奈良教育大学学術リポジトリNEAR
奈良県吉野地域の過疎の現況 −南和広域市町村圏 計画について−
著者 西田 和夫
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 22
号 1
ページ 75‑83
発行年 1973‑11‑15
その他のタイトル THE PRESENT STATUS OF DEPOPULATION OF YOSHINO MOUNTAIN DISTRICT, NARA PREFECTURE −THE
PROJECT ABOUT RURBAN AREAS OF SOUTHERN YAMATO (NARA)
URL http://hdl.handle.net/10105/2758
奈良県吉野地域の過疎の現況
一南和広域市町村圏計画について−
西 田 和 夫
(地理学教室)
75
1.は じ め に
(1)計画策定の趣旨
奈良県の南部に位置する五条・吉野地域は最近において人口の流出が著しく、いわゆる過疎の 地域となっている。この地域に属する五条市・吉野町・大淀町・下市町・黒滝村・西吉野村・天 川村・野迫川村・大塔村・十津川村・下北山村・上北山村・川上村・東吉野村の1市3町10村に よって、昭和46年10月1日に南和広域市町村圏(図1)協議会が構成せられ、計画の策定及びそ の実施についての連絡調整を図ることになった。すなわち、それぞれの市町村の区域をこえた住 民の日常的な社会生活の広域化に対応して、各市町村が一体となって、この地域の振興整備を図 るための方策を定めたものである。
したがってこの計画は、奈良県総合開発計画・近畿圏基本整備計画などの上位計画との斉合性 に留意するとともに、圏域内各市
町村の総合開発計画などの主体性 を尊重しつつそれを広域的な視点 でとらえ直し、とくに広域的根幹 事業などについては関係市町村が 積極的に協力するなど、地域の総 合的な発展の実現を意図したもの である。
(2)計画の構成
この計画の構成は、まず、南和 広域圏の総合的な計画を樹立する 基盤として、圏域の特性を物語っ ている現況を明らかにし、つい で、基本構想、基本計画および実 施計画を定めるものとしている。
基本構想は、その目標年次を昭 和60年におき、圏域の将来目標を 明らかにするとともに、これを達 成するために必要な施策の大綱を 示すものである。
基本計画は、基本構想に基づき、
図1南和広域市町村圏圏域図
昭和56年を目標年次において、主として、広域ネットワーク
76 奈良県吉野地域の過疎の現況(西田)
および広域事務処理システムを定めるとともに、広域的な根幹事業の計画を定めている。
事業計画は、基本計画に定められた根幹事業の実施のための年次計画(3か年)が示されてい る。
以下、この圏域の現況を解析することとする。
2.圏 域 の現況
(1)位 置
この圏域は、奈艮県の南部にあって、束は三重県に、西は和歌山県に接し、紀伊半島のほぼ中 央に位置している(図2)。
圏域の地形は、その北部において、東西に流れる吉野川の流域にひらけた平地がみられるはか は、大部分の地域が、近畿の屋根といわれる大峰・大台などの雄大な山塊を中心とする急峻な条 座のもとにあり、その南北距離は60km、東西距離は40kmという、長方形の広大な面積を有している。
五条市・吉野3町の圏域北部 は、奈良市および大阪都市圏から 30km〜60kmの範囲にあり、その影 響を大きく受けて都市化の傾向が みられるが、その他の地域は、地 形的な条件などによって過疎的問 題をかかえている。
(2)自然的環境 地形
この圏域は、大きく分けて、吉 野川流域の口吉野地方、大峰山脈 を中心とした奥吉野地方に2分す ることができる。
ロ吉野地方は、ほぼ中央構造線 Medianline に沿う構造谷であ り、沿岸各地には平坦な河岸段丘 を形成している。もともととの段 丘上には、古くから水田や果樹園 がひらけ、また地方経済の中心地 が発達し、奥吉野の門戸として発
展をみている。 図2 南和広域市町村圏位置図
奥吉野地方は、十津川・北山川の深い渓谷にはさまれた大峰山脈を中心に、東部に台高山脈、
西部に伯母子山脈と、南北に並走する3つの大山岳地苗であり、いずれも起伏の大きい壮年期の 山容を示している。
規模の大きい河谷は吉野川・十津ノり・北山川であって、いずれも典型的な壮年期の山地を穿つ
Ⅴ字渓谷をなして曲流し、吉野周を除いては、谷底平野・河岸段丘の発達がみられず、わずかに
奈良県吉野地域の過疎の現況(西田) 77
環流空谷・滑走斜面がみられるのみで、したがって集落などは山腹ないし山麓緩斜面などに立地 している。平地の少ない本地域の特色をなしているものである。
したがってこの地域は、山岳美と渓谷美に優れ、吉野林業できこえる林産資源とともに、重要 な観光資源に恵まれている。
気候
太平洋に突出した紀伊半島の中央部に位置する本圏域の山岳地帯は、海岸気流の影響を受けて、
山岳気候を呈し、平均気温も10℃前後と低く、反面、降水量は全国的にも屈指の多雨地帯となっ ている。
なかでも大台ケ原一帯は、局地的に年間5,000mmに近い降水量がある。年間降水量2,500nmもの 多雨の山地に源を発する吉野川・十津川・北山川などの流域には、かつて大洪水、災害がしばし ば起り、現在では、これら各河川の流域には多目的ダムが構築され、また近畿の水資源の宝庫と して電源開発がすすめられている。
またこの山岳地帯は、雪も奈良盆地より早く降り、その量も多く、一部にスキー場がみられる ほか、山頂近くには原始林が多く、一部は天然記念物に指定されている。
この山岳地帯の南部になるにしたがって、次第に平均気温も高く、海岸の影響を受けた温暖多 雨地措となっている。
吉野川沿いの圏域北部は、奈良盆地のそれと同じく、年間降水量も少なく、寒暑の差がやや大 きい内陸的気候を呈している。
(3)社会的経済的環境 人口・土地利用
本圏域の面積が、奈良県全体の3,692kr虎に対して63.6%にもあたる2,347k腋を占めているにもか かわらず、さきにも述べた地形的な条件によって、本圏域の人口は119,701人(昭和45年国調)
にすぎず、県総数930,073人の12.9%となっている(表1)。
したがって人口密度においては、lkd当りで県平均が252人であるのに比して、五条市の380人、
大淀町の422人がそれを上廻っているはかは、いずれもそれを下廻っている(表1)。
このことを人口の推移の面からみると(表1)、昭和35年国勢調査当時と比較して、昭和45年 国勢調査において増加のみられるのは五条市・大淀町のみであり、わずかな減少に止まっている 吉野町・下市町とあわせて、圏域北部においては大阪都市圏の影響を受けて都市化の進んでいる ことを裏付けるものであり、その他の各村はいずれも大きな人口減少が続き、過疎化の問題をか かえるにいたっている。このことから、法に基づく過疎地域として黒滝村・西吉野村・天川村・
野迫川村・大塔村・川上村・東吉野村が指定され、加えて十津川村・上北山村が県独自の指定を 受け、いずれも振興のための特別な諸措置を受けるにいたっている。
県内において過疎現象が集中的に現われている地域は、本圏域の山岳地音と奈良盆地の一部で あるが、そのいずれもが面積のほとんどを山林が占める地域である。本圏域の土地利用の現況を 固定資産税課税対象分についてみても(表2)、県全体(1,482kのでは田・畑・宅地(426kの の 占める割合が28.7%であるのに比し、本圏域内ではそれを大幅に下廻る8.3%にすぎず、ほとんど が山林その他となっている。
また、昼間における人口流動について昭和45年国勢調査のそれをみると(表3)、もともと奈
良盆地の置かれている地理的条件などから、県全体としては、夜間人口(930,073人)に対して
78
蓑1.人口の推移(国勢調査、県政奈良資料により計算)
計
注)昭和48年推計人口は、昭和48年1月1日現在の県推計人口である。
表2.土地利用の現況(昭和45年1月1日現在課税対象分、奈良県統計年鑑資料)(単位1,000Iが)
計
注)雑種地は、ゴルフ場、鉄軌道用地、その他である。
昼間人口(糾1,660人)が少なく、いわゆる通勤通学による県外流出が多い(昼間人口率90.5%)
という特色があるが、本圏域についても県外流出の多いことは認められつつも、なお2つの特長 を呈している。
すなわち、主として五条市および吉野3町において、県外への流出が流入を上廻りながらも、
奈良県吉野地域の過疎の現況(西田) 79
県内分では流入が流出を上廻っており、大阪都市圏の影響、奥吉野地方の門戸、産業経済の集積 など、本圏域の中核的機能を荷っていることを物語っている。また、県下の市町村のほとんどが
裏3.市町村別県内県外の流入流出人口(昭和45年国勢調査資料)
流 入 人 口 流 出 人 口
(9 − ⑧ 市 町 村 名
県 内 県 外 計 ① 県 内 県 外 計 (診 △ は 減
五 条 市 1 ,5 24 8 9 6 2 ,4 2 0 2 ,0 8 6 1 ,7 2 9 3 ,8 15 △ 1 ,3 95
吉 野 町 1 ,2 3 1 6 7 1 ,2 98 1 ,6 7 8 5 8 2 2 ,2 6 0 △ 9 62
大 淀 町 1 ,5 9 8 2 8 1 ,6 2 6 2 ,0 0 1 8 9 4 2 ,8 9 5 △ 1 ,2 69
下 市 町 i 5 2 2 2 3 5 4 5 1 ,9 69 4 9 3 2 ,4 6 2 △ 1 ,9 1 7
黒 滝 村 [ 4 5 2 4 7 1 19 6 1 2 5 △ 7 8
西 富 野 村 1 4 3 6 14 9 5 2 8 6 4 5 9 2 △ 4 4 3
天 川 村 3 7 2 2 5 9 14 0 1 4 4 5
野 迫 川 村 17 4 4 6 1 10 7 1 7 4 4
大 塔 村 3 7 8 4 5 3 1 0 3 1 14
十 津 川 村 4 6 2 3 9 2 8 5 9 5 7 6 6 2 19
下 北 山 村 10 9 9 10 9 1 8 8 2 6 8 3
上 北 山 村 3 5 6 0 9 5 1 2 0 12 8 3
川 上 村 2 0 3 3 4 2 3 7 1 7 5 2 1 19 6 4 1
東 吉 野 村 7 9
計 5 ,5 2 7
6 8 5 5 6 2 69 6 3 1 △ 5 4 6
1 ,5 3 4 7 ,0 6 1 9 ,2 1 2 3 ,9 3 0 13 ,14 2 △ 6 ,08 1
流出人口が流入人口を上廻っているにもかかわらず、十津川村などの7か村が流入超過となって いる事情は、ダム建設、林業関係の従業者入村などによるもので、特異な現象として注目せられ る。総じて、本圏域における流入流出は県北部との間のものであり、ついで、大阪府に流出する 人口が多いが、和歌山県との問においては流入超過となっている。
産 業
本圏域は、もともと全国的に有名な吉野山地の林業を中心とした農林業と、それに関連した諸 工業が主たる産業である。しか
し最近になって、農地の減少、
農林業の近代化などに加えて、
圏域北部に内陸性諸工業の立地 がみられるようになり、表4の 就業別人口の異動に示される如 く、次第に第2次・寛3次産業 への移行が続いている。
農業は、吉野川流域の圏域北 部に、古くから水田や果樹園が ひらけているほかは、奥吉野の 山村地域は平地が少なく、わず かな畑地が点在するのみで、ま
表4.就業別人口(15才以上、国勢調査資料)
就 業 別
昭 和 4 0 年 昭 和 4 5 年
人 口 (人 ) 構 成 比 (% ) 1 9 ,9 0 7 4 1 .0
人 口 (人 ) 構 成 比 (% )
第 1 次 産 業 1 7 ,2 6 9 3 0 .4
(9 6 ,5 27 ) (2 5 .3 ) (8 4 ,4 7 5 ) (19 .0 ) 第 2 次 産 業 1 3 ,5 0 3 2 1 .5 1 5 ,8 9 3 2 8 .0
(12 1 ,7 9 1 ) (3 1 .9 ) (15 4 ,19 5 ) (3 4 .8 )
第 3 次 産 業 2 2 ,7 65 3 7 .5 2 3 ,5 9 8 4 1 .6
(1 6 3 ,1 7 3 ) (4 2 .8 ) (2 04 ,9 10 ) (4 6 .2 )
計 5 6 ,1 7 5 1 0 0 .0 5 6 ,7 6 0 1 00 .0
(3 8 1 ,4 9 1 ) (1 0 0 .0 ) (4 4 3 ,5 8 0 ) (10 0 .0 )
注)分類不能の産業は第3次産業をこ入れている。()内は県総 数を示す。
80 奈良県吉野地域の過疎の現況(西田)
ったくの山村となっている。この富野川流域の果樹園のほとんどは柿・梅の栽培で、富有柿は全 国的にも名高い。最近、五条市・下市町・西吉野村にわたる地域に国営総合農地開発事業の計画 がすすめられ、柿の主産地として農業近代化が図られようとしている。
富野山地の林業は、本圏の枢要な産業であり、吉野林業として全国的に名高い。吉野川流域で は、古来、天然林から人工林に更新されて美しい人工造林地帯をなし、吉野杉・吉野桧の用材林 のほか、磨丸太などの銘木を生産している。十津川・北山川一帯は無尽蔵に近い天然林を有し、
その蓄積量は全国の首位を占め、未開発地域 に森林開発事業がすすめられている。この森 林資源を背景に、圏域北部では製材その他の 木材工業が立地しているが、ただでさえ人口 の少ない山地部では山林労務者の確保が悩み となっている。
工業(表5)は、古くから、木材の集散が 盛んな五条市および富野3町を中心に、林業 に関連して製材が多く、そのほか合板・割箸
・木目彫などの木材加工の特産地を形成して いるはかは、弱電・縫製・ゴム加工・醸造な どが僅かに存在しているにすぎない。しかし 最近は、五条市を中心に内陸性軽工業が立地
しつつある。
商業(表6)については、五条市および大 淀町に商業地が特化し、いわゆる口吉野地域 は古くから地方経済の中心地を形成している が、最近では、圏域を超えての買廻りの傾向 が多く、木材や農産物の取引ないしは観光を 対象とした僅かな商業が加わってもなお、将 来的にも、盛んな商圏の形成はむずかしい現
況におかれている。
交 通
本圏域内には、現在、国鉄和歌山線(王寺 一五条一和歌山)と近鉄吉野線(橿原一吉野)
の2つの鉄軌道が通じているのみで、いずれ も圏域北部と奈艮・大阪・和歌山方面に連絡 しているにすぎない。目下、和歌山線五条駅 から阪本に至る国鉄阪本線の建設がすすめら れているが、なおそれを圏域内を縦貫延長し て紀勢本線新宮駅に至る新線計画の実現が待 たれている。
したがって本圏域内の交通機関は、国道
表5.事業所の状況(昭和44年工業統計資料)
市 町 村 名 事 業 所 数 従 業 者 数 製 造 品 出 荷
額 等 (万 円 )
五 条 市 2 1 7 2 ,2 2 1 6 2 5 ,8 6 8
吉 野 町 3 3 3 1 ,6 4 7 7 18 ,0 7 1
大 淀 町 10 6 8 4 6 4 4 6 ,3 2 2
下 市 町 18 3 6 9 2 9 3 ,18 9
黒 滝 村 4 9 2 16 3 0 ,8 6 0
西 吉 野 村 19 2 17 3 4 ,6 9 1
天 川 村 1 3 10 8 13 ,10 2
野 迫 川 村 7 5 3 10 ,5 6 2
大 塔 村 3 9 6 7 5
十 津 川 村 1 5 7 6 14 ,7 6 4
下 北 山 村 5 8 3 2 7 ,9 4 8
上 北 山 村 4 6 9 1 ,19 1
川 上 村 2 9 1 35 19 ,74 1
東 吉 野 村 6 6 2 9 9 1 07 ,10 8
計 1 ,0 4 9 6 ,6 7 1 2 ,14 4 ,0 9 2
蓑6.商業の状況 (昭和44年商業統計資料)
市 町 村 名 商 店 数 従 業 者 数 年 間 販 売 額
(万 円 )
五 条 市 7 8 3 2 ,1 32 7 66 ,2 8 5
吉 野 町 4 7 9 1 ,14 6 3 0 0 ,8 6 5
大 淀 町 3 9 7 1 ,0 5 0 8 6 2 ,79 6 、
下 市 町 2 6 0 6 4 9 2 7 7 ,8 13
黒 滝 村 4 0 9 6 2 1 ,2 58
西 富 野 村 8 3 1 38 3 0 ,0 68
天 川 村 1 0 0 1 54 2 3 ,02 2
野 迫 川 村 2 4 4 1 8 ,4 2 0
大 塔 村 4 1 6 0 1 2 ,4 2 2
十 津 川 村 1 7 2 3 1 2 8 6 ,29 9
下 北 山 村 5 6 9 3 3 3 ,4 8 6
上 北 山 村 3 3 6 4 1 7 ,2 12
川 上 村 1 4.5 3 1 5 8 8 ,5 12
東 吉 野 村 1 12 2 0 7 24 ,9 2 8
計 2 ,7 2 5 6 ,4 5 7 2 ,5 5 3 ,38 6
注)飲食店も含む。
81
168号線・同169号線・同309号線、ならびにこれらを結ぶ道路網によって、バスが運行されては いるが、その路線系統の普及は未だすすまず、系統の編成、運行回数などに問題が多い。
経済圏
本圏域は、その地形的条件から特殊な地域を構成し、鉄軌道および幹線道路によって、その日 常経済圏はいくつかに分れている。
すなわち、大きくほ、国鉄和歌山線および近鉄吉野線の沿線は、大阪経済圏の影響が強く、圏 域南部は、和歌山県・三重県との接触がみられる。そして圏域東部の東吉野村は桜井市に、西部
の野迫川村は和歌山県高野町につながっている。
圏域内においては、ほぼ国道168・169・309号の3線に沿った地域は、それぞれ五条市および 吉野3町の影響のもとに置かれている。
観 光
本圏域は全域にわたって、吉野熊野国立公園を中心に、金剛生駒国定公園・高野竜神国定公園
・吉野県立公萬・吉野川津風呂湖県立自然公園など、多様な観光資源を有している。
とくに近畿の屋根といわれる大台・大峰の山岳景観、千古の原生林と吉野杉の美林、深い渓谷 などの大自然美と、歴史と桜で有名な吉野山一帯など、近畿圏における唯一の大自然観光地とし て、桜・登山・釣り・紅稟・スキー・温泉などの四季を通ずる楽しみを添えて、全国から訪れる 観光客の数は年々激増しつつある。
今後もモータリゼーションの影響と相まって、自動車による観光客の増加が予想されるが、現 在のドライブウェイ・ロープウエイに加えて、交通施設の整備と、それに対応した駐車場、宿泊 施設その他の充実をはかるとともに、観光産業の振興をもはかり、本圏域を、全国的な観光地域
に位置づけていくべきであろう。
(4)法的規制・上位計画 法的規制
本圏域の自然的・社会的環境の特性を総括しているともいうべきものは、法的な規制であると いうことができる。
とくに、自然保護の関係では、本圏における地形条件を反映して森林法による保安林が全域に 点在しており、また自然公園法による国立公園・国定公園が圏域の相当部分を占めている。
社会的環境から大きく土地規制しているものは少ないが、このことは逆に、この地域の開発の 遅れを現わしているものといえよう。一部に、文化財保護法による、史跡・名勝・天然記念物の 指定がみられるが、歴史的な文化遺産として重要な観光資源となっている。
近畿圏基本整備計画
昭和46年7月に、新「近畿圏基本整備計画」が示されているが、それによると、本圏域につい ては特に次のようなことが明らかにされている。
森林は、木材生産の場としてのみならず、国土保全・水源海養、さらに観光・レクリエーショ ン等の多目的機能を総合的に発揮させる。
保全区域として吉野熊野区域および高野竜神区域を設定し、自然資源の保全と各地域の特性に 応じた開発整備を促進する。
京都・奈良および阪神と本圏域を結ぶ道路として国道24・168・169・309号などの整備を促進
する。
82 奈良県吉野地域の過疎の現況(西田)
紀ノ川水系(吉野川)上流に洪水調節計画とあわせた大滝ダム(多目的)を建設するほか、広 域的観点から水資源の開発をはかる。
圏域北部の一部地域を近郊整備区域として指定し、当面市街化すべき区域を明らかにし、産業 基盤および生活環境施設の整備を計画的にすすめる。
奈良県総合開発計画
昭和43年に策定された「第2次奈良県新総合開発計画」においては、本圏域の土地利用構想 を、人口の都市集中にともなう過疎問題をかかえていることにかんがみ、その対策としての拠点 部落の育成と、地域に適した産業の振興、交通体系の整備をはかる。
五条市、吉野3町は、近年大都市近郊地域としての性格を強め、その影響を大きく受ける地域 となっているので、これに適応した土地利用をはかるものとしている。そして、この基本構想を 受けて、土地利用の計画、観光開発拠点、交通施設の計画などが明らかにせられている。
参考文献
1)南和広域市町村圏協議会:南和広域市町村圏計画書 昭和47年3月 2)奈良県企画部調査課:昭和44年奈良県統計年鑑
3)奈良県広報課;県政奈良No99(昭和46年5月)、同No120(昭和48年2月)
4)奈良県企画部調査課:昭和45年国勢調査 奈良県流動人口調査結果概要 5)堀井甚一郎=奈良県地誌 昭和36年
(1973年4月25日受理)