ロールシャッハ反応の標準化 ? : 反応形式から
その他のタイトル A Standardizational Study of Rorschach Responses by the Formal Analysis
著者 高橋 雅春
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 9
号 2
ページ 99‑104
発行年 1978‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/00022918
ロールシャッハ反応の標準化 I
—反応形式から_
高 橋
雅 春
序
ロールシャッハ・テストが臨床場面で診断に役立つのは,被検者の個人内力動に重点をおいた 解釈であり,このために被検者の反応の仕方や反応内容に注目し,被検者独自の内的世界を追体 験的に理解することが望ましく,統計的基準と被検者の反応の差異だけを取り上げて解釈するべ きでないことは,改めて言うまでもない。しかしある被検者の反応を理解するためには,これを 多くの被検者の反応と比較し,その反応が多くの人の反応に類似しているのか,それともかなり 特異なものであるのかを知ることが解釈のひとつの出発点となることは否定できず,このために ロールシャッハ・テストの反応の標準化を無視することはできない。この点については Beck,S.
ら(1950)の研究をはじめ,わが国でも児玉省(1953,1958), 長坂五朗(1956),辻悟ら(1958), 村上英治ら (1959),片口安史(1974)などの研究が見られる。 ところでこれらの研究者がロール シャッハ・テストを実施する方法や記号化の方法には多少の違いがあるし,標本とした被検者群 の性質によって, 基準となる数値に多少の差異が認められる。高橋雅春(1964)もかつて10歳代 の青年を中心とした被検者について調査した結果を発表しているが,今回,正常成人についての 最近の資料を整理したので,今後の研究をすすめるための基礎資料としてここにまとめる。
被 検 者
一般に心理テストを標準化するにあたっては,特定の母集団を代表する被検者をどのように抽 出するかという問題がある。筆者はここで精神的に健康であり,社会生活に適応している正常成 人のロールシャッハ・テストの反応の標準化を意図しているが,本論文の被検者の構成は次の通
りである。
被検者数 平均年齢
200名(男100名,女100名) 23.3歳(標準偏差 6.9) 一般職業人,主婦 97名
大学生 103名
関西大学『社会学部紀要』第9巻第2号
結 果
(1) 拒 否 図 版
200名の被検者のうち,拒否図版を生じた者は5名 (2.5%)であり,拒否された図版は次の通 りである。
図 版 J I I II J m
鰐羞1。│。 1。
(2) 反応数と始発反応時間
NI VI VI I VI[
1 i o l 1 J 。珊□fixlX 。
以下,各記号の横に Me土Qの範囲をあげ,ついで M (算術乎均) と括弧内に標準偏差を,
さらに Me(中央値)と Mo(モード)の数値をあげる。なお反応はすべて主要反応のみを取り 上げて計算し,付加反応を取り上げていない。
1. R 21 89 M 31.7 (13.0) Me 29.5 Mo 26
筆者のロールシャッハ・テストの実施法では,被検者の反応があまりにも少ない場合,強制に ならない程度に, 「もう少し見てみませんか」とすすめているので,反応数 (R)は他の研究者 の結果よりも多くなっている。
2. RT 82111 M 18.0 (22.1) Me 14.4 Mo 11.6 3. RT (achro.) 5 18" M 20.2 (15.7) Me 11.7 Mo 7.9 4. RT (chro.) 92311 M 20.2 (23.2) Me 16.2 Mo 16.1 5. I図の RT 4 15" M 12.0 (11.7) Me 9.7 Mo 5.1 6. II図の RT 5 22" M 21.1 (23.9) Me 13.8 Mo 5.3 7. III図の RT 4 14" M 12.3 (13.0) Me 8.9 Mo 5.1 8. IV図の RT 4 18" M 16.1 (17.8) Me 10.6 Mo 5.4 9. V図の RT 2 11" M 12.2 (20.1) Me 6.8 Mo 5.2 10. VI図の RT 42111 M 21.1 (29.4) Me 12.3 Mo 5.3 11. VII図の RT 4 18" M 17.3 (19.9) Me 10.8 Mo 5.2 12. VIII図の RT 61911 M 18.6 (18.6) Me 12.8 Mo 5.4 13. IX図の RT 5 29" M 25.9 (26.3) Me 16.9 Mo 10.9 14. X図の RT 5 27" M 23.1 (28.7) Me 15.9 Mo 5.3
(3) 反 応 領 域
反応領域については,原則として Klopfer,B. ら (1954)の領域表に従って記号化を行なっ た。
1. W % 41 66% M 54.3 (19.0) Me 53.3 Mo 50.4 2. D % 29 51% M 39.4 (16.6) Me 40.2 Mo 34.9 3. Dd% 0 4% M 3.5 (4.9) Me 1.5 Mo O 4. S% 0 4% M 3.1 C 4.3) Me 1.4 Mo 0
(4) 反応決定因子
1. M C人間運動反応) 2 6 M 4.8 C 3.2) Me 4.2 Mo 4 2. F M 2 6 M 4.2 (2.8) Me 4.0 Mo 5 3. Fm+mF+m O l M 0.8 (1.0) Me 0.5 Mo O 4. Fk+kF+k
゜M 0.1 (0.4) Me ゜Mo 0
5. FK O l M o.7 C 1.1) Me
゜Mo 0
6. KF+K
゜M 0.2 C o.5) Me ゜Mo 0
7. F% 35 53% M 44.6 (14.0) Me 43.9 Mo 43.0 8. Fe 0 2 M 1.5 (1.3) Me 1.3 Mo 1 9. cF+c
゜M 0.3 C o.7) Me ゜Mo 0
10. FC'+C'F+C' O l M 0.7 (1.0) Me
゜Mo 0
11. FC 0 3 M 1.6 (1.5) Me 1.3 Mo 1 12. CF 1 3 M 1.9 (1.5) Me 1.7 Mo 1 13. C
゜'M ゜ Me ゜Mo 0
(5) 反 応 内 容
反応内容については,出現頻度の高いものからおおむね順にあげ,出現率の高いものについて は,その比率もあげておく。
1. :EA% 31 55% M 42.7 (11.9) Me 42.8 Mo 43.4 ここでいう I;A%は, A+Ad+(A)+(Ad)%のことである。
2. A + Ad% 29 47% M 38.5 (12.2) Me 38.0 3. (A)+(Ad)% 0 7% M 4.1 C 4.7) Me 3.5 4. :EH% 16 31 % M 23.6 (11.1) Me 23.5 こ こ で い う こH %は, H+ Hd + (H) + (Hd) %のことである。
5. H + Hd% 9 21 % M 16.0 (9.2) 6. (H)+(Hd)% 2 10% M 7.6 (6.7)
Me 15.0 Me 6.0
Mo 42.9 Mo 0 Mo 26.5
Mo 15.1 Mo 4.8
ここでいう (H)と(Hd)は,他の研究者の記号とやや異なっており,かつて高橋雅春 (1977) のあげた方法によっており,さらに「カッパ」も CH)と記号化したものである。
7. Pl% 2 11% M 7.2 (6.2) Me 6.4 Mo 4.2
関西大学『社会学部紀要』第 9巻第2号
8. Obj% 2 9% M 6.3 (5.6) Me 5.6 Mo 3.8 9. N % 0 6% M 4.1 (4.6) Me 3.2 Mo 0 10. At% 0 4% M 2.1 (3.1) Me 0 Mo 0 11. 2A 8 16 M 13.4 (6.3) Me 11.9 Mo 11 12. A+Ad 7 15 M 12.2 (6.0) Me 10.9 Mo 10 13. (A)+ (Ad) 0 3 M 1.3 (1.5) Me 1.4 Mo O 14. 2H 6 12 M 7.4 (4.6) Me 8.8 Mo 6 15. H+Hd 2 7 M 5.0 (3.4) Me 4.5 Mo 4 16. (H) + (Hd) 1 4 M 2.4 (2.1) Me 2.3 M o 1 17. Pl 1 3 M 2.2 (2.1) Me 1.8 Mo 1 18. Obj 0 3 M 2.1 (2.3) Me 1.5 Mo 1 19. N 0 2 M 1.3 (1.5) Me 0.9 Mo 0 20. At O l M 0.7 (1.0) Me 0 Mo 0 21. Aobj 0 2 M 0.8 (0.7) Me 0.8 Mo 1 22. Fire
゜M 0.5 (0.7) Me 0 Mo 0
23. Arch
゜M 0.4 (0.8) Me 0 Mo 0
24. Travel
゜M 0.4 (0.7) Me 0 Mo 0
25. Expl
゜M 0.3 (0.5) Me 0 Mo 0
26. Geo
゜M 0.3 (0.6) Me o Mo 0
27. Cloth
゜M 0.3 (0.6) Me 0 Mo O
28. Food
゜M 0.3 (0.7) Me 0 Mo 0
29. A•At
゜M 0.2 (0.4) Me 0 Mo 0
30. Cl
゜M 0.2 (0.5) Me 0 Mo 0
31. Art
゜M 0.2 (0.5) Me 0 Mo 0
32. Emb
゜M 0.1 (0.3) Me 0 Mo 0
33. Other
゜M 0.1 (0.3) Me 0 Mo 0
34. Bl
゜M 0.1 C 0.3) Me 0 Mo 0
35. Abst
゜M 0.1 C 0.3) Me 0 Mo 0
36. Shell
゜M 0.1 (0.3) Me 0 Mo 0
37. Xray
゜M 0.1 (0.4) Me 0 Mo 0
38. Mask
゜M 0.1 C 0.4) Me 0 Mo 0
39. Weapon
゜M 0 (0.3) Me 0 Mo 0
40. Sex
゜M 0 (0.2) Me 0 Mo 0
41. Smoke
゜M 0 (‑102‑0.2) Me 0 Mo 0
42. Coral
゜M O (0.1) Me 0 Mo 0
43. Fan
゜M O (O) Me 0 Mo 0
44. Letter
゜M O (0) Me 0 Mo 0
45. Anal
゜M O (0) Me 0 Mo 0
46. Stain
゜M O (O) Me 0 Mo 0
(6) 平凡反応と独創反応
どのくらいの出現頻度の反応内容を平凡反応 (P) とするかについては,研究者の考え方によ って異なるし.標本とする被検者群によって多少の差があることはいうまでもない。これまで高 橋雅春 (1964)が用いてきた Pは.標本とした被検者群に不適応状態にある者が多いにも拘ら ず.他の研究者の P とほとんど差異はなかった。今回の正常成人の反応内容についても出現 率が6人に1人 (16.6%)以上のものを P としたところ,次の14個がこれに該当した。なお I 図と V図の「ガ」はそれぞれが10%と10.5%となり,Pとは言えないが, 「チョウ」にきわめ て類似した形態を有しているので, 「チョウ」と同じように一応 P と記号化することにした。
I図 W 「コウモリ」
「チョウ,あるいはガ」
「動物の顔」
n図 W 「人間2人」
「動物 2匹」
D1の方向を頭として意味づけた場合は Pとしない。 Daもしくは D8+D2を1人もしくは 1匹として見たものも Pとする。
皿図 W 「人間2人」
恥の方向を頭として意味づけた場合は Pとしない。 Dsを1人として見たものも Pとす る。
IV図 w ̲「毛皮」
V図 W 「チョウ,あるいはガ」
「コウモリ」
VI図 W 「毛皮」
「楽器」
Vll図 W 「人間2人」
D1 の方向を頭として意味づけた場合は P としない。 D4 もしくは D4+D1½ を1人として 見たものも P とする。
vm図 D1 「動物1匹」 D2 「花」
関西大学『社会学剖紀要』第9巻第2号
IX図 な し X図 な し
1. p 5 8 M 6.6 (1.9) Me 6.4 Mo 6 2. 0 1 4 M 3.2 (3.0) Me 2.6 Mo 2
(7) その他のカテゴリー
1. FR% 84 94% M 88.4 (7.3) Me 88.9 Mo 88.1
ここでいう FR%は 全 反 応 に 占 め る 定 形 反 応 ( 形 態 水 準 の 良 不 良 を 問 わ な い ) の 比 率 で あ る 。 2. F+% 74 91% M 82.6 (13.4) Me 82.6 Mo 100.0
F+%は す べ て の 純 粋 形 態 反 応 (F)に 対 す る 良 形 態 反 応 (F+)の比率である。
3. R十% 83 94% M 88.5 (7.3) Me 88.8 Mo 93.6 R + %は す べ て の 定 形 反 応 の う ち に 占 め る 良 形 態 反 応 の 比 率 で あ る 。
4. VIII X% 30 39% M 34.6 (7.2) Me 34.6 Mo 35.5
参 考 文 献
Beck, S. et al. (1950) The normal personality as projected in the Rorschach test. J. psychol., 30: 241‑298.
片口安史 (1974) 新・心理診断法金子書房。
Klopfer, B. et al. (1954) Developments in the Rorschach technique. I. N. Y.: World Book. 児 玉 省 (1953) 性格診断法(心理学講座第7巻) 中山書店。
児 玉 省 (1958) 日本女子大式 ロールシャッハ・テスト I(心理診断法双書 I) 中山書店。
村上英治ほか (1959) ロールシャッハ反応の標準化に関する研究 ロールシャッハ研究 2: 39‑85。 長坂五朗 (1956) ローシャッハ・テストに関する研究(その1) 精神神経学雑誌 20: 418ー428。 高橋雅春 (1964) ロールシャッハ解釈法 牧書店。
高橋雅春 (1977) ロールシャッハ・テストにおける (H)の細分類 関西大学社会学部紀要 8巻1号 307‑313。
辻 悟 ほ か (1958) 阪大スケール ロールシャッハ・テスト I(心理診断法双書 I) 中山書店。
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