カール・フォン・ルムの中央銀行論について
著者 居城 弘
雑誌名 靜岡大学法経研究
巻 32
号 4
ページ 95‑127
発行年 1984‑03‑20
出版者 静岡大学法経学会
URL http://doi.org/10.14945/00005816
カ ー ル
・ フ ン ォ
・ ル ム の 中 央 銀 行 論 に つ い て
居
城
弘
次 バ 序
クン ーレ 政ト 策 に つい て の フォ ン
・ル ムの 見解 信 用制 度 の変 化 が中 央銀 行 政︵ 策︶ に及 ぼ し た影 響 バ クン ーレ ト政 策 の補 助 的 手段 中央 銀行 によ る市 場 の再 把握 の方 向 むす び に代 え て 1
︑ 序 第
一次 大戦 前 の国 際金 本 位 の時 期 にあ てっ は︑ 主要 国 おに け 信る 制用 度 の最 終 的拠 点 とし ての 中 央銀 行 は︑ 金属 準 備 の カー ル
・ア ンォ
・ル ムの 中央 銀行 論に つい て 九五
654321
法経 研究 三二 巻四 号
︵一 九八 四︶ 九 六 防衛 と■ 最後 が 貸 手し
﹂ と いう 自︲ ら 課に せら れ た課 題 を︑ 中 央銀 行 の金 融 政策 就r 申
︑ バ タン レ ート 政策 によ
´ て遂 行 し た︑ とさ れ る のが 一般 的 通念 であ たっ と いう こと が でき る︒ バ クン ーレ 政ト 策 の対 内 的
・対 外 的 な作 用効 果
︑ くと に後 者 の為 替 や対 外的 金移 動 に対 す る作 用効 果 通を じ て︑ 国際 本金 位 の円 滑 な機 能 が支 え られ た の であ る とい う 認識 であ る︒ これ 対に し て︑ 右 のよ う な理 解 と は対 照 的 に︑ 世紀 の転 換 点を はさ んだ 時期 に いた てっ 中︑ 央 銀行 が信 用制 度 に占 める 地 位 がし だ いに 後退
・低 下 し︑ 中 央銀 行 の課 題 を遂 行 す る ため の バ クン ーレ ト 政 策 の 作 用効 果 や 有 効性 が 低 下
・弱 体 化 し︑ そ の とこ 通を じ て︑ 本金 位 存の 立
・維 持 が 一つ の重 大な 脅 威 さに らさ れ るも のと な てっ きた ので はな いか とす 主る 張 が︑ かな り有 力な 見解 しと て行 わ るれ よう にな たっ と いう 事実 に注 目 す る必 要 があ る と思 われ る ので あ る︒ 申 央銀 行 の地 位 の後 退 や政 策 効果 の有 効性 の低 下 と うい 事 実認 識 はヽ ど のよ う 根な 拠 にも とづ い てな され て いる の であ ろう か︒ それ は ひ と つに は︑ 一 国 の信 用制 度 金や 融市 場 にお け る民 間 大銀 行 の地 位 の強 大化
︑ そ こ での 預金 の大 量 の集 積 と無 現金 的支 払 取 引 の発 展
︑ それ にも とづ く積 極的 な信 用拡 張 に︑ さら いに まひ と つの 要 因 とし て︑ 主要 国 金融 場市 の関 係 の緊 密化 と国 際資 本 移 動 の活 発化
︑ いわ ゆ る
﹁貨幣 諸市 場 の連 帯
﹂性 強の まり によ てっ も たら され た 一側 面 とし て の攪 乱可 能性 の増 大 に︑ そ の根 拠 が求 めら れ てい る ので あ る︒ だ とす る と︑ こう し た国 内 的
・国 際 的な 信 用 制度 の構 造変 化 がど のよ う な問 題 生を さじ せ︑ それ よに てっ
︑ 中央 銀行 の地 位 政や 策 の有 効性 にど よの う な影 響 与を え た のか
︑ るあ いは さ ら に︑ 中央 銀行 の地 位 の再 強 化 や政 策 の有 効性 を回 復 す るた め にど のよ う 対な 応 策 がう ち出 され た のか 明を ら か すに る とこ は︑ 国 際金 本 位 制期 の中 央銀 行政 策 や金 融 市場 の機 能を 解理 す るう え 不で 可欠 の作 業 をな す の では な いか
︑ 思と わ れ る ので あ る︒ 実際 に この 時期 にあ てっ す でに
︑ バ クン ーレ 政ト 策 以外 にも
︑ さま ざ ま な政 策 上 の試 行錯 誤 がこ ころ みら れた ので あ てっ
︑ そ のい み から は︑
﹁管 理 通貨 制﹂ 段 階 にい た る過 渡期 の金 融政 策 のあ り よう の 一端 を明 から にす る こと にも な る であ ろう
︒ 本稿 は この よう な 問題 を︑ 一 般 論 とし て展 開 し よう とす るも ので はな く︑ 右 の作 業 の 一環 と し て︑ 当 時 の政 当策 者局 に
よ てっ
︑ 信 用制 度 の変 化 や中 央 銀行 の地 位 の後 退
︑ バ クン ーレ 政ト 策 の有 効 性 の低 下 がど のよ う 認に 識 され
︑ そ の克 服策 と し てど のよ う な方 策 が構 想
・提 起さ れ たか 明を ら か にし よう とし た も ので あ る︒ ここ で検 討 の素 材 とし て︑
ド イ ツの 中
︵3
︶
央 銀 行
・ラ イ ヒ ス バ クン の中 枢 部 に あ てっ
︑ 直 接
︑ 政 策 実 践 に携 わ てっ い た カ ー ル oフ オ ン
・ル ム 鶴困 く︻ 0● F B 日 に よ る 二 つの 話 様 を 取 上 げ
︑ ア ォ ン
・ル ム の見 解 や 主 張 を て が か り と し て考 察 を 進 め る こ と と し た い︒ うこ
し た限 定 さ れ た 視 角 か ら 検の 討 で は あ る が
︑ し か し そ れ に よ てっ む し ろ
︑ こ の段 階 の中 央 銀 行 の地 位 や 直 面 し た 問 題 の性 格 を より 明 瞭 な 形 で と ら え る こ と が でき る よう に 思 わ れ る の で あ る
︒ こ こ で の検 討 は
︑ 中 央 銀 行 と金 融 市 場 の関 係
︑ 国 際 金 本 位 制 下 の中 央 銀 行 政 策 の機 能 と景 気 変 動 の関 係
︑ さ ら に は
﹁管 理 通 貨 制
﹂ 下 の政 策 体 系 の再 編 成 と い たっ 諸 問 題 の解 明 へと 展 開 さ る べ き も の で あ る こ と は い う ま でも な い︒
︹註︺
︵1︶ たと えば 麓︑ 健 一
﹁金 融政 策﹂
︵信用 理論 研究 会編
﹃講 座
・信 用理 論 体系
﹄ 第2 部 制度 編 日本 評論 新社 昭 3︲和
年︶ 三〇 一
︱ 三〇 頁七 を参 照
︵2︶ うン﹂
たし 認識 さは まざ まな 論者 によ てっ 摘指 され てい ると ころ であ るが
︑ ブ ルー ムフ ーィ ルド によ れば
︑
﹁時期 のす すむ に つれ て⁝
⁝割 引 政策 の有 効性 に関 して 懐疑 を表 明す る傾 向が 増大 し︑
︱︱ これ は大 部分
︑ 割引 率 の引 上げ を市 場 に効 果的 に伝 播す るこ のと 難困 さが 若干 の国 々に いお て増 大 たし ため であ たっ
︱︱ そし て選 択 的な 貨幣 的統 制 の 手段 が 推奨 され る 傾向 が 増大 した
﹂ と し︑ 例 とし てこ こで りと あげ る カー ル
・フ ンォ
・ル ムや ベ ルギ
■の アン ショ ウの 論文 を挙 げ てい る︒
︵A
・I
・ブ ール ムフ イー ル ド
﹃金本 位制 と国 金際 融﹄ 小野 一一 郎
・小 林龍 馬共 訳 日本 評論 社 一九 五七 年 七四 頁︶ ほか に︑ 2の 註 で掲 げる イギ リ ス金 融 史研 究 の代 表的 文献 にお いて も同 様 の認 識が 語 られ てい ると ころ であ る︒
︵3︶ カー ル・ フォ
・ン ルム
︵以 下︑ フォ ン
・ル ムと 略称 する
︶は ︑ 一九
〇 年一 に イラ ヒス バン クの 理事 会 o︻河
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﹃ど日 の 補 佐員 に︑ 一 九〇 三年 一月 二十 六日 には ライ スヒ バン タの 管理 局長
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■ に任 命 され ︑ 一九 二〇 年に 辞任 する ま でそ の職 にあ たっ
︒ イラ ヒス バン クに 関 るわ 以前 の経 歴は 明ら かで はな いが 民︑ 間銀 行 の支 配 人で あ たっ こと が知 られ てい る︒ 彼 カー ル フ・ ンォ
・ル ムの 中央 銀行 論 につ いて 九 七
法経 研究 三 二巻 四号
︵一 九八 四︶ 九 八
の 著 書
・論 文 と し て は
︑ こ こ で と り あ げ る 二 つ の 論 稿 の 他 に
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︒ 一∞ 望 が あ る
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︵4
︶ そ の 二 つ の 論 稿 と は 以 下 の も の で あ る
︒
①
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︵こ れ は
後 独に 立 の著 書 とし 刊て 行さ れた
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・一駕 3 以下 では それ ぞれ 1︑ I︑ と略 記 し︑ Iに つい ては
︑ 著書 の 頁数 で示 すこ とと する な︒ お︑ フォ ン
・ル ムは 当︑ 時 の コー ロッ パの 主要 な中 央銀 行を 念頭 おに いて 論議 展を 開し てい る ので ある が︑ な かで も ライ スヒ バン クに 最も 大き な スペ ース 割が れか てい る︒ これ は ライ ヒス バン クに おい て︑ 当時 の中 央銀 行が 直面 した 問題 がも とっ も明 確 表に れわ てい るか なら のだ
︑ とし てい る︒ 2
︑ バ ン ク レ ー ト 政 策 に つ い て の フ ォ ン
・ ル ム の 見 解 中央 発券 銀行 が 一国 の貨 幣 信 用 制度 の中 軸 にあ てっ 行 う金 融政 策 の中 心的 手 段 は︑ 金 利政 策
・バ クン ーレ 政ト 策 であ る が︑ そ の目 的 や作 用径 路 さ︑ ら には バ クン ーレ 政ト 策 の有 効性
︵効果
︶ のた め の条 件 は何 か と い たっ 問題 にか んす る︑ フ オ ン
・ル ムの 見解 を た かし める こと か ら始 め よう
¨ バ クン ーレ 政ト 策 の主 要目 的 は︑ フ
ォン
・ル ムに よれ ば
︑ 中央 銀 行 の支 能払 力 維の 持 し︑ た が てっ 金準 備防 衛 視の 点 か 中ら 央銀 行 に呈 示 さ れ 信る 用請 求 を これ に適 合 さ せる こと にあ る︒
︵日
・∽
・∞
︶ そし て︑ いわ ゆ る
﹁信 用 最の 終 源泉
﹂ とし て の機 能 も︑ 金準 備 の防 衛
・見 換 性 維の 持 と いう 命 題 に従 う べき も の︑ とさ れ る︒ 中 央銀 行 がど のよ う な視 点 にも とづ いて バ クン ーレ トを 調節 す るか
︑ ま そた 変の 更 は︑ 中 央銀 行︑ 貨幣 市 場 そ︑ の他 の 諸 要 因 にど のよ う に作 用す るか の問 題 が︑ 国内 的 側面 と対 外的 側面 に分 け て考 察 され る︒