スポーツ動作計測に関する研究
(A study on motion capture system of various sports using body-mounted inertial sensors)
弘前大学大学院理工学研究科 博士後期課程
博士論文
2013 年 12 月
北村 政嗣
第
1章 序論
1第
2章 無線慣性計測装置の開発
102.1
緒 言
. . . . 102.2
無 線 慣 性 計 測 装 置 の 概 要
. . . . 132.3
ハ ー ド ウェア 構 成 と 試 作
. . . . 142.4
ソ フ ト ウェア 構 成
. . . . 222.5
試 作 機 の 動 作 実 験
. . . . 272.5.1
単 体 で の 動 作 実 験
. . . . 272.5.2
複 数 台 で の 動 作 実 験
. . . . 352.5.3
動 作 実 験 に 対 す る 考 察
. . . . 402.6
表 面 実 装 に よ る
WIMUの 小 型 化
. . . . 422.7
結 言
. . . . 57第
3章 投球時上肢の動作計測
58i
3.1
緒 言
. . . . 583.2
計 測 原 理
. . . . 593.2.1
固 定 座 標 系 で の 加 速 度 導 出
. . . . 593.2.2
セット ポ ジ ション 時 の
FM算 出 法
. . . . 613.2.3
前 腕 ,上 腕 お よ び 胸 部
WIMUの
FMの 関 係
. 63 3.2.4肘 屈 曲 伸 転 軸 お よ び 肩 内 外 転 軸 の 推 定
. . . 643.2.5
初 期 姿 勢 導 出
. . . . 653.2.6 FM
と 腕 お よ び 体 幹 の 関 係
. . . . 673.2.7
前 腕 ,上 腕 お よ び 胸 部 の 軌 道 推 定 方 法
. . . 683.2.8
速 度 お よ び 位 置 修 正 方 法
. . . . 693.3
実 験 方 法
. . . . 803.4
結 果
. . . . 803.5
考 察
. . . . 823.6
結 言
. . . . 83第
4章 ジャンプ時下肢の動作計測
84 4.1緒 言
. . . . 844.2
計 測 原 理
. . . . 874.2.1
ジャン プ 動 作 推 定 方 法 概 要
. . . . 874.2.2
初 期 姿 勢 推 定 方 法
. . . . 874.2.3
運 動 中 の 姿 勢 推 定 方 法
. . . . 894.2.4
各 関 節 角 度 の 定 義
. . . . 914.3
実 験 方 法
. . . . 964.4
結 果
. . . . 974.5
考 察
. . . . 1104.6
結 言
. . . . 112第
5章 結論
113参考文献
116序論
計測環境を限定せずにヒト の動 作を 計測・解析する技術の確 立は,医療,福祉,健康,スポーツを含む様々な分野において重 要 と なって い る 。特 に ス ポ ー ツ 分 野 で は ,ア ス リ ー ト の 怪 我 や 故障を防ぐために,動作を定量的に分析し,その結果に基づい て動作の改善を行っていくことが必要 とな る
[1]。現在,動作計 測には光学式動作解析装置の利用が一般的である。光学式動作 解析装置は,測定対象を取り囲むように複数台の赤外線カメラ を設置し,測定対象の被験者の関節位置等に赤外線反射マーカ をテープなどで貼り付け,それぞれのカメラで撮影したマーカ の
2次 元 座 標 を 利 用 す る こ と で ,
3次 元 空 間 で の マ ー カ の 位 置
を
1[mm]以下の誤差で測定することが可能であり,大規模病院,
大 学 な ど の 研 究 機 関 ,人 間 工 学 分 野 ,心 理 学 分 野 な ど ,幅 広 い 分野で利用されている。光学式動作解析装置を利用した例とし
1
て ,投 球 動 作 の 計 測 や ,投 球 障 害 の 診 断 が 行 わ れ て い る
[2–5]。 投 球 障 害 は ス ポ ー ツ 障 害 の
1つ で あ り,そ の 主 な 原 因 は 適 切 で はない投球動作であるため,投球障害を予防するためには,適 切な投球動作の指導が不可欠である。このとき,投球動作の指 導には,腕の軌道推定や関節トルクの算出などを行う動作解析 が 有 用 で あ る 。し か し ,投 球 動 作 は 高 速 で あ り,市 販 の ビ デ オ カメラでは計測が困難であるため,専用の計測装置が必要とな る。現在,投球動作の解析に主に使用されている光学式動作解 析装置は,高額で取扱に専門的知識が必要とあるため,学校の 部活などでの利用は困難であり,さらに,計測に赤外線を使用す るため屋外は使用が困難
[4, 5],マーカが外れやすい,複雑な動 作 を 行った り 障 害 物 が 存 在 し た り す る と ,マ ー カ が 撮 影 で き ず 動 作 計 測 が 不 可 能 と な る
[6]な ど ,様々な 問 題 が 存 在 し て い る 。
一方,これまで身体に装着した加速度センサやジャイロ(角速
度センサ)といった慣性センサ,気圧センサ,地磁気センサ等を
利用した身体装着型動作計測装置の研究が行われている
[7–32]。
ICタイプの加速度センサは,弾性要素と粘性減衰要素によって
保持される質量に加速度が作用したとき,質量の慣性力による
変 位 を 材 料 の ひ ず み 量 や 電 気 容 量 の 変 化 と し て 捕 ら え る こ と
で ,物 体 に 作 用 す る 加 速 度 を 測 定 す る こ と が で き る 。ジャイ ロ
は,往復運動する振動素子が回転したときのコリオリ力を測定 することで,角速度を測定することができる。これらのセンサ を 使 用 し た 動 作 計 測 は ,前 述 の 光 学 式 装 置 と 比 較 し て ,簡 便 , 安価,低拘束という利点を持つため,スポーツ分野はもちろん の こ と ,福 祉 ,理 学 療 法 分 野 等 か ら も 期 待 さ れ て お り,現 在 ま でに,ヒトの動作時の関節角度を推定する方法
[7–10]や,行動・
活 動 内 容 を 判 別 す る 方 法
[11–18],歩 行 時 の 歩 行 速 度 等 を 計 測 す る 方 法
[19–28]が 報 告 さ れ て い る 。ま た ,近 年 の
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の発展により,スマートフォンや 腕 時 計 な ど に も 組 み 込 む こ と が 可 能 と な る ほ ど 小 型・軽 量・高 精 度 化 が 進 ん で い る こ と か ら ,今 後 様々な 目 的 の た め ,あ ら ゆ る装置へ組み込まれることが予想される。このように,身体装 着 型 セ ン サ は 今 後 ま す ま す 広 く 利 用 さ れ る こ と が 予 想 さ れ る が ,高 速 な ス ポ ー ツ の
3次 元 高 精 度 無 拘 束 動 作 計 測 に 関 し て は 以 下 の よ う な 問 題 点 が 存 在 す る 。
従来の計測システムは有線のため動 作計 測に悪 影響
慣性センサを利用してヒトの動作を計測するためには,身
体の上下肢に多数のセンサを装着し,測定データを記録す
る 必 要 が あ る が ,こ れ を
1カ 所 の デ ー タ ロ ガ ー に 記 録 す る
ためには複数本の信号ケーブルが必要となるため,動作の
妨 げ と な る 可 能 性 が あ る 。
無線通信技術を用いた実時間でのデ ータ 送信は 困難
有線での計測が動作に悪影響を及ぼすという問題を解決す るためには,測定データの無線送信が考えられる。しかし,
高 サ ン プ リ ン グ 周 波 数 で は 単 位 時 間 当 た り に 計 測 さ れ る データ量が多く,更に測定箇所が増大すると,現在の無線通 信 技 術 を 利 用 し て も 実 時 間 で の デ ー タ 送 信 は 困 難 で あ る 。
高速なスポーツ動作の高精度計測に は工 夫が必 要
ス ポ ー ツ 動 作 は 歩 行 動 作 よ り も 高 速 で あ り,生 じ る 加 速 度 や角速度も広い範囲で発生することから,測定範囲の広い 慣性センサを使用して高サンプリング周波数で計測を行う 必要がある。一方で,測定範囲の広い慣性センサは
SN比が 小さく電気的ノイズの影響を受けやすいため,動作が低速 の 時 に も 精 度 良 く 計 測 を 行 う た め に は 工 夫 が 必 要 で あ る 。
積分誤差の影響により高精度の経路 推定 が困難
慣性センサを利用して運動時の姿勢や移動経路を推定する た め に は ,加 速 度 や 角 速 度 の 数 値 積 分 が 必 要 であ る。し か し,高精度化が進む加速度センサやジャイロを利用しても,
回路のノイズやセンサドリフトなどによる積分誤差を完全
に 除 去 す る こ と は 不 可 能 で あ り,高 精 度 の 経 路 推 定 は 困 難 で あ る 。
そ こ で 本 論 文 で は ,身 体 装 着 型 慣 性 セ ン サ に よ る 高 速 な ス ポ ー ツ の
3次 元 高 精 度 無 拘 束 動 作 計 測を 実現 す るこ と を目 的と し て ,高 速 動 作 に 対 応 す る 無 線 慣 性 計 測 装 置
(Wireless Inertial Measurement Unit: WIMU)を 作 成 し ,上 半 身 の 運 動 で あ る 投 球 動 作 お よ び 下 半 身 の 運 動 で あ る ジャン プ 動 作 を 計 測・解 析 す る
3次 元 動 作 解 析 シ ス テ ム を 開 発 す る 。
ま ず,高 速 動 作 に 対 応 す る た め に ,高 い サ ン プ リ ン グ 周 波 数
を有し,測定範囲の広い慣性センサと,大容量のデータ記録領
域 を 有 す る
WIMUの 開 発 を 行 う。本 論 文 で は ,市 販 の セ ン サ モ
ジュールを統合し,新たな計測装置を設計,作成する。測定デー
タ の 扱 い に つ い て は ,
microSDカ ー ド な ど の 小 型 ス ト レ ー ジ デ
バイスの高容量化と低価格化に伴い,大容量の測定データを実
時間で無線送信せず,装着型センサシステム内にデータを保存
する方法が実用的であると考えられる。このとき,身体各部に
装着したセンサの測定開始や終了などの制御は,無線で行うも
のとする。また,
1対多の無線通信が可能なプロトコルを利用す
る こ と で ,速 い 通 信 速 度 を 必 要 と せ ず,か つ 装 着 さ れ た セ ン サ
の数に制限はなくなる。このような無線センサシステムを利用
す る こ と で ,高 速 な ス ポ ー ツ の
3次 元 無 拘 束 動 作 計 測 が 可 能 に な る と 考 え る 。試 作 機 に よ り ハ ー ド ウェア お よ び ソ フ ト ウェア の評価を行った上で,試作機を基にして,大きさ
50×50×30[mm]以下,質量
50[g]以下と小型軽量化を実現することを目指し,表 面実装基板を利用したセンサシステムを開発し,スポーツ動作 計 測 の 適 用 可 能 性 に つ い て 調 査 す る 。
本論文で対象とするスポーツ動作は,野球の投球動作時の上
半 身 の 動 作 と ,両 足 ジャン プ 時 の 下 半 身 の 動 作 と す る 。有 線 式
の 慣 性 セ ン サ に よ る 投 球 動 作 の 計 測 は,小 田 ら に よって 提 案 さ
れている
[29]。本論文では,
WIMUを利用して投球動作時の慣性
情報を測定するとともに,小田らの方法を適用して投球姿勢お
よび関節トルク推定を行い,
WIMUの適用可能性について調査
す る 。ま た ,ス ポ ー ツ 動 作 計 測 の 際 に は ,姿 勢 に 加 え ,身 体 が
空中に浮いているジャンプ時の経路や飛距離を正確に測定する
こ と が 重 要 で あ る 。こ れ ま で に ,ジャン プ 動 作 を 放 物 運 動 と 仮
定し,腰部に装着した加速度センサから求めた跳躍時間を使用
し て 垂 直 跳 び に お け る 跳 躍 高 を 算 出 す る 方 法
[30]や ,メ ジャー
によって実測した跳躍距離を利用して立ち幅跳びにおける跳躍
角 度 を 算 出 す る 方 法
[31]が 提 案 さ れ て い る が ,い ず れ も 離 陸 時
と着陸時のセンサの高さが同じであるという仮定や,放物運動
を 仮 定 し て い る た め ,着 陸 時 の セ ン サ の 高 さ が 異 な る 場 合 や , 姿勢変化による重心位置の移動,外力の作用による軌道の変化 に 対 し て は 正 確 な 軌 道 の 推 定 は 困 難 であった 。こ の 問 題 を 解 決 するためには身体加速度の積分が有効であるが,積分誤差の蓄 積 に よ り,推 定 経 路 に 大 き な 誤 差 が 生 じ る 可 能 性 が あ る 。一 方 佐川らは,足爪先に取り付けた慣性センサから効果的に積分誤 差 を 除 去 し て 歩 行 時 爪 先 の
3次 元 軌 跡を 導出 す る方 法 を考 案し た
[32]。そ こ で 本 論 文 で は ,そ の 方 法 を ジャン プ 動 作 の 計 測 に 応用するとともに,両脚の拘束条件,離陸時の速度ベクトルの 導出方法,足の接地状態に対応した姿勢推定などの新たなアル ゴ リ ズ ム を 提 案 し て ,立 ち 幅 跳 び を 行った 時 の 体 幹 と 下 肢 の 動 作 推 定 を 試 み る 。
本 研 究 は ,高 速 動 作 に 対 応 す る
WIMUの 開 発 を 行 い ,上 半 身
の 運 動 で あ る 投 球 動 作 と ,下 半 身 の 運 動 で あ る ジャン プ 動 作 の
動作計測法を構築することにより,身体装着型慣性センサによ
る 高 速 な ス ポ ー ツ の
3次 元 高 精 度 無 拘束 動作 計 測を 実 現す るこ
とを目的とする。高精度である光学式動作解析装置の使用が困
難な環境で人間の経路や姿勢の計測が実現すれば,光学式モー
ション キャプ チャで は 困 難 な 屋 外 で の ス ポ ー ツ 動 作 の モ ニ タ リ
ングが可能となり,従来の光学式モーションキャプチャと比較し
て安価で取扱が簡便であるため,スポーツ動作のモニタリング が一般の病院や学校の部活動など広く普及することが期待され る 。そ し て ,パ フォー マ ン ス の 向 上 の 確 認 や 故 障 の 予 防 法 の 検 討 ,リ ハ ビ リ テ ー ション 効 果 の 確 認 な ど に 利 用 す る こ と で ,ス ポ ー ツ や 医 学 ,工 学 な ど の 様々な 分 野 に 貢 献 で き る と 考 え る 。
本 論 文 の 各 章 の 構 成 は 以 下 の 通 り で あ る 。
第
2章 無線慣性計測装置の開発
身体装着型の無線慣性計測装置の開発について述べる。無 線 慣 性 計 測 装 置 の ハ ー ド ウェア 及 び ソ フ ト ウェア 開 発 を 行 い ,そ の 性 能 を 評 価 す る 。ま た ,試 作 機 を 基 に し て 表 面 実 装 に よ り 小 型 化 を 実 現 す る 。
第
3章 投球時上肢の動作計測
慣性センサを使用して投球時の姿勢変化や軌道を推定する 方 法 を 用 い て ,屋 外 で の 投 球 動 作 計 測 に つ い て 述 べる 。人 間 の 上 肢 を
3セ グ メ ン ト モ デ ル と し て モ デ ル 化 し ,体 幹 お よ び 前 腕・上 腕 に 装 着 し た 慣 性 セ ン サ の 加 速 度・角 速 度 よ り,投 球 時 の 姿 勢 変 化 や 軌 道 を 推 定 し て ,
WIMUの 適 用 可 能 性 に つ い て 述 べ る 。
第
4章 ジャンプ時下肢の動作計測
慣性センサを使用してジャンプ 時の 姿勢 変化 や軌 道を 推定 す る 方 法 を 提 案 す る 。人 間 の 下 肢 を
5セ グ メ ン ト モ デ ル と してモデル化し,踵下に装着した圧力センサにより足の接 地 状 況 を 検 出 し ,体 幹 お よ び 両 側 の 大 腿・下 腿 に 装 着 し た 慣性センサの加速度・角速度より,ジャンプ時の姿勢変化や 軌道を推定する。また,光学式モーションキャプチャシステ ムとの同時計測実験により,本手法の計測精度評価を行う。
第
5章 結論
本論文の結果をまとめる。慣性センサにより人間の動作計
測 を 行 う 本 研 究 の 手 法 に よ り,臨 床 へ 応 用 さ せ る 可 能 性 に
つ い て 述 べ る 。
無線慣性計測装置の開発
2.1
緒言
現 在 ,ス ポ ー ツ 等 の 動 作 計 測 に は モ ー ション キャプ チャの よ うな光学式動作解析装置の利用が一般的である。光学式動作解 析 装 置 は ,測 定 対 象 を 取 り 囲 む よ う に 複 数 台 の 赤 外 線 カ メ ラ を 設 置 し ,測 定 対 象 の 被 験 者 の 関 節 位 置 等 に 赤 外 線 反 射 マ ー カをテープなどで貼り付け,それぞれのカメラで撮影したマー カ の
2次 元 座 標 を 利 用 す る こ と で ,各 時 刻 に お け る
3次 元 空 間 でのマーカの位置を
1[mm]以下の誤差で測定 する こと が可 能で あ る 。一 方 で ,光 学 式 動 作 解 析 装 置 は ,高 額 で 取 扱 に 専 門 的 知 識 が 必 要 で あ る た め ,学 校 の 部 活 な ど で の 利 用 は 困 難 で あ り,
さ ら に ,計 測 に 赤 外 線 を 使 用 す る た め 屋 外 は 使 用 が 困 難
[4, 5], マ ー カ が 外 れ や す い ,複 雑 な 動 作 を 行った り 障 害 物 が 存 在 し た り す る と ,マ ー カ が 撮 影 で き ず 動 作 計 測 が 不 可 能 と な る
[6]な
10
ど ,様々な 問 題 が 存 在 し て い る 。そ の た め ,身 体 に 装 着 し た 加 速度センサやジャイロ(角速度センサ)といった慣性センサ,気 圧センサ,地磁気センサ等を利用した身体 装着 型動 作計 測装置 の 研 究 が 行 わ れ て い る
[7–32]。一 方 で ,身 体 装 着 型 の 装 置 を 利 用 し た 高 速 な ス ポ ー ツ の
3次 元 高 精 度無 拘束 動 作計 測 を実 現す る 際 に は ,以 下 の よ う な 問 題 点 が 存 在 す る 。
従来の計測システムは有線のため動 作計 測に悪 影響
慣性センサを利用してヒトの動作を計測するためには,身 体 の 上 下 肢 に 多 数 の セ ン サ を 装 着 し ,測 定 デ ー タ を 記 録 す る 必 要 が あ る 。従 来 ,無 線 慣 性 計 測 装 置 は 一 般 的 で は な く,身 体 に 装 着 し た 慣 性 セ ン サ は
ADコ ン バ ー タ を 内 蔵 し たデータ計測用のコンピュータ とケ ーブ ルに より 有線 接続 されていたため,ケーブルによる拘束感により動作計測に 悪 影 響 を 及 ぼ す 点 や ,ケ ー ブ ル の 長 さ に よって 計 測 場 所 が 拘 束 さ れ る 点 が 問 題 で あった 。
高速なスポーツ動作の高精度計測に は工 夫が必 要
野球の投球動作において,例えば
150[km/s]での投球の場合 の
1サ ン プ ル 間 の 手 先 の 移 動 量 は ,サ ン プ リ ン グ 周 波 数 が
100[Hz]の場合は
42[cm]であり,
1[kHz]の場合は
4[cm]である。
こ の こ と か ら ,野 球 の 投 球 動 作 の よ う な 高 速 動 作 では ,高
速 な 動 作 を 計 測 す る た め に は
1[kHz]と い う 高 サ ン プ リ ング 周 波 数 で の 計 測 が 必 要 で あ る 。ま た ,高 速 動 作 で は ,加 速 度や角速度は広い範囲で発生することから,測定範囲の広 い低感度タイプの慣性センサを使用する必要がある。一方,
低感度タイプの慣性センサは電気的ノイズの影響を受けや す い た め ,動 作 が 低 速 の 時 は ,狭 い 測 定 範 囲 を 高 精 度 で 計 測可能な高感度タイプの慣性センサを併用するなど,工夫 が 必 要 で あ る 。し か し ,計 測 す る 信 号 の 本 数 が 増 加 す る た め ,ケ ー ブ ル が 幅 が 太 く な り,重 量 が 増 す こ と で 拘 束 感 が 増 加 す る と い う 問 題 も あ る 。ま た ,当 時 市 販 さ れ て い た 無 線慣性計測装置では
100[Hz]程度のサンプリング周波数まで し か 利 用 で き ず,慣 性 セ ン サ の 測 定 範 囲 も 狭 く,ス ポ ー ツ 動 作 計 測 に は 不 適 で あった 。
無線通信技術を用いた実時間でのデ ータ 送信は 困難
慣性センサで計測したデータの無線送信を考える。例えば,
1
カ所の動作を測定する際,サンプリング周波数を
1[kHz]と
し,測定範囲の異なる
3軸加速度センサおよび
3軸ジャイロ
を
2種類利用し,
12[bit]の精度でデータロガーに測定データ
を無線送信する場合,無線通信速度は通信失敗が全くない
状 態 で も 最 低
240[kbit/s]程 度 必 要 で あ る 。測 定 箇 所 が さ ら
に増大すると,現在の無線通信技術を利用しても実時間で の デ ー タ 送 信 は 困 難 で あ る 。
そこで本章では,身体装着型慣性センサによる高速なスポー ツ の
3次 元 高 精 度 無 拘 束 動 作 計 測 を 実現 する こ とを 目 的と して 開発した,無線慣性計測装置
(Wireless Inertial Measurement Unit:WIMU)
について述べる。
WIMUの仕様を決定し,作製した試作
機 に よ り ハ ー ド ウェア 及 び ソ フ ト ウェア の 評 価 を 行った 。ま た , 試 作 機 を 基 に し て 表 面 実 装 に よ り 小 型 化 を 実 現 し た 。
2.2
無線慣性計測装置の概要
装 着 式 動 作 解 析 装 置 は ,慣 性 セ ン サ( 加 速 度 セ ン サ・ジャイ ロ),センサからの信号を計測・保存するマイコン・メモリ,計 測制御のための無線通信モジュール
(Radio Frequency module: RFモ ジュー ル
)に よって 構 成 さ れ る
WIMUと ,
WIMUに よって 計 測 さ れ た デ ー タ を 処 理・解 析 す る コ ン ピュー タ シ ス テ ム か ら 構 成 される。計測された加速度と角速度を用いて数値計算を行うこ と で ,動 作 中 の
3次 元 位 置 や 姿 勢 な ど を 推 定 す る 。
投球動作のような高速動作の場合,光学式動作解析装置のフ
レームレートに相当するサンプリング周波数は
1[kHz]以上とい
う要求がある。また,動作に影響を与えないためには
WIMUが
小 型・軽 量 で あ る 必 要 が あ り,ケ ー ブ ル に よ る 拘 束 感 は な る べ く 抑 え ら れ な け れ ば な ら な い 。さ ら に ,低 速 動 作 か ら 高 速 動 作 ま で ,広 い 範 囲 で の 加 速 度 お よ び 角 速 度 の 測 定 が 必 要 で あ る。これら全ての要求を満足するため,以下の仕様を実現する
WIMUを 開 発 す る 。
1.
計 測 の 開 始 と 終 了 は
RFモ ジュー ル に よって 制 御 さ れ る 。
2.慣性センサの計測データは高感度,低感度の両方ともマイ
コ ン で
AD変 換 し て 取 り 込 ま れ る 。
3.
加 速 度
100[G]以 上 ,角 速 度
6000[deg/s]以 上 に 対 応 。
4.
取 り 込 ま れ た デ ー タ は バ イ ナ リ 形 式 で
microSDカ ー ド に 書 き 込 ま れ る 。
2.3
ハードウェア構成と試作
WIMU
の ハ ー ド ウェア 構 成 を
Fig.2.1に 示 す。前 節 で 述 べ た 機 能 を 実 現 す る
WIMUを 開 発 す る た め ,マ イ コ ン は
Microchip Technology社 の
dsPIC33FJ128GP802を 使 用 す る 。こ の マ イ コ ン は ,
12ビット の
AD変 換 に 使 用 で き る ピ ン は
10本 で あ り,
RAMは
16384バイトである。また,このマイコンは電源電圧が
3.3[V]で あ り,
5[V]の 電 源 を 使 用 す る セ ン サ の 電 圧 を 直 接
AD変 換 す
る こ と は で き ず,セ ン サ の 出 力 イ ン ピ ー ダ ン ス も 無 視 で き な
い た め ,
Fig.2.2に 示 す よ う に ,セ ン サ の 出 力 端 子 に ボ ル テ ー ジ
フォロ ア を 通 し た 後 で 抵 抗 に よ り 分 圧 し ,
3.3[V]以 下 に 電 圧 を
低 下 さ せ る 必 要 が あ る 。加 速 度 セ ン サ や ジャイ ロ は
3軸 の デ ー
タ を 計 測 す る た め ,
1種 類 あ た り
3本 の 出 力 と な る 。ま た ,広
範囲で加速度や角速度を検出するセンサは検出感度が低く,ノ
イ ズ に よ る 影 響 が 大 き い た め ,検 出 範 囲 の 広 い セ ン サ と 検 出
感度が高いセンサを併用する必要がある。このことから,使用
す る
3Dセ ン サ は
2種 類 の 加 速 度 セ ン サ と
2種 類 の ジャイ ロ を 使
用 す る 。加 速 度 セ ン サ は 高 感 度 タ イ プ
(MMA7261QT,
Freescale Semiconductor社 ,検 出 範 囲
5[G],感 度
480[mV/G],
3軸 低 加 速 度
センサ
)を
1個と,低感度タイプ
(ADXL193,
ANALOG DEVICES社,検出範囲
120[G],感度
18[mV/G],
1軸高加速度センサ
)を
3個
使 用 す る 。ジャイ ロ は 高 感 度 タ イ プ
(ENC-03RC,富 山 村 田 製 作
所 ,検 出 範 囲
300[deg/sec],感 度
0.67[mV/deg/sec],
1軸 圧 電 振 動
ジャイロ
)3個と,低感度タイプ
(MG3-01Ab,
MicroStone社,検出
範囲
4000[deg/sec],感度
0.2[mV/deg/sec],
3軸ジャイロセンサ
)を
1個使用する。これらのセンサの出力数の合計は
12本となる。一
方 ,使 用 す る マ イ コ ン で は ,
AD変 換 用 の 入 力 ピ ン を
10本 し か
持っていない。そのため,
6入力
3出力のマルチプレクサ
(MUX)を使用し,仮想的に入力を
12本以上にする。ここでは,マルチ プ レ ク サ は マ イ コ ン の
AD変 換 入 力 の チャン ネ ル
8,
9,
10に 接 続し,入力を
13本とする。センサで計測された電圧データはマ イ コ ン に よって
12ビット で
AD変 換 さ れ る た め ,
12chの デ ー タ を
1[kHz]サ ン プ リ ン グ で 取 得 す る 場 合 の デ ー タ 量 は
1秒 間 あ た り
24000バ イ ト と な る 。こ れ を 無 線 で 通 信 す る 場 合 ,ス タ ー ト ビットやストップビットなどを考慮すると,転送速度は
240[kbps]以 上 必 要 で あ る た め ,
AD変 換 し た デ ー タ を 無 線 で 逐 次 送 信 す る の は 困 難 で あ る と 考 え る 。こ の た め ,
microSDカ ー ド に デ ー タを書き込む方法を使用する。
RFモジュールは
IEEE802.15.4規 格 に 準 拠 し た
MaxStream社 の
XBeeを 使 用 す る 。こ れ ま で 述 べ たハードウェア構成の回路を実際に組み立てた試作機の写真を
Fig.2.3に ,部 品 表 を
Table.2.1に 示 す。基 板 中 央 に マ イ コ ン を 配 置 し ,
microSDカ ー ド に デ ー タ を 記 録 す る た め の カ ー ド ラ イ タ は基板右上,
RFモジュールは基板右下に配置した。写真左下に あ る の が ジャイ ロ セ ン サ で あ る
MG3-01Abで ,そ の 右 隣 に あ る の は 他 の セ ン サ を 実 装 し た セ ン サ ユ ニット で あ る 。ま た ,写 真 右 側 に あ る の は 単
4電 池 が
3本 入 る 電池 ケ ース で あり,こ れ を
2個 直 列 に 接 続 し ,
3端 子 レ ギュレ ー タ を 使 用 す る こ と で
5[V]や
3.3[V]
の電圧を生成する。この試作機によってハードウェア並び
に次節で述べるソフトウェアに関して,動作検証を行った後に,
表 面 実 装 に よって 小 型 化 を 行 う。
Microcomputer microSD
MUX
sensors Voltage
divider
(Additional AD port)
3 7
4 9 8 10
1 6 RF module
3D Accelerometer High sensitivity 3D Accelerometer Low sensitivity
3D Gyroscope High sensitivity 3D Gyroscope Low sensitivity H/L
Fig.2.1: WIMUの ハ ー ド ウェア 構 成
+
sensor
Micro controller 220
390
Fig.2.2: 分 圧 回 路 。分 圧 比390/610
Battery
3D sensor RF module
Gyroscope
Microcontroller MicroSD
Fig.2.3: 動 作 検 証 の た め のWIMU試 作 機
Table.2.1: WIMU試 作 機 の 部 品 表
部 品 名 型 番 メ ー カ 仕 様
マ イ コ ン dsPIC33FJ128GP802 Microchip Technology
加 速 度 セ ン サ MMA7261QT Freescale Semiconductor ±5[G]
加 速 度 セ ン サ ADXL193 ANALOG DEVICES ±120[G]
ジャイ ロ ENC-03RC 富 山 村 田 製 作 所 ±300[deg/s]
ジャイ ロ MG3-01Ab MicroStone ±4000[deg/s]
RFモ ジュー ル XBee MaxStream
2.4
ソフトウェア構成
Fig.2.4
に
WIMUの 計 測 の 流 れ を 示 す。
WIMUは ,計 測 開 始 信 号 を 受 信 す る と ,
UARTの 割 り 込 み に よ り 動 作 を 開 始 す る 。は じ め に
microSDカ ー ド の 初 期 化 を 行 い ,計 測 デ ー タ を 記 録 す る ファイルを開き,計測のためのタイマー割り込みを開始させる。
1[ms]
のタイマー割り込みにより,マルチプレクサ
(MUX)を使用
して
13ch分の
12bit AD変換を行い,情報量の圧縮などは行わず
に ,
1chあ た り
2バ イ ト の バ イ ナ リ デ ー タ と し て バッファに 一 時 保存し,バッファにデータが溜まったら
microSDカードへの書き 込 み を 行 う。
WIMUが 計 測 終 了 信 号 を 受 信 す る と ,タ イ マ ー 割 り 込 み を 停 止 さ せ て 計 測 を 終 了 す る 。
マ ル チ プ レ ク サ を 使 用 し て
13ch分 の セ ン サ 出 力 の
AD変 換 を
行 う 方 法 に つ い て 説 明 す る 。
Fig.2.1に 示 す よ う に ,高 感 度 タ イ
プの加速度センサがチャンネル
1,
2,
3に,高感度タイプのジャ
イ ロ が チャン ネ ル
4,
5,
6に 接 続 さ れ て お り,チャン ネ ル
7は 外
部のセンサが接続可能な拡張入力である。また,マルチプレク
サ の 制 御 信 号 が
Lレ ベ ル の 時 は 低 感 度 の 加 速 度 セ ン サ,
Hレ ベ
ルの時は低感度のジャイロの出力が選択されてチャンネル
8,
9,
10に 入 力 さ れ る 。こ の た め ,ま ず,マ ル チ プ レ ク サ の 制 御 信 号
が
Lの 状 態 で ,チャン ネ ル
1か ら
10ま で 順 に
AD変 換 を 行い ,高
感 度 タ イ プ の 加 速 度 セ ン サ,高 感 度 タ イ プ の ジャイ ロ ,拡 張 入 力 ,低 感 度 の 加 速 度 セ ン サ,合 わ せ て
10ch分 の セ ン サ の 出 力 を 取 り 込 む 。次 に ,マ ル チ プ レ ク サ の 制 御 信 号 を
Hと し て ,チャ ンネル
8から
10まで順に
AD変換を行い,低感度のジャイロの出 力
3ch分 を 取 り 込 む 。こ の 方 法 を 用 い る こ と で ,マ イ コ ン 単 体 では
10本である
AD変換用の入力を仮想的に
13本に増やすこと が 可 能 と な り,加 速 度 セ ン サ と ジャイ ロ に つ い て ,そ れ ぞ れ 高 感 度 タ イ プ と 低 感 度 タ イ プ で あ わ せ て
12chと ,拡 張 入 力 の
1chの 合 計
13chの 計 測 が 可 能 と な る 。
次に,計測データを一時保存するバッファについて説明する。
一 般 に ,記 憶 装 置 に デ ー タ の 書 き 込 み を 行って い る 間 に ,新 た
に計測したデータが書き込み中のデータを上書きすると,デー
タが正常に記録されない。そのため,
2個のバッファを使用する
ダブルバッファ方式を採用する。一方のバッファに計測データを
溜 め て い き ,そ の バッファが 埋 まった ら ,計 測 デ ー タ を 溜 め る
バッファを 他 方 の バッファに 切 り 替 え ,空 き 時 間 を 見 つ け て 埋
まったバッファのデータを
microSDカードに書き込む。マイコン
の
RAMが
16384バ イ ト で あ り,プ ロ グ ラ ム に 必 要 な 領 域 も あ る
こ と を 考 慮 し ,ダ ブ ル バッファと し て
7000バ イ ト の バッファを
2個 使 用 す る 。
12ビット の 精 度 で
13チャン ネ ル の ア ナ ロ グ デ ー タ
を
1[kHz]のサンプリング周波数で計測すると,バッファへのテー タの蓄積速度は
26[kByte/s]である。一方,マイコンから
microSDカ ー ド へ の デ ー タ 転 送 速 度 は
SPI通 信 プ ロト コ ルの 仕 様よ り最 高
400[kbit/s]で あ る か ら ,お よ そ
40[kByte/s]と 見 積 も る こ と が で き る 。こ の こ と か ら ,測 定 デ ー タ の
microSDカ ー ド へ の 転 送 速 度 は 十 分 で あ る と 考 え る 。
計 測 開 始 信 号 や 計 測 終 了 信 号 と いった
WIMU制 御 信 号 は
1文 字の半角英字(
1バイト)とした。試作機の動作実験では,計測 開始と計測終了の両方とも
sとした。本研究ではターミナル エ ミュレ ー タ
(TeraTerm)に よ り シ リ ア ル 通 信 を 行った 。
WIMU
の開発環境は,
Microsoft Windows XP上で
Microchip Tech- nology社の
MPLAB IDEを使用し,
C言語で記述したプログラム を
MPLAB C30 Cコンパイラによってコンパイルする。
XBeeの設 定 は
Digi International社 の
X-CTUに よって 行 う。ま た ,
microSDカードへの書き込みは
Microchip Technology社の
File I/O Functions Using Microchip’s Memory Disk Drive File System Libraryを 利 用 す る 。こ の ラ イ ブ ラ リ を 使 用 す る こ と に よ り,
microSDカ ー ド に
FAT形 式 で デ ー タ の 読 み 書 き を 行 う こ と が 可 能 と な る 。
RF
モジュールの
XBeeで
1対多の通信を実現するため,送信側
の
XBeeの送信先アドレスには同一の
PAN(Personal Area Network)ID
内 で の ブ ロ ー ド キャス ト を 意 味 す る
0xFFFFを 設 定 し た 。ま
た,受信側の
XBeeの
PAN IDは送信側の
PAN IDと同一の値を設
定 し た 。
! "$#
&%('
) *
+ ,
&
-
.
/
10 243 5
6 798;:<>=@?
A B
DC E
A B
F
A B
FDG
24H I
JKML N
F " OQP
R
S TVU
W$X Y Z
\[1]
Fig.2.4: デ ー タ 計 測 の フ ロ ー チャー ト
2.5
試作機の動作実験
複数の
WIMUを用いて同時に計測を行い,開発した
WIMUの 同時サンプリングに関する適応性を評価する。スタート及びス トップ 信 号 は ,
TeraTerm上 で キ ー ボ ー ド の
s’を 押 す こ と に よ り,
USBで接続された
RFモジュールから送信される。今回はセ ン サ の キャリ ブ レ ー ション は 行 わ ず,デ ー タ シ ー ト に 記 載 さ れ て い る 感 度 と オ フ セット 電 圧 を 用 い る こ と で,セ ン サ の 出 力 電 圧 か ら 加 速 度 や 角 速 度 に 変 換 す る 。
2.5.1
単体での動作実験
は じ め に ,
WIMU単 体 で の 動 作 確 認 を 行 う。
WIMUの 座 標 軸 の取り方は
Fig.2.5のように定義する。計測する動作は次の通り で あ る 。
1. WIMU
を 机 の 上 に 静 止 さ せ る 。
2. WIMU
を持ち上げ,
x軸回りに
+90度だけ回転させて,机に
2
,
3秒 ほ ど 置 く。
3. 2.
の 動 作 を
4回 行 い ,
x軸 周 り に
1回 転 さ せ る 。
4. z
軸 回 り に
+90度 だ け 回 転 さ せ て ,机 に
2,
3秒 ほ ど 置 く。
5. 4.
の 動 作 を
4回 行 い ,
z軸 周 り に
1回 転 さ せ る 。
このような動作を行った時の
3軸加速度
ax,
ay,
azを
Fig.2.6,
3軸 角速度
ωx,
ωy,
ωzを
Fig.2.7に示す。各センサの校正値は
Table.2.2で示されるカタログ値を使用した。そのため,ゼロレベルが実 際 の 値 と 異 なって い る 。実 験 動 作 に 対 応 し て ,
x軸 回 り の 角 速 度
ωx,
z軸 回 り の 角 速 度
ωzの 順 で
4回 ず つ ピ ー ク が 発 生 し ,そ の タ イ ミ ン グ で
y軸 方 向 の 加 速 度
ayと
z軸 方 向 の 加 速 度
azが 変 化 し て い る こ と か ら ,加 速 度 セ ン サ と ジャイ ロ に つ い て ,そ れ ぞれ高感度タイプと低感度タイプであわせて
12ch分の測定デー タの保存と単体での動作が正常に行われていることが確認でき る 。ま た ,高 感 度 セ ン サ の 波 形 の ほ う が ,低 感 度 セ ン サ の 波 形 よ り も ノ イ ズ の 影 響 が 少 な い こ と が わ か る 。
また,シグナルジェネレータで生成した振幅
1[V],周期
10[ms]の の こ ぎ り 波 を 全 て の チャン ネ ル に 接 続 す るこ と で,同 一 サ ン プル時刻における,任意のチャンネルにおける計測終了時刻と,
その次のチャンネルにおける計測終了時刻との間の時間差を意
味 す る ,チャン ネ ル 間 ス キュー を 測 定 し た 。チャン ネ ル
1と チャ
ンネル
7で計測された波形を
Fig.2.8に示す。各時刻における
2つ
のチャンネル間の電圧の差の平均
∆V = 13.2[mV]であるため,こ
の 間 の 時 間 差 は
∆t= T
V ×∆V
= 10[ms]
1[V] ×13.2[mV]
= 132[µs] (2.1)
と な り,チャン ネ ル 間 ス キュー は
132[µs]7−1[ch] = 22[µs] (2.2)
と なった 。こ の こ と か ら ,
13ch分 を 計 測 す る の に 要 す る 時 間 は
22[µs]×(13−1[ch]) = 264[µs] (2.3)
となる。これは,サンプリング周期の
1[ms]と比較して充分に小
さ い こ と か ら ,開 発 し た
WIMUは サ ン プ リ ン グ 周 波 数
1[kHz]で
利 用 可 能 で あ る こ と が わ か る 。
Table.2.2: セ ン サ の 校 正 値
部 品 名 型 番 感 度 オ フ セット 電 圧
加 速 度 セ ン サ MMA7261QT 120[mV/G] 1.65[V]
加 速 度 セ ン サ ADXL193 18[mV/G] 120[V]
ジャイ ロ ENC-03RC 0.67[mV/deg/s] 1.35[V]
ジャイ ロ MG3-01Ab 0.2[mV/deg/s] 2.4[V]
x y z
WIMU
Fig.2.5: WIMUの 座 標 系
0 5 10 15 20 25 30
−4
−2 0 2
t[s]
a x[G]
0 5 10 15 20 25 30
−4
−2 0 2
t[s]
a y[G]
0 5 10 15 20 25 30
−4
−2 0 2
t[s]
a z[G]
High sensitivity sensor Low sensitivity sensor
+360 +270
+90 +180
+270 +180
+90
+360
Fig.2.6: 単 体 のWIMUで の 動 作 実 験(加 速 度)
0 5 10 15 20 25 30
−200 0 200 400 600
t[s]
ω x[deg/s]
0 5 10 15 20 25 30
−200 0 200 400 600
t[s]
ω y[deg/s]
0 5 10 15 20 25 30
−200 0 200 400 600
t[s]
ω z[deg/s]
High sensitivity sensor Low sensitivity sensor
+360 +90 +180 +270
90 180 270
Fig.2.7: 単 体 のWIMUで の 動 作 実 験(角 速 度)
0 5 10 15 1
1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 2
t[ms]
V[V]
CH1 CH7
Fig.2.8: チャン ネ ル 間 ス キュー の 確 認
2.5.2
複数台での動作実験
次 に ,
WIMUを
2台 同 時 に 使 用 し た 場 合 に つ い て 調 査 す る 。 こ こ で は ,
2台 の
WIMUの 姿 勢
(セ ン サ の 座 標 軸 の 方 向
)を 一 致 させ,
2台を重ねたまま動作させることで,
2台の間で計測され る時間の差を調べる。計測動作は,単体での実験と同じ要領で
x軸,
y軸,
z軸の順に回転を行う。
microSDカードの容量はどち らの
WIMUとも同じ
1GBのものを使用した。高感度センサで計 測 さ れ た 加 速 度 を
Fig.2.9,高 感 度 セ ン サ で 計 測 さ れ た 角 速 度 を
Fig.2.10
に示す。ここでグラフの線の色は別の
WIMUで計測され
たデータを示している。単体の実験と同様に,加速度や角速度 が 計 測 さ れ て い る こ と を 確 認 で き る の で ,
2台 同 時 に 使 用 可 能 で あ る と い え る 。
次 に ,
3台 の 間 の 時 間 差 を 調 べ る 。こ こ で は
3台 の
WIMUを
それぞれ
WIMU1,
WIMU2,
WIMU3と呼ぶことにする。
microSDカ ー ド は ,
WIMU1で は
Kingston社 の
2GB,
WIMU2と
WIMU3で
は
A-DATA社 の
1GBの も の を 使 用 す る 。ま た ,投 球 時 の リ リ ー
ス 時 刻 を 測 定 す る リ リ ー ス セ ン サ の 代わ りに ,シ グ ナ ル ジェネ
レータを接続し,全ての
WIMUに同一の電圧波形を入力した時
の 計 測 波 形 を 調 べ る 。こ れ に よ り,各
WIMU間 で の 測 定 開 始 の
タ イ ミ ン グ や ,サ ン プ リ ン グ 周 波 数 の 差 を 調 査 で き る 。シ グ
ナ ル ジェネ レ ー タ で 生 成 し た 波 形 は
0[V]か ら
3[V]ま で 変 化 す る
1[Hz]の の こ ぎ り 波 で あ る 。計 測 さ れ た 電 圧 波 形 を
Fig.2.11に 示 す。
Fig.2.11上は
microSDカードへの記録開始時刻が等しいと仮 定 し た 場 合 で あ る が ,
WIMU1は 他 の
WIMUと 比 べ て
500[ms]以 上先に波形が表れている。同じ実験を
5回行ったが,
WIMU1で計 測された波形は他の
WIMUで計測された波形よりも常に
500[ms]から
600[ms]だけ早いことが確認された。実際には同一の波形で
あ る か ら ,こ の こ と は
WIMU1の 計 測 開 始 時 刻 が 遅 れ て い る こ
と を 意 味 す る 。こ の 主 な 原 因 と し て 考 え ら れ る の は ,
microSDカ ー ド の 容 量 が 異 な る た め ,カ ー ド の 初 期 化 に か か る 時 間 に
差が現れたということである。この問題の解決法は,次節で述
べる。一方,
Fig.2.11下は
microSDカードへの記録終了時刻が等
しいと仮定した場合であるが,
5回の実験で
3回が
40[ms]以内の
差に収まり,最大でも
200[ms]の差であった。また,
WIMU1と他
の
WIMU間でのデータ数の一致は見られなかったが,
WIMU2と
WIMU3の デ ー タ 数 は
5回 の 実 験 で
3回 で 一 致 し た 。こ の こ と か
ら ,各
WIMUの サ ン プ リ ン グ 周 波 数 に 差 は な い と 考 え る 。
0 10 20 30 40 50 60
−2
−1 0 1
t[s]
a x[G]
0 10 20 30 40 50 60
−2
−1 0 1
t[s]
a y[G]
0 10 20 30 40 50 60
−2
−1 0 1
t[s]
a z[G]
WIMU1 WIMU2
Fig.2.9: 2台 のWIMUで の 動 作 実 験(加 速 度)
0 10 20 30 40 50 60
−300
−200
−100 0 100 200 300
t[s]
ω x[deg/s]
0 10 20 30 40 50 60
−200
−100 0 100 200 300 400
t[s]
ω y[deg/s]
0 10 20 30 40 50 60
−200
−100 0 100 200 300 400
t[s]
ω z[deg/s]
WIMU1 WIMU2
Fig.2.10: 2台 のWIMUで の 動 作 実 験(角 速 度)
30000 4000 5000 6000 7000 1
2 3 4
t[ms]
V[V]
30000 4000 5000 6000 7000
1 2 3 4
t[ms]
V[V]
終了時刻が同時と仮定
WIMU1 WIMU2 WIMU3
WIMU1 WIMU2 WIMU3
Fig.2.11: 3台 のWIMUで の 動 作 実 験(同 期 調 査)
2.5.3
動作実験に対する考察
複数の
WIMUを同時に使用した場合,複数の
WIMUはほぼ同
時 刻 に 測 定 を 開 始・終 了 し ,セ ン サ で 計 測 し た デ ー タ を 取 得 で
きたことから,今回開発した
WIMUの回路及びプログラムを用
い る こ と で 投 球 動 作 を 計 測 で き る 可 能 性 が 高 い こ と が わ かっ
た 。し か し ,複 数 の
WIMUで ,計 測 開 始 時 刻 ,計 測 終 了 時 刻 の
どちらも一致していないという問題がある。計測開始時刻が遅
れ る 主 な 原 因 は 上 で 述 べ た よ う に ,
microSDカ ー ド の 初 期 化 に
要 す る 時 間 が カ ー ド の 容 量 に 依 存 す る か ら で あ る 。そ の た め ,
初期化を行ってから改めて計測開始信号を送る方法を検討する
必要がある。また,計測終了時刻が一致しない原因として推測
さ れ る の は ,マ イ コ ン 側 が 受 信 成 功 し た こ と を コン ピュー タに
知らせるために無線通信を行っていることである。
1台の
RFモ
ジュー ル
(親 機
)か ら 複 数 の
RFモ ジュー ル
(子 機
)に ブ ロ ー ド キャ
ストした場合,子機に到着する信号の子機間での時間差を測定
し た 結 果 ,
1[ms]以 下 の 値 と なった 。一 方 ,こ の 時 の 親 機 と 子 機
の間の通信時間は
4[ms]程度であった。このことから,数十ミリ
秒の時間差の原因は,親機と子機の通信が何度か発生している
ことが考えられる。そのため,センサが動作しているか確認す
る 必 要 が あ る 場 合 に は ,
RFモ ジュー ル に よ る 無 線 通 信 を 使 わ
ず に ,
LEDを 点 灯 さ せ る な ど 別 の 方 法 を 選 択 す る 必 要 が あ る 。 こ れ ら の 考 察 よ り,
microSDカ ー ド の 初 期 化 を 行った 後 に 改 め て 計 測 開 始 信 号 を 送 る 方 法 に 変 更 し ,計 測 開 始 時 に は
RFモ ジュー ル に よ る 無 線 通 信 を 行 わ な い こ と で ,計 測 開 始 時 の 同 期 問題は解決された。また,計測開始に
s,計測終了に
eを使 用 し ,そ れ 以 外 の 文 字 に よ り ファイ ル 作 成 を 行 う こ と に し た 。
6面の重力加速度によるキャリブレーション用のファイル作成に
c