長崎医学会雑誌第30巻第11号1467−1477頁 14占7
西九州に於けるバンクロフト糸状虫症の 浸淫並びに蚊族の自然感染に関する研究
第1編 糸状虫症の浸淫状況調査成績
長崎大学風土病研究所衛生動物学函究室(主毎 大森南三郎教授)
大島正治
おう しま まさ はろ
緒 糸状虫症に期する研究が近年頓に盛んにな って,疫学輝こ或は臨席的にほ幾多の知見が 加えられてきたが,本症の伝搬に男わる蚊族 の自感殊に於ける役割庭ついては殆んど見る べき報告がなかったゎで,著者ほ昭和26年か
らこの方面の函究に着手し,昭和2テ,28,29 年にほフィラリア研究班の一員として,蚊族 の自然感染の調査並びに研究を担当した.そ の成尭止っいては稿を改めて報告するが,蚊 族の自然感染の調査を行う場合に或は調査し 得た結果を疫学三伽こ考察する場合にほ,その 土地に於ける糸状虫症の授産状況を明らかに
P
l
しておくことが必要であるので,蚊族調査を 行った大部分の部零では予め本症の浸淫調轟 をも行った.本紀害はそれらの部落での授産 状況についての調査の結果をまとめたもわで ある・本報告を出すに当って指導と校閲の労 を賜った恩師大森教授に深甚の謝意を表し,
指導塩びに研究上の便宜を賜った長崎大学医 学部の北村精一教授及び風土病研究所臨床部 の片峰大助助教授に感謝の意を表する.伺本 研究に要した費相の一部は昭和27,28,29年 度の文部省科学研究費補助金によったのでこ
の機会に感謝の意を表する・
調査場所と方法
調査を行った部落の地軌住民の主な伝票,民度及 び調査期日等は第1表に示した通りであるがJ表中 の民度とは部落の貧富,文化,防蚊的見地から見た 生活様式等の程度を示し,農村部落としての普通或 ほ低度をそれぞれmoder∂te及びpoor又はVery poorとして表現した.蚊族の調査は第1表に示さ れた延38部落で行ったのであるが疫学的調査のみは 協同研究者によって行われた場合がある.即ち,
No.1及びNo.2(葛島)とNo・20−23(小値賀 町の納島,野島,大島及び薮路木島)の場合にほ片 峰等により,No・24−29(天草郡大江村の浜里及 び西部落)では森口によって浸淫調査が行われ,甥著 者は蚊族調査のみを行った.これらの部落での疫学 的調査の結果は既に片峰等(1952,1954)及び萄口
(1953)が報告しているので,本報告セは原著者が 両調査を行った場合の疫学的調査結果のみについて 輩告する.
調査の対象としてほ原則として中学生,青年団等 の全員及び一般の希望者を選んだが,実際には季節 笹より部落によって部落民の協力の仕方はまちまち であって対象の構成ほ必ヂしも同・一ではない。甚・だ しい場合にほ有症者の家族が故意に検血を避けたり 逆に有症者及びその家族が特に多く集まったり,或 ほ連絡が悪くて青年団員が全然参加しなかったりし た場合もあり,・部落全住民に対する被検者の比率も 非常に異なっている.又,No.8,9,10及び11ほ
l
2ケ年連続して調査を行ったので第2年目には前年 調零しなかった者だけについて検血その他を行って
1468 大 島
Table l・ Villages where丘1aria and mosquito surveys were made in the western‑coast and islands of Nagasaki prefecture and in a part of Amalくusa is一and of Kuma皿olo prefecture, Western Kyushu
ICBJ Locality
1 Kaluras ima
Main occupati。ni semi‑farming, semi‑fishing
Condition of people very poor
Date b【
examina tion
2‑12/VIII, 1951
Remarks
1)
To pograpl一y
長崎県南桧浦郡奈 Foot‑hill, 遠島村葛島 coast
2 〟 ′ク '/ 〟 〟 18/mX一5/X, 1951.
3 Ⅹ月tala I/南高来郡神代
村片田
Foot‑hill,
near coast Farm ing modera・ e 23‑27/VIII, 1951
・y lク
l
//南榎浦郡崎山 村崎山
*
Coast
'/
17‑19/V, 1952
18‑20/IX, 1952
〟 〟
Salciyama
ク 4
5
クク長芋Foot‑hill, coast
6 Nagate
7. *
〟
〟
;〟
*
畠2‑24/VI, 1952
l ・ク
ノク ・ 15・17/IX, 1952
8 Maura ク北魚乱村真補記iaI三‑side,
t
〟,、トor
9/VIII, 19.529 Hisasi ク 久志 * /y ク 10/VIII, 1952
10 Siraakubi
ll Ebukuro
ク 島首
ク 江袋
〟
*
〟 〟 ll/VIII, 1952
〟 * 12/VIII, 1952
12 Maura The same as No. 8. 22/VIIl, 1953
「
13 Hisasi Thesame as No・ 9. 22/VIII, 1953
14 Simakubi
15
The same as No. 10. 23/VIII, 1953
Alくab∂ e Hilly,
coast
ト
Farming
叩p
23/VIII, 1953
16 Ipponmalu 〟
17 Takeya
24/VIII, 1953
24/VIII, 1953
】8 Ydneyama 〟 〟 25/VIII, 1953
19 Ebukuro ク 江袋 Thesame as No. 11・ 26/VIII, 1953
20 Nosima ク 小値賀町納島Islet SeⅡ】iイarming ,
semi‑fishing poor
」
15‑16/VII, 1952 2)
西九州に於けるバンクロフト糸状虫症0浸浬並びに蚊族の自然感染に関する研究 1469 Table 1‑ (Continued)
Topo graphy Main occupation
condition of people
: Date of
examination Remarks No. Locality
21 Madarasima ク 因島 〟 * 〟
22 Osima ク 大島 〟 〟 〟
16・17/VII, 1952 2)
17‑18/VII, 1952 2)
23 Yaburogi ク 薮路木島 〟 〟 〟 18‑19/ vII, 1952 2)
24 Hamazalo 熊兼県天草郡大江
村沢里 Farming 12‑13/VI, 1952
25 ク ク 〟 1‑3/VII, 1952
〟 〟 〟 31 /VIト10/VIII,
1952
27 Nisi
28 ク
ク 西
〟
Foot‑hill, near coast
〟
12‑14/VI, 1952
2‑4/VII, 1952
ク L 31′vii‑io/vm19昌2 29 ク ク ●
30 Ono
〟 ・ク
長崎県西彼杵郡神 浦村大野
31
32
Ikejima
Solobira
〟 一ク 14/V, 1953
I/ 池島
l
Islet
l
Semi‑farming ,
semi‑nshing 15/V, 1953
ク 桧島村外平 Terracenear coast
33 Hongo 王,,面‑郷Coast
Farming 〟 16/V, 1953
8/VけⅠラ1953
9/VIII, 1953
Semi‑farming‑,./‑,.moderate semi一員shing
rather poor
,,
34 Kuroguti, ク 黒口 〟 Farming
35 Olawa ^ 10‑12/VIII, 1953
36 Amakubo
∃
37 I ク
ク 天久保= 〟 〟 7/VIII, 1953
ク
∫
'/ f/
9‑10/IX, 1953
由 oy」 ク 長崎市大山 Mountainsoliしude 〟 very
pooy 4・5/IX, 1954
Remarks :
Filariq surveys were mode qt vil一ages (1)叩d (2)by Katamine et al. and at (3) by Moriguchi.
1470 大 .島 いる.こういうわけでJこれらの調査の結果に推計
学的な検討を加えることは稗危険であるように思わ れる.然しながら二本症の現地調査の場合には同・一条 件で各部落の全員について行うことは寧ろ不可能で あると思われるのでJ未報告では検査条件或は対象 構成の多少異るものを含めたまま)未調査の関する 限りに於ける意味を究明するために各種の検討或は
考察を試みた.
採血は昭和28年7月以前は原則として午後9時以 後に行い2厚層標本を作ったがJ同年8月以降は午 後10以後に行い,3厚層原審をつくり全量が大体に 於て 20cmnm の血液量となるように心掛けた.従 って来朝告中の仔虫数の比較は後者の場合について のみ行われていろ.
調査成績及び考察
調査成績の大要ほ第2表に示す通りであるが現在 我国でほ八丈小島でマレイ糸状虫が発見されている
(佐々等1951)のみであって,北海道を除く日漆全 国に散見され,特に九州に濃厚に浸淫しているもの はバンクロフト種であることほ従来の知見によって 明らかであり,われわれも調査した限りではバンク ロブト唾であることを確認しているので,本報告で は単に糸状虫(症)と呼ぶ場合には取呂ゐerer王α ろα乃CrO勺王(FilaTiasisIJanCrOrti)を指す。感染者の 分類は仔虫のみを保有するものを無症状仔虫保有者,
・
何らかの臨宋症状を具有し仔虫をも保有するものを 有症仔虫保有者,症状のみを具有するものを有症仔 虫非県有者として区別し,これら三者の合計を感染 者とする.感染者の被検者に対する百分率を感染率 又はJその土相の浸淫率と呼ぶ,只単に仔虫保有者 と呼ぶ場合には有症及び無症の仔虫保有者を意味し,
有症者にほ仔虫保有及び非保有の有症老を含める.
バンクロフト糸状虫症に於ける症状の発現ほ数年問 の無症状仔虫保有期の後に急性期症状としてフィラ リア燕発作(くさふるい)がみられ,これが度々繰 返されるうちに琳巴管炎,琳巴陽炎,琳巴腺定宿,
陰垂水睦,乳ビ(血)尿或ほ練維素尿等の症状を現 わすものがあり,慢性期には,人によっては,4肢 特に下肢及び外陰部などの象皮病となることは周知 の通りであるが,漆調査は蚊族の自然感染状況の究 明に主眼をおいたためと,調査時詞の関係から臨床 症状の詳細な調査をすることができなかった場合も 多かったので,本報告でほこれらの諸症状を・一括し
て有症者として取扱っている.
第2表からわかるように部落によって最澄状況ほ 可成に異なっている.特に著しい数例について説明 するとNo.3(片田)は島原半島の北部,有明海 岸寄りにある農村部落であって,古くは多少の象皮 病患者もいたと云われ,一ノ瀬等(1949)も1%の仔 虫保有率を認めた土地であるが今日では仔虫保有者 ほ1名も発見できなくなっている.No・33(本郷),
No・36(天久保),No.34(黒口)及びNo・35(太 田和)等はいづれも面高村に属し,海岸近くにはあ るが大部分のものが異業に従事している農村であり,
前三者ほ天久保を中心として約1・5km・の距離にあ る.この比較的に接近した4部落で感染率ほ,それ ぞれ異なっていて本郷でほ極端に低く,天久保セは 甚だ高い.叉,森口(1953)の大江村に於ける調査 ではNo・24(準星)とNo・27(西)ほ隣接して おり,最も近いところでは100m位はなれているに一
過ぎないが,前者でほ浸淫率が0%であるのに後者 では実に51・5%の高率を示す.この様な現象は部落 間のみでなく,同・一部落内でも見られ,患家の分布 ほ・一様ではなく寧ろ幾つかの群団をなすようにみえ ることがある.かかる現象は伝澱蚊の行動範囲と仔 虫保有者の存在或ほ分散(姑姫や分家)とに重大な 関係があるように思われるので続編に於て取上げて 考察を試みたい・
次に,第2表中の備考1),2)及び3)を除きJ著 者自ら調査した成績から感染の年令的,性的並びに 地方的分布について検討を加えたい・
感染の年令的推移
穂討1791名の被後者について無症状仔虫保有者,
有症仔虫保有者,有症仔虫非保有老及び感染者の数 及び百分比を元すと第3表の如く,後者のみを図示 すると第1図の如くである.
第1図からわかるように,夫々の曲線が年令層と 共に顕著に,特長のある変化をしていることは,既に 述べたような,個人に於ける本症の経過々程の年令 的集合体としてみる時によく了解することができる,
西九州に於けるノミンタロフト糸状虫症の海産並びに蚊族の自然感染に賭する研染 .1471
Table 2‑ Filarial infection (Locality number is the same as in the Table 1.)
No.
㌔
1&2
3
4&5 6&7
8 9 10 1】
12 13 in 15 i 16 17 18 19 20
21■
22 23 24‑26 27‑29
Locality
\J Mf.(‑f),
C ・s ‑ ( +) Mf .f +) , C・ s. (‑ )
Z o
・
〇
︻ r e r
・ so ns e xa mi ne d
Mf .(
‑X C ・s ‑ C +)
Incidence of infections Clinical
一 % Micronlarial
No.
Total
No. %
声
rb 冒 p I1 9?∽
30
31
32
33
34
■35
S6&37 38
Kalurasim∂
Kalata Sakiyama Nagale Maura Hisasi Simakubi Ebukuro Maura 拭isasi Simakubi Akabae.
Ipponmatu Takeya Yoneyama Ebuk uro
・Nらsima Mムdaras ima Osi】コa V∂burogi Hamazato Nisi ono lkejima Sotobira Ko ngo Kuroguti Otawa Amakubo Oyama
261 451 101 ユlo w 46 33 52 22 26 16 28 19‑
m ll 22 1 ift些
】321 185 98 123 194 61
̀65 31 113 101 259 125 38
3ノno‑<sfc。c‑‑orHrH
10
0
2
2
0
1
4
2
1
1
0
0
1
1
0
0
0
20
0
4
2
0
0
0
7
1 31
in
ll
10
4
LB
4
2
0
1
5
1
0
0
0
0 34
0
12
ユ1
4
2
4
J4
4
2
0
1
1
3
1
5
FG
5
19
23
0 0
32 68
6 3
2 9 13.03
0 11・88 10・00 9.09 4.34 12・12 7・69 18・18 7.69 0 3.57 5・26 17.65 9・09 22 、73 9.30 1.56 10.27 23.47 0 35・05 4.92 13.85 16.13 1 0 0 4 3.96 10 13 ・02 24 19.20 2.63
l
*il
】7
13
12
4
15
8
4
1
2
5
1
1
1
0
0
0
52
6
6
8
1
0
10
10
6I 15.71
3.77 12.87 10.91 9.09 32・61 24.24 7.69 4・55 7.69 31.25 3・57 5・26 5.f
O O
0 26.91 9・84 9・23 25.81 0.88 0 3・86 8.00
】5.79
65 24・90 17 3.77
しJ
23 22・77 21 19.09 8 18J:18 16 34.78 8 24.24 11.53 18.18 11.54 31.25 7.14
1 5つ26
3 17・65 1 9・09 22.73
0 0 100 51.55 9 14・75
享子ラ〒!:'吾妻
!K
2) 2) 2) 2) 3) 3)・
Remarks :
Mf. : Microfilaria, C.s. : Clinical symptom, (+) : positive, (̲‑) : neg。live. As to (^1), C2) and (3) see footnote of Table 1.
/
1472 大 島
Table 3ォ Infection rate by age group
Age
Mf.C‑),C.s・(+)
(C Stage;
Mf.C+),C.s.C+)
CB Stage)
Mf.(+),C.s.(‑)
(A Stage) No・ of persons
examined 8 ? total
0一 9
10‑19 20‑29 30‑39 40‑49 50‑ 59
60+
8 ? total %
50 89
343
II8E
79
79
78
39
420 763 17
】89 353 13 100 179 1 104 】83
73 153 34 73
1
5
1 0
19
16
2
6
3
0
0 0.0 36 4・72 29 8.22
3
7
8
1 1.68 3.83 5.30 1・37
8 苧
0
0
2
4
7
5
3 0
0
1
0
3
3
1 ltotal
0
0
3
4
10
8
4
形 8 ? total
0・0 0 0.0 0・85 10 2・23 5.46 5・30 5・48
6 3
1
19
4
000.0
■l p=∴・・;l:
1;12 28…1;:73:
1 4 6
:.3呈 21.85 13.70
′1'olal infection
"報o.
o 39 48 19 45 49 15去
51i
1C
)(I
叩
15
10
ち
0
lota 82】 970 179】 38 46 84 4.69 21
Fig. 1・ Incidence curve by age group
To tal
∧ /\
f¥¥Mf(.‑).c‑s‑<+i
¥ / / //
■
..I:'・ Z:一'<>
/‑
/v/o‑). c.s. (‑i‑ )
叫‑49
o‑of>rn
cuocMCNJ
nてつlロー
O19
C.S. (‑)
601 flgegroup
がかゝる傾向ほ我国での幾多の報告とも大体に於て 平行している.只こゝに特に注意せねばならない2J
3のことがある・その‑つは' 30才層に於て何れの 率も低くなっていることである.このことは片峰等 (1952;の報告にも明らかにみられるが,佐藤等 (1950, 1954)の鹿児島の成績でほこの関係は必ヂ しも顕著で&.まない・然し教室の永友(未発表)の七 釜での成績でもこの年令層でほ低下している.かよ
8 29 1.62 55 47 102 5・70 215 12・00
うに局部的にほ例外があるとしても全体としてJこ こに谷があるとすれば,これは或は大戦直前及び大 戦中タ 感染源としての仔虫保有者並びに当時年少の 感受性老の流行飽からの移動と関係のあることでは ないかと思われる.もう一つの点は Mf.(‑f), C・s.
(+)とMf・ (‑), C.s・(+)の曲線の10才或は20才 代に於ける関係であるが病勢の進展の過程からすれ ば少くとも青年期にほタ前者が後者よりも先声高率 に現われるべきであるように思われる・所が未調査 でほ部落による最澄の新旧の差或は問診の不備など が重なり合った結果J図にみられるように逆の関係
Table 4‑ Difference in number of micronlariae by age group
Age
N。.Mf.No.
per習f.per thick芸慧ct
earner
Min・ M∂ Mean Remarks
0‑ 9 10‑19 20‑29 30‑39 40‑49
50+
∩ 3 O
*
*
0 0 t
‑
3 1
0
1
1
2
4
1 0
34
33
31
32
23 0.0 5・87 10・00 15.25 13・25 12.43
1x
== =
※ Amongthemeans, by meat‑ of the analysis
of variance, s茂gl‑ificant di庁erence is attained at 5 per cent level・
西九州に於けるパンクロフト糸状虫症の浸浬並びに蚊族の自然感染に関する研究 1473 現われたのではないかと考えられる.ともかくJ内
容の異なる集団についての調査結果を集計する場合 にほJ個人の場合の病歴とほ必ずしも平行しない場 合のありうることを注意しなければならない.
次に年令層による平均仔虫数の増減について,昭 和28年8月以降昭和29年9月迄高層標太3個即ち約
20cmmの採血をした797名中の仔虫保有者63名の 仔虫数を年令層別に平均してみると第4表に京すよ うに,その平均値の年令層間には有意差があり7年 令と共に感染の累積によって30年層までほ仔虫数が 増加し〉その後,感染免疫によってその数が減少し 始めることが窺われる.。
性 別 の 感 染 率 世界番場の糸状虫症浸産地での報告をみると男女
間にほク転業J ■労働などに特別な相異のない限り感 染率に差がないと云うものとク男子に多少高いと記 述しているものとがある.著者の調査した範囲では
第5表に京ナように有意差が認められる.これは, これらの地方での男子青年団の合宿の習慣によるも のでほないかと思われる.古くは/Jl学校,現在は新 制中学を卒業して家業に就くものほ,すべて青年団
Table 5‑ Difference in infection rate by sex
Mf.(+),C.s.(+) No.
I
Mf・(一),C.s。(+)
No.
lotnl
No.
Mf・C+;.c.s.c一)
No.
No.
examined Sex
s
?
821 38 970 46
4.63 7.74
21
8
2.56 55 0.82 47
6.70 4・85
Between the sexes, by x2 test, significant difference is attained at 1 per cent level二
に入るのであるがタ 団員ほ4) 5名或は5,6名ず つ部落内の夫々定まった家の一室に寝泊りする.こ れを青年宿,又は,単に宿或は青年クラブと称して いる.この青年達は蚊帳の使用をおつくうがったり, 蚊帳を使用せヂに仮睡したり ftさい蚊帳内に多数 寝たり㌢るのが普通であって,防蚊的立場からほ極 めて危険な集団生酒をしている.ところがタ 男女間 の平均仔虫数をみると第6表iと京すように男子に多 いようであるが有意差は認められない・例数を増せ ば或は有意差が認められ)男子に感染の機会が多くク 感染の累積による仔虫数の増加が証明できるかもし れないがク青年期以後の男子の性器に病変の見られ ることが多いのとタ女子の場合には問診による調査 が必ずしも正確を期し得ないこーとなどを考えると上
114
101
Table 6‑ Di庁erence in number of microfilariae by sex
13.89 10.41
Sex
No. Mf. per subject No.Mf. per 3 thick films
carrier
Mm. Max. Mean
Remarks
8
9
34 29
1
1
33 34
10.47 7.38
1
〔‑〕
メ
〔‑〕 Between the two means no significant di庁erence is attained.
のような推論ほ成立しないようでもある・然しJ少 くともこの地方では男子に感染の機会が多少多いの でほあるまいと思われる.
感 染・の 地 域.基
部落によって感染率に差がありJ甚だしい場合に ほ極近接した部落間に顕著な差のあることは既に述 べたが,地方的にみても離島(五島)J西彼杵半島, 島原半島及び長崎市の山間部落等によって環頃的に
も或ほ投資状況も多少異なるよう・に思われたので, 長崎県下で調査した地域を5区に分けて吟味してみ ると第7表の通りであって,感染の量的ばかり.でな く質的にも可成りに異な,?ていることが襲われる・
1474
I. ■・ ̲
大∴ 鳥
又?豹・20cm申の搾血をした5部落での平均仔虫 められ,一部落によって感染董に差のあることがわか 数を比較すると第8表に示し.たように有意の差が認 る.
、 、 ・.
Table 7‑ Incidence of丘Iarial infection at 'different districts in Nagasaki prefecture ‑
Tolal infection No.
W・(+),C.s・ ‑)│Mf‑(+ォ,C.s。(+)IMf。(‑),C.s.(+)
N・?: :
451 ∫ District
No・
※
3 Simabara peninsula
CA Stage〕
No.
CB Stag占 (̲C Stage)
No. No.
0 0
●0
19
0 0.0
4&6 Goto‑Fukue island 211 9・00
5・95
1・90
3.27 4
ll
17 3.77 17 3・77
20・85
18.45 9.95
9.23
21 m
8‑19 Goto‑ Naka¢ori
island二.
30.‑36 msisonogi peninsula
336 20 31 62
755 45 5.96 13 1.72 28. 3.71 86 11・39
38 Oyama vi一lage
Nagasaki city Total Nagasaki
‑ pre f∝ture
38 0 0.0 1 2.63 5 13・16 6 15.79
1791 4.69 29 】・62 102
a
5・70 215
※ The number苧represent the same numbers given to the villa芦es in Table l・
Table 8‑ Differene between the average number of microfilariae for the subjects found a† di庁erent villages
Village
RTTmle完il
Infecliorl rate
Mf・(+) C.s・(+)
No. Mf・
carrier
No. Mf. ・per subjecし per thick films
由 Max。
妻
Mean
RemarlくS
8&12
36 11&19
35;
34
12・】2 19・20 12・16 5.02 3・96
・ l l
7.58 8・00 5・41 3.86 0・0
亡 3 r
* [
>
. C O T t
<
2 1
‑ 2 21 1
1
1
co*Mr‑161
2 ′.4
nU 7 1
5 1 7
●
・
i n o I D 1 1
6
∩
>
4
∩
>
・
5 3
※ : Among the means, by the ana一ysis of va血‑ce, sigm丘cant d享fference is attained at 5 per cent level・
病型の年令的推移並びに遷座の地域差についての考察 第3表に示されている年令層を通じて見た時の無
症状仔虫保有率J有症仔虫保有率及び右症仔虫非保 有率,即ち4・69^, 1.62%及び5.70^を著者の調査 した地方での平均的な値,或は標準とみな・しク これ
‑・らを夫々100としてJこれに対する名年令層での′
夫々の百分率の比率を計算してA, B及びCとし,
「 頒
」
12.00
この・3点を結び付けて作図すると第2図となる・こ の図は林(1955)の着想になる病型図の概念を著者 の調査結果の解析に導入したものであって,この図 に現われた色々の型の折線から標準と比較した時の 各年令層での感染の質的な関係を知ることが出来る.
即ち,年少者層でほA・のみ高く左上から右下へ直線
西九州に於けるバンクロフト糸状虫症の浸浬並びに蚊族の自然感染に関する研究 1475
Fig.2・Sequence ofinfection by age group
Agegroup
㈹0 馴9 20−2?〕0・39 跡49 50−59 引ト
300
ZOO
100
0
』
「「 ̄i
A B C A B C A BC A B C A B C A B C
Fig.3・Endemicity at different districts inNagasakiprefecture
Localitヅ
30_36 8_19 ム&6 38 3
100
「 一T
A B C A B C A B C A B C A BC
The points(A,B and C)in the abovefigures are given dividing the percentage value for each stageofeachagegroup(table3)ordistriムt(table7)bythetotalpercentage valueforeach stage and centuplicting the quotient,SO aSlhe former couldbecomparable against thelatter considering
thelatterasastandardvalueforthe wholeareas examined.Where:Astage;mi(+),C.S・(−),
Bstage;mf(+),C.S.(+),C stage;mf(⊥),C.S.(+).
的な下降がみられ,症状が発現してくる年令層でほ 中央の高い山型の折線が,やがてA及びBよりもC の高い折線が夕景後にほCのみ高くク 左下から右上 へ直線的に上昇する折線が得られる筈である.然し 実際には部落による浸浬度の相違或ほ個人差があり,
更に未調査では,しばしば言及したように有症老の 調査が,特に女子の場合には極めて正確には行われ
′/
ていないので,折線が山型になるか谷塾になるかの 時期的関係についてほ必ヂしも理論的に鱒いってい ないが,第2図をみると大体に於ては左上から右下 への下降塾,即ち,新感染型から山型又は谷型を経て′
高令層となるにつれて左下から右上への上昇型,即 ち,旧感染型を京している有様がよく了解される.
次に上記と同一の標準を100とした時の地方別の 比率を同様に求めて作図したのが第3図である・こ の図塾からほ浸浬の新旧即ちJ清澄な感染が起りつ つあるか,或は古くは清澄に感染を起していたが頭 声は感準葺が降下して雫ている吠態,琴には不調彗
をなした範囲内での浸淫の度合等を窺い知ることが−
できるように思われる.このような見方からすればJ 西彼杵半島全体として(実際には全体でなく若干部 落に於て,例えば天久保部落一第2表No・36一 などは,この好例だと思われる)ほ感染が清澄に起 っているようであり,五島では締高い)しかし落着 いた浸浬状況にあることを思わしめる.大山部落でノ ほ感染の機会が急激に減じて来ていることがうかが われる.実際,大山部落は古くから陰垂水圧)象皮 病患者の多いことで有名であった所であるが,甥在 では仔虫保有者が急激に減少している・木部落は,
長崎相方の浸淫地が殆んど海岸或ほ海岸近くにある のに反してJ山間に孤立した貧村で最近ようやく電 灯がついた民度の低い所であるので非常な興味を持 って課査をしたが仔虫保有者が極めて少なくなって いる.何故感染革が減じて来たかについてほ今の所 不明である, 、
島原半島はもとも享準撃度の比殴的厚い地方であ
1476 大 島
ったがJそれでも老人間には象皮病の散発的な存在 が記憶されており,・一′瀬等(1949)ほ1%の仔虫保 有者を証明しているが今回の調査では仔虫保有者は 皆無であり有症者も僅少であった・
1
線
1
1)著者ほ昭和26年から29年迄,糸状虫症 の伝搬に関わる蚊族の生態並びに自然感染の 調査を長崎県下及び熊本県天草部下の延38部 落で行ったがこれに先だって,戎ほこれと平 行して,その内の23部落では著者自ら浸淫調 奄を行い被検者1791名中の仔虫保有者,有症 仔虫保有者及び有症仔虫非保有者を調べた.
本報告ほ著者の調査した諸部落に於ける浸淫 状況についての成績を整理したものである・
2)感染状況を年令的にみると,9才以下 のものにほ感染者ほいなかった.10才代でほ 殆んど仔虫のみ保有しているが20才代になる と症状を硯わしてくるものも多くなり,これ らの年令層のものが共に蚊への感染源として 最重大の意味を持つ.jo才代で示ま各率と・も低 くなっている.これは戦争による人口移動と 関係があるのではないかと思われるが詳細は 不明である・これより高令となるに従って症 状のみを具有して仔虫の証明できないものが 多くなるが著者の成績では50才代にもう一度 蚊への感染源として注目塵ねばならない時期
がみられる.
3)各年令層問の平均仔虫保有数を比較す ると有意差があって30−39年層迄は年令の進 むにつれて感染の重積が起って仔虫数を増す が,更に高令となると感染免疫のために仔虫 保有数は逆に減少を始めるものと考えられる・
4)調査人員1791名中の準症状仔虫保有率,
有症仔虫保有率及び有症仔虫非保有率を著者 の寓査した範静内での一応の規準として,こ れを100とした時の各年令層での上の3者の 比率をA,B及びCとし,この3点を各年令 層毎に結び付けると感染型の年令的推移をみ ることが出来る.これによると弱年層でほ左 上から右下への下降折線を,中年層では叫形
以上のように全般的にほ感染の陳旧型或ほ感染量 の低下が考えられている西九州地方にも局部的には 筒沼礎な感染が起っていると考えられることは注目 に値することである.
括
か谷形の折線を,老年層に進むにつれて左下 から右上へ上昇する折線を得るものと思われ るが調査の結果は大体これと平行した関係に あることがわかった.
5)男女別に感染率を比較すると男子に高 く,その理由としてこの地方の青年団員が4
−6名ずつ所謂青年宿で防蚊的立場からは極 めて危険な状態で寝泊りする習慣のある事が 挙げられる・男女間の平均仔虫保有者数を比 較すると男子に多い様に見えるが有意差は認 められない・例数を増せば有意差が認められ て男子に感染の機会が多く,従って重複感染 が起って仔虫数の増加をきたす事情が明らか になるのでほないかとも思うが,男女間の感 染率を左石すると思われる凶子ほ他にも色々 考えられるので結論を急ぐ事ほ危険のようで もある.然し少くとも戎部落では例えば青年 宿に垣泊りする習慣が非常に厳格(防蚊的な 意味でではない)な所では男女間に明らかな 差があるように思う・
6)調査した諸部落を島原半島,五島南部,
五島北部,西彼杵半島,大山部落等の5地方 に分けてみると地方的に授産状態の甚しく異 なっていることがわかる.叉,部落毎に平均 仔虫数を比較すると有意差が認められ,感染 率の高い部落でほ大である傾向があるようで ある.今これらの5地方での浸浬状況を比較 するために全調査地域内での無症状仔虫保有 率,有症仔虫保有率及び有症仔虫非保有率を 夫々▲100とした時の各地方毎のこれらの他の 比率をA,B及びCとして作図する・と西彼 杵半島では折線は左上から右下へ下降して現 在も活萬な感染が起っている事を暗示し,五 島でほ比較的高度な然し落着いた状態にあり,
大山では感染量が現在春激に減少しており′−
西九州に於けるバンク占フ‥ト糸状虫症の漫淫並びに蚊族の自然感染に関する研究 1477 島原(片田)でほ近年感染ほ全く起っていな
いことが推測される・かように調香した地方 全体としては感染量は減少しているように思
文 1)林 滋生J佐々學,加納六郎,.佐藤牽慈:∧
丈小島のフィラリア病の研究(第2朝)マレイ糸状 虫の発見,疫学的調査ならびにへト,ラザン製剤によ
る治療成績.日新医学38(1)‥19−22,1951.
2)林 滋生;人畜フィラリア症の病原虫とその 疫学について・日新医学 42(1);1−12〉1955.
3)一ノ瀬健吾:BancTOrt糸状虫症に関する研究・
長崎医会詩。21(9):854一871,1943. 4)一 ノ瀬健吾,片峰大助:長崎県鳥原半島住民に於け る糸状虫感染状況に就いて.風土病研究,学術研究会 読特別委員会報告・】949(74一75). 5)1yengar,
M.0・T.:Dislribution of FilariE)Sisin the South Pacific Region・N9ume?..1954・.6)片時大助)
山崎蔓蕎,青田卯太郭‥ 長崎県下離島に於けるフ ィラリア漫淫状況とその臨床的圃察.長崎医会詩・
27(4)‥185一194,1952・ ・7)片嘩大助:
バンクロフト糸状虫症の病態・臨林と研究 31(5)
;36−42,1954・ 3)片峰大助,他:長崎県 に於ける糸状虫浸浬状況痴査報告(茸).長崎医会 詩.29(12):887−889,1954. 9)地村精一,
片峯大助‥ 糸状虫症(フィラリア症).寄生虫学
われるが,部掛こよっては簡約撥な感染が起 っていると考えねばならない事は注目に伍す
ることである.
献
雑誌 3(1):】3−20,1954. 10)森口義春:
バンクロフト糸状虫症の臨床的研究補遺(その・一:
天草大江村に於ける糸状虫症に就いて).:長崎医 会誌.28′9);964−971,1953・11)森下薫囁
;最新寄生虫病学Ⅷ.糸状虫症・医学書院,東京.
1953・ 12)Poynton,J・0・&E・P・Ⅱ0由kin
:.Endemic Filariasisin,the Federated Ma]ay States.
Kuala Lumpur,1938.13)Sasa,M・et al・:
Studies on FilaTiasis due to 『払Cゐerer孟α mαZαγl
(73rug,】927)Djseovered from Hnchijo−Koshima
Is】and,Japan.Jnp・Jour.Exp− Med.22(4)‥
357−390,1952. 14)佐藤∧郭,他:南九州 沿岸雛鳥のフィーラリア症にらいて(第二報)二鹿児 島賀紀要。2(2):20−24,1950. 15).佐藤
∧郭;フィラリア症。医学書院,東京.】95芦ト 16)佐藤∧部,他:_フィラリア症に、関する研究
(第7報).鹿児島医鱒象5(3=」−ナ4);12・19,lp54・
17)SouthPaci丘c Commission:Fil,ari?Sisinthe South Pacific.mIoummlea.1953. 18)South Pa−
ci£c Commission:A叩Otated 甘bliogTaphy of Fil叩iasis and Elephantiasis・Noumea・1954・
(昭30・6・20受付)