*茨城大学教育学部社会情報研究室(〒310-8512 茨城県水戸市文京 2-1-1).
**常磐大学人間科学部(〒310-8585 茨城県水戸市見和 1-430-1).
中間選択肢の影響について
小島秀夫*・篠原清夫**
(2006 年 11 月 30 日受理)
On the Influences of Middle Alternatives
Hideo K
OJIMA* and Sugao S
HINOHARA**
(Received November 30, 2006)
問 題
意識調査では中間選択肢を設ける場合もあり,設けない場合もある。こうした実例については,今 日出版されている尺度集などを見ればすぐに明らかにされる(たとえば,Robinson,Shaver &
Wrightsman 1991
)。どのような場合に中間選択肢を使用するかについては,調査者の常識的な判断によっており,中間選択肢の使用についての経験的な法則は現在のところ存在していない。これまで の中間選択肢に関する研究においても,中間選択肢を使用した場合でも,使用しない場合と比較して 回答結果に変化は見られないとする研究(たとえば,
Presser & Schuman 1980
)がある一方では, 中間選択肢を使用した場合にはそうでない場合よりも,中間選択肢に回答が集中するといった研究(たとえば,Kalton,Roberts & Holt
1980)もある。これまでの中間選択肢に関連する研究につい
てはO’Muircheartaigh
,Kronsnick & Helic
(2000
)で整理されている。本研究の目的は,中間選択肢を使用した場合とそうでない場合では回答結果にどのような差が現 れ,それらがデータ解析の結果にどうした影響を与えるのかを明らかにし,かつ最初に中間選択肢 を選択した回答者はどのようなメカニズムによって,中間選択肢以外の選択肢を選ぶのかを解明す ることである。
データと方法
本研究に使用されるデータは,茨城県内の小・中学校教師
2000
名を対象とした調査によって得 られたものである。系統抽出法によって抽出された教師2000
名をランダムに2分し,中間選択肢 のある質問項目とない項目をそれぞれの調査に分配した。調査方法は郵送調査法を使用し,調査票を,2002 年 2 月に発送した。以下,便宜的に白色の調査票をA調査,青色の調査票をB調査とよぶ こととする。A調査の有効回収率は 60.9%,B調査の有効回収率は 61.1%であり,回収率に差は認 められない。
最初に,基本的属性や共通する項目についてA調査とB調査で差が認められないことを確認して おく必要があろう。基本的属性については,たとえば性別についてみるとA調査では男性
42.2
%,女性
57.8%,B調査では男性 42.2%,女性 57.0%,不明 0.8%となっており,差は認められない。同
様に,共通する質問項目,たとえば職業満足についてみると,「非常に満足している」(A調査
15.9
%,B調査
16.9
%),「どちらかといえば満足している」(66.2
%,65.5
%),「どちらかといえば不満であ る」(15.1%,16.5%),「非常に不満である」(2.0%,1.1%),無回答(0.8%,0.3%)となっており,χ2
=3.11 df=4 p=0.54
であり,差が認められないことが明らかにされる。したがって,A調査とB調査の回答者は同質であると判断できる。具体的に分析に使用される質問項目は,表
1
に示されて いるように3
項目である。具体的な質問文とその結果については,その都度説明するが,中間選択 肢が使用される場合には,さらに中間選択肢を選択した人に対して「しいて言えばどちらか」を質 問した。こうすることによって,中間選択肢がない場合の結果と比較することが可能となる。表
1 使用した質問とその形式
A 調 査 B 調 査
(1) 他の人の役にたつ(2
分法) 他の人の役にたつ(3分法)→しいて言えばどちらか
(2) 職業選択(2
分法) 職業選択(3分法)→しいて言えばどちらか
(3) 民間人の採用(3分法)
民間人の採用(3分法)→しいて言えばどちらか
分析結果
民間人の採用
最初に民間人の採用について検討してみることとする。この質問はA調査B調査で共通の形で使 用されている。具体的な質問は「民間人を管理職として採用するという考えがありますが,あなたは この考えに賛成ですか,それとも反対ですか」と質問し,選択肢としては「採用に賛成」「どうとも いえない」「採用に反対」を用意した。
A
調査ではさらに中間選択肢を選択した教師に対し,「では,しいて言えばどちらでしょうか。採用に賛成ですか,反対ですか」と質問し,「採用に賛成」と「採 用に反対」の選択肢の中から回答してもらった。
予想されるように,
A
調査の結果とB
調査の結果に統計的に有意な差は観察されない。ここで全 体的には「どちらともいえない」の比率が高くなっているが,採用に賛成か反対かを比較すれば,反対の比率が高くなっていることが明らかにされる。
A
調査ではその差は12
ポイント,B
調査では14
ポイントほどになっている。ここで,中間選択肢がない場合の回答分布を推定することが可能で ある。A調査において中間選択肢を選択した人(295人)の中で,「賛成」と回答した人は166
人,「反表2 民間人の採用(%)
調 査 採用に賛成
どちらともいえない
採用に反対 無回答
A
調査 19.9 48.4 31.5 0.2B
調査 18.3 49.6 31.9 0.2(注)実数はA調査
609
人,B調査611
人。χ2=0.47 df=3 p=0.92
対」と回答した人は
120
人,無回答であった人は9
人であった。したがって,民間人の管理職者へ の採用について「賛成」か「反対」かの2分法で質問した場合に予想される回答結果は,「賛成」47.1
%,「反対」51.2
%,無回答1.7
%になると予想される。この場合の「賛成」と「反対」の比率の 差は4
ポイントとなり,中間選択肢がある場合とない場合では結果の解釈に大きな差が出現するこ ととなる。中間選択肢については,果たしてそれが選択肢の中央に位置しているのかどうかについての基本 的な疑問が提示されている(林
1993
:7)。ここでは,中間選択肢が選択肢の中央に位置してい るかどうかを検討してみることは,興味のあることである。その目的に適した分析方法は,現在の ところlog-multiplicative model(Clogg 1982;Goodman 1979)
であると思われる。表3 民間人の採用×「一人前意識」
採用 「一人前」 やや「一人前」 あまりそうではない 「一人前」ではない 賛 成 18 51 36
15
どうとも44 139 90
20
反 対 51 78 53 9Log-multiplicative model
は表3のようなクロス表が与えられた場合に,
F
ij=ττRiτCje
φμiνjと表される。Fijはモデルの下での期待度数であり,τは総平均,τRiは行効果,τCjは列効果,e は 自然対数の底,μiは行のカテゴリー・スコア,νjは列のカテゴリー・スコアである。φは行と列 の内的関連(intrinsic association)の強さを示すものである。φ=0の場合は独立モデルとなる。ここ でわれわれが注目すべきものは,μiとνjのスコアである。これらはそれぞれ行のカテゴリー間と 列のカテゴリー間の距離を示すものと考えられる。
実際に分析した結果では
L
2=2.43 df=2 p=0.30
となり,このモデルが成立していることが明らか にされる。実際のスコアはμ1(賛成)=0.602
,μ2(
どうとも)=0.177
,μ3(反対)=-0.779
となり,「賛 成」と「どうともいえない」との間の距離は0.602-0.177=0.425
となり,「どうともいえない」と「反 対」との間の距離は0.177-(-779)=0.956
となることが明らかにされる。すなわち,この場合には中間 選択肢は「賛成」と「反対」との中間に位置しているのではなく,より「賛成」の近くに位置して いると判断できるのである。ただし,この分析方法はクロス表を使用した分析であり,どの変数との クロス表を作成するかによって,解は必ずしも安定したものではないことに留意する必要がある。中間選択肢を最初に選択した回答者の中で,どのような人がその後「賛成」や「反対」と回答す るのであろうか。ここではこの点についても検討してみることとする。分析方法は判別分析を使用す るが,最初に意見が変化した方向と調査で使用された
170
変数を使用してχ2検定を実施し,統計的に有意(
p=0.05
)な変数を抽出し,
その後それらの変数を使用して判別分析を実施することとした。χ2検定の結果,統計的に有意な5変数が抽出された。それらの変数は「生徒の非行」「あなたの将 来は,運やチャンスによって決まると思うか」「あなたは,努力をすれば,だれとでも友人になれる と思うか」「結婚相手は家柄も考えて決めるべきだ」と「配偶者の職業は教師かどうか」であった。
判別分析の結果では,判別係数は「生徒の非行」(
.436
),「運やチャンスによって決まる」(.639
),「だれとでも友人になれる」(-.433),「相手の家柄」(-.149),「配偶者の職業は教師」(.615)となり,
サンプル全体の
60.7
%が正しく分類されたことが明らかにされた。判別分析に使用した変数の中で 統計的に有意であったものは「運やチャンスによって決まる」と「配偶者の職業は教師」の2変数 であった。すなわち,「運やチャンスによって決まる」とは思っていない,いわば自己統制感の強い 人ほど「賛成」になる傾向が認められ,「配偶者の職業が教師」でない人ほど「賛成」になる傾向が 認められるのである。ここでの分析結果は,調査で使用されている変数のみを使用しているために,十分な分析は不可能であるが,中間選択肢を選択した人が「賛成」「反対」を選択するプロセスはこ こでの分析結果よりも,より複雑なものであろう。また,こうした質問では簡単に「賛成」「反対」
とは回答できないものと考えられるであろう。
他の人の役にたつ
今度は他の人の役にたつ(他の人)についての質問について検討してみることとする。この質問は
「あなたは,たいていの人は他の人の役にたとうとしていると思いますか。それとも,自分のこと だけに気をくばっていると思いますか」というものであり,選択肢は「他人の役にたとうとしてい る」と「自分のことだけに気をくばっている」である。この質問は国民性の調査で
1978
年から使用 されているものである(国民性調査委員会1999
:7
)。A調査ではこの質問をそのまま使用し,B 調査では「どちらともいえない」の選択肢を加え,さらに中間選択肢を選択した人に対して「では,しいて言えばどちらでしょうか」と質問し,「他人の役にたとうとしている」か「自分のことだけに 気をくばっている」かを選択してもらった。
表
4
に単純集計の結果が示されているが,B調査で「どちらともいえない」の比率が59.7
%とな っており,中間選択肢がある場合とない場合では大きな差が観察されることが明らかにされる。また,A調査B調査ともに「自分のこと」より「他の人」の比率が高くなっていることに変わりはみられ
表
4 他の人の役にたつ(%)
調 査 他の人 どちらともいえない 自分のこと 無回答
A調査 50.6 ―
47.8 1.6
B調査 26.5 59.713.3 0.5
予 測 57.8 ―41.6 0.5
(注)実数はA調査
609
人,B調査611
人。丸めによる誤差のために合計が
100.0%にならない場合がある。
ないが,A調査ではその差が
2.8
ポイントであるのに対して,B調査ではその差は約13
ポイントと なっている。したがって,A調査から得られる結論は「他の人」と「自分のこと」の比率がほぼ等 しいというものであるのに対して,B調査から得られる結論は「自分のこと」よりも「他の人」と いう結論になる。B調査では中間選択肢を選択した人に対してさらにフォロー・アップの質問をしているために,
中間選択肢が存在しない場合に予測される回答結果を得ることができる。この手続きは「民間人の 採用」の場合と同様である。B調査から予測される回答は表4の下部に示されているが「他の人」
57.8
%,「自分のこと」41.6
%,無回答0.5%
となり,A調査と予測を比較すると統計的に有意な差が 認められた(χ2=9.34 df=2 p=0.009)
。また結論も,A調査では「他の人」と「自分のこと」がほぼ 等しいと結論づけられるのに対して,予測では「自分のこと」よりも「他の人」が16
ポイントほど 高くなっているという結論が得られる。B調査と予測を比較した場合には,ほぼ同じ結論が得られる。中間選択肢を使用したB調査を使用して,ここでも中間選択肢が選択肢の中間に位置しているか どうかを検討してみることとする。具体的には「他の人」
×
「多くの人から喜ばれるようなことを進 んでやるべきである」のクロス表に対してコレスポンデンス・アナリシスを使用し,行の1
次元の得 点を調べてみた。その結果はR
1(他の人)=-.781
,R
2(どちらとも)=.223
,R
3(自分のこと)=.558
となり,中間選択肢はより「自分のこと」の近くに位置していることが明らかにされた。ただし,こ のコレスポンデンス・アナリシスも分析に使用する変数によって解が不安定であるということに留 意する必要がある。では,中間選択肢を最初に選択した人の中でどのような人が「他の人」や「自分のこと」を選択 するようになるのであろうか。ここでは,この点について検討してみよう。その目的のために,最初 にこの変化の方向の変数と調査に使用されたすべての変数のクロス表をとり,χ2検定を実施し,
5
%水準で有意な11
変数を拾い出した。ついで,それらの変数を使用して判別分析を変数消去法を 使用して実施したところ,「忙しすぎて学校で子供達と遊んだり,話したりする時間がとれないこと」と「勉強一般に関心を示さない生徒」の
2
変数のみが有意な変数であることが明らかにされ,判別 係数はそれぞれ.592
と.785
であった。すなわち,勉強に関心を示さない生徒が多くいると認知する ほど「自分のこと」と考える傾向となり,忙しいという悩みがないほど「自分のこと」と考える傾 向になるといえる。こうした中間選択肢を最初に選択した人がその後どのように意識を変えるのか ということと,最初から2
分法で質問された場合の回答傾向とは共通性が存在するのであろうか。この点を調べるために,A調査を利用して判別分析を実施してみた。1%水準で統計的に有意であ ると判断された
18
変数を使用し,判別分析を実施した結果,1変数のみが統計的に有意なもので あることが明らかにされた。その変数は「会議などで自分の意見をよく聞いてもらえる」で,よく 聞いてもらえると思っている教師ほど「他の人」と考える傾向になることが明らかにされた。この変 数のみで「他の人」か「自分のこと」かを回答者が判断しているとは考えがたいので,こうした意 識の形成はより複雑な要因の組み合わせによるものであると考えられよう。また,この二つの判別分 析の結果を比較することによって,共通する変数が存在していないために,最初から「他の人」と「自分のこと」に反応するプロセスと,中間選択肢を最初に選んだ人がその後「他の人」と「自分 のこと」に反応するプロセスは異なったものであるということが推測できるであろう。後者の場合 の方が,より具体的な経験によって意識を明確化しているように思われる。
次に,中間選択肢がある場合とない場合でχ2検定を実施した場合に有意差の出方がどのように 異なるかについて検討してみよう。A調査は中間選択肢がない質問であり,B調査は中間選択肢があ る質問である。A調査とB調査でサンプル・サイズはほぼ同じである。ここで分析の対象とする変数 は「先祖の墓は末永く守ってゆくべきである」など価値意識に関する
14
項目である。これらの項目 は,A調査B調査に共通して使用されている。5%の有意水準でχ2検定を実施したところ,A調査 では14
項目の中の6項目が統計的に有意であることが明らかにされた。一方,B調査では7
項目が 有意であることが明らかにされた。さらに,B調査(中間選択肢あり)で有意であった7
項目の中 の4
項目はA調査(中間選択肢なし)では有意となっておらず,反対にA調査において有意であっ た5項目の中の2
項目がB調査では有意ではなかった。またχ2値を見ても,A調査よりもB調査 において一般的に大きくなっている。これらのことは,中間選択肢を使用した場合には有意味な情報 が失われる危険性があるということを意味するものであろう。職業選択
この質問はA調査では「あなたは,もう一度職業を選択する機会が与えられたとしたら,教職に つきますか。それともつきませんか」と質問し,選択肢として「教職につく」と「教職につかない」
を用意した。B調査では「どうともいえない」という中間選択肢を用意し,この選択肢を選択した人 に対し,さらに「では,しいて言えばどちらでしょうか。教職につきますか,つきませんか」と質 問し,「教職につく」と「教職につかない」の選択肢を用意した。
表5 職業選択(%)
調 査 つ く どうともいえない つかない 無回答
A調査 49.4 ― 49.3 1.3
B調査 31.1 38.8
30.0 0.2
予 測 51.7 ― 47.8 0.5(注)実数はA調査
609
人,B調査611
人。丸めによる誤差のために合計が
100.0%にならない場合がある。
表
5
に結果が示されているが,中間選択肢を用意したB調査ではその比率が38.8
%と高くなって いるが,「つく」「つかない」の比率がほぼ等しくなっている点は,A調査でもB調査でも変わりは 見られない。B調査で中間選択肢を選択した人が「つく」「つかない」を選択した場合に予想される 結果が,表5
の下部に示されているが,この予測とA調査の結果では統計的に有意な差は認められ ない。ここでも,中間選択肢が選択肢の中間に位置しているかどうかを調べてみた。その目的のために,
職業選択(
3
カテゴリー)×
職業満足度(4
カテゴリー)のクロス表に対してlog-multiplicative
model
を使用した。その結果,L
2=12.22 df=2 p=.002
となり統計的には有意であるが,非類似指数(index of dissimilarity)は
0.05
であり,まずまずの適合度を示していることが明らかにされた。μ はそれぞれ,μ1(つく)=-0.760
,μ2(
どうとも)=0.123
,μ3(
つかない)=0.637
となり,中間選択 肢は中央よりもやや「つかない」側に寄っていることが明らかにされる。どのような教師が最初に中間選択肢を選択した後に教職に「つく」「つかない」を選択するように なるのであろうか。この点を明らかにするために,教師の資質(
16
項目),職業満足感ややりがい 感など(3項目)の合計19
項目を使用して判別分析を実施したところ,「やりがい感」のみが統計 的に有意な変数であることが明らかにされた。同様の分析を中間選択肢のないA調査で同じ変数を 使用して実施してみたところ,体力(.194
),職業満足感(.479
),教師になってよかった(.355
)と やりがい感(.355)の4
変数が有意であることが明らかにされた。ここでは職業満足感の値が相対 的に高くなっているのが目につく。このことより,この分析結果の範囲内で推測できることは,教師 が教職に「つく」か「つかない」かを判断する場合には満足感や体力など複数の要因を同時に考慮 して判断しているが,中間選択肢を選択した教師が教職に「つく」か「つかない」かを判断する場 合には「やりがい感」に基づいて判断しているということである。中間選択肢がある場合とない場合では,変数の関連はどのように変化するのであろうか。ここで はメンタル・ヘルスを測定する
10
項目と職業選択のクロス表を作成し,χ2検定を使用し調べてみ た。その結果,A調査(中間選択肢なし)では10
項目の中で9
項目が1
%水準で有意であることが 明らかにされた。これに対して,B調査(中間選択肢あり)では4
項目のみが有意であった。B調 査では有意ではなく,A調査で有意となった項目は5
項目であった。したがって,ここでは中間選 択肢を使用しないことによって,より多くの変数を発見していることになる。ここでの結果は,前 の「他の人」の分析結果とは異なるものである。要約と結論
本研究は中間選択肢がある場合とない場合で回答にどのような差が現れ,それらが実際のデータ 解析においてどのような影響を与えるのかを明らかにすることであった。本研究では,以下のよう なことが明らかにされた。
(1)
分析に使用された質問文では中間選択肢を設けた場合には,回答の約40-60
%が中間選択肢 に集中することが明らかにされた。これは無視できない数字である。(2) いずれのデータでも中間選択肢は選択肢の中央には位置していない。
(3)
中間選択肢がない場合に回答者が回答するメカニズムと,中間選択肢を最初に選択し,その 後に両端どちらかを回答する回答者の回答のメカニズムは異なっていると推定できる。(4) 中間選択肢がある場合とない場合では,関連する変数を発見するのに差が認められる。
では,中間選択肢をどのように扱えばよいのであろうか。本研究で取り上げたような例の場合に は,中間選択肢を選ぶ比率を無視できるものではない。したがって,こうした場合には中間選択肢 が使用されるべきであろう。そして,さらに中間選択肢を選択した回答者に対して,フォロー・ア ップの質問をすべきであろう。もし,調査者が回答者の両極端の意見にのみ関心がある場合には
2
分法でも,回答の傾向自体は同じようなものになると予想されるので,問題はないと思われる。引用文献
Clogg,C.C..1982. “Using Association Models in Sociological Research:Some Examples”. American Journal of Sociology, 88, pp. 114-134.
Goodman, L..1979.“Simple Models for the Analysis of Association in Cross-Classifications Having Ordered Categories”.Journal of the American Statistical Association, 74, pp. 537-552.
林知己夫.1993.『行動計量学序説』(朝倉書店).
Kalton, G., J. Roberts and D. Hold. 1980.“The Effect of Offering a Middle Response Option with Opinion Questions”.The Statistician, 29 (1), pp. 65-78.
国民性調査委員会.1999.『国民性の研究 第10次全国調査―1998年全国調査―』統計数理研究所研究リポート 83.
O’ Muircheartaigh, C.,J.A.Krosnick, and A.Helic. 2000. “Middle Alternatives, Acquiescence, and the Quality of Questionnaire Data”
(未発表論文).
Presser S. and H.Schuman.1980. “The Measurement of a Middle Position in Attitude Surveys”. Public Opinion Quarterly, 44, pp. 70-85.
Robinson,John P.,Phillip R.Shaver and Lawrence S. Wrightsman (eds.). 1991. Measures of Personality and Social Psychology.San Diego, Academic Press.
(付記:本研究は日本世論調査協会の 2005 年度の研究集会において報告したものに,加筆・修正を加えたもの である。また,調査は科学研究費によるものである。調査に御協力いただいた先生方に感謝申し上げます。)