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愛媛大学医学部血液・免疫・感染症内科学,

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(1)

血球貪食リンパ組織球症を合併し致死的経過を辿った 重症熱性血小板減少症候群の 1 例

1)

市立宇和島病院内科,

2)

愛媛大学医学部血液・免疫・感染症内科学,

3)

愛媛県立衛生環境研究所

金子 政彦

1)

東 太地

2)

安川 正貴

2)

四宮 博人

3)

(平成 27 年 1 月 14 日受付)

(平成 27 年 4 月 10 日受理)

Key words : Severe fever with thrombocytopenia syndrome(SFTS), hemophagocytic lymphohistiocytosis(HLH)

重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome : SFTS)は,ブニヤウ イルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイル スによるマダニ媒介性の新興感染症であり

1)

,本邦で は,2013 年 1 月に国内初の症例が報告され

2)

,以後,

西日本を中心に報告数が増加している.致死率は 12〜

30% と報告されているが,重症化の要因としてサイ トカインストームとの関連も示唆されている

3)

.今回 我々は,経過中に 2 次性の血球貪食リンパ組織球症

(hemophagocytic lymphohistiocytosis : HLH)を合併 し,サイトカイン除去目的の持続血液濾過透析と血漿 交換の併用療法,およびサイトカインストーム抑制目 的に強力な免疫調節療法を行うも,救命が困難であっ た SFTS の症例を経験した.HLH を合併した SFTS 症例の治療法は確立されていないが,文献的考察を加 え報告する.

症例:60 歳代,男性(愛媛県南部在住).

主訴:発熱,悪寒.

既往歴:4 カ月前に肺癌 I 期で治癒切除,十二指腸 潰瘍(30 歳).

社会生活歴:イヌ・ネコと接触する機会は多い,1 カ月以内の野外活動歴なし.

現病歴:1 週間前に誘因なく両前腕に 2〜3mm の皮 疹が出現し 3 日くらいで消失した.3 日前から悪寒・

戦慄を伴う 39 度の発熱が出現し,近医で Cefcapene pivoxil 300mg! 日を処方され内服したが,発熱が持続 するため 2012 年 4 月 X 日(第 4 病日)に当科に紹介

され入院した.

入院時身体所見:血圧 120! 80mmHg,体温 39.8℃,

脈拍数 98 ! 分,呼吸数 28 ! 分,SpO

2

92%(室内気),

意識清明,表在リンパ節腫大なし,呼吸音:正常肺胞 呼吸音,心音:整・過剰心音なし,腹部:平坦・軟,

圧痛なし,皮膚:刺し口など特記すべき異常なし.

入院時検査所見(Table 1):血小板減少,AST 上 昇,ALT 上昇,LDH 上昇,低ナトリウム血症,APTT 軽度延長,尿蛋白陽性,および可溶性 IL-2 レセプター

(sIL-2R)上昇を認めた.白血球数は正常で,腎機能,

CPK,CK-MB ともに正常であった.第 10 病日に測 定した NK 活性は正常であった.胸部 CT で左下肺野 にわずかなスリガラス陰影を認めた.尿培養,喀痰培 養,血液培養はいずれも陰性であった.

入院後経過(Fig. 1):皮疹と発熱に加えて,血小 板減少と肝機能異常を認めたことから,入院時は日本 紅斑熱を考慮し,levofloxacin(LVFX)500mg×1 回

! 日,minocycline(MINO)100mg×2 回! 日の投与を 開始した.入院翌日(第 5 病日)に断綴性言語と四肢 振戦が出現し,入院 3 日目(第 6 病日)には失見当識 障害とミオクローヌス様の上肢運動が出現した.入院 5 日目(第 8 病日)には混迷状態となったが,頭部 MRI では異常を認めなかった.LVFX と MINO の治療効 果は認められないため,レプトスピラ症や動物咬傷に よ る 人 畜 共 通 感 染 症 を 考 え,sulbactam! ampicillin

(SBT ! ABPC)3g×4 回 ! 日,ciprofloxacin 300mg×2 回! 日,gentamicin(GM)1.7mg! kg×3 回! 日 の 併 用 を行い,また SBT! ABPC から ceftriaxone(CTRX)2 g×2 回! 日に変更したが無効であった.白血球数と血 小板数は低下し,AST,LDH,CK は進行性に増加し,

1 日 10g 以上の尿蛋白も認めた.入院 6 日目(第 9 病

別刷請求先:(〒798―8510)愛媛県宇和島市御殿町 1―1

市立宇和島病院内科 金子 政彦

(2)

Fig. 1 Clinical course

LVFX: levofloxacin, MINO: minocycline, GM: gentamicin, SBT/ABPC: sulbactam/ampicillin, CPFX: ciprofloxacin,  CTRX: ceftriaxone

rTM: ricombinant thrombomojurin, DEX: dexamethasone, CsA: cyclosporine, CHDF: continuous hemodiafiltration Table 1 Laboratory findings on admission

Blood cell count Biochemistory Immunology

WBC 4,600 /μL T-Bil 0.5 mg/dL CRP 0.13 mg/dL

 Ne 56 % D-Bil 0.2 mg/dL sIL-2R 2,965 U/mL

 Eo 0 % AST 366 IU/L

 Ba 0 % ALT 299 IU/L RPR (−)

 Ly 30 % LDH 471 IU/L TPLA (−)

 Mo 13 % ALP 246 IU/L HBs-Ag (−)

Hb 15.6 g/dL BUN 18 mg/dL HCV-Ab (−)

Hct 42.60 % Cr 0.90 mg/dL HIV-Ab (−)

Plt 3.7×10

4

/μL TP 7.8 g/dL

Urinalysis Alb 4.2 g/dL Culture

  U-SG (−) CK 111 IU/L blood negative

Pro (−) CK-MB 13 IU/L Sputum negative

OB (−) Na 133 mEq/L Urine negative

Coagulation K 4.0 mEq/L

PT 101 % Cl 100 mEq/L NK-cell activity

APTT 38.2 sec Ca 8.5 mg/dL E/T=10:1 23

D-dimer 0.7 μg/mL Amylase 49 U/mL E/T=20:1 36.4

日)に集中治療室に入室し人工呼吸器管理を開始した.

血清フェリチンは 59,083ng! mL,sIL-2R も 2,965U! mL と増加しており,2 次性の血球貪食リンパ組織球症

(hemophagocytic lymphohistiocytosis : HLH)による サイトカインストームが原因で多臓器不全に陥ったと 考え,サイトカイン除去目的に持続血液濾過透析と血

漿交換の併用療法を開始した.また免疫調節療法とし

て cyclosporine ( CsA ) 3 mg ! kg × 2 回 ! 日と dex-

amethasone(DEX)40mg×1 回! 日の投 与 も 開 始 し

た.入院 7 日目(第 10 病日)に骨髄穿刺を施行した

が血球貪食像は認めなかった.入院 9 日目(第 12 病

日)には下部消化管出血と肺出血をきたした.入院 10

(3)

Fig. 2 Microscopic autopsy findings under hematoxylin-eosin staining.

Marked hemophagocytosis is present in the lymph node (A), bone marrow (B), spleen (C),  and liver (D) (×400).

日目(第 13 病日)に愛媛大学医学部付属病院集中治 療部に搬送し集中治療を継続したが,第 15 病日に死 亡した.

病理解剖所見(Fig. 2):リンパ節,骨髄,肝臓,脾 臓に著明な血球貪食像を認めた.本症例はこの時点で 確定診断に至らなかったが,2013 年 11 月に残存血清 の PCR 検査により SFTS と最終診断した.国立感染 症研究所感染病理部に依頼して,各臓器の抗 SFTS ウイルス NP 抗体を用いた免疫染色を施行して頂い た.検索したいずれの組織にも SFTS ウイルス NP 抗 原陽性細胞を認め,とくに縦隔リンパ節,脾臓,肝臓,

および骨髄に多くの抗原陽性細胞が認められた(Fig.

3).さらに,各臓器の SFTS ウイルス RNA 量を Real- time RT-PCR 法にて測定した.コントロールの Beta- actin が 1.5E+03copies! cell としたときの細胞あたり のウイルス RNA 量を測定したところ,いずれの検体 からも 1 細胞あたり 10〜10,000 コピーの高コピーの SFTS ウイルスのウイルス RNA が検出された(Table 2).

SFTS は,SFTS ウイルスに感染後 6 日〜2 週間の 潜伏期を経て,発熱,消化器症状で発症し,白血球減 少,血小板減少,および肝機能異常も出現する.鑑別 としては,同じマダニ媒介性感染症である日本紅斑熱

などが挙げられるが,SFTS ではほとんどの症例で CRP が陰性か軽度上昇に留まることから,この疾患 を想起することが可能と考えられる.重症化に関連す る因子には,検査値異常(AST>400U! L,LDH>800 U ! L,CK>1,000U ! L,CK-MB>50U ! L,血清アル ブ ミ ン<3.0mg! dl,APTT>66.0sec,血 清 ナ ト リ ウ ム<130meq! L),高ウイルス量,出血症状や中枢神 経症状の出現,播種性血管内凝固症候群の合併,およ び多臓器不全への進行とされる

4)

.本症例では経過中 に上記の全ての項目を満たし,集中治療にもかかわら ず救命困難であった.

HLH は侵襲に刺激されて発症した不適切な免疫制

御に起因する高サイトカイン血症と活性化リンパ球お

よび組織球の臓器浸潤により生じる病態であり

5)

,時

として致死的な経過をとる.感染症が原因の HLH で

も各種炎症性サイトカインの過剰産生が認められる

が,サイトカインストームへの進展は感染微生物に特

異的ではない.基礎に免疫不全状態が存在する場合に

起こりやすいといわれているが,本症例は肺癌治癒切

除後であり免疫不全状態にあるとはいえない.重症化

した SFTS 患者では,CD4 陽性 T 細胞数の減少を伴

い免疫機構の異常から免疫不全状態を合併しているこ

とが指摘されており

6)

,HLH へと進行する臨床経過に

深く関与している可能性がある.本症例では,複数の

(4)

Fig. 3 Immunohistochemical tissue images.

Immunohistochemistry  of  the  mediastinal  lymph  node  (A),  spleen  (B),  liver  (C),  and  bone  marrow  (D)  shows  numerous  instance  of  severe  fever  with  thrombocytopenia  syndrome  virus-NP-positive cells (×200).

Table 2 Results  of  RT-PCR  for  severe  fever  with  thrombocytopenia syndrome virus (SFTSV).

Tissue RT-PCR (SFTSV-RNA, Copy/cell) Mediastinum lymph node 1.05E+04

Spleen 1.11E+03

Liver 1.41E+02

Ileum 1.31E+03

Bone marrow 9.80E+00

Right kidney 1.46E+01

Heart 1.46E+01

Left lung 1.63E+01

Adrenal grand 6.59E+01

臓器にウイルス感染細胞を認めており,ウイルス感染 細胞が宿主の免疫システムで排除出来ていないこと が,さらに異常な免疫活性化を招いたと考えられる.

HLH の治療の目的は,高サイトカイン血症の改善 と過度に活性化しているリンパ球,マクロファージの 抑制である.血漿交換は高サイトカイン血症の速やか な是正を必要とする場合,または一時的に緩和される ことを期待して施行されることがあるが,その効果に ついて定まった評価はない.本症例では集中治療室に 入室した入院 6 日目(第 9 病日)から血漿交換を開始 し,翌日から開始した DEX+CsA と合わせて,死亡 前日まで連日血漿交換を行った.それでも HLH の病

勢は制御出来ていなかったことから,治療開始時期が 遅かったことと,免疫調節療法の強度が弱かった可能 性が考えられる.感染症関連 HLH に対しての免疫調 節治療として,大量免疫グロブリン療法

7)

やエトポシ ドの有効性が示唆されている.とくにエトポシドは単 球系および組織球系疾患において有用で,抗原提示細 胞に障害性に働き,過剰な免疫刺激の抑制に働くとさ れ,HLH 病態改善の key drug と認識されている

8)

.高 度な血球減少を伴い発熱を来している SFTS 患者に,

抗癌剤であるエトポシドを使用することは躊躇される かもしれないが,病勢のコントロールが出来なければ 致死的な経過をとるため,その使用を積極的に考慮し ても良いのかもしれない.一方で,重症 SFTS 患者 にステロイドを使用した後に,SFTS の病態に改善を 認めたにもかかわらず真菌感染による日和見感染を併 発し死亡したとの報告もある

9)

.強力な免疫調節治療 の適用を慎重に判断するとともに,日和見感染症に対 する適切な抗真菌薬予防投与なども必要と考えられ る.

SFTS の診療において,現時点では重症化をリアル

タイムに予測する因子は存在しないため,日々の臨床

所見と検査データの推移から HLH への進行を早期に

捉えることが重要である.また効果的な抗ウイルス薬

が存在しないため,HLH への進行が疑われた場合に

(5)

は可及的速やかに適切な免疫調節治療を開始する必要 がある.その際には日和見感染の併発も念頭においた 支持療法も必要と考えられる.

謝辞:稿を終えるにあたり,本症例の病理検査およ び診断に関しご協力を頂きました,愛媛大学医学部分 子病理学の北澤荘平先生,北澤理子先生,国立感染症 研究所感染病理部の鈴木忠樹先生,長谷川秀樹先生,

および国立感染症研究所ウイルス第 1 部の西條政幸先 生には深く感謝致します.また,治療に関してご協力 頂きました愛媛大学医学部血液・免疫・感染症内科学 の鹿田久治先生,愛媛大学医学部麻酔・蘇生学講座の 出崎陽子先生にも深く感謝致します.

利益相反自己申告:申告すべきものなし

文 献

1

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2

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3

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4

)Gai ZT, Zhang Y, Liang MF, Jin C, Zhang S, Zhu CB, et al.:Clinical progress and risk fac- tors for death in severe fever with thrombocy- topenia syndrome patients. J Infect Dis 2012;

206(7):1095―102.

5

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9

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A Fatal Case of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Complicated by Hemophagocytic Lymphohistiocytosis

Masahiko KANEKO

1)

, Taichi AZUMA

2)

, Masaki YASUKAWA

2)

& Hiroto SHINOMIYA

3)

1)

Department of Internal Medicine, Uwajima City Hospital,

2)

Department of Hematology, Clinical Immunology, and Infectious Diseases, Ehime University Graduate School of Medicine,

3)

Ehime Prefectural Institute of Public Health and Environmental Science

Severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) is a recently identified emerging viral infectious disease in China that is caused by a novel phlebovirus in the family Bunyaviridae, SFTS virus, with an aver- age case fatality rate of 12〜30%. A cytokine storm with abnormally expressed cytokine profiles is associ- ated with the disease severity. Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH) is an aggressive and life- threatening syndrome associated with excessive immune activation. We report herein on a fatal case of SFTS complicated by HLH. Consecutive plasma exchange and immunomodulatory therapy was ineffective in our case. The pathognomonic histological feature was necrotizing lymphadenitis with massive hemo- phagocytosis of systemic lymphoid tissues with SFTS viruses and SFTS-RNA copies. No specific treatment of SFTS is available, and an effective treatment strategy for patients with rapidly progressing SFTS has not been established. Appropriate immunomodulatory therapy is necessary for SFTS patients complicated by HLH.

〔J.J.A. Inf. D. 89:592〜596, 2015〕

Fig. 1 Clinical course
Fig. 2 Microscopic autopsy findings under hematoxylin-eosin staining. Marked hemophagocytosis is present in the lymph node (A), bone marrow (B), spleen (C),  and liver (D) (×400)
Fig. 3 Immunohistochemical tissue images.

参照

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