消費者選択理論 と美術 品需要
山 下 隆 之
目次
I.序
Ⅱ。経済財 としての美術品
Ⅲ.美術品の最適選択
Ⅳ.美術 品の需要 と不確実性
V.結び 付録
I.序
芸術家や美術品収集家の多 くは「経済学 よりも哲学 よりも芸術の方をはるか に意義がある」と信 じているに違いない1ヽ しか し,世界各地の美術館の収納品 の全評価額は世界のGNPを超 えるとみられているし2、 我が国でも美術市場の 年間の取引額は2000億 円にはのぼると推定されているの。国際的なオークショ ン(auction)での日本企業による数十億円の落札価格がニュースになることも しばしばである。
美術 (art)の制作の目的は,人間的完成 という人格的なものと,美的表現 と
り H・ リー ド(1990),188ページ。
a 岩崎善 四郎 (1988), 34ページ。
0瀬 木 慎 ― (1987), 18ページ。
(158) θθ
法経研究 (1995年
いう技術的な もの との一致 をめざす完全 (絶対)追及の所産であるといわれ る。
しか し,制作,売買,その利用な ど一一美術 に関す る活動 は,いずれ も「選択」
を伴 った経済行動であ り,需給分析や効用最大化 な どの ミクロ経済学の手法 を 使 って説明す ることが可能である。本稿では,美術品の芸術的な価値が消費者 理論の中で どのように意味付 けられるかを考察 したい。
第 Ⅱ節では,美術品の経済財 としての特性 を検討す る。第Ⅲ節で は,美術 品 の特性 (品質)を考慮 した場合 に,需要関数が どの ように導かれるかをスルツ キー方程式 を巡 って考察する。第Ⅳ節では,美術品市場 に特有 な情報の非対称 性の問題 とその結果 について考 える。
Ⅱ。経済財 と しての美術 品
美術 は芸術である。それを評価す る尺度 は「美」であるが,現実 には高額で 売買 され ることが作品や作者の価値 となる。 この点で,経済的な価値 は美術品 の価値の決定的な尺度 となっている。美的価値 と値段が最 もはっきりと一致す るのは,重要な絵画がオークションにかけられた時である。美術品が流通す る 場 として美術市場が形成 されて,一定 の相場が立 っているのであるか ら,美術 品の取 り引 きを経済学の需給分析の観点か らとらえることは可能である。
おおよそ美術品ほど精神的観点か ら複雑 に論 じられているものはないであろ う。 しか し,一般的にいって,絵画 を購入す る目的 もしくは動機 は,二つに大 男Jすることがで きる。
(A)観賞
芸術の本質 は美である。美術本来の性質か らす ると,観賞用の購入が基本的 かつ主要な目的であるはずである。観賞す ることにより,情緒 を高め,精神 を 安定 させ,文化の向上がはか られ る。室内の装飾用 としての購入 も少な くない であろう。 しか し,美術 品取引において,純然た る観賞 目的の購入 はご く一部 に限 られているとみ られているようである。
(B)贈 与
贈与 は,と りわけ日本 に特有の動機であろう。多分 に伝統的な商行為の中で
∂イ (157)
は,美術品 (特に日本画)が高級 な贈答品 として選 ばれ る場合が少な くない と いわれている4ゝ
(C)投 資
そ もそ も,美術収集のために費や され る金 は,経済的な余剰 であろう。余剰 はふつ う貯蓄 され るか投資 に向けられ るが,そこで,不動産,株式,商品,貴
金属 などと共 に,美術品 に目が向けられる。大量生産や再生産がで きないため に希少性があ り,かつ国際的な市場性 がある美術品は,確実 に値上が りの期待 で きる資産 となる。投資の対象 としての美術品は,儲けの大 きな投機的な商品 とい うよ りは,儲けは少ないけれ どもリスクの少ない商品である。なぜならば,
価格が非公開に安定的 に保持 され ることが多 く,売買 に際 しては当事者 の名前 を必ず しも明 らかにする必要のない美術品の特性が,安心で きる投資対象 とし て魅力的だか らである。美術愛好家か どうかはともか く,投機 の対象 として美 術品を入手 したい人々がいるのである。J.E.Stein(1977)に よれば,1946年か ら 1968年にか けて の ア メ リカ の絵 画 の幾何 平均 に よ る年平 均価格 上昇率 は 10.47%であった。W.J.Baurn01(1986)は,1652年か ら1952年の期間に関 して, 物価水準 を調整 した後 に0.55%と い う絵画の低 い年平均価格上昇率 を計算 し ている。Steinも Baunlolも ,長期的 には美術品の価格が上昇 してきた ことと,
その価格上昇率が同時期の株式や債券の金利水準 を上回 らない点では意見が一 致 してい る。
さて,美術品の収集活動 は,古くルネサ ンス時代 か ら始 まるといわれ るが,
売買や流通 を通 じて美術品の希少価値・ 市場価値 はよリー層高め られ る。美術 品の もつ経済的な側面 に関 しては,従来 よ り,次の ような点が指摘 されてきた。
(1)美術品 は上級財 (superior goods)で ある。
美術品は贅沢品である。たいていの人 は美術品 を買 うに相応 しい社会的地位 と経済力 をもった ときに美術品を集 める。つまり,「金持 ち」ほど多 く買 う。 そ して,収入が変化す ると人々の趣味への投資額 も変化す る´か ら,美術作品の陳
→ 瀬木慎―,同上,42ページ。
(156) ∂J
法経研究 (1995年
腐化す る速度 も,また,買手の所得水準 に左右 される5L
(2)美術品 は価値財 (merit goods)である。
美術 を普及 させている人達 は,美術 に高い優先度 を与 えるよう大衆の好 みを 変 えたい と考 えている。芸術 は必須の教養であ り°
,接する機会 を増やすべ きだ とい う。修学旅行 な どで,学校の生徒たちが教師 に引率 されて,一団 となって 美術館 を巡 っているのはそのためである。 これは美術への公的助成の理 由付 け
にしばしばみ られ る解釈である。
(3)美術品 は経験財 (experience goods)的な面 を持 ち合せ る。
美術への関心 は,経験や教育や学習があつて初 めて培われる性質の ものであ る。経済学ふ うにいえば,美術観賞 には趣味への投資,言い換 えれば時間 と教 育が必要 ということになる。 もしも,美術 に関心のある人が比較的少数 に限 ら れているな らば,それは,趣味 あるいは学習への投資 をする人が ほんの少 しの 人 に限 られているのが理 由の一 つであ り,また その投資が ほんの少 しの人 に
とって しか価値がないか らである。
(4)美術品は耐久消費財 (consurner duraЫe goods)である。
一部の美術品は物理的に存在する限 り効用 を生みだすが,ほとん どの美術品 は物理的にな くなる以前 に関心が薄れ,忘れ られ,見捨て られ,誰に対 して も
効用 を生みださな くなる。需要が無 くなった ら,ほんの短期間に,ほとん どの 美術品の金銭的価値 ばか りか美的価値 も含 めて価値がゼロになるのである。
(5)美術品 は実物資産 (real assets)で ある。
美術か ら満足,つまり効用 を得ている人が比較的少数であるとす るな らば,
財産 としての所有欲や利殖の 目的 は,美術品の需要 を喚起 する目的 として重要 である。美術品は金融商品への投資 と違 って,商品その ものが金利 や配 当を生 む ことがな く,土地の利用 と違 って持 っているだけで収益 を生む ことも難 しい。
しか し,長い間保有することで,よい ものは確実に値上が りし続 ける。いわゆ る「財テク商品」 として好 まれ るのが この点である。
5)woD・ グランプ (1991),154ペ ージ。
θδ (155)
(6)美術品 は流行品 (fashion goods)で ある。
美術品の価値 を決定す るのは,作者の能力 は別 として,主として美術商 と収 集家である。 しか し,それだけではな く,批評家,ジャーナ リス ト,学者,識
者,観衆 の意見が,絶えず価値判断に反映 し,それがかな りの作用 をす る。多 くの人々が欲 しがれば,作品数に限度のある作品は希少性が ます ます高 まり,
値段 も上が る。 しか し,流行の移 り変 りは早 く,市場 の需給 に変動 を起 こし,
美術品の市場価値 も変動す る。
本節での検討 をもとにして,以下,美術品 に対 する消費者行動 を考 える。
Ⅲ.美術 品 の最適選択
人々が美術品 を欲 しが る理 由は,それ に「美 を感 じる」か らであるはずだが,
それだけでは十分な理由 とはいえないであろう。 とい うのは,何が「美」であ るかは,人によって違 うか らである。また,観賞の対象が違 えば,同じ人であっ て も美の意味するところは違 って くる。「美」は作品のはっきりとした特性 とは いえないようである。美の認識 に関 しては美学(aesthetics)の研究領域 であ り,
そこでは多面的・ 細分化的に展開 されていることもあって,統一的解釈 を得 る ことは難 しい。しか し,一般の財 とは違 う美術品の需要行動 を分析す るのには,
以下の点 に注 目すれば十分であろう。
(1)独自性
美術品 を商品一般 と完全 に同一視す ることがで きないのは,美術品に基本的 に含 まれ,それが ゆえに成 り立 っている「芸術」の要素が,美術 品 を特殊 な商 品 としているか らである。芸術 の重要な特殊性 は,その価値判断が主観的で個 別的 にな りやす く,すべての人々の一致 した賛成が得 られるのは,ごくまれ に
しかない ことである。
(2願 同性
芸術 としての美術品の価値が創造性 にあ り,それ は独 自性 によって生みださ れ るとい う美学的原則 とは正反対 に,美術商品の特性 は大多数の合意 に呼応す る共通性 もしくは類同性 を表現上 に持 っていなければな らない。それ こそが,
(154) θ′
法経研究
市場 において,需要を高め,作品の経済的価値 を増幅 しうる要素 となっている。
(3)不確実性
美術品市場の際立 った特徴 に不確実性がある。買い手や売 り手,画商,競売 会社が情報の収集や公開を絶 えず行 っているの も,価格やア トリビュー ション (attribution)な どの不確実性 を少 しで も減 らそうとしているためである。不 確実性の要因の うちで,ア トリビュー ション (誰が制作 したかを鑑定 し決 める こと)は美術品独特の もので,その美的・ 歴史的価値や価格 に対する影響 も大 きい と考 えられている。美術品市場 の供給サイ ドも需要サイ ドもこの不確実性 に直面 しているわけであるが,情報の保有の非対称性が指摘 され ることも多い。
非対称性 は,G.Mossetto(1993)による と,芸術の創造性 (creati宙ty)と解釈
(interpretation)の 問題 か ら生 じる。美術 の勉強や鑑定のために,美術市場 を 取 りし切 っている美術商や競売業者 と同 じ位 のコス トをかけられる買い手 はあ
まりいないのである。
ところで,美術品 も含 めてひろ く「文化」の消費 については,経済学で「ヴェ ブレン効果J(Veblenesque effect)や「 スノップ効果」(snOb effect),「デモ ンス トレーション効果」(demonstration effect)と 呼ばれ る性質がみ られ るこ とが しばしば指摘 されている。いずれの効果であって も,美術品はその美的特 性 (あるいは品質)に一定の水準 を要求 され る商品 となる。 そして,高品質の 商品の価格が一般 に高 くな りがちであることは現実の市場 でみ られ る現象であ るし,新古典派の生産理論 において もしばしば用い られている仮説である。以 下,本節では,美術品の美的な品質 と価格 との関連 を,消費選択理論の観点か
ら検討す る。
まず,効用関数 を導 くために,以下 の仮定 をお く。
(A.1)ユー ク リッド空 間 の非 負 象 限 の財 空 間 R隼=(幌,物)1埼≧0,場≧
0}の上で,完備性,推移性1連続性の性質 を満足す る選好関係 》 が 成立す る。
(A.2)(/1,″6)卜(■,ぁ)であれ ば 1/7(/1,尾 )≧ υ(埼,物)であ る実 数値
∂∂ (153)
の効用関数 U(xl,x2)(群 が存在す る。また,効用関数 は2次の導関 数 U″,i,j=1,2を もつ。
(A.3)限界効用は じ(z2・,り>0,グ,ノ=1,2を満たしている。
(A.4)財グの品質を示すパラメータを らとする。″ ≧ ら であれば υ(島 ,ら ,ら′
,ら)≧ υ(島 ,ら ,o,ら)である。
(A.4)は美的品質に対する消費者の趣味(taste)を示 している。美術品の売買 には,それを美的な対象 として眺める観客 (消費者)が存在 し,かれ らがそれ
を美的な質の高さゆえに賞賛 し始めることが必要なのである。美学の確立を,
美学的判断を趣味判断に求めた哲学者 I.Kantの 業績 に求めるのは通説のよう である。 しかし,この「趣味」あるいは「好み」の問題は,従来,消費者行動 の理論にあっては所与のものとして扱われてきた問題であり,近代経済学の分 析の守備範囲ではなかった。 ここでは,この課題 を美術品の消費量 と品質に依 存する効用関数をもちいて次のように設定する。
(1) υ(幼,均,a∽1),の(2))
θc[′,♂ ],0≦コ<夕 であり,予算制約を Aム 十九物=%と する。制約付最 大化の必要十分条件が満たされるとき(付録のAを参照のこと),この効用関数 から導出される美術品の需要関数 ムのスルツキー方程式は次の様になる (付録 のBを参照のこと)0。
② 新
=新lυ=フー ム 協十 二 七 ′ 堕協
需要曲線の傾 きを知 るには,右辺の最後の項 を調べなければならない。仮定 (A.4)よ りaυ/aθ>oでぁるが,価格 と品質 との関係を示す θ01)に 関しては, 上述のように一般に値段が高価なものは良い品質 に対応 していると考 えられ
る。高価であることの理由は,良い品質 を生産するにはそれだけ費用がかか るからである。そこで,品質を生産するための費用関数を ρ=C(θ)≧0で表
6)(2)式は,P.J.Kalman(1968)の Ceneralized Slutsky Equationのバ リエーションになる。
(152) θθ
法経研究 (1995年)
し,次の仮定 をお くことがで きるつ。
(A.5) (i) C′>0, C″>0 ∀ θc[ョ ,′ ] (二)litt ε′=∞
(A.5)か ら改めて θ軌)を定義すれば θ∽)=C 1∽)
ら>o,app<0
/ar O≦夕≦C(θ )
となる。価格 は品質 に関する情報 を伝達 し,市場 における経済主体 の行動 に影 響す る。
もしも,価格の変化が品質へ影響 を与 えないのであれば(ら=0),通常のスル ツキー方程式 を得 る。 しか し,(A.5)の仮定の もとでは(ら≠0),次の様 な屈折 需要曲線 を描 くであろう。
図1
美術品の値段が高価 であることに関 しては,情報の非対称性や (我が国では 特 に顕著 な)非公開の競売 を原因 とす る寡 占的価格設定が指摘 されている。 し か し,独占力か らではな く,品質 に関す る消費者の需要行動か らも説明できる
η この仮定 はM.Nermuth(1982),Chap。 7の分析 を参考 にしている。 この箇所 に,美術品市場 の 不確実性が存在す ると考 えることもで きよう。その場合,aθ/物の符号 は一概 に定 まらな くなる。
θθ (151)
のである。
Ⅳ.美術 品の需要 と不確 実性
美術の取引では情報が重要 な役割 をはた している8、 美術品市場 における情 報の非対称性 の問題 は,美的価値や品質 に関 しての情報が買い手 よりも売 り手 の方によ く知 られていることである。売 り手 と買い手 との間の情報の非対称性 は,公開のオークションが少ない日本では大 きいと考えられる。 もつとも,一
般にオークションを使用する動機についても,それが非対称情報契約の背景に ある動機 と似ていることは指摘されている9。 逆選抜 (adverse selection)と し て知 られている,こ うした非対称性の問題を検討 しよう。
いま,売り手のみが美術品 ″の品質 θの真の値を知ってお り,買い手 (消費 者)は知 らない。売買の契約を選択するのは買い手であるとしよう。密度/(θ) が θ=[ョ ,♂ ]上で厳密に正の,θ値 に関する買い手の主観的分布 をF(θ) とする。買い手の効用最大化問題は,この私的価値に基づいて期待効用を最大 化する美術品 χ(θ)の経路をみつけることである。
maX/び
し
,2,の″
(の s.′。 身=G(″,θ)一″″+Z≦ %
ここで,通常の財 をzと し,その価格 は 1と している。G(″,θ)は美術品の需要 動機 を示 している。美的品質 θの高 さがわかれば動機 は高 まる。 また,美術品 を欲 しい と思 う動機,あるいは「趣味の良 さ」 というものは,消費経験の積 み 重ねか らくるものである。美術 に触れ る経験が多いほ ど購入意欲 は高 まる。 し たが って,G(χ,θ)には,
た とえば,美術品の購入 を勧 めている美術入門書等で も,美術品収集の前 に情報の収集 を強 く勧 め ているものが少 な くない。
E.Rasmusen(1994),p.293.
(3)
(150)″
法経研究43巻 (1995年)
Q>0, Gθ>0
Cα<0, G″<0, これ>0
を仮定することとする。(3)式の問題の答えは,制御理論 をもちいることで得る ことができる。zを制御変数 としたハ ミル トニアンにおいて,もしも%(0)が″ とzに関して厳密に凹ならば,最適化のための必要十分条件がポントリャーギ ンの原理によって導かれる。それらを解 くことで,
に)
彗 目
=タ
0
身=αムの‑7
を得 る0。 0式か ら0<霧<1のとき,明ら力■こ″の需要 に対 してG←)はプ ラスの効果 を持 っているがわか る (図2)。
D″ =携卜0の条件であれば,
(incentive compatibility)
″ (149)
それ は売 り手 に とって はイ ンセ ンティプ・ コンパ ティビ リティー 条件 にな りうるものである。
そして,(4)式の需要の関係 を D(θ),(5)式の制約条件 をG(θ)と して表 したのが 図3である。右上が りの両曲線 の交点の うち,局所的な安定的な均衡 は交点4,
Cで得 られ る。
価格 夕の低下 は '(θ
)の左上方へのシフ ト,上昇 は右下方向へのシフ トを も た らす。価格 の変化 に対応す る需要量の組合わせ を価格 一需要量の平面 に とっ たのが図4であ り,複数の均衡点や不連続 な需給の均衡 を招 く,S字型の需要
関数 (曲線DD)を得 る。
(148) ′θ
法経研究 (1995年)
V.結び
以上,美術品に対す る消費者行動 を ミクロ経済学の視点か ら分析 してきた。
芸術活動の経済分析 は,近年 になって着手 され始めた研究分野であ り,残され た研究課題 は多い11ヽ しか も,美術品の特性 を吟味 してみると,標準的な新古典 派の消費者理論では残 されていた諸点の検討が関わっていることがわか る。 さ
らに研究 を重ねたい と考 えている。
本稿で考察 した問題 は,次のように要約 され る。
(1価格 を媒介 にした情報伝達のある効用最大化モデルでは,屈折需要曲線が導 かれる。
(2脂報の非対称性 とシグナ リングを考慮 した効用最大化モデルでは,需要関数 がS字型 を描 く。
(1)に関連 しては,よ く言われ るような美術市場の少数寡 占的体質 を想定 しな くて も,美術品 としての需要のされ方ゆえに価格が硬直的になる点 を示唆 した。
しか し,美術市場 の実際 は完全競争が行われ る市場ではないであろう。美術作 品には同 じものがないのである。一般的 には,美術商が購買者 を先導す る。多 くの場合,美術商 と購買者の利害 は一致す るか もしれない。そ もそ も,美術市 場 は狭い範囲の消費者 を対象 とした市場であ り,そこで芸術的,文化的評価 と
は無縁な,閉鎖性の強い価格決定がお こなわれ るとして も不思議 はない。実際,
美術市場で は,美術商 と購買者 との合意 に基づ く価格 の維持 と上昇 のための 様 々な方策がなされているようである。「収集家市場」ではな くて,「投資家市 場」 とみなされている日本の美術市場 にあっては,特にその傾向が強 く,その ために価格の水準が欧米の水準 を凌いでいると指摘 されている。美術市場 の寡 占的性格の研究 も今後の課題 となろう。 (1994年 11月 10日)
lD 芸術活動や文化活動への経済学の応用の動向に関 しては,R.Towes&A.Khakee(1992)が詳 し
い 。
′イ (147)
1付 録
A.最大化の十分条件
(幼,物)が び(ム,場,a,2)を最大化する効用最大化の十分条件 は
襲伍,場 ,■,a)―ルゴ=o ′=1,2
夕1鍋+九毛一″=0
と
降辞
Q降盗 平 ト
が成立することである。仮定 (A.3)の もとでは,たとえば限界代替率が逓減するときに この条件 は満 た されてい る。
B.スル ツキー方程式 の導出
効 用最大化 の1階の条件 は次 の ような形 にな る。
∂υ(幼,物,aユ̲.pl=o
銘
∂υ(幼,ぁ,a塑 ̲Ap2=0
%
Aム十九物一%=0
ここで,λ はラグランジュ乗数である。 これ を,1について微分 し,行列式 の形 に書 き
直 す と次 の ようになる。
(146)″
(1995年)
λ―aap
0
rl
クラーメルの公式をもちいて,arl々れ について解けば
計λ 甲 協 甲 九 a岬
となる。ただし,″は縁付 きヘシアンの行列式である。1階の条件 に戻 り,こん どは
%について微分すると
a2 夕1
1/22 九 一九 〇
を得 る。 したがって
協 =―
甲
これを上で導出 した ar1/″1の方程式へ代入すると,スルツキー方程式の所得効果 の部分が得 られる。代替効果 を導出するためには,支出最小化問題 を設定 して計算す る必要があるが,計算の結果得 られる式は上の方程式の代替項 に等 しい。 また,効用 を一定 とした とき,あ=0と 物 =A島+九あ となることか ら,最後の項が求 まる。
′δ (145)
銘一 錫銭 一鉱 銚一 麟 つ つ 0 仇 陽 れ 佑 鴫 ラ
銘一物錫一物飢一物
佑 め
﹁
0
〇 一
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θθ (143)