スクール・コンブライアンス・システムに関する開発的研究 一 教 師 の 行 動 指 標 マ ニ ュ ア ル の 策 定 一
学校教育専攻 学校改善コース 的 場 祐 之
1.研究の目的
本研究は、学校において教師が、過去に行っ た不適切な行為や違法な行為の再発を防止する 目的で、教師の行動指標となるマニュアルの開 発を試みたものである。
近年、学校評議員、学校選択、人事考課等の 制度における学校改革、また、説明責任、危機 管理等が学校に求められる現状がある。これら に見られる特徴のなかには、効率性や競争原理 に基づく側面もあり、企業の改革に類似性があ ると考えた。
企業では、効率性や競争原理を追求した結果、
さまざまな不祥事を引き起こし、企業倫理が間 われることになったo そのために、企業は不祥 事を防止する目的で、倫理綱領などに代表され る行動の基準や法令を遵守(コンブライアンス) するシステムを構築している。
現在の学校においても、教師による体罰やわ いせつ行為などの不祥事が発生している。この ような現状から、学校における不祥事を防止す るために、企業が構築したようなシステム(コ ンブライアンス・システム)が必要で、あり、学 校への導入の可能性があると考えた。。
そこで、企業の不祥事を防止するシステム(コ ンブライアンス・システム)の重要な部分にマ ニュアルがある。企業ではコンブライアンス・
マニュアルなどと呼ばれ、法令等に基づいた行 動の指標を明記したものである。学校での不祥
指導教官 石村雅雄
事防止システム(スクール・コンブライアンス・
システム)において、教師の行動指標マニュアル (スクール・コンブライアンス・マニュアノレ)を 策定することを、第1段階と位置づけるもので、
ある。
2.研究の枠組み
① 学校で発生した不祥事の事例を収集 学校で発生した不祥事の収集は、 1991年 から2002年の間にA新聞に掲載されたもの を抽出した。新聞報道されるということは、問 題提起の意味があると判断された事例であるこ とから、学校では慣行として行われていること で、あっても、不適切と指摘される可能性がある。
学校関係者ではない視点が重要である。そして、
新聞報道された事例を、学校に潜在するリスク と捉えることであるD
② 利害関係者(ステイクホルダー)の決定 学校が教育活動を行うことによって、影響を 及ぼしたり、影響を受けたりする利害関係者が 存在する。報道事例の分析から学校の利害関係 者を抽出するとともに、企業が設定している利 害関係者を検討して、学校の利害関係者を決定 した。企業では地域社会や地球環境まで利害関 係者に設定している事例があったo 学校でも地 域との連携が重要視されているため、新聞報道 の事例になかった地域社会を 学校の利害関係 者に加えた。また、企業では経営者について利 害関係者として、設定していない場合もあった
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が、学校では、管理職についても被害を受ける 事例があったため、管理職も利害関係者として 設定した。また、影響を及ぼした側について、
学校札織、管理職、教職員それぞれの対応した 事例があったため、学校組織、管理職、教職員 で分類した。
③ マニュアルの内容
a 行動指標として明記するレベル
企業等が設定し公表している倫理綱領では、
理念的な内容となっていた。これは、従業員の とるべき行動の方向性を示していると考える。
一方で¥コンブライアンス・マニュアルは、法 令違反にあたる行動を具体的に示していた。こ れは、従業員の行動を制限するものである。そ こで、教師の不適切な行動を制限することが不 祥事防止に有効であると考えて、具体的な内容
とした。
b 違反に対する罰則規定
ここでの罰則規定とは、教師が行った行為に 対して、教育委員会が処分をする場合がある。
この処分には、同じような事例でも教育委員会 によって差があるため、最も重い処分を併記す ることである。また、行政処分だけでなく、逮 捕、送検、起訴等の場合や訴訟になった場合も 併記し、法令等に違反した場合や抵触する可能 性がある場合には、その法令等を併記した。
C 事後対策
新聞報道では、発生した事例に対して、当事 者がどのように問題に対処したか知ることがで きる。事例での対処が、実際に問題が発生した 場合に必ずしも有効であるとは限らない。しか し、実際に問題が発生した場合に、対処する事 後対策について参考にすることができるのでは ないかと考えたため併記した。
3 .
スクール・コンブライアンス・システムの運用
( 1 )スクール・コンブライアンス・マニュ アルの策定
↓
(2)研修を通して、教職員に内容を共有・
遵守させる
↓
(3)問題が発生、または、法令等改正等の 状況の変化
(4)コンブライアンス・マニュアルの検討 と改訂
( 1 )→ (2)→ (3)→ (4)→ ( 1 )の環 循するシステムである。
4 .
報道事例の内容分析教職員・管理職・生徒・保護者・ P T A役員・
教育委員会・他の学校・公共機関・取引業者・
マスコミが報道事例のあった利害関係者で、ある。
また、地域社会、地域の団体の報道事例はなか ったoまた、教職員間で、の報道事例もなかった。
しかし、問題がないのではなく、問題が表面化 しにくいのではないかと考えている。そこで、
マニュアルには、企業の従業員の指標を援用し て行動指標を作成した。
5.今後の課題
本研究では、新聞報道された事例によって、
帰納的なアプローチからマニュアルを作成した。
問題とされた教師の行動を、教師が共有するこ とが、不祥事防止に有効である。学校や教師の 教育行為に潜むリスクを不十分ながらも顕在化 した。この点では、学校や教師の教育行為のリ スクコントロールに寄与で、きると考える。しか
し、演緯的なアプローチ、つまり、法令からの アプローチでは不十分である。今後、このアプ ローチによるマニュアルの開発に期待したい。
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