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(1)

言語理論 と英語教育のかかわ りについて

On the Relation between Linguistic Theory and English Education

     

Me̲l UCHIDA

(平9年10月6日受理)

0。 は じめに

とか く言語理論 と呼ばれるものは英語教育 との関連性 はない もの と考 えられがちである。 し か しなが ら言語理論の中核 をなす生成文法 も提唱 されてか ら40年 あまりたち、理論的変遷 を遂

げると同時にかな りの成果 を産出 した。 また英語教育の分野 も現在 は他方面 に展開を見せてい ると言 える。本稿 の目的は両者の共通性 を見つけて橋渡 しをしようというのではない。 またお 互いの対立点 について議論す るための もので もない。 そうではな く言語理論か ら見て、英語教 育 に貢献で きる点 はないか どうかを探 ることである。

現在最 も新 しい言語理論の一つである ミニマ リス ト・ プログラムなどは、抽象度が高 く理解 しがたい もののように見 えるか もしれないが、生成文法の中では有望視 されている考 え方であ ると言 える。そのような ものをいきな り英語教育 に応用す ることはとて も無理であるし、逆 に この複雑な理論 をしっか り把握 しないで、つ まみ食 い的に英語教育の側面か ら吸収するのは無 謀であると思われ る。そこで本稿では、言語理論の成果のご く一部 を構文理解の一助 になるよ うにかみ くだいて利用で きないかを考察 してみる。直接生徒 に教 えることはで きな くて も、教 える側の人間にとって構文 を指導す るときのいわば台所 を豊かにして もらうための試論で もあ る。具体的には、1節で まず言語理論の中身 をここでの議論 に必要な ところを中心 に歴史的変 遷 に沿 って概観 してみる。次に2節でい くつかの構文 を分析す ることを試みる。当初の目的に 準拠 しつつ、新 しい理論の紹介 をどのように易 しく解 きほ ぐすか ことがで きるかを検討 してみ

る。そして3節ではそれ らを総括 して私見 を述べてみたい。

1.言語理論 と文法

1.1.生成文法の精神

生成文法 は1957年 にChomskyが提唱 して以来、活発な理論展開をしてきた。あまりに理論展 開が速 いことに批判の目もあるの も事実であるが、なぜ このような現象 を引 き起 こすのか とい うことを問 うてみよう。従来の理論 にない特徴の一つは「仮説 一検証 一 (反)一修正」という 経験科学的なアプローチを採 るとい うことである。ゆえに提唱 される説 も常 に仮説であるか ら こそ、いつ も反証の余地(反証可能性)が残 されている。議論が活発 に展開される最大の理由は ここにあると言 える。 このようなアプローチは従来の英語教育の研究分野ではあまり見 られな い ことか もしれない。

(2)

生成文法の研究 は見方を変 えるとマクロとミクロの2本の柱がある。マクロとは生成文法の 研究 における究極 目標である自然言語の習得プロセスの解明である。それに対 して ミクロとは 構文解析 および分析 と呼べ るものであろう。 この二つの柱 を有機的に結び付 けなが ら議論 は進 んでゆ く。すなわち構文研究の背景 には言語習得上の仮説が存在 しているし、逆 に言語習得研 究 は構文分析 を手がか りに進めているのが現状である。

さらにマクロ的な柱の中を文文法の範囲 と談語文法の範囲に一応分 けてみる。それによって 使用する道具立て も異なって くるか らである。1.2節ではこの二つの文法の特徴 を対比 してな がめてみることで守備範囲 を明確化 してお こう。

1.2.文文法 と談話文法

生成文法 は一般的にみるとかな り特殊 な前提条件 を設 けていると思われるので、 まずその点 をこれか ら論 じてみよう。第一 に、生成文法では「理想的話者聴者」 を設定するとい う前提が 存在する。われわれは同一の文化圏に生活 していると、一定年齢 になればほぼ均一的にその地 域で使用 されている言語 を駆使 して生活するようになる。 そこには厳密 にいえば、個人個人の 育 った環境 により使用する語彙の数や種類 にばらつ きがあるわけであるが、それは無視 して研 究 を始めるということである。

もう一つは「言語の瞬時的習得」 ということである。 この考 えに立つ と、子供が母国語 を習 得するさいにかかる時間的経緯 を無視 して、あたか も一瞬の うちに習得 したかのようなモデル

を設定 して議論 を進めるということになる。 よ く知 られている次のモデルがある。

(1)

第一次言語資料 ――――― 言語習得装置 ― ― ― ―>文

(1)は周囲で話 されてい る第一次言語資料 を入力 し、それが刺激 となって脳 のメカニズムが働 き、

結果 として子供 は正 しい文法 を瞬時 に して習得す る とい うことを示 してい る。

これ に対 して時間の経過 を考慮す るモデル も提案 されてお り、 そのモデル は(2)のように図示 で きる。1

(2)

段階I:資 言語習得装置 ¨一――→ 文法I――一――‐>出I

―――一>文法 Ⅱ ――一―‐>出力 Ⅱ

言語習得装置

(2)は、文法Hの入力 として子供の周囲で話 されることばに加 えて、文法 Iの 出力、すなわち子供 自身のは発話形式 に現れ ることば も新 しい段階の言語習得装置の入力 になる と考 えられてお り、 したがって習得 における時間の経過 も考慮 されている。

実際の言語習得 は身体の発育 と同 じように時間 をかけて行われるが、経験科学の研究方法 を 用いる生成文法理論では、ある理想化 された状態 を設定 してその中で法則 あるいは原則 を追究 してゆ く。第一次言語資料が提示 される順序や時期 は、子供一人一人 によって異なるという事 実か らして、 もしも言語習得の中間段階の文法 (G′)と 次の段階の文法 (G′+1)が 本質的に異な

(3)

るものであるな ら、それに応 じて最終的に達成 され る文法 もそれぞれ異なるはずである。 しか しなが ら習得 される文法 は一様であ り、子供 は一定の年齢 に達す ると同一の文法 を習得 してい ると考 えられる。 この ことか らChomsky(1975)は G′G′+1は本質的に同 じであるとする一 種の理想化 を行 うことが可能であ り、 したがって言語習得 は瞬時 に行われるとい う(1)のモデル

を使用 して生成文法の研究 を進めてよい と論 じている。

このような「理想化」の上 にたって研究 を進めるさいに、扱 う文 を一文ずつの単位で取 り上 げてゆ くとい う三つめの理想化 をお こなっていると言 えよう。一文 ごとにその分析 をしてゆ く 方法 をここでは「文文法」と呼ぶ ことにしよう。「理想化」とい う考 え方は、段階的に英語 を学 習する中学・ 高校 の現状 とはかけ離れているものか もしれないが、何 もそこを議論 しているの ではない。理想化 した状態での研究の中か らわかってきた一つ一つの構文の特徴 を簡易な形で

とらえなおす ことでその知見 を利用 しやす くすることをまずは目的 とす る。

ところで文文法の中で常 に関係 して くるの ものが、「内部構造」と「移動」という観念である。

内部構造 は樹形図 を用いて明示 され る。 これにより表面上 は線形 に単語 を配列 しているだけに 見 える文の単語間の結合力の強 さや まとまりを示す ことが可能 になった。 また、ある構文 と別 の構文が何か しら関係があ りそうな場合 に、 どこかの要素 (単)を移動 した形跡がある場合 がい くつ も存在す る。 これ も樹形図を用いると適確 にとらえることがで きる。

次に理想化 はひ とまず横 に置いて現実の言語社会 をながめ直 してみよう。すなわち現実の会 話 は一文 を越 えた複数の文 を考慮することによって成立するのである。 また物語や論説文な ど

も複数の文の集合体か ら構成 されている。 これを「談話」 と呼び、その分析 をしてゆ く方法 を

「談話文法」 と言 う。談話 は、相手や前の発話 を意識 しなが ら次の発話行為がなされている。

ただ し、談話の長 さが長 くなるのは思考力がついてきてか ら、すなわちある程度当該言語 を母 国語 として駆使で きるような年齢 に到達 してか らであると思われ る。その意味では外国語 とし ての英語 を学習す る者 に一番近い環境であると言 える。それでは、前述 した文文法 と談話文法

とはどのような接点が存在す るのであろうかを1.3節で考 えてみよう。

1.3.枠組の相違 と分析

1.2で見た文文法 と談話文法では同 じ構文 に対す る分析が どのように異なるのかを検討 して みる。 まず、次の例 を見てみよう。

(3)Tom hit

主語   述語

名詞   動詞 動作主

John.

目的語   伝統文法〉

名詞    伝統文法、生成文法〉

被動作主 生成文法〉

(3)の例文 の各要素 (単)はそれぞれが3種類 の文法用語 で表現 す ることがで きる。表現 の角 度 を変 えただ けで あって、上述 した用語 は伝統文法 (あるい は学校文法)でも生成文法 におい て も使 われ る ものであ る。 ところが、談話文法 の枠組 で は これ以外 の用語 も付 け加 えなけれ ば な らない。次の例 で考 えてみ よう。

(4)a.TOm kissed Mary.

(4)

b. Mary was kissed by′rom。

(4)は同 じ内容 を二つの言い方で述べた ものであ り、(4a)を能動文、(4b)を受動文 と呼ばれてい る。2種類 の構文が存在するのには、何 らかの理由 と目的があると考 えられる。 この理由づけ には談話文法 とGB理論の二通 りの説明が可能である。

一般的に英語の単語 は、文法規則の許 される範囲でその情報価値の低い ものか ら高い ものヘ と並べ られているのが理想 とされている。別 な言い方をすれば、「旧情報」か ら「新情報」への 配列 を好 む と言い換 えられる。この ことを(4)に 当てはめると(4a)で はTom,(4b)でMaryが

旧情報 に、そして(4a)の Maryや(4b)の Tomがそれぞれ新情報 に該当す る。(4b)は (4a)が元 となって派生 した と仮定すると、情報構造 を入れ換 えるため、すなわちTomを新情報 として 扱いたいがために、(4a)の文頭の位置か ら(4b)の文末の位置へ移動 し、それに伴い細かい部分

を文法規則 に合致するように受動文 に変換 した と言 える。

他方、統率0東縛理論 (GB理)では、(4b)の ような受動文 は最初か ら次のような内部構造 をもつ と仮定する。

(5)[IPe[I′ I[vPbe[vPkissed Mary[PPby Tom]]]]]

この特徴 はMaryが目的語の位置 にあ り、主語の位置 は空 (empty)になっていた り、by句 すでに存在 していることである。次の段階で目的語位置 にあるMaryが主語位置 に移動 して完 成する。なぜ移動がお こるか というと、空の位置 をその まま放置することはで きない という原 則 に加 えて、格理論 (Case TheOry)と 意味役割理論 Theory)に より項 (argument)が しく格や意味役割 をもらう位置 に必要によって移動 しなければならない とい う要請 に基づいて いる。(cf。031)

情報構造 とGB理論の説明の共通特徴 は、「なぜ受動文 は生 じるか」という質問に答 えようと している点である。説明のわか りやすさか ら言 えば情報構造 を用いた説明は英語教育 に楽 に応 用で きるのではないか と思われ る。 また文文法 と談話文法 は対立す るように見 えるところもあ れば、補完 しあうところもある。 ここではそれが どのように関係 しているのかを見てゆ くので はな く、 これ らの議論か ら出て くるいわば産物 を応用するように以下の章で検討 してみよう。

2.英語構文への生成文法理論の具体的な応用

2.1.意 味 と構造

母国語 としてであれ外国語 としてであれ、英語の複文構造 は習得が比較的遅いほうであると 言われている。当然単文構造や重文構造が理解 された うえで、習得 は成 されると仮定するのが 妥当である。ところで複文 とは何か と言 うと、「主語 と動詞 を二つ以上備 えていて等位接続詞以 外の接続詞で結 ばれている構文」 と定義することがで きる。 これを図示すると、(6)のようにな

る。((6a)は重文、(6b)は複文の内部構造 を示す。)

(5)

は 

まず、複文の教 え方の一つ として、Slと S2を別々の構文 と設定 してそれを thatを はじめ とする 従属接続詞で連結するという方法がある。連結すると同時に時制や人称 を必要に応 じて変化 さ せ るのである。暗記的に覚 えさせ る指導 よりは理論的であるといえる。 このような指導は現在 もすでに取 り入れ られているので、 さらにここでは意味 について もう少 し掘 り下 げてみよう。

次の簡単な例で考 えてみよう。

(7) I think that he likes every friend of rnine.

(7)では意味の重点 はどこに置かれ るか というと、通例 は主節の thinkに あると言 える。しか しな が らこのような構文 を実際に使 う時 は従属節 に意味内容の重点がある場合が多い。この理由は、

thinkに 「思い込む」 という意味 と「思 う」 とい う意味の両者があ り、「思 う」度合いに差があ ることか らも窺 える。ではこの場合内部構造 はどのようになるのあろうか。内部構造 は第一 に 統語構造 を反映 した ものであると同時 に、意味構造の一部 も反映 した ものであることが望 まし い と考 えるとすると、上記2種類の意味 をもつ構造 は異なることになる。2

(8)a

(8)で高い階層 にあるものが統語的にも意味的に重要度が高い と仮定するならば、弱い意味 しか もたないthinkの場合 は(8b)の ように階層関係がな くなって しまう。 さらに、次のような挿入 節構文 に変化 した もの もある。

(9) He likes every friend of Fnine,I think.

この場合 は、I thinkが 一種の文副詞のような役割 を果たす ことになるので、(8b)においてかな り自由に動 き回ることがで きる。 この ことは挿入節が文頭、文中、文末 というように比較的自 由に現れることをも説明することにつなが る。

このような知見 をどのように英語教育 に反映 させ るか とい う点 は、いろいろなや り方があか もしれないが、少な くとも樹形図を利用 して意味の微妙 な変化 を指摘することで、わか りやす い指導法 を開発する手掛か りになるのではないか と思われる。

(6)

2.2.意味 と移動制限

2.1では意味 と統語構造の関係 に基づいた説明 を検討 してみたが、同 じく意味 と移動の関 係 を顕著 に とらえている例 を考察 してみよう。要素の移動 は通例文法規則の許す範囲で行われ る。すなわち移動 は文法規則 により制限されているが、 さらに動詞あるいは述語の もつ個々の 意味が統語的な移動 に制限 を加 える結果 になるFIJがある。

lllll  a. I regret that l couldn't understand his honesty.

b. I think that he was a liar.

(10a)で は regretと いう動詞 は常 にI couldn't understand his honesty。 という部分が真である ことを前提 としている。すなわちある歴然 としている事実に対 してのみregret(後悔する)と

い う動作 は起 こるのである。これに対 して、(10b)で はthinkは 話 し手の心理状態 を表現する動 詞であ り、̀he was a liar'に ついてそれが事実か どうかをどのように考 えているかを表現する

ことを意図 している。 したがって「彼が うそつきであった。」という命題 は必ず しも真であると は断定で きない ことになる。前者 regretタ イプのように補文の内容が常に真であるような場合 のみ使 うことので きる述語 を「叙実的述語」 と呼び、真であるか どうかは定かでな くて もよい ような場合 に使 える述語 を「非叙実的述語」 と呼ぶ。例 えば両者 にはαDのような ものがあげら れ る。

lD 叙実的述語・・・00regret,forget,resent,be relevant,be sorry,etc.

非叙実F勺述語00・think,beheve,suppose,assert,be likely to,etc.

このような述語 は意味の相違 ということに留 まらず、統語的な振 るまいの差異にまで発展 して ゆ くことがわかっている。3

l121 叙実的述語 非叙実的述語

a.補文 を前置 した文 b.that節内の否定語上昇

C.不定詞付 き対格構文 d.動名詞構文

e. the fact that.… ….

*

*

*

OK OK

OK OK OK

*

*

* Ske was a liar, he forgot.

*I don't regret that he can help doing things like that.

*I resent Bill to have been the one who did it.

*Everyone supposed

tokn's being completely drunk.

*I assert tke fact tleat I don't intend to participate.

0カの表の下 に示 した例文の記号 は、それぞれ表の記号に示 したテス ト結果の非文の例 を指 し示 した ものである。 このような現象 は意味による分類が、統語的な振 るまいに対 して拡張された ことをも示唆 している。(12a)は叙実的述語 はその後 ろにある補文 を前置す ることが禁止 され

a.

b。

C d.

e.

(7)

ていることを示 していて、結果的に例文か らも明 らかなように、挿入節構造 をとれないことに なる。(12b)は notが例文の helpの 次に元々あったけれ ども、それを regretの 前 にもって くる ような移動操作 はで きない ということを示 している。 したがって述部の意味内容が統語的な移 動 を制限す る根拠 となっている。 これに対 して、(12c)か (12e)ま での例 により、述部の意味 が、許 され る構文 自体 を限定 して しまうことがあるということがわかる。

このような考 え方の中で、「命題」や「前提」という用語の導入 は比較的わか りやす くおこな うことがで きると思われ る。その上で0カで見た ような現象 を説明することは、「なぜ」という質 問の興味ある答 えの一つ となるであろう。

2.3.指 示関係

名詞 と代名詞が同 じ人や事物 を指す ことを (同)指示関係が存在 している言 う。伝統文法 では、性、数の一致 とい う形で指導 されてきているが、生成文法では指示関係が構文内の どの 位置で許 され、 どこの位置 においては許 されないか という原則が追究 されてきた。その一つで ある統率0東縛理論 (GB理)では、い くつかの別々の下位理論が互いに関係 しなが ら一つの 言語事象 を説明す るとい う考 え方が採用 されるにいたった。 きわめておおまかな言い方 をする

と、1.2節と本節で扱 う下位理論の概要 は次のようになる。

aD a.統率………構成素間の支配 あるいは優位関係 を内部構造 において客観的に明示 した も

東縛………構成素間の指示関係 を意味的直感 に基づ きなが らできるだけ明示的に規定 した もの

意味役割…文構造の中である構成素が担 う意味内容 を規定 した もの

格…………表面的に顕在 していな くて も文の中での構成素が担 う主語や目的語 といっ た性質 を意味 と統語の両面か ら規定 した もの

(13a)の概念 はいわ ば構成素間 の制 限的支配 関係 を定式化 した もので あ り、すべ ての言語現象 にかかわ って くるが、 (13b)か ら(13d)の概念 は連動 して構文 内の要素 の移動 について、移動 し なけれ ばな らない理 由づ けまで踏 み込 んで説明す る ときに効果がある。(cf。 (4),(5》

aDの 概念 をきちん と理解 して研究 してゆ くのはその専門家 の仕事 であ り、英語教育 とは別 の分 野 の問題 であ る。 しか しなが ら、開発 された ことを部分的 に英語 の指導 に応用す ることは可能 で ある と思われ る。 その一例 として名詞 の構文 内の相補分布 について調べてみ よう。

αり a.Bill′ blames himself′.

b. *Bill′ blames hinlづ.

C.  Bill′ suspects that httary blames hilrlJ.

d. *BillJ suspects that Mary blames hilnselfか [下つ き活字 グは両者が同 じ人物 であることを示す]

αりか らわか るよ うに人称代名 詞himと 再 帰代 名 詞 himselfは 単文 と複 文 の両 方 で正 しい分布 状況が異 な る。himが生 じる環境 で同 じ位置 に himselfは 生 じる こともない し、その逆 もあ りえ

b.

C.

d。

(8)

ない とい う相補分布 をなしている。GB理論では(13b)の東縛理論 を使 って説明をするが、C統

御」や「統率範疇」な どかな り技術的に複雑 な問題が生 じて くる。 このような ものをで きるだ け排除 して平易なことばで言い直す と次のような原則が提示 される。4

αD a。 再帰代名詞は単文内で同じ物を指 し示す単語が存在 しなければならない。

b。 人称代名詞は単文内で同じ物 を指 し示す単語が存在 してはならない。

C.固有名詞や普通名詞はaゃ bの制限がない。

(14b)が非文であるのは(15b)の原貝Uに違反 してhimが Billを指 し示 しているか らである。 こ れに対 して(14d)は再帰代名詞 himselfが 単文 を越 えた複文 の領域 にあるBillを指 し示 してい るために(15a)の単文内 という条件 に抵触 して非文 となる。単文、複文 とい う区別 は簡単 に教 え ることがで きるので、それにCDの 原則 を新たに説明することで、 ここで も「なぜ」 という問い の答が示 されるもの と思われ る。

3.結びにかえて

本稿では言語理論 と英語教育のかかわ りについて考察 をしてみた。具体的には1節では言語 理論の分野で「文文法」 と「談話文法」 とい う立場 を易 しく紹介 してみた。2節では1節で見

た内容 を道具立てにして複文 を中心 に移動現象や指示関係 を中心 に議論 してきた。

近年のコミュニケーション重視の英語教育 とは少 し考 え方が異なるか もしれないが、外国語 として英語 を中学校か ら習得す るには、それぞれの基礎構文 を習得することを無視することは で きない。 また高校 レベルにおいては基礎構文 を習得 した うえで、 より複雑化 した構文の習得 が求め られる。 もちろん教育現場では、英語 を使 う場面設定 に基づいての教 え方の試みがなさ れているようである。 しか しなが ら理屈あるいは理論のない教 え方は結局 は理解力 を助長する ことにはならないように思われ る。外国語 としての英語 を学ぶ相手は、すでに理論的な構文理 解がある程度で きる年齢 なので、それを利用することが必要である。 さらに大事 な ことは「 な ぜそのようになるのか」 という疑間に興味 をそそるような形で答 えられる知識 を教 える側が も つ ことに大 きな意義があると言 える。「英語ではこう決 まっている」とか「 こういう状況ではこ のように言 うことになっている」 という答 を多用することは、避 けられない場合 もあるものの あまりに短絡的す ぎると言 える。 そこで考 えられ る一つの方法 は、理論的なアプローチの使 え る分野か らその知見 を利用することにある。現在 その最大の効果 をあげることがで きるのが、

生成文法であると思われる。

かつて静岡大学教育学部英語科で「変形文法 を応用 した英語教育」が盛んに研究 された時代 があった と聞いている。生成変形文法 も様変わ りしてきた現在、その精神だけは受 け継 ぎつつ、

い くつかの構文 に対する言語理論の応用を機会があれば考 えてみたい。

Kajita(1977)では この ような言語習得 のモデル に立脚 す る理論 を動的文法理論 (dynamic model of graminar) と呼ぶ。

(8b)の ような現象 を主節が下降 した と考 える。(9)の挿入節 は完全 に この ような操作が な さ れたた め、接続要素が義務 的 に消失 した と考 え られ る。

¨

2.

(9)

3。 詳 しい議論 としてはH00per(1975)が あげられ る。

4.東縛理論では名詞類 を3つに分類す る。

a.照応表現…再帰代名詞、相互代名詞、NP痕

b.代名詞……人称代名詞

C.指示表現…指示名詞、wh痕

その うえで正確な東縛理論 を記述すると次のようになる。

A.照応表現 は、その統率範疇の内部で東縛 されていなければな らない。

B.代名詞 は、その統率範疇の内部で東縛 されてはな らない。

C。 指示表現 は、A東縛 されない。

参考文献

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Kajita,M。 (1977) Towards a dynamic model of syntax."S滋ググ 物E4g施力ιグηたガ 5,

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Kimball,J.P。 (1975)〔%勉χ απ″%″as 4.New York:Academic Press.

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