トラックによる事故件数に影響する要因には ラックへのスピードリミッター取り付け義務化 強化などの法令改正,ドライバーの高年齢化など様々であるが 加した一因として指摘されている (財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」 図 1 車種別交通事故件数 近年の事業用トラックの事故件数の推移をみると, 件前後,その後減少傾向となっている(図 図 2 交通事故件数の推移 事業用トラックによる事故件数に影響する要因には ラックへのスピードリミッター取り付け義務化 ドライバーの高年齢化など様々であるが 加した一因として指摘されているのが, (財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」 2 車種別交通事故件数 近年の事業用トラックの事故件数の推移をみると, 件前後,その後減少傾向となっている(図 交通事故件数の推移 事業用トラックによる事故件数に影響する要因には ラックへのスピードリミッター取り付け義務化,中型免許の新設 ドライバーの高年齢化など様々であるが のが,1990 年に始まったトラック運送市場における規制 (財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」 車種別交通事故件数2 近年の事業用トラックの事故件数の推移をみると,1990 年代に増加傾向を示し, 件前後,その後減少傾向となっている(図 交通事故件数の推移3 事業用トラックによる事故件数に影響する要因には,車両走行台数 中型免許の新設 ドライバーの高年齢化など様々であるが 年に始まったトラック運送市場における規制 (財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」を利用した 年代に増加傾向を示し, 件前後,その後減少傾向となっている(図 2). 車両走行台数,道路整備 中型免許の新設,飲酒運転に対する罰則 ドライバーの高年齢化など様々であるが,1990 年代に事故件数が増 年に始まったトラック運送市場における規制 を利用した. 年代に増加傾向を示し, ). 道路整備,大型ト 飲酒運転に対する罰則 年代に事故件数が増 年に始まったトラック運送市場における規制 年代に増加傾向を示し,2000 大型ト 飲酒運転に対する罰則 年代に事故件数が増 年に始まったトラック運送市場における規制

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3 表 1 トラック運送市場における規制緩和 戦後のトラック運送業は 1951 年に施行された「道路運送法」により制度化されている. 同法の下では,過当競争による事業の安定性と安全性の低下の防止を目的に,需給調整 をベースとした免許制度と認可運賃制度による規制が行われていた. 1990 年にトラック運送市場の規制緩和が始まり,参入や運賃については原則的に市場 メカニズムに従うことを主眼とした制度に移行した.法制面では,道路運送法から貨物輸 送分野を独立させ,物流 2 法(貨物自動車運送事業法,貨物運送取扱事業法)が施行され た.規制緩和の時期及び内容は表1のとおりである. 参入は免許制から許可制となり,需給調整機能は廃止されるとともに,参入時の最低保 有台数を段階的に引き下げ,2003 年からは全国一律 5 台となっている.運賃は許可制から 届出制となり,事業者の自由となった.営業区域制度は,発地および着地のいずれもが許 可された区域となる輸送を禁止するものであるが,2003 年に廃止された.一方で競争の激 化によって懸念される過積載や過労運転等による安全性の低下については,禁止規定の法 制化や行為を強要した荷主への是正勧告制度の導入等の社会的規制の強化ならびに事業者 への指導を行う全国適正化事業実施機関という制度を設け,公益社団法人全日本トラック 協会(以下「全日本トラック協会」という)をこれに指定した. 一連の規制緩和は,事業者の増加をもたらした.事業者数は,1990 年には 40,072 社で あったが,1991 年以降は年間約 2,000 社の新規参入があり,2012 年には 62,910 社となっ ている(図 3).特に小規模事業者の増加が顕著であり,2013 年時点では,全事業者に占め る 30 台以下の事業者の割合は 87%となっている(表 2). この結果,事業者間の競争が促され,運賃低下とともにサービス向上が行われた.規制 緩和によりもたらされた消費者メリットは 2005 年度で 3.4 兆円とされている4.一方,事 業者の利益は減少し,全事業者を合わせた経常利益率は 2012 年度で-1.1%となっている5 そのため,利益を確保するために過労運転,過積載等の違法行為によりコスト削減を行う 4内閣府政策統括官室(2007)「規制改革の経済効果-利用者メリットの分析(改定試算)2007 年版-」参照. 5(社)全日本トラック協会(2014)「経営分析報告書-平成 24 年度決算版-」参照. 項 目 対 象 内 容 参入 営業許認可 1990 年に免許制から許可制へ(需給調整機能の廃止) 最低保有台数 1994 年からを段階的に引き下げ 2003 年から全国一律 5 台 運賃 1990 年に許可制から事前届出制へ 2003 年に事後届出制へ 事業内容 営業区域 2003 年に廃止 輸送の安全 危険行為 1990 年に過労防止,過積載の禁止規定を法制化 運行管理者 1990 年に実務経験から試験制に 荷主勧告 1990 年に違法行為強要荷主への是正勧告制度を導入 指導機関 1990 年に全国適正化事業実施機関を指定

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事業者が増加するようになったと言われている. このような背景 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 備を進めること」という内容の附帯決議が行われ, 化事業実施機関が運営する 2.2 G マーク制度とは 事業者全体の安全性に対する意識を高める ラック事業者 して認定する制度であ ラック協会 国庫負担となっている 6データは, 7自動車を用いて行われる運輸事業 協会等に交付 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 車両台数 事業者数(社) 構成比(%) 事業者が増加するようになったと言われている. このような背景 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 備を進めること」という内容の附帯決議が行われ, 化事業実施機関が運営する 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 マーク制度とは 事業者全体の安全性に対する意識を高める ラック事業者を事業所 して認定する制度であ ラック協会により 国庫負担となっている データは,国土交通省自動車局貨物課ウェブサイトに掲載のものを利用した. 自動車を用いて行われる運輸事業 協会等に交付する交付金.使途は 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 車両台数 10以下 事業者数(社) 35,922 構成比(%) 57.1% 事業者が増加するようになったと言われている. このような背景から,2003 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 備を進めること」という内容の附帯決議が行われ, 化事業実施機関が運営する 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 マーク制度とは,利用者が安全性の高い事業者を識別できる環境を整備する 事業者全体の安全性に対する意識を高める 事業所単位で して認定する制度である.運営は により行われている 国庫負担となっている(表 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイトに掲載のものを利用した. 自動車を用いて行われる運輸事業 する交付金.使途は 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 10以下 11~20 35,922 13,107 57.1% 20.8% 図 3 表 2 規模別事業者数・構成比 事業者が増加するようになったと言われている. 2003 年に施行された法改正の国会決議にあわせて,「貨物自動車 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 備を進めること」という内容の附帯決議が行われ, 化事業実施機関が運営する G マーク制度 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 利用者が安全性の高い事業者を識別できる環境を整備する 事業者全体の安全性に対する意識を高める 単位で安全性優良事業所 運営は全国貨物自動車運送適正化事業実施機関 行われている.運営費 (表 3). 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイトに掲載のものを利用した. 自動車を用いて行われる運輸事業の振興を助成するため,都道府県が する交付金.使途は安全の確保に関する事業 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 21~30 13,107 5,893 20.8% 9.4% 4 事業者数の推移 規模別事業者数・構成比 事業者が増加するようになったと言われている. 年に施行された法改正の国会決議にあわせて,「貨物自動車 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 備を進めること」という内容の附帯決議が行われ, マーク制度が開始された. 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 利用者が安全性の高い事業者を識別できる環境を整備する 事業者全体の安全性に対する意識を高めることを目標に 安全性優良事業所(以下「 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関 運営費には運輸事業振興助成交付金 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイトに掲載のものを利用した. の振興を助成するため,都道府県が 安全の確保に関する事業等に限定される.交付金の交付に要する経費は, 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 31~50 51~100 4,310 2,690 6.9% 出典 事業者数の推移 規模別事業者数・構成比6 年に施行された法改正の国会決議にあわせて,「貨物自動車 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 備を進めること」という内容の附帯決議が行われ,2003 年 7 月に が開始された. 利用者が安全性の高い事業者を識別できる環境を整備する ことを目標に,安全性が一定の基準を満たすト 以下「G マーク取得事業所」という 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関 運輸事業振興助成交付金 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイトに掲載のものを利用した. の振興を助成するため,都道府県が各都道府県トラック協会及びバス 等に限定される.交付金の交付に要する経費は, 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 51~100 101~200 2,690 715 4.3% 1.1% 出典 (社)全日本トラック協会ウェブサイト 年に施行された法改正の国会決議にあわせて,「貨物自動車 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 月に全国貨物自動車運送適正 利用者が安全性の高い事業者を識別できる環境を整備する 安全性が一定の基準を満たすト マーク取得事業所」という 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関 運輸事業振興助成交付金7が利用されており 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイトに掲載のものを利用した. 各都道府県トラック協会及びバス 等に限定される.交付金の交付に要する経費は, 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 101~200 201~500 715 205 1.1% 0.3% (社)全日本トラック協会ウェブサイト 年に施行された法改正の国会決議にあわせて,「貨物自動車 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 全国貨物自動車運送適正 利用者が安全性の高い事業者を識別できる環境を整備するとともに 安全性が一定の基準を満たすト マーク取得事業所」という 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関である全日本ト が利用されており 各都道府県トラック協会及びバス 等に限定される.交付金の交付に要する経費は, 都道府県の基準財政需要額に算入される.(出典:(社)全日本トラック協会ウェブサイト) 2013年3月31日現在 501以上 合 計 68 62,910 0.1% 100.0% (社)全日本トラック協会ウェブサイト 年に施行された法改正の国会決議にあわせて,「貨物自動車 運送事業者の安全性を評価するためのシステムを確立し,その円滑な推進のための環境整 全国貨物自動車運送適正 とともに, 安全性が一定の基準を満たすト マーク取得事業所」という)と 全日本ト が利用されており, 各都道府県トラック協会及びバス 等に限定される.交付金の交付に要する経費は, 2013年3月31日現在 合 計 62,910 100.0% (社)全日本トラック協会ウェブサイト

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5 表 3 貨物自動車運送事業安全性評価事業の概要 開始時期 2003 年 7 月 運営機関 全国貨物自動車運送適正化事業実施機関 (公益社団法人全日本トラック協会) 運営財源 運輸事業振興助成交付金 評価対象単位 一般貨物運送事業者及び特定貨物運送事業者の事業所 申請費用 無料(インターネット申請の場合) 有効期間 更新回数により 2 年,3 年または 4 年 G マークの審査および認定は,申請を行った事業者に対して行われる.全日本トラック 協会が安全性に対する法令の遵守状況,事故や違反の状況,安全性に対する取組の積極性 の 3 つの評価項目について評価基準に基づき点数化した上で,学識経験者,労働組合関係 者,荷主団体,一般消費者,国土交通省職員及び全国実施機関担当役員で構成される安全 性評価委員会への諮問および答申を経て評価を決定する.認定された事業所は安全性優良 事業所であることを示す標章(G マーク)を保有車両等に掲示することができるとともに, 表 4 に示すインセンティブ制度を利用することができる. 表 4 インセンティブ制度一覧 実施主体 項 目 内 容 国土交通省 違反点数の消去 通常,違反点数は 3 年間で消去されるが,違反点数付与後 2 年間 違反点数の付与のない場合,当該違反点数が消去される. IT 点呼の導入 対面点呼に代えて,国土交通大臣が定める設置型又は携帯型のカメ ラを有する機器による営業所間又は車庫間での点呼が可能となる. 点呼の優遇 2 地点間を定時で運行する形態の場合の他営業所における点呼,同 一敷地内に所在するグループ企業間における点呼が承認される. CNG 車等導入へ の補助条件緩和 CNG トラック等に対する補助について,新車のみの導入については 最低台数要件が 3 台から 1 台に緩和される. 安全性優良 事業所表彰 安全性優良事業所のうち,連続して 10 年以上取得しているなど, さらに一定の高いレベルにある事業所が表彰される. 全日本 トラック協会 助成の優遇 全日本トラック協会が行う会員事業者に対する助成事業に関し,予 算の範囲内で次の優遇措置が受けられる. ① ドライバー等安全教育訓練促進助成制度に係る特別研修につい て,受講料助成金の増額(通常 7 割⇒ 全額助成) ② 安全装置等導入促進助成事業に係る IT 機器を活用した遠隔地 で行う点呼に使用する携帯型アルコール検知器について,1 台 1 万円の助成 ③ 経営診断受診促進助成事業に係る診断助成金の増額(通常上限 8 万円⇒ 10 万円) 損保会社 運送保険等の 保険料割引 損害保険会社の一部企業による,運送保険等における独自の保険料 割引の適用. 出典 (社)全日本トラック協会「平成 26 年度貨物自動車運送事業安全性評価事業申請案内」

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G マーク取得事業所は制度開始以来増加を続けており, 業所,全事業所の 上ある事業者は 属する車両の台数は G マーク取得事業所 であるため ったアンケート かる(図 また っており マーク取得事業所は制度開始以来増加を続けており, ,全事業所の 上ある事業者は 属する車両の台数は マーク取得事業所 であるため,規模の大きい事業所による取得が多いことが分かる ったアンケートによると (図 5). また,G マーク取得事業所の車両台数あたり事故発生件数 っており,G マーク取得事業所の安全性が高いこと 認定事業所数の推移 図 4 マーク取得事業所は制度開始以来増加を続けており, ,全事業所の 25.3%となっている(図 上ある事業者は 9,573 事業者で,全事業所の 属する車両の台数は 554,449 マーク取得事業所の所属 規模の大きい事業所による取得が多いことが分かる によると,規模の大きい事業者 図 マーク取得事業所の車両台数あたり事故発生件数 マーク取得事業所の安全性が高いこと 認定事業所数の推移 G マーク取得事業所数・車両数の推移 マーク取得事業所は制度開始以来増加を続けており, となっている(図 事業者で,全事業所の 554,449 台,全事業用トラックの の所属車両台数の平均 規模の大きい事業所による取得が多いことが分かる 規模の大きい事業者 図 5 事業規模別 マーク取得事業所の車両台数あたり事故発生件数 マーク取得事業所の安全性が高いこと 認定事業所数の推移 出典 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 6 マーク取得事業所数・車両数の推移 マーク取得事業所は制度開始以来増加を続けており, となっている(図 4). G マーク取得事業所が少なくとも 事業者で,全事業所の 15.2% ,全事業用トラックの 車両台数の平均で 26.2 規模の大きい事業所による取得が多いことが分かる 規模の大きい事業者ほど 事業規模別 G マーク取得状況 マーク取得事業所の車両台数あたり事故発生件数 マーク取得事業所の安全性が高いこと 出典 (社) 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 マーク取得事業所数・車両数の推移 マーク取得事業所は制度開始以来増加を続けており,2014 マーク取得事業所が少なくとも 15.2%となっている. ,全事業用トラックの 40.4%となっている. 26.2 台である 規模の大きい事業所による取得が多いことが分かる ほど G マークの取得が進んでいることが マーク取得状況 マーク取得事業所の車両台数あたり事故発生件数は マーク取得事業所の安全性が高いことを示している (社)全日本トラック協会「全日本トラック協会ニュース」 認定事業所数の 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 マーク取得事業所数・車両数の推移 2014 年 12 月末現在で マーク取得事業所が少なくとも となっている.G マーク取得事業所に所 となっている. .全事業所の平均は 規模の大きい事業所による取得が多いことが分かる.また, マークの取得が進んでいることが マーク取得状況 は非取得事業所の約半 ている(図 6). 全日本トラック協会「全日本トラック協会ニュース」 認定事業所数の車両台数の 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 月末現在で 21,125 マーク取得事業所が少なくとも 1 か所以 マーク取得事業所に所 となっている. 全事業所の平均は 15.8 ,国土交通省が行 マークの取得が進んでいることが 非取得事業所の約半分 . 全日本トラック協会「全日本トラック協会ニュース」 車両台数の推移 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」」 21,125 事 か所以 マーク取得事業所に所 15.8 台 国土交通省が行 マークの取得が進んでいることが分 分とな 全日本トラック協会「全日本トラック協会ニュース」

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3. G

本章では する」 て分析を行うための 3.1 荷主の行動 事業者の スや価格の面で高い便益を ことは難しくなった 安全に対する意識の高さなど安全性に関する め,安全性を重視する荷主であっても う貨物の損傷や遅延等のリスクを負う可能性がある G マーク制度は 対称を解消 G マークの導入により うになれば ク取得事業者 そこで 3.2 事故に与える影響 前項で述べた安全性に関する情報の非対称 つと考えられる 全性が高く 量が増加する

G

マーク制度の効果に関する

本章では,G マーク制度 する」,「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのか 分析を行うための 荷主の行動に与える影響 事業者の増加や スや価格の面で高い便益を ことは難しくなった 安全に対する意識の高さなど安全性に関する 安全性を重視する荷主であっても う貨物の損傷や遅延等のリスクを負う可能性がある マーク制度は 対称を解消することを目的とした制度である マークの導入により うになれば,安全性を重視する荷主は ク取得事業者の取引量は そこで,「G マーク取得事業者の取引量 事故に与える影響 前項で述べた安全性に関する情報の非対称 つと考えられる. 全性が高く,交通事故 増加するのであれば 図

マーク制度の効果に関する

マーク制度が 「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのか 分析を行うための仮説を設定する に与える影響 や営業区域の廃止によ スや価格の面で高い便益を得られるようになったが ことは難しくなった.荷主にとって 安全に対する意識の高さなど安全性に関する 安全性を重視する荷主であっても う貨物の損傷や遅延等のリスクを負う可能性がある マーク制度は,このような することを目的とした制度である マークの導入により,荷主が 安全性を重視する荷主は の取引量は増加し マーク取得事業者の取引量 事故に与える影響 前項で述べた安全性に関する情報の非対称 .前章で述べ 交通事故発生確率が低い のであれば,トラック 図 6 G マーク取得状況別の事故件数

マーク制度の効果に関する仮説

が,政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく 「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのか 設定する. に与える影響 営業区域の廃止により 得られるようになったが にとって,トラック事業者 安全に対する意識の高さなど安全性に関する 安全性を重視する荷主であっても, う貨物の損傷や遅延等のリスクを負う可能性がある このような荷主と事業者の することを目的とした制度である 荷主が G マークの有無を 安全性を重視する荷主は, 増加し,取得していない事業者の取引量は減少する マーク取得事業者の取引量 前項で述べた安全性に関する情報の非対称 章で述べたとおり, 発生確率が低い. トラック運送 7 マーク取得状況別の事故件数

仮説

政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく 「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのか り,荷主の選択肢が広がったことで 得られるようになったが トラック事業者 安全に対する意識の高さなど安全性に関する情報を収集することは容易ではない ,安全性の低い事業者と取引を行い う貨物の損傷や遅延等のリスクを負う可能性がある と事業者の間に生じる輸送の安全性に関する することを目的とした制度である. マークの有無を ,G マーク取得事業者を選択するようになり 取得していない事業者の取引量は減少する マーク取得事業者の取引量は増加する」ことを仮説として設定する 前項で述べた安全性に関する情報の非対称の解消 ,G マーク取得事業 .前項の仮説のとおり 運送市場に占める安全性の高い輸送サービスの割合が マーク取得状況別の事故件数 政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく 「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのか 荷主の選択肢が広がったことで 得られるようになったが,一方で, トラック事業者の法令順守状況 情報を収集することは容易ではない 安全性の低い事業者と取引を行い う貨物の損傷や遅延等のリスクを負う可能性がある. 間に生じる輸送の安全性に関する マークの有無を輸送の安全性 マーク取得事業者を選択するようになり 取得していない事業者の取引量は減少する する」ことを仮説として設定する 解消は,同時に事故を減少させる効果を持 マーク取得事業所が 前項の仮説のとおり, 市場に占める安全性の高い輸送サービスの割合が 出典 国土交通省自動車局貨物課 マーク取得状況別の事故件数 政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく 「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのか 荷主の選択肢が広がったことで ,事業者の安全性を見分ける 順守状況,事故や違反の状況 情報を収集することは容易ではない 安全性の低い事業者と取引を行い 間に生じる輸送の安全性に関する 輸送の安全性の指標として認識するよ マーク取得事業者を選択するようになり 取得していない事業者の取引量は減少する する」ことを仮説として設定する 同時に事故を減少させる効果を持 所が供給する輸送サービスは安 ,G マーク取得事業者の 市場に占める安全性の高い輸送サービスの割合が 国土交通省自動車局貨物課 政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく 「事業者全体の安全性向上に対する意識を高める」といった効果を持つのかについ 荷主の選択肢が広がったことで,荷主はサービ 事業者の安全性を見分ける 事故や違反の状況 情報を収集することは容易ではない.そのた 安全性の低い事業者と取引を行い,交通事故に伴 間に生じる輸送の安全性に関する情報の非 の指標として認識するよ マーク取得事業者を選択するようになり,G 取得していない事業者の取引量は減少すると考えられる する」ことを仮説として設定する. 同時に事故を減少させる効果を持 する輸送サービスは安 マーク取得事業者の 市場に占める安全性の高い輸送サービスの割合が 国土交通省自動車局貨物課ウェブサイト 政策目標である「荷主が安全性の高い事業者を選びやすく につい 荷主はサービ 事業者の安全性を見分ける 事故や違反の状況, そのた 交通事故に伴 情報の非 の指標として認識するよ G マー と考えられる. 同時に事故を減少させる効果を持 する輸送サービスは安 マーク取得事業者の取引 市場に占める安全性の高い輸送サービスの割合が ウェブサイト

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8 増加し,トラックによる事故は減少すると考えられる. そこで,「全事業所に占める G マーク取得事業所の割合が高くなるほど事故発生率は減 少する」ことを仮説として設定する.

4. G

マーク制度導入の効果に関する実証分析

本章では,前章で設定した「G マーク取得事業者の取引量は増加する」および「全事業 所に占める G マーク取得事業所の割合が高くなるほど事故発生率は減少する」という 2 つ の仮説について,推定モデルを用いた実証分析を行う. 4.1 Gマーク制度が荷主の行動に与える影響を捉える推定モデル 4.1.1 推定モデルの概要 本推定モデルでは,G マーク制度が荷主の行動に与える影響を捉えるため,G マーク取 得事業者と非取得事業者の間での取引量の変化の違いについて固定効果モデルにより分析 する. 事業者ごとの輸送量は公表されていないことから,輸送量の代理変数として各事業 者の保有車両台数を用いる.また,G マークは事業所単位で認証されるため,各事業所の 車両台数を用いることが望ましいが,利用可能なデータがないことから,本推定モデルで は,事業者を単位とし,1 事業所でも G マーク取得事業者があるかどうかを指標として分 析を行った. なお,表 5 は事業規模と車両 1 台あたりの輸送トンキロを示したもので,事業規模によ って異なるため,本推定モデルで得られた推計結果の扱いには注意が必要である. 表 5 事業規模と車両 1 台あたり輸送量8 推定モデル 1 により G マークの有無による違いを分析し,さらに推定モデル 2 により事 業規模を加味した分析を行う.車両台数は,各事業者の所在地,資本,経営者の能力など, 様々な要因から影響を受けると考えられ,すべての要因を推定モデルに反映させることは 困難であるため,固定効果モデルを用いた分析を行う. 8 データは,(社)全日本トラック協会「経営分析報告書 ―平成 24 年度決算版―」を利用した. 車両規模 期末実在 1台あたり 車両数(台) (a)1台あたり (b)1台あたり トンキロ (a)×(b) 10台以下 6.5 21,106 3,247 178,458 27,455 89,148,747 11~20台 14.6 45,454 3,113 528,889 36,225 112,779,699 21~50台 29.6 92,016 3,109 1,192,449 40,285 125,233,276 51~100台 63.5 164,975 2,598 1,993,114 31,388 81,546,031 101台以上 141.5 255,893 1,808 3,847,115 27,188 49,167,791 全体 20.3 60,157 2,963 728,684 35,896 106,373,470 輸送トン数(トン) 実車キロ数(km)

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9 推定モデル 1 ln(TRit+1) =α+β1 GMit i t it 推定モデル 2 ln(TRit+1) =α+β1 GMit 2 (GMit*SCi) +αi t it 4.1.2 変数の説明 分析には以下に示す変数を用いた.分析の対象時期は事業者ごとの車両台数のデータが 取得可能な 2006 年度と 2014 年度の 2 時点とした.分析対象は 2006 年度に東京都に本社を 持つ一般貨物運送事業者 5,461 社からランダムに抽出した 500 社のうち,合併,吸収,他 県移転のあった事業者を除く 491 社とした.このうち,2014 年度に事業を存続している事 業者は 369 社,事業を廃止している事業者は 122 社である. (1) 被説明変数 被説明変数には,事業者が保有する事業用車両台数9の対数ln(TR)を使用する. (2) 説明変数 ①G マークダミー GM G マークダミーは, G マーク取得事業所があるかどうか10を示すダミー変数であり,1 事業所でも G マークを取得していれば 1,取得していなければ 0 をとる. G マーク取得事 業者の取引量は増加する考えられるため,予想される符号は正である. ②G マークダミー・小規模事業者ダミーの交差項 GM*SC 小規模事業者ダミーは,2006 年時点の事業者の規模を示すダミー変数であり,保有車両 台数が 30 台以下であれば 1,31 台以上であれば 0 をとる.荷主にとっては規模が小さい事 業者ほど安全性に関する情報を得ることが困難であり,G マークの有無が安全性を判断す る上でより重要な指標になると考えられるため,予想される符号は正である. その他,α1は定数項,βはパラメータ,εは誤差項,i は事業者,t は年度を表す.各 変数の基本統計量は表 6 のとおりである. 表 6 推定モデル 1・推定モデル 2 基本統計量 9データは,輸送経済新聞社「全日本トラック事業者総覧」を利用した. 10 データは,(社)全日本トラック協会ウェブサイトに掲載のものを利用した. 観測数 平均 標準偏差 最小値 最大値 ln(トラック台数) 982 2.378 1.353 0.000 6.915 Gマークダミー 982 0.078 0.269 0.000 1.000 Gマークダミー×事業規模ダミー(交差項) 982 0.031 0.172 0.000 1.000 (注) 年次ダミーは省略. 変数

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10 4.1.3 推定結果 推定結果は,表 7 のとおりである. 表 7 推定モデル 1・推定モデル 2 推定結果 推定モデル 1 では,G マークを取得していない事業者は,2006 年から 2014 年までにト ラック台数が 75.6%減少するが,2013 年までに G マークを取得した事業者のトラック台数 は,取得していない事業者よりも 52.8%多いことが,1%水準で統計的に有意であることが 示された. 推定モデル 2 では,2013 年までに G マークを取得した大規模事業者のトラック台数は, 取得していない事業者よりも 39.6%多く,小規模事業者の場合にはさらに 35.3%多いことが, 1%水準で統計的に有意であることが示された. 以上の推定結果より,G マークは G マーク取得事業者の取引量を増加させ,小規模事業 者の場合にはさらにその効果が大きいことが明らかになった.大規模事業者による G マー ク取得の効果が小規模事業者に比べて小さい理由として,大規模事業者ほど取引量が多く, 評判として荷主に情報が伝わる可能性が高いことが考えられる. 4.2 Gマークがトラック運送市場の安全性に与える影響を捉える推定モデル 4.2.1 推定モデルの概要 本推定モデルでは,G マークがトラック運送市場の安全性に与える影響を捉えるため, 各都道府県の G マーク普及率と事故発生率の関係を分析する. トラック運送市場の安全性を表す指標として,トラック事故発生率を用いる.トラック 事故発生率は,各都道府県の地形,気候,人口,産業構造,年齢構成,道路整備状況など, 様々な要因から影響を受けると考えられ,すべての要因を推定モデルに反映させることは 被説明変数:ln(トラック台数) 推定モデル1 推定モデル2 説明変数 係数 標準誤差 係数 標準誤差 Gマークダミー 0.528 *** 0.093 0.396 *** 0.110 Gマークダミー×小規模事業者ダミー(交差項) ― ― 0.353 *** 0.136 年次固定効果(2014年) -0.756 *** 0.056 -0.756 *** 0.056 事業者固定効果 (省略) (省略) 定数項 2.715 *** 0.024 2.714 *** 0.024 観測数 982 982 決定係数 0.287 0.289 (注1) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す. (注2) 標準誤差は事業者クラスター化不均一分散頑健標準誤差である.

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11 困難であるため,固定効果モデルを用いて分析を行う. 推定モデル 3 ARit =α+β1 GRit 2 DHit 3 DOit 4 EAit 5 SAiti t it 4.2.2 変数の説明 分析には以下に示す変数を用いた.分析の対象時期は都道府県ごとの G マーク普及率お よび事故件数のデータが取得可能な 2010 年と 2012 年の 2 時点とした. (1) 被説明変数 被説明変数であるトラック事故発生率 AR は,各都道府県に所在する事業所に所属する 事業用トラックを第一当事者とする年間の交通事故件数11を各都道府県に登録された事業 用トラックの台数12で除したものである.なお,被牽引車単体では交通事故は発生しない と考えられるため,事業用トラック台数から被牽引車の台数を除いている. (2) 説明変数 ①G マーク普及率13 GR G マーク普及率は,G マーク取得事業所数を全事業所数で除したものである.G マーク普 及率が増加するほど,トラック運送市場全体の安全性が向上すると考えられるため,予想 される符号は負である. ②運転手平均労働時間14 DH 運転手の平均労働時間が長いほど,運転手の疲労が増し,事故が増加すると考えられる ため,予想される符号は正である. ③運転手平均年齢15 DO 運転手の平均年齢が高いほど,身体能力が低下し,事故が増加すると考えられるため, 予想される符号は正である. ④他車種事故件数16 EA 他車種事故件数は,事業用トラックを除く自動車の事故件数であり,交通環境を表す指 標となる.他車種事故件数が増加すれば,交通環境は悪化していると考えられ,事業用ト ラックによる事故も増加すると考えられるため,予想される符号は正である. ⑤被災地ダミー SA 被災地ダミーは,2011 年に発生した東日本大震災の被災地を示すダミー変数であり,震 11 データは,(財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」を利用した. 12 データは,(財)自動車検査登録情報協会「自動車保有車両数統計年報 市区町村別 自動車保有車両 数」を利用した. 13 データは,(社)全日本トラック協会「トラック協会ニュース」を利用した. 14データは,厚生労働省「賃金構造基本統計調査」から,都道府県別第 2 表「職種・性別きまって支給す る現金給与額,所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」の「営業用大型貨物自動車運転者(男女計)」 および「営業用普通・小型貨物自動車運転者(男女計)」を労働者数で加重平均して利用した. 15 同上 16 データは,(財)交通事故総合分析センター「交通事故統計年報」を利用した.

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12 災後の 2012 年の岩手県,宮城県,福島県は 1,これ以外の年次および都道府県は 0 をとる. 被災地では経済活動の低下により輸送が減少し,事故が減少すると考えられるため,予想 される符号は負である. その他,α1は定数項,βはパラメータ,εは誤差項,i は都道府県,t は年度を表す. 各変数の基本統計量は表 8 のとおりである. 表 8 推定モデル 3 基本統計量 4.2.3 推定結果 推定結果は,表 9 のとおりである. 表 9 推定モデル 3 推定結果 推定モデル 3 では,G マーク普及率が 1%増加すると,事故は事業用トラック千台あたり 0.345 件減少することが,10%水準で統計的に有意に示された.これは,平成 24 年の全国 観測数 平均 標準偏差 最小値 最大値 トラック事故発生率 (件/千台) 94 22.653 6.953 8.650 37.840 Gマーク普及率 (%) 94 21.195 6.729 5.300 39.200 運転手平均労働時間 (時間) 94 210.313 11.103 183.494 235.350 運転手平均年齢 (歳) 94 44.674 2.217 38.962 50.176 他車種事故件数 (千件) 94 14.285 13.298 1.320 52.341 (注) 被災地ダミー,年次ダミーは省略. 変数 被説明変数:トラック事故発生率 (件/千台) 説明変数 係数 標準誤差 Gマーク普及率 (%) -0.345 * 0.202 運転手平均労働時間 (時間) -0.034 * 0.017 運転手平均年齢 (歳) 0.070 0.094 他車種事故件数 (千件) 0.389 ** 0.175 被災地ダミー -2.053 * 1.051 年次固定効果(2012年) 0.394 1.008 都道府県固定効果 (省略) 定数項 28.360 *** 6.733 観測数 94 決定係数 0.476 (注1) ***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す. (注2) 標準誤差は都道府県クラスター化不均一分散頑健標準誤差である.

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13 の事業用トラック登録台数 929,327 台を元に計算すると,G マーク普及率が 1%増加すると 事業用トラックによる事故が 320 件減少することになる. 運転手平均年齢,他車種事故件数,被災地ダミーの係数符号は予想したとおりの結果が 得られた.運転手平均労働時間の係数符号は負であり,予想とは異なる結果となった.大 都市では普通車を用いた輸送の割合が高いが,普通自動車免許での運転が可能であるため, 大型車や中型車よりも運転士のなり手が多く,労働時間が短くなる.また,大都市は自動 車台数に対する事故件数の割合が高い.そのため,運転手平均労働時間と事故発生率の間 に正の相関が生じたものと考えられる. 以上の推定結果から,G マークは事故を減少させ,トラック運送市場の安全性を向上さ せることが明らかになった.

5.

考察

本章では,これまでの実証分析に基づいた考察を示す. 推定モデル 1 および推定モデル 2 では,「G マーク取得事業者の取引量は増加する」とい う仮説を実証した. G マークは,荷主と事業者の間の安全性に関する情報の非対称を解消 する効果があることが明らかになった.また,G マークは,小規模事業者が G マークを取 得する場合により強い効果を持つ.これは,G マーク制度導入以前から,安全性の高い大 規模事業者は,荷主との長期的付き合いによる評判形成,ISO9000 等の G マーク以外のシ グナリング等により,情報の非対称の解消に取り組んでいたためと考えられる. 推定モデル 3 では,「全事業所に占める G マーク取得事業所の割合が高くなるほど事故 発生率は減少する」という仮説を実証した.G マークはトラック運送市場全体の安全性を 向上させる効果があることが明らかになった.3 章で示したとおり,G マーク取得事業所が 供給する輸送サービスは安全性が高く,交通事故発生率が低いため,G マーク取得事業者 の取引量は増加することで,市場全体の安全性が向上し,交通事故は減少する. しかし,推定モデル 3 の有意水準は 10%に止まった.この一因として,小規模事業者に よる G マークの取得が進んでいないことが考えられる.推定モデル 2 で示したとおり G マ ークは小規模事業者が取得する場合により取引量を増加させる効果を持つが,2 章で述べ たとおり現状では大規模事業者による取得が先行していることから,G マークの普及率が 増加しても,事故の減少に与える効果は小さいと考えられる.情報に非対称の解消と同様, 事故を減少させる効果が大きいのは,小規模事業者が G マークを取得する場合である.

6. G

マーク取得の便益と費用の検証

前章の実証分析の結果は,G マークは小規模事業者が取得した場合に,より大きい効果 を持つことを示していた.しかし,2 章で述べたとおり現状では小規模事業者による取得 が進んでいない.国土交通省の行ったアンケートの結果は,小規模事業者ほど今後の取得 を予定している事業者が少ないことを示している(図 7).

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そこで,本章では現行の いないか検証を行う.事業者は しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. 6.1 G G マーク取得により得られる び,第 考えられる 6.1.1 取引の増加は 小規模事業者 6.1.2 表 業規模によって便益が異なると考えられる理由を示した いては 占める ほど有利な制度であ 以上をまとめると, が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 述べることはできない. そこで,本章では現行の いないか検証を行う.事業者は しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. Gマーク取得 マーク取得により得られる 第 2 章で述べた 考えられる. 6.1.1 取引の増加 取引の増加は, 小規模事業者の場合には 6.1.2 インセンティブ制度の活用 表 10 は,各インセンティブ制度 業規模によって便益が異なると考えられる理由を示した いては,複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度であり 占める 1 事業所のみの事業者は 有利な制度であ 以上をまとめると, が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 述べることはできない. 図 そこで,本章では現行の いないか検証を行う.事業者は しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. マーク取得により得られる マーク取得により得られる 章で述べた G マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が 取引の増加 ,前章で考察 の場合にはこの効果が インセンティブ制度の活用 インセンティブ制度 業規模によって便益が異なると考えられる理由を示した 複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度であり のみの事業者は 有利な制度であると言える 以上をまとめると,G マーク取得により得られる が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 述べることはできない. 出典 図 7 事業規模別 そこで,本章では現行の G マーク制度が小規模事業者というだけで取得が困難になって いないか検証を行う.事業者は G マーク取得の便益が費用を上回る場合に しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. により得られる便益 マーク取得により得られる便益には マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が 考察したとおり この効果がより インセンティブ制度の活用 インセンティブ制度について 業規模によって便益が異なると考えられる理由を示した 複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度であり のみの事業者は便益を享受できない と言える. マーク取得により得られる が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 出典 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 14 事業規模別 G マーク取得予定 マーク制度が小規模事業者というだけで取得が困難になって マーク取得の便益が費用を上回る場合に しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. 便益には,他の事業者との差別化による取引の増加 マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が したとおり G マークを取得した事業者は取引が増加するが より大きい. について,事業規模ごとの便益の大きさ 業規模によって便益が異なると考えられる理由を示した 複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度であり を享受できない マーク取得により得られる が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 マーク取得予定 マーク制度が小規模事業者というだけで取得が困難になって マーク取得の便益が費用を上回る場合に しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. 他の事業者との差別化による取引の増加 マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が マークを取得した事業者は取引が増加するが 事業規模ごとの便益の大きさ 業規模によって便益が異なると考えられる理由を示した.中でも 複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度であり を享受できない.そのため マーク取得により得られる便益は,取引増加効果は小規模事業者 が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 マーク取得予定 マーク制度が小規模事業者というだけで取得が困難になって マーク取得の便益が費用を上回る場合に しようとすると考えられるため,便益と費用に分けて考える. 他の事業者との差別化による取引の増加 マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が マークを取得した事業者は取引が増加するが 事業規模ごとの便益の大きさ 中でも IT 点呼に関する項目につ 複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度であり,小規模事業者 そのため,全体的には は,取引増加効果は小規模事業者 が大きく,インセンティブ制度は大規模事業者が大きいが,営業活動へ G インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 マーク制度が小規模事業者というだけで取得が困難になって マーク取得の便益が費用を上回る場合に G マークを取得 他の事業者との差別化による取引の増加, マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が マークを取得した事業者は取引が増加するが 事業規模ごとの便益の大きさ,および 点呼に関する項目につ 小規模事業者の大半を 全体的には大規模事業者 は,取引増加効果は小規模事業者 G マークの活用や インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に 国土交通省自動車局貨物課「トラック輸送の実態に関する調査」 マーク制度が小規模事業者というだけで取得が困難になって マークを取得 ,およ マーク事業者に与えられるインセンティブ制度から得られる便益が マークを取得した事業者は取引が増加するが, および,事 点呼に関する項目につ の大半を 事業者 は,取引増加効果は小規模事業者 マークの活用や インセンティブ制度利用の程度に依存するところが大きく,どちらの便益が高いと一概に

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15 表 10 G マークインセンティブ制度の検証 項目 便益の大きさ 事業規模によって便益が異なる理由 大規模 小規模 違反点数の消去 △ △ ― IT 点呼の導入 △ × 複数の事業所を持つ事業者のみが導入できる制度 であり,大半が 1 事業所である小規模事業者が得ら れる便益は小さい. 点呼の優遇 △ × 特別積合せ貨物運送を行う事業者のみが導入でき る制度であり,大半が一般貨物自動車運送を行う小 規模事業者が得られる便益は小さい. CNG 車等導入への補助条件 緩和 ○ △ CNG 車等の導入には多額の経費がかかるため,小規 模事業者ほど導入は難しい. 安全性優良事業所表彰 × × ― 安全教育訓練受講料の助成 ○ ○ ― IT 点呼機器導入費用の助成 △ × IT 点呼の導入と同様,小規模事業者が得られる便 益は小さい. 経営診断費用の助成 △ ○ 小規模事業者ほど外部機関による経営診断が重要 である. 運送保険等の保険料割引 ○ ○ ― 6.2 Gマーク取得に伴う費用 G マーク取得に伴う費用は,評価項目である「安全性に対する法令の順守状況」,「事故 や違反の状況」,「安全性に対する取り組みの積極性」について,各項目の評価点および合 計の評価点が基準点数を上回るためのコストである.ここでは各項目が安全性向上や制度 の信頼性向上のためにどのように機能しているか述べた上で,事業規模によって適合の難 易度に違いがあるかについて検証を行う. 6.2.1 「安全性に対する法令の順守状況」 「安全性に対する法令の順守状況」の評価項目は表 11 のとおりである.貨物自動車運 送事業法,道路運送車両法,労働基準等の関係法令に規定された事項の実施が適正である かについて評価するもので,配点は 40 点,基準点数は 32 点である.審査にあたっては全 日本トラック協会の担当者が実地において検査を行う. これらは,ドライバーや車両,貨物の重量等が安全運転できる状態であることを保証す るための項目であり,輸送の安全性を確保するために必須の項目である.特に勤務管理, 過積載,点呼,車両点検整備の状況など事故に直結する項目は高い配点となっている.

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16 表 11 「安全性に対する法令の順守状況」の項目および配点 評 価 項 目 配点 1. 事業計画等 乗務員の休憩・睡眠施設の保守,管理は適正か. 1 2. 帳 票 類 の 整 備,報告等 (1) 事故記録が適正に記録され,保存されているか. 1 (2) 運転者台帳が適正に記入等され,保存されているか. 1 (3) 車両台帳が整備され,適正に記入等されているか. 1 3. 運行管理等 (1) 運行管理規程が定められているか. 1 (2) 運行管理者に所定の研修を受けさせているか. 1 (3) 事業計画に従い,必要な員数の運転者を確保しているか. 1 (4) 過労防止を配慮した勤務時間,乗務時間を定め,これを基に乗務割が作成され,休憩 時間,睡眠のための時間が適正に管理されているか. 3 (5) 過積載による運送を行っていないか. 3 (6) 点呼の実施及びその記録,保存は適正か. 3 (7) 乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か. 3 (8) 運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か. 1 (9) 運行指示書の作成,指示,携行,保存は適正か. 1 (10) 乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか. 3 (11) 特定の運転者に対して特別な指導を行っているか. 1 (12) 特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか. 2 4. 車両管理等 (1) 整備管理規程が定められているか. 1 (2) 整備管理者に所定の研修を受けさせているか. 1 (3) 日常点検基準を作成し,これに基づき点検を適正に行っているか. 1 (4) 定期点検基準を作成し,これに基づき,適正に点検・整備を行い,点検整備記録簿等 が保存されているか. 3 5. 労基法等 (1) 就業規則が制定され,届出されているか. 1 (2) 36 協定が締結され,届出されているか. 1 (3) 労働時間,休日労働について違法性はないか(運転時間を除く). 1 (4) 所要の健康診断を実施し,その記録・保存が適正にされているか. 1 6. 運 輸 安 全 マ ネジメント 運輸安全マネジメントを的確に実施し,輸送の安全に関する計画の作成,実行,評価及び改 善の一連の過程を円滑に進めている. 3 小 計 40 出典 (社)全日本トラック協会「平成 26 年度貨物自動車運送事業安全性評価事業申請案内」 6.2.2 「事故や違反の状況」 「事故や違反の状況」の評価項目は表 12 のとおりである.過去 3 年間に事業者が第一 当事者となる重大事故がないこと,行政処分の累積点数の状況を評価するもので,配点は 40 点,基準点数は 21 点である. 事故は事故防止に高い配慮を行っていたとしても起こりうるものであり,厳しい認定基 準ともみられるが,制度に対する荷主の信頼を高め,事業者の安全意識を高めるために重 要な点であると考えられる. 一方,行政処分の実績については,累積点数が 19 点以下であれば,「事故や違反の状況」 の点数は 21 点以上となり,基準点数を満たすことになる.累積点数が 20 点以上となった 場合には事業者名が公表されるという制裁が科される制度となっていることを踏まえると, 基準点数 21 点は低いと考えられる.

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17 表 12 「事故や違反の状況」の項目および配点 評 価 項 目 配点 1. 事故の実績 平成 26 年 11 月 30 日から過去 3 年間に,事業所の事業用自動車が有責の第一当事者となる, 自動車事故報告規則(国土交通省令)第 2 条各号に定める事故がないか. 〔該当する事故がある場合は 0 点,無い場合は 20 点〕 20 2. 違反(行政処 分)の実績 平成 26 年 11 月 30 日において,事業所に,貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の点数 が付加されていないか.また,点数がある場合には,当該事業所に係る行政処分の累積点 数は何点か.〔20 点から累積点数を減点し,累積点数が 20 点を超える場合は 0 点となる〕 20 小 計 40 出典 (社)全日本トラック協会「平成 26 年度貨物自動車運送事業安全性評価事業申請案内」 6.2.3 「安全性に対する取り組みの積極性」 「安全性に対する取り組みの積極性」の評価項目は表 13 のとおりである.これまでの 2 項目は法令順守の状況と重大事故の有無を評価するものであったが,本項目は付加的な取 り組みの状況を評価するもので,配点は 20 点,基準点数は 12 点である. 表 13 「安全に対する取組の積極性」の項目および配点 評 価 項 目 配点 1. 事故防止対策マニュアル等を活用している 2 2. 事業所内で安全対策会議(安全に関する QC 活動を含む.)を定期的に実施している. 3 3. 荷主企業,協力会社又は下請会社との安全対策会議を定期的に実施している. 2 4. 自社内独自の運転者研修等を実施している. 3 5. 外部の研修機関・研修会へ運転者等を派遣している. 2 6. 特定の運転者以外にも適性診断(一般診断)を計画的に受診させている. 2 7. 安全運行につながる省エネ運転を実施し,その結果に基づき,個別の指導教育を実施している. 1 8. 定期的に「運転記録証明書」を取り寄せ,事故,違反実態を把握して,個別指導に活用している. 2 9. グリーン経営認証や ISO(9000 シリーズ又は 14000 シリーズ)等を取得している. 1 10. 過去に行政,外部機関,トラック協会から,輸送の安全に関する表彰を受けたことがある. 1 11. その他輸送の安全に関する自主的,積極的,独創的,先進的又は高度な取り組みを実施している. 1 小 計 20 出典 (社)全日本トラック協会「平成 26 年度貨物自動車運送事業安全性評価事業申請案内」 この項目に求められる機能は,安全な事業者と安全でない事業者を見分ける効果(シグ ナリング効果)があること,および,安全性向上の効果があることの 2 点である.また,G マーク制度はすべての事業者を対象とした制度であることが,制度への信頼と効果を高め ることになるため,事業規模によって加点基準への適合の難易度に差がないことが重要で ある.そのため,各項目が以下の条件を備えているかについて評価を行い,適正かどうか の検証を行った(表 14).なお,評価にあたっては,G マーク取得を検討している小規模事 業者へのヒアリングを実施し,その結果を参考にした. ① 安全な事業者には適合コストが低く,危険な事業者には適合コストが高いこと.(シ グナリング効果)

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