足もとからの環境共生プロジェクト (和光大学教育 GPシンポジウム 流域主義による地域貢献と環境教 育)
著者 堂前 雅史
雑誌名 東西南北
巻 2010
ページ 13‑22
発行年 2010‑03‑18
URL http://id.nii.ac.jp/1073/00001551/
最初に本学の教育
GP
プロジェクトについてご説明 させていただきます。本取り組みの正式名称は「流域 主義による地域貢献と環境教育」と言いますが、一般 の方向けにはこれだけでは分かりにくいということで、パンフレット等には愛称として「足もとからの環境共 生プロジェクト」とも書かれています。パンフレット にある魚の写真はホトケドジョウという淡水魚で、こ のプロジェクトのシンボル的な存在になっています。
企画書のキーワードが「流域」、「学生の主体性」、「行
政界を越えた地域貢献」、「自然と共生する都市文化」となっております。
──「流域」と和光大学
「流域主義」という言葉は耳慣れない方も多いと思います。流域というのは、
ある水系に降水が集まる範囲を指します(図 1)。例えばA川という川があります と、ある場所の降水が最終的にA川に流れる、そういう場所はすべてA川流域と なります。降水が隣の
B
川に流れ込むならB
川流域となり、その間は山や尾根の ような高い場所が分水界となっています。流域の区切りは行政界とは必ずしも一致しないことが多く、行政界でみると、
鶴見川流域は神奈川県川崎市、横浜市、東京都町田市、稲城市にまたがっていま す(図 2)。その中で和光大学キャンパスは、東京都町田市、および川崎市麻生区 の飛び地である岡上地域にまたがっているのですが、鶴見川流域の中にはそっく り入っています。キャンパス敷地の54%を占める岡上地域は和光大学の通学路に もなっていますが、同時に川崎市内でも貴重な広域の緑地も擁している場所であ 和光大学教育GPシンポジウム:流域主義による地域貢献と環境教育
足もとからの環境共生プロジェクト
堂前雅史 所員/和光大学地域・流域共生センター長/現代人間学部教授
りますし、緑地・農地が多く を占めているので、降水が土 壌に浸透し、鶴見川流域にと って保水上重要な地となって います。
この岡上地域は、そうした 広い緑地と市街化された地域 とが隣接しているということ も特色で、6
,
000人以上が住 むという、飛び地としては人 口の多い場所です。その意味 では、和光大学の位置という のは、行政界の区切りにこだ わらない地域との関係を持つ 必然性があるということです。そうした和光大学の歴史と 理念を紹介しますと、1933年 に和光学園が創立され、先に 小中学校から出来て、学園創 立後33年経た1966年に和光大 学が創立されております。そ の教育理念として「哲学する 生活者」という語と、「小さ な実験大学」という語を創立 以来使っています。和光大学
では「総合的知性」あるいは「総合的教養」を重視するということで、3 学部 7 学科それぞれの専門はありますが、その専門性と総合性を両立させようというこ とがカリキュラムの中で配慮されています。どのような科目を履修して自分の専 門性を形作っていくかということに学生の自主性を重んじた自由な学風があり、
また科目履修にあたって学部学科間の垣根を低くした総合的カリキュラムを立て ています。そうしたものが和光大学の特色として続いておりまして、これは今日 の大学にあって特徴的なところと思います。
また和光大学は、地元の岡上地域等の周辺地域と、さまざまな関係があります。
例えば1996年の和光大学創立30周年事業では、地元で30年以上途絶えていた「ど んど焼き」というお正月のお焚き上げ行事を地域との協働のもとに復活させてい ます。また地元の納涼祭という盆踊りなどのお祭りの準備に学生が主体的に参加 するということがなされています。他にも地元の野菜を生協食堂のメニューに入
『鶴見川流域誌』鶴見川流域誌編集員会編、2003より。
図1 流域とは
『鶴見川流域誌』鶴見川流域誌編集員会編、2003より。
図2 鶴見川流域と行政界
れていますし、大学構内の雑木林が川崎市条例に基づく「緑の保全地域」に指定 されてもいます。また和光大学祭には地域の方々も参加してくださいますし、図 書館の学外開放も早くからやっております。こうした関係の中で、学生の自主的 な活動による貢献というものが本学の地域貢献の特色となっております。
岡上という地域は川崎市の飛び地でありまして北側は鶴見川が流れていて、南 側は奈良川流域(鶴見川の支流)との分水界となっている尾根があります。岡上 は南が高く、北へと下りながら、幾筋かの谷戸を刻んだ小川が鶴見川へと流入す る地形となっています。すなわち岡上は、谷戸からなる小流域と言えます。東京 都と神奈川県にまたがる和光大学は、岡上小流域の中にすっぽり入ります。
つまり和光大学は行政界をまたぎ、流域単位で自然環境や生活を考える上で好 適な位置にあると言うことです。
──足もとの自然への気づき
岡上地域は広大な緑地を擁していますが、それは主として中央の谷戸のことを 指すことが多く、和光大学がある西部の川井田谷戸や、鶴見川沿いはほとんど市 街化された場所となっています。しかし、こうした場所に驚くような自然が残さ れているということが、学生たちの活動で分かってきました。
岡上の北部を流れている鶴見川については、2002年頃、その河口近くでアゴヒ ゲアザラシのタマちゃんが現れ、鶴見川はアザラシの住めない死の川であるかの ような報道がなされました。しかし学生が実際に大学付近の鶴見川の中に入って 魚を捕ってみると、オイカワ、コイ、ナマズ、アブラハヤ、タモロコ、カマツカ などの多様な淡水魚が捕れます。野生スッポンやクサガメが日光浴している姿も 見られます。しかし現代人は川から疎外されていて、人が歩くのは川から何メー トルもある擁壁の上です。毎日通学で通っていても、文字通りの足もとに多様な 生物がいることには気づきません。私自身も気づきませんでした。
こういうことを知るようになったきっかけというのは、授業などで鶴見川に入 って川掃除と魚類調査魚捕をしたことです。学生に長靴を履かせて川の中に入れ ようとすると、水際で「本当に入るんですか。」と言い出して躊躇してしまいま す。それでも実際におそるおそる入ってみますと、足もとから小魚がワァーっと 逃げ散っていくのが見られ、学生はすっかり興奮してしまいます。それから10分 くらい経つと長靴の中に水が入るのを気にしなくなりますし、30分くらい経ちま すと魚を追いかけて、引き上げると言ってもなかなか出てくれなくなります。
都市近郊の雑木林は植生遷移が進んでシラカシ林のような極相林になる、ある いは笹や竹の繁茂による擬似的な極相状態になって林床への日照も減って、雑木 林に典型的な生物相が見られなくなり、いわゆる「里山の荒廃」といわれる状態 になります。こうしたところでササ刈りをしたり木を切ったりする学生たちが現
れて、地域の地権者や住民の理解 をいただきながら、生物の多様性 を増やすということをやるように なりました。
川や雑木林の自然を目の当たり にした学生たちが2002年から「和 光大学・かわ道楽」という環境保 全グループを作りました。こうし て、岡上や鶴見川の自然を活用し て、「かわ道楽」学生の自主的な 保全活動と、実習を交えた授業を
相互補完的に進めていきました。その後、環境省指定のレッドデータブック絶滅 危惧Ⅰ
B
類になっているホトケドジョウという、付近では絶滅したと思われてい た魚が、2005年に学生によって授業で見つけられました(図 3)。しかも宅地化さ れた地域の中の小さな湧水で見つかったので驚きました。おそらく宅地化された ものの、付近の地形が長い間変わらなかったので生き残っていたのだと思われま す。我々人間から見ると、宅地化され、マンションが建ち並び、稀少な野生生物 はいないだろうと決めつけていたところに生息していたのです。そして、これは もしかすると岡上最後のホトケドジョウの個体群かもしれないと考えて、ちょう ど建設中の新体育館の屋上に池を設置していただき、「かわ道楽」の学生の管理 によってバックアップ個体群の繁殖に成功しました。さらに自然個体群を復活さ せようということで、地権者さんにお願いしまして、水田の一部に池を作ってそ こで屋上池で繁殖したホトケドジョウ個体を放流して、こちらでも繁殖に成功い たしました。講義と課外活動と大学施設と地域がうまく連携した例と思っていま す。また住宅地の中に小川が流れているのですが、学生たちが小川に不法投棄され たゴミを除去して、さらにこの水が浄化されるようにと、専門家から取材した知 識に基づき、小石を入れて礫間浄化し、セキショウのような抽水植物を植えて浄 化して、生物多様性を高める活動もやっています。
──地域社会との協働の意味
このように、誰も気づかなかった足もとの地域の自然保護をやっていく中で問 題となるのは、多くの方々が住んでいる場所での自然保護活動というのは、とも すれば住民に迷惑をかけやすいということです。ホトケドジョウを発見した湧水 も小川も、すぐ上には住んでいらっしゃる方がいらっしゃいます。そういうとこ ろで保全生物学的にこれが正解だということをやっては迷惑になるというケース 本プロジェクトでは、身近な自然のシンボルとして
いる。 『和光大学教育GPパンフ』より。
図3 再発見されたホトケドジョウ
が多々ありえます。そういう場合、自然科学的な知識や技能よりも、むしろ地域 との信頼関係をどのように作るか、という社会的な知識や技能を持つことのほう が重要になってきます。
そうした課題設定のヒントになったのも学生の自主的活動で、ひとつは地域の 子どもたちを対象にした自然観察会です。学生たちには自分たちが面白いと思っ たものを子どもたちに伝えると同時に、自分たちが大切にしている山林や河川で 子どもたちが遊ぶときのマナーを知ってもらいたい、という思いもあったようで す。それからもう一つは先ほども申し上げたこの和光大学が復活させたどんど焼 きです。笹や竹を切ってきてお焚き上げの櫓を組むのは、雑木林で環境保全をや っている学生にとっては得意技でもあるわけですが、それよりもこのお祭りを周 辺住人と一緒にやることによって地域と一体になる、顔見知りになる、というこ とが上記のような環境保全を含めて、大学と地域の関係において大きな意味を持 ってきます。そういうところが注目されて、昨年は
NHK
テレビ番組でも紹介さ れています。このように、住民がいる地域で緑を守るというのは、緑を守っているだけでは 緑は守れない、地域と一体となった信頼関係が作られていかないと、残せる緑も 残せないという状況が浮かび上がってきました。実際に学生が森のササ刈りをや り始めた頃は少し警戒されていたのが、いつのまにか差し入れを持ってきてくだ さったり、「がんばれよ!」と声をかけてくださったりするような関係に徐々に なっていきました。その意味ではこの「かわ道楽」というグループはこの岡上地 域の方々に育てていただいたというところがございます。
──流域社会での協働
この学生たちの活動は、岡上だけにとどまらず、小流域としての岡上地域を含 めた鶴見川流域全体での自然保護にまで広がり、池を作ったり、森を手入れした り、あるいは川を掃除したり、ということをやるようになってきました。
実はもともとこうしたことを始めたのは、鶴見川の「源流の泉」で授業をやら せていただいたのがきっかけで、学生が源流の泉に通って保全活動に参加し始め たことからです。そこで本日お話しいただく岸先生より「源流もいいけれども、
和光大学の足もとには岡上という素晴らしい場所があるじゃないか」と言われ、
岡上で活動を始めたところ、すばらしい自然が自分たちのすぐ足もとにあるのだ ということを次々と見つけてしまいました。その後も、鶴見川流域の方々に学生 が手伝いに行っているという状況は続いて、そうした場で活躍している市民団体 や行政と学生がネットワークを形成していくようになっていきました。そうした 学生が参加したネットワークやフィールドを活かすかたちで、後追いしながら鶴 見川流域の各所を講義のフィールドにしていく、といった展開になりました。
岡上を舞台として、いまご紹介しました「かわ道楽」を含めた多様な学生が 様々な活動で地域の方々と協働しています。ホトケドジョウの保護や森の管理に 協力していただいている地権者の方々。保全活動にご協力下さり、お祭りでも協 働している岡上西町会。キャンパス内の岡上和光山緑の保全地域の保全計画策定 を学生と一緒にやってくださった川崎市緑政課。講義などでご協力いただいてい る
NPO
法人「かわさき自然と共生の会」。麻生区の自然保護団体が一堂に集まる「里山フォーラム
in
麻生」。子ども向けの自然観察会で協働した麻生市民館岡上 分館。また昨年より、岡上小学校で児童が鶴見川に入って流域学習するという授 業が始まったのですが、これは岡上小学校、岡上こども文化センター、NPO
法人「鶴見川流域ネットワーキング(TRネット)」、川崎市教育委員会、そして和光大 学の連携によるもので、毎回、鶴見川に詳しい和光大学生が講師補助として参加 しており、地域・流域の関係者がそれぞれの立場から協働して実現した好例かと 思っています。
鶴見川流域全体を舞台としてもいろいろ試みています。かわ道楽のような学生 グループが、鶴見川流域ネットワーキングの諸団体と環境保全活動をやる中で、
現場の方々と信頼関係を築くと、そうしたフィールドを授業での教育の場として 活用するようにしていく、ということをやるようになってきました。また鶴見川 流域内の小学生が集まって、川での総合学習の学習成果発表会「鶴見川流域ふれ あいセミナー夢討論会」を年に 1 度、この和光大学を会場として開催しておりま すが、これは本日お話しいただく京浜河川事務所が事務局となっている鶴見川流 域水協議会の主催でして、
NPO
法人鶴見川流域ネットワーキングが運営していく というかたちでやっています。その際の会場スタッフ、司会、着ぐるみなどを和 光の学生が運営スタッフとして参加しているというようなこともございます。こうした岡上地域を含んだ鶴見川流域の社会において、市民や行政と接して活 動していくことは、社会性を獲得する場が失われてしまったと言われている今日 の大学生にとって重要なシチズンシップ教育の場ともなっています。
──地域社会教育と環境教育の総合
こうした市街化された地域の環境保全にあたって重要だと痛感しましたのは、
ほとんどの人が気づかない身近な自然に気づく能力と、そして市街地のように市 民が住んでいる場所での自然を大切にするには、単に保全生物学の知識や技能の みならず、むしろ社会的な能力が必要であるということです。21世紀の持続可能 な都市環境を維持するためには、そういう市民をこれから作り出していかなくて はなりません。人の住んでいない自然を保全する専門家を養成する必要もありま すが、そういうことは農学系や理系の大学で育てればよいでしょう。最近の若い 人は、地域社会とのつながりを身につける場が薄れているといわれる中で、主体
的に市民社会の中に入って都市の環境保全活動を担う市民を育てていく必要があ りますが、そういう分野はおそらく和光大学が得意とするところでしょう。
この鶴見川流域、岡上地域の環境を通じて行った学部教育や課外活動は、地域 に向けては地域貢献になっています。それから実践の場でかなり自分の判断が必 要なことが多くなり、自主性を育てる場にもなっています。このようにいきなり 社会的実践の場に置かれることは、未熟なままで先行する経験が消化しきれない という問題点がありますが、一方では、そうした現場から基礎的な生態学などの 講義科目への興味を持って積極的に履修する者が増えてきます。また学生によっ ては、逆に基礎的な知識を学ぶことから始めて、応用の場として現実社会に興味 を持ち始め、実践につなげていく者もいるでしょう。こういう多様な学び方があ るのではないかと思います。
こうしたものを体系的に継続的にやっていけるようにしたい。ということで、
和光大学の教育
GP
の取り組みが企画されました。目的は二つ、第 1 に環境学習 と地域貢献とを連携させた岡上地域・鶴見川流域の環境保全活動の展開。今いる 学生が行う地域貢献が中心になるという短期的効果が期待できます。第 2 には、持続可能な都市環境の創出に貢献できる市民の育成です。卒業した学生から、持 続可能な都市環境を支える市民が輩出されるような大学としての長期的な機能を 発揮したいと考えています。
本取り組みの教育目標は、次の三つです。(1)生活の中の身近な自然に気づく 能力を育てる。メディアから与えられる遠くの大自然への憧れにとどまらない、
現代人が自覚しない足もとの自然環境に気づく力です。(2)地域社会にネットワ ークを作る能力を持ち、地域とともに活動する能力を育てる。(3)自主性を持っ て社会活動のできる能力を育てる。
この目標を達成するべく、本学のこれまでの実績をいかして、いろいろな工夫 を考えています。たとえば、学生が自発的に住民や自然との関係を取り結ぶ課外 活動から出てくる教育効果を
Non-Formal Education
と呼んでいます。通常の正規 授業の中の教育をFormal Education
といたしますと、このNon-Formal Education
の 成果を充実させて、Formal Education
に還元させるということは出来ないだろう かというのが、今回のプロジェクトの挑戦でもあります。こうした教育目標を立てる上で課題として出てきますのは、ひとつは、学生の 自主的活動が主体であるため、持続性がどれくらい保てるかという問題です。後 継者が途絶えるリスクを減らしたいということがあります。次に、これまで述べ た流域社会のネットワークは、教員や学生の個人的関係に委ねられてきたために 不安定なものでした。このネットワークを制度化させていきたい。三つ目として、
学生の自主的活動であるために、講義などの制度化された活動に比べて、安全性 の指導が不十分なのではないかという反省があります。四つ目として、環境保全 活動や地域貢献活動と連携しやすいフィールド系の講義と、その他の教室内での
環境系講義との連携が足りないという点があります。文科系大学ですので、どう しても環境系の講義を体系的に組みづらいという事情があります。
そこで、本取り組みが教育
GP
に採択された事によりまして、まずひとつは、事業拠点として地域・流域共生センターを設立しました(図 4)。センターの役割 は、まずひとつは
Non-Formal Education
による地域・流域での環境保全活動や地 域貢献活動の支援・調整を行うことです。これによって、学生による課外活動の 実績が継続的になり、いっそうの実りも生まれることでしょう。次に環境教育指 導者養成講習会や安全講習会を無料開講いたします。これによって、たとえば子 ども向けの自然観察会などの教育スキルを上げて、安全性の高い活動を行えるよ うになります。それから、地域と生ゴミ循環システムを作っていく。さらに、岡 上地域・鶴見川流域の自然環境や農村文化といったものには、とても貴重なもの が残っていますが、こういうものを重要な教育資源と考えて、もっと多様に学部 教育の中で活かしていく、そういった情報提供や支援を行っていく。こうするこ とによって、岡上地域や鶴見川流域における新しい大学の窓口として機能して地 域と連携を深めていくことになり、今申し上げた諸課題の解決に向けて一歩進め られるようになります。もうひとつの柱は、地域・流域プログラムというもので、これは学部横断プロ グラムとして、副専攻のようなものと考えていただけたらよいと思います。地 域・流域プログラムを設置し、一定の履修要件を満たしたら修了証を授与して、
大学で「流域環境士」という認定資格を出します。基幹科目と理論型科目と実践 型科目というものを立てております。特徴的なのは基幹科目で、一般的な地域社 会論や自然保護論ではなく、岡上地域・鶴見川流域に特化した、自分たちの目の 前に大事なものがあるということ、そしてそれを生かすにあたっての諸課題と解 決法を見抜ける力を養うということを目指しています。理論型科目としては、学 部間の履修の壁の低さを活用して、多様にある環境系講義科目を配しています。
それから実践型科目としては実際に岡上地域・鶴見川流域をフィールドとして生 かした授業を組んでいます。学生はこういったものを組み合わせながら履修して 図4 「流域主義による地域貢献と環境教育」プログラム構成図
地 域 ・ 流 域 共生センター
(基盤整備、調整)
和光大学
川崎・横浜・町田 岡 上 地 域 学生課外活動
実践型講義科目 理論講義科目 Forrmal Education
Non-Forrmal Education
鶴見川流域 環境保全型
地域社会貢献型
▲
▲
▲
▲
▲ 支援
実践活動
いくことで体系的に地域を見る目ができていくという履修プログラムを進めてお ります。
地域貢献という面でいえば、岡上地域を含んだ鶴見川流域において、学生が課 外活動によって、よりいっそう地域社会に貢献してほしい。そして地域・流域プ ログラムにおける実践型講義も
Formal Education
であると同時に地域貢献にもな るようにしていきたい。そしてこれらのプログラム科目(Formal Education)と、課外活動(
Non-Formal Education
)との間に連携を作り出すプラットフォームとして、地域・流域共生センターが機能していくという構想で進めています。
──流域カリキュラムの展開と共有化
教育
GP
に選定された選定理由としていただいた評価は、以下の通りです。本取り組みは、鶴見川流域に位置する和光大学がこれまで積み重ねてきた 大学周辺地域との協力関係をより一層強化し、環境教育と地域貢献を教育に 取り組んでいこうとするプログラムであり、高く評価できる。大学が、その 周辺社会と協力しながら、学術的な立場から地域貢献を行い、また地域が抱 える環境問題などを学生と地域住民との関係の中で考えていくということは、
今後の教育モデルとして大きな意義がある。
しかし、課外活動にしても地域・流域プログラムにしても、やはり学生の自主 的参加がないと成り立ちません。こういったものを広報し、魅力的なものにして いくという努力が必要になります。それから、この評価には続きがありまして、
大学の教育は学部教育が中心なので、学部教育をおろそかにしてはいけない、学 部教育にこういったものをきちんと還元させなくてはいけない、という指摘もい ただいています。この点は、鶴見川・岡上を教材とした講義の豊富化、あるいは 卒業論文や学部教育などの成果へ反映していくといったことを具体的に考えてい きたいと思っております。
教育
GP
がスタートしまして、この 5 月までに学部教育へ反映された例として、いくつかの新たな試みの例を挙げます。現代人間学部心理教育学科の「環境教育 論」という授業ではネイチャーゲーム協会の理事長にご担当いただいているので すが、ネイチャーゲームの指導者の講習会に相当するものを受講者に施して、岡 上小学校のご協力をいただいて、環境教育ボランティアとして、小学生の授業を 1 回受け持つという取り組みをやらせていただきました。受講学生の目標設定と しても大いに講義を活性化しています。現代人間学部現代社会学科の「プロゼ ミ」( 1 年生向けの初年度教育演習授業)においては、プロゼミ合同でこの地域社会 についての講義とフィールドワークをやりました。経済経営学部経済学科ではエ
ンターテイメント経済学の研究者が担当する「フィールドワーク」で、地域・流 域共生センターの鶴見川ミニ水族館に人が来るようにするアイデアを考えさせる ということを授業課題のひとつとしています。今後も、多様なジャンルで多様な 活用の仕方が出てくるのではないかと期待しております。
環境教育といっても、自然科学系に限定しない多様な専門の総合が生かされる、
そういう環境保全に取り組む市民を生み出す、和光大学だからできる環境教育に なっていくのではないかと考えております。行政界の上にある和光大学だからこ そ、行政界を越えた流域という自然の地形の区切りを意識した活動に魅力を見出 せると思います。そして学生の自主性を生かした大学の伝統というものがあれば こそ、こうした取り組みが可能になったと考えております。
しかし、こうしたことを和光大学だけの取り組みにとどめるつもりはありませ ん。鶴見川流域を教育資源として生かした教育システムを和光大学で開拓してい って、出来れば、同じ鶴見川流域の他大学とも連携していきたいですし、同じや り方を他の流域の大学でも活用できるようにしていきたいと考えております。そ ういった総合性を持った学問がある程度進展した先には、市民、行政、他大学と のネットワーク形成によって、自然と共生する都市文化、流域文化という、そう いうものを創造するようなことが和光大学から発信できると考えております。
長くなりましたが、ご清聴どうもありがとうございました。
[どうまえ まさし]