奈良教育大学学術リポジトリNEAR
奈良教育大学附属中学校研究集録第36集 ESDの 理念にもとづく学校づくり 〜ESDを視野に入れ た授業研究〜(2年次)
著者 奈良教育大学附属中学校
雑誌名 奈良教育大学附属中学校研究集録
発行年 2007‑11‑02
URL http://hdl.handle.net/10105/663
特 別 支 援 学 級 の 実 践
特別支援教育
代 暁 ン 彩 祥 岡 嶋 平 福 滋 佳 子 原 谷 河 大
なかま とともに体験 や理解 を深 めるとりくみ
〜
5組宿泊行事報告会を とお しての ESD〜
1 は じめ に
本学級 は、
1965年
に特殊学級 と して開設 され た。 それ以来、一人 ひ と りの生徒 を大切 に し、集 団 を保障 し、「 障害・ 発達・ 生活」 に焦点 をあてた教育実践 の検討 をすすめて きた。 また、教育課程 の 自主編成 の検 討 を重 ね、 今 あ る教育課程 をつ くりあげた。 開設 当初か ら、「 系統性、科学性、生活性 を重視 した教科学習 が大切 であ る」 と考 え、学年 の枠 を はず しての発達課題 別 によ る学習集団での授業 をすすめ、学級独 自の行 事 もつ くりだ して きた。本校特別支援学級 (以下、「
5組
」)は、知 的障害 を主 と した学級 で、現在、 1年生6名
、2年生6名
、3
年生
8名
の20名
の学級 で、 自閉傾 向のあ る生徒 や学習 障害、 高機能 障害 の生徒 も年 々増 えて きて い る。WISC―
Ⅲの検 査 で は、 I Q45〜90で
知 的 な遅 れ は比 較的軽 い生徒 も多 いが、 自閉傾 向が あ るため十 分 力が発揮で きないで入級 して きた生徒 も多 い。 また、本学級 に入級 して くる生徒 の多 くは、小学校 で特別支 援学級 に入級 して いて も集団 の保障が十分で な く、少人数での学習経験 しかなか った り、通常学級 の中で課 題 でない学習時間 を過 ご して いた りす る場 合が多 く、生徒同志 の高 ま りの中で学習す る経験が、非常 に少 な い。 また、通常学級か ら入級 して くる生徒 は、本来学習課題でない内容 を学習 し、生徒 自身学 びの 自信をな くして いた り、学習 に対す る不安 を もっていることが多 い。 こうした生徒 たちに、学ぶ ことの喜 びを持 たせ、自信をつ け、 は りのあ る学校生活 を送 らせたい と思 って いる。
本学級 は質 の異 なる多様 な集団 を保障 して いる。一人 の生徒 に質 の異 なる複数 の集団 を保障す ることの大 切 さが、 これ までの実践・ 研究 の中で確かめ られて きて いるが、本学級 において も、質 の異 なる三つの集団
を次の よ うに位置づ け、教育活動 にあわせて集団編成 をお こな って いる。
・ 基礎集団 (学級集団)
三年 間の中学校生活 を通 して、人格 の発達 にと りくんでい く最 も基礎 とな る集団。学校生活 の中で は、基礎集 団か ら5組全体集団、学年集団、 そ して全校集団へ と発展 して い く基礎 とな る集団。
5組
で は、学年 を単位 に した1年
5組、2年 5組、3年 5組が これにあた る。・ 学習集団 (学習課題別集団)
教科指導 の領域 で、学習課題 と学習 内容 に即 して集団編成す る。 したが って、学習す る力が共通 の 課題 にたち向か ってい るか ど うかを基準 に編成す ることを原則 とす る集団。国語 は
4グ
ル ープ、算数 は5グ
ループ、理科0社
会・ 美術・ 工作 は3グ
ループ、音楽・ 家庭 は2グ
ループ、体育 は2グ
ループ と全体の編成 とな って いる。・ 労働集団
年齢・ 性別・ 生活や学習す る力 の異 なる ものが、共 同の教育活動、主 と して総 合的な学習活動 (労 働)や自主的・ 自治的活動 などにとり くむ ことを通 して、人間関係 を豊か に して い く集団。
5組
では、学年 の枠 を はず して タテわ りの4集団 を編成 して いる。
また、5組の一 日の 日課 と集団 の流れを次 の様 に組織 して いる。
‑134‑
〔 一日の日課と集団の流れ〕
枷 ¨ 麺
全体集 団 学習集 団 基礎 集 団 労働集団 学習集 団 基礎 集 団
労働集団 の班長 は、必 ず しも学習課題 の高 い生徒で はないが、 みん なか ら選 ばれ た ことによ り、 自分 もが んば る意 欲 を持 ち、班 全体 をまとめて い く力 を培 って いる。 また、学習課題別 によ る学習集 団 は、教科 によ り生徒の集 団か異 な るが、 ご く自然 に受 けとめて い る生徒が多い。基礎集団 (学級集団)では中心 的な役割 がで きな くて も、学習集団 の中で は リーダー的 な役割 を果 して いる生徒 も多 い。基礎集団 (学級集団)と し ての力 は、3年生 にな ると学習課題 の力だ けでな く、生活 の力 の高 ま りが見 られ、 1年生や
2年
生 と違 った 基礎集団 (学級集団)と しての力が蓄積 され発揮 で きるよ うにな り、5組
全体 をまとめて い く力が育 って くる。私 たちは、 そ う した集団 の力を3年間を見通 して高めて い くことを課題 に して きた。
この様 に多様 な質の異 なる集団が保障 され ることによって、支え合い学 び合い、安心 して学習で きる条件 をつ くりだ して きた。 その ことによ り、学年 の枠 を越 えて、 日常 的 に要求 しあ う関係や支 え合 う関係がで き て きて いる。今 まで は、友 だ ちの支 えで全てや って もらった り、教 えて もらって きた生徒 も、対等 で要求が 出せ る人間関係がで きて きて いる。 そ う した
5組
集団の中で こそ、ESDの
理念 に基づ く持続可能 な教育が 可能 にな ると考 え る。5組
で は、常 に自分の思 いや考 えが 自由に言 え る場が あ り、集団が ある。教科学習 の場 だ けでな く学校生 活 の中で も、生徒が互 いに高 め合 いなが ら学 び合 う場 が多い。5組において は、教育課程 の中に、ESDの
理念 に基づ く教育実践 の場 が準備 されてい る。今回の
ESDの
理念 に基づ く実践 と して、新 たにとりくんだ、5組宿泊行事報告会の様子 につ いて報告 し、持続可能 な教育 の大切 さにつ いて まとめ ることにす る。宿泊行 事 は
1年
生 は曽爾高原での1泊 2日
の野外活動、2年生 は二重県答志島での2泊 3日
の臨海実習、3年
生 は3泊 4日
の沖縄修学旅行が実施 され、今年 も全学年 の宿泊行事報告会が もたれた。5組で は、 今まで各学年 の代表が一部の活動 について報告、 発表 して きた。 また、事前 の学習、当 日での様子 を綴 ること文章 スケ ッ チや スケ ッチな どの ま とめを中心 に、文集 にまとめ る学習 を して きた。 しか しなが ら、5組の生徒 にとって は各学年 での とりくみの様子 を十分 に伝 え ることがで きず、 また、 自分たちの とり くみ に対 しての疑問や質 問 に も答 え ることがで きて いなか った ことに気付 き、5組
の生徒全学年全員が参加す る5組
宿泊行事報告 会 を実施す ることに した。 また生徒 の 自治的活動 と して、生徒一人 ひ とりが輝 くことので きる活動 にとりくみ、学年間で受 け継 がれ る、 ひろげ られ るとい う観点 で
ESDに
関連づ けて研究 を深 めたい と考 えた。5組
だ け で とりくむ ことによ り、一般 的 に受 け身 にな りが ちな5組
の生徒 に対 して、一人 ひ とりに応 じた課題 を設定 し、全員で とり くみ、全員で発表 で きる機 会を与 え ることによ り参加型学習が実現 で きると考え、私 たちの 学級 の課題 であ る社会性 の力 を伸 はす コ ミュニケー シヨン能力 の育成 につなが るか らで ある。 発表す るだ け でな く、質問 に答 え ることも大 切な学習 であ る。 自分たちの知 らない ことに対 す る質問、すでに経験 した こ とに対す る質問を考 え ることは、質問す る生徒 も答え る生徒 も学習 を深 め ることがで きる。実感 した ことを 互 いに学 び合 うことが、未来 の社会 をつ くる基礎 にな ると考 え る。 また仲間 と学 び合 うことによ り、連帯 することや協力す ることの喜 びを感 じ大 切 さを理解す ることによ り、一層 その学 びを深 め るのだ と思 う。
こうした私 たちの考えを もとに、「5組宿泊行事報告会」 に とり くむ ことに した。 また、 その様子 を ビデ オで本校 の宿泊行事報告会で発表す ることによ り、通常学級 の生徒 に障害 を もつ5組生徒 の思 いやがんば り
を知 らせ理解 させ ることも、共 に社会 を創 る持続可能 な教育 につ なが る もの と信 じて いる。
次章 において は、各学年 の とりくみを具体 的 にま とめてい る。
2
「 5組宿 泊 行 事 報 告 会 」 に と り くん で(1年生)
(1)事前 の と り くみ
① マイナスイメー ジ
1年
5組にお いて は、 曽爾 への野外活動 自体が、中学校生活 での初 めての大 きな行事 とな り、初 め ての宿泊行事 を彼 らの興味0関
心 にど う迫 れ るかが大 きなポイ ン トとな った。彼 らの心理 と して、 i本校 の生徒 のなか に入 る不安
五本校 の生徒 と同 じコースで登れ ないので、 自尊感情 を下 げ られて いる思 い 面宿泊 や山登 りの不安
が現 れていた。
iの
心理 を現 して いた生徒 (以下A)は、 当初、野 外活動 自体 を参加 した くない と言 って いた。(5月
当初 よ り)その後、少 し見通 しが見えて きて、「 曽爾」へ は行 きたいが、2日
目の班 での野外炊 飯 を、本校 の生徒 とはや りた くないか ら、 2日 目は帰 ると野外活動 当 日まで、 いい続 けて いた。五の心理 を現 して いた生徒 (以下B)は、 ボーイスカウ トな どで、 キ ャンプ等 の経験 も豊 かだ った ので、 自分 はみんなとは違 って、「登れ るんだ」 とい う気持 ちとがあるのに、本校の生徒 とは同 じコー スで はないので、 自尊感情が下が っていた。 ちなみに「亀山」の ことを「 しけた山」 と言 っていた。
面の心理 を現 して いた生徒 (以下
C、
D)のなかで、Cは不安 の強 い生徒 で、小学校 の時火 を怖が るので、 キ ャンプ フ ァイヤーに参加 で きてな く、 また暗 いの も,亡ヽ理的 に不安 にな る、 そ して山登 りも 自信が ないので、不安 を募 らせて いた。Dは怖 が りで、特 に夜 の暗 さには不安 を もって いた。
事前 の心理 を もつ この よ うな生徒が
3分
の2じ
めて いたので、「 曽爾」 の 自然 の魅力を事前 の学習 に取 り入 れ ることに した。②
プ ラスイ メー ジに
「 曽爾Jはススキで有 名である。 イ ンターネッ トなどで調べ ると、秋 の風景の方が数段多 く、初夏 の イメー ジを クローズア ップ した ものを探す ことは難 しか った。 しか し、Aが鳥 や 自然 の生 き物が好 きな ことに注 目 して、「 曽爾」 の野鳥 につ いて、学級全体で調べ ることに した。
「 曽爾」 の野鳥 につ いて はイ ンターネ ッ トで検索 し、 その野鳥 を鳥 の図鑑で姿、大 きさ、鳴 き方 な ど、生徒 の興味 あ ることを調べ ることに した。
様 々な野鳥 が いることを知 り、野鳥 の美 しさや実際の大 きさを知 ることで、今 まで生 き物 に興味 を 示 さなか った生徒 も興 味を示す よ うにな った。Aは「 曽爾」 で野鳥 を見 たい気持 ちを募 らせ た。
C、
Dも共感 した。
Bも
山登 りが怖 い とい う生徒 に対 して、助 けて欲 しい と頼んだ ところ、 しょうが ない とい う気持 ち に切 り替 え、 また頼んだ ことで 自尊感情 も持 ち直 したよ うに思 われ た。夜 の暗 さは懐 中電灯 を持 ってい くとい うことで、
C、
Dは納得 した。③
野外活動 を無事終 え る
「 曽爾」 の 自然 は、生徒 の気持 ちを大 き く変え ることがで きた。「 曽爾Jへ着 くな り、「 ここ、 いい な ぁ。」 と曽爾 の 自然 を感 じ取 って くれていた。
「亀 山Jに登 り始 め ると、思 ったよ り急 な勾配 なので、一 人一人が精一杯 とな っていた。 しか し景 色 を振 り返 るごとに、上か らみ る自然 の雄大 さに感動 してい るよ うで、山登 りが苦手 な生徒 に対 して
‑136‑
も、 それぞれが声 をか けるなど、
5組
のなか まで登 って い るとい う意識が 自然 に生 まれていた。残念 なが ら、 お 目当ての野鳥 はなかなか 目の前 に現れて くれなか ったが、 その夜 のス タ ンツは
5組
全員で多 いに盛 り上 が ることがで きた。 火の怖 が るCも
、 キ ャンプ フ ァイヤーの火の ことは忘れたか のよ うに、 ス タンツ発表を終え ることがで きた。その雰 囲気が余韻 と して残 ったのか、Aは 2日 目の本校 の生徒 との野外炊飯 も参加す る ことがで き た。
「 曽爾」の 自然 に囲 まれて、生徒 は初 めての野外活動 を体験す ることがで きた。
(2)当日の様 子
1年
生 は野外活動 を終 えてか らの準備期間が大変短 く、野外活動 を終 えた 日も作文 と詩 を書 いて くる 宿題 を出 したほどであ った。 しか し彼 らは不平 も言わず、 きちん と自分 な りに宿題 を して きた。作文 は「 野外活動へ行 って」 の感想文 を、詩 は「 曽爾」で感 じた 自然 を、 自分 が 自然 の一部 にな って 感 じた ことを綴 る作品で、本校 の生徒 も同 じ課題が出題 されて いた。詩 につ いて は、事前 に書 き方 を学 習 してい る。
Bの作 品を紹 介す る。「 曽爾」 へ行 っての気持 ちを見事 に表 して いると思 われ る。
「 しけた山め じろ」
オ レはめ じろ
しけた山の上空 を とんだ りす るぜ 曽爾高原 を とぶの はき もちいい よそには三度 といか ない
また、準備期 間の短 い中で、 当 日読 む文 もそれぞれ考 え させ たところ、Aは、事前学習 の ことを紹介 す ることを選 び、短 いが文 にまとめ ることがで きた。
ぼ くたちは、 そにに行 くまえに、野鳥の勉強 を しま した。
ウグイスや ヒバ リ、 あかげ ら、 メ ジロな どを勉強 しま した。
メ ジロはそに村 の鳥 です。
ぼ くたちはそにで、野鳥をみつ けるためにそ うがん きょうを もって行 きま した。
む こうで は飛 んで いるメジロとか ウグイスのな きごえが きこえた りしま した。
とぶのが速 くて、写真 はとれ ませんで した。
ウグイスのな きごえ はほ―ほけき ょと連続で な きま した。
短 い練習 時間の中で、彼 らは真 剣 に取 り組 む ことがで きたよ うに思われた。 当 日は、事前 の練習 も自 主的 に練習 を し、発表 も自分 たちで書 いた文章 を しっか り発表で きた。 そ して先輩 や保護者 に温か く見 守 られなが ら、無事 発表 を終 え ることがで きた。
(3)と り くみ を終 えて
彼 らの作 品の中で、印象的だ ったのは、時系列 に楽 しか った ことを書 いてい るの は もちろんだが、事 前学習で取 り組 んだ、「 曽爾 の野鳥」 につ いて、特 に、 メジロや カラスにつ いて書 いてあ った ことであ っ た。 また、 1年
5組
の6人
がそろ って行 けた ことが よか った ことを感想 に書 いた生徒 もいた。みんなで亀山にのば り、急なとことかを力をあわせて、助 け合 ってのぼり、けがな くのばれて、
よか ったです。
このよ うな文か らも、生徒が野外活動で達成感 を得 たことか伺え る。 そ して、 それが宿泊行事報告会 に発表 しよ うとい う気持 ちに させたのだ と思 われ る。 発表 当 日、緊張感 を もちなが ら、少 々の間違 いは
お互 いで カバ ー しなが ら、発表す ることがで きた。先輩 たちか らも様 々な質問があ り、 自分 たちの話 を 聴 いて もらえた実感 も得 た と思 われ る。
自分 たちがや り遂 げた とい う満足感 のなかで、先輩 たちの発表 を しっか り聞 くことがで きた と思 われ る。
先輩 たちへの質 問 も
1年
生 か ら多 く出て、興味 を示 して いることが伺われ た。 そ して宿泊行事報告会 を 自分 たちか ら積極的 に参加 す ることで、2年次、3年
次 の宿泊行事 の見通 しももてた と思 われ る。見通 しを もつ とい うことは、5組のよ うな知的な遅 れを もつ生徒 にとって は非常 に大切 な ことで、 も ともと知的な遅 れの ある生徒 は見通 しが もちに くい。 これ は神経生理学 的な見知か らも述べ られて いる。
だか らこの見通 しが ないために、不安 が強 くな った り、 自分 の感情 が コ ン トロールで きなか った りす る ことが現象面 と して現れて くるのである。 まわ りの ものは この見通 しを どうもたすか、支援す るかが大 切 な ことなのであ る。
とりくみを終 えて、2年次 は海 の生 き物 を調べたい、3年次 は沖縄 の生 き物 を調べ たい と意欲的 な声 が聞 こえ るよ うにな った ことは、見通 しを もて た ことにつ なが るといえよ う。
また、短 い準備期間で はあ ったが、 自分 たちで取 り組 んだか らこそ、参加 して い るとい う意識 も強 く な り、同 じ場 のなかでの他学年 の発表 を 自分 の ことと して、聞 くことがで きたのだ と思 われ る。
このよ うに、意欲的な とりくみにつなが ったのは、事前 のとりくみを大切 に した ことだ と思われ る。
特 に
1年
生 は、新 しい環境 のなかで、特 に行事 は日頃 の生活 リズムと変わ るので、 見通 しが もてない 分、不安 にか られ るのであ る。行事報告会へ うま くつ なげ るためには、行事 の成功が あ って とい うこと はい うまで もない といえ よ う。ESDに
関連 した ことで言 えば、5組の生徒 は、何 らかのハ ンデ ィーを もっていて、 自分 自身 に対す る不安 が強 く、 セル フエステ ィームが低 い と言 えよ う。 1年生 の宿泊 の前 のそれぞれの不安 は、賄旨力」を阻む ものであ ると考 え られ る。 この不安 を取 り除 くには、 自分か ら行動 を起 こす こと、 す なわ ち主 体 的な行動 を起 こす ことが大切 と仮説 した。 そのために、宿泊地であ る「 曽爾」 の事前学習が行 ってみた い とい う気持 ちに変わ り、
ESDを
通 じて育 みたい「能力」 であ る、気持 ちや考 えを表現す る力 を育 む ことがで きた と考 え られ る。 それ は、「 詩」 や「 作文」 で発表す るとい う形 で表 して い る。 またESD
の学 び方 の一つである学習者 の主体性 を尊重 し、関わ る人が互 いに学 び合えた と思 われ る。 そ して、 そ の結果、宿泊行事報告会 は自分の ことと して とらえ ることがで き、来年、再来年の学習 したい ことへの 興味や見通 しが もてた ことにつ なが った と思 われ る。
そ して、現在、 1年生 は自然 に対す る興味、関心 も高 くな り、学習 につ いて は積極 的 に参加 で きるよ うにな って きて い る。
1年
生 に とつて は、ESDの
学習 の土台作 りで、 これか らが それに向か っての学 習 につ なが ると考 え られ る。 もちろん、彼 らにはハ ンデ ィーがあ る。 しか しそれを乗 り越 え られ るよ う な とりくみを積 み上 げて い くことが、彼 ら自身が考 え、参画 していける人 と して育 ってい くことを願 っ て、今後 のESDの
とりくみを続 けてい きたい と思 う。5組宿泊行事報告会 は、
1年
生 にとって、 自分 たち も参加 す ることによ って、 これか らの3年間の大 きな見通 しを もつ ための とりくみだ った といえ よ う。(2年生〕
(1)事前 と りくみ
〜学 習 の主 体 者 と して〜
①
よ りわか りやす い発表 に〜他者 に伝 え るとい うこと〜
2年
5組
で は「 発表す るとい うことはどうい うことか」 とい う点 を大切 に考え、 とりくんだ。 自分 で 日記 や作文 にまとめ る作業 とはどう違 うのか とい うことを考 え合 った。 日記 な ら、多少の説 明不足 な どは許 され る し、作文 な ら多少冗長 にな って しま って も、 しっか りま とめ られ た らよい。 しか し‑138‑
「 発表」 は、「聞 き手」 が存在 し、「 伝 えたい もの」 とその方 法 を工夫 した り、 よ り明確 に しなければ な らない。「 なか まにどう伝え るかJにつ いて、 まさにそれが苦手 だ った り、 そ こに困難 さを もつ子 ど もたち とともに考 え、 と りくんでみたい と考 えた。
生徒か らは、「
1年
生 が思 わず『 早 く行 ってみたい!』 と言 って くれた らいいな」「『 へ ぇ、知 らん か ったわ、 そ うや ったんか』 って勉強 にな った らいいなJ「
3年生が『 なつか しいな ぁ』 と思 った り、『 2年生 もち ゃん とがんば ってん な ぁ』 と思 って くれ た らいいな。」 とい う意 見が 出て きた。「 伝 えた い
J「
伝 わ った らいいな」 とい うねが いがあ らわれて きたので、発表 の方法 につ いて考 えて い った。「 作文 をた くさん、 た くさん読 むか?Jと問 うてみ ると、「 あかん ! そん なんわか りに くい。 聞 いてば っか りや った らあかん。Jと気づ き、「 写真 をみて もらお う。
J「
ぼ くら、 自分で撮 った写真 ある やん !」 と方法 を提案で きるよ うにな った。生徒 らは、是非見て もらいたい写真 を2枚
ずつを選 び、コメ ン トを考 えた。
1年
生 には女子 が2名
い る。 その2名
対 し、来年 の ことを考 え た配慮 と優 しさと、「 ぜ ひや ってみ て欲 しい」 とねが いの こもった コメ ン トで あ る。他 に も、「 臨海実習 は行 くまで によ うけ (た くさん)勉強 したか らな、 その フ ァイル と本 を見せて あげた らええな。Jと い う意見 も出て、 イメー ジではな くその ものを見せてあげることにな った。
「
2年
生 の発表 は、パ ンフ レッ トはどのペー ジにの って るかわか らない とか、答志 島はど こにあるの かわか らない とか、 まず発表 の最初 の ところで、聴 いてい る人が迷子 にな らないよ うに しない とね。」とい う問 いか けによ って、 い きな り「 海の生物の紹介」 に始 まりそ うであった発表の組み立ては、次 のよ うなセ リフか ら始 まることにな った。
私 たち教 師 は、つ い活動報告 に偏 りが ちになるが、 まさに生徒 の視点 であ る。校外での宿泊で とも か く 日らヽ配」 で「 不安」 なの は、何 よ りも「 行 き帰 りの交通
J「
食べ ること」「 寝 ることJである。 こ れ らの見通 しが もてない、 あ るいは うん と不安 が高 い場 合 は、活動 ど ころで はな くなる。後輩 に対 し て彼 らはその ことを うん と考 え、工夫 しよ うと して いるのであ る。②
他学年への質問を工夫す る
〜学 びを深め るとい うこと〜
この ことは、「
1年
生 への質問 (発表後 の質問 コーナー)」 を考 え る場面 で もよ く表 れて いる。「 1 年生 には、 なんて質 問 して あげた ら、 答 えやす いか な ぁ。」 とい う問 いか けに対 して、 まず最初 に出 た意見が「『 夜 は ぐっす りね られま したか?』 って い うの はど うですか。Jであ る。 や は り、家族 と離 れて、 どん な ところで、 どん なも、うに寝 るのか は大 きな関心事 で あ る。続 いて、「 バ イキ ングはおいしか ったですか
?」
とい う意見が出た。や は り、「 食べ ること」 につ いての質問で あ る。 しか し、 なんで も質問すれば よい とい うもので は ない。
この写真 はぼ くが魚 をつ った ところです。 これはメバルをつ った ところです。 ほかに も、 メジ ナ とカサ ゴをつ りま した。河原先生 に写真 を とって もらいま した。
この写真 はMさんがつ りを してい るところです。女子 で もつ りを楽 しめます。安心 して くだ さ
い 。
質疑 の場 が、 あ らためて考 え合 う場 とな るために、問 いを続 けた。例えば、3年生 や
2年
生が、昨年 一昨年 の ことを思 い出 し、皆が イメー ジを共有 しなが ら質疑 を聞 き合えた ら、 それぞれの体験 が よ り 深 まるので はないだ ろ うか。聞 き手がみ な体験済み とな って しま う1年
生 の発表 に対 して、 1年先輩とな る
2年
生が、 自分の体験 をなぞ りなが ら発表 を聞 き、 よ り深 め られ るよ うな質問をあ らか じめ考 え るとい う活動 も大切 に したい と考 えた。これか ら、2年生 の発表 を します。パ ンフ レッ トは
4ペ
ー ジか らを見て くだ さい。行 き先 は、二重県鳥羽市 です。
5ペ
ー ジの地図をみて くだ さい。(後略)行 きは、近鉄特急 に乗 って いきま した。鳥羽駅 でお ります。帰 りは鳥羽駅 か ら近鉄奈良駅 の近 くまで、二重交通 の観光 バ スで した。
そ こで、「 先輩 たちはね、 みんな
1年
生 の時 に曽爾高原 に行 って、亀 山登 山 して いるで しょう?
だか ら、例 えばね『 なん とい う山に登 りま したか?』 なんて質問 して も、『 亀山 に決 ま って る』 って 思 うよね。『1年
生 はなんて答 え るかな』『 私 は1年
生 の時 こん な気持 ちだ ったけれ ど』 って思 え る質 問をす ると、 みんな も しっか り聞 けるよね」 となげか けた。生徒 らは、 しば らく考え た後、「『 山 に登 ってつかれ ませんで したか
?』
って聞いた らいい。 あんま り しん ど くなか った人 も、 しん どか った人 も、 こわか った人 もいると思 う。 ぼ くは去年、頂上 の とこ ろのが けが'昨か った し、む っち ゃ しん どか ったわ。」 と発言 した。他 に も「 じゃあ、『 カ レー作 りは楽 しか ったですか?』『 カ レーはお い しか ったですか?』 って聞 く!」「 はい!『
スケ ッチは うま く描 け ま したか?』 や な。 ほ ら、 スケ ッチ ブ ックに描 いたやん。 き っと1年
生 も描 くと思 うか ら。Jと意見 が続 いた。それか らも「 あ、そ した ら『 スタンツはうま く歌えま したか』や。
1年
生 は、 よ く練習 して るか ら。」「 きっと成功す ると思 う。毎 日歌 って るか らね。」「 あ1 火の神様、誰 かな ぁ
?
ま っくらや ったな?
なん とか広場 に出て い ったな。 あ―なつか しい│」 と発言が続 く。 1年も前 の体験 をなつか しく思 い 出 し語 り合 って いるその姿 に育 ちがみ られ る。後輩 につ いて「 きっと」 とい うことばを多用 しなが ら 期待を こめ、帰 って きた らその ことを聞 いてあげよ うとい うことであ る。 まるで2つ
の学年の生徒が、ひ とつの行事 を共有 してい るかのよ うであ る。過去 の 自分 の体験 を振 り返 りなが ら、後輩 を育て る も の と して深めているのである。
(2)当 日の様 子
〜 「参加 す る」 とい う こ と〜
並 び方 や読 み方、写真 の投影 などにつ いての練習 を終 えて、 いよいよ当 日とな ったが、 あいに く体調 不良 のため、3人が欠席 し、
3人
での発表 とな った。登校 して きた3人
は、朝 か ら残念 な表情 を見せな が らも、「 お休 みの人 の分 まで代 わ りに読 むわ」 と、次 々に挙手、役割分担 につ いて話 し合 い、友 だち の原稿 を読む練習が始 まった。鳥羽の地理や、旅程や行程 の紹介、 3日 間の目標、海辺の生 き物 の観察の記録、漁家訪間の インタビュー の記録、船のスケ ッチ、海釣 り体験 の感想 などが、当 日配布 のパ ンフレッ トに印刷 されている。台本、
拡大 した写真、実物投影機 な どを使 いなが ら、
20分
間の持 ち時間 を要 領 よ く有効 に使わ な ければな ら ない。司会 の「 は じめの ことば」 に続 いて
2年
生 の発表 となる。 こち らの心配 とは裏腹 に、生徒 たちの表情 は とて もに こやかで、 は りきって いる。 緊張 もあるはずだが、声 をか けると「 大丈夫や !Jと返事 を し た。「何 を」「 どんなぶゝうに」「 なんのためにJ発表す るのかが、生徒 らのなか に 自分 の ことばで明確 に 存在 し、 それ に向 けて練習 を重 ねて 自信 をつ けて きた とい うことにはか な らない。堂 々 と作文 を読 み、聞 き手 の反応 を見 なが ら写真 を指 さ し、 て いね いに実物投影機 を扱 い、 わ くわ く した表情 で他学年 の質問 を待つ。 また他学年 の発表 を身 を乗 り出 して聞 き、 目を輝 かせて質問 をす る。
報告会直後 の生徒 の感想で あ る。
作文 ばか りだ とわか りに くいか ら写真 を使 ったけど、 わか りやす そ うだ ったか ら写真 をつか って よか った。船 の スケ ッチ とか磯観察 の勉強の コ ピー もパ ンフ レッ トにのせ たか ら、
1年
生 は来年 の ことがわか って、不安 にな らへんか らいいと思 うし、楽 しみにな ったみたいで、発表 してよか った。‑140‑―
(3)と り くみ を終 えて
〜平和 へ のねが いへつな げ る〜
発表 を終 えて、「
1年
生 は全員で なかよ く曽爾 に行 けてよか ったな ぁJ「
ぼ くは飛行機乗 った ことない か ら怖 か ったけど、沖縄 まで飛 行機 に乗 れ そ うや な と思 ったわJ「 絶対 に来年 は、小桜 の塔 まで行 って お参 り しよ う。折 り鶴 を持 って行 ってあげよ う!」 と、 それぞれに感想 を述べていたが、 しっか り発表 を聞 いて いたか らこその ことばが た くさん聞かれた ことは、大 きな成果であるといえ る。2年生 が 目標 と した「 わか りやす い発表」 は、特 に
1年
生 か ら、来年への見通 しと楽 しみを もらった と、感想 を もらった。 また、「質問の工夫」 について も、 それぞれ に挙手 し質問 し、回答 も「 よ くわか っ た」 と喜 んでいた。3年生 の発表 を聞 いて、沖縄修学旅行 につ いて も、楽 しみ と同時 に「 何 を学 んで くるのか」 とい う平 和学習へ も少 し見通 しを もち始 めた。指先 の細 か い操作 に困難 を もつ数 名の生徒 も含む彼 らが、千羽鶴 作 りに興味 を もち、早速折始 め ることにな った。 驚 いた ことに、「 沖縄行 く時 には もう中
3や
。大 きい 折 り紙 はい らん。(千羽鶴用 の)ノlヽさい折 り紙 に挑戦す る。」 と言 い出 した。 なん ど もなん ど も失敗 しな が ら、大 きい折 り紙 で練習 を し、やがて小 さい折 り紙で もなん とか折 ることがで きるよ うにな って きた。やがて「 自分 らで作文 を読んで、折 り鶴 を持 って行 って、平和集会 をす る」 とい うことにな った。先輩 か ら引 き継 いだ平和へのねが い ととりくみへの見通 しが、普段 の活動 に も自信 を もた らし、学習 や行事 の主体 は自分 自身であるとい う自覚 を強め、 よ りよい行事づ くりの一端 を担お うと しているのである。
(3年生)
(1)事前 の と り くみ
本校 の修学旅行 は、
3泊
4日 で沖縄 に行 っている。4日
間の宿泊行事 は、障害 を持つ生徒 に とってか な り長 い。飛行機 に乗 る ことも初 めての生徒が多 く行 く前 には、か な り不安があ った。 しか し、実際 は シーカヤ ックや平和学習 など予定 していた活動 はもちろんの こと、飛行機や食事、沖縄 の文化 なども十 分楽 しめた。3年生 は、3学年 の中で宿泊行事 が一番早 く終 わ った こともあ り、取 り組 め る時間 は他の学年 よ りも 多 くあ った。 そ こで修学旅行 の振 り返 り、 ま とめ と して、作文 を書 くことに した。 1、
2年
生 の時 に も 作文 を書 いて きたが、今回の修学旅行の作文で は、楽 しい ことをよ り伝 え るために4日
間の旅行の中心とな る活動 (平和学習や マ リンスポーツなど)だけで はな く、 ホテルの中の様子 や食べ物、飛行機 や タ ク シーの感想 など も書 くよ うに した。 ホテルや食事、飛行機 な どは一番楽 しか った ことであ った し、素 直な気持 ちで書 くことがで きるか らであ る。 また、後輩達 にとって も一番興味が あ るであろ うことであ るか らで もあ る。今回の作文で生徒 が書 いた内容 は、次 の通 りであ る。
事前学習
・ 映画「月桃の花」 の感想文、「対馬丸〜 さよ うな ら沖縄〜Jの感想文 1日 目の活動
0平
和 のつ どい、平和祈念 資料館、平和 ガイ ドさんのお話、 ガマに入 って、飛行機、 ホテルにつ いて
2日
目の活動0タ
クシーの中か ら見え る沖縄、対馬丸記念館、体験王国、 ホテルにつ いて3日
目の活動0シ ーカヤ ック、 フォ トフ レーム、美 ら海水族館、 ホテルについて
4日
目の活動・ 首里城、国際通 り
・ 修学旅行 を振 り返 って
作文 を書かせてか ら報告会で発表す るパ ー トを決 めてい くことも考 えたが、生徒 の思 いを一番 に考え、
まず発表 したいパ ー トを生徒 に考 え させ た。 自分 で発表 したいと思 う場面 は、特 によ く覚 えて い る し、
自分 の気持 ちが全面 に出て、 聞 く人 に特 に気持 ちが伝 わ ると考 え たか らであ る。生徒
8人
のそれぞれの 思 いは違 い、意 見が活発 に出 され た。決 ま ったパ ー トは、「 手 をあげ るだ ろ うJと予想 して いた もの に 近か った。 自分 の楽 しか った こと、頑張 っていた ことをそれぞれが素 直 に言 えた時間であ った。それぞれの活動 のキー ワー ドを黒板 に書 いて、 ある程度思 い出 しなが ら始 め ると、教師が思 っていた 以上 に意欲的に頑張 って書 くことがで きた。個人差 はあ るが、 それぞれが 口に出 しなが ら、 また友達同 士 で思 い出 した り雑談 を した り しなが ら作文 を書 いて いた。雑談 の中で いろいろ思 い出す生徒 も数 人い た。 その うちに 自分 の発表 のパ ー トだ けで な く、 ほぼ全員が全行程 につ いて書 くことがで きた。 時間の 都合 で細 かな校正 はで きて いなか ったが、 それぞれ 自分 の思 いが書 いてあ る中身で あ った。
各 自の
2つ
目のパ ー トか らは、生徒 と相談 しなが ら決 めた。A君は、教 師 と乗 った シーカヤ ックやそ の 日の天気 (途中か ら大雨で雷が な った)の ことなどを嬉 しそ うに読 んで いた。B君は、 ホテルでの食 事 を とて も楽 しみ に していて、実際大満足で修学旅行で もよ く話 しを して くれて いた。C君は、 お城 に 興味が あ り、事前 か ら楽 しみ に していた。D君は、 ガマでの出来事 を、 ガイ ドさんの話 しや 自分 の見 え た ことをよ く覚 えて いた。Eさ
ん は、 どの場面 もしっか りと書 けて いたので、 自分 の意志 よ りも、周 り の様子 をみて決めて くれた。Fさ
ん は、 タク シーか ら見え る沖縄 の様子 が印象 に残 っていた ことを きち ん と話 して、文章 に も書 けていた。Gさ
ん は、飛行機 の様子 が とて も嬉 しか ったよ うで、 その ことが よ く伝 わ った。Hさん は、「 さとうきび畑」 の歌がお気 に入 りで、魂塊の塔前 の平和集会での ことが強 く 頭 に残 って いた。 それぞれその他 た くさん楽 しい ことが い っぱいあ ったよ うで あ るが、 その中で も自分 の「思 い入れ」が よ くあ らわれているパ ー トを2つ
日以降 に決 めてい った。発表全体 の構成 を考 え、A君 の課題 にあわせて、短 い文章 で はあ るが彼 の思 いが よ くあ らわれ、後輩 や保護者 に も伝えたいであろ う「 シーカヤ ックJのパ ー トを任せた。 なかなか 自分 の思 いが伝え られない、
Fさ
んやHさ
ん も自信 を 持 って発表で きそ うなパ ー トに した。作文 を書 き上 げ ると、発表 の仕方 につ いて考 えた。作文 を順番 に読 んでい くだ けで は、 も聞 いて る方 は退屈 だ し、 自分 たちの思 い も伝 わ らないので はないか とい う意見がで た。 そ こで、写真 や ビデオを作 文 と一緒 に取 り入 れよ うとい うことにな った。 ここで も前述 のよ うに、訪問先での様子 だ けでな く、楽 しか った ことも必 ず伝 えよ うと考 えた。進行役 と、各 自の作文 を読 む箇所以外 の報告 は、誰 が発表す る のかを話 し合いで決めた。「始 め と終わ りはクラスの代表がいいので は」 と教師が言 うと、「 それな ら室 長 と副室長 に しよ う」 とな り、始 めが室長、終 わ りが副室長 に決 ま った。班長 か ら「 班長 は、司会 もあ るJと い う意見がでた。 そ こで班長以外の生徒を中心 に進 めることにな った。映写機の写真の操作 につ いて も誰がす るのが よいのか につ いて話 し合いを した。「○君 は、 直前 の場面 で出番があるので難 しい ので は」や「 ○ さん は、後半 の出番が少 ないか らして もらえた ら…」、 などの意見 によ り、本人 に意思 を確認 してそれぞれが決 ま った。 発表用 の台本が完成 してか らは、練習 の時間が ほ とん どなか ったが、
生徒 たちは、「 1、 2年生 は しっか り聞 いて くれ るか な ぁ〜Jや「 緊張す るけど3年生 や し、 きちん と せなあかん な ぁ〜」 とい う思 いで発表 の練習 に取 り組 んで いた。
(2)当 日の様 子
朝 か らは、少 し緊張 した様子 もあ ったが、直前 の読 み合 わせで も しっか り声 が出てて、動 きもで きて いた。報告会で は、保護者の方 の前での緊張 と、発表 を楽 しみに待つ、 の両方 の表情が見 られた。質問 の場面で は、経験 して きた ことを確認す ることや、2年生 への質問で は、 1年生 に参考 にな るよ うな質 問 もあ った。
自分 たちの発表 は、 それぞれが 自信 を もってで きた と思 う。沖縄 で体験で きた こと、勉強 して きた こ と、楽 しか った様子、修学旅行 の行程 な ど自分 たちの考 えた ことを後輩 や保護者 の方 に彼 らな りに伝 え
‑142‑―
ることがで きた。質問の時間で は、飛行機 の こと、 ご飯 の ことなど、楽 しか った ことの質問が多 くあ っ た。事前 の とり くみで は、質問の内容 や質問 され ることの予想、誰が答 え るのか などは全 くしなか った のだが、
3年
生 への質問 はた くさん 出 され た。 自分 の体験 した こと、感 じた ことを、「 沖縄 の料理 はお い しいよ。Jや「水族館 の見所 は○○ だよ」、「 飛行機 の中 は、音楽か聴 けた り、 ジュースが飲 めていい よ」 な どと、 自分 の言葉 で しっか りと答 え ることがで きた。 このよ うに決 まって いる台本で はな く、生 徒が 自分の思 った こと、疑間 に感 じた ことを素直 に質問 し答 え ることは、双方 にとって、 とて も有意義 な問答であ った と思 うし、 このよ うなや りとりが、 自治 の力を育て るものだ と感 じた。3年
生 の生徒 は、普段 はよ く話 しをす るが、全体の場 で は自信が もてない
Fさ
んが、積極的に発言 していた ことが とて も 印象 に残 った。Fさ
ん は、 自分の思 いはた くさん もっているのだが、 自信のなさが先行 し、思 いを内に 込 め 自発的 な発言が少 ない生徒 だ った。 しか し、今回の報告会で は周 りの友だ ちよ りも先 には っきりと 答 え る ことが た くさん あ った。「 後輩 に きちん と伝 えよ う」 とい う思 いが た くさんの発言 を導 きだ した と思 う。 また、Eさ
ん も同様 に楽 しそ うに答 えていた姿を見 ると、 1年生 の頃 とは比べ もの にな らない 姿であ った。 自閉的傾向の強 いB君は、 自分の興味、関心 だ けでな く、相手 の質問を しっか りと聞いて、相手 の立場 にな って答 えていた。
(3)と り くみ を終 えて
この発表の後 に、 まとめの作文を もう少 し書 いている。積み重ねによるものに加え、報告会での発表 が 自信 にな って いる生徒 もい る。 中身だ けで な く取 り組 む姿勢 が よ くな ってい るよ うに感 じる。 また、
普段 あま り会話 に関わ らない生徒が、宿泊行事 やその他 につ いて話 しをす る姿 も見 られ るよ うにな って きた。後輩達 の発表 を聞 き質問 し、 また 自分 たちの発表 や質問 に対 す る答 えによ り、 あ らためて 自分 た ちは、
3年
生 だ と意識で きた し、大 きな 自信 にな って いる。 また これまでの経験 や積 み重 ねな どで、彼 らに備 わ って きた生活面 での力 に自信が加 わ ったので あ る。 また、 今回 の報告 会 によ り、「 まとめ」 と してだ けで はな く、 自分 たちの考 えで 自分 たちの ことを発表す る、伝え るなどが よ り深 く経験で きた こ とは、純粋 な気持 ちで 自分 たちのあ りの ままの姿 や様子 を見せ る ことがで きた。 質疑 で は、「 人の話 を 聞 く、 自分 の考 えをまとめ る、質問す る、答 え るJと コ ミュニケー ションカの高 ま りが感 じられた。 こ の5組
のみの報告会 は、3年
間で初めての行事でかな り見通 しがな く、プ レッシャーはあ ったが、終わ っ た後 の達成感が ものす ご く感 じられた。 それ は、終 わ った後 に「 や っぱ り修学旅行 は楽 しか ったな ぁ」や「 1、
2年
生 の頃の こともよ く思 い出せ たJ、「2年
生 は、来年沖縄 に行 くのにち ょっとで もわか った かな ぁ」 などを嬉 しそ うに発言 して いる様子 でわか る。 この達成感 も大切 であ り、 これ は、5組
の集団 で しかで きない とり くみてあ る。生徒の力が思 い存分発揮 され、教師 もその力 を認識で きるいい報告会 であ った。一 人ひ とりが沖縄で学 んで きた ことや感 じて きた ことを 自分達 の言葉 で しっか り発表 で きた こと、後 輩達 に伝 え られた ことは
ESDの
実践 に当て はまると考 え られ る。5組
宿泊行事報告会 において、 自分 たちの とり くみを しっか り振 り返 り、 これか ら修学旅行 に向か う1, 2年生へ の学習意欲、興味 。関心 が高 ま った ことは大 きな成果だ と思 う。3
総 括 〜 成 果 と今 後 の 課 題 〜行事報告会 を終 えて、生徒 らは次 のよ うに感想 を述べて いる。
「最初 は緊張 した けど、 うま く言えて よか ったです。」(1年男子)
「 発表 のために何度 も練習 しま した。練習 のおか げで成功す ることがで きま した。」(1年男子)
「 ぼ くは、 1年生が来年 の臨海 を安心 して いけるよ うに工夫 しま した。例 えば釣 りの様子 を写真で紹介 しま した。」(2年男子)
「全員が発表で き しっか り聞 き合えて、 た くさん勉強 にな りま した。」(3年男子)
生徒 らはみ ない きい きと した表情 で発表 し、質 問 し、 答 えて いた。 これ らの感想 に もみ られ るよ うに、
「 緊張 した けど」「 何度 も練習 しJ後輩 が「安心 して いけるよ う」 な どと工夫 し、「 全員 が発表」 し「 しっか り聞 き合」 い、「 た くさん勉強」 したのであ る。 これを受 けて保護者 か らも感想 をいただいた。
●発表 を聞 き、みな しっか りと自分 の役割 を果 た していて、 うれ しく思 いま した。我が子 は、発表や人 前 での発言 となると、照 れ隠 しの よ うな部分や、逆 にもゝざけて しま った り、違 う事 を言 った り して、
ハ ラハ ラす るのですが、 とて も良か ったです。夏休みに もう一度答志島に行 きたいと何度 も言 うので、
行 く予定 に します。 や は り、子 ど もたちは、楽 しく印象 に残 った場所 には もう一度行 きたい と思 うの ですね。本 当にいい経験 をさせて もらいま した。
●
5組
の行事報告会、 いいとりくみだと思 いま した。だ って、 自分 たちが行 って感 じて きた所ですか ら、本当の生 の声が聞 き合え ますか ら。今年か らだそ うですが、ず っと続 いていけた らと思 いま した。
●今回の様 に5組単独です ることで、各 自の発表 の機会 も増 え、見応えが あ りま した。来年 の報告会、
楽 しみ に して います。
(5組保護者 よ り
連絡帳 にて)
後 日行 われ た、 全校 の宿泊行事報告会 には、
60分
間 を5分間の ダイ ジェス ト版 と して編集 した ビデオで 参加 したが、参観 された通常学級 の保護者 か ら、次のよ うな感想 を寄せていただいた。●
5組
の報告会の ビデオよか ったです。応、だん5組
の子 たちの ことはあま りわか りませんので、 このよ うに して もっと5組の活動 を盛 り立てていけた らと思 いま した。●
5組
さんの報告会、温 か い感 じが しま した。下 の学年 の子 たちに、上 の学年 が出来 ることを しっか り 考 えて いて素晴 らしいです。生徒 らの と りくみやそ こに内包 され る意味や価値が、保護者 に も受 け止 めていただいた ことも、何 よ りの 成果であ る。 この「つなが り」 は、学校 での とり くみが生徒 を通 して、身近 な地域社会へ と拡が った とい っ て も過言で はな く、
ESDの
学 びのキーワー ドで もある。当 日、大学 か ら参観 に来ていただいた特別支援教育分野 の越野准教授か らは次のよ うな感想 をいただ いた。
5組
行事報告会 を参観 して毎年 5組キ ャンプや文化祭 にむ けた劇 の とり くみ、 マ ラソ ン大会や親子 なわ とび大会、
3年
生 を送 る 会な ど、5組な らで はの多 くの行事 を参観 させていただいて いる。 これ らはどれ も、5組の1年
生 か ら 3年生 までが、 それぞれの役割 を もちなが ら、5組
の全員で作 り上 げる5組
の行事であ り、3年間 を通 して同 じ行事 に、 しか しそれぞれ違 う立場 か ら参加す る子 ど もたちの姿 の中に、中学生 の時期 な らで は の確か な育 ちを感 じて きた。他方、5組の生徒たちは、5組固有 の行事 だ けで はな く、附属中学校 の一人 と して、各学年 の行事、
全校 の行事 に も参加す る。特 に
1学
期 には、各学年 の宿泊行事 が集 中 し、 4月 〜 5月 は、各学年 が入れ 替わ り立 ち替 わ り宿泊行事 に出か けてい く。複数 の学年 に渡 って引率 にあた る先生 たちはさぞか し大変 だろ うな と思 いなが ら、学生 の教育実習 を控 えていることもあ り、毎年 の宿泊行事 の計画 な どに も注意 して いるのだが、 そ こで子 ど もたちが どん な経験 を し、 どん な学 びがつ くられて いるのか とい うことに つ いて は、 これまで立 ち入 って触れ る機会がなか った。そんな こともあ り、今回、
5組
独 自の行事報告会が実施 され るとい うことで参観 させていただ いた。各学年 の子 ど もたちが、 それぞれの体験 や、 そ こで学 んだ こと、楽 しか った思 いを、 それぞれ工夫 しな
‑144‑
が ら発表す る姿 に、 それぞれの行事 な らではの、か けがえのない経験があ った ことがわか り、先生方 が、
忙 しい中で もこれ らの行事 を大 切 に して いる理 由の一端 がわか ったよ うに思 う。 あわせて、
5組
の3つ
の学年 に渡 る子 ど もたちが、おたかいの経験 を報告 し合 う中で、上級生 は去年、一昨年 の 自分 に思 いを 馳 せ、 ただ懐 か しむだ けで な く、 その頃か ら成長 して きた今の 自分を確 かめてい るよ うに思われた し、下級生 は上級生 の報告 を聞 くことで、来年・ 再来年 の とりくみへの見通 しを もち、その中で主人公 にな っ て い く自分 たちの姿 に期待 を高 めて いるよ うに感 じられた。
今回の行事報告会 は、 そのよ うな値打 ちを もつ もの と して子 どもたちの中に位置づ いた と思われ るが、
それ は とりわ け、各学年 の発表が一段落 した後 の「 質問 コーナー」 でのや りとりに明瞭 に見 られ たよ う に思 う。下級生 は、来年・ 再来年 にはどんな ところへ行 き、 どん な とりくみをす るのか とい う不安 と期 待 か らた くさんの質問 を した し、上級生 は、普段 の
5組
での後輩 たちの姿 と照 らし合わせて、去年 。一 昨年 の 自分 たちが した経験 を、 この子 たちはどん なぶゝうに とり くんだのだ ろ うとい う立場 か ら、 今年 の 様子 を、 あれ これ とたずねていた。 そ して、 その よ うに して、 それぞれの学年 に出 され るた くさんの質 問 に答 え ることを通 して、子 どもたちは、 自分 たちの学 びや経験、楽 しか った ことやがんば った ことを、あ らためて 自分 自身 のなか に定着 させてい って いるよ うに思 われた。
通常学級 の仲間 たち と一緒 に、 各学年 な らで はの宿泊行事 に参加 して得て きた ことを、普段 か ら生活 を ともに して いる5組のなか まのなかで語 り合 うことで、 もう一度 自分のなかに定着 させ る。 今回の行 事報告 会 は、 そのよ うな大切な値打 ちを もつ とりくみだ ったので はないか と感 じてい る。
寄 せて いただ いた感想 や、前章 まで に述 べた とり くみや生徒 の様子 な どを総括す ると、次 のよ うに考 え ら れ るので はないだろ うか。
「 持続可能 な社会Jの形成者 と して、子 ど もた ちに学校生活 にお いて準 備 され るべ きは、「 体験 や課題 を と もにす る集団、 なか まJであ り、一 人 ひとりの実態 に応 じた課題 の設定で あ る。 しか しそ こで は集団 に埋 もれて しまわぬ よ う、「 主 体性」 を もって「 参加」 す ることが大切 で あ り、 て いね いに とり くみを組織 す る ことが必要 であ り、 その ことによ って、子 ど もらのねが いやニーズに即 した実践 を展 開で きるとい うことで あ る。翻 って、知的障害 や発達 の ア ンバ ランス さを もつ子 ど もたちの教育 において も、 これ らの ことに十 分 配慮 し、準 備 を して行事 や授業 づ くり、集団 づ くりをすす め る ことがで きれば、彼 らをその主体者 と して
「 持続可能 な社会Jに参画す ることにつ なげて いける可能性 は十分 にあ るといえ るので はないだ ろ うか。
例 えば、子 ど もら一人 ひ とりが 自分 の課題 に応 じて ま とめ、発表 し、 自由に論議 し、質問 し答 え るな どの 活動 を、 なか ま とともに とり くむ ことを通 して、初 めて真 の コ ミュニケー シ ョンの力が育 ち、多角的 な見方 がで きるよ うにな り、参加への態度 や意欲が高 まるのであ る。課題 の異 な る発表の場 を与 え られた形骸的 な
「 機 会の均等」 で はな く、 内実 を ともな った「 機会 の均等Jと は何 か を見直 しなが ら、 その よ うな「 場」 や
「条件」 の整備 につ いて考 えてい くことは、私 たちの課題 で もあ る。
今回 は
ESDに
照 らし合わせ なが ら、発達 の遅 れや ア ンバ ラ ンスさを もつ子 どもらによ りよい学級行事 と それ に向 けての事前 の と り くみ につ いて の見直 しや試行 につ いて述 べ た。 次年度 もひ きつづ き、ESDの
「基盤Jと な る学 び方 に照準 を合わせつつ、特別支援教育 において も実践 の検討 をすす めてみたい。