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109 

総 合 都 市 研 究 第 却 号 1983

現地踏査・ヒヤリングに基づく 地震動の強さと木造住家の被害状況

望月利男*・荏本孝久 ・松田磐余***

要 約

1983526日に発生した日本海中部地震 (M7. 7)においては,液状化現象による諸 施設の被害が多く発生した。一方,墓石調査あるいは通信アンケート調査方式による各地 の地震動の強さの分布が報告されている。本稿では,木造住家の被害に着目し,墓石調査 による地震動の強さが比較的大きく推定され,かつ液状化現象による直接的な被害が建物 に影響しなかったと考えられる,主に青森県内の約20地点および秋田県能代市の液状化集 中地域において,地震後に現地踏査ならびにヒヤリングによるアンケート調査を実施し,

地震動の強さと木造住家の被害ならひ'に家具等の被害についての検討を行ったので報告す

はじめに

1983526日に発生した秋田県能代市西方に 震源をもっM7.7日本海中部地震は,秋田県秋田 市から青森県むつ市に至る広範囲な地域に被害を もたらした。特に秋田県では若美町,能代市,男 鹿市,八森町,八竜町,秋田市,昭和町,井川町,

山本町の36町に,また青森県では鯵ケ沢町,

車力村,木造町,深浦町の31村において災害 救助法が適用された。筆者らは,地震直後に被害 調査ならびに墓石調査を実施し,地震動の強さの 分布について検討を実施し,主に青森県内で比較 的地震動の強さが大きい地区で,かつまた住家に 直接液状化に結ひ'つくような現象が見られない地 区(以後,非液状化地区という)において墓地周

‑福井工業大学建設工学科 .・神奈川大学工学部

・東京都立大学理学部・都市研究センター

辺の住家についてその後ヒヤリングによるアン ケート調査を実施した。また,秋田県能代市にお いては,液状化集中地域を中心として同様にアン ケート調査を実施した。これらの調査によって,

木造住家の被害の実態ならびに家具等の被害状況 について考察するとともに,液状化地域と非液状 化地域における木造住家の被害程度の差異および 地震動特性の相違について検討を行った。

調査方法

アンケート調査は82‑8月20日にかけて 36名で実施した。

調査地点を図ー 1に示す。(図中の番号は墓石 調査の調査地点番号に一致する。)青森県を中心 としたアンケート調査は合計21地点で 1地点あ

(2)

110  総 合 都 市 研 究 第20

‑1 調査地点位置図

たり約10‑20件で、合計約350件の木造住家に対し て調査を行った。一方,秋田県能代市の液状化集 中地域においては,約760件のアンケート調査を 実施した。調査は各調査員が各住家の住人に対面 してヒヤリング形式で実施し,調査内容は以下の 項目とした。

1.住所・氏名 2.用途 3.建築年代 4.階数

5.延坪数 6.構造 7.基礎形式 8.尾根材

9.判定(被害規模) 10.被害の実態

11.建物および周辺の被害状況 12.復旧費

13.被害発生状況 14.家具の転倒 15.人間行動

調査結果

3‑1  調査項目の集計結果

秋田,青森県における各調査地点での調査項目 の単純な集計結果を図‑(‑2以下の図はす べて末尾にある)に示す。

その結果,各調査地点ともに共通して建物用途 は多くが専用住家であり,建築年代は35‑44年お よび昭和45年以降の建物が多い。また,延坪数は 41坪以上で2階建の木造住家が多く,基礎形式が コンクリート布基礎,屋根材は金属(トタン)の ものである。

一方,秋田県能代市の調査結果を図‑ 3に示す が,能代市では各住家の被害程度が判定されてい 757棟のうち全壊が196棟,半壊が345棟,一 部損壊が146棟で,無被害が70棟である。しかし,

能代市以外の地域では被害程度に関しては明確で なく多くの建物は無被害あるいは一部損壊程度で あった。これらの判定結果に基づいて,上記各調 査項目に対して全壊,半壊,一部損壊,無被害別 分布も合せて示した。各調査項目に対する全体的 な分布傾向は前述の傾向とほぼ同様で専用住家で 昭和35年以降の建物が多く,延坪数も41坪以上で 2階建の木造住家が多く,コンクリート布基礎で 金属の屋根材の住家が圧倒的に多い。一方,これ らの調査項目に対する全壊,半壊,一部損壊,無 被害建物の比率は,どの項目においてもほぼ同様 で,その傾向は757棟のうち,全壊196棟,半壊 345棟,一部損壊146棟,無被害70棟の比率程度 (1  : 1. 76 : 0.74 : 0.36)にほぼ一致している。

このことは,能代市のような液状化集中地域にお ける被害の特徴がすべての形式の木造住家に共通 した被害を及ぼす傾向を示しているものと考えら れる。一方,被害発生状況については非液状化地 域における各調査地点において多少バラツキがあ り,傾向は異なるものの,急激あるいは60秒程度 と,比較的被害発生状況が短時間に発生したとい う傾向が見られるのに対して液状化集中地域であ る能代市においては 3分以上(180秒以上)と 比較的ゆっくりと被害が発生したと考えられる傾

(3)

望月他:現地踏査・ヒヤリングに基づく地震動の強さと木造住家の被害状況 111  向が見られる。また,復旧費においても非液状化

地域ではほとんどが0‑10万円程と復旧費が低く,

軽微な被害であったことを示している。一方,能 代市の調査では100万円以上あるいは末定の住家 被害が多く,前者と対象的であるとともに,やは り液状化集中地域における被害状況の特徴的な傾 向を表わしているものと考えられる。また,人間 行動としては,年令,性別に関係なくほとんどの 人が外へ避難するかその場で身動きできなかった

と答えている。

3‑2 調査地点の震度分布

アンケート調査を実施した住家は,各々墓石調 査を実施した墓地の周辺に分布しているため,そ れらの住家における地震動の強さは墓石調査結果 に一致するものと考えられる。

‑4には,アンケー卜調査を実施した各地点 において墓石調査から推定された最大加速度の分 布を示した。横軸の番号は調査地点の番号を示し,

図ー1の番号と対応し,かつまた墓石調査地点の 番号と対応している。最大推定加速度値の最大値 375gal程度で, No.35, No. 37NO.42地点であ り最小値は, 225 gal程度で'No.105地点である。

一方,広範囲の地域の震度分布調査については,

通信アンケー卜調査方法が用いられており,太田,

後藤らは上記方式を用いて北海道・東北地方の各 市町村における震度分布を気象庁震度階として算 定した。その結果を図‑4に示し,墓石調査結果 との比較を実施した。その結果,墓石調査による 推定最大加速度値には多少のバラツキが見られる が,震度 (S.I.)が増加するに伴い,最大加速度 値も増加する傾向が見られ,その平均的な対応関 係は調和的である。しかしながら, ]. M. A震度 階に対する最大加速度値の範囲を考えれば,その 値は墓石調査結果に基づく最大推定加速度値と一 致せず,むしろ,墓石調査結果による値の方が大

きな値を示している。

この原因は種々考えられるが 1つは震度と最 大加速度値との対応関係であり,これについては 従来より震度に対応する最大加速度値が過少に評 価されていることなども指適されている。 2つめ

は,墓石調査地点と通信アンケート調査実施地点 との地域的な相違であり,墓石調査のようにその 地点のローカルな地盤条件に極めて大きな影響を 受ける結果に対して,通信アンケート調査は,市 町村単位で代表させた震度であることに対する両 者の非対応性が考えられる。 3つめは,墓石調査 が墓石単体寸法比(巾/高さ)~という単一の物理 量で決定されるのに対して,震度は地震動に伴う 諸々の物理現象から算定されることであり墓石謂 査によるよりも地震動の強さに関する情報が多く 取り入れられるだけ相対的には地震動の振れの強

さおよび振れ方に対する精度は高いと考えられる。

逆に言えば,墓石調査による地震動の強さの評価 に対する限界が指適される。

3‑3 建物および周辺の被害状況

アンケート調査により木造建物および周辺施設 の被害状況の調査を実施した。調査内容は以下に 示す。

建物の 被害

.1.倒壊 2.一部倒壊 3.破断 4.沈下 5.傾斜 6.水平移動 7.基礎の破断 8.基礎のキレツ 9.カペキレツ 建物周辺110.塀の被害

の被害 111.ガス・水道管の破断

上記調査項目について,各調査地点における調査 棟数に対する被害発生棟数の比率で被害発生比率

を示した。結果を図ー5に示す。

一方,能代市の調査結果については判定された 全壊,半壊,一部損壊ならびに無被害別に対する 被害発生比率を算定し,図‑6に示した。

‑5より非液状化地域では,倒壊,一部倒壊,

破断というような大被害はあまり発生していない が沈下,傾斜,水平移動,基礎の破断,基礎のキ レツあるいはカベキレツ等の被害が見られた。こ れらの被害発生状況は,必ずしも震度あるいは最

(4)

112  総 合 都 市 研 究 第20 大推定加速度値の大きさとは調和的な傾向は見ら

れず,むしろ特定な地域,例えばNO.34あるいは NO.95といった地点において各傾向の被害発生比 率が高くなる傾向が認められ,特徴的な傾向を示 している。一方,能代市においては,建物および 周辺の被害発生比率は極めて大きく,非液状化地 域の建物および周辺の被害発生比率よりも高い。

特に,破断,沈下,傾斜,基礎の破断,キレツ,

カペのキレツの被害発生比率が高く,全壊と判定 された建物ほどその比率は高い。

3‑4 家具等の転倒・落下・破損の発生状況 アンケート調査により,家具等の転倒・落下・

破損状況に関する調査を実施した。調査項目は 1.タンスの転倒

2.本箱の転倒 3.テレビの転倒 4.食器棚の転倒 5.鏡台の転倒 6.電灯の落下 7.ガラスの破損 8.商品の落下 9.棚上の物品の落下 10.額の落下

11.仏壇の破損 12.食器の破損

等であり,上記の発生比率を各調査地点ごとに算 定し,図一7に示した。

また,同様の調査結果について能代市の場合を ‑8に示す。

特にタンス・テレビ等の転倒と棚上の物品の落 下・食器破損等の発生比率が高く,被害の発生比 率は建物の被害の傾向と同様に震度分布とは調和 的でなくやはり, No. 38, No. 34といった特定の地 域において高い傾向を示している。一方,能代市 の調査結果においても,タンス・テレピ転倒およ び棚上の物品落下ならびに食器破損の被害発生比 率が高いが,その比率は非液状化地域であるよう な地域の値に比べると相対的に低い傾向が見られ

復 旧 費 か ら 見 た 建 物 被 害 程 度 に つ い

一一一能代市の場合一一一

能代市においての液状化集中地域の調査棟数は,

757棟であり,そのうち全壊・半壊・一部損壊・

無被害が判定されている。この結果によれば,全 壊率は25.9%であり被害率は48.7%である。一方,

それらの判定結果に基づいて各判定別に復旧費を 建築年代別に分類して示したものが図‑9である。

図より全壊・半壊と判定された建物でもその復旧 費には極めてバラツキが見られ,特に全壊と判定 された建物でも復旧費が100500万円程度のもの が多数分布している。そこで,復旧費については 700万円以上,あるいは取りこわしの建物を全壊 とし, 300700万円の復旧費を要するものを半壊 とし, 300万円以下を一部損壊程度と見なしてそ の棟数分布を示すと図‑9となる。この結果によ れば,全壊率8.6%,被害率18.9%となる。この 結果と前述の被害判定にもとずく全壊率・被害率 ではこの値に極めて大きな相違があり,実質的な 被害の判定を明確にする必要性が指適され:る。

あとがき

墓石調査ならびにアンケート調査結果に基づい て木造住家建物の被害についての調査を実施し,

その結果より最近の地震における住家被害・家具 等の転倒・落下・破損等に関する考察を加えた。

その結果,液状化発生地域と非液状化発生地域 で、は,その被害程度に顕著な相違が認められた。

すなわち,液状化発生地域では,それ以外の地域 に対して建物の被害発生比率が極めて高く,従っ て復旧費にも莫大な費用がかかることがわかり,

一方,家具等の転倒・落下・破損の発生比率が液 状化発生地域の方がそれ以外の地域に比べて相対 的に低い。また被害発生状況にも差が見られる。

またヒヤリング調査によっても被害発生状況の時 聞が非液状化地域に対して液状化集中地域におい てより長い時間がかかっていることが認められた。

これらのことは,液状化発生地域とそれ以外の地 域での地震動のゆれ方,あるいはゆれの強さに相

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調査地点番号 ‑4(a) 

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望月他:現地踏査・ヒヤリングに基づく地震動の強さと木造住家の被害状況

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能代市における建物および周辺施設の被害 (非液状化地域)

‑6 建物および周辺施設の被害

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総合都市研究 118 

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(12)

20 総合都市研究

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復旧費から見た被害分布

いてー1968年十勝地震・ 1978年宮城県沖地 震の調査からーJ.総合都市研究第8 PP.  131144 

後藤典俊・鏡味洋史・岡田成幸・堀田淳・大橋ひとみ.

太田裕 ‑10

違があることを示しているものと思われる。今後 さらにこれらの点に関して諸々の現象から検討を 進めたいと考えている。

r1983年日本海中部地震のアンケートによ る震度マップ(速報)J.20回自然災害科 学総合シンポジウム講演論文集.PP.  152 

‑155  1983 

末筆ながら,本稿を, 19843月に東京都立大 学及び都市研究センターを定年退官される中野尊 正教授に献呈します。

望月利男・宮野道雄

1979  r木造建物の諸性状と地震被害の関係につ

参照

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真の素因と最終的なひきがねとなった誘因との間に,素

改正メルカリ震度四‑IXの地域にブカレストがあるとし ている。 44‑432

この地震を契機として,我が国各地でブロ;" 1 7 塀の耐

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