奈良教育大学学術リポジトリNEAR
社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究
著者 上田 敏見
雑誌名 奈良学芸大学紀要. 人文・社会科学
巻 13
ページ 171‑181
発行年 1965‑02‑27
その他のタイトル A DEVELOPMENTAL STUDY OF THE STABILITY OF SOCIOMETRIC STATUS POSITION AMONG ELEMENTARY AND JUNIOR‑HIGH SCHOOL PUPILS
URL http://hdl.handle.net/10105/3436
社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究
上 田 敏 見 (心 理 学 教 室) .
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I 問 題
児童・青年が集団内において占める社会測定的地位の安定性に関する研究は決して少なくな い。しかし、上田(1964a)が既に指摘したように、その多くは概してサンプルが小さく、さら に、ソシオメトリック・テストの規準や選択のレベルを統整して発達的視点から扱った研究はき わめてまれであるoわれわれは1962年4月以来2カ年問にわたり、幼稚園児から中学3年生に至 る各学年の児童・生徒の社会測定的地位の安定性に関する研究をつづけて来た。その結果の一部 は既に他の機会に上田が発表(1963; 1964a; 1964b)したが、今回の試みは、従来得たデータに 小学校3 ・ 5年生および中学1 ‑ 2‑ 3年生に関するものを附加し、社会測定的地位の安定性の発達 傾向を統一的に明らかにしようとするものである。
Laughlin, F. (1954)は、テキサス州の公立学校の6学年生〜7学年生のpeer statusの安定 性について縦断的研究をおこなった。 525名の児童は6学年から7学年‑進級し、学級編成も変 化したけれども、第6学年当時に得たGroup social acceptance scoreと第7学年になった約1
カ年後のそれとの相関は、 .552であったと報じられている。この結果からみると、子どもが小翠 校から中学へ進学し他の小学校出身者とまざりあった時でも、小学校時代に各児が占めていた人 気的地位を維持するいちじるしい傾向があるように思われる.しかし、このスコアは普通に用い られているソシオメトリック・テストのCRSとは異なり、クラス成員全員を"友人''としての 好悪の程度によって5段階に評定し、各児の得た得点総計を成員数で割ったもので、このような 一般的規準による地位得点は他の特殊な規準による場合の地位得点より比較的安定であることが 知られている。したがって、 CRS、殊に特殊な規準を用いた場合のCRSの安定性はさらに低い であろうと予想される。
塩田芳久(1955)は"友だち"を規準とする3人制限のソシオメトリック・テストを2過間隔 で実施し、被選択数の相関を求めることによって小学2年生‑中学3年生(各学年1クラス)の 測定値の安定度を分析した。これによると、小学4年以上においては、安定度がほぼ同程度であ って、中学生のそれが特に高いとはいえないことが分ったO しかし、 tesトretestの間隔が大きく なると社会測定的地位の安定度は一般に低下する傾向があり、殊に小学校低学年児においてその 傾向がいちじるしい(上田1964a)から、相当大きなサンプルについて長期間をへだてた場合に おける安定度の発達的傾向の検討が必要である。
Bjerstedt, A (1956)は、スエーデンの小・中学生(各学年1クラス)にworkmate choiceを させ、受けた積極的選択数の定定性をしらべている。日本の中学ト2・3年生に相当する学年の 4カ月間隔の相関は、それぞれ、.91、.85、.77であったが、これは同期間の小学生(日本の4 ・ 5 ・6年生に相当)における相関(4年.91;5年.82;6年.72)よりいちじるしく高いとはいえ ない。なお、この相日射まいずれの学年においてもかなり高いが、これはおそらく学級のサイズが 小さい(23人〜37人)からであろうと思われる。わが国の小・中学校の学級は通常50名前後の成
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社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究 (上ffl)員から成り立っているので、このことが学級内の各児の地位の安定性になんらかのかかわりをも つことは否定できないであろう。
Feinberg, M.R. (1964)は、ニューヨ‑ク市の13才〜15才の男子246名(10クラス)について 5カ月間隔の、同年令の男子52名(2クラス)については2カ年間隔の選択の安定性について吟 味している。坐席を規準とする4人制限の選択・排斥をとり、各人が学級内で得た選択総数から 排斥総数を差引いた値を学級成員数で除し、それを100倍するという方式でacceptance‑rejection scoreを算出したo このスコアの5カ月間隔における相関は.69で1%水準で有意となったが、
2カ年間隔のそれは.22にとどまり5%の有意水準に達しなかった。この結果からみると、男子 青年の選択的地位は、 5カ月間ぐらいは、かなり安定度が高いといえるようであるが、 2カ年問 の安定性に関する結果は、サンプルも小さいので、直ちに一般化することは危険であろう。しか し、青年前期にみられる不安定な心身の条件や、この著者も指摘しているような青年の気まぐれ などを考え合わせると、この研究が示唆しているように、青年の学級集団内地位は2カ年もすれ ば相当大巾に変動するであろうことは当然予測される。さらに大きなサンプルを用いての検討が 期待される所以である。なお、この研究の対象となった学級は30名前後の男子のみによって構成
されていたことも看過すべきでない。わが国の男女共学制の中学校、しかも大規模学級の場合に おけるこの種の地位の安定性についての検討、特に小学生の場合との比較による発達的分析がの ぞまれる次第である。
本研究においては、われわれの従来の研究成果(1964a; 1964b)に加えて上記の諸結果をふま え、出来る限り同一地域から相当多数のサンプルをとり、ソシオメトリック・テストの規準およ び選択・排斥のレベルを可能な限り一定に保ちつつ、異なる期間における児童・青年の社会測定 的地位の安定性を発達的にとらえ、かつ規準の差異による安定性の高低について若干の検討を加 えるため、次のような仮設を設定して検証を試みた。
1.児童が小学校低学年から中・高学年‑と発達するにつれて、かれらの学級集団における社 会測定的地位の安定性は漸次高まるであろう。
2.中学生の社会測定的地位の安定性は、小学校高学年児のそれより必ずしも高くないであろ う。
3. tesトretestの間隔の大小にかかわらず、社会測定的地位の安定性の発達傾向は、同様なパ ターン(pattern)を示すであろう。
4.学習を規準とする社会測定的地位の安定性は、清掃当番を規準とする社会測定的地位の安 定性より高いであろう。
Ⅱ 方 法
本研究のSsは幼稚園年昆組1クラス(39名)、小学1年生2クラス(57名)、同2年生4クラ ス(141名)、同3年生4クラス(158名)、同4年生4クラス(163名)、同5年生4クラス(163名)、
同6年生4クラス(159名)、中学1年生2クラス(90名)、同2年生8クラス(350名)、同3年 生2クラス(86名)、合計35クラス(1406名)である。各クラスの実際の大きさは45′‑50名(男 女ほぼ同数)であったが、本研究に必要な5回のソシオメトリック・デ‑タを完備したSsは上 記のように各クラス共その実員数より若干減少した。これらのSsはいずれも奈良県下の公盤幼
・小・中学校の児童・生徒で、その大部分(小学2年生以上中学生まで全員)は大和高田市立校 からえらばれた。
社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究(上田)
173
ソシオメトリック・テストの規準は、幼稚閑児を除いて、いずれの学年にも共通に"運動場や 教室の清掃当番"とし、選択数・排斥数は酎?J限とした。幼稚園児に対しては=あそび友だち"という規準を用いたが、これは前述の規準がかれらには殆んど無意味だったからである。なお小 学1年生および幼稚園児には各担任教諭が個別に面接質問するという形でソシオメトリック・テ ストが実施され、小学2年生以上に対してはわれわれが以前の研究(1964a)において示した質 問紙(中学生用は漢字まじり文とし、グループ調査と名付けた)を配布して回答を求めたCデ‑
タの収集には昭和37 (1962)年度および昭和38 (1963)年度の2がTlをついやした。すなわち、
小学3・5年生および中学2年生6クラスについては昭和38年度、その他については昭和37年度 に、年間5回(5、 6、 9、 11月の各月末および翌年2月未)にわたり同一形式のソシオメトリッ ク・テストを実施したわけである。各児の社会測定的地位(sociomeはic status)の指標として ほ、われわれが以前から用いているように、第3順位までとった選択・排斥数にもとづくCRS
(choice‑rejection status)を採用した。
異なる期間における社会測定的地位の安定性を確かめるために、今回は、 tesLretestの間隔を 1カ月(5月‑6月)、 2カ月(9月‑11月)、 3カ月(6月‑9月)、 4カ月(5月‑9月)、 5 カ月(6月‑11月)、 6カ月(5月111月)、 8カ月(6月‑2月)、 9カ月(5月一一一2月)の8 種(但し、幼稚園児は4種)としてCRS相互間のピアソンの相関をとり、新学級編成後の熟知 期間が等しい時点で各発達段階別に安定性(r.)の比較を試みた。この際、先ず各クラス別に相 関係数を算出し、発達段階別に幼稚閲見・小学校低学年(1‑2年) ・小学校中学年(3‑4年) ・ 小学校高学年(5・6年)および中学生(1‑2‑3年)の5グル‑プにまとめ、それぞれのグルー
プの平均rを求めた。次に、前記8種の間隔毎にグル‑プ問のrの差の統計的検定をおこない、
この差が有意の場合には、さらに進んで各グループ問のrの対毎の差の検定をおこなった。但 し、 8カ月および9カ月間隔の中学生の安定性は、データの欠損が2クラス分あったので結局 303名分のデータにもとづく結果であるO なお、中学2年生3クラス(137名)は、仮設4の検 証における比較対照群(学習を規準とするグループ)としてのみ用いた。また、この際における 迭択規準は特定教科の学習としないで自習時間における学習とし、学習能力の馳与をさけようと
した。
Ⅲ 結果および考察
児童・生徒の社会測定的地位の安定性を示す指標としての相関係数(r.)を発達段階グループ 別、 tesトretest間隔別にまとめ、各間隔毎にグループ間のrの差の検定結果を附記したのが Tablelである。この中、 1カ月間隔、 4カ月間隔、 6カ月間隔および9カ月間隔(いずれも5月 を基準とした間隔)の安定性の発達にともなう変化傾向を図示してFig. 1に示した。 Table lの 相関係数は幼稚園児の.491および.457が1%水準で有意である他は、すべて0.1.水準で有意と みとめられた。また、各間隔毎の4個ないし5個の相関係数の問に有意差がみとめられるかどう かについて検定を試みたが、 Table lの右端に示したように、いずれの場合も差は有意水準に 達した。したがって、 test‑retestの間隔の大小を問わず、ここで分けた各発達段階毎の安定性は 互いに差異があるといえる。つまり、このサンプルに関する限りでは、いずれの間隔においても 社会測定的地位の安定性は小学校中・高学年においてピークに達し、中学生の安定性はむしろそ れより低下する傾向がみとめられたのである。 Fig. 1に示したのは代表的な発達的変化傾向の グラフであるが、煩雑さを避けるためここには省昇した2カ月間隔・ 3カ月間隔および5カ月間
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社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究 (上田)隔のグラフはFig. 1の1カ月間隔のそれに、また8カ月間隔のグラフはFig.1の9カ月間隔のそ れに、きわめて類似している。
Table 1 Grade Levels and Status Stability Coefficients of CRS obtained on different tesトretest intervals
test‑retest in tervals
Kindergarten (N‑39)
1 month .606
2 months 3 months
4 months . 521 5 months
6 months 8 months 9 months
Grades (N=19去字2Gr c浩s3&4
<321)
.778
.797 .792 .716
a> co co co
O O C O C O
l > ‑ E ‑ t > ‑ t o
!
>
‑ C O O C D
^ C n L O C
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] c o o j r o o [
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>
‑ o o o o c o o o t r
‑ t
‑ i
^ t
‑
Grades 5&6
蝣(N ‑322)
^ cD T‑H c^i LO ^t' ^' cn c
‑
<
x
>
t o o o c o a L n t n C O 0 0 0 0 C O c O C O
│Chi‑square Grades7,8&9!。btainedto霊e
(N‑389)j」
the diff. among grade levels
23.98**
763 30.66*
794 9.92*
1
739 21.73*
689 33.92 641 21.92 683 10.13*
1
617 18.72*
Note: **一一Significant at the.01 level of confidence.
*‑‑Significant at the.02 level of confidence.
※ N in grades 7,8&9 was 303 in case of 8months'and 9months'interval.
・
・
‑
⁚
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和 郎 L , r 叩
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社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究 (上田)
Table 2 Statistical Analysis of Differerlces in Stability Coefficients between Grade levels.
C 1 month interval) Kinder
Kinder Grades ut:
Grades 3&4 Grades 5&6
Grades Grades Grades Grades
garten l&2 3&二 5&6 7,8&9
N.S.
N.S. N.S.
N.S. N.S.
‑.*
Note: **‑‑ Significant at the.01 level.
* ‑・‑Significant at the.05 level.
Table 4 Statistical Analysis of Differences in Stability Coefficients between Grade levels.
( 3 months interval) Grades
l&2 Grades
l&2 Grades
3&4 Grades
5&6
Grades Grades Grades 3&4 5&6 7,S N.S. N.S.
N.S. N.S.
**
Note: **一一Significant at the.01 level.
・一一・Significant at the.05 level.
Table 6 Statistical Analysis of Differences in
Stabi一ity Coefficients between Grade levels.
( 5 months interval)
Kinder Grades l&2 Grades
l<: 4
Grades 5A6
Kindeト Grades Grades Grades Grades garten l&2̲ 3&4 5̲&6 7,8&9
* ** ** *
N.S. N.S.
* *
rt*
Note: **‑‑ Significant at the.ol level.
* ‑‑‑Significant at the.05 level.
Table 8 Statistical Analysis of Differences in Stability Coefficients between Grade levels.
( 8 months interval) Grades
l&2 Grades
l&2 Grades
3&4 Grades
5&h
Grades Grades
軍&4 5&6 7,8&9 N.S. N.S. N.S.
N.S.
N.S.
Note: **‑‑ Significant at the.01 level.
175
Table3StatisticalAnalysiso
StabilityCoefficientsbetween'とDifferencesin radelevels.
(2monthsinterval)
Grades Grades
1&2 3&4 5&6 7, Kinder
Grades l&2 Grades
3&4 Grades
r>&i'
=!= ;); ** ** **
N.S. N.S.
N.S.
**
Note: **‑‑ Significant at the.01 level.
・ ‑・‑Significant at the.05 level.
Table 5 Statistical Analysis of Differences in Stability Coefficients between Grade levels.
( 4 months interval) Kinder‑ Grades Grades
garten l&2 3&4 Kinder
Grades l&2 Grades
;‑;& I Grades
5&6
5& 7,8&9
N.s. **. ** *
N.S.
N.S.
**
Note: ** Significant at the.ol level.
・ ‑‑・Significant at the.05 level.
Table 7 Statistical Analysis of Differences in Stability Coefficients between Grade levels.
( 6 months inteval) Grades
l&2 Grades
¥&2 Grades
:>.&i Grades
5&li
Grades Grades Grades
3革4 5畢 7,8&9 N.S. N.S.* *
**
Note: **一一Significant at the.01 level.
* ・‑‑Significant at the.05 level.
Table 9 Statistical Analysis of Differences in Stability Coefficients between Grade levels.
( 9 months interval) rades Gra
Grades l&2 Grades
H&‑I Grades
5&6
rades Gra 1&2 3&4 5&6 7 , 8&9
N.S. N.S.
N.S.
**
Note: **‑・‑Significant at the.01 level.
* ‑‑・Significant at the.05 level.
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社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究 (上田)次に、 test‑retestの間隔別に、各発達段階相互間の安定性の差を統計的検定にかけ、その結果 をTable2‑Table 9に示した。これによると、先ず1カ月間隔では、幼一小3蝣4 ;幼一小5・
6;幼I‑中;小1・2‑ノ小5・6 ;小5・6‑中の問にそれぞれ5%ないし¥%水準の有意差がみと められた。なお、幼‑小1 ・2の間および小1蝣2‑小3・4の問の差はいずれもわずかに有意水準を 逸した(前者のCR‑li 後者のCR‑1.87V 幼稚園児と他の発達段階グル‑プとの差が見か
け上はかなりあっても容易に有意永準に達しないのは、幼児のサンプルがきわめて小さいためで あろうと思われる。 2カ月間隔で有意差がみとめられたのは、幼‑‑/JnI・2;助‑小3・4;幼‑
小5蝣 6;幼‑申;小1・2‑小5・6;小3蝣4‑r‑fj ;小5蝣6‑中の間であった。幼稚園児の社会 拙定的地位の安定性が他のいずれのグループの安定性よりもいちじるしく低いことが明らかとな った。 3カ月間隔で統計的有意差が確認されたのは、小1・2‑小5蝣6 ;小5‑6‑中の問だけに すぎなかったが、発達にともなう安定性の変化傾向は1カ月間隔のそれと殆んど同一の曲線を描 いている。4カ月間隔の場合、幼‑小3‑4;幼‑小5・6;幼‑中;小1・2‑小3・4;小1・2 一小5・6;小3・4‑中;小5・6‑中の間の差が有意であるとみとめられた。 5カ月間隔では、
幼‑‑小1・2;幼一一小3・4;幼‑小5‑6;幼‑#;小1・2‑小5蝣6;小3‑4‑小5・6;小3・4
‑i+> ;小5・6‑中の間に有意差をみとめた。さらに、 6カ月間隔になると、小1・2‑小5・6;
小3・4‑小5・6;小314一寸l ;小5・6‑中の問、 8カ月間隔ではわずかに小3‑4‑中の問の みに統計的に有意の差が見出された。この8カ月間隔における小5・6‑中の問の差はCR‑ 1.85 となりわずかに有意水準に達することが出来なかったが、小3・ 4から中学へかけての下降がみと められるから、小5・6から中学‑かけてもなだらかな下降傾向がつづくものと考えてよいであろ
う。9カ月間隔において有意差が見出されたのは、小1蝣2‑小3・4;小3・4‑中;小516‑中の 間であった。このように、間隔の増大につれて発達段階グループ間の差は漸減していくようであるC
以上の諸結果を発達という批点からまとめてみると、先ず幼稚園児と小1 ・ 2年の比較では2カ 月間隔と5カ月間隔において小1・2年生の安定性が有意に高く、 1カ月および4カ月間隔におい ても期待された方向への上昇傾向がかなりつよく示唆された。すなわち、 1カ月間隔における差 および4カ月間隔における差はいずれも、 one‑tailed testによれば、 5%永準で有意(前者の CR‑1.ォ 後者のCR‑1.78)となり、この幼稚園児のサンプルがもっと大きければ、当然い ずれの間隔においても幼稚園から小1 ・ 2年へかけて安定性の増大が確証されるであろうと思わ れる。また、幼稚園児のデータの確保された1・2・4・5カ月間隔のみについていえば、幼く小3・
4;幼く小5蝣6 ;幼く中という関係が有意にみとめられるので、このtesトretest間隔に関する限 りでは、幼稚園児の安定性は他の発達段階グループのそれより明らかに低いといえるO この結果 は、 1カ年間隔について得られた結果(上田1963)と矛盾するものではない。次に、小1・2年 と小3 ・ 4年の安定性を比較してみると、学年進行にともなう有意の上昇がみとめられたのは4 カ月および9カ月間隔のみである。しかしながら、幼く小3・4という関係が1・2・4・5カ月間隔 においてみとめられるから、少なくともこれらの間隔に関する限り、安定性は幼稚園から小3・4 年へかけてなだらかなカニブを描いて増加していくといえるであろう0
小3・4年と小5・6年の安定性を比較してみると、後者が有意に高いのは5カ月および6カ月間 隔のみである。しかし、小1・2く小5・6という槻係が8・9カ月間隔を除く他のすべての間隔にお いてみとめられるから、一般に比較的短期間(6カ月以下)においては、小学校1・2年生から5
・6年生にかけてなだらかながら安定性の上昇傾向がみとめられるようである。しかし、 tesト retestの間隔が8カ月・ 9カ月という長期間になると、この小1・2と小5・6の差も有意水準を逸 するに至る傾向が示唆された。なお最後に、小5・6年と中学生の安定性を比較してみると、 8カ
社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究(上田)
177
月間隔以外のすべての間隔において中学生の安定性は有意の低下を示した。しかも、 8カ月間隔̲A の両群差は、もしone‑tailed testによる場合には当然5%水準で有意となる程度(CR‑1.85) であるから、中学生の社会測定的地位の安定性は、小学校5 ・ 6年生のそれより概して低下する傾 向にあるといえるであろう。
このようにして、幼稚園児のサンプルが小さいという難点が免がれないけれども、幼稚園‑小 学校低学年‑中・高学年と児童が発達するにつれて、かれらがそれぞれの学級集団内において占 める社会測定的地位の安定性は次第に上昇していくことがはばみとめられた。ただ、 8カ月間隔 と9カ月間隔においては小3・4に見かけ上の安定性のピークがみられ、小5・6から中学へかけて は、むしろなだらかな下降傾向が示唆された。しかしながら、中学年(小3‑4)と高学年(小5
・6)の問の差は、 Table 8およびTable 9にみられるように有意水準に達しなかったのである から、仮設1は支持されたといえるであろう。なおこの結果は、かなり特殊な規準(清掃当番) を用いても児童の社会測定的地位が相当長期にわたって安定していることを示しているが、 Bjer‑
stedt (1956)の結果より安定性が少し低いようである。これは、おそらく主として学級規模の差 異によるものと思われる。
中学生の社会測定的地位の安定性は小学校高学年児のそれより必ずしも高くないであろう、と いう仮設2もまず支持されたといえよう。当初中学生の安定性は、小学校高学年児のそれと同程 度のものと予測されたのであるが、その安定性は1個の例外を除くすべての間隔において小5 ・ 6年より有意の低下を示したのである。しかし、 5カ月間隔ではFeinberg (1964)の得た結果と ほとんど同じであり、共学という学級編成および規模の差異を考慮に入れると、このサンプルの 方が安定性が高いといえるのではないかと思われる。なおTable lを概観して興味深いのは、中
学生における安定性のrangeが他の発達段階グル‑プのそれに比べてかなり大きいという示唆 で、これはかれらが間隔の大小に対応して分化した反応を示すためと解される。
仮設3、すなわち、 tesトretestの間隔の大小にかかわらず、社会測定的地位の安定性の発達傾 向は同様なパターンを示すであろうという仮設は、必ずしも支持されなかった。すなわち、この 安定性の発達にともなう変化傾向は、およそ2種類のバク←ンに大別することができた。その1 ほ、小5・6年でピークに達しそれ以後中学への下降を示すパターン(1‑2‑3‑4‑5‑6カ月間 脂)で、他は、小3 ・4年で早くもピークに達しそれ以後小5・6年および中学にかけて漸次低下 していく曲線をたどるパターン(8カ月および9カ月間隔)である。 6カ月までの比較的短期間 型と長期間型といえるような2個のパターンにわかれるようである。 1カ年あるいはそれ以上の 長期間をへだてた場合にはどんなパターンがみられるのか、この点に関する解明は今後に残され
た興味ある課題である。
最後に、ソシオメトリック・テストにおける選択の規準と社会測定的地位の安定性の問題に若 干の検討を加えた。本研究においてわれわれが採用した選択・排斥の規準(清掃当番)はかなり
特殊なものと考えられる。そこで同一中学の2年生について、この規準よりさらに強力だと思わ れる規準(学習)を用いた場合(3クラス)と本規準による場合(3クラス)の社会測定的地位 の安定性を比較し、前者が高いであろうという仮設の検証を試みた。 Table lOはtesトretestの 間隔別に両規準による地位の安定性の比較を示したものである。この裏に明らかなように、両規 準問に有意差がみとめられたのはわずかに2個、すなわち、 5カ月間隔(CR‑2.42)と6カ月間 隔(CR‑2ユ0)で、いずれも学習規準にもとづく社会測定的地位の安定性の方が高くなってい る。その他の諸間隔における両規準問の安定性の差は、大部分期待された方向にあったがいずれ
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社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究 (上田)も有意水準には達しなかった。
Table 10 Choice Criteria and Status Stability Coefficients of CRS obtained on different test‑retest intervals
S tud y co m pan ion (N = 137)
L 竺 r二王
827 一 一
‑ .786
.795 i
.774 .7 35
.I E
W ork com p anion
(N = 129 ) .825
i i .8 17 ▼ 791 .795 .656 .647
S ign ifican ce o f
D ifferen ce * * 一
一
Note: * Significant at the.05 level of confideヱice.
このような結果は、規準が異なれば社会測定的地位の安定性も変動することを示唆したが、必 ずしも両規準による安定性の間に決定的な差異が存在することを確証しなかった。すなわち、仮 設4は十分支持されたとはいえない。小学生についても同様な結果が得られるかどうか、 5カ月
および6カ月間隔のみに有意の差がみられたのは何か特別の意味があるのかどうか、この点につ いては今後さらにサンプルを拡大して精密な分析を加えるまで、結論を留保したい。ただ、
Hudgins, B且(1962)の研究によると、第5学年〜第8学年の児童生徒において、 perceived arithmetic abilityが(1) perceived general ability, (2) acceptance as arithmetic partner, (3) general social acceptanceのそれぞれと有意の相蘭があること、一致係数が(1)、 (2)、 (3)の順 に小さくなることを確認しているので、特定教科学習を規準とする場合と自習という不特定教科 の学習を規準とした本研究の場合とでは、多少の差異は免がれないであろう。将来においては、
特定教科毎の学習を規準として採用した場合の社会測定的地位の安定性と、 …好きなお友だち"
といったきわめて一般的な規準による地位の安定性について、発達的に比較検討を加えたいと考 えている。
Ⅳ 要 約
本研究のSsは、奈良県下の公立幼稚園年長組から中学校3年生に至る全学年合計35クラス、
1406名(クラスの実際の大きさは幼稚園が40名、その他の学年では男女ほぼ同数より成る45‑50 名であったが、本研究に必要なソシオメトリック・デ‑タを完備したものは各クラス共実員数よ
り若干丁廻った)であって、大部分は大和高田市立小.中学生である。清掃当番というかなり特 殊な規準によるソシオメトリック・テストを年間5回(5・6・9・11・2月の各月末)実施し、第 3順位までの選択・排斥にもとづく各児のCRSを社会測定的地位のmeasureとした。 8種の tesトretest間隔(1‑2‑3‑4‑5‑6‑8‑9カ月、但し幼児は4種)を設定してCRS相互間の ピアソンの相関を算出し、新学級編成後の熟知期間が等しい時点において各発達段階別に児童生 徒の社会測定的地位の安定性の比較検討を試みた。さらに、選択の規準における差異と社会測定 的地位の安定性との関係に若干の分析を加えるため、中学2年生3クラスには自習時間における 学習を規準とするソシオメトリック.テストを年間5回実施し、清掃当番を規準とする同一学年 の他の3クラスについての結果と比較してみた。
本研究において得られた結果を要約するとおよそ次の通りである。
社会測定的地位の安定性に関する発達心理学的研究 (上田)
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(1)児童が幼稚園から小学校低学年へ、さらに中学年・高学年へと発達するにつれて、かれ らがそれぞれの学級集団において占めている社会測定的地位の安定性は、いずれのtesLretest 間隔においても有意に上昇していくことがはばみとめられた。
(2)中学生の社会測定的地位の安定性は、小学校高学年児のそれより有意に下降する傾向が 一般にみとめられた。
(3)発達にともなう社会測定的地位の安定性の変化傾向は、 tesトretestの間隔の大小によっ て異なる2個のバク‑ンを示した。すなわち、 6カ月以下の比較的短かい間隔でみられるパタ ーンで小学校高学年で安定性のピークに達し中学へかけては下降を示すものと、 8カ月および
9カ月間隔でみられるバク‑ンで小学校中学年でピークに達し、小学校高学年ではすでに早く も衰退の兆しをみせ以後中学にかけて下降していくものの2個である。
(4)清掃当番と自習時間における学習という2個の規準による社会測定的地位の安定性につ いて比較検討した結果、規準が異なれば安定性も変動する可能性のあることが示唆された。し かしながら、前記2規準に関する限り、その安定性の問に決定的な差異が存在することを確証 することはできなかった。
文 献
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