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スポーツ動作計測に関する研究

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(1)

スポーツ動作計測に関する研究

(A study on motion capture system of various sports using body-mounted inertial sensors)

弘前大学大学院理工学研究科 博士後期課程

博士論文

2013 12

北村 政嗣

(2)

1

章 序論

1

2

章 無線慣性計測装置の開発

10

2.1

緒 言

. . . . 10

2.2

無 線 慣 性 計 測 装 置 の 概 要

. . . . 13

2.3

ハ ー ド ウェア 構 成 と 試 作

. . . . 14

2.4

ソ フ ト ウェア 構 成

. . . . 22

2.5

試 作 機 の 動 作 実 験

. . . . 27

2.5.1

単 体 で の 動 作 実 験

. . . . 27

2.5.2

複 数 台 で の 動 作 実 験

. . . . 35

2.5.3

動 作 実 験 に 対 す る 考 察

. . . . 40

2.6

表 面 実 装 に よ る

WIMU

の 小 型 化

. . . . 42

2.7

結 言

. . . . 57

3

章 投球時上肢の動作計測

58

i

(3)

3.1

緒 言

. . . . 58

3.2

計 測 原 理

. . . . 59

3.2.1

固 定 座 標 系 で の 加 速 度 導 出

. . . . 59

3.2.2

セット ポ ジ ション 時 の

FM

算 出 法

. . . . 61

3.2.3

前 腕 ,上 腕 お よ び 胸 部

WIMU

FM

の 関 係

. 63 3.2.4

肘 屈 曲 伸 転 軸 お よ び 肩 内 外 転 軸 の 推 定

. . . 64

3.2.5

初 期 姿 勢 導 出

. . . . 65

3.2.6 FM

と 腕 お よ び 体 幹 の 関 係

. . . . 67

3.2.7

前 腕 ,上 腕 お よ び 胸 部 の 軌 道 推 定 方 法

. . . 68

3.2.8

速 度 お よ び 位 置 修 正 方 法

. . . . 69

3.3

実 験 方 法

. . . . 80

3.4

結 果

. . . . 80

3.5

考 察

. . . . 82

3.6

結 言

. . . . 83

4

章 ジャンプ時下肢の動作計測

84 4.1

緒 言

. . . . 84

4.2

計 測 原 理

. . . . 87

4.2.1

ジャン プ 動 作 推 定 方 法 概 要

. . . . 87

4.2.2

初 期 姿 勢 推 定 方 法

. . . . 87

(4)

4.2.3

運 動 中 の 姿 勢 推 定 方 法

. . . . 89

4.2.4

各 関 節 角 度 の 定 義

. . . . 91

4.3

実 験 方 法

. . . . 96

4.4

結 果

. . . . 97

4.5

考 察

. . . . 110

4.6

結 言

. . . . 112

5

章 結論

113

参考文献

116

(5)

序論

計測環境を限定せずにヒト の動 作を 計測・解析する技術の確 立は,医療,福祉,健康,スポーツを含む様々な分野において重 要 と なって い る 。特 に ス ポ ー ツ 分 野 で は ,ア ス リ ー ト の 怪 我 や 故障を防ぐために,動作を定量的に分析し,その結果に基づい て動作の改善を行っていくことが必要 とな る

[1]

。現在,動作計 測には光学式動作解析装置の利用が一般的である。光学式動作 解析装置は,測定対象を取り囲むように複数台の赤外線カメラ を設置し,測定対象の被験者の関節位置等に赤外線反射マーカ をテープなどで貼り付け,それぞれのカメラで撮影したマーカ の

2

次 元 座 標 を 利 用 す る こ と で ,

3

次 元 空 間 で の マ ー カ の 位 置

1[mm]

以下の誤差で測定することが可能であり,大規模病院,

大 学 な ど の 研 究 機 関 ,人 間 工 学 分 野 ,心 理 学 分 野 な ど ,幅 広 い 分野で利用されている。光学式動作解析装置を利用した例とし

1

(6)

て ,投 球 動 作 の 計 測 や ,投 球 障 害 の 診 断 が 行 わ れ て い る

[2–5]

投 球 障 害 は ス ポ ー ツ 障 害 の

1

つ で あ り,そ の 主 な 原 因 は 適 切 で はない投球動作であるため,投球障害を予防するためには,適 切な投球動作の指導が不可欠である。このとき,投球動作の指 導には,腕の軌道推定や関節トルクの算出などを行う動作解析 が 有 用 で あ る 。し か し ,投 球 動 作 は 高 速 で あ り,市 販 の ビ デ オ カメラでは計測が困難であるため,専用の計測装置が必要とな る。現在,投球動作の解析に主に使用されている光学式動作解 析装置は,高額で取扱に専門的知識が必要とあるため,学校の 部活などでの利用は困難であり,さらに,計測に赤外線を使用す るため屋外は使用が困難

[4, 5]

,マーカが外れやすい,複雑な動 作 を 行った り 障 害 物 が 存 在 し た り す る と ,マ ー カ が 撮 影 で き ず 動 作 計 測 が 不 可 能 と な る

[6]

な ど ,様々な 問 題 が 存 在 し て い る 。

一方,これまで身体に装着した加速度センサやジャイロ(角速

度センサ)といった慣性センサ,気圧センサ,地磁気センサ等を

利用した身体装着型動作計測装置の研究が行われている

[7–32]

IC

タイプの加速度センサは,弾性要素と粘性減衰要素によって

保持される質量に加速度が作用したとき,質量の慣性力による

変 位 を 材 料 の ひ ず み 量 や 電 気 容 量 の 変 化 と し て 捕 ら え る こ と

で ,物 体 に 作 用 す る 加 速 度 を 測 定 す る こ と が で き る 。ジャイ ロ

(7)

は,往復運動する振動素子が回転したときのコリオリ力を測定 することで,角速度を測定することができる。これらのセンサ を 使 用 し た 動 作 計 測 は ,前 述 の 光 学 式 装 置 と 比 較 し て ,簡 便 , 安価,低拘束という利点を持つため,スポーツ分野はもちろん の こ と ,福 祉 ,理 学 療 法 分 野 等 か ら も 期 待 さ れ て お り,現 在 ま でに,ヒトの動作時の関節角度を推定する方法

[7–10]

や,行動・

活 動 内 容 を 判 別 す る 方 法

[11–18]

,歩 行 時 の 歩 行 速 度 等 を 計 測 す る 方 法

[19–28]

が 報 告 さ れ て い る 。ま た ,近 年 の

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)

技術の発展により,スマートフォンや 腕 時 計 な ど に も 組 み 込 む こ と が 可 能 と な る ほ ど 小 型・軽 量・高 精 度 化 が 進 ん で い る こ と か ら ,今 後 様々な 目 的 の た め ,あ ら ゆ る装置へ組み込まれることが予想される。このように,身体装 着 型 セ ン サ は 今 後 ま す ま す 広 く 利 用 さ れ る こ と が 予 想 さ れ る が ,高 速 な ス ポ ー ツ の

3

次 元 高 精 度 無 拘 束 動 作 計 測 に 関 し て は 以 下 の よ う な 問 題 点 が 存 在 す る 。

従来の計測システムは有線のため動 作計 測に悪 影響

慣性センサを利用してヒトの動作を計測するためには,身

体の上下肢に多数のセンサを装着し,測定データを記録す

る 必 要 が あ る が ,こ れ を

1

カ 所 の デ ー タ ロ ガ ー に 記 録 す る

ためには複数本の信号ケーブルが必要となるため,動作の

(8)

妨 げ と な る 可 能 性 が あ る 。

無線通信技術を用いた実時間でのデ ータ 送信は 困難

有線での計測が動作に悪影響を及ぼすという問題を解決す るためには,測定データの無線送信が考えられる。しかし,

高 サ ン プ リ ン グ 周 波 数 で は 単 位 時 間 当 た り に 計 測 さ れ る データ量が多く,更に測定箇所が増大すると,現在の無線通 信 技 術 を 利 用 し て も 実 時 間 で の デ ー タ 送 信 は 困 難 で あ る 。

高速なスポーツ動作の高精度計測に は工 夫が必 要

ス ポ ー ツ 動 作 は 歩 行 動 作 よ り も 高 速 で あ り,生 じ る 加 速 度 や角速度も広い範囲で発生することから,測定範囲の広い 慣性センサを使用して高サンプリング周波数で計測を行う 必要がある。一方で,測定範囲の広い慣性センサは

SN

比が 小さく電気的ノイズの影響を受けやすいため,動作が低速 の 時 に も 精 度 良 く 計 測 を 行 う た め に は 工 夫 が 必 要 で あ る 。

積分誤差の影響により高精度の経路 推定 が困難

慣性センサを利用して運動時の姿勢や移動経路を推定する た め に は ,加 速 度 や 角 速 度 の 数 値 積 分 が 必 要 であ る。し か し,高精度化が進む加速度センサやジャイロを利用しても,

回路のノイズやセンサドリフトなどによる積分誤差を完全

(9)

に 除 去 す る こ と は 不 可 能 で あ り,高 精 度 の 経 路 推 定 は 困 難 で あ る 。

そ こ で 本 論 文 で は ,身 体 装 着 型 慣 性 セ ン サ に よ る 高 速 な ス ポ ー ツ の

3

次 元 高 精 度 無 拘 束 動 作 計 測を 実現 す るこ と を目 的と し て ,高 速 動 作 に 対 応 す る 無 線 慣 性 計 測 装 置

(Wireless Inertial Measurement Unit: WIMU)

を 作 成 し ,上 半 身 の 運 動 で あ る 投 球 動 作 お よ び 下 半 身 の 運 動 で あ る ジャン プ 動 作 を 計 測・解 析 す る

3

次 元 動 作 解 析 シ ス テ ム を 開 発 す る 。

ま ず,高 速 動 作 に 対 応 す る た め に ,高 い サ ン プ リ ン グ 周 波 数

を有し,測定範囲の広い慣性センサと,大容量のデータ記録領

域 を 有 す る

WIMU

の 開 発 を 行 う。本 論 文 で は ,市 販 の セ ン サ モ

ジュールを統合し,新たな計測装置を設計,作成する。測定デー

タ の 扱 い に つ い て は ,

microSD

カ ー ド な ど の 小 型 ス ト レ ー ジ デ

バイスの高容量化と低価格化に伴い,大容量の測定データを実

時間で無線送信せず,装着型センサシステム内にデータを保存

する方法が実用的であると考えられる。このとき,身体各部に

装着したセンサの測定開始や終了などの制御は,無線で行うも

のとする。また,

1

対多の無線通信が可能なプロトコルを利用す

る こ と で ,速 い 通 信 速 度 を 必 要 と せ ず,か つ 装 着 さ れ た セ ン サ

の数に制限はなくなる。このような無線センサシステムを利用

(10)

す る こ と で ,高 速 な ス ポ ー ツ の

3

次 元 無 拘 束 動 作 計 測 が 可 能 に な る と 考 え る 。試 作 機 に よ り ハ ー ド ウェア お よ び ソ フ ト ウェア の評価を行った上で,試作機を基にして,大きさ

50×50×30[mm]

以下,質量

50[g]

以下と小型軽量化を実現することを目指し,表 面実装基板を利用したセンサシステムを開発し,スポーツ動作 計 測 の 適 用 可 能 性 に つ い て 調 査 す る 。

本論文で対象とするスポーツ動作は,野球の投球動作時の上

半 身 の 動 作 と ,両 足 ジャン プ 時 の 下 半 身 の 動 作 と す る 。有 線 式

の 慣 性 セ ン サ に よ る 投 球 動 作 の 計 測 は,小 田 ら に よって 提 案 さ

れている

[29]

。本論文では,

WIMU

を利用して投球動作時の慣性

情報を測定するとともに,小田らの方法を適用して投球姿勢お

よび関節トルク推定を行い,

WIMU

の適用可能性について調査

す る 。ま た ,ス ポ ー ツ 動 作 計 測 の 際 に は ,姿 勢 に 加 え ,身 体 が

空中に浮いているジャンプ時の経路や飛距離を正確に測定する

こ と が 重 要 で あ る 。こ れ ま で に ,ジャン プ 動 作 を 放 物 運 動 と 仮

定し,腰部に装着した加速度センサから求めた跳躍時間を使用

し て 垂 直 跳 び に お け る 跳 躍 高 を 算 出 す る 方 法

[30]

や ,メ ジャー

によって実測した跳躍距離を利用して立ち幅跳びにおける跳躍

角 度 を 算 出 す る 方 法

[31]

が 提 案 さ れ て い る が ,い ず れ も 離 陸 時

と着陸時のセンサの高さが同じであるという仮定や,放物運動

(11)

を 仮 定 し て い る た め ,着 陸 時 の セ ン サ の 高 さ が 異 な る 場 合 や , 姿勢変化による重心位置の移動,外力の作用による軌道の変化 に 対 し て は 正 確 な 軌 道 の 推 定 は 困 難 であった 。こ の 問 題 を 解 決 するためには身体加速度の積分が有効であるが,積分誤差の蓄 積 に よ り,推 定 経 路 に 大 き な 誤 差 が 生 じ る 可 能 性 が あ る 。一 方 佐川らは,足爪先に取り付けた慣性センサから効果的に積分誤 差 を 除 去 し て 歩 行 時 爪 先 の

3

次 元 軌 跡を 導出 す る方 法 を考 案し た

[32]

。そ こ で 本 論 文 で は ,そ の 方 法 を ジャン プ 動 作 の 計 測 に 応用するとともに,両脚の拘束条件,離陸時の速度ベクトルの 導出方法,足の接地状態に対応した姿勢推定などの新たなアル ゴ リ ズ ム を 提 案 し て ,立 ち 幅 跳 び を 行った 時 の 体 幹 と 下 肢 の 動 作 推 定 を 試 み る 。

本 研 究 は ,高 速 動 作 に 対 応 す る

WIMU

の 開 発 を 行 い ,上 半 身

の 運 動 で あ る 投 球 動 作 と ,下 半 身 の 運 動 で あ る ジャン プ 動 作 の

動作計測法を構築することにより,身体装着型慣性センサによ

る 高 速 な ス ポ ー ツ の

3

次 元 高 精 度 無 拘束 動作 計 測を 実 現す るこ

とを目的とする。高精度である光学式動作解析装置の使用が困

難な環境で人間の経路や姿勢の計測が実現すれば,光学式モー

ション キャプ チャで は 困 難 な 屋 外 で の ス ポ ー ツ 動 作 の モ ニ タ リ

ングが可能となり,従来の光学式モーションキャプチャと比較し

(12)

て安価で取扱が簡便であるため,スポーツ動作のモニタリング が一般の病院や学校の部活動など広く普及することが期待され る 。そ し て ,パ フォー マ ン ス の 向 上 の 確 認 や 故 障 の 予 防 法 の 検 討 ,リ ハ ビ リ テ ー ション 効 果 の 確 認 な ど に 利 用 す る こ と で ,ス ポ ー ツ や 医 学 ,工 学 な ど の 様々な 分 野 に 貢 献 で き る と 考 え る 。

本 論 文 の 各 章 の 構 成 は 以 下 の 通 り で あ る 。

2

章 無線慣性計測装置の開発

身体装着型の無線慣性計測装置の開発について述べる。無 線 慣 性 計 測 装 置 の ハ ー ド ウェア 及 び ソ フ ト ウェア 開 発 を 行 い ,そ の 性 能 を 評 価 す る 。ま た ,試 作 機 を 基 に し て 表 面 実 装 に よ り 小 型 化 を 実 現 す る 。

3

章 投球時上肢の動作計測

慣性センサを使用して投球時の姿勢変化や軌道を推定する 方 法 を 用 い て ,屋 外 で の 投 球 動 作 計 測 に つ い て 述 べる 。人 間 の 上 肢 を

3

セ グ メ ン ト モ デ ル と し て モ デ ル 化 し ,体 幹 お よ び 前 腕・上 腕 に 装 着 し た 慣 性 セ ン サ の 加 速 度・角 速 度 よ り,投 球 時 の 姿 勢 変 化 や 軌 道 を 推 定 し て ,

WIMU

の 適 用 可 能 性 に つ い て 述 べ る 。

4

章 ジャンプ時下肢の動作計測

(13)

慣性センサを使用してジャンプ 時の 姿勢 変化 や軌 道を 推定 す る 方 法 を 提 案 す る 。人 間 の 下 肢 を

5

セ グ メ ン ト モ デ ル と してモデル化し,踵下に装着した圧力センサにより足の接 地 状 況 を 検 出 し ,体 幹 お よ び 両 側 の 大 腿・下 腿 に 装 着 し た 慣性センサの加速度・角速度より,ジャンプ時の姿勢変化や 軌道を推定する。また,光学式モーションキャプチャシステ ムとの同時計測実験により,本手法の計測精度評価を行う。

5

章 結論

本論文の結果をまとめる。慣性センサにより人間の動作計

測 を 行 う 本 研 究 の 手 法 に よ り,臨 床 へ 応 用 さ せ る 可 能 性 に

つ い て 述 べ る 。

(14)

無線慣性計測装置の開発

2.1

緒言

現 在 ,ス ポ ー ツ 等 の 動 作 計 測 に は モ ー ション キャプ チャの よ うな光学式動作解析装置の利用が一般的である。光学式動作解 析 装 置 は ,測 定 対 象 を 取 り 囲 む よ う に 複 数 台 の 赤 外 線 カ メ ラ を 設 置 し ,測 定 対 象 の 被 験 者 の 関 節 位 置 等 に 赤 外 線 反 射 マ ー カをテープなどで貼り付け,それぞれのカメラで撮影したマー カ の

2

次 元 座 標 を 利 用 す る こ と で ,各 時 刻 に お け る

3

次 元 空 間 でのマーカの位置を

1[mm]

以下の誤差で測定 する こと が可 能で あ る 。一 方 で ,光 学 式 動 作 解 析 装 置 は ,高 額 で 取 扱 に 専 門 的 知 識 が 必 要 で あ る た め ,学 校 の 部 活 な ど で の 利 用 は 困 難 で あ り,

さ ら に ,計 測 に 赤 外 線 を 使 用 す る た め 屋 外 は 使 用 が 困 難

[4, 5]

マ ー カ が 外 れ や す い ,複 雑 な 動 作 を 行った り 障 害 物 が 存 在 し た り す る と ,マ ー カ が 撮 影 で き ず 動 作 計 測 が 不 可 能 と な る

[6]

10

(15)

ど ,様々な 問 題 が 存 在 し て い る 。そ の た め ,身 体 に 装 着 し た 加 速度センサやジャイロ(角速度センサ)といった慣性センサ,気 圧センサ,地磁気センサ等を利用した身体 装着 型動 作計 測装置 の 研 究 が 行 わ れ て い る

[7–32]

。一 方 で ,身 体 装 着 型 の 装 置 を 利 用 し た 高 速 な ス ポ ー ツ の

3

次 元 高 精 度無 拘束 動 作計 測 を実 現す る 際 に は ,以 下 の よ う な 問 題 点 が 存 在 す る 。

従来の計測システムは有線のため動 作計 測に悪 影響

慣性センサを利用してヒトの動作を計測するためには,身 体 の 上 下 肢 に 多 数 の セ ン サ を 装 着 し ,測 定 デ ー タ を 記 録 す る 必 要 が あ る 。従 来 ,無 線 慣 性 計 測 装 置 は 一 般 的 で は な く,身 体 に 装 着 し た 慣 性 セ ン サ は

AD

コ ン バ ー タ を 内 蔵 し たデータ計測用のコンピュータ とケ ーブ ルに より 有線 接続 されていたため,ケーブルによる拘束感により動作計測に 悪 影 響 を 及 ぼ す 点 や ,ケ ー ブ ル の 長 さ に よって 計 測 場 所 が 拘 束 さ れ る 点 が 問 題 で あった 。

高速なスポーツ動作の高精度計測に は工 夫が必 要

野球の投球動作において,例えば

150[km/s]

での投球の場合

1

サ ン プ ル 間 の 手 先 の 移 動 量 は ,サ ン プ リ ン グ 周 波 数 が

100[Hz]

の場合は

42[cm]

であり,

1[kHz]

の場合は

4[cm]

である。

こ の こ と か ら ,野 球 の 投 球 動 作 の よ う な 高 速 動 作 では ,高

(16)

速 な 動 作 を 計 測 す る た め に は

1[kHz]

と い う 高 サ ン プ リ ング 周 波 数 で の 計 測 が 必 要 で あ る 。ま た ,高 速 動 作 で は ,加 速 度や角速度は広い範囲で発生することから,測定範囲の広 い低感度タイプの慣性センサを使用する必要がある。一方,

低感度タイプの慣性センサは電気的ノイズの影響を受けや す い た め ,動 作 が 低 速 の 時 は ,狭 い 測 定 範 囲 を 高 精 度 で 計 測可能な高感度タイプの慣性センサを併用するなど,工夫 が 必 要 で あ る 。し か し ,計 測 す る 信 号 の 本 数 が 増 加 す る た め ,ケ ー ブ ル が 幅 が 太 く な り,重 量 が 増 す こ と で 拘 束 感 が 増 加 す る と い う 問 題 も あ る 。ま た ,当 時 市 販 さ れ て い た 無 線慣性計測装置では

100[Hz]

程度のサンプリング周波数まで し か 利 用 で き ず,慣 性 セ ン サ の 測 定 範 囲 も 狭 く,ス ポ ー ツ 動 作 計 測 に は 不 適 で あった 。

無線通信技術を用いた実時間でのデ ータ 送信は 困難

慣性センサで計測したデータの無線送信を考える。例えば,

1

カ所の動作を測定する際,サンプリング周波数を

1[kHz]

し,測定範囲の異なる

3

軸加速度センサおよび

3

軸ジャイロ

2

種類利用し,

12[bit]

の精度でデータロガーに測定データ

を無線送信する場合,無線通信速度は通信失敗が全くない

状 態 で も 最 低

240[kbit/s]

程 度 必 要 で あ る 。測 定 箇 所 が さ ら

(17)

に増大すると,現在の無線通信技術を利用しても実時間で の デ ー タ 送 信 は 困 難 で あ る 。

そこで本章では,身体装着型慣性センサによる高速なスポー ツ の

3

次 元 高 精 度 無 拘 束 動 作 計 測 を 実現 する こ とを 目 的と して 開発した,無線慣性計測装置

(Wireless Inertial Measurement Unit:

WIMU)

について述べる。

WIMU

の仕様を決定し,作製した試作

機 に よ り ハ ー ド ウェア 及 び ソ フ ト ウェア の 評 価 を 行った 。ま た , 試 作 機 を 基 に し て 表 面 実 装 に よ り 小 型 化 を 実 現 し た 。

2.2

無線慣性計測装置の概要

装 着 式 動 作 解 析 装 置 は ,慣 性 セ ン サ( 加 速 度 セ ン サ・ジャイ ロ),センサからの信号を計測・保存するマイコン・メモリ,計 測制御のための無線通信モジュール

(Radio Frequency module: RF

モ ジュー ル

)

に よって 構 成 さ れ る

WIMU

と ,

WIMU

に よって 計 測 さ れ た デ ー タ を 処 理・解 析 す る コ ン ピュー タ シ ス テ ム か ら 構 成 される。計測された加速度と角速度を用いて数値計算を行うこ と で ,動 作 中 の

3

次 元 位 置 や 姿 勢 な ど を 推 定 す る 。

投球動作のような高速動作の場合,光学式動作解析装置のフ

レームレートに相当するサンプリング周波数は

1[kHz]

以上とい

う要求がある。また,動作に影響を与えないためには

WIMU

(18)

小 型・軽 量 で あ る 必 要 が あ り,ケ ー ブ ル に よ る 拘 束 感 は な る べ く 抑 え ら れ な け れ ば な ら な い 。さ ら に ,低 速 動 作 か ら 高 速 動 作 ま で ,広 い 範 囲 で の 加 速 度 お よ び 角 速 度 の 測 定 が 必 要 で あ る。これら全ての要求を満足するため,以下の仕様を実現する

WIMU

を 開 発 す る 。

1.

計 測 の 開 始 と 終 了 は

RF

モ ジュー ル に よって 制 御 さ れ る 。

2.

慣性センサの計測データは高感度,低感度の両方ともマイ

コ ン で

AD

変 換 し て 取 り 込 ま れ る 。

3.

加 速 度

100[G]

以 上 ,角 速 度

6000[deg/s]

以 上 に 対 応 。

4.

取 り 込 ま れ た デ ー タ は バ イ ナ リ 形 式 で

microSD

カ ー ド に 書 き 込 ま れ る 。

2.3

ハードウェア構成と試作

WIMU

の ハ ー ド ウェア 構 成 を

Fig.2.1

に 示 す。前 節 で 述 べ た 機 能 を 実 現 す る

WIMU

を 開 発 す る た め ,マ イ コ ン は

Microchip Technology

社 の

dsPIC33FJ128GP802

を 使 用 す る 。こ の マ イ コ ン は ,

12

ビット の

AD

変 換 に 使 用 で き る ピ ン は

10

本 で あ り,

RAM

16384

バイトである。また,このマイコンは電源電圧が

3.3[V]

で あ り,

5[V]

の 電 源 を 使 用 す る セ ン サ の 電 圧 を 直 接

AD

変 換 す

(19)

る こ と は で き ず,セ ン サ の 出 力 イ ン ピ ー ダ ン ス も 無 視 で き な

い た め ,

Fig.2.2

に 示 す よ う に ,セ ン サ の 出 力 端 子 に ボ ル テ ー ジ

フォロ ア を 通 し た 後 で 抵 抗 に よ り 分 圧 し ,

3.3[V]

以 下 に 電 圧 を

低 下 さ せ る 必 要 が あ る 。加 速 度 セ ン サ や ジャイ ロ は

3

軸 の デ ー

タ を 計 測 す る た め ,

1

種 類 あ た り

3

本 の 出 力 と な る 。ま た ,広

範囲で加速度や角速度を検出するセンサは検出感度が低く,ノ

イ ズ に よ る 影 響 が 大 き い た め ,検 出 範 囲 の 広 い セ ン サ と 検 出

感度が高いセンサを併用する必要がある。このことから,使用

す る

3D

セ ン サ は

2

種 類 の 加 速 度 セ ン サ と

2

種 類 の ジャイ ロ を 使

用 す る 。加 速 度 セ ン サ は 高 感 度 タ イ プ

(MMA7261QT

Freescale Semiconductor

社 ,検 出 範 囲

5[G]

,感 度

480[mV/G]

3

軸 低 加 速 度

センサ

)

1

個と,低感度タイプ

(ADXL193

ANALOG DEVICES

社,検出範囲

120[G]

,感度

18[mV/G]

1

軸高加速度センサ

)

3

使 用 す る 。ジャイ ロ は 高 感 度 タ イ プ

(ENC-03RC

,富 山 村 田 製 作

所 ,検 出 範 囲

300[deg/sec]

,感 度

0.67[mV/deg/sec]

1

軸 圧 電 振 動

ジャイロ

)3

個と,低感度タイプ

(MG3-01Ab

MicroStone

社,検出

範囲

4000[deg/sec]

,感度

0.2[mV/deg/sec]

3

軸ジャイロセンサ

)

1

個使用する。これらのセンサの出力数の合計は

12

本となる。一

方 ,使 用 す る マ イ コ ン で は ,

AD

変 換 用 の 入 力 ピ ン を

10

本 し か

持っていない。そのため,

6

入力

3

出力のマルチプレクサ

(MUX)

(20)

を使用し,仮想的に入力を

12

本以上にする。ここでは,マルチ プ レ ク サ は マ イ コ ン の

AD

変 換 入 力 の チャン ネ ル

8

9

10

に 接 続し,入力を

13

本とする。センサで計測された電圧データはマ イ コ ン に よって

12

ビット で

AD

変 換 さ れ る た め ,

12ch

の デ ー タ

1[kHz]

サ ン プ リ ン グ で 取 得 す る 場 合 の デ ー タ 量 は

1

秒 間 あ た

24000

バ イ ト と な る 。こ れ を 無 線 で 通 信 す る 場 合 ,ス タ ー ト ビットやストップビットなどを考慮すると,転送速度は

240[kbps]

以 上 必 要 で あ る た め ,

AD

変 換 し た デ ー タ を 無 線 で 逐 次 送 信 す る の は 困 難 で あ る と 考 え る 。こ の た め ,

microSD

カ ー ド に デ ー タを書き込む方法を使用する。

RF

モジュールは

IEEE802.15.4

格 に 準 拠 し た

MaxStream

社 の

XBee

を 使 用 す る 。こ れ ま で 述 べ たハードウェア構成の回路を実際に組み立てた試作機の写真を

Fig.2.3

に ,部 品 表 を

Table.2.1

に 示 す。基 板 中 央 に マ イ コ ン を 配 置 し ,

microSD

カ ー ド に デ ー タ を 記 録 す る た め の カ ー ド ラ イ タ は基板右上,

RF

モジュールは基板右下に配置した。写真左下に あ る の が ジャイ ロ セ ン サ で あ る

MG3-01Ab

で ,そ の 右 隣 に あ る の は 他 の セ ン サ を 実 装 し た セ ン サ ユ ニット で あ る 。ま た ,写 真 右 側 に あ る の は 単

4

電 池 が

3

本 入 る 電池 ケ ース で あり,こ れ を

2

個 直 列 に 接 続 し ,

3

端 子 レ ギュレ ー タ を 使 用 す る こ と で

5[V]

3.3[V]

の電圧を生成する。この試作機によってハードウェア並び

(21)

に次節で述べるソフトウェアに関して,動作検証を行った後に,

表 面 実 装 に よって 小 型 化 を 行 う。

(22)

Microcomputer microSD

MUX

sensors Voltage

divider

(Additional AD port)

3 7

4 9 8 10

1 6 RF module

3D Accelerometer High sensitivity 3D Accelerometer Low sensitivity

3D Gyroscope High sensitivity 3D Gyroscope Low sensitivity H/L

Fig.2.1: WIMUの ハ ー ド ウェア 構 成

(23)

+

sensor

Micro controller 220

390

Fig.2.2: 分 圧 回 路 。分 圧 比390/610

(24)

Battery

3D sensor RF module

Gyroscope

Microcontroller MicroSD

Fig.2.3: 動 作 検 証 の た め のWIMU試 作 機

(25)

Table.2.1: WIMU試 作 機 の 部 品 表

部 品 名 型 番 メ ー カ 仕 様

マ イ コ ン dsPIC33FJ128GP802 Microchip Technology

加 速 度 セ ン サ MMA7261QT Freescale Semiconductor ±5[G]

加 速 度 セ ン サ ADXL193 ANALOG DEVICES ±120[G]

ジャイ ロ ENC-03RC 富 山 村 田 製 作 所 ±300[deg/s]

ジャイ ロ MG3-01Ab MicroStone ±4000[deg/s]

RFモ ジュー ル XBee MaxStream

(26)

2.4

ソフトウェア構成

Fig.2.4

WIMU

の 計 測 の 流 れ を 示 す。

WIMU

は ,計 測 開 始 信 号 を 受 信 す る と ,

UART

の 割 り 込 み に よ り 動 作 を 開 始 す る 。は じ め に

microSD

カ ー ド の 初 期 化 を 行 い ,計 測 デ ー タ を 記 録 す る ファイルを開き,計測のためのタイマー割り込みを開始させる。

1[ms]

のタイマー割り込みにより,マルチプレクサ

(MUX)

を使用

して

13ch

分の

12bit AD

変換を行い,情報量の圧縮などは行わず

に ,

1ch

あ た り

2

バ イ ト の バ イ ナ リ デ ー タ と し て バッファに 一 時 保存し,バッファにデータが溜まったら

microSD

カードへの書き 込 み を 行 う。

WIMU

が 計 測 終 了 信 号 を 受 信 す る と ,タ イ マ ー 割 り 込 み を 停 止 さ せ て 計 測 を 終 了 す る 。

マ ル チ プ レ ク サ を 使 用 し て

13ch

分 の セ ン サ 出 力 の

AD

変 換 を

行 う 方 法 に つ い て 説 明 す る 。

Fig.2.1

に 示 す よ う に ,高 感 度 タ イ

プの加速度センサがチャンネル

1

2

3

に,高感度タイプのジャ

イ ロ が チャン ネ ル

4

5

6

に 接 続 さ れ て お り,チャン ネ ル

7

は 外

部のセンサが接続可能な拡張入力である。また,マルチプレク

サ の 制 御 信 号 が

L

レ ベ ル の 時 は 低 感 度 の 加 速 度 セ ン サ,

H

レ ベ

ルの時は低感度のジャイロの出力が選択されてチャンネル

8

9

10

に 入 力 さ れ る 。こ の た め ,ま ず,マ ル チ プ レ ク サ の 制 御 信 号

L

の 状 態 で ,チャン ネ ル

1

か ら

10

ま で 順 に

AD

変 換 を 行い ,高

(27)

感 度 タ イ プ の 加 速 度 セ ン サ,高 感 度 タ イ プ の ジャイ ロ ,拡 張 入 力 ,低 感 度 の 加 速 度 セ ン サ,合 わ せ て

10ch

分 の セ ン サ の 出 力 を 取 り 込 む 。次 に ,マ ル チ プ レ ク サ の 制 御 信 号 を

H

と し て ,チャ ンネル

8

から

10

まで順に

AD

変換を行い,低感度のジャイロの出 力

3ch

分 を 取 り 込 む 。こ の 方 法 を 用 い る こ と で ,マ イ コ ン 単 体 では

10

本である

AD

変換用の入力を仮想的に

13

本に増やすこと が 可 能 と な り,加 速 度 セ ン サ と ジャイ ロ に つ い て ,そ れ ぞ れ 高 感 度 タ イ プ と 低 感 度 タ イ プ で あ わ せ て

12ch

と ,拡 張 入 力 の

1ch

の 合 計

13ch

の 計 測 が 可 能 と な る 。

次に,計測データを一時保存するバッファについて説明する。

一 般 に ,記 憶 装 置 に デ ー タ の 書 き 込 み を 行って い る 間 に ,新 た

に計測したデータが書き込み中のデータを上書きすると,デー

タが正常に記録されない。そのため,

2

個のバッファを使用する

ダブルバッファ方式を採用する。一方のバッファに計測データを

溜 め て い き ,そ の バッファが 埋 まった ら ,計 測 デ ー タ を 溜 め る

バッファを 他 方 の バッファに 切 り 替 え ,空 き 時 間 を 見 つ け て 埋

まったバッファのデータを

microSD

カードに書き込む。マイコン

RAM

16384

バ イ ト で あ り,プ ロ グ ラ ム に 必 要 な 領 域 も あ る

こ と を 考 慮 し ,ダ ブ ル バッファと し て

7000

バ イ ト の バッファを

2

個 使 用 す る 。

12

ビット の 精 度 で

13

チャン ネ ル の ア ナ ロ グ デ ー タ

(28)

1[kHz]

のサンプリング周波数で計測すると,バッファへのテー タの蓄積速度は

26[kByte/s]

である。一方,マイコンから

microSD

カ ー ド へ の デ ー タ 転 送 速 度 は

SPI

通 信 プ ロト コ ルの 仕 様よ り最 高

400[kbit/s]

で あ る か ら ,お よ そ

40[kByte/s]

と 見 積 も る こ と が で き る 。こ の こ と か ら ,測 定 デ ー タ の

microSD

カ ー ド へ の 転 送 速 度 は 十 分 で あ る と 考 え る 。

計 測 開 始 信 号 や 計 測 終 了 信 号 と いった

WIMU

制 御 信 号 は

1

字の半角英字(

1

バイト)とした。試作機の動作実験では,計測 開始と計測終了の両方とも

s

とした。本研究ではターミナル エ ミュレ ー タ

(TeraTerm)

に よ り シ リ ア ル 通 信 を 行った 。

WIMU

の開発環境は,

Microsoft Windows XP

上で

Microchip Tech- nology

社の

MPLAB IDE

を使用し,

C

言語で記述したプログラム を

MPLAB C30 C

コンパイラによってコンパイルする。

XBee

の設 定 は

Digi International

社 の

X-CTU

に よって 行 う。ま た ,

microSD

カードへの書き込みは

Microchip Technology

社の

File I/O Functions Using Microchip’s Memory Disk Drive File System Library

を 利 用 す る 。こ の ラ イ ブ ラ リ を 使 用 す る こ と に よ り,

microSD

カ ー ド に

FAT

形 式 で デ ー タ の 読 み 書 き を 行 う こ と が 可 能 と な る 。

RF

モジュールの

XBee

1

対多の通信を実現するため,送信側

XBee

の送信先アドレスには同一の

PAN(Personal Area Network)

(29)

ID

内 で の ブ ロ ー ド キャス ト を 意 味 す る

0xFFFF

を 設 定 し た 。ま

た,受信側の

XBee

PAN ID

は送信側の

PAN ID

と同一の値を設

定 し た 。

(30)

! "$#

&%('

) *

+ ,

&

-

.

/

10 243 5

6 798;:<>=@?

A B

DC E

A B

F

A B

FDG

24H I

JKML N

F " OQP

R

S TVU

W$X Y Z

\[1]

Fig.2.4: デ ー タ 計 測 の フ ロ ー チャー ト

(31)

2.5

試作機の動作実験

複数の

WIMU

を用いて同時に計測を行い,開発した

WIMU

同時サンプリングに関する適応性を評価する。スタート及びス トップ 信 号 は ,

TeraTerm

上 で キ ー ボ ー ド の

s’

を 押 す こ と に よ り,

USB

で接続された

RF

モジュールから送信される。今回はセ ン サ の キャリ ブ レ ー ション は 行 わ ず,デ ー タ シ ー ト に 記 載 さ れ て い る 感 度 と オ フ セット 電 圧 を 用 い る こ と で,セ ン サ の 出 力 電 圧 か ら 加 速 度 や 角 速 度 に 変 換 す る 。

2.5.1

単体での動作実験

は じ め に ,

WIMU

単 体 で の 動 作 確 認 を 行 う。

WIMU

の 座 標 軸 の取り方は

Fig.2.5

のように定義する。計測する動作は次の通り で あ る 。

1. WIMU

を 机 の 上 に 静 止 さ せ る 。

2. WIMU

を持ち上げ,

x

軸回りに

+90

度だけ回転させて,机に

2

3

秒 ほ ど 置 く。

3. 2.

の 動 作 を

4

回 行 い ,

x

軸 周 り に

1

回 転 さ せ る 。

4. z

軸 回 り に

+90

度 だ け 回 転 さ せ て ,机 に

2

3

秒 ほ ど 置 く。

(32)

5. 4.

の 動 作 を

4

回 行 い ,

z

軸 周 り に

1

回 転 さ せ る 。

このような動作を行った時の

3

軸加速度

ax

ay

az

Fig.2.6

3

角速度

ωx

ωy

ωz

Fig.2.7

に示す。各センサの校正値は

Table.2.2

で示されるカタログ値を使用した。そのため,ゼロレベルが実 際 の 値 と 異 なって い る 。実 験 動 作 に 対 応 し て ,

x

軸 回 り の 角 速 度

ωx

z

軸 回 り の 角 速 度

ωz

の 順 で

4

回 ず つ ピ ー ク が 発 生 し ,そ の タ イ ミ ン グ で

y

軸 方 向 の 加 速 度

ay

z

軸 方 向 の 加 速 度

az

が 変 化 し て い る こ と か ら ,加 速 度 セ ン サ と ジャイ ロ に つ い て ,そ れ ぞれ高感度タイプと低感度タイプであわせて

12ch

分の測定デー タの保存と単体での動作が正常に行われていることが確認でき る 。ま た ,高 感 度 セ ン サ の 波 形 の ほ う が ,低 感 度 セ ン サ の 波 形 よ り も ノ イ ズ の 影 響 が 少 な い こ と が わ か る 。

また,シグナルジェネレータで生成した振幅

1[V]

,周期

10[ms]

の の こ ぎ り 波 を 全 て の チャン ネ ル に 接 続 す るこ と で,同 一 サ ン プル時刻における,任意のチャンネルにおける計測終了時刻と,

その次のチャンネルにおける計測終了時刻との間の時間差を意

味 す る ,チャン ネ ル 間 ス キュー を 測 定 し た 。チャン ネ ル

1

と チャ

ンネル

7

で計測された波形を

Fig.2.8

に示す。各時刻における

2

のチャンネル間の電圧の差の平均

∆V = 13.2[mV]

であるため,こ

(33)

の 間 の 時 間 差 は

∆t= T

V ×∆V

= 10[ms]

1[V] ×13.2[mV]

= 132[µs] (2.1)

と な り,チャン ネ ル 間 ス キュー は

132[µs]

71[ch] = 22[µs] (2.2)

と なった 。こ の こ と か ら ,

13ch

分 を 計 測 す る の に 要 す る 時 間 は

22[µs]×(131[ch]) = 264[µs] (2.3)

となる。これは,サンプリング周期の

1[ms]

と比較して充分に小

さ い こ と か ら ,開 発 し た

WIMU

は サ ン プ リ ン グ 周 波 数

1[kHz]

利 用 可 能 で あ る こ と が わ か る 。

(34)

Table.2.2: セ ン サ の 校 正 値

部 品 名 型 番 感 度 オ フ セット 電 圧

加 速 度 セ ン サ MMA7261QT 120[mV/G] 1.65[V]

加 速 度 セ ン サ ADXL193 18[mV/G] 120[V]

ジャイ ロ ENC-03RC 0.67[mV/deg/s] 1.35[V]

ジャイ ロ MG3-01Ab 0.2[mV/deg/s] 2.4[V]

(35)

x y z

WIMU

Fig.2.5: WIMUの 座 標 系

(36)

0 5 10 15 20 25 30

−4

−2 0 2

t[s]

a x[G]

0 5 10 15 20 25 30

−4

−2 0 2

t[s]

a y[G]

0 5 10 15 20 25 30

−4

−2 0 2

t[s]

a z[G]

High sensitivity sensor Low sensitivity sensor

+360 +270

+90 +180

+270 +180

+90

+360

Fig.2.6: 単 体 のWIMUで の 動 作 実 験(加 速 度)

(37)

0 5 10 15 20 25 30

−200 0 200 400 600

t[s]

ω x[deg/s]

0 5 10 15 20 25 30

−200 0 200 400 600

t[s]

ω y[deg/s]

0 5 10 15 20 25 30

−200 0 200 400 600

t[s]

ω z[deg/s]

 

 

High sensitivity sensor Low sensitivity sensor

+360 +90 +180 +270

90 180 270

Fig.2.7: 単 体 のWIMUで の 動 作 実 験(角 速 度)

(38)

0 5 10 15 1

1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 2

t[ms]

V[V]

 

CH1   CH7

Fig.2.8: チャン ネ ル 間 ス キュー の 確 認

(39)

2.5.2

複数台での動作実験

次 に ,

WIMU

2

台 同 時 に 使 用 し た 場 合 に つ い て 調 査 す る 。 こ こ で は ,

2

台 の

WIMU

の 姿 勢

(

セ ン サ の 座 標 軸 の 方 向

)

を 一 致 させ,

2

台を重ねたまま動作させることで,

2

台の間で計測され る時間の差を調べる。計測動作は,単体での実験と同じ要領で

x

軸,

y

軸,

z

軸の順に回転を行う。

microSD

カードの容量はどち らの

WIMU

とも同じ

1GB

のものを使用した。高感度センサで計 測 さ れ た 加 速 度 を

Fig.2.9

,高 感 度 セ ン サ で 計 測 さ れ た 角 速 度 を

Fig.2.10

に示す。ここでグラフの線の色は別の

WIMU

で計測され

たデータを示している。単体の実験と同様に,加速度や角速度 が 計 測 さ れ て い る こ と を 確 認 で き る の で ,

2

台 同 時 に 使 用 可 能 で あ る と い え る 。

次 に ,

3

台 の 間 の 時 間 差 を 調 べ る 。こ こ で は

3

台 の

WIMU

それぞれ

WIMU1

WIMU2

WIMU3

と呼ぶことにする。

microSD

カ ー ド は ,

WIMU1

で は

Kingston

社 の

2GB

WIMU2

WIMU3

A-DATA

社 の

1GB

の も の を 使 用 す る 。ま た ,投 球 時 の リ リ ー

ス 時 刻 を 測 定 す る リ リ ー ス セ ン サ の 代わ りに ,シ グ ナ ル ジェネ

レータを接続し,全ての

WIMU

に同一の電圧波形を入力した時

の 計 測 波 形 を 調 べ る 。こ れ に よ り,各

WIMU

間 で の 測 定 開 始 の

タ イ ミ ン グ や ,サ ン プ リ ン グ 周 波 数 の 差 を 調 査 で き る 。シ グ

(40)

ナ ル ジェネ レ ー タ で 生 成 し た 波 形 は

0[V]

か ら

3[V]

ま で 変 化 す る

1[Hz]

の の こ ぎ り 波 で あ る 。計 測 さ れ た 電 圧 波 形 を

Fig.2.11

に 示 す。

Fig.2.11

上は

microSD

カードへの記録開始時刻が等しいと仮 定 し た 場 合 で あ る が ,

WIMU1

は 他 の

WIMU

と 比 べ て

500[ms]

上先に波形が表れている。同じ実験を

5

回行ったが,

WIMU1

で計 測された波形は他の

WIMU

で計測された波形よりも常に

500[ms]

から

600[ms]

だけ早いことが確認された。実際には同一の波形で

あ る か ら ,こ の こ と は

WIMU1

の 計 測 開 始 時 刻 が 遅 れ て い る こ

と を 意 味 す る 。こ の 主 な 原 因 と し て 考 え ら れ る の は ,

microSD

カ ー ド の 容 量 が 異 な る た め ,カ ー ド の 初 期 化 に か か る 時 間 に

差が現れたということである。この問題の解決法は,次節で述

べる。一方,

Fig.2.11

下は

microSD

カードへの記録終了時刻が等

しいと仮定した場合であるが,

5

回の実験で

3

回が

40[ms]

以内の

差に収まり,最大でも

200[ms]

の差であった。また,

WIMU1

と他

WIMU

間でのデータ数の一致は見られなかったが,

WIMU2

WIMU3

の デ ー タ 数 は

5

回 の 実 験 で

3

回 で 一 致 し た 。こ の こ と か

ら ,各

WIMU

の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 に 差 は な い と 考 え る 。

(41)

0 10 20 30 40 50 60

−2

−1 0 1

t[s]

a x[G]

0 10 20 30 40 50 60

−2

−1 0 1

t[s]

a y[G]

0 10 20 30 40 50 60

−2

−1 0 1

t[s]

a z[G]

 

 

WIMU1 WIMU2

Fig.2.9: 2台 のWIMUで の 動 作 実 験(加 速 度)

(42)

0 10 20 30 40 50 60

−300

−200

−100 0 100 200 300

t[s]

ω x[deg/s]

0 10 20 30 40 50 60

−200

−100 0 100 200 300 400

t[s]

ω y[deg/s]

0 10 20 30 40 50 60

−200

−100 0 100 200 300 400

t[s]

ω z[deg/s]

 

 

WIMU1 WIMU2

Fig.2.10: 2台 のWIMUで の 動 作 実 験(角 速 度)

(43)

30000 4000 5000 6000 7000 1

2 3 4

t[ms]

V[V]

 

 

30000 4000 5000 6000 7000

1 2 3 4

t[ms]

V[V]

終了時刻が同時と仮定

 

WIMU1 WIMU2 WIMU3  

WIMU1 WIMU2 WIMU3

Fig.2.11: 3台 のWIMUで の 動 作 実 験(同 期 調 査)

(44)

2.5.3

動作実験に対する考察

複数の

WIMU

を同時に使用した場合,複数の

WIMU

はほぼ同

時 刻 に 測 定 を 開 始・終 了 し ,セ ン サ で 計 測 し た デ ー タ を 取 得 で

きたことから,今回開発した

WIMU

の回路及びプログラムを用

い る こ と で 投 球 動 作 を 計 測 で き る 可 能 性 が 高 い こ と が わ かっ

た 。し か し ,複 数 の

WIMU

で ,計 測 開 始 時 刻 ,計 測 終 了 時 刻 の

どちらも一致していないという問題がある。計測開始時刻が遅

れ る 主 な 原 因 は 上 で 述 べ た よ う に ,

microSD

カ ー ド の 初 期 化 に

要 す る 時 間 が カ ー ド の 容 量 に 依 存 す る か ら で あ る 。そ の た め ,

初期化を行ってから改めて計測開始信号を送る方法を検討する

必要がある。また,計測終了時刻が一致しない原因として推測

さ れ る の は ,マ イ コ ン 側 が 受 信 成 功 し た こ と を コン ピュー タに

知らせるために無線通信を行っていることである。

1

台の

RF

ジュー ル

(

親 機

)

か ら 複 数 の

RF

モ ジュー ル

(

子 機

)

に ブ ロ ー ド キャ

ストした場合,子機に到着する信号の子機間での時間差を測定

し た 結 果 ,

1[ms]

以 下 の 値 と なった 。一 方 ,こ の 時 の 親 機 と 子 機

の間の通信時間は

4[ms]

程度であった。このことから,数十ミリ

秒の時間差の原因は,親機と子機の通信が何度か発生している

ことが考えられる。そのため,センサが動作しているか確認す

る 必 要 が あ る 場 合 に は ,

RF

モ ジュー ル に よ る 無 線 通 信 を 使 わ

(45)

ず に ,

LED

を 点 灯 さ せ る な ど 別 の 方 法 を 選 択 す る 必 要 が あ る 。 こ れ ら の 考 察 よ り,

microSD

カ ー ド の 初 期 化 を 行った 後 に 改 め て 計 測 開 始 信 号 を 送 る 方 法 に 変 更 し ,計 測 開 始 時 に は

RF

ジュー ル に よ る 無 線 通 信 を 行 わ な い こ と で ,計 測 開 始 時 の 同 期 問題は解決された。また,計測開始に

s

,計測終了に

e

を使 用 し ,そ れ 以 外 の 文 字 に よ り ファイ ル 作 成 を 行 う こ と に し た 。

6

面の重力加速度によるキャリブレーション用のファイル作成に

c

を割り当てるなど,数種類の文字には特定の動作計測用の ファイ ル 名 を 設 定 し ,そ れ 以 外 の ア ル ファベット で は ,入 力 し た ア ル ファベット と 計 測 の 試 行 番 号 を 組 み 合 わ せ た ファイ ル 名

( 例:

B2.DAT

)と な る よ う に し た 。ファイ ル 名 と し て 試 行 番 号

のみ記録されている場合,複数回の計測を行う際に通信障害に

よ り 計 測 を 行 わ な かった

WIMU

が 存 在 し た 場 合 ,何 回 目 の 試 行

において計測が行われなかったのかを特定することは困難であ

る 。一 方 ,入 力 し た ア ル ファベット と 計 測 の 試 行 番 号 を 組 み 合

わ せ た ファイ ル 名 と す る 方 法 に よ り,複 数 の

WIMU

で 同 時 計 測

を 行 う 時 に ,通 信 障 害 に よ り 計 測 を 行 わ な かった

WIMU

が 存 在

し た 場 合 で も ,何 回 目 の 試 行 に お い て 計 測 が 行 わ れ なかった の

かを特定することが容易となり,通信障害により計測が行われ

な かった 試 行 以 外 の デ ー タ を 確 保 す る こ と が 可 能 と な る 。

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