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コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ プ ロ セ ス に 配慮した英語の聴解指導

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Academic year: 2021

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(1)

コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ プ ロ セ ス に 配慮 した英語の聴解指導

レパヴーマリ

0. は じめに

コミュニケーション重視の英語致青が求められるようになって以来、聴解力 向上に関する研究は数多 くなされている。それらは弁別的子音の聞き分けか ら 始まり、変異発音の聞 き取 り、連続 した音 (文 レベル)の聞き取 りにまで及ぶ。

さらに、聴解力を高めるためには、語嚢 を増や した り、学習者のスキーマを活 性化、利用する必要があるという内容の ものも数多い。

しかし、それらの提案 を実際 どのように聴解指導に応用 してゆけばよいのか については、不明確 な点が多い。実際、様々なレベルの学生が集 まっている教 室においては、同 じ 「聞 き取れない」で も、英語の音韻体系の知識の欠如によ る場合 と背景知識の欠如による場合 とで対応 を変えてゆ く必要がある。にもか かわらず これまでの研究では、それぞれのス トラテジーがどの習得段階にある 学習者に対応するものなのかについてはあいまいである。同様なことが 「なぜ 聞き取れないのか」 について論 じた ものにも言える。

そこで本論文では、「聞 くこと」 をコミュニケーションの一部 として捉 えた 場合に限って、リスニングのプロセスにおいて母国語 (L l)話者 と外国語

( L2)学習者では言語情報の処理の仕方にいかなる違いがあるかを論 じる。

そ して、学習者の抱 える様々な問題の原因をコミュニケーションの各プロセス と結びつけることにより、それぞれの段階に応 じた対処法の位置付けを試みよ うと思 う。

(2)

1.聴解指導 に関する代表的な理論 と指導法の特徴

1.1.MOTORTHEORY に基づ く指導法

発音の明瞭度 と聴解力は密接に関係 しているという

Mo t o rThe o r y

は、次の ように説明される。

TheMOTORTHEORYi so neoft h eo l d e s t ,b e s t ‑ k no wn,a ndmo s t wi d e l yc r i t i c i z e do ft h ep ho n e t i c a l l yb a s e dmo d e l so fp e r c e p t i o nI t s ba s i ch y po t h e s i si st h a twed e c o d et h epe r c e i v e da c o us t i cs i gna li n t e r mso fs t o r e da r t i c u l at o r ypa t t e r n swhi c hc a nge n e r at ea na c o u s t i c s l g n a lw it ht h es a mel i n g u i s t i cpe r c e pt .

( Cl a r ka n dYa l l o p1 9 9 5 )

現在の音韻論では、より洗練 された説がこれにとって代わ りつつある。 しか し、竹蓋

( 1 9 9 2 )

が行った

24

名の日本人学生 を使った実験からも、二つの能 力の関係 は密接であることが証明されている。すなわち、発音力が向上すれば、

聴解力 もおのず と伸びて くるということだ。

この説 をもとに した聴解指導の場面では、先ず、単音を正 しく発音する練習 をすることが第一歩 となる。 さらに単語、フレーズ、文 レベルに至るまで、で きるだけネイティブスピーカーに近い発音、 リズム、強勢、イントネーション を身に付けるための指導が理論 と実践 (練習)の両面から行われるのが一般的 といえる。

このように、実験によってある程度実証 されている指導法だが、次のような 問題が考 えられる。

先ず第一に、単語やフレーズにおける異音的変異音

( v a r i a nt s )

の聞 き取 り の問題である。例 えばここに、佐藤

( 1 9 9 2 )

のあげた例がある

。t o u r

という 単語の場合、学習者は、

̀ We ' r e[ t d a r iり ]r o u ndl t a lyf o rt wowe e ks . "

は理

(3)

解できるが、

̀ We ' r el t b : r i q ]r o u n dI t a l yf o rt wowe e k s .

''の場合 は理解で きないという。これを理解するためには、英語を

L

lとする話者特有の変異発 音 を身に付 ける必要がある とす るならば

、Gi ms o n &Cmt t e n d e n ( 1 9 9 4 )

.の

「学習者は

L

l話者のような くだけた、速い発音を真似する必要はな く、てい ねいな口語的発音を身に付けるべ きである

」 という主張 と矛盾する。

第二に、学習者の発音が正 しいかどうかをいかにして知るか、 という問題で ある。言い換えるなら、‑ クラス約

40

名 という多人数に加 えて、教師本人 も しばしば

L2

学習者であることの多い聴解指導の現場においては、その判断が 非常に困難であることは容易に想像できる。

第三に、実際のコミュニケーション場面での聴解は、想像以上に雑音が付 き まとうということである。言 うまで もな く、発音練習は雑音の多い場合の英語 の聞き取 りにはあまり役に立たない。雑音 と聴解 との関係については後で もう 少 し詳 しく述べることにする。

以上のようなことか ら、発音練習は聴解力 を上げるためたある程度の効果は あるが、それだけでは不十分であることが分かる。

1 .2.

聴解力 を上 げるため には語 嚢 を増 やす こ とが最 も重 要 ? 聴解における語嚢知識については、様々な実験やそれに伴 う議論が繰 り広げ られている。語嚢は、言語が意味 をなす最小単位であるから、その知識の量は 聴解力に大 きな影響力を持つ筈である。

む しろ、ここで問題 とされることは、聴解は統語的知識な しに、語嚢的知識 のみ行われるのかどうかということである。研究者の中には、音声言語の理解 は知覚 された音が直接意味解釈に移行するのであって、そこには統語的な分析 は介在 しないと主張するものもいる。実際

、L

l話者の聴解のプロセスはあま

りにも素早 くて、いちいち統語的な解釈 を行っているようには見えないものだ。

しか し、例えば

Th ema na t eb r e a kf a s t .

という短い文を理解す ることは、

動作主が誰か、動作 を受けるのは誰 (何)か

、a t eb r e a kf a s t

はフ レーズ とし

(4)

て成 り立つが

ma nat e

はフレーズではない、などという統語的知識 を以 て し て初めて可能になるのだ

( Cook1 9 91 )

従って、聴解力 を上げるためには、語嚢、統語両方の知識を向上させる必要 があるといえる。

1.3.

聞 き手 の スキ ーマ を活性 化す る指 導法

キャレルによって提言 されたスキーマとは情報を受ける者が、

日常の経験 を基に、ひとつひとつ蓄えてい く百科事典的な知識 と言え る。無意識の内に頭の中に内在化 し、長期記憶内に蓄えられている総称 的な概念である (卯城1

9 9 3.p. 1 41 、 1 1 . l l ‑ 1 3 )

と定義 されている。実際のコミュニケーションでは、聞き手は自分のスキーマ をもとに、予測を立てなが ら情撃を処理 してゆ く。そこで、教室においても、

テープなどを聞かせる前に学習者に単語 リス トの提示や背景的知識を与えるこ とにより、言語的情報以外の情報 を利用させた りしている。このことにより、

聴解が比較的容易になる。

さて問題は、背景知識の与え方にある。学習者のスキーマを活性化 させるに は、一般にフローチャー トや内容の図式化 などの方法が とられている

( Cook 1 9 9 1 )。 しか し実際のコミュニケーションの場面では、単語 リス トなどはもち

ろん提示 されるはず もな く、自分自身で非言語的知識 (スクリプ ト、背景知識、

文化的、社会的知識など)、或いは副言語的知識 (身凝 り語、表情、呼吸、ポー ズ、強調の度合いなど) を活用 して臨 まねばならない。教師は、安易に情報を 碇供するのではな く、自ら情報 を得る方法 を指導する必要があるといえよう。

(5)

2. 聴解のプロセス

1

章では、聴解指導に関 して論議 されている代表的な理論 と指導法について ざっと見てきた。本章では、これらの理論の相互関係 と応用の可能性 を明 らか にするために、基本的なところに立ち戻 り、少 し分析的に聴解のプロセスをみ てゆ くことにする。

2. 1 . 思考が相手 に伝 わるまで

Jac k e ndof

f

( 1 9 9 3 )

は言語を、思考を音声 に変換 した もの とし、次 の よう に図示 している。

Tho u ght

一 一

◆S y nt ac t i c 一 一 ◆Phono l o gi c a トー ● Mot o r 一 一

一一一

s t r uc t u r e s t r uc t u r e i ns t r uc t i o ns

+Aud i t or y ‑ ‑ ‑

+

Pho no l o gi c a l‑ ‑ ‑

+

Synt a c t i c ‑

‑‑+

Tho u g ht pat t e r ns s t r uc t ur e s t r uc t ur e

Jac k e ndof

f

( 1 9 9 3 .

p.42)

話 し手が先ず行うことは、思考 し、言いたいことを統語的構造に置 き換える ことである。さらに音韻論的構造にそれを置 き換え、その刺激が運動神経 を伝 わ り発音器官の筋肉を動かすことにより音声が生み出される。聞き手は、音声 波を受取 り、自分の音韻体系に当てはめ、さらに統語構造によって分析、理解 することになる。

この過程は言語学的段階、生理学的段階、音響学的段階に分けて考えること

(6)

がで きる。以下の通 りである。

話 し手が言いたいことを言語学的一統語的、音韻論的一形式 に置 き換 える (言語学的段階)‑ 発音器官を使用 して声に出す (生理学的段階) ‑ 音波が空気中を伝わる (音響学的段階) ‑ 音波を耳で知覚する (生理学的 段階) ‑ 知覚 した昔 を言語学的形式に置 き換え、理解する (言語学的段階)

ここで学習者にとって特に重要なのは言語学的段階 と生理学的段階といえる。

Gi ms o n ( 1 9 9 4 )

においても聞 き取 りのメカニズムは二つの段階 に分 けられ るべ きだと主張 されている。それらはすなわち、音響学的刺激に反応する生理 学的段階 と、その刺激を脳内の言語 システムで分析する心理学的段階である。

いずれの場合にしても、聞き手の行動 を段階ごとに分けて考 えることから聴 解指導は始 まるということをここでは主張するものである。

2. 2.

二 つ の コ ミュニ ケー シ ョン手段

ここでは、各手段及び段階がコミュニケーション活動の中でそれぞれの段階 がいかなる位置にあるのかを整理 してみる。次のように図示することができよ

う。

他者 との交流 (

言語学的手段 (

生理学的段階

言語学的段階 非 (副)言語学的手段

上の図からも分かる通 り、実際のコミュニケーション活動においては、言語 学的段階、すなわち 1

. 2.

で述べ られているような語嚢及び統語的知識は一 部を担 うに過 ぎない. しば しばテープを使用 しての聴解指導の現場では、非 (副)言語に比べて言語的手段が大 きな割合を占めるのはいた しかたない。 し か し、実際は人間の限 られた情報処理能力 を補 うために両方の手段 を駆使 して いることを次 に述べる。

(7)

2. 3.

情報処理 を容 易 にす るため に行 われ るこ と

A.

言語学的手段 を使用する

ここでは、二つの工夫があげられる。

一つは、その言語の音韻体系、又は文法構造に関する知識を利用 して、

ある特定の言語項 目の生起する制限をあらか じめ予測することである。 よ く、聞き取 りは極めて能動的かつ創造的な活動であると言われるのはこの ような理由からである。当然、学習者の音韻論的知識や統語的知識が聴解 に大 きく影響することになる。言語音の認識における予測の効果について は

、Pe t e r &Pi n s o n( 1 9 6 3 )

の行 ったい くつかの実験 によ り証明 されてい る。

もう一つは、どんどん耳に入って くる言語情報を単純化、概念化 して短 期記憶の中におさまるようにすることだ。どんなに長い文でも、それを個々 の音の集まりとして碇えるのではな く、単音‑フレーズ一文一文車全体の 順で概念化 した上で処理 してゆけばよい

。L

l使用者はこれを無意識のう ちに行っているが、学習者はその過程のどこかでつまずいているうちに処 理すべ き情報量がどんどん増え、 しまいには膨大な量になってゆ くのを見 送ることになる。逆にいえば、言語学的及び生理学的両段階における能力 を必要 とするこの処理ができれば、聴解力はかなり高い とみなすことがで きよう。

B.

非 (副)言語学的手段 を使用する

コミュニケーション活動における非 (副)言語学的手段の重要性 は

2.

2.

で述べた通 りである。聞き手は、話 し手の表情や身振 りから、また繰 'り返 しによる余剰性から、さらにスクリプ トや文化的、社会的スキーマか ら、聞こえてくる内容をある程度限定することができる。聴解指導におい ては、 1

. 3.

で述べ られている通 り、聞き手のスキーマを活性化するよ うな指導法が提案 されている。

次 に、以上のことが らが学習者の抱える問題 とどう結びつ くのかを論 じる。

(8)

3. 学習者の習得段階 と指導法 を結 びつける。

3.

1

.

学 習者 の声

発音法の授業で学習者にリスニングの練習をさせると、決 まってつ ぎのよう な声が聞かれる。それらを段階分けした上であげると、次のようになる。

A.

生理学的段階 (個々の音 を識別できない)

「音が開 き取れない

・「 [ 1

] と

[ r ], [ S ]

[ 0

】 などの音が聞き分けられない

。 」 B.

言語学的段階

・ 「音はわかるが、意味が解 らない

。 」

・ 「速 くてついて行けない

。 」

・ 「聞 き取れてもす ぐに忘れて しまう

。 」 C.

非言語学的なもの

・ 「教室内ではうまくい くが、実際の場面では緊張 して しまう。」

・ 「会話の流れについて行けない

。 」

3.2.

そ れぞ れの段 階 にお け るス トラテ ジー

ここでは

、 3.

1

.

であげられた学習者の抱 える問題点の対策法 として

、 1

章で述べた指導法 との結びつきを論 じる。

A.

生理学的段階における対処法

物理的条件 を整えることが必要である。具体的には、 1. 1.で述べた

MOT ORTHE ORY

をもとに、単音から音変化に至 る練習を発音、聞 き取 りの両面か ら行 うことにより、音 に慣 れるとともに,音韻体系 を身に付け るようにする。

B.

言語学的段階における対処法

統語、語嚢、音韻論的知識の重要性 を認識 させた上で、情報の処理方法 を学ばせる。。 1

. 2.

及び

2. 3.

に詳述 してある。

(9)

C.

非言語的な段階における対処法

コミュニケーションにおいては、非言語及び副言語的情報を十分に利用 することが必要であることを認識 させ、これらの情報の入手方法や利用法 について指導する。

4. 結論

以上

3

つの段階に分けて論 じてきたが、三者の関係は、学習者の習熟度によっ て縦に並べ られるものではなく、む しろ互いに絡み合っている場合が多い。従っ て指導者は、個々の学習者の抱える問題がいかなる段階に起因するのかを正確 に判断 し、適切な指導法を用いることが望 まれているといえるだろう0

参考文献

卯城 裕司 「スキーマを活性化する

Pr e r e ad i ngAc t i v i t i e s

の理論 と実践」、

nRI CEPLAZA J

,第

3

号、東京

、1 9 9 3 .p p. 1 41 ‑ 1 5 3.

竹蓋 幸生 r日本人英語の科学」、研究社、東京

、1 9 9 2.

竹蓋 幸生 rヒアリングの行動科学J、研究社、東京

、1 9 9 5 .

田中 明夫 「リスニングにおける語嚢の理解 とその指導」

、nRI CEPLAZA J

4

号、東京

、1 9 9 4.pp. 1 3 0 ‑ 1 41 .

Coo k,Ⅴ. S e c ondLan gua geLe a ml ngandLan gua g eTe ac hi n g,Edwa rd Ar nol d ( pu bl i s he r s )Lt d. , 1 9 9 1 .

De ne s ,P.a ndPi ns o n,E.

rことばの科学」(切替一郎他訳)、東京大学出版会、東京

、1 9 9 0.

参照

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