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弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵こ

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弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵こ

手 賀   寛

一.

ヘじめに ー.平成二年より始まった一連の司法制度改革は︑﹁国民がより容易に利用できるとともに︑公正かつ適正な

 手続の下︑より迅速︑適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築し︑高度の専門的な法

 律知識︑幅広い教養︑豊かな人間性及び職業倫理を備えた多数の法曹の養成及び確保その他の司法制度を支え

 る体制の充実強化を図り︑並びに国民の司法制度への関与の拡充等を通じて司法に対する国民の理解の増進及

 び信頼の向上を目指し︑もってより自由かつ公正な社会の形成に資すること﹂をその基本理念としていた︵司

        ︵1︶

 法制度改革推進法第二条︶︒この理念の具現化の一つとして︑法曹人口の大幅な増加を図るべく︑法曹養成に

 特化した教育機関たる法科大学院と︑法科大学院修了者を対象とした新司法試験とを組み合わせた新しい法曹

 養成制度が整備されたのであり︑既に新制度の下で生まれた実務家が活動を始めている︒

2.ところが︑法曹人口の大幅な増加が予定されているにもかかわらず︑実務家︑特に弁護士の職務上の規範や

 倫理については︑従来︑実務家の視点から論じられることはあっても︑理論的な研究の対象とされることは少

   弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 二九五

(2)

      二九六

 なかった︒法科大学院で法曹倫理の履修が要求されることもあり︑法曹実務家の職務規範・法曹倫理が体系的        ︵2︶  理論的に分析されることも近年増えてはきているが︑実体法・手続法の各規範との関わり︑法秩序全体におけ

 る位置づけなど︑検討すべき点はまだまだ残されているように思われる︒殊に︑法曹人口拡大の中心となる弁

 護士については︑その活動範囲も大幅に広がることが想定されるのであって︑その地位や職務規範について体

 系的に理論化する意義は大きいといえよう︒

3.また︑同じく司法制度改革の理念の一つである裁判の迅速化については︑かねて問題とされ︑不断の努力が

 続けられていたところである︒既に平成八年の民事訴訟法改正においても︑争点整理手続の整備︵第一六四条

 から第一七八条︶や集中証拠調べの規定を新設︵第一八二条︶するなど︑迅速な裁判実現のための方策がとら

 れていた︒訴訟の早期段階における十分な争点整理と︑尋問事項を要点に絞り込んだ集中的な人証取調べは︑

 訴訟の迅速化に大いに寄与し︑その他の裁判迅速化に向けられた諸方策とあわせて︑平成五年度には通常の民

事訴訟において地方裁判所の平均審理期間が一〇.一ヶ月であったところ︑平成一八年には七.八ヶ月にまで

     ︵3︶

短縮している︒迅速に手続を進めるには︑当事者及び裁判所が協力し︑適切な手続を選択して進行すべきこと

 は勿論であるが︑前提として︑手続規範の明確性・予測可能性が要求される︒例えば︑ある証人が特定の尋問

事項について証言拒絶権を認められることが予測できれば︑当事者としても予め別の立証手段を用意し︑また

 はそもそも主張立証の組立てを変更する等して対応が可能であろう︒逆に︑予測に反して証言拒絶権の行使が

 認められ︑当該証人の証言による立証ができなくなれば︑当事者は突如新たな証拠を探し︑あるいは主張立証

 の組立てを修正することを強いられ︑結果︑訴訟は遅延する︒加えて︑手続規範の明確性・予測可能性が確保

 されれば︑手続の透明性は高まり︑利用者たる国民の裁判への信頼にもつながると考えられる︒

(3)

4.さらに︑近年文書提出霧の範囲に関して多数の判例゜裁齢が現れているように・当事者の証拠収集権

 能の限界をいかに画するかが︑当該証拠を有する相手方ないし第三者の利益保護との関係で大きな問題となっ

 ている︒証拠の偏在を解消し訴訟の利用を容易にする為の証拠収集制度の拡充が︑訴訟当事者と当該証拠を有

 する相手方・第三者との利益の対立をより先鋭化したとみることができるだろう︒ある情報が証拠として訴訟

 上公開を強いられるか否かは︑単に訴訟の帰趨を左右するのみならず︑その情報を有する者の訴訟外における

 活動にも影響を及ぼすのであり︑重要な問題である︒証言拒絶権についても︑文書提出命令と同様に当事者の

 証拠収集権能の限界が問題となるが︑文書提出命令と異なり︑証言拒絶権行使の可否が裁判例において直接に

       ︵5︶

 問題となることは希である︒これは︑証人が証言拒絶権の行使を主張すると︑当事者がそれに応じて尋問の方

 法を変更したり︑裁判官も尋問方法の変更を勧告したりする等︑紛争を起こさないよう実務上の対応がなされ       ︵6︶  ていたことが一つの原因であるといわれている︒だが︑未だ顕在化していないとしても︑証言拒絶権について

も文書提出命令と同様の問題が存在していることは疑うべくもない︒また︑証言拒絶権の範囲は文書提出義務

 の範囲を画する基準ともなるのであるから︵民訴第二二〇条四号ハ︑同法第一九七条一項二号・同三号︶︑こ

 の点からも︑証言拒絶権につき検討を加え︑その限界を明らかにすることの意義は大きい︒

5.本稿は︑以上のような諸問題が交錯する︑弁護士が職務上の秘密について有する証言拒絶権︵民訴第一九七

条一項二号︶について︑その根拠や範囲︑弁護士法や弁護士職務基本規程の定める実体法上の秘密保持義務と

 の関係を検討するものである︒弁護士が職務上の秘密について証言を求められる場面にあっては︑秘密の主体

たる依頼者との利益の対立が顕在化し︑法曹としての職務規範ないし倫理が問われるとともに︑証言を求める

当事者の証拠収集権能の限界も問題となるのであるから︑証言拒絶権の内容を論ずるについても︑弁護士の地

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 二九七

(4)

       二九八

位をどのように捉え︑訴訟上どのように扱っていくべきか︑議論をより深める必要がある︒だが︑従来︑同号

の証言拒絶権については︑弁護士のほかにも医師や弁理士︑公証人等をひとまとめとして論じられることが多

く︑個別の職業の特徴・特殊性に踏み込んだ議論がされることは少なかった︒私見は︑各職業の特殊性を証言

拒絶権の内容に実質的に反映すべきと考えるものであるが︑弁護士の実体法上の秘密保持義務を検討し︑その

議論を取り入れることにより︑訴訟上の証言拒絶権について実質的な︑そして明確かつ予測可能性の高い規範

の定立を目指したい︒

二.証人義務と証言拒絶権

 1.証人義務の内容

   前提として︑民事訴訟手続において証人が負担する義務の内容と︑これに対する証言拒絶権の位置づけにつ

  いて確認しておこう︒

   民事訴訟法は︑﹁裁判所は︑特別の定めがある場合を除き︑何人でも証人として尋問することができる﹂︵第

  一九〇条︶と定め︑わが国の裁判権に服する者に対して︑一般的な公法上の義務としての証人義務を規定して        ︵7︶   いる︒証人義務の内容は︑以下の三つに分けられる︒

 ︵一︶出頭義務 証人として適法な呼出しを受けた者は︑証拠調期日に出頭しなければならず︑正当な理由なく

   出頭しない場合は︑これによって生じた訴訟費用の負担及び過料の制裁を受ける︵第一九二条︶ほか︑犯罪

   として︑一〇万円以下の罰金または拘留︵またはその両方︶に処せられる︵第一九三条︶︒民事訴訟法第一

   九〇条の定める証人義務は一般義務であるが︑裁判所の適法な呼出しの効果として︑具体的な出頭義務が発

(5)

        生するのである︒また裁判所は︑正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命じうる︵第一九四条︶︒

︵二︶証言義務︵供述義務︶ 証言義務は︑尋問に応じて証言すべき義務であり︑証人義務の中核をなす︒具体

 的には﹁尋問された事項について良心にしたがって真実を述べ︑かつ︑何事も隠さず︑また付け加えない﹂

︵民訴規第二二条四項︶供述をする霧で紮・証人は自己の認識を陳述する者であるから・自分が見聞

 したことがなく知らない事実について︑証言のために新たに調査や捜索をして探り出して述べる義務までは

 ないが︑自己の記憶を新たにし︑認識を喚起・強化するために通常の手段を尋問前に尽くすこと︵例えば︑

日記や帳簿にあたってみる等︶は・証言霧の票として要求さ襲・また・証言霧に付随する霧とし

 て︑証人には︑文字の筆記その他の必要な行為を行う義務も存在する︵民訴規第一一九条︶︒証人が証言義

 務に反して正当な理由なく証言を拒絶した場合は︑出頭義務違反の場合と同様︑訴訟費用の負担及び過料の

 制裁︵第二〇〇条︑第一九二条︶のほか︑罰金・拘留を科されうる︵第二〇〇条︑第一九三条︶︒

       ︵11︶

︵三︶宣誓義務 証人は︑原則として宣誓する義務を負う︵第二〇一条︶︒宣誓とは︑証人が﹁良心に従って真

 実を述べ︑何事も隠さず︑また︑何事も付け加えないことを誓う﹂旨陳述することである︵民訴規第一一二

 条四項︶︒法は︑宣誓義務を課すことによって︑証言の真実性を担保しようとしているのであって︑宣誓し

 た証人が虚偽の陳述をすれば︑偽証罪︵刑法第一六九条︶が成立する︒証人が宣誓義務に反して正当な理由

 なく宣誓を拒絶した場合も︑出頭義務違反の場合と同様︑訴訟費用の負担及び過料の制裁︵第二〇一条五項︑

 第一九二条︶のほか︑罰金・拘留を科されうる︵第二〇一条五項︑第一九三条︶︒

 以上のような証人義務は︑公法上の義務であるから︑当事者が︑証人義務を負うべき者に証人となることを

直接請求することはできない︒しかし︑証人が故意・過失によりこれに違反し︑これによって当事者その他の

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 二九九

(6)

三〇〇

      ︵12︶ 者に損害が生じたときは︑証人が民法上の不法行為責任を負うとされる︒

2.証言拒絶権の一般的性質

  証言拒絶権は︑証人義務のうち証言義務に対する例外をなすものであり︑証言義務自体は一応存在するにも

    ︵13︶  かかわらず証人がその権利として証言を拒むことを認める︑公法上の抗弁権である︒公法上の抗弁権であるこ

 とから︑性質上︑法定の事由がある場合にのみ場合に限定され︑私法上の契約により証言拒絶権を設定するこ

      ︵14︶

 とや放棄することは許されず︑証言拒絶権を有している証人が︑これを行使せず尋問に応じれば︑その供述は

       ︵15︶

 適法な証言として証拠能力を有する︒また︑証言拒絶権は︑証言を拒絶できるという消極的な権利に過ぎず︑

 積極的に虚偽の供述をすることを許容するものではないので︑証人が証言拒絶権を行使せず︑宣誓の上で虚偽       ︵16︶  の陳述をした場合には︑偽証罪︵刑法第一六九条︶が成立しうる︒

3.証言拒絶権の根拠

  民事訴訟法は︑第一九六条・第一九七条において︑証人に証言拒絶権が認められる場合を規定した︒

︵証言拒絶権︶

第一九六条  証言が証人又は証人と次に掲げる関係を有する者が刑事訴追を受け︑又は有罪判決を受けるおそ

れがある事項に関するときは︑証人は︑証言を拒むことができる︒証言がこれらの者の名誉を害すべき事項に関

するときも︑同様とする︒

 一 配偶者︑四親等内の血族若しくは三親等内の姻族の関係にあり︑又はあったこと︒

(7)

 二 後見人と被後見人の関係にあること︒

第一九七条次に掲げる場合には︑証人は︑証言を拒むことができる︒

 一 第一九一条第一項の場合

 二 医師︑歯科医師︑薬剤師︑医薬品販売業者︑助産師︑弁護士︵外国法事務弁護士を含む︒︶︑弁理士︑弁護

   人︑公証人︑宗教︑祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙

   秘すべきものについて尋問を受ける場合

 三 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合

2 前項の規定は︑証人が黙秘の義務を免除された場合には︑適用しない︒

 このように︑現行民事訴訟法のもとでの証言拒絶権は︑尋問事項の性質によってその事項に関する証言を拒

絶しうる︑という形式で規定されており︵部分的証一是亀︶二定の身分にある証人にヨ茜事項の性質によ

らず全面的に証言を拒絶する権利︵全部的証言拒絶権︶を認めるというものではない︒従って︑各法条の定め

る証言拒絶権は︑一定の種類の尋問事項につき︑証言を強制するのが妥当でない︑即ち︑=疋の秘密について

は真実発見を犠牲にしてもこれを保護すべき利益がある︑との価値判断の表れであるといえる︒一般に︑各証

言拒絶権はそれぞれ以下のような利益を保護するものと説明されている︒

(一

j第一九六条は︑証言が︑証人自身または証人と密接な関係にある者の刑事処罰を招くおそれがある事項︑

 またはこれらの者の名誉を害する恐れがある事項に関するときに証言拒絶権を認めるものである︒その根拠

 にっいては︑個別の尋問事項と証人自身︑ないし証人と一定の身分関係にある者との特殊の事情のため︑証

 弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 三〇一

(8)

三〇二

 言を強いることが人情に反し情誼にもとり︑また証言を強いても真実の証言を確保できる期待可能性が少な

 ( jことや︑憲法第三八条第一項が﹁何人も︑自己に不利益な供述を強要されない﹂と定める自己負罪供述強

      ︵19︶  要禁止の趣旨に基づくことが挙げられる︒

︵二︶第一九七条一項一号は︑公務員︵または公務員であった者︶の職務上の秘密に関する証言拒絶権を定める︒         公務員は国家公務員法その他に基づいて職務上知ることのできた秘密について守秘義務を負うため︑これに        む  対応する証言拒絶権を与えることにより公益︵国家利益・公共の福祉︶を保護し︑また公務員が守秘義務と

      ︵22︶

 証言義務との板挟みになることを避けるものである︒

︵三︶同二号は︑他人の秘密を打ち明けられる専門的職業にある者の︑職務上知り得た事実で黙秘すべきもの

 ︵以下︑﹁職務上の秘密﹂という︒︶に関する証言拒絶権を定める︒その趣旨は︑職務の性質上他人の秘密を        お   打ち明けられることの多い専門的な職業について︑証言拒絶権を与え︑秘密を開示した者の信頼を保護する       ロ   こと︑さらには︑これにより専門職に対する人々の信頼を確保し︑その職業の存立を妨げないことにあると

 される︒

︵四︶同三号が定めるのは︑技術又は職業上の秘密に関する証言拒絶権である︒技術の秘密が公開されると︑そ

 の技術の価値が失われ︑職業上の秘密が公開されると︑その職業の維持遂行が困難になることから︑その技         術又は職業を保護するために︑証言拒絶権を認めたものである︒

 以上のように︑各証言拒絶権は︑それぞれ保護すべき利益を有しており︑通説は︑この保護すべき利益が各

証言拒絶権の根拠であるとして︑証言拒絶権ごとにその根拠を個別に考える立場をとる︒これに対して︑証言

拒絶権全体に共通する統一的な根拠を見いだし︑それを個別の証言拒絶権の解釈に反映する立場が存在する︒

(9)

その一つは︑証人義務と証言拒絶権との緊張関係を憲法的・人権的な視点から観察し︑様々な利益の比較較量

によってその正当性を主張しようとするアブ︒|チ︵全面的利祷量説︶で転・もう;は・証言拒絶権は・

訴訟における真実発見を犠牲にしても法が一定の社会的価値を守ろうとする政策的判断によるのであり︑守る

べき社会的価値とは︑具体的には︑﹁証人たるべき者が法律上または契約上一定の事項について黙秘義務を負

うこと﹂︑及び﹁特定の事項について証言を要求することが︑証人自身の社会的地位または証人と第三者との

間の社会的関係を損なうこと﹂の二つであるとする立場︵保護価値重視説︶で紮・

 この両説は︑証言拒絶権を統一的に検討するにあたって有用な視点を提示するものであり︑その意義は大き

い︒だが︑全面的利益衡量説については︑そもそも一般的抽象的に証言義務を課すことが憲法上の問題を生ず

るとの前提に疑問が残る︒また︑証言拒絶権の根拠に利益衡量的な要素が含まれること自体には賛成でむ縫も

のの︑利益衡量を前面に出すことは︑基準としての明確性・予測可能性を失い︑証言拒絶権を与えることによ

って秘密を保護しようとした目的が達成されないのではないかとの危惧がある︒他方︑保護価値重視説は︑証

言拒絶権全体を判断するにあたって明確な視点を提供するものの︑逆に︑保護すべき価値を絞り込むことで個

別の証言拒絶権の特徴を捨象することになるのではないかとの懸念がある︒

 現行法の認める各証言拒絶権はそれぞれ保護すべき利益︑立法趣旨を異にするのであるから︑やはり直接に︑

この保護すべき利益ないし立法趣旨を各証言拒絶権の根拠と捉えるべきはないか︒このように考えることで︑

各証言拒絶権を差別化・個別化し︑それぞれの性質・特徴をより明らかにすることができよう︒特に︑職務上

の秘密に関する証言拒絶権に関しては︑各職業につき証言拒絶権を認める根拠︑即ちその保護すべき利益の内

容は必ずしも一様ではなく︑各専門職の性質に応じた差異が存在するはずである︒証言拒絶権の内容も︑この

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 三〇三

(10)

三〇四

差異を反映して専門職ごとの特徴を有するものとなるであろう︒では︑弁護士については︑証言拒絶権によっ

て保護すべき利益及び証言拒絶権の内容はどのように特徴付けられるのであろうか︒これを論ずる前提として︑

次章では︑まず職務上の秘密に関する証言拒絶権一般に関して検討することとする︒

三.職務上の秘密に関する証言拒絶権

 1.前章でみたように︑職務上の秘密に関する証言拒絶権は︑専門職を列挙し︑当該専門職に従事する者に秘密

  を開示した者の信頼を保護することを目的としている︒注意すべきは︑秘密を守られることにつき利益を有す

  る者︵秘密主体︶はあくまで︑専門職に秘密を開示した者であり︑専門職に従事する者自身の職業上の秘密を

  保護するためにこの証言拒絶権が認められているのではないということである︒従って︑秘密主体たる︑専門

       ︵29︶

  職に秘密を開示した本人が秘密の公表に承諾した場合は︑もはや︑証言拒絶権は認められない︒民事訴訟法第

  一九七条二項が︑﹁証人が黙秘の義務を免除された場合には﹂証言拒絶権は存在しない︑とするのはこの趣旨

  である︒職務上のノウハウ等︑証人たる専門職本人が秘密主体であるものは︑﹁技術又は職業上の秘密﹂とし

  て第三号で保護されるのであって︑﹁職務上の秘密﹂には含まれない︒本稿が検討対象とするのも︑弁護士自

  身の秘密ではなく︑弁護士が職務上知り得た他人の秘密である︒

 2.では︑証言拒絶権行使の対象となる︑﹁職務上知り得た事実で黙秘すべきもの﹂とは何か︒

   まず︑﹁職務上知り得た事実﹂については︑証人がその職務を行うに際し知った事実であるとされる︒職務

  を行うに際し知った事実であれば︑秘密主体あるいは第三者から打ち明けられた事実でも︑文書その他により

      ︵30︶

  知り得た事実でも構わないが︑職務と無関係に知った事実は︑秘密主体の信頼とは関係ないから︑これに含ま

(11)

れ蕊三護士への訴訟委任契約の内容も・弁護士が﹁警上知り得た事実三含ま麩・

  だが︑﹁職務上知り得た事実﹂であっても︑それが﹁黙秘すべきもの﹂にあたらない場合には︑証言を拒絶     お   できない︒﹁黙秘すべきもの﹂とは︑一般に知られておらず︑かつ︑それが公表されれば︑名誉︑信用その他

 につき社会的︑経済的に不利な影響を受ける事項であって︑本人が特に秘匿することを欲する︵主観的な意味

 での秘密︶とともに︑他人が同じ立場に立った場合においても同じように秘匿しておきたいと考える︵客観的

意味での秘密︶ような事実をいう︵東山兄高裁昭和五九年七月三日決定゜⊥︒同裁民集三七巻三互三た脳︶・

3.ここで︑第一九七条二項が﹁証人が黙秘の義務を免除された場合﹂とすることに改めて着目したい︒同項は︑

黙秘霧の存在を笙九七条竺項の証一是絶権の根拠としているのである窪・霧上の秘密に関する証言

拒絶権についても︑﹁黙秘すべきもの﹂は︑主観的・客観的双方の意味で秘密であるもののうち︑証人が﹁黙

秘の義務﹂を負っているものを指すと考えるべきである︒即ち︑職務上の秘密に関する証言拒絶権は︑黙秘義

務を前提として秘密主体の信頼を保護するものであるといえよう︒黙秘義務の存在は︑職務上の秘密に関する

      あ 

証言拒絶権の大前提であり︑例えば︑田中和夫・前掲注13九七頁が︑職務上の秘密に関する証言拒絶権を・端

的に﹁黙秘霧に基づく証言拒絶権﹂と分類皇ことや・既に検討した保護価値重視説が・守るべき社会的価

値の一つとして黙秘義務の存在を挙げていることにも︑職務上の秘密に関する証言拒絶権と黙秘義務との深い

 つながりを示すものといえよう︒だが︑この﹁黙秘の義務﹂とはいったいどのような義務であるのか︒既にみ

たように︑証言拒絶権は公法上の抗弁権であり︑私人間の契約によって設定することはできないものであった︒

とすれば︑単に契約上の守秘義務をもって証言拒絶権の根拠たる黙秘義務とすることはできないと考えら江縫

それでは︑法により具体的に定められた守秘義務を前提とするのであろうか︑あるいは︑より漠然とした︑一

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶       ︵都法四十九ー一︶ 三〇五

(12)

三〇六

般的抽象的な﹁黙秘の義務﹂なのであろうか︒次章では︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権につき︑

立法経緯を追いながら︑特に黙秘義務との関係を念頭に置いて︑その根拠を探ってみたい︒

四.職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権

 1.民事訴訟法は︑既に明治二三年の立法時点において︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権につき︑次

  のように規定をおいていた︒これについては︑弁護士法が初めて制定されたのは明治二六年であり︑明治二一二

  年時点ではその前身たる代言人規則が存在したのみであって︑弁護士︵代言人︶の守秘義務を定める特別法は           存在しなかったことに注意しておく必要がある︒

民事訴訟法︵明治二三年︶

第二九八条左ノ場合二於テハ証言ヲ拒ムコトヲ得

 第二 医師︑薬商︑産婆︑弁護士︑公証人︑神職及ヒ僧侶力其身分又ハ職業ノ為メ委託ヲ受ケタルニ因リテ知

   リタル事実ニシテ黙秘ス可キモノニ関スルトキ

第二九九条 前条第一号︑第二号二掲ケタル者其黙秘スヘキ義務ヲ免除セラレタルトキハ証言ヲ拒ムコトヲ得ス

2.当時の資料は︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権につき︑次のように説明している︵傍線及び注は

 引用者による︶︒

(13)

ア.本田康〒今村信行﹃民事訴訟法︹明治窒︺註解第二分冊自第纏至第繰三明塗一監︶九︒

五〜九=頁

第二九入条﹁第二号に掲げる⁝弁護士⁝等ハ其職分上人民ノ秘密二属スル事項二与カルコトアルモ社会ノ公

益上之ヲ黙秘スヘキ義務アルモノトス例ヘハ医師二在テハ人民ノ公ケニ為スヲ欲セサル病気ヲ診察シ⁝タル

ノ類右等ノ事項二関スル証言二付テハ之ヲ拒ミ得ル権利ヲ与フルモノトセリ然レドモ委任者ガ其義務ヲ免除

シタルトキハ勿論証言ヲ拒ム権利ハ消滅ス︵第二百九十九條末項︶﹂︒

イ.井上操﹃民事訴訟法︹明治翠︺述義︵第二編︶三明治二麩︶七八七頁

﹁弁護士ハ当事者ヲ代理シ若クハ当事者ヲ補佐シテ訴訟ヲ為ス者ナリ弁護士ヲシテ隠秘ヲ証言セシムルトキ

ハ法律力此営業ヲ公認シタル旨趣二反シテ当事者ノ私益ヲ害スルコト大ナリ⁝各人ハ其身分及ビ職業上ノ秘

密ヲ証言スルコトヲ拒絶スルコトヲ得ルノミナラズ其秘密ヲ漏告シタル場△︒ヲ罰スルモノニシテ判事ノ離

二対シテ供述ヲ為シタルヲ罰スルニアラス故二職業上ノ義務二背キ供述スト難モ別二刑事上ノ制裁ナシ然レ

トモ被害者ヨリ民事上ノ訴追ヲ受クルハ格別ナリ﹂

ウ.宮城浩藏罠事訴訟法︹明治翠︺正義︵上−n︶﹄︵明治二殿︶九二八〜占一九頁

﹁二九入条第二項二該当スル者ノ如キハ職掌上人ノ秘密ヲ聞クモノナリ故二此等ノ者ハ職務ノ結果トシテ之

ヲ漏洩ス可ラサルノ義務ヲ負フモノナリ若シ妄リニ之ヲ漏洩スルニ於テハ却テ刑法上ノ制裁ヲ受クルニ至ル

其レ然リ一方二於テ刑法上ノ制裁ヲ加フルノ規定ヲ立テナカラ一方二向ヲ証言トシテ之ヲ陳述セヨト云フハ

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 三〇七

(14)

三〇八

頗ル理二惇ルモノナリ殊二職務上人ノ委託ヲ受ケタル秘密ヲ漏洩スルコトアルトキハ人々ハ⁝弁護士⁝ヲ信

用セサルニ至リ交際上ノ徳義地ヲ掃ヒ為メニ社会ノ醇良ヲ害スルニ至ル可シ是レ法律力此等ノ者二与フルニ

証言ヲ結ムコトヲ得ルトノ特権ヲ以テシタル所以ナリ﹂

 これらをみると︑明治二一二年民事訴訟法のもとでは︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権について︑

いずれも弁護士が黙秘義務を負っていることを前提とするものの︑黙秘義務の根拠及びその内容については必

ずしも統一的な見解が確立されていたわけではないことが分かる︒即ち本田11今村説は︑弁護士の黙秘義務の

根拠を社会公益という抽象的なものに求めた上で︑この義務は︑委任者が免除した場合には消滅するとする︒

井上説は︑弁護士の営業を法が公認した趣旨である当事者の私益保護が黙秘義務の根拠であるが︑証人尋問に

おいて職務上の秘密を供述しても漏洩にあたらないので︑供述を為した証人︵弁護士︶は民事上の責任は負う

ものの刑事罰は負わない︑とする︒宮城説は︑黙秘義務を刑法上の秘密漏示罪︵現行第=二四条︶とパラレル

に解した上で︑証人が証言義務と刑事上の制裁を伴う黙秘義務との板挟みになることは理に惇るために証言拒

絶権が認められるとするのである︒特に井上説と宮城説では︑証人が証言拒絶権を行使せず職務上の秘密につ

いて訊問に応じた場合に︑刑事上の責任を負うか否かの点について︑結論が異なることになる︒また︑秘密漏

示罪の規定とパラレルに考える宮城説は別として︑他の二説は︑黙秘義務の根拠を実体法規とは異なる抽象的

なものに求めているが︑これは後にみるように︑弁護士については︑昭和八年の弁護士法改正においてはじめ

て実体法上守秘義務の規定が明文化されたのであるから︑少なくとも明治二一二年民事訴訟法の時点においては︑

弁護士の職業上の義務とは︑特定の実体法規を念頭に置いたものではなく︑一般的抽象的な義務でしかなかっ

(15)

 たためといえよう︒

3.大正改正においては︑職務上の秘密に関する証言拒絶権についても改正が論じられたものの︑議論の中心は︑        ︵4︶  明治二三年法において列挙されていなかった歯科医師︑薬剤師等についてこれを追加するか否か︑の点にあり︑

弁護士の証言拒絶権との関係においては︑﹁職業ノ為メ委託ヲ受ケタルニ因リテ知リタル事実﹂が﹁職務上知

 リタル事実﹂と字句が変更されたにとどまった︒

民事訴訟法︵大正一五年法第六一号改正後︶

第二八一条

左ノ場合二於テハ証人ハ証言ヲ拒ムコトヲ得

一一

緕t︑歯科医師︑薬剤師︑薬種商︑産婆︑弁護士︑弁理士︑弁護人︑公証人︑宗教又ハ祀ノ職二在ル者又ハ

 此等ノ職二在リタル者力職務上知リタル事実ニシテ黙秘スヘキモノニ付訊問ヲ受クルトキ

前項ノ規定ハ証人力黙秘ノ義務ヲ免セラレタル場合ニハ之ヲ適用セス

  この二八一条一項二号に関しては︑昭和六一年の改正により外国法事務弁護士がその対象に追加されたほか

      ︵45︶

 は︑平成八年改正においても実質的な改正はなされず︑現行民事訴訟法へと引き継がれている︒繰り返しにな

 るが︑この大正一五年改正から平成八年改正までの間に︑昭和八年の弁護士法改正によって実体法上弁護士の

守秘義務が明文で規定されたことを指摘しておきたい︒

4.前章において論じたように︑職務上の秘密に関する弁護士の証言拒絶権は︑弁護士が負っている黙秘義務を

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶       ︵都法四十九ー一︶ 三〇九

(16)

       三一〇

前提としている︒だが︑以上の経緯を鑑みるに︑ここでいう﹁黙秘義務﹂とは︑必ずしも特定の実体法規を前

提としない︑一般的抽象的なものとして議論されていたように思われる︒たとえ弁護士法第二一二条といった且ハ

体的な法規が挙げられる場合であっても︑それは証言拒絶権の付与を正当化する根拠として一般的抽象的に持

ち出されていたにとどまり︑具体的に証言拒絶権の範囲を画する基準として働いていた訳ではなかった︒だが︑

特定の職業について︑黙秘義務の存在ゆえに証言拒絶権を認めるべきだというのであれば︑その証言拒絶権は︑

本来︑その職業に課せられる実体法上の黙秘義務を訴訟上も反映するものであるべきであろう︒つまり︑民事

訴訟法第一九七条一項二号の解釈として︑各職業ごとの実体法上の守秘義務の範囲により︑証言拒絶権行使の

対象となる﹁職務上知り得た事実で黙秘すべきもの﹂の具体的内容・範囲が実質的に異なってくることがあり     ︵46︶ 得べきである︒文書提出命令に関する最高裁平成一九年一二月一一日第三小法廷決定・前掲注4では︑金融機

関の守秘義務について︑田原睦夫裁判官が補足意見の中で﹁金融機関が︑顧客情報について全般的に守秘義務

を負うとの見解が主張されることがあるが︑それは個々の顧客との一般的な守秘義務の集積の結果︑顧客情報

について広く守秘義務を負う状態となっていることを表現したものにすぎない⁝⁝その点で︑民訴法獅条1項

2号に定める医師や弁護士等の職務上の守秘義務とは異なる﹂としてその内容を実質的に解釈しているが︑こ

れと同様に︑職務上の秘密に関する証言拒絶権についても︑その根拠とされる職務上の守秘義務は本来職業ご

とに異なり︑一様ではないのであるから︑その違いを訴訟上も反映すべきである︒むろん︑実体法上は守秘義

務が認められる場面であっても︑訴訟となった以上真実発見の要請が優先し︑証言拒絶権は認められないとい

うように︑両者の範囲が必ずしも一致しないことはあり得るであろうが︑基本的には︑証言拒絶権の範囲を画

するにあたっては︑実体法上の守秘義務の範囲を強く意識すべきと考える︒

(17)

   そこで次章では︑弁護士が有する実体法上の秘密保持の権利義務につき︑その具体的内容を検討することと

  する︒

五.弁護士が有する秘密保持の権利及び義務

 1.秘密保持の権利義務の形式的根拠

   弁護士の秘密保持の権利義務については︑まず弁護士法が次のように定める︒

 ︵秘密保持の権利及び義務︶

第二三条弁護士又は弁護士であつた者は︑その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し︑義務を負う︒但し︑

法律に別段の定めがある場合は︑この限りでない︒

   また︑日本弁護士連合会の会規たる弁護士職務基本規程にも︑守秘義務に関する定めがおかれている︒

弁護士職務基本規程︵平成一六年一一月一〇日会規第七〇号︶

 ︵秘密の保持︶

 第二三条弁護士は︑正当な理由なく︑依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし︑又は利用してはなら

 ない︒

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶       ︵都法四十九−一︶ 三=

(18)

      三一二

  両規定は︑国会による制定法と弁護士会の会規という︑異なった規範形式をとるものではあるが︑共に弁護

 士の職務上の秘密の保持について規定している︒両規定の内容を明らかにし︑関係を整理するため︑次節では︑

 両規定の制定の経緯を追うこととしよう︒

2.弁護士法第一一一二条及び弁護士職務基本規程第二三条の制定の経緯

      ︵47︶

(一

j 我が国の弁護士制度は︑明治五年創設の代言人制度をその原初とする︒創設当初は代言人の資格の制限等

  もなく︑これを定める必要から︑明治九年に代言人規則が制定された︒同規則は明治=二年の改正を経て︑

      ︵48︶

  明治二六年の弁護士法へと発展していったのであるが︑この明治二六年弁護士法は︑第三章に﹁弁護士ノ権

  利及ビ義務﹂との章を設けていたものの︑守秘義務については規定をおいていなかった︒

︵二︶大正一〇年の第四四回帝国議会において︑東京弁護士会の手による弁護士法改正法律案が衆議院に提出さ

  れ︑委員附託とされた︒この委員会は︑原案に﹁弁護士の秘密保持の権利﹂として﹁弁護士ハ職務上知得シ

  タル事項二付キ陳述スル義務ナシ﹂との規定を加え議決した旨の記録があるが︑本議会に上程されることな

      ︵49︶  く会期が終わっている︒

︵三︶ 大正一一年の第四五回帝国議会において︑再び︑東京弁護士会の手による弁護士法改正法律案が提出され

  た︒この法律案では﹁弁護士ハ職務上取扱ヒタル事項二付黙秘ノ権利ヲ有ス︑何人ト難弁護士ノ職務上取扱

  ヒタル事項若ハ其ノ述ヘタル意見二付其ノ弁護士ノ意二反シテ推問ヲ為スコトヲ得ス﹂として︑弁護士の

  ﹁黙秘ノ権利﹂が明文化され︑より具体的になっている︒この法律案も委員附託とされ︑政府の修正意見を

  取り入れた上で議決︑衆議院においても可決されたのであるが︑貴族院に送付された後会期が終了してしま     ︵50︶

  っている︒

(19)

︵四︶ 弁護士法改正の要望の高まりを受け︑司法省は︑大正一一年一〇月︑弁護士法改正調査委員会を設置し︑

  改正案を策定させた︒同委員会が昭和二年一〇月に司法省に答申した弁護士法改正綱領では︑第二〇条に

  ﹁弁護士又ハ弁護士タリシ者ハ︑其ノ職務上知得タル秘密ヲ保持スル権利ヲ有シ︑義務ヲ負フ﹂との規定を

  おいていたが︑このように弁護士の秘密保持の権利義務に関する規定を弁護士法中に定めることが適当であ

      ︵51︶

  るかについては︑議論があった︒これを不要とする立場は︑弁護士が職務上知り得た秘密については︑これ

  を保持することは依頼者に対する職務上の重要な義務であり︑違背した場合は刑事上罰せられること︑既に

  民事訴訟法その他の法律で証言拒絶権の定めもあること︑をもって︑これ以上の規定を設ける必要がないと

  主張した︒これに対して︑規定を必要とする立場は︑証言拒絶権や物の差押︵刑事訴訟法一四九条等︶につ

  いては既に規定があるものの︑文書の開示を拒む規定はないこと︑また︑裁判所外での審問・押収開示の拒

  絶のため︑﹁弁護士又ハ弁護士タリシ者ハ其ノ職務上知得タル人ノ秘密二関シ審問ヲ受ケ文書ノ開示ヲ求メ

  ラルルコトナシ﹂という規定を置くべきであると主張した︒両者の妥協の結果︑改正綱領第二〇条ができあ

  がったのである︒

︵五︶ ところが︑司法省は︑改正弁護士法案の作成にあたって︑民事訴訟法その他の規定により依頼者等の秘

  密.弁護士の依頼者に対する信頼関係の保障は十分であるとして︑改正綱領第二〇条を削除し︑第六四回帝

       ︵52︶

  国議会に提案した︒各弁護士会はこれに強く反対し︑衆議院における弁護士法案特別委員会は︑ほぼ全会一

  致で︑同条を復活すべきとの修正意見を出している︒これに対し政府が︑改正綱領第二〇条に相当する規定

  を弁護士法中に設けた場合︑これが民事訴訟法等の特別法と解される恐れがあるため︑当該規定が民事訴訟

  法等の規定を変更するものではなく︑その他当該規定を制限する法律が存在する場合その範囲内でのみ権利

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 三=二

(20)

三一四

を認めるものであることを明確にすべし︑と主張した結果︑但書を付すこととなり︑昭和八年改正弁護士法

第二一条においてはじめて︑次のように︑弁護士法に秘密保持の権利義務が規定されるに至った︒

弁護士法︵昭和八年改正後︶

第二一条弁護士又ハ弁護士タリシ者ハ其ノ職務上知得タル秘密ヲ保持スル権利ヲ有シ義務ヲ負フ但シ他ノ法令

二別段ノ規定アル場合ハ此ノ限リニ非ズ

︵六︶ 第二次世界大戦の敗戦後︑憲法の改正に伴い︑司法法制についても改正の必要が生じた︒裁判所法・検察

  庁法の成立︵昭和二二年︶とあわせ︑弁護士法についても改正作業が進められ︑昭和二四年︑現行弁護士法      ︵田︶   が成立した︒この現行弁護士法では︑第二一二条において︑昭和八年弁護士法第二〇条の規定がそのまま受け

  継がれている︒

   また︑この現行弁護士法は︑弁護士会の会則にも大きな変化をもたらした︒法が弁護士会・日本弁護士連

  合会の会則中に﹁弁護士道徳その他会員の綱紀保持に関する規定﹂を定めるよう求めた︵第四六条二項一号︑

  第三三条二項七号︶ため︑日本弁護士連合会は︑その会則において弁護士道徳に関する基本規程︵第二章︶

  を定め︑さらに詳細な職務倫理規定として︑昭和三〇年︑理事会決議により﹁弁護士倫理﹂を制定したので

  ︵弘︶   ある︒この﹁弁護士倫理﹂には︑秘密保持に関して次のような規定が置かれていた︒

弁護士倫理︵昭和三〇年︶

(21)

第二六条事件について知つた依頼者の秘密は厳に守らなければならない︒

︵七︶ こうして作られた弁護士倫理は︑統一的な職務倫理として一定の役割を果たしたものの︑一九七〇年代︑

  制定以後二〇数年の期間を経て︑社会の変化・弁護士自身の業態の変化に応じ︑改善を図る必要性が生じた

  ため︑日弁連は﹁弁護士倫理に関する委員会﹂を設置し︑弁護士倫理の改正の必要性等を検討させた︒同委

  員会は︑弁護士倫理を全文改訂すべき旨答申して案文を提出し︑これを日弁連理事会が修正した上で臨時総

  会で決議し︑平成二年︑新たな﹁弁護士倫理﹂が制定された︒この新﹁弁護士倫理﹂においては︑秘密保持

  に関して次のような規定が置かれていたが︑これは︑旧第二六条の趣旨を明確にした上で︑第二文により︑

  同一の法律事務所で執務する他の弁護士の依頼者につき知り得た秘密についても︑職務倫理上の秘密保持義

  務が存することを明らかにするものであつ︵樋・

弁護士倫理︵平成二年︶

第二〇条︵秘密の保持︶

 弁護士は︑依頼者について職務上知り得た秘密を正当な事由なく他に漏らし︑又は利用してはならない︒同一

の法律事務所で執務する他の弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密についても同様である︒

︵八︶ 弁護士倫理の全面改正後も︑広告規制の撤廃・弁護士法人の制度化・報酬会規の撤廃等︑弁護士の職務に

  関して数々の改革が行われ︑弁護士の活動領域がさらに拡大した結果︑改めて倫理規範を見直す必要が生じ

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶       ︵都法四十九ー一︶ 三一五

(22)

       三一六

  た︒また︑弁護士倫理は︑日弁連臨時総会の﹁宣明﹂であって︑会則ではないため︑会則中に﹁弁護士道徳

  その他会員の綱紀保持に関する規定﹂を置く︑との弁護士法第三三条第二項第七号の要請を満たさない︑と

  いう法形式上の問題を有していた︒さらに︑弁護士法第五六条第一項は︑弁護士が弁護士会の﹁会則に違反

  し︑所属弁護士会の秩序又は信用を害し︑その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたとき

  は︑懲戒を受ける﹂旨定めるが︑﹁弁護士倫理﹂は会則ではなかったために︑その違反は﹁品位を失うべき

  非行﹂の解釈にあたって考慮されるにすぎないという問題もあった︒

   これらの問題に対処するため︑日弁連は平成二二年四月﹁弁護士倫理委員会﹂を設置︑同委員会が作成し

  た案を︑弁護士倫理改正ワーキンググループ︑正副会長会議︑理事会審議を経て修正を加えた上で︑平成一        ︵65︶   六年=月臨時総会において可決し︑もって会則たる弁護士職務基本規程が成立したのである︒同規程は︑       ︵57︶   平成二年弁護士倫理の第二〇条を踏襲し第二三条に秘密保持の規定を置いていた︒

︵九︶ 以上が︑弁護士法第二三条及び弁護士職務基本規程第二一二条の制定過程である︒ここで着目すべきは︑第

  一に︑弁護士法第二三条は民事訴訟法の特別法ではないことが立法過程から明確であることであろう︒民事

  訴訟法第一九七条二項は︑弁護士法第二三条の﹁法律に別段の定めがある場合﹂にあたり︑同条の秘密保持

  の権利義務は及ばない︒即ち︑弁護士法第二一二条の定める弁護士の秘密保持の権利は︑裁判外において認め

  られるのみであって︑訴訟においては︑民事訴訟法の証言拒絶権の定めに従い︑黙秘義務を免除された証人       ︵58︶   たる弁護士は︑もはや秘密保持の権利である証言拒絶権を有しない︒

   また︑弁護士法第二三条と弁護士職務基本規程第二三条の関係にも注意が必要である︒後者はあくまで日

  弁連の会則に過ぎないものではあるが︑弁護士法第五六条一項が﹁弁護士⁝は︑この法律又は所属弁護士会

(23)

  若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し︑所属弁護士会の秩序又は信用を害し︑その他職務の内外を問わ

  ずその品位を失うべき非行があつたときは︑懲戒を受ける﹂と規定し︑弁護士倫理に替えて弁護士職務基本

  規程が定められた理由の一つが︑まさに同条の﹁会則﹂として懲戒判断の指針となる点にあったのであるか

  ら︑弁護士会による懲戒との関係においては・弁護士法と弁護士職嚢本規程は・並列の地位に⊥ム蝿・弁護

  士自治の観点に鑑みれば︑弁護士が有する秘密保持の権利義務を論ずるにあたっては︑弁護士法だけでなく

  弁護士職務基本規程についても注意を払う必要があるといえよう︒とはいえ︑弁護士職務基本規程第二一二条

  は︑弁護士法第二一二条を受けて︑職務倫理として守秘義務を定めるものといえるから︑以下では︑弁護士法

  を中心に秘密保持の権利義務を論じつっ︑必要に応じて弁護士職務基本規程にも触れてゆくこととする︒

3.弁護士法第二三条の定める秘密保持の権利義務

(一

j それでは︑弁護士法第二三条が定める秘密保持の権利義務につき︑その内容を具体的に検討してみよう︒

  本条は︑弁護士法第一条二項に定められた誠実義務の一内容として︑弁護士の秘密保持の権利義務を規定す             るものであり︑これに違反すると︑秘密漏示罪︵刑法第二二四条一項︶として刑事上罰せられる︒この秘密

  保持の権利義務の実質的な根拠は︑どこにあるのであろうか︒

︵二︶ 法曹倫理としての秘密保持の権利義務の実質的根拠は・次のように説明されてぬ弛︒すなわち・そもそも・

  自己の秘密の開示を強制されないことは︑依頼者にとって当然の権利である︒が︑弁護士が依頼の趣旨に沿

  って職務を遂行するためには︑依頼者の秘密に触れざるを得ない場合が多い︒依頼者としても︑よりよい助

  力を得るため︑弁護士が他に漏らすことはないと信頼して︑自己の秘密を打ち明ける︒このように弁護士は︑

  本来知り得なかった他人の秘密を︑弁護士として信頼関係ができたために知ることとなったのであり︑依頼

  弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶      ︵都法四十九ー一︶ 三一七

(24)

三一八

  者が保有していた秘密保持の権利を損なわないよう万全の注意を払い︑依頼者の信頼に応えなければならな

  い義務を負う︑というものである︒依頼者の秘密を守ることは︑弁護士の職務上の義務として最も重要なも

       ︵62︶

  のであり︑弁護士の職業存立の基礎をなすものといえる︒

︵三︶ では︑いかなる範囲の事項について︑秘密保持の権利義務が及ぶのであろうか︒弁護士法第二一二条は︑弁

  護士が﹁職務上知り得た秘密﹂について秘密保持の権利義務を有すると定める︒ここで︑﹁秘密﹂とは︑一

  般に知られていない事実であって︑本人が特に秘匿しておきたいと考える事項︵主観的意味の秘密︶に限ら          ず︑一般人の立場から見て秘匿しておきたいと考える事項︵客観的意味の秘密︶をも含むと解されている︒

  職務上の秘密に関する証言拒絶権において︑対象とされる秘密が主観的.客観的双方の意味において秘密で

  あることを要するのと異なり︑どちらか一方の意味において秘密であればよいことに注意が必要である︒

   また︑秘密は︑﹁職務上知り得た﹂ものでなくてはならない︒弁護士が職務を行う過程で知り得たもので

  あることが必要であり︑職務行為を行うどの段階でこれを知り得たか︑その原因が何かについては問題では

  ないが︑職務と無関係に︑例えば︑弁護士会の会務活動で知った秘密は︑﹁職務上知り得た﹂秘密ではない

    ︵劔︶

  とされる︒

︵四︶弁護士職務基本規程第二三条が﹁依頼者について職務上知り得た秘密﹂とするのに対し︑弁護士法第二一二

  条は︑単に﹁その職務上知り得た秘密﹂と︑文言上は限定を加えていないことから︑弁護士法上秘密保持の

  権利義務の対象となる秘密は依頼者のものに限られるか︑第三者のものも含むかが議論されている︒大別す

       ︵65︶

  ると︑次のように三つの立場がある︒        ︵66︶  ︵1︶非限定説 弁護士法上の秘密保持の権利義務は︑依頼者について知り得たものに限られないとする立場︒

(25)

 弁護士法第二一二条の文理解釈︑弁護士の公共的役割故に依頼者以外の第三者も信頼して秘密を開示するこ

 とがあること︑及び︑民事訴訟法・刑事訴訟法において︑証言拒絶権の対象が依頼者の秘密に限定されて

 いないことをその根拠とする︒

︵2︶限定説弁護士法上の秘密保持の権利義務は︑依頼者に三て知り得たものに限られるとする⊥壷・弁

 護士法二三条は特に依頼者の弁護士に対する信頼を保護するための規定であること︑英米法の訴訟手続に

 おいて認められている﹀﹇8日Φぺー○巨︒昌㊥臣己ΦoqΦが依頼者との間のコミュニケーションのみをその保護の

 対象としていることをその根拠とする︒

︵3︶折衷説 弁護士法上の秘密保護の権利義務は︑原則として依頼者について知り得たものに限られるが・

例外的に︑依頼者に準ずる一定の地位にある者の秘密については秘密保護の対象となると莚・実質的に

 は︑官公庁などそれ自身で秘密保持義務を負っている機関が︑弁護士照会に応じてその保有する秘密を弁

 護士に開示する際に︑これを弁護士の秘密保護の対象とすることで︑弁護士への開示を正当化する点に︑

 この立場をとる意義がある︒

 非限定説の根拠の一つである︑民事訴訟法の証言拒絶権との調和については︑やや循環論法に陥っている

のではないかとの印象を受ける︒職務上の秘密に関する証言拒絶権が︑実体法上の守秘義務の存在を前提と

するものであることを考えると︑実体法上の守秘義務の範囲を解釈するにあたって民事訴訟法の規定との調

和を図るのは適切ではないであろう︒非限定説・限定説の対立の実質は︑弁護士の公共的役割を重視するか︑

あくまで依頼者の弁護士に対する信頼の保護を目的ととらえるか︑という︑弁護士の地位及び職務に対する

見解の違いにあると考えられる︒

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶       ︵都法四十九ー一︶ 三一九

(26)

三二〇

︵五︶ 弁護士法第二一二条の秘密保持義務に違反したという為には︑﹁正当な理由﹂がないのに秘密を第三者に漏

  らしたことが必要で羅が・これに関連して・民事訴訟法上の証言拒絶権を行使せずに尋問に応じたとき︑

  本条の秘密保持義務に違反するかという点が問題とされる︒証言拒絶権が保障されているのにこれを行使し

       ︵70︶

  ないことについては︑原則として﹁正当な理由﹂がなく︑秘密保持義務に違反するものと考えられよう︒

︵六︶ 以上のように弁護士法の定める秘密保持の権利義務を概観したのであるが︑秘密保持の権利義務の実質的

  根拠︑及びその範囲をどのように考えるかについては︑やはり︑弁護士の地位をどのように捉えるか︑とい

  う視点の設定がきわめて重要な問題であることが分かる︒即ち︑弁護士が︑委任を受けて他人の法律事務を

  執り行う者であることを重視し︑依頼者との関係をベースとしてその地位を捉えるか︑その果たすべき公共

  的役割を重視してその地位を捉えるかにより︑秘密保持の権利義務の内容も︑大きく異なったものとなりう

  る︒そこで次章では︑いったん日本法を離れ︑英米法における弁護士の地位や︑弁護士と依頼人の関係につ

  いて検討してみたい︒英米法では︑﹀﹇8日Φぺ占陪巳 勺昌己Φσ︒oをはじめとして︑弁護士と依頼人との関係︑

  弁護士の代理人としての地位と公共的役割との限界を調整する議論が蓄積されており︑これを分析すること

  で︑日本法にとっても有益な示唆を得ることができると思われるからである︒

︵1︶ 平成=二年法律第一一九号︒

︵2︶ 例えば︑田中紘三﹃弁護士の役割と倫理﹄︵商事法務︑平成一六年︶︑同﹁弁護士倫理の体系的理論化のための視点につ   いて﹂中央ロー・ジャーナルニ巻一号二一頁︵平成一七年︶︑加藤新太郎﹃コモン・ベーシック弁護士倫理﹄︵有斐閣︑平

 成一八年︶等︒

︵3︶ 最高裁判所事務総局民事局﹁平成5年度民事事件の概況﹂法曹時報四六巻一九九五頁以下︑二〇〇九頁及び同﹁平成18

(27)

  年民事事件の概況﹂法曹時報五九巻一一号三七八七頁以下︑三八〇二頁︒

︵4︶例えば︑最高裁平成一九年=一月=日第三小法廷決定・金融商事判例一二八八号六二頁︑最高裁平成一九年一一月三

  〇日第二小法廷決定・金融商事判例=一八二号五七頁等︒

︵5︶ 平成四年以前の裁判例の状況について︑東孝行﹁民事訴訟における運用論の試み ー証言拒絶権を中心としてー﹂判例

  タイムズ七七〇号四頁︵平成四年︶︵東孝行﹃民事訴訟法の解釈と運用﹄︵成文堂︑平成=二年︶五頁以下に﹁証言拒絶権﹂   として再録︶︒

︵6︶大西昭一郎ほか﹁証人尋問・当事者尋問・鑑定・証拠保全について﹂︵座談会︶法の支配三六号︵昭和五三年︶一二〇頁

  以下︒また東.前掲五頁は︑証人尋問が融通をもって実施されていることのほか︑我が国の国民性︑及び︑行使の要件も

  困難であり魅力もなくなったこと︑を証言拒絶権行使が低調であった理由として挙げている︒

︵7︶兼子一11松浦馨11新堂幸司11竹下守夫﹃条解民事訴訟法﹄︵弘文堂︑昭和六一年︶九八七頁︵松浦︶︑斉藤秀夫‖小室直

  人‖西村宏一11林屋礼二編著﹃︹第2版︺注解民事訴訟法︵7︶﹄︵第一法規出版︑平成五年︶三九九頁︵小室直人・東孝

  行︶︑谷口安平11福永有利編﹃注釈民事訴訟法︵6︶証拠 1﹄︵有斐閣︑平成七年︶二五三〜二五五頁︵藤原弘道︶︑賀集

  唱11松本博之11加藤新太郎編﹃基本法コンメンタール﹇第三版﹈ 新民事訴訟法2﹄︵日本評論社︑平成一九年︶一八二〜

  一八三頁︵三代川三千代・鈴木昭洋︶︑加藤正治﹃新訂 民事訴訟法要論︹第七版︺﹄︵有斐閣︑昭和三〇年︶四三二頁︑松

  本博之H上野泰男﹃民事訴訟法︹第五版︺﹄︵弘文堂︑平成二〇年︶四一二〜四二七頁︑新堂幸司﹃新民事訴訟法︹第三版

  補正版︺﹄︵弘文堂︑平成一七年︶五六入〜五六九頁︑伊藤眞﹃民事訴訟法 第3版3訂版﹄︵有斐閣︑平成二〇年︶三四三

  〜三四五頁など︒

︵8︶ 谷ロー1福永編・前掲二五三頁︵藤原︶︑伊藤・前掲三四四頁︒

︵9︶ 谷ロー1福永編・前掲二五四頁︵藤原︶︑伊藤・前掲三四四頁︒

︵10︶兼子ほか・前掲九八七頁︵松浦︶︑菊井維大‖村松俊夫﹃全訂 民事訴訟法︹H︺﹄︵日本評論社︑平成元年︶四六八頁︑

  斎藤ほか編著.前掲三九九頁︵小室・東︶︑谷口‖福永編・前掲二五四頁︵藤原︶︑賀集ほか編・前掲一八二頁︵三代川・

  鈴木︶︑伊藤・前掲三四四頁︒ ︵11︶ 例外として︑十六歳未満の者又は宣誓の趣旨を理解することができない者を証人として尋問する場合︵第二〇一条二項︶︑

  証人自身または証人と密接な関係にある者の刑事処罰を招くおそれがある事項︑またはこれらの者の名誉を害する恐れが

  ある事項について︑証言拒絶権を行使しない証人を尋問する場合︵同条三項︶︑証人自身または証人と密接な関係にある者

  に著しい利害関係のある事項について証人を尋問する場合︵同条四項︶には︑証人は宣誓義務を免れる︒︒

弁護士の守秘義務と証言拒絶権︵一︶       ︵都法四十九ー一︶ 三二一

(28)

三二二

︵12︶ 兼子ほか・前掲九八七頁︵松浦︶︑菊井11村松・前掲四六七頁︑斎藤ほか編著・前掲三九八〜三九九頁︵小室.東︶︑賀   集ほか編・前掲一八三頁︵三代川・鈴木︶︒谷ロー1福永編・前掲二五五頁︵藤原︶は︑証人が故意に虚偽の供述を行ったと

  きは不法行為責任を認めるが︑過失の場合まで違法性を認めるのは行き過ぎであるとする︒

︵13︶ 田中和夫﹁証言拒絶権﹂北村五郎編纂﹃齋藤博士還暦記念 法と裁判﹄︵有斐閣︑昭和一七年︶七七頁以下︑八一頁︑兼   子ほか・前掲九九七頁︵松浦︶︑菊井11村松・前掲四九五頁︑谷口‖福永・前掲二九二頁︵坂田宏︶︒

︵14︶ 兼子ほか・前掲九八七頁︵松浦︶︑斎藤ほか編著・前掲四二五頁︵斎藤・東︶︑谷ロー1福永編・前掲二九二頁︵坂田︶︑賀   集ほか編・前掲一八八頁︵小林秀之・山本浩美︶︒なお︑斎藤ほか編・前掲四二五〜四二六頁︵斎藤.東︶は︑証言拒絶権

  を行使しない旨の契約は︑証言拒絶権を放棄する旨の契約と異なり抗弁権行使の不作為契約であり︑かつ︑旧法第二九〇

  条︵現行法第二〇一条四項︶が証言拒絶の権利を行使しないものを尋問する場合を想定していることからみて︑有効であ

  るとする︒早田尚貴﹁証言拒絶権﹂門口正人編﹃民事証拠法大系 第3巻﹄︵青林書院︑平成一五年︶四七頁以下︑五四頁

  注︵3︶は︑これを評して︑私法上の契約として証言拒絶権不行使の義務を課し︑これに違反した場合には債務不履行責

  任を負うという意味であれば正当というべきとするが︑賛成したい︒

︵15︶ 兼子ほか・前掲九八七頁︵松浦︶︑斎藤ほか編著・前掲四二六頁︵斎藤.東︶︑谷ロー1福永編.前掲二九二頁︵坂田︶︑賀

  集ほか編・前掲一八八頁︵小林・山本︶︒

︵16︶ 斎藤ほか編著・前掲四二六頁︵斎藤・東︶︑谷ロー1福永編.前掲二九二頁︵坂田︶︒

︵17︶ 部分的証言拒絶権・全部的証言拒絶権の呼称は︑斎藤ほか編著・前掲四二五頁︵斎藤.東︶によった︒このほか︑証言

  拒絶権の分類に関しては︑柏木邦良﹁企業秘密と証言拒絶﹂鈴木忠一11三ケ月章監修﹃新.実務民事訴訟講座2﹄︵日本評

  論社︑昭和五六年︶一二ご頁以下︑=四〜一一五頁の人的理由と物的理由を組み合せた分類が参考になる︒

︵18︶ 菊井11村松・前掲四九五頁︑斎藤ほか編著・前掲四二五頁︵斎藤.東︶︑谷ロー1福永.前掲二九二頁︵坂田︶︑賀集ほか

  編・前掲一八八頁︵小林・山本︶︒

︵19︶ 伊藤・前掲三五一頁︑新堂・前掲五六九頁︒なお︑伊藤・前掲三五一〜三五二頁は︑保護の対象が証人自身のみならず︑

  広い範囲の親族︑後見人︑被後見人に及んでいること︑並びに︑プライバシーよりもさらに限定された多義的表現である

  ﹁名誉を害すべき事項﹂によって証言拒絶権を認めること︑については︑立法論的な再検討が望ましいとする︒

︵20︶ 国家公務員法第一〇〇条一項︑地方公務員法第三四条一項等︒

︵21︶ 斎藤ほか編・前掲四三四頁︵斎藤・東︶︑谷口‖福永・前掲三一一頁︵坂田︶︒

︵22︶賀集ほか編・前掲一九〇頁︵小林・山本︶︒

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