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学会消息
連結財務諸表に関する意見書について 森
Ⅰ
実
本稿は,昨年秋に.関西大学で行なわれた日本会計研究学会関西部会での連結財務諸表に 鍋する意見書についてこのシ∵ソポ汐ユ.L−ムの概要を紹介するものであってニ,連結財務諸表に ついてのこれまでのわが国に.おける研究の紹介に.までおよぶものでほない。学会での議論 を紹介するまえ紅,この間題檻ついてJ若干の説明を加えておこう。
企業の集団化ほ,法的に・は独立の企業として資本紅およぶ危険を分散しながら,しかも
大規模な組織体としての経済活動を営む利益をうることを目的どして行なわれる。したが
って,金糸集団を構成する企業は,法的紅は個別的な企業であっても,経済的には単一・の 組織体と考えるほうが適当である。このような観点に.立つと,個別財務諸表紅対して連結 財務諸表が必要である。さらに.,わが国の場合には,連結財務諸表に・対して,もう1っの 契糠があった。すなわち,わが国では,最近数年間紅,企業倒産が続発し牢が,それに関 連してそれらの会社で粉飾決静が行なわれでいたことが発見され,しかもその粉飾決算の 方法として子会社を利用することが多かったことが判明した。そこで,粉飾決算を防止す
るために,公認会計士による財務諸表監査制度の改尊とともに.,連結財務諸表の制度が検 討されることになった。
連結財務諸表ほ,米国,西独および英国では,実際に.制度化されているので,会計の問 題としても,−・般的なものとしてとりあつかわれている。これに対して−,わが国め場合に
は,これに関する研究が,従来,まったく行なわれていなかったわけではなく,戦前紅も その例がみられたが,それほきわめて特殊な問題として考えられていた。ところが,昭和 41年7月5日に,大蔵省企発会計審議会が,「連結財務諸表紅関する意見書(仮案)」を発表
して以来,毎月のように,会計雑誌紅,理論または実務に関する研究が掲載されるように なった。
このように,わが国紅おける連結財務諸表の関心ほ,最近,にわかに高まってきたよう に.思われる。このような動向は,これまでのわが国の一遍の連結財務諸表に関する専門寄
連結財務諸表た関する意見について
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に.もみられる。たとえば,戦後,わが国で連結財務諸表をあつかった最初の本は,昭和33年
6月の加藤金三・兼予審三共著「連結財務諸表論」(教育文化研究会)である。これは,米 国で行なわれている連結財務諸表の会計実務を,特殊な会計問題としてわが国匿紹介した ものである。そ・れ故に,連結財務諸表が,わが国の経済基盤において\必要であるかどうか ということを,とくに意識して紹介したものでほないと思われる。
っいで,昭和37年12月に.は,稲垣富士男・兼子春三共著の「企業集団会計」(中央経済 社)があらわれた。これは,その当時から,わが国の一部の大介業では,A上)R発行また は世界銀行からの融資にさいして,SECまたは世界銀行から,連結財務諸表の作成を要 求されるように.なってきたので,単に.外国の会計制度の問題にとどまらないで,わが国の 一部の大会社に.とっては現実の問題になってきたという事情を認めながらも,わが国の企
業の一般的な会計問題としてとりあげるよりも,むしろ,企業集団内部で,統一敵組織体 としての管理運営の会計資料を提供する機能を重視している。
さらに,連結財務諸表に関する諸外国の会討実務の紹介ばかりでなく,その会封実務の 背後に.ある理論的研究について.も紹介が行なわれるようになり,ム−・ニ・ツツ著白鳥庄之助 訳「連結財務諸表論」(同文飴)が,昭和39年4月紅でて言いる。
そして,粉飾決静の問題を契機として,昭和41年7月に「連結財務諸表に関する意見書
(仮案)」がだされた。それは,わが国の経済的基盤において,連結財務諸表の制度が必要
であることを認識し,それをわが国の一般的な会計問題として提示するに・り重たのであ る。これによって高められた社会的関心のもとに.おいて,連結財務諸表においてより実践
的な本があらわれた。これは,昭和42年1月の富田岩芳・伊藤勝夫共著「連結財務諸表」(日 本経営出版会)である。これは,ADR発行を行なっているわが国の一部の大企業では,
連結財務諸表の作成は,会計慣行としてわが国阻板をおろしたとし,わが国の企業で,実 際に.連結を担営する会計実務家の参考となることを意図して,書かれたものである。
もちろん,連結財務諸表については,これらの番物の背後紅,あるいはそれ以外把・も,
多くの研究が行なわれでいるので,それを抜きにして,その動向を論じるのは正確セはな いかもしれないが,一応,上にあげた例に.よってもわかるように,連結財務諸表は,従来
のように,単に外国の制度として−,あるいは,特殊な会計問題としてとりあげられている のではなく,わが国の社会が要求する新しい制度として,そして,それ故に会計学の−
般的問題として,とりあつかわれるように変ってきている。このような動向におトて,連 結財務諸表に.ついての議論の手がかりとして−,「連結財務諸表に関する意見書(仮案)」がだ
算39巻 第5・6号
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されたとみるととができる。昭和41年11月の日本会計研究学会の関西部会では,この意見 番およびその注解をとりあげてシンポジユ.−ムが開かれた。以下,この関西部会で,意見 書のどのような点が問題把.され,どのような意見がだされたか,その概要を紹介すること
にしたい。
ⅠⅠ
忠見書は,まず最初にてわが国の経済的基盤に・おいて,連結財務諸表紅対する社会的要 請が増大しているこ.と,連結財務諸表の基本的目的およびその副次的機能を明らかにして いる。
すなわち,わが国でも,一・会社が地金社の株式取得などの方法によって,他会社の経営
を支配し,巨額の財産を1つの中心的管理のもとに集中しようという,し、わゆる企業集団 化現象が顕著紅なってきたので,個々の会社の財務諸表だけでは,これらの会社の経営成 績および財政状態を適正に表示することが困難になり,ここに連結財務諸表に.対する要請
が生まれてきた。
意見番は,連結財務諸表の目的として,支配的地位にある会村の株主およびその他の利 害禍係老に対して企菜集団の呉実公正な財務情報を提供することをあげ,その副次的機能
として,(1)支配的立場の会社の経営者に,経営管理上必要な情報を提供すること,(2)企業 課税の実質的適正化に.寄与すること,(3)支配従属関係紅ある会社の監査の適正化紅寄与す
ることをあげている。
このような忠見書に対して,連結財準諸表の社会的必要性とその制度化とが関連させら れて問題にされた。すなわら,連結財務諸表の制度が,先進諸外国と同じように社会的 に必要とされるようになったことは,最近の企灘倒産および粉飾決算を契機として,投資 家および債梅者の保護のために連結財務諸表が重要であるという議論によって明らかにな ってきている。しかし,その社会的必要隆の認識が,すぐさまその制度化に結びつくとほ いえない。論理的に.は,企業は,その社会的責任より,社会的要請に応えて連結財務諸表
の制度をうけいれるぺきであるが,実際的にほ,√連結財務諸表制度の採用に・よって租税面 で有利になるとか,ADR発行などのために,財虜政策上の必要を感じなければ,その制 度化に進まないであろうという指摘が多いようであった。
つぎに,意見書のあげた3つの副次的機能がとりあげられたが,その議論の途中では,
連結財務諸表の主目的と副次的機能とが混同されたような見解もみられた。意見苔の連結
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財務諸表の目的および機能紅ついて,3つの種類の議論があった。
第1のものほ,連結財務諸表の主目的である利害関係者に対す・る会社の財務情報の提供 という社会的目的をもつと強調すべきであり,そのためには連結財務諸表の企業に.対する
利点をのべるような副次的機能を掲げることは,その社会的目的をあいまい紅するおそれ があるので除いたはうがよいとする。
第2の見解ほ,連結財務諸表に関する意見苫は,外部の利害関係者紅対する外部目的の連 結財務諸表を意図しているので,その観点から,目的および機能を体系づけたはうがすっ きりするという。そこで,内部目的な表明した(1)の経営者に対する経営管理上の必要な情 報の提供という機能は除いた方がよい。また,(2)の課税の適正化に.寄与するということ も,その実際の機能にほ疑問があるので掲げないはうがよい。結果としで,(3)の外部目的 を表明した監査の適正化の概能だけをあげたはうが,この意見書の意図を明確漉するとい う意味でもよいとする。
これに.対してほ,この意見書が,監査の適正化ということだけを目的としてだされたと いうのであれば監査の適正化ほ,現在の監査基準に.おいても,十分可能であるから,別に 連結財務諸表の制度が設けられなくてもよいという反論がだされた。
欝3の意見は,連結財務諸表の主目的から3つの副次的機能が,
ものである。そもそも,連結財務諸表は,企菜をとりまく利害関係者に顛実公正な財務情 報を提供することを目的としている。企業の経営者も利害関係者の1人として,連結財務 諸表から経営管理に必要な情報を入手するととができるし,税務当局も,また,利害関係 者の1人として,適正な課税を行なうのに必要な情報を入手することができるし,さらに 監査人も,また,監査を適正に屑なうのに必要な情報を入手することができるという考え 方である。
なお,企業課税の実賀的適正化については,実際的にはいろいろの問題があるけれど も,たとえば,子会社のあげた利益はすぺて親会社に帰属するという利益供出契約を結ぶ こととか,親子関係会社の場合の二重課税を合理化するなどの手段をとることによって,
ある程度ほ,連結による課税の適正化も考えられるということが絵描された。
また,監査の適正化ということについて,現行のような必要匿応じて会計士ほ子会社紅 往査することができるという規定によった場合には,その監査は,支配会社と従属会社間 の取引およびそれに関する項目に.限定されるが,連結財務諸表が制度化された場合には,
それ以外の取引も監査することになり,それに伴って粉飾を摘発することも多くなるとい
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う逢いが指摘された。
ⅠⅠⅠ
意見書は,連結財務諸表の目的ほ,単⊥・の組織体の構成単位とみなされる2つ以上の会 社の財務諸表を結合して,単二・の組織体としての経営成績および財政状態を臭実公正に・,
かつ明瞭に報告することとしている。また,注解では,単一・の組織体の意味について,支 配会社と従属会社とは,法律的にほ別個の法人として区別されて.いるが,支配会社を頂上 会社とする企業集団の立場で,統一・的な経営意思の形成も可能な状態に.あるので,経済的
ヽ には単一・の経済的実体とみなすべきであるとしているが,このなかにでてくる単一・の組織
体,統一・的経営意思の形成および単一・の経済的実体の意味について議論が行なわれた。
連結財蕗諸表は,企業集団の単一・の組織体としての経済的実体を表示するものであると されるが,親会社と子会社との関係の経済的実体は,連結に.よって親会社と子会社との取引 を相殺消去しないはうが,むしろ.その経済的実体を表示するという意見がだされた。これ に対してほ,それで心配されるような新会社から子会社紅対する押込販売という事実が,
相殺消去紅よって,かえって.表面にでなくなることは,親子関係会社間の取引については,
連結財務諸表に.,脚注およびその他の形で表示させることによって救済できるとされた。
つぎに,どのような範囲の企業を連結するかに.ついて.ほ,意見書は,過半数の株式の実 質的所有を基準とし,かつその除外例をあげているが,議論は,その除外例にあつまった。
意見書は,つぎのような場合には,連結の範囲から除外するものとしている。(1)株式保 有が単に一時的なものと認められる、場合,(2)従属会社が更生法上の更生手続中の場合また は破産の状態紅ある場合,(3)従属会社が在外会社であって,連結す芦ことがとくに周難な 事情にある場合,または連結すること匹よ?てかえ.って判断を誤らせ一るおそれのある場
合,(4)従属会社の営業の種類,内容等が支配会社ぉそれと,まったく関係ないか,または
いちじるしく異なっているため合理的紅単一・の組織体としてとりあつかうことができない 場合,(5)従属会社の規準が,単独に・または数会社あわせても,その総資産または取引高等 に.おいて,支配会社に比較して,重要性を認め難い程度に小さい場合。
これらの除外例のうちで,(4)紅ついて了,とくに,異論が多かった。たとえば,財務諸表 を連結する目的は,企共集団を1っの経済的実体として,損益の状態,資金の流れなどを 明らか紅することにあるので,財の流れに.こだわらないはうがよく,したがって異種の企 業を除外しないほうがよいという意:見がだされた。
連結財務諸表に関する意見について
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意見書ほ,異種企業の場合に.ほ,連結によって,かえって企業集団の経済的実体に対す
る判断を誤らせることになるとするのであるが,反対意見は,異種企業であっても,連結 したはうが,企業集団の経済的実体の真実の報告になるとする。とれは複雑な問題である が,連綽財務諸表の表示をどのように考案するかという問題に.関連する。
連結貸借対照表を作成するには,支配会社の従属会社に対する投資勘定とこれ紅対応す る従属会社の資本勘定を相殺消去しなければならないが,意見書の注解ほ,支配会社に.よ
る従属会社の株式の取得日を基準として相殺消去を行なうのを原則とし,取得が2回以上 にわたる場合には,取得日どとに・段階的に相段消去を行なう段階法と,支配獲得日を蓼準 として,一・括して三相殺消去を行なう叫・括法とを示し,段階法を原則的方法とするが,−・括 法を適用しても,その結果が段階法と大差のない場合に、は,一億法を適用してもよいとし ている。この段階法と−・括法について,それほ単虹技術的な手続の差にすぎないのか,あ るいは,本質的に.異なるものであるかという疑問がだされた。
このような問題は,連結調整勘定の本質をどのようにみるかということに関連してく る。すなわら,連結調整勘定ほ,支配会社の投資勘定と従属会社紅おける資本持分との差 額であるが,ちれほ単一・の性質のものではなく,種札の要素が混合したものであるとする
意見がだされた。すなわち,それはグッドクイル的要素,資産の過大評価または過小評 価,買入価格の偶然的変動などのいろいろな場合が含まれ,また,それらのものが複雑な かたちで混合されているものとされる。また,この差額は,擬制資本と機能資本との差額
として規定できる一面もあるという拇摘もあった。
このように.連結調整勘定は,その原因が不明である場合が多いので,差額をいろいろ操 作するよりも,あまりいじらないで,そのままに・しておいた蘭うがよいと挙れた0
連結損益計罫書作成のところでは,未実現利益の処理が問題にされた。意見書は,少数株 主持分が存在する場合に・は,会社相互間取引およぴこれに.伴う未実現損笹ほ原則として,
少数株主持分紅かかわらず完全に消去し,その消去は,連結剰余金に負担.させ畠方法によ
るものとして−いる。そこに.おいてだされた意見紅.はi企柴集団は,単に,法的のみならず,
経済的紅も,単一Lの組織体としての一面とともに・,また,個々の独立の企業の集合という 面をももっているので,従属会社の少数株主持分に・帰属する部分は,実現利益として表示
し,支配会社に.帰属する部分だけを消去するにとどめたはうがよいというものがあった。
また,同じような観点から,米菓現利益という言葉を用いないで,企菜集団内取引損益 とかその他の類似の言葉を用いるべきであるという意見もあった。
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学会の様子は,大体以上のようであった。まだ,他にも,とりあげることが必要な問題 もあり,より掘り下げた議論が必要であると思われる点もあった。しかし,何分にも,連 結財務諸表は,わが国の会計学会にとっては,まだ新しい研究領域であり,また研究者の 数もそれはど多くない。わが国では,この問題についての研究が拡大されることに.よっ て,より本格的な議論が期待されるであろう。今ほ.その手はじめの段階である。このよう
ヽヽ な意味で,この学会は,連結励務諸表に対する関心を高める上において,十分な効果がえ
られたであろう。
また,今年の5月に福岡大学で行なわれる日本会計研究学会が,その統一・論題の1つと して連結財務諸表を選んでいることは,このような動向に.沿ったものであろう。