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Science Times」を活用した理科授業

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Academic year: 2021

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科学への興味関心の向上と、学習への動機づけ「

Science Times」を活用した理科授業

著者 米田 力, 梶原 篤

雑誌名 教育実践開発研究センター研究紀要

巻 23

ページ 187‑190

発行年 2014‑03‑31

その他のタイトル Science Times as a Potential Attractive Teaching Material at Junior‑high School.

URL http://hdl.handle.net/10105/9834

(2)

1.はじめに

新学習指導要領の基本的な考え方として、「子どもた ちの現状をふまえ、『生きる力』を育むという理念のもと、

知識や技能の習得とともに思考力・判断力・表現力など の育成を重視している。」があり、中学校での理科の学 習においてもそれらの力を活用し、学習活動を充実して いくことが求められている。

また、2008年度奈良県中学校理科教育研究発表大会

(以下、奈中理)で発表された、都南中学校による奈良市・

天理市内の小・中学生を対象としたアンケート調査では、

小学校高学年で「理科が好き」という生徒が25.1%、中 学校3年生で12.7%という結果が示されている1)。 

これらのことから、理科の学習において興味・関心 の向上と学習への内発的動機付けを目的とし、学習の アディショナルなプリントとして理科通信(以後「Science Times」Fig.01)を用いることにした。

Science Timesには単元ごとの学習に関連した記事を 掲載し、授業で活用した。また、様々な自然現象や科

学関連のニュースも掲載し、その内容について授業の中 で解説をおこなうことで生徒たちの学習に対する内発的 動機付けを試みた。

2 補助教材「Science Times」作成の背景

国際的な調査としてのOECD生徒の学習到達度調査、

いわゆるPISA(2009年)2)や国際数学・理科教育動向調 査いわゆるTIMSS(2012年)3)の調査結果から、科学的 リテラシーの向上には、論理的な予想、得られた実験 結果、結果の考察、そして、次の実験のアイデアを導き 出すような学習のスパイラルが必要だと考えられる。ま た、学習の基礎となる知識や経験、実験・観察の技能 といった様々な能力を身につけておくことが前提となる。

次に、子どもたちの「理科離れ」という表現について は、理科に興味を持たない子どもたちが増加したのでは なく、子どもたちが科学や自然に触れる機会が少なくな り、その結果、科学や自然を体験的に知らない子どもた ちが増えたという意味ではないかと筆者は考えている。

「Science Times」を活用した理科授業

米田 力

(奈良市立都南中学校)

梶原 篤

(奈良教育大学 理科教育講座(物質科学))

“Science Times” as a Potential Attractive Teaching Material at Junior-high School.

Chikara YONEDA

(Tonan Junior-high School)

Atsushi KAJIWARA

(Nara University of Education)

要旨:国際的にも理科の学力向上の必要性が示され、日本でもいわゆる理科離れに対応した授業の展開が中学校の理科で も必要になってきている。一方で、教育困難校といわれるような学校では、理科に興味を向けさせることすら容易ではない。

そこで、理科通信(以下Science Times)と名づけた補助教材を活用した授業を展開し、教科書に載っていない項目であって も写真や動画を用い、積極的に取り上げた。さらに、Science Timesの活用による学習効果について調査した結果、科学的 事象に強い興味・関心を持った生徒や、意欲的に学習に取り組む生徒の増加が見られた。筆者が行っているこのような試み について紹介する。

キーワード: 理科通信 A guide leaflet on Science class 内発的動機付け intrinsic motivation 科学的リテラシー Science Literacy 中学校 Junior-high school

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科学や自然から体験的に離れている子どもたちに対して、

教員が意識して科学や自然に触れる機会を提供しなけ ればならないと危惧している。

また、筆者のひとりが勤務する学校には、学習に対し て無気力であったり、低学力の生徒も多く、学級や授業 になじめず、投げ出したり、授業をエスケイプする生徒 も在籍している。その状況下で、筆者は授業作りを考え る柱として、「わかりやすい」という、授業に対し積極的 に取り組む生徒に対する魅力ある授業を目指すことと、

授業に対し消極的な生徒を授業に取り込むための魅力あ る授業作りの二本を柱として考えた。

これらのことから、「Science Times」を通して、科学 や自然のコラムを生徒に提供することとし、一人でも多 くの生徒に理科に興味を持ってもらうための取り組みを 行った。

3 「Science Times」を活用した授業実践

中学1年生2学期の学習内容は[水溶液の性質]、[物質 の状態とその変化]、[光による現象]、[音による現象]の 4つの単元であった。それぞれの単元で、教科書には 載っていないが生徒たちが興味を持ちそうな現象や簡 単な実験など、なるべく写真や動画とあわせてScience Timesで 紹 介した。 表1は 単元 名とその時 のScience Timesのトピックスと理科的な位置づけ、写真と動画の 使用を一覧に示したものである。

4 「Science Times」による学習効果 4.1 アンケートの結果

 担当している1年生の3つのクラスにおいて、2学期最 初の授業と、2学期期末テスト後の授業の2度にわたりア ンケートを実施した。質問項目は「理科に興味をもって いますか。」「理科は好きですか。」「理科について、不思 議だな、おもしろいなと思いますか。」という3項目である。

2回目のアンケートでは、理科通信の有効性をはかるため

「Science Timesを通して」という書き出しでアンケートを 行った。アンケート結果を表2に示す。各項目で肯定的 な意見に対するポイントが上がっており、Science Times を通して興味関心は向上したといえる結果となったと考 えたい。

4. 2 特に印象に残っているトピックス

Fig.02は「Science Times」の内容で「特に印象に残っ ている現象はなにか」という問に対する調査結果を示し ている。この問いは自由記述形式で質問し、選択肢は いっさい与えていない。その結果から特に「ウユニ塩湖」、

「オーロラ」、「青の洞窟」の内容に関して、それぞれ16人

(16.8%)の生徒が印象に残っていると回答している。ま た、授業内容とは関連が一切ないが、号外として「山中 教授のノーベル賞受賞」の話題を紹介したが、メディア でも大きく取り上げられたことから印象に残っている生徒 も多いようであった。一方、「紫キャベツの実験」、「奈良 の大仏の金メッキ」、「空はなぜ青いか・夕日はなぜ赤い か」など授業に関わる内容についての回答はなかった。

この理由としては、表1から、生徒が「印象に残ってい る」と回答した内容で割合の高かったピックスはいずれ も写真や動画を用いて解説したものであったことがわか る。さらに、その内容として特殊な自然現象や美しい自 然の光景について、特に高い興味・関心を示していると Fig.01 使用したScience Timesの1例

表1 Science Timesのトピックスと理科での位置づけ

表2  理科に対する意識のアンケート

興味を持っているか 理科は好きか 不思議だと思うか はい いいえ はい いいえ はい いいえ 回答数 1回目 53(62%)33(38%)54(69%)24(31%)54(75%)18(25%) 88人 2回目 72(85%)13(15%)66(81%)15(19%)78(91%) 8(9%) 86人

「はい」の増加分 +23% +12% +16%

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考える。

5 自由記述欄から読み解く、今後のScience Times のあり方

4.1の 結果を通してScience Timesを用いることで、

生徒たちの興味関心は向上したと考えられる。今後 Science Timesを深化させるためには、生徒たちの興 味関心を惹きやすいトピックスを選び、そのトピックス の効果を上げられるような写真や映像を活用することが 必要だと考える。こうすることで、Science Timesが持 つ効果を最大限発揮できるだろう。また、このScience Timesでのターゲット層は、すでに理科が好きな生徒で はなく、学習はできるが理科に興味がない生徒や、理科 が嫌いで学習から逃避してしまいがちな生徒をターゲッ トとしている。そういったターゲット層のアンケート結果 の変化について、紹介したい。Fig.03に回収したアンケー トの結果の授業前後での変化の例を示す。

〈生徒A〉

 一回目:理科は覚えることが多くて勉強が嫌になる。

 二回目: 磁石のことや、重力のことなど、またみん なが知らないようなことを教えてください

〈生徒B〉

 一回目:無回答

 二回目: 自然現象の仕組みについてもっと知りたい です。

このように、一回目のアンケートでは否定的な生徒が 二回目のアンケートで肯定的・意欲的な発言に変わった。

しかし、理科や学習に対して否定的な意見の生徒も多く、

そういった生徒は、記述欄が白紙であったり、名前だけ の無回答アンケートも複数見られた。その他、大きな変 化は見られなかったが積極的な生徒達の意見を以下に 紹介したい。

・ビデオや写真がおもしろく、話を聞いているよりも 良かった。

・玉露のお茶のうまみ成分が60度前後で出るというこ とを聞いて、家でいれ比べをしてみた。お茶の渋みが違っ たので、驚いた。今度から上手にお茶を入れられるよう に練習したい。

・校外学習でいった大仏が昔は金ピカだったのはびっ くりした。当時の人たちが化学の力を使っていたのも驚 きました。

などの意見があった。

また、自由記述項目を調べると、こちらが提供したト ピックスに興味関心を持ち、シェールガスや深海の生物 など、自然の事物・現象を自ら進んで調べることで新た な疑問やトピックスを発見する生徒もいることがわかっ Fig.02 印象に残っているトピックス

Fig.03 使用したアンケートと回答例 同じ生徒の回答の変化(左から右)

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た。彼らの意見を聞き、生徒たちが望むトピックスをフィー ドバックすることも必要である。そのために、啓林館出 版の教科書「未来へひろがるサイエンス」の中にもある

「科学の広場」のような発展的な内容の部分を、Science Timesの片隅や裏面に記載することも考えていきたい。

しかし、それには作成者自身の学習が不可欠である。

最新のトピックスにも常にアンテナを張っていなければな らないと感じている。

6 終わりに

様々な情報や娯楽が氾濫する中で、生徒に興味を持 たせることが難しくなっている。将来的な生きる力の育 成を目指して、総合的な学習の時間や、キャリア教育、

持続可能な開発のための教育(ESD)など、呼称は様々だ が「生きる力」という一つの目標に向かった教育法が模 索されている。その中で、理科という教科は生徒の興味 を集めやすい教科であることに間違いはない。実験や 視聴覚教材を活用することで、授業の中で比較的容易に 驚きを与えることができる教科だからだ。しかし、2008 年度の奈中理の研究発表大会で、都南中学校が奈良市・

天理市内の小中学校を対象に、「理科に対する興味関心 が、学年が上がるにつれてどのように変化するか」とい うアンケート調査を行ったところ、小学校の高学年で理 科が好きという生徒が25.1%いたが、中学校3年生では 12.7%まで下がる結果が出た。学力の向上をめざし、学 習意欲を持たせるためには、このポイントを上げる必要 がある。学年が上がるにつれ、「目に見える現象を知る」

ことから、「なぜその現象がおこるのか」というような本 質的な学習に変わっていく。実験が難しくなったり、頭 の中でイメージを膨らませて論理的に理解していくこと が多くなっていく中で、理科という教科に抵抗を持ち興 味関心が減衰していく生徒が増えていくようである。

通常の理科の授業では学習内容を日々生徒たちに伝え ていくことが重要である。しかし、その部分に力を注ぎ すぎることで、生徒たちにとっては、「今学習している内 容がどこに繋がっていくのか」ということが不明瞭になり、

単純に学習することに抵抗を感じるようになっていくので はないだろうか。今回の研究を通して、Science Times を活用し、日常的なトピックスから非日常的なトピックス まで様々な話題を提供することで、生徒たちの興味関心 が増すことがわかった。子どもたちが興味を示し、自然 の事物・現象に自ら進んで関わろうと思った時に初めて、

今の学習を続けていれば疑問が晴れて答えにつながると 胸を張って言えるのではないだろうか。

持続可能な社会の実現には子どもたちが自分たちの周 りを取り巻く問題について考える必要がある。そのため には思考力・判断力・表現力を培い、課題解決能力を 向上していくことが必要である。子どもたちが自らの力を 向上させるため、Science Timesがそのようなきっかけと

なれるように今後も様々なトピックスを子どもたちに提供 していきたい。

1) 奈良県中学校理科教育研究会 平成20年度研究 発表会奈良市立都南中学校理科教諭グループの発 表。

2) 国立教育政策研究所のホームページに調査結果の 要約、問題例、ポイントなどが掲載されている。

3) 文部科学省のホームページにポイント、結果の推移 などが示され、国立教育政策研究所のホームペー ジに結果概要、問題例などが掲載されている。

参照

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