図1 2010 版テクノフェスタ in 浜松のチラシ
「テクノフェスタ in 浜松」おもしろ実験に参加して
○水野 武志,勝野 廣宣,青山 満, 百瀬 与志美, 安間 義和 静岡大学 電子工学研究所 技術部
1. 概要
「テクノフェスタ in 浜松」は、静岡大学浜松キャンパスの工学部・情報学部・電子工学研究所などを、一般公開する イベントです。 このイベントは、平成8年(1996)から始まり、平成22年(2010)で15回を迎えた歴史の有るイベント で、一般市民や子供たちに人気が有るイベントです。 今回の発表では、電子工学研究所アマチュア無線クラブで参加し 実施した、おもしろ実験「電子オルゴールの製作とアマチュア無線公開運用」について発表を行います。
2. テクノフェスタin浜松とは
静岡大学は、静岡市に静岡キャンパス(人文学部・教育学部・理学部・農学部等)、浜松市に浜松キャンパス(工学部・
情報学部・電子工学研究所等)とキャンパスが2つに分かれています。 また、平成11年度までは工学部・情報学部の 1・2年生も静岡キャンパスで授業を受けていました。
平成7年度までは、工業短期大学部の学生が主催する大学祭が、浜松キャンパスで行われる大きなイベントでした。 し かし、工業短期大学部は平成9年度に廃止となり、これに変わるイベントとして、静岡大学の教職員を中心として行うこ とになったのが、テクノフェスタ in 浜松です。 テクノフェスタ in 浜松は、本部の主導で始まったイベントではなく、
浜松キャンパスの各部局が主導して始まったことが大きな特徴だと思います。 従って、当日開催される実験などのイ ベントは、職員が自主参加して行われる企画が有ります。 平成12年度からは、1・2年生の揃った工学部と情報学 部の学生の主催する静大祭 in 浜松も同時開催されるようになり、更に大きなイベントへと発展しました。
図4 第 12 回での電子オルゴール 図3 電波検出器 図2 バルーン上昇準備 3. おもしろ実験への参加状況
私個人としては、第 1~2 回は「ガラス細工」、第 3~4 回は「電子顕微鏡で観てみよう」に、参加していました。
第 5 回よりアマチュア無線クラブとして下記のように参加し、アマチュア無線公開運用は継続して行っています。
年度 参加テーマ名
第 5 回 2000 年 平成 12 年度 バルーン空中撮影とアマチュア無線公開運用 第 6 回 2001 年 平成 13 年度 バルーン空中撮影とアマチュア無線公開運用 第 7 回 2002 年 平成 14 年度 バルーン空中撮影とアマチュア無線公開運用 第 8 回 2003 年 平成 15 年度 アマチュア無線公開運用
第 9 回 2004 年 平成 16 年度 アマチュア無線公開運用
第 10 回 2005 年 平成 17 年度 電波検出器の作製とアマチュア無線公開運用 第 11 回 2006 年 平成 18 年度 電波検出器の作製とアマチュア無線公開運用 第 12 回 2007 年 平成 19 年度 電波検出器の作製とアマチュア無線公開運用 第 13 回 2008 年 平成 20 年度 電子オルゴールの製作とアマチュア無線公開運用 第 14 回 2009 年 平成 21 年度 電子オルゴールの製作とアマチュア無線公開運用 第 15 回 2010 年 平成 22 年度 電子オルゴールの製作とアマチュア無線公開運用
アマチュア無線クラブとしては、第 5 回から第 8 回にかけて無線技術の可能性をアピー ルすることを目的として、バルーン空中撮影をトライしていました。 内容としては、
①市販のバルーン(図 2)に軽量の小型改造カメラを搭載 ②ヘリウムガスでバルーンを 空中に浮遊させロープで固定 ③上空からの映像を撮影 ④カメラからの動画を、無線 伝送 ⑤地上で無線伝送映像をモニタに表示して来場者に展示
バルーン空中撮影は、バルーンのサイズによる積載重量の制限(バルーン固定用のロ ープの重さも加わる)のため、ロープの太さ(×長さ)によってバルーンの最大上昇距 離が制限されたり、カメラ部を軽量化する技術的な難易度や、また開催日に雤が降ると 中止になるなどの、天候の影響による不確実要素が多く大変でした。 また上空の風の 影響で、バルーンの位置が安定しないため、映像も揺れが多くなり、モニタ映像が観に
くく、バルーンが動くと無線伝送のノイズも増えて更にモニタ画像にノイズが増加するなどの理由や、来場者があまり関 心を持ってくれないなどの理由で、行わなくなりました。
その後、第 10 回から第 12 回までは、簡単な電波検出器(図 3)を来場者に作製してもらうようになりました。 こ れは、LED とダイオードの組み合わせにより、携帯電話のアンテナを近づけると電波のエネルギーを利用して LED が点灯 するというものです。 この電波検出器は構造もシンプル、単価も廉価で作製しやすく大変好評でした。 しかし、携帯 電話の周波数帯の変遷や技術の進歩により携帯電話から外部アンテ
ナが無くなり、第 12 回ぐらいからは、参加者の携帯電話の電波では、
作製した電波検出器が点灯しなくなりました。 このため、第 12 回 をもって電波検出器の作製は終了しました。 この第 12 回では、試 験的に電子オルゴールキット(図4)の制作を加えました。 この オルゴールの製作は、大変人気が有りましたが、単価の高いキット を使用したため予算の関係で個数があまり用意できず、第 13 回から は廉価な電子オルゴールキットへ変更し現在に至っています。
三端子メロディIC
図6 電子オルゴール回路 乾電池 1.5V
+
:ハンダ付け接合箇所 圧電 ブザ ー( 極 性無) 電解コンデンサ
+
図7 電子オルゴールの作製風景
図5 現在使用の電子オルゴール 外観
図8 アマチュア無線公開運用風景 4. 電子オルゴールの製作の概要
・事前申込み不要(キッズ・サイエンスは事前申込み、また有料のキ ットを用いるおもしろ実験は、総合受付での当日申込みが必要)
・参加費は無料、作製した電子オルゴールは作製者にプレゼント
・対象者の限定はしない、幼稚園児から大人までの作製希望者
・組立簡単な市販の電子オルゴールキット(使用パーツ:基板・電池 ボックス・圧電ブザー・3 端子 IC・電解コンデンサ)(ハンダ付け、9 カ所)使用(図5・図 6)
・組み立て前に無線クラブ係員が、構成パーツについて説明
・ハンダ付けの説明では、参加者の年齢やスキルに応じて個別指導し 火傷や怪我などの事故が発生しないように対応
・電子オルゴールのハンダ付け終了後動作を確認し、動作不 良の場合は、説明者が動作するまで対応
・作製時間は、おおよそ 10~20 分
5. アマチュア無線公開運用
・無線機とアンテナを設置
・無線局の公開運用
・アマチュア無線資格について説明
・資格取得の方法等の説明
・手軽に取れる講習会等も紹介
・無線公開運用での交信局には、QSL カードの発行
6. アンケート集計結果
参加者にアンケート(混雑時にはアンケートを省略)を取りました、全ての参加者ではありませんが参加者の性別・参 加者の年齢層・参加者感想の結果を下記に示します。
男, 45% 女, 42% 不明, 12%
図9 参加者性別グラフ
小学生, 52%
10代(小学生以 外), 17%
20代, 1%
30代, 10%
40代, 11%
50代, 3%
60代, 3%
70代以上, 1%
不明, 2%
図 10 参加者年齢別グラフ
とても楽しかった, 92%
まあまあ楽しかっ た, 7%
あまり楽しくな かった, 1%
図 11 参加者感想グラフ アンケートのまとめ
・男女別の参加者比率は、若干男が多いが特に差は無い
・参加者の年齢別グラフを見ると、小学生の参加者が半数以上を占め、10代と合計すると69%となり、おもしろ実験 の趣旨である「理科系への好奇心の育成」にマッチしている。 また、感想の項目で「とても楽しかった」と「まあまあ 楽しかった」を合計すると99%に達し、好印象を得ており大変良かった。
7. まとめ
・アマチュア無線の公開運用に関しては、年配の有資格者からの関心は高かった。
・若年層では新たに資格を取ろうとする意欲の有る人は、若干名であった。
・アマチュア無線機は携帯電話の普及する前は、旅行などの複数台での車両移動時に、連絡が取れる利便性があった。
・現在では携帯電話が普及し、携帯電話で TV 電話も簡単にできる時代である。 また、アマチュア無線を使用しなくて も、携帯電話という無線機器により、無線技術は知識を持たなくても手軽に利用し出来る。 携帯電話は生活において必 須の機器となり利便性は向上し、さらなる進化を遂げつつあることを考えると、アマチュア無線に対する関心は、薄れて いくのは、やむを得ないかもしれない。
・電子オルゴールの製作は、2 日間で150個の在庫を全て使用し、大変好評であった。
・参加者が自らハンダごてを使用して作製するので、年齢を問わず皆さん熱心に取り組んでいた。
・完成するとメロディが流れると、笑顔になる参加者が多く、対応した係員も嬉しかった。
・2 日間を通して、火傷や怪我などのトラブルもなく無事終わることが出来て大変良かった。
・電子オルゴールのキットには、現在使用しているキットよりもいろいろな機能の付加されたキットもあるが、費用等の コストや、組立にかかる時間も考えると、現在のキットまたは同レベルの組立で完成するキットが適当だと思われる。
・アマチュア無線クラブとして自主的に、10年以上前からおもしろ実験へ参加し、参加者の反応を見ながら、参加者の 好評を得られる企画に成長してきましたことに感慨を覚えます。
・今回の発表資料を作成するにあたって、過去の資料や写真などでアマチュア無線クラブの皆様のご協力を受けたことに 感謝致します。