■アブストラクト
近時,生命保険会社・損害保険会社の⽛告知義務に係る募集・解除(支 払)実務⽜は,保険法制定と保険金不払い問題という⚒つの事象により,大 きく変容した。
募集実務の変容点としては,分かりやすい告知書の志向,告知環境の整備,
告知サポート資料の提供等を,解除(支払)実務の変容点としては,私法
(保険法)・約款等基礎書類に従った対応,募集時の状況に鑑みた支払判断,
始期前発病不担保に係る情報提供を,それぞれ挙げることができる。
保険会社が告知義務違反解除の可否等を検証するに当たり,精緻な法律的 検証(法律論)は重要であるが,⽛アンフェア・信義則(禁反言の原則)⽜の ような常識論的・感覚論的観点の重要性は⽛保険金不払い問題⽜からの教訓 であり,現在の保険会社実務においても,忘れず・変わらず,重要視される べきものである。
■キーワード
告知義務,保険法制定,保険金不払い問題
⚑.はじめに
本年(2018年)は,保険法制定・公布(2008年)から10年目の年であるが,
このいわば節目に,保険法により相応の見直しが行われ,かつ実務上の関心 も高い,⽛告知義務⽜を振り返ることとする。
保険法制定10年で振り返る,告知義務に 係る募集・解除(支払)実務の近時の変容
錦 野 裕 宗
近時,保険会社の告知義務に係る募集・解除(支払)の実務は,真に大き く変容し,顧客保護の観点から適切かつ望ましい姿に近づきつつある。
保険法制定が,その変容に大きく寄与したことは,疑いのないところであ る。
一方,2005年に顕在化した保険会社の保険金不払い問題も,保険法制定同 様,⽛告知義務に係る募集・解除(支払)実務の近時の変容⽜に大きな影響 を与えている。
保険法の見直し(制定)の検討は,公式には,2006年⚙月⚖日,法制審議 会第150回会議で,法務大臣から保険法の見直しに係る要綱を求める諮問
(諮問第78号)がなされ,法制審議会により保険法部会(部会長:山下友信 東京大学教授)が設置されたことにより始まった
1)。正に,保険金不払い問 題の真っ只中の時期に,保険法の見直し(制定)の検討は開始されたのであ る。保険金不払い問題が,保険法の見直し(制定)に影響を与えた部分もあ り(間接),また,直接に実務に影響を与えた部分もあり(直接),いずれに しても,保険金不払い問題に触れることなく,⽛告知義務に係る募集・解除
(支払)実務の近時の変容⽜を説明することはできない。
そこで,本稿では,告知義務について,まず保険法による見直しについて 概観の後,保険金不払い問題の告知義務関連部分について振り返り,そして それらを原因として生じた⽛告知義務に係る募集・解除(支払)実務の近時 の変容⽜について分析することとする。
⚒.保険法による見直し
保険法においては,告知義務に関し,概要,以下の見直しが行われてい る
2)。
ⅰ.告知すべき事実・事項の見直し
商法は,告知すべき事実・事項を,保険者になる者が質問したものに限定 1) 萩本修編著・⽛一問一答・保険法⽜⚔頁以下(商事法務,2009年)。
2) 萩本修編著・⽛一問一答・保険法⽜42頁以下(商事法務,2009年)。
しない法制であったが(自発的申告義務),保険法では,保険者になる者が 質問したもの(告知を求めたもの)に限定する法制(質問応答義務)とされ た
3)。
加えて,保険法では,告知すべき事実・事項が,危険に関する重要事項に 限定され,保険事故や損害の発生可能性に影響を及ぼさないものを,告知義 務の対象から除外することとしている。
ⅱ.保険媒介者の告知妨害・不告知教唆の場合の解除権阻却
保険法では,告知義務違反解除の要件につき,原則として,商法の規律を 維持しつつ,保険媒介者
4)が告知妨害・不告知教唆を行った場合には,保険 者の告知義務違反解除権は,阻却されるとの規定が新設された
5)。
ⅲ.因果関係不存在特則の維持
保険法では,解除がされた時までに発生した保険事故による損害について,
原則として遡及的免責を認めつつ,告知義務違反事実に基づかずに発生した 保険事故等によるものには,この免責を認めないものとする,商法の規律を 維持している(因果関係不存在特則)
6)。
ⅳ.片面的強行規定
保険法の,告知義務違反に係る規定は,これに反する特約で保険契約者等 に不利なものは無効とする,片面的強行規定とされている
7)。
3) 保険法⚔条,37条,66条。
4)⽛保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者⽜で,⽛保険者 のために保険契約の締結の代理を行うことができる者⽜以外の者。
5) 保険法28条⚒項⚒号・⚓号,55条⚒項⚒号・⚓号,84条⚒項⚒号・⚓号。
6) 保険法31条⚒項但書き,59条⚒項⚑号但書き,88条⚒項⚑号但書き。
7) 保険法⚗条,41条,70条,33条⚑項,65条⚑号,同条⚒号,94条⚑号,同条
⚒号。
⚓.保険金不払い問題
ⅰ.保険金不払い問題とは
金融庁は,保険会社の保険金等の支払に関する不適切な取扱いについて,
①保険金等の不適切な不払,②保険金等の支払漏れ,③がん保険等における 保険金等の支払に関し,被保険者にがんの告知が行われていない等の理由か ら,保険会社が,保険金等の支払を留保したものについて,留保の理由が消 滅した後も支払っていなかったもの,の⚓つに分類のうえ把握してきた。
この点,①保険金等の不適切な不払とは,保険契約者等から保険金等の請 求を受けた保険会社が,不適切な判断により保険金等を支払っていなかった こと,即ち,保険会社の保険金支払判断が,事業方法書・普通保険約款に反 して行われたものを指す。一方,②付随的な保険金の支払漏れとは,保険事 故が発生し,主たる保険金の支払は行われているにもかかわらず,臨時費用 保険金等の付随的な保険金について,保険契約者等から請求がなかったため,
本来支払われていなければならないものを支払っていなかったことを指す。
ⅱ.保険金不払い問題年表
具体的な事象は,下記年表記載のとおり。
図表⚑ 過去の生保破綻事例(1997~2001年) 会社名 破綻時 破綻に至った直接の要因(主なもの)
日産生命 1997年⚔月 金融機関との提携で予定利率の高い個人年金保険を集めすぎた 不適切な決算対策が傷口を広げた
東邦生命 1999年⚖月 高利率の資産性商品を大量販売
不動産関連投融資などハイリスク・ハイリターンの運用に傾斜 経営トップとその周辺が不適切な経営を行っていた
第百生命 2000年⚕月 余裕のない収益構造のなかで,様々な要因が一気に表面化
(低収益構造や資産規模の急拡大,不適切な資産運用など)
大正生命 2000年⚘月 収益力の悪化と不良債権問題で支払余力が低下 筆頭株主による詐欺事件に巻き込まれて破綻 千代田生命 2000年10月 高利率,高配当の貯蓄性商品の販売で資産が急拡大
不動産関連などリスクの大きい資産運用に傾斜 政策保有株式の問題
協栄生命 2000年10月 一時払養老保険で多額の逆ざやが発生 資産運用の失敗も傷口を広げた 東京生命 2001年⚓月 様々な問題が一気に顕在化
(低収益構造や資産規模の急拡大,不適切な資産運用など)
(資料)⽛経営なき破綻 平成生保危機の真実⽜(日本経済新聞出版社)などから 植村作成
2005õ⚒õ25 ●生命保険会社 行政処分 業務停止命令・業務改善命令
①詐欺・錯誤を広く適用し た不適切な不払
②重要事項説明義務違反,
不告知教唆等 2005õ10õ28 ●生命保険会社 行政処分
業務停止命令・業務改善命令
●⽛保険金等支払管理態勢の再点検及び不 払事案に係る再検証の結果について⽜
①保険金の不適切な不払
②告知妨害等
2005õ11õ25 ●損害保険会社26社 行政処分 業務改善命令
●⽛損害保険会社の付随的な保険金の支払 漏れに係る調査結果について⽜
付随的な保険金の支払漏れ
2006õ⚕õ25 ●損害保険会社 行政処分 業務停止命令・業務改善命令
①保険金等支払漏れに係る 調査態勢等
②顧客の名前の印鑑の大量 保有等
2006õ⚖õ⚒ ●監督指針の改正(迅速かつ適切な支払管 理態勢)
支払管理態勢の確立のため の着眼点の明確化 2006õ⚖õ21 ●損害保険会社 行政処分
業務停止命令・業務改善命令
①第三分野商品に係る保険 金の不適切な不払い
②付随的な保険金の支払漏 れ
2006õ⚗õ26 ●生命保険会社 行政処分 業務改善命令
期限後の告知義務違反解除 等
2006õ11õ17 ●付随的な保険金の支払漏れに係る調査完 了時期について報告徴求命令(損保)
付随的な保険金の支払漏れ
2007õ⚒õ⚑ ●生命保険会社の保険金等の支払状況に係 る実態把握について(報告徴求命令)
保険金等の支払漏れ
2007õ⚓õ14 ●損害保険会社10社 行政処分 業務停止命令・業務改善命令
●損害保険会社の第三分野商品に係る保険 金の不払い事案の調査結果について
①始期前発病の取扱いにつ いて,社員が医師の診断 に基づかずに判定を行う 等
②告知義務違反解除の不適 切な取扱い
2008õ⚗õ⚓ ●生命保険会社10社 行政処分 業務改善命令
●生命保険会社の保険金等の支払状況に係 る実態把握の結果について
保険金等の支払漏れ
2009õ⚔õ28 ●保険法改正等に係る監督指針改正 2009õ10õ23 ●損害保険会社 行政処分
業務改善命令
不十分・不適切な対応によ る保険金支払遅延
2010õ⚔õ⚑ ★保険法施行
(金融庁HP等より筆者作成)
ⅲ.告知義務関連の行政処分等
年表に記載した保険金不払い問題に関する事象のうち,告知義務に関連す る行政処分等は,以下のとおりである。
⑴ 行政処分(2005年⚒月25日,生命保険会社,業務停止命令・業務改善命 令)
8)告知義務関連の記載概要は,以下のとおり。
①生命保険募集人の募集時の説明状況,告知義務違反の内容などを十分考 慮せず,例えば以下のような事例について詐欺・錯誤を広く適用し,本 来支払うべき死亡保険金を支払っていなかった。
○確定診断・病名告知がないことにより被保険者に病気の認識がないな ど,被保険者に欺罔の意思を認めることが困難なもの
○告知義務違反のあった事実(被保険者の職業について他社の生命保険 募集人であることを秘匿したこと)が,重要事項の告知義務違反とは いえず,詐欺を問うことが困難なもの
○生命保険募集人が被保険者に不告知を勧めているなど,不適切な募集 行為が認められるもの
○商品特性(一時払養老保険などの貯蓄性商品)を踏まえれば,被保険 者に欺罔の意思を認めることが困難なもの
②生命保険募集人が,重要事項の説明を行っていない,不告知を教唆する など,保険業法第300条第⚑項第⚑号及び同項第⚓号に違反する保険募 集を行っていたものと認められた。
③保険金支払部門(一部事案については法務部門も)においては,保険金 の支払いの可否を検討するに当たって,違法な保険募集が多数存在する ことを把握していたにもかかわらず,関係部門と連携をとらず,改善に 向けた取組みを怠っていたものと認められた。
図表⚒ 破綻保険会社のソルベンシー・マージン比率の推移
(単位:%) 会 社 名 破綻処理
開 始 日 平成⚙年度
(1997年) 平成10年度
(1998年) 平成11年度
(1999年) 平成12年度 (2000年)
生命保険
東 邦 生 命 H11õ 6õ 4 154õ3 8õ5
第 百 生 命 H12õ 5õ31 294õ6 304õ6 ▲ 380õ2 大 正 生 命 H12õ 8õ28 334õ5 384õ6 67õ7 千代田生命 H12õ10õ 9 314õ2 396õ1 263õ1 協 栄 生 命 H12õ10õ20 300õ7 343õ2 210õ6 東 京 生 命 H13õ 3õ23 431õ6 478õ7 446õ7
損害保険
第 一 火 災 H12õ 5õ 1 259õ3 330õ0 ▲ 298õ4
大 成 火 災 H13õ11õ22 580õ9 1,035õ2 1,022õ4 815õ2
※ソルベンシー・マージン比率は,平成⚘年度決算から適用。
※ソルベンシー・マージン比率は,平成⚙年度決算から各社自主的に開示。
(翌年度決算から法定開示。)
(資料) ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム(第⚕回:
2007年⚑月29日)
8) https : //www.fsa.go.jp/news/newsj/16/hoken/f-20050225-1.html(最終閲覧日
2018年10月15日)
⑵ 行政処分(2005年10月28日,生命保険会社,業務停止命令・業務改善命 令)
9)告知義務関連の記載概要は,以下のとおり。
①平成12年度から16年度の過去⚕年間において,本来保険金等を支払うべ きであったにもかかわらず,支払いがなされていない保険金等が1,053 件認められた。
②生命保険募集人が,告知妨害,特別の利益の提供など保険業法第300条 第⚑項第⚓号及び同項第⚕号に違反する保険募集を行っていたものなど が認められた。
③告知義務違反教唆があっても告知義務違反を常に問うと解釈され得る ような,不適切な記述が多数認められる顧客対応マニュアル(Q&A)
を保険金部及び法務担当部において作成し,支社等の営業拠点や顧客サ ービスセンターに配布するなど,告知義務違反教唆を軽んじる風潮を助 長したものと認められた。なお,同マニュアルは,正式な規程ではなく,
お客さまサービス部による検証が行われていなかったものと認められた。
⑶ 保険金等支払管理態勢の再点検及び不払事案に係る再検証の結果につい て(2005年10月28日)
10)告知義務に関連するものとして,不適切な不払の区分別発生原因の中で,
⽛告知義務違反解除⽜の区分の特徴として,以下が挙げられている。
①請求事由と不告知事項の因果関係が問えないものへの適用
②会社側に有利な事実認定(例:精密検査等の受診歴(再確認の結果,異 常が認められなかったことが判明)の不告知をもって支払拒否したもの 等)
9) https : //www.fsa.go.jp/news/newsj/17/hoken/f-20051028-3.html (最終閲覧 日 2018年10月15日)
10) https : //www.fsa.go.jp/news/newsj/17/hoken/f-20051028-4.html (最終閲覧
日 2018年10月15日)
③事実関係の調査確認不十分(例:告知義務違反とした傷病の発病が告知 日以降の発病と判明したもの等)
④解除期間・除斥期間の超過(例:再確認の結果,期日について誤認が判 明したもの)
⑷ 行政処分(2006年⚖月21日,損害保険会社,業務停止命令・業務改善命 令)
11)第三分野商品に係る保険金の不適切な不払い(927件,166百万円)として,
以下が挙げられている。なお,終身医療保険に関しては,不適切な不払いが 顕著であったとのこと(305件,61百万円)。
①保険責任開始以前の発病(以下,⽛始期前発病⽜という)について,約 款上は医師の診断により始期前発病が認定された場合に免責が適用され ることとなっているが,当社社員が医師の診断に基づかずに自ら判定を 行う等,免責が不適切に適用された事例(618件)
②被保険者等の故意又は重過失責任に該当しないにもかかわらず告知義務 違反による契約解除を行う等,告知義務違反の認定が不適切に行われた 事例(16件)
③告知事項とは因果関係のない保険事故にもかかわらず告知義務違反が適 用された事例(91件)
④代理店が被保険者本人からの告知を受けずに契約を行う等会社側に法令 違反等があるにもかかわらず,告知義務違反が適用された事例(35件)
⑤告知義務違反について,会社側からの契約解除ができる期間である除斥 期間が経過した後に解除権を行使している事例等(167件)
11) https : //www.fsa.go.jp/news/newsj/17/hoken/20060621-1.html(最終閲覧日
2018年10月15日)
⑸ 行政処分(2007年⚓月14日,損害保険会社10社,業務停止命令・業務改 善命令)
12)告知義務・始期前発病関連の記載概要は,以下のとおり。
①始期前発病について,約款上は医師の診断により始期前発病が認定され た場合に保険会社の免責が適用されることとなっている。この始期前発 病の取扱いについて,社員が医師の診断に基づかずに判定を行う等,免 責が不適切に適用された事例【1,213件・34%】
②契約者から保険加入時に告知されなかった病歴等と保険金請求原因との 間に因果関係がないにもかかわらず告知義務違反を適用して不払いとし たり,保険会社が除斥期間経過後に解除を行う等,告知義務違反を理由 とする不払いが不適切に行われた事例【1,210件・34%】
⑹ 損害保険会社の第三分野商品に係る保険金の不払い事案の調査結果につ いて(2007年⚓月14日)
13)告知義務・始期前発病関連の記載概要は,以下のとおり。
①報告された不適切な不払事案は,他の損害保険商品とは異なる第三分 野商品の特性である⽛始期前発病⽜及び⽛告知義務違反解除⽜の取扱い にかかる事案が全体の約⚗割を占めている。
具体的な事例は以下のとおり
●支払事由非該当(始期前発病等)に関する事例【2,478件,43%】
始期前発病について,約款上は医師の診断により始期前発病が認定さ れた場合に保険会社の免責が適用されることとなっている。この始期 前発病の取扱いについて,社員が医師の診断に基づかずに判定を行う 等,免責が不適切に適用された事例
12) https : //www.fsa.go.jp/news/18/hoken/20070314-2.html(最終閲覧日 2018年 10月15日)
13) https : //www.fsa.go.jp/news/18/hoken/20070314-1.html (最終閲覧日 2018
年10月15日)
●告知義務違反解除に関する事例【1,519件,26%】
a 告知事項とは因果関係のない保険事故にもかかわらず,告知義務 違反を適用し不払いとしていた事例等
b 被保険者等の故意又は重過失の認定が不十分なまま,告知義務違 反を適用し不払いとしていた事例等
c 告知の重要性や正しい告知がなかった場合の取扱いについて,契 約締結時の説明が不十分であり,会社側に過失があるにもかかわら ず,告知義務違反を適用し不払いとしていた事例等
d 保険会社が除斥期間経過後に解除を行う等,告知義務違反を理由 とする不払いが不適切に行われた事例
●免責事由該当に関する事例【460件,⚘%】
告知があった際に付すべき不担保特約等の付帯を保険会社が行ってい ないにもかかわらず,保険金請求が行われた際に,不担保特約が付帯 されている事案として不払いとしていた事例等
②⽛第三分野商品に係る不適切な不払いが発生した主な原因⽜として,以 下が指摘されている。
●支払管理態勢の問題
○第三分野商品の特性として留意すべき要素(⽛始期前発病⽜の判断 又は⽛健康状態告知⽜の認定等)を勘案しない不十分な支払査定マ ニュアル等が用いられていた。不払いとする際の認定基準や手続き も確立されておらず,支払判断が担当者の裁量に大きく委ねられて いた。
○請求原因となっている疾病と契約上不担保としている疾病の病名が 異なるにもかかわらず,同一の疾病と推測・誤認するなど,担当者 の医療知識等が不足していた。
○第三分野商品の特性等に配慮した研修・教育・指導が不足していた。
支払査定担当者等の人材育成も不十分であったため,担当者等の約
款・マニュアル等に対する理解が不足したまま支払業務が行われて いた。また,支払査定実務における調査・事実確認が徹底されてい なかった。
○保険金支払管理部門等が行っている事後検証については,第三分野 商品の特性を踏まえた検証が行われていなかった。苦情を通じた検 証も有効に機能していなかった。したがって,事後検証の機能発揮 は不十分なものとなっていた。
●商品開発管理態勢の問題
○他の損害保険商品とは異なる第三分野商品の特性を深く研究するこ となく商品開発を行っていた。運用面での取扱いの検討も不十分で あった。
○第三分野商品の約款解釈・支払事由の明確化やマニュアル等の整備 に際し,商品開発部門とシステム部門,支払管理部門等との相互連 携が不十分であった。また,関連部門の相互連携が不十分なことに より,告知義務違反解除の事務手続き等において,約款に沿った実 務が行われていなかった。
●内部監査の問題
第三分野商品の特性を踏まえた内部監査が行われていなかった。した がって,多数の不適切な不払いが発生している事実を内部監査部門は 把握していなかった。
③上記の発生原因分析を踏まえて講じられつつある⽛各社における改善 策⽜として,以下が指摘されている。
●支払査定マニュアル・規程等の整備
⽛始期前発病⽜又は⽛健康状態告知⽜等の第三分野商品の特性を踏ま
え,適切な業務運営を行うための支払査定マニュアル等を整備し,支
払査定実務の適正化を図る。
●第三分野商品の支払査定担当者等への研修・教育の強化
第三分野商品に関する約款の正しい理解・解釈をはじめとして,支払 査定担当者等の専門知識水準の向上と均質化等を図るための研修・教 育を充実・強化する。
●不払事案の検証態勢の整備
不払事案の適切性について,社内チェックを重層化する。また, 高 度な医的判断や法的判断を要する不払事案に対応するため,社外の専 門家(医師,弁護士等)を加えた審査機関を設置する。
●苦情事案への対応
苦情を一元的に管理し,個別事案への迅速な対応や苦情発生に至った 原因分析等を行う。また,その結果を経営陣へ速やかに報告するとと もに,経営陣の関与の下,問題解決や再発防止策の策定を行う態勢を 整備する。
●支払査定業務の効率化
第三分野商品の支払査定業務の集中化により,一元的な処理を行うと ともに,支払査定部門に適切かつ十分な規模での人員配置を行う。
●内部監査態勢の強化
内部監査部門の要員増強を行う。また,第三分野商品の特性を踏まえ た適切な業務運営を行っているかどうかについて,重点的な監査を実 施する。
⚔.告知義務に係る募集・解除(支払)実務の近時の変容
ⅰ.総 論
このような保険金不払い問題,保険法制定の影響により,告知義務に係る 募集・解除(支払)実務は,大きく変わった。
変容点の概要は,概ね以下のとおりである。
この点,2005年⚖月30日に制定され,その後必要に応じ改定されている
⽛正しい告知を受けるための対応に関するガイドライン(生命保険協会)⽜
(以下,⽛生保ガイドライン⽜という)
14),及び,2007年⚖月21日に制定され,
その後必要に応じ改定されている⽛第三分野商品(疾病または介護を支払事 由とする商品)に関するガイドライン(日本損害保険協会)⽜(以下,⽛損保 ガイドライン⽜という)
15)の各業界自主ガイドラインは,生命保険業界・損 害保険業界の告知に係る実務に,大きな影響を与えている。
ⅱ.募集実務の変容点
⑴ 分かりやすい告知書の志向
告知書の分かりやすさ(分かりにくさ)に対する問題意識は,古くより指 摘されてきたところであるが,保険金不払い問題により浮き彫りとなった
⽛顧客から正しい告知を受けるための保険会社のあるべき対応⽜としてその 課題が明確に認識され,保険会社の取組みが促進されることとなった
16)。
加えて,保険法により,告知義務が自発的申告義務から質問応答義務へと 転換(制度変更)された
17)。これに,告知義務違反解除の要件として,保険 契約者・被保険者の故意・重過失が求められることも相俟って
18),分かりや すい告知書へのインセンティブは,私法的にも一定のエンフォースメントが 生じる,望ましい法制度となった
19), 20)。
14) http : //www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/announce.pdf(最終閲覧日 2018 年10月15日)
15 ) http : //www. sonpo. or. jp/about/guideline/pdf/index/daisanbunya_guideline.
pdf(最終閲覧日 2018年10月15日)
16) 生保ガイドライン17頁,損保ガイドライン⚔頁。
17) 保険法⚔条,37条,66条。
18) 保険法28条⚑項,55条⚑項,84条⚑項。
19) 保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ-4-2-2 ⒄①は,告知事項・告知書につ
いて,⽛ア.保険法において,告知義務が自発的申告義務から質問応答義務と
なったことの趣旨を踏まえ,保険契約者等に求める告知事項は,保険契約者等
が告知すべき具体的内容を明確に理解し告知できるものとなっているか。例え
ば,⽛その他,健康状態や病歴など告知すべき事項はないか。⽜といったような
告知すべき具体的内容を保険契約者等の判断に委ねるようなものとなっていな
いか。イ.告知書の様式は,保険契約者等に分かりやすく,必要事項を明確に
⑵ 告知環境の整備
保険会社が,顧客からの告知に係る照会・質問に確実に対応し,顧客の不 明点・疑問点を解消することは,顧客から正しい告知を受けるために極めて 重要な事柄である。
一方で,告知事項は,顧客の体況等,プライバシー保護の要請の強い情報 であり,顧客が目の前の保険募集人に言いたくない,知られたくない場合も 想定されるところである。
このような問題意識を踏まえ,現在の実務では,①告知関係の照会先の設 定(告知対象かどうか判断に迷う場合,告知に関する募集人の説明・行為に 疑問がある場合,告知後に告知もれが判明した場合等の照会を想定),②
(必要に応じて)告知書の封緘提出等プライバシー保護のための措置が,講 じられることとなっている
21)。
加えて,告知内容を顧客が確認できる方策を講じることは,顧客から正し い告知を受けるためにも,また,事後のトラブルを防止するためにも有用で あるため,告知書を複写式として写しを顧客に交付する(契約成立後に告知 書の写しを顧客に送付する),顧客からの照会に対して,保険会社に保管す る告知書写しを顧客宛送付する等の実務対応が行われている
22)。
⑶ 告知サポート資料
顧客が告知を行うに当たっての留意点を,顧客に確実に認識してもらうた め,告知書本体(スペースに余裕がある場合),告知書の裏面,見開き帳票
したものとなっているか。⽜との監督上の留意点を挙げる。
20) 衆議院法務委員会では,告知義務に関し,次の附帯決議がなされている。
⽛告知義務の質問応答義務への転換や告知妨害に関する規定の新設により,告 知義務違反を理由とする不当な保険金の不払いの防止が期待されていることを 踏まえ,改正の趣旨に反しないよう,保険契約者等に分かりやすく,必要事項 を明確にした告知書の作成など,告知制度の一層の充実を図ること。⽜(萩本修 編著・⽛一問一答・保険法⽜⚘頁(商事法務,2009年))。
21) 生保ガイドライン15頁,損保ガイドライン⚔頁。
22) 生保ガイドライン16頁,損保ガイドライン⚓頁。
の片面,告知時の説明チラシ,申込時被保険者宛説明書等に,以下の内容を 記載し,被保険者への重要事項説明等のタイミングで,これを募集人等が説 明する等の措置が取られている
23)。
①顧客に特に認識してもらいたい事項
•告知の重要性
•募集人に告知受領権がないこと
•傷病歴等がある者でも引受可能なケースがあること(告知後の流れと 引受対応)
•正しく告知されない場合のデメリット,等
②告知記入例
③顧客が,告知対象かどうか迷いやすいケースの説明
④告知関係の照会先
⑷ 募集人が告知を受けた場合
顧客が,申込・告知時に健康状態等について,募集人に口頭で告げた事項 があれば,募集人には告知受領権がないことを説明したうえで告知書に記入 することを要請すること,併せて,募集人が取扱報告書等で保険会社へ報告 することを徹底する等の対応が行われている
24)。
⑸ 募集人教育
告知に関する事項(告知の重要性,告知受領権,契約確認・保険金給付確 認,傷病歴がある者の引受け,正しく告知しない場合のデメリット,乗換・
転換時の告知義務,無選択型・選択緩和型保険等の留意点,告知環境の整備 と告知状況のチェック,告知サポート資料,告知義務違反を勧める行為の禁 止)について,募集人がその内容を正しく理解し,かつ,顧客に対して適切
23) 生保ガイドライン20頁,損保ガイドライン⚙頁。
24) 生保ガイドライン⚗頁,23頁。
に説明を行うべく教育を徹底することが必要とされている
25)。
ⅲ.解除(支払)実務の変容点
⑴ 告知義務に関する私法(保険法),約款等基礎書類に従った対応 保険金不払い問題では,保険会社が,私法上,告知義務違反解除を行うこ とができない事案で解除を行ったこと,保険金支払義務がある(因果関係不 存在特則から免責とならない等)にも関わらず保険金の支払を拒絶したこと が,行政処分の理由となっている。
これを受け,保険会社の告知義務に係る解除(支払)実務は,私法たる保 険法,契約内容たる約款等基礎書類に,より忠実なものに変容した。
保険法では,告知義務違反に係る規定が片面的強行規定とされたため
26), その箇所の約款等基礎書類は,保険法に準拠したもの(語弊はあるが,保険 法の規定をそのまま貼り付けたようなもの)となっており,保険法の条文に 係る裁判例や法解釈論が,保険会社実務・裁判実務に与える影響は,より直 接的なものになったと評価できる。
具体的には,保険会社の解除・支払の判断においては,保険法の以下の要 件を充足することを,客観的資料を元に,医学的知見も踏まえ,慎重に検討 するものとされている
27), 28)。
①告知事実について,不告知等があるか
②①の告知事実は,危険に関する重要な事実か
③不告知等に,告知義務者の故意・重過失があるか
25) 生保ガイドライン22頁,損保ガイドライン⚕頁。
26) 保険法⚗条,41条,70条,33条⚑項,65条⚑号,同条⚒号,94条⚑号,同条
⚒号。
27)⽛保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン(生命保 険協会)⽜(2006年⚑月27日制定,順次改定)12頁。
http : //www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/payment.pdf(最終閲覧日 2018 年10月15日)。
28) 損保ガイドライン21頁。
④告知事実について,保険会社に悪意(了知),過失(過失不知)はない か
⑤保険媒介者の,告知妨害・不告知教唆はないか
⑥除斥期間内の解除権行使か
⑦解除前の保険金支払事由を不払い(免責)とするには,不告知等の告 知事実と保険事故との間に因果関係があるか
⑵ 募集時の状況に鑑みた支払判断
保険募集時の保険会社の言動(例えば,告知をしなくて良い,この支払事 由で保険金は支払われる,違法性がある,等)と,保険金支払時の保険会社 の言動(例えば,告知義務違反を問う,約款に照らせば保険金を支払えない,
保険会社側の違法性により生じた結果を顧客に転嫁する,等)が異なること は(保険会社のアンフェアな態度),保険金不払い問題において,大きな非 難の対象となったところである。もとより保険会社のアンフェアな態度によ り顧客被害を生じさせることは,社会から問題あるものとの評価を受け易く
(感情論の追い風も受けやすい),風評リスクの高いものである(語弊はある が,マスコミに⽛詐欺保険会社⽜と書きたてられる可能性が相応にあるも の)。
併せて,監督官庁から,保険会社の不適切な業務運営との評価を受け,や やもすれば行政処分にも繋がる,行政リスクの高い行動でもある。
これを受け,保険会社の保険金等支払判断は,募集時の状況を適切に踏ま えたうえで行うべきことが強く認識されることとなった
29)。
告知義務違反に関しては,⑴の,③不告知等に,告知義務者の故意・重過 失があるか,④告知事実について,保険会社に悪意(了知),過失(過失不
29) 保険会社向けの総合的な監督指針では,支払管理部門と関連部門との連携と
して,支払管理部門を⽛必要に応じて,コンプライアンス担当部門及び関連部
門から募集時の説明状況等について情報を取得する態勢⽜とすることが求めら
れている(Ⅱ-4-4-2 ⑵④ウ)。
知)はないか,⑤保険媒介者の,告知妨害・不告知教唆はないか,等,保険 法上,告知義務違反解除の可否に募集時の状況が直接的に影響を与えるもの が相応にある。まずもって,これらを保険法に従って適切に運用することが 求められる
30)。
加えて,このようなアンフェアな行動は,私法上,信義則
31)(禁反言の原 則)の観点から,法的に許容されない場合が相応にあることにも,留意する 必要がある。
⑶ 始期前発病不担保に係る情報提供
始期前発病不担保の取扱いにつき,重要事項説明書(契約概要・注意喚起 情報)等に記載し,募集時に募集人等が顧客に対し,明示することが求めら れる。個々の顧客が自己の問題であると,理解・認識できるよう,情報提供 することが望ましいとされる
32)。
この点,⽛保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライ ン(生命保険協会)⽜では,⽛契約(責任開始)前事故・発病ルールの適用に あたっては,信義則の観点からも慎重に判断することが望ましい。⽜
33)とされ る。告知書に,既往症が告知事実として記載されたにも拘らず,保険契約を 引き受けた場合には,顧客の期待を裏切るものとの指摘もあるところであり,
このような場合には,特定部位不担保とするか,当該既往症による治療等に は始期前発病不担保により保険金を支払えないことの具体的情報提供を行う ことが望ましい対応と考えるところである。
30) 損保ガイドラインでは,告知義務違反の判断において保険募集の適切性を確 認することを求めている(23頁)。
31) 民法⚑条⚒項。
32) 損保ガイドライン14頁。
33)⽛保険金等の支払いを適切に行うための対応に関するガイドライン(生命保 険協会)⽜(2006年⚑月27日制定,順次改定)11頁。
http : //www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/payment.pdf(最終閲覧日 2018
年10月15日)。
⚕.想定事例の検討
ⅰ.想定事例
保険募集人が,告知義務者から既往症(告知事実)を口頭で告げられ,そ の既往症の存在を了知していたが,告知義務者が告知書に当該既往症を記載 せず,保険契約が成立した場合,保険者が告知義務違反解除を行えるか,と いう想定事例につき,保険会社のあるべき対応について検討したい。
ⅱ.損害保険代理店の場合
損害保険会社の実務では,損害保険代理店に契約締結権限及び告知受領権 が付与されているのが通例である。
想定事例について見れば,告知受領権を有する保険募集人(損害保険代理 店)に対し,告知事実が告げられているため,通常は告知義務者に不告知等 があったとは言えず,保険会社は告知義務違反を問うことが出来ない。仮に,
損害保険代理店が告知事実を了知したのが,保険募集とは全くの別機会であ ったとして,解除権阻却事由の⽛保険者の悪意・過失⽜は,告知受領権を有 する者に即して判断されるとの通説に従えば,告知受領権を有する損害保険 代理店の悪意(了知)が認められ,保険会社は告知義務違反解除を行うこと は出来ないもの,となる。
ⅲ.生命保険募集人の場合
営業職員等の生命保険募集人の場合は,どのようになるか。生命保険会社 の実務では,生命保険募集人に,契約締結権限及び告知受領権は与えられて いないため,問題となる。
①保険者の悪意・過失(解除権阻却事由)
生命保険募集人に契約締結権限が与えられているか否かはともかく,生命 保険契約締結の保険会社(保険者)側の窓口は生命保険募集人となっており,
生命保険契約締結に係る実質的交渉が正に当該生命保険募集人のみにより行
われているという実態に,まずもって着目すべきと考える。
一般論として,民法等において一方当事者の主観(悪意等)が要件とされ る場合,一方当事者が会社だとすれば,それは先方と実質的交渉を行ってい る,(代表者でなく,厳密には契約締結権限も与えられていない)会社担当 者の主観を会社のものとして採用することに,おそらく違和感はないものと 考えるが,告知義務違反解除を別異に解する必要はない
34)。
営業職員は,生命保険会社の職員であり,生命保険代理店も生命保険会社 からの受託者であって,いずれにしても生命保険会社側の人間として生命保 険契約締結に関し,実質的交渉を担っている者である。これらの者が了知し ていながら,生命保険会社の悪意(了知)はない,との結論となることには,
大いに違和感を感ずる。保険者の悪意・過失を解除権阻却事由として敢えて 規定し,衡平の観点から,当事者間のバランスを図る保険法の趣旨にも反す る結果ではなかろうか。
生命保険募集人が,既往症等の告知事実を了知している場合には,例えば 生命保険募集人と告知義務者が共謀して既往症を秘匿している場合や,生命 保険募集人が,その職務と全く関係のないところで既往症を了知し,保険会 社(保険者)の悪意・過失と評価しがたい等の特段の事情がない限り,解除 権阻却事由たる保険者の悪意・過失の要件は,充足するものと考える
35), 36)。 34) 法律構成は,民法101条⚑項の類推適用となろう。於保不二雄=奥田昌道 編・⽛新版 注釈民法⑷総則⑷⽜71頁以下〔佐久間毅〕(有斐閣,2005年)は,
⽛代理人の主観的態様が本人に帰責される根拠が本人にとっての利益保護措置 も代理人にゆだねられていることにあるとすれば,ある者に他人の主観的態様 が帰責されるのは,その他人が代理人である場合に限られないことになる。た とえば,ある者(本人)がその意志によって他人に一定の事務を独立して処理 させるときには,その処理に際して必要となる利益保護措置を講じることもゆ だねていると解すべきであるため,その他人の主観的態様は本人に帰責されて よいはずである⽜とする。
35) 山下友信著・⽛保険法(上)⽜438頁(有斐閣,2018年)は,保険媒介者は,告
知義務者が既往症を有することを知っており,告知に当たって,告知義務者が
当該既往症を告知してないことに気がついたが,当該既往症の告知するようア
ドバイスせず,告知がないまま契約が成立した場合について⽛保険媒介者は
加えて,告知義務に係る募集実務においては(前記⚔.ⅱ.⑷⑸),顧客 が,申込・告知時に健康状態等について,募集人に口頭で告げた事項があれ ば,募集人には告知受領権がないことを説明したうえで告知書に記入するこ とを要請すること,併せて,募集人が取扱報告書等で保険会社へ報告するこ とを徹底する等の対応が行われており,募集人教育の徹底が必要と認識され ている点にも着目すべきである。
想定事例は,通常はこれらの対応の遺漏により生ずるものであり,それを 保険者の過失と認定すべき場合は,相応にあるものと考える
37)。
②告知義務者の故意・重過失
加えて,生命保険募集人に告知事実たる既往症を口頭で告げたことをもっ て生命保険会社に告知したものと誤認すること,これを口頭で告げたにも拘 らず生命保険募集人が告知書への記入を促さないことをもって告知しなくて
保険学雑誌 第 643 号