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血 縁上 の父 に よる法律 上 の父子 関係 の否定 につ いて

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説 〉

血 縁上 の父 に よる法律 上 の父子 関係 の否定 につ いて

85

血 縁上 の父 に よ る法 律 上 の 父 子 関係 の否 定 につ い て

一 一 ドイ ツ に お け る血 縁 上 の 父 の

父 性 否 認 権 を 中 心 と して 一

三 宅 利 昌

目 次

1.は じ め に

2.ド イ ッ に お け る 法 改 正 の 経 緯 3.改 正 法 の 概 要

4.む す び

1.は じ め に

わ が 国 で は、 嫡 出親 子 関 係 の 決 定 方 法 で あ る嫡 出 推 定 に つ い て 、 懐 胎 主 義 が と られ て い る。 民 法772条 に よ る と、 婚 姻 成 立 の 日か ら200日 後 ま た は婚 姻 の 解 消 も し くは取 消 の 日か ら300日 以 内 に生 まれ た 子 は 婚 姻 中 に懐 胎 した もの と 推 定 さ れ 、 夫 の子 と推 定 され る。 これ に よ る と、 婚 姻 成 立 の 日か ら200日 以 内 に生 ま れ た 子 は 、 婚 姻 中 の 懐 胎 子 と推 定 され ず 、 嫡 出 の推 定 を受 け な い こ とに な る。

最 近 の 人 口動 態 統 計 特 殊報 告 に よれ ば 、 婚 姻 成 立 の 日に妻 が懐 胎 して い た ケ ー

1)

ス は約25パ ー セ ン トに上 る。 民 法 の推 定 規 定 に従 い、 妊 娠 期 間 を最 大 で300日 と考 え る と、 この よ うな場 合 に は、 懐 胎 か ら100日 以 内 に婚 姻 の 届 出 を して い な い と、 子 は 嫡 出 推 定 を 受 け な い こ とに な る。

この よ うな 婚 姻 成 立 の 日か ら200日 以 内 に生 ま れ た 子 の 法 律 上 の 身 分 は どの よ う に な るか 。 こ の 点 に っ き、 立 法 者 は、 この よ うな子 は 嫡 出 で な い 子 で あ っ て 、 父 の認 知 に よ っ て初 め て 法律 上 の父 子 関 係 が 生 じ、 準 正 に よ っ て 嫡 出子 た る身 分 を取 得 す る との見 解 に 立 っ て い た 。 しか し、 大 審 院 は、 父 母 の 内 縁 関 係

(2)

継 続 中 に懐 胎 さ れ 、 婚 姻 後 に 出生 した 子 につ い て 、 この よ うな 婚 姻 成 立 の 日か ら200日 以 内 に 生 まれ た子 は 、 まず 嫡 出 で な い 子 とな り、 準 正 に よっ て 嫡 出子 とな る の で は な く、 特 別 に父 母 の 認 知 の 手 続 を要 せ ず して 、 出 生 と同 時 に 当然 に父 母 の 嫡 出子 た る身 分 を取 得 す る と説 き判 例 理 論 を 統 一 した(大 連 判 昭和15 年1月23El民 集19巻54頁)。 この 大 審 院 の 判 決 は 、 母 が 婚 姻 前 に懐 胎 し、 婚 姻 後 に生 まれ た 子 が 一 般 的 に生 来 の 嫡 出 子 と して 扱 わ れ る と した の で はな い 。 父 母 の 内 縁 関 係 継 続 中 に懐 胎 され た 子 に 限 って 生 来 の 嫡 出 子 と して 扱 う と した もの で あ る。 しか し、 戸籍 実 務 で は、 戸 籍 係 に実 質 審 査 権 が な い こ とか ら、 婚 姻 成 立 の 日か ら200日 以 内 に生 まれ た子 が 内 縁 関 係 中 に懐 胎 され た子 か ど うか を確 認 す る こ とが で き な い 。 そ こで 、 内 縁 関 係 の 有 無 にか か わ らず 、 婚 姻 成 立 後 の 出生 子 は す べ て 生 来 の 嫡 出 子 と して 扱 われ る こ と とな っ た 。 た だ し、 こ の 場 合 の 出 生 子 は、 嫡 出 子 と して 扱 わ れ る と して も、 嫡 出 推 定 は 受 けて い な い 。 した が っ て 、 この 場 合 に子 の 身 分 関 係 を争 うに は、 嫡 出 否 認 の訴 えで は な く、

2)

親 子 関 係 不 存 在 確 認 の 訴 え に よ れ ば よ い とされ る(大 判 昭 和15年9月20日 集19巻1596頁 。な お、人 訴2条2号 参 照)。 す な わ ち、夫 の みが 子 の 出 生 を知 っ た時 か ら1年 内 に限 り子 の嫡 出性 を否 認 で き る とい う要 件 の 厳 格 な否 認 手 続(774 条 、777条 参 照)に よ る こ とな く、 確 認 の 利 益 が 認 め られ る限 り、 誰 か らで も、

い つ で も子 の 身 分 関 係 を争 う こ とが で き るわ けで あ る。 つ ま り、 この場 合 に は、

推 定 され る嫡 出子 に つ い て は重 視 され る 「子 の 身 分 関 係 の 法 的 安 定 性 を保 持 す る必 要 」(最 判 平 成12年3月14日 家 月52巻9号85頁)は 全 く考 慮 さ れ な い の

3)

で あ る。

この よ うな 場 合 に、 両 親 と子 が 平 和 な 家 庭 を築 い て い る に もか か わ らず 、 い つ で も確 認 の 利 益 さ え認 め られ れ ば 、 子 の 身分 関 係 を争 う こ とが で き る とす れ ば、 子 の 利 益 の保 護 に 欠 け る こ と は明 らか で あ る。 確 か に妻 が 貞i操義 務 を負 っ て い な い 間 に懐 胎 され た 子 は、 推 定 され る嫡 出子 と同様 に夫 の子 で あ る蓋 然 性 が 高 い とは い え な い が 、 少 な く とも父 母 以 外 の者 が 子 の 身 分 関 係 を争 う こ とに つ い て は、 確 認 の利 益 の ほ か に何 らか の 歯 止 め が 必 要 な よ うに 思 わ れ る。

と こ ろ で 、 わ が 国 の嫡 出 推 定 制 度 に は、 上 述 の婚 姻 成 立 の 日か ら200日 以 内 に 出 生 した 推 定 され な い嫡 出子 の 問 題 の ほ か 、 嫡 出 推 定 の制 限 の 問題 も あ る。

す な わ ち 、 嫡 出 推 定 が は た ら く期 間 内 に生 まれ た 子 で あ る に もか か わ らず 、 推

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定 が 及 ぼ な い と され る場 合 の 問 題 で あ る。

嫡 出 推 定 が は た ら く場 合 、 そ の 父 子 関 係 を否 定 す る に は嫡 出 否 認 の 訴 え に よ らな けれ ば な らな い。 前 述 の よ うに 、 嫡 出否 認 の訴 え は、 提 訴 権 者 を夫 に 限 定 し、 か つ 提 訴 期 間 を子 の 出 生 を 知 っ た 時 か ら1年 と制 限 して い る。 これ は、 第 三 者 が 家 庭 の平 和 を破 壊 す る こ とを 防 ぎ、 父 子 関 係 の早 期 安 定 を 図 る こ とを 目

的 と して い る と説 明 され る。 しか し、 要 件 が 厳 格 に過 ぎ るた め 、 真 実 に 反 す る 父 子 関 係 が 法 律 上 確 定 して し ま う こ とも あ り うる 。 この よ うな 弊 害 を避 け る た め 、 判 例 ・学 説 は、 当 該 夫 婦 の状 況 な どに よ り、 そ も そ も嫡 出 推 定 が 及 ぼ な い

場合 を認 めて きた 。 どの ような場 合 に嫡 出推 定規 定 の適用 が排 除 され るか をめ ぐって は、 子 の懐 胎 期 に夫婦 生活 がなか った こ とが外観 上 明 白な場 合 に 限 り推

5)

定 を排 除 す る考 え方(外 観説)、 夫婦 生 活 の 欠如 が外 観上 明 白な場 合 に加 えて、

夫 が生 殖不 能 で あ る とき、血 液型 検 査等 の結 果 に よ り父 子 関係 が あ りえ な い こ

6)

とが証 明 され た場 合 に も推 定 が及 ぼな い とす る考 え方(血 縁説)、 当該家 庭 に平 和 が あ るか否 か を根 拠 に して、父 子 関係 を争 うこ とが で きるか ど うか を判 断 す

る考 え方(家 庭破 綻説)、 当事者 間 の合 意が あれ ば嫡 出推 定 が排 除 され、 合 意 に 相 当す る審判(家 審23条)に よって父 子関係 の不 存在 を確 認 で きる とす る考 え

8)9)

方(合 意 説)な どが あ る。 判 例 は外 観 説 に傾 い て お り、 また 、 家 庭 裁 判 所 の実 務 で は合 意 説 も と られ て い る。 外 観 説 に よ る と、 夫 婦 生 活 の 欠 如 が 外 観 上 明 らか で な い とき は、 嫡 出 推 定 は排 除 され な い の で 、 夫 が妻 や 真 実 の 父 に対 す る害 意 か ら、 あ えて 否 認 権 を行 使 しな い こ とを可 能 に す る弊 害 も あ る。

そ こで 、 提 訴 権 者 を夫 の み に制 限 して い る こ と、 言 い換 え る と、 夫 の 意 思 だ け に 決 定 権 を与 え る こ とを 問題 と し、 立 法 論 と して、 提 訴 権 者 の 拡 大 の 可 否 も 学 説 上 検 討 され て い る。 問 題 は夫 以 外 の だ れ に嫡 出否 認 権 を認 め るべ きか で あ る。 この 点 につ き、 まず 妻 に 否 認 権 を与 え る こ とに は、 特 に反 対 論 は み られ な

Id}I1)

い が 、 子 に つ い て は 消 極 的 で あ り、 そ して 血 縁 上 の父 に つ い て は 、 反 対 す る見

12}

解 が 多 い 。

一 方 、 諸 外 国 に 目 を 向 け る と、 婚 姻 に基 づ い て 夫 の 子 と推 定 され る子 の 身 分 関 係 を、 夫 以 外 の 者(子 の 母 親 や 血 縁 上 の 父 親 な ど)が 争 う こ とを 認 め る立 法 が い くつ か み られ る。 た とえ ば、 フ ラン ス に お い て は、1972年 に、 母 親 に も一 定 の要 件 を満 た す 場 合(母 が 離 婚 後 に子 の血 縁 上 の 父 と再 婚 し、 子 を準 正 す る

(4)

目的 の 場 合)に 否 認 権 を認 め る改 正 が 行 わ れ 、 最 近 で は、 ア メ リカ の2000年 一 親 子 関係 法(UnifornlParentageAct2000)が 、 子 の 出生 後2年 以 内 に限 り、

子 の 法 律 上 の 父 お よ び 母 の ほ か 、 子 の血 縁 上 の 父 に も父 性 を 争 う こ とを認 め て

14)

い る。 ま た 、 ドイ ツ に お い て も最 近 改 正 が 行 わ れ た 。 わ が 国 と異 な り、 ドイ ッ で は 、 婚 姻 に基 づ く親 子 関 係 の決 定 方 法 につ い て は、 出 生 主 義 が 採 られ て お り、

15)

子 の 出生 の時 に母 と婚 姻 してい た男子 が父 とされ る。身分 登 録簿 上 の父子 関係

I6)

の否 認 権 は、 最 初 は父(法 律 上 の父)に の み 与 え られ て い た が 、 子 お よ び母 に も 認 め られ 、 っ い に は子 の血 縁 上 の父(leiblicherVater;子 が 生 物 学 上 の血 筋 を

I7)ゆ

引 く男 子)に も、 一 定 の要 件 の下 、否 認権 を与 え る改正 が 行 われ た。

本 稿 は、 ドイ ツの改正 の経緯(特 に2003年4月9日 の連邦憲 法裁判所 の決定) お よび改正 法 につ いて概観 し、 なぜ 提 訴権者 を拡 大 す る必要 が あった のか、 血 縁 上 の親子 関係 と法 律上 の親 子 関係 の衝 突 が生 ず る場 合 に、 どの よ うな要素 に 基 づ いて両 者 の優 劣 を決 定 して い るのか、 改正 法 は血 縁 主義 に よ り接 近 す る動

きを示 す もの なのか につ い て検 討 す る。

2.ド イ ツ に お け る法 改 正 の 経 緯

(1)親 子 関係 法 の改正

ドイ ツで は 、1997年 に親 子 関 係 法 の大 幅 な 改 正 が 行 わ れ た 。 この改 正 の主 た る 目 的 は 、 嫡 出 子 と非 嫡 出 子 の 区 別 を撤 廃 し、 両 親 が 婚 姻 関 係 に あ るか 否 か に か か わ らず 、 子 を す べ て平 等 に扱 う こ とで あ った 。 これ は 、 同棲 の 増 加 に伴 い 、 非 嫡 出 子 の 質 が 変 化 した こ とが 大 きな 要 因 で あ っ た 。 改 正 の 際 に は、 親 子 関 係

の 決 定 方 法 も改 め られ(BGB1591条 、1592条 参 照)、 ま た父 子 関係 の否 認 権 者 と し て 新 た に 母 が 加 え られ た 。 そ の 際 、 子 の 血 縁 上 の 父 や 、 外 観 上 の 父 (Scheinvater)の 両 親 を否 認権 者 に含 め るか 否 か を め ぐって議 論 が な され た が 、

zo)

社 会 的家族 の福祉 に反 す る とい う理 由で見 送 られ た。

 わ

(2)連 邦 憲法 裁 判所2003年4月9日 決 定

連邦 憲法 裁判所2003年4月9日 決定 は二件 の憲法 異議 の訴 え を併 合審理 して 判 断 を下 して い る。 これ らの憲法 異議 の訴 え は、血 縁 上 の父 は婚姻 に基 づ き母

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の 夫 の子 と推 定 され る子 と交 流 す る権 利(Umgangsrecht)を 認 め られ るべ き か とい う問題 と、 虹 縁 上 の父 は(認 知 に基 づ く他 の 男 子 の)法 律 上 の父 性 を否 認 す る権 利 を認 め られ るか とい う問 題 に関 係 して い た 。 以 下 で は、 後 者 の 問 題 に 関 す る連 邦 憲 法 裁 判 所 の見 解 を 中 心 に み て い く こ とに す る。

① 事 実 関 係 の概 要

(a)第1部 憲 法 異 議 申立 事 件1996年 度1493事

第1部 憲 法 異 議 申 立 事 件 の 申 立 人(原 告;以 下Aと い う)は 、 既 婚 女 性 と関 係 を持 ち、1989年 に子 が 生 まれ た(婚 姻 関 係 継 続 中 で あ るた め、 子 の 身 分 は嫡 出 子 で あ り、 夫 が 父 親 とな る)。 血 液 型 検 査 の 結 果 に よ る と、Aが この 子 の 生 物 学 上 の 父 で あ る こ とは 疑 い の余 地 が な い。 子 の 出 生 の約3ヵ 月 前 に 、Aは い っ た ん子 の母 と別 れ た が 、 子 の 出 生 の2、3ヵ 月後 に再 び 関 係 が 始 ま り、 そ の 関 係 は1992年 まで 続 い た 。 この 期 問 、Aは 、 母 と子 とは 同居 して い な か った 。 ま た 、 母 と子 は 夫 と も別 々 に生 活 して い た が 、1992年 か ら再 び 同 居 を開 始 した 。

子 の 母 との 関 係 の継 続 中 に お け るAと 子 との 間 の 接 触 が どれ ほ ど密 接 な もの で あ っ た か に つ い て は争 い が あ る。Aは 、 週 に数 回 、 子 の 世 話 を して お り、 そ の 結 果 、 自分 と子 との 間 に密 接 で 強 い 情 緒 的 関係 が あ る と主 張 した 。.̲̲̲̲方、 子 の 母 は、Aは 子 を 日 に数 時 間 世 話 して い た に過 ぎ ず 、 また 、Aは 自分 勝 手 で あ

り、 信 頼 で き な い こ と、 彼 女 が 再 び 夫 と同 居 す るっ も りで あ る こ とか ら、Aと の 接 触 を 制 限 して お り、 彼 女 とAと 子 との 間 に は家 族 的 関 係 は全 く存 在 して い な か っ た と主 張 した 。

1993年3月 以 来 、Aは 子 との 接 触 を絶 た れ た 。Aは 子 の 扶 養 料 を支 払 い、 子 の た め に保 険 契 約 を結 ん だ 。 子 の母 は、 これ らの 一 連 の行 為 に つ い て 、 彼 女 の 同 意 を得 な い で 行 わ れ た も の で 、 彼 女 の 夫 に子 の 嫡 出性 の 否 認 を させ よ う とい

う意 図 に よ る もの だ と主 張 した 。

区裁 判 所 は 、 子 との 交 流 を 求 め た 原 告Aの 申 立 を棄 却 し、Aに 子 の 住 居 の近 くに滞 在 しな い こ と、 子 との あ ら ゆ る接 触 を 回避 す る こ とお よ び 子 を待 ち 伏 せ しな い こ とを命 じた 。Aと 子 との 間 に は法 律 上 の 関 係 が な い の で 、BGB(旧) 1634条 に よ る交 流 権 は 問題 とな らな い 。 また 、Aは 非 嫡 出 子 の 父 親 で は な い の でBGB(旧)1711条 も適 用 さ れ な い 。 親 の 配 慮 権(Sorgerecht)の 濫 用 は確

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認 され な い の で 、BGBI666条 も適 用 さ れ な い。 幼 児 期 に 、 複 数 の母 親 、 複 数 の 父 親 を 区 別 しな けれ ば な らな い こ とは、 子 に とっ て 負 担 が 大 き い こ とを理 由 と す る。

地 方 裁 判 所 は、 原 告Aよ り提 起 され た 即 時 抗 告 を棄 却 した 。 また 、 上 級 地 方 裁 判 所 は 、Aの 再 抗 告 を 認 め られ な い もの と判 断 した 。 交 流 に関 す る手 続 に お い て は、 非 嫡 出子 の 父 親 は、FGG(旧)63条aに よ り再 抗 告 が で きな い とさ れ て お り、 この 規 定 は 、 本 件 の 原 告Aの 場 合 に も類 推 適 用 され る と した 。

Aは 、 憲 法 異 議 の 訴 え を 提 起 し、 基 本 法 違 反 な ら び に 欧 州 人 権 条 約 (EuropaischeMenschenrechtskonvention)違 反 を主 張 した。 その 理 由 は次 の とお りで あ る。 生 物 学 上 の 父 の 交 流 請 求 権 は、 欧 州 人 権 条 約8条1項 か ら、

ま た基 本 法6条2項 か ら も導 き 出 さ れ う る。 親 の 権 利 は 自然 権(natUrliches Recht)で あ り、 民法 上 の認 知(AnerkennungderVaterschaft)の 有 無 に左 右 され る こ とな く、 親 と して 当 然 に享 有 す る権 利 で あ る。 依 っ て 、 生 物 学 上 の 父 は 親 の 権 利 の 主 体 で あ る。 生 物 学 上 の 父 に交 流 権 を与 え な い こ とは、 基 本 法 6条2項 の 定 め る親 の権 利 の 侵 害 で あ る。 子 の 福 祉 と、 法 律 上 の 両 親 な らび に 生 物 学 上 の 父 の 基 本 法 上 の地 位 を比 較 考 量 す る と、 少 な く と も基 準 に従 っ た 交 流 が 行 わ れ る限 り、 子 お よ び生 物 学 上 の 父 の 交 流 へ の 利 益 が 優 先 す る。

(b)第1部 憲 法 異 議 申 立 事 件2001年 度1724事

第1部 憲 法 異 議 申立 事 件2001年 度1724事 件 の 申立 人(原 告;以 下Xと い う) は、 未 婚 の 女 性 との 間 に生 まれ た 子(1998年11月 出生)を 認 知 し よ う と した 。

しか し、 子 の母 が 認 知 に 同 意 を しな か っ た の で 、Xは 、 区裁 判 所 に 自分 が 子 の 父 親 で あ る こ との確 認 を 求 め た 。

X(原 告)は 証 拠 の 申 出 に お い て 次 の よ うに 主 張 した 。Xは 、1991年 か ら子 の母 と関 係 を持 ち 、1997年 か らは 同 居 して い た 。 子 の 出 生 の 際 に は、 そ の場 に 立 会 い 、 へ そ の緒 を切 断 した 。 子 は両 親 に望 まれ た 子(Wunschkind)で あ っ た 。Xは 、 母 と と も に 出産 の た め の準 備 を 行 い 、 子 供 の 部 屋 な ど を設 備 した 。 子 の 名 前(ア ラ ビ ァ語 の 名 前)も 母 親 と一 緒 に選 び 出 した 。Xが 父 親 で あ る こ

とに関 して 子 の 母 か ら異 論 は述 べ られ な か っ た 。 茶 色 の瞳 、 髪 の 毛 、 皮 膚 の 色 、 顔 立 ち か ら も子 はXに 似 て い る。 子 の 出 生 後 の約4ヵ 月 間 、Xが 主 に 子 を世 話

した 。 そ の 後 、 母 が 戸 籍 役 場 でXを 子 の 父 親 と述 べ な か っ た こ とな どが 原 因 と

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な り、 両 者 に不 和 が 生 じ、 破 綻 に い た っ た 。

子 の 母 親 は 、 被 告 た る 子 の 名 に お い て 、 原 告Xの 申 立 に 不 知 の 陳 述 (Nichtwissen)を 行 い、 また 既 に他 の 男 子 が 子 を認 知 した(2001年10月)と

述 べ た 。

区 裁 判 所 は原 告Xの 訴 え を 棄 却 した 。 そ の説 く と こ ろ は次 の とお りで あ る。

父 性 の確 認 は、BGBI600条d第1項 に よ り、BGB1592条1号 また は2号 に よ る 他 の 男 子 の 父 性 が 存 在 しな い場 合 に の み許 さ れ る。 しか し、 本 件 で は、 母 の 同

意 を得 た 他 の 男 子 に よ る認 知 が 既 に行 わ れ て お り、 他 の 男 子 の 父 性 が 存 在 して い るの で 、 父 性 の確 認 を 行 う こ とは で きな い 。 また 、Xが 、 認 知 を 行 っ た 他 の 男 子 の 父 性 を否 認 す る こ と も同 様 に許 され な い。 父 性 を否 認 す る こ とが で き る の は、BGB1592条1号 お よび2号 、1593条 に よ り父 性 が認 め られ た 男 子 、 子 の 母 お よび子 自身 だ けで あ り(BGB(旧)1600条 参 照)、 生 物 学 上 の 父 は、 立 法 者 に よ り、 意 識 的 に否 認 権 者 か ら除 か れ て い る。

上 級 地 方 裁 判 所 は 、 原 告Xの 控 訴 を棄 却 し、 次 の よ う に述 べ た 。 裁 判 所 に よ る父 子 関 係 存 在 の 確 認 は 、 本 件 の よ うに 、 他 の男 子 の 認 知 お よび これ に 対 す る 母 の 同意 が 第 一審 の 経 過 の 中 で 表 明 され た 場 合 に お い て も許 され な い。 ま た 、

立 法 者 は 、 父 子 関 係 存 在 の確 認 を、 意 識 的 に 、 他 の 男 子 の 父 性 が 存 在 しな い 場 合 に 限 定 して い る(BGH,FamRZl999,716)。 父 性 否 認 権 を有 す る者 が 否 認 権 を 行 使 しな い とき は、 他 の 男 子 の訴 え は、 そ の者 が 生 物 学 上 の 父 で あ っ た と

して も、 社 会 的 家 族 の福 祉 に 反 す る 。確 か に 、 生 物 学 上 の 父 も また 、 基 本 法6 条2項 の 定 め る親 の権 利 の主 体 で あ る。 しか し、 生 物 学 上 の 父 の 利 益 に は 、 子

の 利 益(ふ だ ん の 社 会 的 結 び っ きの な か で 、 邪 魔 さ れ る こ とな く成 長 す る こ と が で き る利 益)お よび 母 の 利 益(ふ だ ん の 社 会 的 結 び つ き を誰 に も邪 魔 され る こ とな く維 持 す る利 益)が 対 立 して お り、 これ らの 利 益 も また 基 本 法 に よ り保 護 さ れ て い る。 この こ とは、 母 が 子 を認 知 した 父 と同 居 して い な い場 合 に も当

て は ま る。

Xは 、 憲 法 異 議 の訴 え を提 起 し、 基 本 法6条2項 の 定 め る基 本 権 の 侵 害 を 主 張 した 。 子 の 生 物 学 上 の 父 に は、 親 の権 利 か ら、 原 則 と して 、 外 観 上 の 父 の父 性 を否 認 し、 自 己 の父 性 を裁 判 に よ って 確 認 で き る可 能 性 が 与 え られ な け れ ば

な らな い 。 少 な く と も、 生 物 学 上 の 父 と子 との 間 に 密 接 な個 人 的 関 係 が 存 在 し、

(8)

他 方 、外観 上 の父 と子 の間 には個 人 的関 係 が な くまた は家族 的結 合 が存在 して い ない場 合 に は、 この可能性 が 認 め られ な けれ ばな らな い。 この よ うな場 合 に は、 生物 学 上 の父 に よる父 性 の否認 お よび それ に続 く父 子 関係存 在確 認 に よっ て子 の福祉 が害 され る とはいえない。BGBI600条 お よび1600条d第1項 は、特 別 な事情 が あ る場合 の例 外 として も、生 物 学上 の父 の基 本 的権 利 と子 の基 本 的 権利 との比 較考 量 を認 めて いない点 で、憲 法 に違 反 して い る。 これ らの条 項 は、

基本 法6条2項 の定 め る保 護 の範 囲 を制 限 し、 生物 学上 の父 を完全 に除 外 して い る。 生物 学上 の父 の もつ親 の権 利 の侵 害 は、 子 の福祉 を理 由 と して も、 また 社会 的 家族 の保 護 を理 由 と して も正 当化 され る もので はない。 本件 は、原 判 決 の引用 す る連邦 通 常裁 判所 判決 の事案 とは異 な り、子 の母 親 と認 知 した男子 と の間 には婚 姻 は存在 せ ず 、 また法律 上 の父 と子 の共 同生 活 関係 も存 在 しない。

他 の男 子 の認 知 が行 われ ただ けで は、 その者 との あいだ に社 会 的 な結 びつ きが 存在 す る とは い えない。

② 決 定 の 要 旨

連 邦 憲 法 裁 判 所 は、 憲 法 異 議 の訴 え を容 れ 、BGBI600条 の 規 定 は基 本 法6条 2項1文 に違 反 して お り、 またBGBl685条 の 規 定 は基 本 法6条1項 に違反 して

22)

い る と判 決 を 下 した 。 そ して 、 基 本 法6条1項 お よ び2項 に反 す る範 囲 で 、 こ れ らの規 定 を改 正 す る よ う命 じた 。 以 下 で は、 どの よ うな点 でBGB1600条 が基

23)

本 法6条2項1文 に 違 反 す る の か に 関 す る決 定 理 由 を 中 心 に み て い く こ とに す る。

(a>連 邦 憲 法 裁 判 所 の 決 定 は、 血 縁 上 の父 が 基 本 法 上 どの よ うな保 護 を受 け る か 、 ま た 、 それ は どの よ うな 根 拠 に基 づ くの か につ い て 次 の よ うに述 べ る。

「1 .子 の法 律 上 の 父 で は な い血 縁 上 の 父 も また 基 本 法6条2項1文 の保 護 を 受 け る。 も っ と も、 子 の 血 縁 上 の 父 で あ る こ と は、 そ の こ とだ けで 、 この者 を 基 本 法6条2項1文 の定 め る親 の 権 利 を 有 す る者 とす るわ けで は な い 。 基 本 法

の規 定 は、 子 の 法 律 上 の 父 の 地 位 に就 く とい う血 縁 上 の 父 の 利 益 を保 護 して い る。 しか し、 この 保 護 は、 既 に 法 律 上 の 父 が 存 在 す る場 合 に も、 常 に この 者 に 優 先 して 、 血 縁 上 の 父 に法 律 上 の 父 の 地 位 を与 え る もの で は な い 。 血 縁 上 の父

に 対 して 法 律 上 の父 の 地 位 を与 え る こ とが 、 子 と法 律 上 の父 との あ い だ の 実 質

(9)

血縁 上 の父 に よる法律 上 の父子 関係 の否 定 につ いて

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的家 族 関 係 の 保 護 の 妨 げ とな らず 、 か つ そ の者 が 子 の 血 縁 上 の 父 で あ る こ とが 確 か で あ る と き は、 立 法 者 は 、 血 縁 上 の 父 が 法 律 上 も父 とな る こ とが で き る よ

う にす る必 要 が あ る。

a)基 本 法6条2項1文 に よ る と、 子 の 育 成 お よび 教 育 は両 親 の権 利 で あ る と 同 時 に義 務 で も あ る。 両 親 とい う概 念 は 、 子 の 血 縁 上 の 両 親 を 含 む 。 これ は、

両 親 の家 族 関 係 の 状 況 や 親 子 関 係 の親 密 さ に左 右 され る もの で は な い 。 基 本 法 6条2項1文 が 両 親 の 自然 の権 利(natunichesRecht)と い う言 葉 を用 い る と き、 この権 利 が 国 家 に よ っ て 与 え られ る もの で は な く、 所 与 の権 利 と して 、 国 家 に よ って 認 め られ て い る こ とが 明 らか とな る(vgl.BverfGE92,158,177£)。

また 、 これ は、 子 に生 を 与 え る者 は、 も と も と、 原 則 と して 、 子 の 育 成 お よ び 教 育 の責 任 を 引 き受 け る用 意 が あ り、 そ の 資 格 を備 え て い る こ とを明 らか にす る(vgl.BVerfGE24,ll9,150)。 それ ゆ え、 立 法 者 は、 法律 上 の 親 子 関 係 を実 際 の血縁 関係 にで き るだ け一 致 させ る こ とを義 務 づ け られ て い る(vgl.BVerfGE 79,256,2fi7}o

b)む ろ ん 、 これ は、 個 々 の 場 合 ご とに、 法 律 上 の 親 子 関 係 を血 縁 の 審 査 に よ らせ る とい う こ とで は な い。 社 会 的 家 族 関 係 の 保 護 お よ び個 人 の プ ライ バ シ ー の保 護 を考 慮 し、 立 法 者 は、 一 定 の 外 形 的 事 実 か ら子 の 血 統 を 推 定 して 、 これ に基 づ い て法 律 上 の 親 子 関 係 を確 立 す る制 度 を設 定 す れ ば 十 分 で あ る。 婚 姻 関 係 に基 づ い て 、 母 の 夫 が 子 の 血 縁 上 の 父 で あ る こ とを推 定 し、 この 推 定 を 、 夫 が 法 律 上 の父 で あ る こ との 根 拠 にす る こ とは、 わ が 法 制 度 に 限 っ た こ とで は な い 。 あ る男 子 が 、 母 の 同 意 を 得 て 、 子 を認 知 し、 親 の 責 任 を負 う こ とを表 明 す る場 合 で も同 様 で あ る。 この よ うな推 定 規 定 に よ る と、 推 定 に反 して 、 法 律 上 の父 子 関係 と血 縁 上 の 父 子 関 係 がmし な い こ と も あ り う る。」

(b>決 定 は、 基 本 法6条2項 の定 め る親 の権 利 を担 うた め に は、 そ の権 利 の 性 質 か らみ て 、 何 が 決 定 的 な 要 素 とな るの か 、 ま た 、 どの よ う に それ を親 に 担 わ せ るの が子 の福 祉 に資 す るの か に つ き、 次 の よ う に述 べ る。

「2 .基 本 法6条2項1文 の 保 護 は法 律 上 の親 で あ る こ とを前 提 とす る もの で は な い 。 子 が そ の 血 筋 を 引 く男 子 は、 法 律 上 は父 親 と して 認 め られ て い な く と

も、 子 の父 親 で あ る。 基 本 法6条2項1文 は 、血 縁 に基 づ く親 子 関 係 が あ れ ば 、 親 と して そ の保 護 の範 囲 に含 ま れ る こ とを 前 提 と して い る。 む ろ ん 、 血 縁 関 係

(10)

の 存 在 だ けで 、 生 物 学 上 の父 を 法 律 上 の 父 と と もに親 の権 利 の担 い 手 とす る こ とは な い 。

a)基 本 法6条2項1文 は、 子 に対 す る義 務 負 担 の な い親 の権 利 を認 めて い な い 。 親 の権 利 は、 最 初 か ら、 そ の本 質 的 要 素 と して 、 子 の 育 成 お よび 教 育 の 義 務 負 担 を伴 う もの で あ る。 親 の 権 利 を要 求 す る者 は 、 子 に 対 す る権 利 だ け を請 求 で き る も の で は な く、 義 務 も負 担 しな け れ ば な ら な い 。 基 本 法6条2項1文 の 定 め る親 の権 利 が 義務 負 担 を伴 う権 利 の み を 認 め る もの で あ る 以 上 、 親 の 責 任(Elternverantwortung)を 負 う者 だ けが 親 の 権 利 を 持 つ こ とが で き る。

血 縁 上 の 父 と法 律 上 の父 の 両 者 に母 と共 同 で 親 の 責 任 を 担 わ せ る こ とは、 基 本 法6条2項1文 が 基 礎 と して い る両 親 の 責 任 の概 念 に適 合 しな い 。 家 族 の 生 活 関 係 の変 化 も また 、 子 を 同 時 に二 人 の 父 親 の 責 任 の 下 にお く こ とを 求 め な い 。 法 律 上 の父 子 関 係 と血 縁 上 の 父 子 関 係 が̲̲̲.し な い こ と は、 家 族 の 構 造 の変 化

に起 因 す る新 た な 現 象 で は な い 。 そ れ は 、 む し ろ、 父 子 関 係 を̲̲̲̲.定の社 会 的 事 情 に基 づ い て 推 定 し、 そ の 推 定 を根 拠 と して 法 律 上 の 父 子 関 係 を決 定 す る とい

う法 制 度 に起 因 す る こ とで あ る。

基 本 法6条2項1文 が 、 まず 第 一 に両 親 に子 に対 す る責 任 を ゆ だ ね るの は、

両 親 が 親 の 責 任 を共 同 で 果 た す こ とが 、 通 常 、 子 の 利 益 を最 も保 護 す る こ とに つ なが る とい う考 慮 に基 づ い て い る(vgLBverfGE103,89,108)。 しか し、 こ れ は、 二 人 の 父 親 と一 人 の母 で 構 成 され る共 同 体 に は 当 て は ま ら な い 。 この場 合 、 親 の 責 任 を共 同 で 果 た す こ とが 子 の福 祉 に適 う とい う こ とは で き な い 。 な ぜ な ら、 そ うす る こ とに よっ て 、 親 た ち の 間 で 役 割 の 衝 突 や 権 限 争 い が 生 じか ね ず 、 子 の成 長 に悪 影 響 が 生 じ う るか らで あ る。 い ず れ に して も、 二 人 の 父 親 と母 親 に共 同 で 親 の 責 任 を ゆ だ ね て も、 そ の 責 任 を子 の た め に効 果 的 に果 た す こ とは期 待 で き な い 。

b)子 の た め に親 の 責 任 を担 う法 律 上 の父 は、 基 本 法6条2項1文 の 定 め る親 の権 利 を有 す る者 で あ り、 た とえ他 の 男 子 が 子 の血 縁 上 の父 で あ る こ とが 明 ら か とな っ て も、 そ の こ とだ け に よ って 、 親 の 権 利 お よび 親 の 地 位 を 失 う こ とは な い 。 法 律 上 の 父 は、 そ の 地 位 の廃 止 に よ っ て は じ め て 、 親 の権 利 の主 体 で な

くな り、 親 の 責 任 を免 ぜ られ る。

血 縁 上 の 父 が 、 法 律 上 の 父 に代 わ って 、 そ の 地 位 に つ くに は、 親 の責 任 を 引

(11)

血 縁上 の父 によ る法律 上 の父子 関係 の否 定 につ いて

95

き受 け る用 意 が あ る こ とが 必要 で あ り、 血 縁 上 の父 子 関 係 の確 認 が 前 提 とな る。」

(c>決 定 は、 基 本 法6条2項 か ら、 血 縁 上 の 父 の利 益 の保 護 の た め に 、 この者 が 法 律 上 も父 親 とな りう る よ うな 手 続 上 の 保 障 が 必 要 で あ る とす る。

「3 .基 本 法6条2項1文 は、 子 の 血 縁 上 の父 が 法 律 上 も父 とな る利 益 を保 護 す る。

基 本 法6条2項1文 に は、 で き る限 り血 縁 上 の 親 子 関 係 と法 律 上 の 親 子 関 係 とを一 致 させ る とい う要 請 が 含 まれ て お り、 この 要 請 か ら、 父 子 関 係 に疑 い が あ る場 合 に も、 父 子 関係 を審 査 し、 そ して 親 の 権 利 を 場 合 に よ って は法 律 上 新 た に与 え る手 続 の 開 始 が 要 求 され る。 この 意 味 で 、 基 本 法6条2項1文 は 、 生 物 学 上 の父 に も、 手 続 法 上 、 法律 上 の 父 とな り う る可 能 性 を保 障 す る。」

{d)決 定 は、 血 縁 上 の親 子 関係 と法 律 上 の 親 子 関 係 が 一 致 しな い とき に、 基 本 法6条2項 か ら両 者 の優 劣 が 自動 的 に 決 せ られ る もの で は な い こ とを述 べ る。

「4 .基 本 法6条2項1文 か らは、 血 縁上 の 親 子 関係 が 法 律 上 の親 子 関 係 に 対 して 常 に優 位 に置 か れ な けれ ば な らな い こ とを導 き 出 す こ とはで き な い 。 基 本 法 規 範 は、 血 縁 上 の 父 に、 どの よ うな場 合 に お い て も、 法 律 上 の父 に優 先 して 父 の 地 位 を 認 め られ 、 法 律 上 の 父 を父 の 地 位 か ら追 い や る権 利 を与 え る もの で

は な い 。

基 本 法6条2項1文 は、 確 か に 、 生 殖 に基 づ く血 縁 上 の親 子 関 係 を基 礎 と し て い る。 しか し、 同 条 項 の定 め る親 子 関係 は、 この よ うな親 子 関 係 に と ど ま ら ず 、 両 親 の保 護 の 下 に あ り、 育 成 と教 育 を必 要 とす る子 に 対 す る両 親、の 包 括 的

な責 任 関 係 と解 さ れ て い る(vgl.BVerfGE56,363,382;BVerfGE61,358,

372;BVerfGElO3,89,107)。 血 縁 関 係 と責 任 共 同 体 と して の社 会 的 家 族 は、

と も に基 本 法6条2項1文 の 内容 を形 成 す る。 立 法 者 は この 両 者 を 一 致 させ よ う と して い る。 しか し、 この 両 者 が 実 際 上 一 致 しな い とき 、 基 本 法 規 範 は、 親 子 関 係 を形 成 す る この 二 っ の特 徴 の どち らに 重 点 を 置 くか につ い て 定 め て お ら ず 、 ま た 、 そ の 点 で 、 生 物 学 上 の 親 子 関 係 と社 会 的 な 親 子 関 係 との 間 に優 先 順 位 を定 め て い な い 。 む しろ、 立 法 者 が 、 こ の場 合 に血 縁 上 の 父 と法 律 上 の 父 の どち らを子 の親 とす るか を決 定 す る に あ た り、 両 者 の 利 益 を 考 慮 しな けれ ば な らず 、 か っ 相 互 に 比 較 考 量 しな けれ ば な ら な い。」

(e)そ して 決 定 は、 母 、 法 律 上 の父 、 子 、 そ して血 縁 上 の 父 の 利 益 を比 較 考 量

(12)

した 上 で 、 法 律 上 の 親 子 関係 の 変 動 が 子 に及 ぼ す 影 響 を最 も重 視 す る。

「5 .立 法 者 が 、 現 存 の 社 会 的 家 族 を維 持 す る とい う子 と法 律 上 の両 親 の利 益 を、 血 縁 上 の父 の法 律 上 も父 親 とな る とい う利 益 よ りも優 先 させ 、BGB1600条 に お い て 、 血 縁 上 の 父 を法 律 上 の 父 子 関 係 の 否 認 か ら除 外 して い る こ とは 、 原 則 的 に は、 憲 法 に反 して い な い 。

血縁 の父 子 関 係 と法 律 上 の 父 子 関 係 が 一 致 して い な い と き は、 両 者 の い ず れ に子 に対 す る親 の 権 利 が 与 え られ るべ きか 定 め る必 要 が あ る。 この 決 定 に は、

血 縁 上 の父 の 利 益 だ け で は な く、 法 律 上 の 両 親 の 利 益 、 そ して 特 に子 の利 益 が 関 係 して い る。

a)立 法 者 は 、 血 縁 上 の父 に法 律 上 の父 子 関 係 を否 認 す る権 利 を認 め な い理 由 にっ い て 、 特 に社 会 的 家 族(sozialeFamilie)の 保 護 を強 調 して い る(vgl.

BT‑Drucks.13/4899,S.58)。 基 本 法6条1項 も また 、 子 と両 親 の 継 続 的 な責 任 共 同体 と して の 社 会 的 家 族 を保 護 の対 象 として い る(vgLBverfGE80,81,90)。

法 律上 の両 親 と子 との 間 の 家 族 関 係 は、 第 三 者 が 法 律 上 の 父 子 関 係 を争 う こ と に よ り、 そ の 社 会 的 存 立 を侵 害 さ れ る可 能 性 が あ る。 家 族 関 係 を この よ うな侵 害 か ら守 る こ とが 、 生 物 学 上 の父 をBGB1600条 の 否 認 権 者 か ら除 い た 理 由 の ひ

とつ で あ る(BVerfGE38,241,255)。

さ らに 、 家 族 共 同 体 の 個 々 の構 成 員 の 利 益 が 考 慮 さ れ る必 要 が あ る。 親 の権 利 は両 親 に 共 同 に帰 属 す る。 した が っ て 、 母 の権 利 は父 の 権 利 と同一 で あ る。

両 親 の 意 思 に反 して 、 そ の地 位 に変 動 が 生 じ る場 合 に は 、 母 親 は、 今 後 、 従 来 の 社 会 的 家 族 共 同体 が 存 続 す る一 方 で 、 な ん ら社 会 的 関 係 を 持 た な い と こ ろの 子 の父 と して の 男 子 と、 親 の 権 利 を共 同 で 行 使 しな けれ ば な らな い こ とに な る。

ま た 、 法 律 上 の 父 に とって は、 法 律 上 の 父 子 関 係 の 変 動 は、 自分 が 父 の 責 任 を 引 き受 け、 か つ 子 お よび 母 と同居 して 引 き続 き実 際 に子 の世 話 を して い た と し て も、 親 と して の 法 律 上 の地 位 の喪 失 を意 味 す る。 そ して子 は 、 従 来 の 家 族 共 同体 で 生 活 を 共 に して い て も、 これ まで の 父 親 を失 い 、 新 た な 父 親 に適 応 しな けれ ば な ら な い こ とに な る。 父 子 関 係 の 法 律 上 の変 動 は、 確 か に血 縁 上 の親 子 関 係 と法 律 上 の 親 子 関 係 の 一 致 を もた らす 。 しか し同 時 に 、 法 律 上 の父 子 関 係 と社 会 的 父 子 関 係 が 分 断 され る結 果 とな り、 ま た婚 姻 に よ る子 とい う身 分 の 喪 失 を 招 くこ とに もな りう る。 これ は、 子 に新 た な適 応(Orientierung)を 要 求

(13)

血縁 上 の父 に よる法律 上 の父子 関係 の否 定 につ い て

.97

す る こ とで あ り、 そ れ に よ り子 は心 的 葛 藤 に 陥 る こ とに も な り う る。 確 か に 、 子 は、 この よ うな変 化 を、 母 また は 法 律 上 の 父 が 父 性 を否 認 す る場 合 に も消 化 しな けれ ば な らな い 。 しか し、 そ の場 合 、 法 律 の 平 面 で だ け親 子 関 係 の 変 更 が 生 じ るの で は な く、 社 会 的 家 族 の 結 びっ きが 内部 か ら危 険 に さ ら さ れ 、 第 三 者 に よっ て 外 側 か ら危 険 に さ ら され るの で は な い 。

b)そ の 一 方 で、 生 物 学 上 の父 に は 、 自 己 の血 縁 上 の父 性 を知 る利 益 だ け で な く、 法 律 上 も父 親 と して 認 め られ 、 子 との法 律 関 係 に入 る利 益 が あ る。 しか し、

子 の 法 律 上 の 身 分 関 係 が 変 動 して も、 親 の 責 任 を果 た す 際 の 両 親 の協 力 の 基 礎 とな る社 会 的 家 族 関 係 を新 た に 発 生 させ る こ とに は な らな い で あ ろ う。 そ れ ど こ ろか 、 子 が 生 活 す る家 族 共 同体 の 結 び つ きが 、 そ の 構 成 員 の 法 律 関 係 の 解 消 に よ り害 され る こ と に な りか ね な い 。 法 律 上 の 親 子 関 係 と社 会 的 ・実 質 的 家 族

24)

関 係(sozial‑familiareBeziehung)の 齪 館 は様 々 な衝 突 を招 き、 子 の福 祉 を 危 険 に さ らす こ とに な り う る 。 これ らの こ とは、 立 法 者 が 、 子 と両 親 の あ い だ の既 存 の家 族 の 結 びつ きを維 持 す るた め に 、BGBI600条 に お い て 、 血 縁 上 の 父 を 否 認 権 者 か ら除 い て い る こ との 正 当性 を理 由 づ け る。」

(f)最 後 に、 決 定 は、BGB(旧)1600条 が いか な る点 で基 本 法6条2項 に反 す るか に つ き、 次 の よ うに述 べ る。

「6.し か し、BGBl600条 は、 法律 上 の両 親 が子 と社 会 的 家 族 を ま った く形 成 して い な い場 合 に も、 生 物 学 上 の 父 に法 律 上 の 父 子 関 係 を否 認 す る権 利 を 与 え て い な い 限 りで 、 基 本 法6条2項1文 に反 して い る。

a)子 の血 縁 上 の 父 で は な い に もか か わ らず子 を認 知 した 法 律 上 の父 が 、 母 お よび 子 と同 居 せ ず 、 単 な る 『支 払 い の 父(Zahlvater)』 に す ぎ な い と き は、 そ こ に実 態 の あ る社 会 的 家 族 関 係 が 存 在 す る とは い え な い 。 この よ う な場 合 に、

血 縁 上 の 父 が 、 法 律 上 も父 と して 認 め られ か つ 親 の 責 任 を担 う こ とを 拒 まれ る 十 分 な理 由 は な い 。 子 の 母 が 血 縁 上 の 父 と親 の 権 利 を共 同 で 行 使 す る こ とを 望 ま な い こ と も、 そ の こ との 妨 げ とは な らな い 。 この よ う な母 の利 益 は 、 基 本 法 6条2項1文 に よっ て 保 護 され る もの で は な い 。 基 本 法6条2項1文 は、 親 の 地 位 を他 方 の 親 の 意 思 に依 らせ る もの で は な く、 推 定 され る また は現 実 の 親 子 関 係 に基 づ か せ て い るか らで あ る。 ま た 、 子 に とっ て は 、 血 縁 上 の父 に よ る否 認 は 、 確 か に親 子 関 係 に お け る変 動 を意 味 す る。 しか し、 子 と法 律 上 の 父 との

(14)

問 に 、 共 同生 活 の な か で 生 じ た侵 害 さ れ う る関 係 が 存 在 しな い と き に は、 この 変 動 に よ っ て 子 の福 祉 は本 質 的 に は害 され な い 。 子 は、 法 律 上 の 親 子 関 係 の 変 動 に よ っ て 、 通 常 は、 親 の 双 方 との 家 族 的共 同 生 活 を も た ら され な いが 、 自己 の 血 統 と一 致 した 身 分 関 係 を もつ こ とに な る。

b)ま た、 子 が 法 律 上 の 父 お よ び母 と家 族 的 共 同 生 活 の な か で 共 に 生 活 して お らず 、 そ の̲̲̲..方で 、 法 律 上 も父 とな る こ とを望 む 血 縁 上 の 父 とす で に実 際 に父 子 関 係 を築 くこ とが で きて い る場 合 に は 、 法 律 上 の 父 子 関 係 の 変 動 は、 子 の 利 益 に 合 致 す る。 この よ うな場 合 に も、 親 の責 任 を負 う用 意 の あ る血 縁 上 の父 に、

法 律 上 も父 親 とな る こ とを拒 む こ とは正 当 化 され る もの で は な い 。」

25)

(9)交 流 権 に 関 す る決 定 理 由

「II.1.基 本 法6条1項 は 、 子 と両 親 の 共 同体 と して の 家 族 を保 護 す る。 そ の 際 に、 子 が 両 親 の血 筋 を 引 くか 否 か 、 子 が 婚 姻 関 係 か ら生 ま れ た か 否 か は、

決 定 的 で は な い 。 家 族 とは、 子 の た め に 責 任 を負 う両 親 と子 との 間 の教 育 を含 む 実 際 上 の 共 同 生 活 関 係 で あ る。

子 の 血 縁 上 の 父 も ま た 、 彼 が 少 な く と も長 期 に わ た り実 際 に子 に 対 す る責 任 を負 っ て い た こ と に基 づ く社 会 的 結 合 が 子 との 間 に存 在 す る とき は 、 基 本 法6 条1項 の 保 護 を受 け る家 族 を形 成 す る。 基 本 法6条1項 は 、 血 縁 上 の 父 と子 の 社 会 的 ・実 質 的 家族 関係 を維 持 す る利 益 お よび相 互 に交 流 す る利 益 を保 護 す る。

子 と社 会 的 結 合 を もつ 血 縁 上 の 父 に、 子 の福 祉 に資 す る場 合 に も、 子 との 交 流 を認 め な い こ とは 、 基 本 法6条1項 に反 す る。」

法 律 上 は父 と して 認 め られ て い な い血 縁 上 の父 と子 との 闇 に、 実 態 の あ る社 会 的 家 族 関 係 が 存 在 す る また は存 在 して い た と き に も、 子 の血 縁 上 の父 を交 流 の資 格 を もつ者 の 中 に含 め て い な い点 で 、BGBI685条 は基 本 法6条1項 に反 す る。」

連 邦 憲 法 裁 判 所 は、2004年4月30日 まで に、 血 縁 上 の父 の 交 流 権 お よ び父 性

26)

否認 権 に関 す る条 項 を憲法 に適 合 す る よ うに改正 す る よ う命 じた。

(15)

血 縁上 の父 に よ る法律 上 の父 子 関係 の否定 につ いて

99

(3)ノ 」寸舌

血 縁 上 の 父 の 否 認 権 に 関 す る連 邦 憲 法 裁判 所 の 見 解 を要 約 す る と次 の よ う に な る。 法 律 上 の 父 で は な い血 縁 上 の父 も基 本 法6条2項 の保 護 の 対 象 で あ るが 、 単 に 子 との 間 に血 縁 関 係 が あ る こ とに よ って は、 法 律 上 の 父 を押 しの け て 、 そ の地 位 に つ くこ とは認 め られ な い 。 法 律 上 の 父 とな る に は 、 子 に 対 す る親 の責 任 を 負 う こ とが 必 要 で あ る。 法 律 上 の 父 が 母 と共 に親 の 責 任 を果 た して い る場 合 に は、 社 会 的 家 族 関係 の 実 態 が あ り、 子 の 利 益 か ら も、 これ を い た ず らに変 動 させ て は な らな い。 しか し、 法 律 上 の父 と子 との 間 に親 子 関 係 の 実 態 が な け れ ば 、 血 縁 上 の父 の利 益 が優 先 され 、 法 律 上 の 父 に代 わ り、 そ の 地 位 につ け る よ う に す る必 要 が あ る。

BGB(旧)1600条 は、 法 律 上 の両 親 が 子 と社 会 的 家 族 を全 く形 成 して い な い 場 合 に も、 血 縁 上 の 父 に法 律 上 の 父 子 関 係 を否 認 す る権 利 を与 え て い な い 点 で 、 基 本 法6条2項 に反 して い る。

3.改 正 法 の概 要

立 法 府 は 、 連 邦 憲 法 裁 判 所 の 決 定 に従 い 、 血 縁 上 の 父 に よ る父 性 否 認 お よび 子 との 交 流 権 を一 定 の場 合 に認 め る改 正 を行 った(一 部 を 除 き、2004年4月30

27}

日施 行)。 本稿 で は、父性 否認権 を中心 に改正 された主要 な条項 を紹 介 し、 交流 権 につ いて は概 略 を述 べ るに止 め る こ と とす る。

(1)血 縁上 の父へ の父性 否認 権 の付 与 につ いて

2B)

①BGB1600条 第1項 乃 至 第3項[仮 訳](第4項 を省 略 す る)

『(1)父 性 を 否 認 す る権 利 を有 す る の は以 下 の者 で あ る。

1.1592条1号 お よ び2号 、1593条 に よ り父 性 が認 め られ た 男 子

2.子 の 母 と懐 胎 期 間 中 に性 的 関 係 を持 っ た こ とに っ き 宣 誓 に代 わ る保 証 を す る男 子

3.=母 4.子

(2)第1項2号 に よ る否 認 は 、 子 と第1項1号 の 父 との 問 に社 会 的 家 族 関 係

(16)

の 実 態(sozial‑famiiiareBeziehung)が 存 在 せ ず また は その 父 の 死 亡 の 時 点 に お い て存 在 して い な か っ た こ とお よ び否 認 者 が 子 の 血 縁 上 の父 で あ る こ

とを 要 す る。

(3)第1項1号 の 父 が 子 に 対 し て 実 際 上 の 責 任(tatsachliche

Verantwortung)を 負 い ま た は そ の 死 亡 の 時 点 に お い て 負 っ て い た と きは 、 2項 に よ る社 会 的家 族 関 係 の実 態 が 存 在 す る。 第1項1号 の 父 が 子 の 母 と婚 姻 して お りまた は比 較 的 長 期 間 に わ た り子 と共 に家 庭 生 活 して い る と き は、

別 の 事情 の認 め られ な い 限 り、 実 際 上 の責 任 を負 って い る もの と認 め られ る。』

② 血 縁上 の父 に よる父性 否 認 の要件

BGBI600条 は、連 邦憲 法裁判所 の決定 に沿 い、父性 否認権者 の範 囲 を法律上 の父 で はな い血縁 上 の父 に広 げた(第1項2号 参 照)。 これ に よ り、 血縁 上 の父 の法 律上 の地 位 は強化 され た こ とに な る。 しか しその一方 で 、母 、子 、 そ して 法律 上 の父 の個 人 的領 域 や 家族 関係 に対 す る侵害 が生 じ うる。 それ ゆ え、 なん ら根 拠 の な い否 認 が第 三者(血 縁上 の父 と称 す る者)に よって行 われ るこ とを 防 ぐ必 要 が あ り、BGBl600条 は、血縁 上 の父 が否認権者 として否認 権 を行使 で

きる場合 を限定 して い る。

血 縁 上 の父 は、他 の男子 の父 性 を否認 しよ う とす る ときは、 まず、 自分 が懐 胎期 に子 の母 と性 的関係 を持 っ た こ とにつ き宣誓 に代 わ る保証 を しな けれ ばな

ヨの

らな い 。 これ に よ り、 刑 法 上 の 処 罰 の 対 象 とな り う るた め 、 第 三 者 が い い 加 減

31)

な否 認 を行 う こ とを 阻 止 す る こ とに つ な が る(StGBl56条 参 照)。 な お 、 「子 の 母 と性 的 関 係 を持 っ た こ と」 につ い て の 宣 誓 に代 わ る保 証 が 要 求 され で い るた め、 人 工 授 精 ・体 外 受 精 に お け る精 液 提供 者 は 、 当 然 こ こで の否 認 権 者 か ら除

32}

か れ る。

また、法 律 上 の父 と血縁 上 の父 が一致 しない場 合 にお いて、 法律 上 の父 が基 本法6条1項 に よ り保 護 され る社 会 的親子 関係 の意 味 で の親 としての責 任 を引 き受 けて い る ときは、 血縁 上 の父 は この法 律上 の父 に優 先 して父 性 を認 め られ る こ とはな い。 す なわ ち、法律 上 の父 と子 との間 に社会 的家 族 関係 の実 態 が現 に存 在 す る場合 また は法律 上 の父 の死亡 の時点 において存在 して いた場 合 に は、

法律 上 の父子 関係 が優 先 す るこ とにな る(BGB1600条 第2項 参照)。 この場合 、

(17)

血 縁上 の父 によ る法律 上 の父子 関係 の否 定 につ いて101

33)

血縁 上 の 父 に よ る否 認 は 、 将 来 に お い て も不 可 能 とな る。 これ は身 分 関 係 の法 的 安 定 性 に も役 立 つ 。 身 分 関 係 は、 私 的 領 域 お よ び公 的 領 域(相 続 法 、 租 税 法 な ど)に 広 範 囲 に影 響 が 及 ぶ た め 、 法 的 安 定 性 が 必 要 で あ る。

社 会 的 ・実 質 的 家 族 関 係 の 存 在 は、 親 と して の 責 任 を 実 際 に 負 っ て い る こ と か ら導 き出 され る。BGBl600条 第3項 は、 この 点 にっ い て 、 法 律 上 の 父 が 子 の

34)

母 と婚 姻 して い る とき また は子 と比 較 的 長 期 間 に わ た っ て 家 庭 的 共 同 生 活 の な か で 一緒 に暮 ら して い る とき に は、 通 常 は、 親 と して の 責 任 を 実 際 に 引 き受 け て い る と推 定 して い る。 婚 姻 が 存 在 す る場 合 に は 、 一 切 否 認 が 認 め られ な い と い うわ けで は な い 。 そ の 意 味 で は、 婚 姻 の 絶 対 的 な保 護 は放 棄 され て い る。 こ

35)36)

れ は、偽 装結 婚 また は夫 婦 の別居 生 活 の場 合 な どを考 慮 し、個 々 の事案 に適合

37}

した 解 決 を 可 能 に す るた め で あ る。

ま た 、 血 縁 上 の 父 に よ る否 認 につ い て は、 否 認 を行 う者 が 子 の 血 縁 上 の 父 で あ る こ とが 要件 とされ て い る(BGBl600条 第2項 参 照)。 否 認 の訴 え は形 成 訴 訟 で あ り、 そ の 判 決 の効 力 は 、 本 来 、 訴 訟 物 で あ る法 律 上 の 父 と子 との血 族 関 係 の 除 去 に の み 及 ぶ こ とに な る。 しか し、 血 縁 上 の 父 で あ る こ とが 要 件 に加 え ら れ て い る こ とに よ り、 否 認 者 が 真 に子 の血 縁 上 の 父 で あ るか ど うか が 審 理 され る こ とに な る。 否 認 の訴 え の 中 で 血 縁 上 の 父 性 を確 認 す る こ とは、 否 認 判 決 に

38)

同時 に父 子 関係 の裁 判上 の確 認 の効 力 を持 たせ るた め に必 要 不可 欠 で あ る(後 述④ 参 照)。

③血 縁上 の父 の否認権 の行使 期 間

血 縁上 の父 の否認権 の行使 期 間 は、 法律 上 の父 お よび母 の場 合 と同 じ く、子 の 出生後 、 「否認 権者 が父性 に反 す る事実 を知 った時 」か ら2年 で あ る。 法律 上 の父 と子 との間 に社会 的親 子 関係 の実 態 が あ り、 そのた め に血 縁 上 の父 が父性 の否 認 を行 うこ とが で きない問 において も、血 縁上 の父 の否認 権 行使 期 間の進

3g}

行 は停 止 しな い(BGB1600条b第1項2文 後 段)。

④ 否 認 の 訴 え と父 性 確 認 の 効 力 ZPO640条h第2項[仮 訳]

『(2)BGBI600条 第1項2号 に よ る否 認 に よ り、BGB1592条 に よ る父 子 関 係 が

(18)

存 在 しな い こ とを確 認 す る確 定 力 の あ る判 決 は、 否 認 者 の 父 性 の確 認 を含 む。

この 効 力 は、 職 権 に よ り、 判 決 主 文 に述 べ られ る。』

血 縁 上 の父 に よ る否 認 が 認 め られ た と して 、 この 血 縁 上 の父 が 認 知 に よ りま た はBGBI600条d第1項 に よ る確 認 訴 訟 に よ り法 律 上 の父 の地 位 に就 こ う と し な い と き に は、 子 が 父 を持 た な い状 況 に置 か れ る こ とに な る。 そ こで 、 この 状 態 を 回 避 す るた め 、ZPO640条h第2項 に よ り、 確 定 力 の あ る父 性 否 認 の判 決

 の

に は 、 同 時 に否 認 者 の父 性 を確 認 す る効 力 が 与 え られ た 。 これ に よ り、 血 縁 上 の 父 が 否 認 を す る場 合 に は 、 子 の 父 が 確 保 さ れ る こ とに な る(BGBl592条 第3

41)

号 参 照)。 血縁 上 の父 に よ る否 認 の訴 え は、 実質 的 に裁 判 に よ る父 性 確 認 の 内 容 を も含 む とい う こ とに な る。

(2)子 の 関 係 人(Bezugsperson)へ の 交 流 権 の 付 与

42)

①BGB1685条 第2項[仮 訳]

『(2)子 の た め に実 際 上 の 責 任 を負 い また は負 っ て い た(社 会 的 ・実 質 的 家 族 関 係)子 と密 接 な 関係 を もつ 者(engeBezugsperson)に つ い て も、 同様 とす る。

当該 関 係 人 が 比 較 的 長 期 間 に わ た り子 と同 居 生 活 を して い た とき は 、 通 常 、 実 際 上 の 責 任 を 負 っ て い た もの と認 め られ る。』

②血 縁 上 の父 へ の交流権 の付与 の要件

血 縁 上 の父 が、 子 との交 流 を認 め られ る関係 人 とな りうるか は、子 との あい だで社 会 的 ・実質 的家 族 関係 を築 いて いたか 否か に よる。 また、子 との結 びっ きが密 接 で な けれ ば な らず、 さ らに子 との交流 が子 の福 祉 に資 す るもの で な け

43)

れ ば な ら な い 。

4.む す び

ドイ ツで は、 なぜ 提 訴 権 者 を 血 縁 上 の 父 に拡 大 す る改 正 が 行 わ れ た の か 。 ド イ ツ法 で は、父 が 子 を認 知 す る場 合 に は、子 の 母 の 同意 が 必 要 で あ る(BGB1595 条 第1項)。 母 の 同意 が 得 られ な い とき は、 父 子 関 係 の裁 判 上 の確 認 を求 め る こ

とに な る。 裁 判 上 の 父 子 関 係 の確 認 は、BGB1592条1号 ・2号 に よ る他 の男 子

(19)

血縁 上 の父 に よ る法 律上 の父 子 関係 の否定 につ いて

103

の 父 性 が 存 在 しな い こ とが 必 要 で あ り、 これ が あ る場 合 に は 、 父 子 関 係 の確 認 を求 め る こ とはで きな い(BGBl600条d第1項 参 照)。 した が って 、 母 の 同意 が 得 られ な い た め に認 知 が で き な い あ い だ に 、 母 が 同意 を 与 え た 他 の 男 子 が 認 知 を して しま う と、 否 認 権 者 が 否 認 しな い 限 り、 血 縁 上 の父 に は法 律 上 の 父 とな る手 段 は全 くな い こ とに な る。 本 稿 で 扱 った 憲 法 異 議 申 立 事件(2001年 度1724 事 件)は 、 ま さ に この よ うな事 案 で あ っ た 。 そ こで 、 血 縁 上 の 父 に も法 律 上 の 父 とな る道 を開 くべ く改 正 が 行 わ れ た わ けで あ る。 しか し、 何 の 制 限 も な く血 縁 上 の 父 に も否 認 権 を認 め る こ とは、 第 三 者 に よ っ て 家 庭 の 平 和 が 破 壊 され る 弊 害 が あ る。 これ を 回避 す るた め に、 限 定 的 な 要 件 の も とに 、 血 縁 上 の 父 に提 訴 権 を認 め た とい う こ とで あ る。 こ う した 背 景 に基 づ く改 正 で あ るた め、 これ が 積 極 的 に血 縁 主 義 に接 近 す る動 き で あ る とみ る こ とは で き な い 。 む し ろ、 血 縁 よ りも優 先 され る要 素 が あ る こ とを 明 確 に した 点 で は 、 血 縁 主 義 へ の 接 近 に

歯 止 め を設 け た とみ る こ と もで き る。

そ の要 件 を み る と、 改 正 法 に お い て血 縁 上 の 父 に提 訴 権 を 認 め る際 に重 点 が 置 か れ た の は、 次 の 二 点 で あ る。 まず 第 一 に、 法 律 上 の父 と母 お よ び子 との 間 の実 態 の あ る社 会 的 家 族 関 係 の 保 護 で あ る。 単 な る 「支 払 い の 父 」 で は、 法 律 上 の父 と して の 責 任 を果 た して い る とは言 えず 、 法 律 上 の 親 で あ る に は、 子 を 育 成 し教 育 す る義 務 を負 う こ とが 必 要 不 可 欠 の 要 素 で あ る。 そ の よ うな 義 務 を 負 っ て い る親 が 継 続 的 に確 保 され る こ とが 子 の 健 全 な 成 長 発 達 に資 す る とい う 考 え 方 か ら、 既 に親 子 間 に実 質 的 家 族 関 係 が 築 か れ て い る とき は、 血L縁 関 係 の 存 否 に よっ て これ を変 動 させ るべ きで は な い との結 論 が 導 き出 され る。 そ して 、 婚 姻 関 係 が 存 在 す る と き に は 、 社 会 的 ・実 質 的 家 族 関 係 の 存 在 が 推 定 され て お

り、 婚 姻 家 庭 の平 和 に つ い て も一 定 の 配 慮 が み られ る。 ま た 、 社 会 的 ・実 質 的 家 族 関 係 は 、 法 律 上 の 父 の 死 亡 に よっ て 失 わ れ る もの で は な い と され て お り、

そ の死 亡 後 に、 この要 件 を満 た さな い こ とを理 由 と して血 縁 上 の 父 が 子 の 身 分 関 係 を争 う こ とを認 め な い 。 さ らに、 提 訴 権 は父 性 に反 す る事 実 を知 っ た 時 か ら2年 間 に 限 っ て 認 め られ 、 家 族 関 係 の 実 態 が 存 在 しな い こ と また は そ れ が 失 わ れ た こ と を知 っ た 時 が そ の起 算 点 とな るの で は な い 。 改 正 法 が も う.̲̲.つ重 点 を置 い た の は、 子 の 法 律 上 の父 を確 保 す る とい う点 で あ る。 血 縁 上 の 父 に よ る 否 認 の 結 果 、 子 が父 親 を もた な い状 態 に な る こ とを 回避 す るた め に 、 こ の 場 合

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