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(1)

757

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

四方田 健二

新型コロナウイルス感染拡大に伴う不安やストレスの実態:

Twitter 投稿内容の計量テキスト分析から

名古屋学院大学スポーツ健康学部

〒480-1298 愛知県瀬戸市上品野町1350 連絡先 四方田健二

Faculty of Health and Sports, Nagoya Gakuin University 1350 Kamishinano, Seto, Aichi 480-1298

corresponding author kenji.yomoda@gmail.com

Abstract:

The novel coronavirus (COVID-19) pandemic has seriously affected individual lifestyles and circumstances. This study aimed to explore the public concerns and stress caused by the pandemic.

Data were collected from Twitter posts that included the terms ‘corona’ AND (‘fatigue’ OR ‘stress’ OR ‘de- pression’) from January 15 to March 17, 2020 (9 weeks; 63 days). Text data in 241,720 posts were analyzed using a quantitative text analysis technique employing KH Coder software.

The results showed that concerns and stress related to coronavirus varied over a wide range of aspects, includ- ing fear of infection, stress due to restriction of daily behavior and recreational activities, concerns over govern- ment epidemiological measures and economic damage, and concerns arising from media information. In particu- lar, concerns and stress resulting from restriction of daily behavior and recreational activities were found to have increased through the lengthening of restrictions. These results suggested a need for public support in order to maintain physical and mental health. It was also suggested that school health education and social health promo- tion should be considered to include approaches for managing stress and practical knowledge of media literacy which adapt to the spread of social network communication during the pandemic phase.

Key words : infectious disease, stress management, health education, SNS

キーワード:感染症,ストレスマネジメント,健康教育,ソーシャルネットワーキングサービス

YOMODA Kenji : Concerns and stress caused by the novel coronavirus disease (COVID-19) pandemic: A quantitative text analysis of Twitter data. Japan J. Phys. Educ. Hlth. Sport Sci.

Ⅰ 背 景

1. 新型コロナウイルス感染拡大による影響 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,

2019

年末に中国河北省武漢市で集団感染が報告 されて以降,世界中に感染が拡大し

2020

6

月 末には感染者数が累計

1,000

万人を超えた(Johns

Hopkins University, online).日本国内では,2020

1

15

日に初の感染者が確認されて以降,6 月

30

日までに累計

18,000

人の感染者が報告され ている.こうした感染の拡大状況に対し,日本政 府は感染地域からの入国制限の措置とともに,2 月

26

日に国内の不要不急の外出や大型イベント

の自粛の要請を含む対策方針を決定した.また,

2

27

日には政府により全国の小中学校,高等 学校,特別支援学校の臨時休校が要請された.さ らに

4

16

日には全国を対象とする緊急事態宣 言が発令され,5月

25

日に解除されたものの感 染クラスターの報告は続いている.効果的なワク チンの開発が待たれるが,ウイルスとの戦いは長 期化することが予想されている.そのため,人々 の生活環境の著しい変化に伴う心身への影響は今 後さらに長期間に及ぶことが想定され,その影響 について迅速に把握し対応策を検討することが求 められる.

新型コロナウイルスの感染拡大はスポーツ・健 康関係の分野にも様々な影響をもたらした.例え 研究資料 体育学研究 65:757-774,2020

(2)

ば,プロ組織を含むスポーツイベントや大会の中 止や延期,無観客試合の措置が全国で相次いでい る.クラスター感染が屋内スポーツジムで発生し たことから,スポーツ施設等の利用制限も広が っている.また,3月

24

日には

2020

年東京オリ ンピック・パラリンピック大会についても

1

年延 期が決定された.さらに,長期間の休校措置によ り児童生徒の体育授業や部活動への参加機会を奪 い身体活動量の低下を招いていることが懸念され る.

感染拡大や生活への影響による人々の精神的な 不安やストレスの増大についても懸念される.サ ーベイリサーチセンター(2020)の

Web

調査(3 月

6

日―3月

9

日実施)によると,ウイルス感染 への国民の不安が増加していることが報告され た.また,同調査では,先行きが見えないこと,

ウイルスの治療法がないこと,ウイルスが目に見 えないことに対する不安感が特に高く,日常生活 や経済活動,休校措置により生活に影響が出てい ることも報告されている.英文誌でも新型コロナ ウイルス感染拡大に伴う不安やロックダウン中の 生活の制限によるメンタルヘルスへの影響を報告 している例がみられる(Rajkumar, 2020; Torales et

al., 2020).

現代社会の環境によるストレスの要因につい て,宮城(2009)は家庭環境の変化,職場環境の 変化,社会生活の変化を挙げている.新型コロナ ウイルスは,まさにこれらの家庭環境,職場環 境,社会生活に大きな影響を及ぼしている.加え て,スポーツや文化,音楽イベント,旅行,交流 などの制限はストレスマネジメントの鍵となる積 極的休養の機会も著しく減少させていると考えら れる.こうした日常生活が大きく変容する状況で の心身の健康や体力への影響についての知見は限 られている.そのため,心身の健康の維持増進に 関する支援を講ずることも困難な状況となってい る.

2. SNS を用いた調査研究の動向

人々の不安や疲労感の実態について調査する方 法として,質問紙調査やインタビュー調査が想定

される.しかし,インタビュー調査は一般的に十 数名程度の限定した特異な属性の対象者の経験を 深く洞察する際に有用であるものの,社会的な不 安や疲労感を広く把握することは難しい.他方で,

質問紙調査では幅広い対象者からの情報を量的デ ータとして得ることが可能となるが,調査内容は あらかじめ設定された設問に限られる.質問紙調 査の自由記述形式による設問はこうした両者の方 法の懸念を低減できるが,いずれも基本的には調 査時点または過去に遡った情報収集方法であると いう限界がある.即ち,感染拡大状況と社会的な 状況が刻々と変化する中での心理的応答について 検討することは難しい.そもそも感染流行期には ヒトを対象としたこれらの調査自体の実施が極め て困難である.

他方で,保健,健康科学の分野では近年,ソー シャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の 投稿内容を分析する研究例が見られる.英文誌で は,2010年頃以降に健康関連分野において

SNS

上のデータを分析した研究例が急増している(Dol

et al., 2019; Sinnenberg et al., 2017).なかでも公衆

衛生と感染症に関する研究例が特に多いことが報 告されている(Sinnenberg et al., 2017).SNSによ る調査は,その時どきの状況が即時的に反映され,

大多数のデータ収集を可能とする.健康関連分野 における

SNS

を用いる研究のプラットフォーム

(サービス提供事業者)として,Twitter注1)のデ ータが最も多くの研究で用いられている(Dol et

al., 2019).例えば,2009

年の新型インフルエン

ザ(H1N1),2015―2016年のジカウイルスの流

行期の

Twitter

投稿内容の分析により人々の心理

や行動を調査する研究が報告されている(Chew

and Eysenbach, 2010; Fu et al., 2016; Glowacki et al., 2016).

和文誌では,熱中症に関連する

Twitter

投稿内 容から熱中症の兆候を解析する例(布施ほか,

2016;2019)が見られる.また,災害時の人々の

行動や心理的状況について

SNS

による分析を試 みる例がみられる.例えば,三浦ほか(2015)は,

2011

3

11

日の東日本大震災発生から

1

週間

Twitter

投稿内容を分析し,不安感情の増大の

(3)

759

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

実態を報告している.また,濱岡ほか(2013),

梅島ほか(2011)は東日本大震災発生後のデマの 拡散の実態を分析している.しかし,和文誌の健 康関連分野で

SNS

データを活用した研究例は限 られているといえる.

3. 目的

グローバル化の進んだ現代社会では,ウイルス や病原菌の感染を水際で未然に防ぐことは難し く,迅速かつ適切な感染防止対策が求められる.

その一方で,大規模な感染防止対策により,社会 的な不安やストレス,疲労感により人々の心身の 健康への影響が懸念される.こうした状況におけ る人々の心身の健康に関する影響を検証すること は,今後の感染防止対策による社会的な影響を予 測し健康の保持増進に関する対応策を検討するた めに有用な情報を得られるだろう.他方で,感染 拡大や生活の変化による不安やストレスへの対処 の実践には学校での保健教育注2)や社会的な健康 教育の果たす役割が大きい.折しも,2017(平成

29)年に改訂された学習指導要領では,小学校体

育科保健領域および中学校保健体育科保健分野に おいて,不安やストレスへの対処に関する「知識」

に加え「技能」の学習内容が追加された(文部科 学省,2018a,2018b).急激な生活環境の変化に よる不安やストレスの動向について調査すること は,学校での保健教育および社会的な健康教育の 面でも役立てられるだろう.

そこで,本研究では,新型コロナウイルス感 染拡大に伴う不安やストレス等の意識について,

SNS

の投稿内容から明らかにすることを目的と した.

Ⅱ 方 法

本研究では,Twitterの投稿内容を収集し分析 対象とした.データ収集には,Python注3)で動作 する

GetOldTweets

注4)のパッケージを用いた.デ ータ分析には

KH Coder Ver. 3

注5)による計量テキ スト分析注6)(樋口,2014)を用いた.調査の手 順は以下の通りである.

1. データ収集方法 1.1 予備調査

まず,新型コロナウイルス感染症に伴う不安や ストレスなどの意識に関する投稿内容の検索条件 の検討のために予備調査を行った.これに関す る報道として確認できる最も早期のものとして,

2020

3

6

日にハッシュタグ「#コロナ疲れ」

を付した

Twitter

投稿が数多くみられることを紹

介した

NHK NEWS WEB

の報道が挙げられる.

しかし,ハッシュタグを付けずに関連した内容を 投稿する場合や別の用語で言及される場合も想定 される.そのため,データ収集の検索語を検討す るために,2020年

3

1

日から

3

10

日の期間 でハッシュタグ「#コロナ疲れ」が付された投稿 を収集した.収集された

280

件の投稿内容から,

KH Coder

により共起語

74

語がリストアップされ

た.これらの語を筆者が確認し心理状態に関する 語句として,「ストレス」,「疲れ」,「鬱」を選定 した.また,予備分析では,これらに関連して「不 安」に関する内容が多くみられた.

新型コロナウイルス感染症の呼称について,

WHO(世界保健機関)は,「COVID-19」と名付

けたが,日本国内の報道や厚生労働省発表資料で は一般的に「新型コロナウイルス」が用いられて いる.上記予備調査データではウイルスを指す言 葉として,「コロナ」,「コロナウイルス」,「新型 コロナ」等の略語が用いられる傾向がみられたが,

「コロナ」を含む特徴は共通しているといえる.

そこで,検索条件として,「コロナ」および「疲 れ」または「ストレス」または「鬱」または「不 安」のいずれかが含まれるよう設定した.

1.2 データ検索

Python 3.8

(Windows) に よ り

GetOldTweets

を 実行し,「(コロナ AND(不安 OR ストレス OR 疲れ OR 鬱))」を検索条件として「投稿内容」と

「投稿日時」を収集した.

データ収集の対象期間は,日本国内の

1

例目の 感染者が確認された

2020

1

15

日(水)から,

3

17

日(火)までの

9

週間,63日間である.

Twitter

のデータ収集は

15

分間に

18,000

件の上限

(4)

が設けられているため,3月

12

日から

3

22

日 までの期間に

31

回に分割して検索を実行した.

なお,論文執筆中および査読期間中に感染拡大 状況に大きな変動があったため,

3

18

日から

6

30

日までの期間の追加データ検索を

7

1

日 から

7

5

日にかけて行った.ただし,追加デー タについては検索結果の投稿数のみを示し,内容 の分析は上記の

9

週間のデータに対してのみ行っ た.Twitterの投稿日時情報はグリニッジ標準時

(GMT)を基にしているが,収集データでは,日 本標準時(JST)に変換した.なお,検索結果か らは,非公開設定の投稿内容および

Twitter

社に 不適切な投稿を警告されたユーザーの投稿内容は 除外されている.

分析対象データ収集期間

9

週間の検索結果と して,249,356件の投稿内容が得られた.そのう ち,重複した投稿内容

7,636

件(3.1%)を除いた

241,720

件を分析データとした.

1.3 倫理的配慮

SNS

のデータを用いる研究が近年急増してい るものの,研究倫理のガイドラインは明確に統一 されていない(Sinnenberg et al., 2017).SNSのデ ータを用いる研究では,関連法規,プラットフォ ームの規定,研究者の倫理的行動への配慮が求め られるとされる(Ahmed et al., 2017).

Twitter

投稿内容は,日本語で

140

字(英語等

では

280

字)以内注7)の短いテキストであるが「著 作物」であり著作権法への留意が必要である.日 本の著作権法では,2019年に施行された改正著 作権法でデジタルデータの取扱いをより柔軟に行 えるようになった.改正方針の

1

つである「デジ タル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な 権利制限規定」により,非営利的目的に限らず,

著作物の複製,解析を著作権者の許諾なく行える 範囲が広がった.改正法の第

47

条の

7

では,「…

大量の情報から,当該情報を構成する…要素に係 る情報を抽出し,…解析を行うこと」が著作権者 の利益を不当に害することがない等一定の条件を 満たせば可能とされた.

Twitter

の利用規定では,ユーザー登録時に投

稿内容が第三者に使用されることに同意を求め られる.実際,2006年の創設時の最初の投稿か ら全ての公開設定の投稿内容をインターネット 上で検索可能である.それゆえ,多くの研究で は,Twitterの投稿内容は誰でもインターネット 上で入手できる公開情報と捉えられている.また,

Twitter

社は,

2020

3

11

日にディベロッパー・

ポリシーを改訂し,非営利の研究を目的とした投 稿内容の収集が可能であることを明記し学術的な データ利用の規定を明確にした.

SNS

を用いた研究の研究倫理について,健康 関連分野の

SNS

等を用いた論文のレビュー(Ayers

et al., 2018; Dol et al., 2019; Sinnenberg et al., 2017)

では次のことが報告されている.

・対象者の同意を得ている研究は約

1

割であっ た.

・対象者の同意を得た研究は,主に患者への介入 研究や

SNS

上での公募型の調査であった.

・倫理審査を受けた論文は約

30%から 40%,そ

のうち

4

割が承認,6割は審査免除(公開情 報を扱うため)とされていた(Dol et al., 2019;

Sinnenberg et al., 2017).

・約

72%

の論文で投稿内容の引用が掲載され,

そのうち約

6

割でアカウント名も掲載されてい た(Ayers et al., 2018).

上記の研究動向のレビューでは,SNSのデー タを用いる場合の研究倫理について,従来のヒト を対象とした研究倫理規範が馴染まないことが示 唆されている.数十万件を超えるような大規模な データセットを用いる場合,従来の研究のように 対象者にインフォームドコンセントを得ることは 難しい.ビッグデータの解析の場合,データを公 開情報と捉え,倫理審査を要しないと判断される ことが多い.それでも,プライバシーや著作者人 格権に対する研究者の倫理的な行動への留意は必 要と考えられている(Ahmed et al., 2017; Ayers et

al., 2018; Williams et al., 2017).この点に関し,近

年では

SNS

のデータを用いた研究の倫理指針を 提案する動きがある(Ahmed et al., 2017; Williams

(5)

761

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

et al., 2017).また,ジョージ・ワシントン大学

SNS

のデータを用いる際の研究倫理指針を示 している(George Washington University Libraries,

online).これらの指針の提案内容は,概ね次のよ

うなものである.

SNS

のプラットフォームの規定に従う.

・データ収集は「公開」データに限られるべきで あり,ダイレクトメッセージやチャットルーム などの「私的」な空間のデータを用いる場合は,

同意を得るべきである.

・投稿内容には様々なプロフィール情報等のメタ データが付随しているが,その収集は最小限に とどめるべきである.

・投稿内容を引用し掲載する場合は同意を得られ た場合に限るべきであり,同意を得ない場合は 要約や言い換えを行う.

・ユーザー

ID

やアカウント名,位置情報を掲載 する場合は同意を得られた場合に限るべきであ る.

筆者の所属研究機関の研究倫理委員会の規定は

SNS

データ収集による研究に対応していないた め,本調査の倫理審査を受けていない.そのため,

SNS

データを用いる研究倫理指針を示したジョ ージ・ワシントン大学の指針に従いデータ収集を 行った.即ち,公開データのみの収集,投稿内容 と投稿日時のみの収集にとどめ,投稿内容の引用 掲載はしないこととした.なお,筆者は,Twitter 社 Developer team に健康科学に関する研究を目的 としたデータ収集および分析,結果の発表につい ての計画を申請し,承認を得ている.

2. データ分析方法

収集されたデータに対して,投稿数の推移を集 計するとともに,投稿内容を

KH Coder Ver. 3

を 用いて計量テキスト分析を行った.

2.1 投稿数の集計

投稿内容に「不安」,「ストレス」,「疲れ」,「鬱」

の各検索語が含まれる件数を

1

日ごとに集計し

た.

2.2 KH Coder による計量テキスト分析

KH Coder

に よ る 計 量 テ キ ス ト 分 析( 樋 口,

2014)では,分析の第 1

段階では恣意的になりや

すい手作業を交えずに機械的にデータを解析する ことができる.第

2

段階では,分析者の問題意識 を追求するためのコーディングルールを作成し,

分析を行う.ただし,コーディングルールは分析 者によって作成,設定されるが,コーディング作 業はそのルールに従って機械的に処理される.こ れにより,膨大なデータについて主観や偏り,恣 意性を排除して全体を把握したうえで,分析者の 問題意識を反映させた解釈を行うことが可能とな る(樋口,2014).本研究における

KH Coder

に よる分析の手順は次の通りであった.

2.2.1 前処理

Twitter

投稿内容には,日本語としての意味を

持たない様々な記号やタグ情報が含まれている.

そのため,KH Coderの分析においてエラーの原 因となる文字列を削除するために次のように前処 理を行った.まず,データ内の

URL

及び半角文 字「”

, ʼ , |, \, <, >」を削除した.次に,KH Coder

の事前チェック機能を用いて,記号等を検出し削 除した.また,形態素分析の試行を繰り返し,抽 出語注8)の区切りを確認した.「イン,フル」,「パ ンデ,ミック」,「クラ,スター」のように語の区 切りが適切でない例が見られたため,これらの語 を含む強制抽出語リストを作成しこれらの語が抽 出されるよう設定した.

デ ー タ を 形 態 素 分 析 し た 結 果, 延 べ 語 数

12,943,715

(異なり語数

82,898)

注9)が抽出された.

このうち,助詞(が,は,の,に,を等)や助動 詞(だ,です,ます,らしい,れる,られる等),

感動詞(まあ,さあ,おはよう等)等は分析から 除外した.これらを除いた延べ語数

5,323,337

(異

なり語数

75,247)が分析に用いられた.

2.2.2 対応分析

KH Coder

の対応分析を用いることで,データ

全体を分割してどの部分に特徴的な語が用いられ ているかを図示することができる.本調査では,

(6)

投稿内容を第

1

週(W1)から第

9

週(W9)に分 割し,それぞれの週に特徴的な語(Jaccard係数

10)上位

70

語)を図示した.

2.2.3 共起ネットワーク

KH Coder

の共起ネットワーク分析機能を用い

ることで,抽出語の関係性を描画することが出来 る.本調査では,「不安」と「疲れ,ストレス,鬱」

のそれぞれの関連語検索を行い,関連語(Jaccard 係数上位

120

語)の共起ネットワークを描画し た.これらの検索語の関連語が含まれる投稿内容 から,つながりの強い語同士の

Jaccard

係数を算 出し,その上位

70

までをネットワーク図に表示 した.加えて,互いに強く結びついている語の まとまりを「サブグラフ検出(モジュラリティ:

modularity

による方法)」機能を用いてサブグラ

フを描画した.

2.2.4 コーディング

対応分析および共起ネットワークでは,分析者 が抽出語の分析対象数の基準等の設定を行うもの の,分析作業は機械的な処理によるものであっ た.対応分析や共起ネットワークの機械的な処理 では,同じ語が複数の用いられ方をしていても,

最も関係の強い

1

か所にのみ表示される.また,

語の使用頻度が重視されるため,同様の内容が 様々な異なる語で表現されていた場合には出現数 が分散され,分析結果に現れにくい.そのため,

次のコーディングの段階では,分析者の研究関心 を反映させたコーディングルールを作成し,分析 を行う.

まず,KH Coderによる上記の共起ネットワー クの分析結果のサブグラフに含まれる語を参考 に,サブグラフを意味のまとまりごとにグループ に整理した.このグループに含まれる語につい て,関連語検索,コロケーション統計11)機能に より,関連する語や前後で用いられている語を検 討し,コードおよびコーディングルールの条件を 設定した.例えば,「運動」は,「運動不足による ストレス」という余暇活動の制限の意味に加え,

「適切な運動,睡眠で免疫を高める」という免疫 に関する意味で用いられる場合がみられた.「見 える」(「先行きが見えない」「ウイルスは目に見

えない」)等も同様である.そのため,「運動」と

「不足」が共に用いられる場合は「余暇活動の制 限」に,「運動」と「睡眠」が用いられる場合は「免 疫,体力への意識」にコーディングするよう条件 付けした.また,「思う」「言う」等は,様々な文 脈で非常に多く抽出されるが,特定のコードに関 連付けることは難しいため,コーディングルール からは除外している.さらに,出現頻度の高くな い語の中にもコードと関連する語がみられた.例 えば,「経済」への影響と関連する「景気」「消費」

等についても追加してコーディングルールを作成 した.

これらのコードのうち,関連するものを

4

つ のカテゴリーとしてまとめた.その際,コード について,KH Coderによる階層クラスター分析

12)を行い,カテゴリーの妥当性を確認した.「先 行きへの不安」は当初独立カテゴリーに設定し

5

つのカテゴリーを設けていたが,階層クラスター 分析の結果を踏まえ,「生活への影響」に含める こととした.その他のコードは全て設定されたカ テゴリーにクラスター分類されることが確認でき た.これらのカテゴリー,コード,検索条件,典 型的な内容の要約は表

1

に示す通りである.

作 成 さ れ た コ ー デ ィ ン グ ル ー ル を 基 に

KH

Coder

によるコーディングを行い,それぞれのコ

ードの条件と一致する投稿数を第

1

週(W1)か ら第

9

週(W9)までの期間でそれぞれ集計した.

また,各週の投稿数に対するコードの出現率を算 出し,各週の比率の差をカイ二乗検定により検討 した.有意水準は

5%とし,効果量としてクラメ

ールの連関係数(Cramer’s V)13)を算出した.

Ⅲ 結果・考察

1. 投稿数の推移

各検索語が含まれる投稿数の推移を感染者数の データ(厚生労働省,online)と共に図

1

に示し た.また,対象期間中の主な社会的な出来事を図

1-a

に追記した.なお,査読期間中に

2020

3

18

日以降のデータを収集し記載しているが,内 容の分析は

3

17

日までの

9

週間分のデータに

(7)

763

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

対してのみ行っている.

分析対象期間において,図

1-b

より,「不安」

に関する投稿数は

1

30

日前後に急増し,2月

27

日前後にピークを迎えるのに対し,「疲れ」「ス トレス」「鬱」に関する投稿数の推移は

2

27

日 前後に急増し

3

11

日前後にピークを迎える動 態を示し,それぞれ異なる特徴が示された.

これらの動態は,日本国内の感染状況の報道や 政府の対策と関連していたと考えられる.1月

30

日前後の「不安」に関連した投稿数の急増は,日 本国内でのヒトからヒトへの感染が確認され,渡 航歴のない感染者(ツアーバス関係者)が報告さ れた(1月

28

日)ことで感染への不安が高まっ たこと,政府対策本部の初会合が行われた(1月

30

日)ことに関連していると考えられる.また,

政府による大規模イベントの自粛要請(2月

26

日),休校要請(2月

27

日)により生活環境の変 化への不安が高まったこと,その長期化が「スト レス」,「不安」,「鬱」の増大を招いたと考えられ る.これらの結果により,感染拡大に対する政府 の方針や感染状況の報道に対して人々は不安やス トレスを増大させていたことが示唆された.

分析対象期間の後(3月

18

日以降)には,感 染者数が

4

月上旬にかけて急増した.これに伴い,

「不安」や「ストレス」,「疲れ」,「鬱」を含む投 稿数も増加している14).分析対象期間の

9

週間 に比べると特に「ストレス」,「疲れ」,「鬱」を含 む投稿数が大きく増加しているといえる.

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000

0 100 200 300 400 500 600 700

/15/22/29 2/5 2/12 2/19 2/26 3/4 3/11 3/18 3/25 4/1 4/8 4/15 4/22 4/29 5/6 5/13 5/20 5/27 6/3 6/10 6/17 6/24

累計感染者数(人)

(人)

新規 累計

A B D E F

a. 日本国内の感染者数の推移(クルーズ船を除く)

A 国内1例目の感染発表 B 渡航歴の無い感染者 C 政府対策本部設置,

WHO緊急事態宣言 D 大規模イベント自粛要請 E 休校要請

F自粛延長要請 G緊急事態宣言発令 H緊急事態宣言解除

C G H

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000

1/151/221/29 2/5 2/12 2/19 2/26 3/4 3/11 3/18 3/25 4/1 4/8 4/15 4/22 4/29 5/6 5/13 5/20 5/27 6/3 6/10 6/17 6/24

投稿数(

不安 ストレス 疲れ b.投稿数の推移

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9

図 1 感染者数および 投稿数の推移;感染者数は厚生労働省発表資料(厚生労働省 online より引用)

(8)

2. 対応分析の結果

2

は対応分析による各週に特徴的な抽出語の 分布を示している.図中の原点(0,0)の付近で はどの週でも共通して用いられていた語が配置さ れている.それに対し,原点からの距離が遠く各 週の表示位置と同じ方向に位置する語は,それぞ れの週で特徴的に多く抽出された語を示してい る.

2

の結果について,図

1

の投稿数の推移と併 せて解釈することで,動態の特徴を捉えることが できる.すなわち,第

1

週から第

2

週にかけて,

中国から日本へ感染拡大への不安が移行したこと が示されている.また,第

5

週までの感染への不 安に関する語(予防,マスク,感染,怖い,大丈 夫,等)から,第

6

週から第

7

週では政府の対応 や活動自粛による生活の変化への不安やストレス に関する語(政府,対応,イベント,中止,休校,

等),第

8

から第

9

週では経済への影響や対策の 長期化による疲れやストレス(ストレス,疲れる,

鬱,経済,いつ,続く,等)の増大へとシフトし ていることが読み取れる.

3. 共起ネットワーク分析の結果

3

は,共起ネットワーク分析による抽出語の 関係性を示している.図

1

より,「不安」と「疲れ,

ストレス,鬱」は異なる投稿の動態を示していた ため,これらを分けて共起ネットワーク分析の結 果を示した(図

3-a,図 3-b).共起ネットワーク

では,関係性の強い語同士(Jaccard係数上位

70)

が線で結ばれて図示されている.さらに,これら の語は関係性のまとまりごとにサブグラフとして まとめられている.

「不安」の関連語のまとまりは,

12

のサブグラ フに分類された(図

3-a).これらは,「感染への

不安,予防」,「余暇活動の制限」,「先行きへの不 安」,「政府の対応」,「経済への影響」,「情報によ る影響」の

6

つのグループとして整理された.

「疲れ,ストレス,鬱」の関連語では,10のサ ブグラフに分類された(図

3-b).これらは,「感

染への不安」,「免疫,体力への意識」,「生活への 影響」,「休校による影響」の

4

つのグループとし て整理された.

W7

W1 W2 W3

W4 W5

W6

W8 W9 W7

図 2 投稿時期による特徴的な抽出語 (対応分析)

(9)

765

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

4. コーディング結果

上記の共起ネットワーク分析のサブグラフおよ びグループの関連語を参考にコードおよびコーデ ィングルールを作成した.表

1

は,作成されたカ テゴリー,コード,コーディングルールおよび典 型内容の要約を示している.

2

は,各週のコードの出現数と当該時期の投 稿数に対するコードの出現率を示している.図

4

では,表

2

の内容について,カテゴリーごとに各 コードの出現率の推移を図示している.なお,全

投稿数の

46.0%の投稿に対していずれかのコード

が出現し,54.0%の投稿に対してはコードが出現 しなかった.また,1つの投稿に対して複数のコ ードが付されることもある.

各コードの週ごとの出現率についてカイ

2

乗検

定および残差分析を行った結果,多くのセルで有 意差がみられたが,データ数が多いため有意差が 出やすく結果の解釈には慎重になる必要があるだ ろう.Cramer’s Vによる効果量の解釈(Akoglu,

2018)では,感染への不安と休校による影響にお

いて中程度(V≧

0.1),余暇活動の制限,仕事,

働き方への影響,政府の対応,経済への影響,デ マの拡散において弱い関連(V≧

0.05)が示され

た.その他のコードは,非常に弱いまたは関連無

し(V<

0.05)の値であった.

ただし,比率が

有意に低いことは,関心の低さを必ずしも意味す るわけではない.データ収集の検索対象の投稿件 数のうち,コーティングルールと合致した比率で あるため,他の投稿の増減に影響される相対的な 比率である.また,コード相互の出現数は,コー

サブグラフ

No. 主な関連語 グループ 1 手洗い, マスク,

消毒 2 感染, 拡大, 人,

多い 3 病院, 検査 4 風邪, インフルエン

ザ, 症状 5 イベント, 中止, 延

6 東京, 五輪, 開催 7 いつ, 続く 8 先, 見える

9 日本, 政府, 対応 政府の対応 10 世界, 経済 経済への影響 11 デマ, トイレットペー

パー 12 ニュース, テレビ,

煽る

サブグラフ

No. 主な関連語 グループ 1 頭, 痛い

2 電車, 出勤 3 体調, 悪い, 気 4 睡眠, 運動, 免疫 5 食べる, 寝る 6 外出, 控える, 自粛 7 遊び, 行ける 8 友達, 会う 9 ストレス, 溜まる,

仕事, 発散

10 休校, 子ども, 親 休校による影響 生活への影響 先行きへの不安 余暇活動の制限 感染への不安,予防

情報による影響

感染への不安

免疫への意識 b.「疲れ,ストレス,鬱」

関連語

1 2

3 4

5

6 7

8

9

10 a.「不安」関連語

1

2

4 3 5

7 6

8

10 9

12 11

図 3 抽出語の関係性(共起ネットワーク)

サブグラフ

No. 主な関連語 グループ 1 手洗い, マスク,

消毒 2 感染, 拡大, 人,

多い 3 病院, 検査 4 風邪, インフルエン

ザ, 症状 5 イベント, 中止, 延

6 東京, 五輪, 開催 7 いつ, 続く 8 先, 見える

9 日本, 政府, 対応 政府の対応 10 世界, 経済 経済への影響 11 デマ, トイレットペー

パー 12 ニュース, テレビ,

煽る

サブグラフ

No. 主な関連語 グループ 1 頭, 痛い

2 電車, 出勤 3 体調, 悪い, 気 4 睡眠, 運動, 免疫 5 食べる, 寝る 6 外出, 控える, 自粛 7 遊び, 行ける 8 友達, 会う 9 ストレス, 溜まる,

仕事, 発散

10 休校, 子ども, 親 休校による影響 生活への影響 先行きへの不安 余暇活動の制限 感染への不安,予防

情報による影響

感染への不安

免疫への意識 b.「疲れ,ストレス,鬱」

関連語

1

2

3 4

5

6 7

8

9

10 a.「不安」関連語

1

2

4 3 5

7 6

8

10 9

12 11

サブグラフ

No. 主な関連語 グループ 1 手洗い, マスク,

消毒 2 感染, 拡大, 人,

多い 3 病院, 検査 4 風邪, インフルエン

ザ, 症状 5 イベント, 中止, 延

6 東京, 五輪, 開催 7 いつ, 続く 8 先, 見える

9 日本, 政府, 対応 政府の対応 10 世界, 経済 経済への影響 11 デマ, トイレットペー

パー 12 ニュース, テレビ,

煽る

サブグラフ

No. 主な関連語 グループ 1 頭, 痛い

2 電車, 出勤 3 体調, 悪い, 気 4 睡眠, 運動, 免疫 5 食べる, 寝る 6 外出, 控える, 自粛 7 遊び, 行ける 8 友達, 会う 9 ストレス, 溜まる,

仕事, 発散

10 休校, 子ども, 親 休校による影響 生活への影響 先行きへの不安 余暇活動の制限 感染への不安,予防

情報による影響

感染への不安

免疫,体力への意識

b.「疲れ,ストレス,鬱」

関連語

1

2

3 4

5

6 7

8

9

10 a.「不安」関連語

1

2

4 3 5

7 6

8

10 9

12 11

(10)

ドの統合やコーディングルールの条件によって変 動する.そのため,以下ではコード相互の出現数 や出現率の比較については検討せずに,各コード の期間内の変化のパターンについて,投稿内容の 典型例を参考にしながら解釈していく.

4.1 感染への不安,予防(図 4-a)

感染への不安は,手洗い,消毒,マスクなどの

予防に関する関心,体調の変化や運動,睡眠,食 事による免疫を高める意識がみられた.感染への 不安に関する内容は,対象期間の後半にかけて投 稿数に占める比率の低下がみられた.

4.2 生活への影響(図 4-b)

生活への影響に関して,日常生活や余暇活動 の制限,仕事への影響に関する不安やストレ

カテゴリー/コード 検索語 典型内容(要約)

感染への不安,予防

 感染への不安 手洗い|マスク|消毒|アルコール|

(見える&目)|(接触&感染)|(飛 沫&感染)|(満員&電車)

・マスクも消毒アルコールもどこにも売っていない.

・うがい,手洗い,マスクを徹底しているけど,やっぱ り不安.

 体調への不安 (体調&(不良|崩す|悪い))|頭&痛 い|風邪|熱

・この時期に体調を崩すと本当に不安.

・喉と頭が痛いのは普通の風邪なのか不安でたまらない.

 免疫,体力への関心 睡眠|栄養|免疫|体力|(運動|食事)

&睡眠)

・十分な睡眠と栄養,適度な運動で体力をつけて免疫を 高めることが大事.

・免疫力が落ちないように睡眠不足,運動不足,偏食の 生活習慣を見直そう.

生活への影響

 日常生活の制限 不要|不急|買い物|外出|(外&出る)

(友達&(会う|会える))

・不要不急の外出をなるべく控えるようにしていきたい.

・友達に気軽に会えなくなるのが辛い.

 余暇活動の制限 カラオケ|イベント|ライブ|ジム|遊 び|旅行|中止|延期|楽しみ|(運動

&不足)(五輪(開催|観客)

・ライブが中止になって楽しみが奪われた.

・海外旅行を予定しているけどどうしよう.

・ジムでの感染が怖いので運動不足になりそう.

 休校による影響 休校|(学校&休み)|(子ども&(休 み|家))|学童|保育|育児

・学校休校は仕方ないけど育児の負担が増える.

・休校でも遊びに行ける場所がなくてストレス.

 仕事,働き方への影響 仕事|職場|テレワーク|ʼ 時差出勤ʼ |ʼ 在宅勤務ʼ |ʼ 働き方'

・時差出勤やテレワークに対応できない仕事も多い.

・これを機に在宅勤務や時差出勤の定着が進むと良い.

 先行きへの不安 終息|収束|落ち着く|(いつ&続く)

|(先&見える)

・いつ終息するのか先が見えない.

・この状況はいつまで続くんだろう.

政治,経済への不安

 政府の対応 (対応|対策|五輪)&(政府|首相|

国|日本)

・日本政府の対応は甘過ぎる.

・国の対応が後手に回り不安.

・東京五輪の中止か延期を政府は早く提言すべき.

 経済への影響  経済|景気|消費|株|株価 ・自粛による経済への打撃はまだまだ続きそう.

・消費税増税と重なり消費低迷,景気悪化は避けられな い.

情報による影響

 報道による不安 (ニュース|テレビ|番組|報道|マス コミ|メディア)&煽る

・テレビ番組は国民の不安を煽って注目を集めようとし ている.

・コロナの不安を煽るニュースばかりでストレスが溜ま る.

 デマの拡散 デマ|トイレットペーパー ・トイレットペーパーが品薄だというデマで実際に買い 占めが起きている.

・デマが拡散しているので情報を鵜呑みにし踊らされな いようにしよう.

†:「|」は「または(or)」を表す演算記号を示す.

「ʼ ʼ」は複数の語が続けて用いられている条件を表す演算記号を示す.

表 1 コード コーディングルールおよび典型内容

(11)

767

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

カテゴリー コード   W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9 合計 Cramer’s V††

感染への不安,予防 感染への不安 度数 33 553 1906 924 1687 2975 5407 3489 2679 19653

0.113 M 比率 12.2% 12.9% 17.4% 14.5% 11.5% 10.4% 8.0% 6.3% 5.0% 8.1%

  残差  

体調への不安 度数 11 206 641 395 985 1759 3197 2408 1925 11527 0.044 比率 4.1% 4.8% 5.8% 6.2% 6.7% 6.2% 4.7% 4.3% 3.6% 4.8%

残差    

免疫,体力への意識 度数 5 196 499 224 659 1201 2597 1581 1374 8336 0.039 比率 1.8% 4.6% 4.6% 3.5% 4.5% 4.2% 3.8% 2.9% 2.6% 3.4%

残差      

生活への影響 日常生活の制限 度数 5 107 261 121 362 833 2342 2360 2125 8516 0.036 比率 1.8% 2.5% 2.4% 1.9% 2.5% 2.9% 3.5% 4.3% 4.0% 3.5%

残差      

余暇活動の制限 度数 17 249 969 564 1555 4434 9059 6362 6182 29391

0.059 W 比率 6.3% 5.8% 8.8% 8.9% 10.6% 15.5% 13.4% 11.5% 11.6% 12.2%

  残差  

休校による影響 度数 0 5 28 25 45 173 3673 1948 1657 7554

0.107 M 比率 0.0% 0.1% 0.3% 0.4% 0.3% 0.6% 5.4% 3.5% 3.1% 3.1%

  残差

仕事,働き方への影響 度数 8 165 433 255 714 1568 5161 4695 4151 17150

0.057 W 比率 3.0% 3.9% 3.9% 4.0% 4.9% 5.5% 7.6% 8.5% 7.8% 7.1%

  残差

先行きへの不安 度数 7 105 414 274 616 1453 4490 3796 3593 14748 0.046 比率 2.6% 2.5% 3.8% 4.3% 4.2% 5.1% 6.6% 6.8% 6.7% 6.1%

    残差

政治,経済への不安 政府の対応 度数 14 212 371 216 613 968 1539 1055 789 5777

0.072 W 比率 5.2% 5.0% 3.4% 3.4% 4.2% 3.4% 2.3% 1.9% 1.5% 2.4%

  残差

経済への影響 度数 7 118 191 164 296 642 1788 2193 2994 8393

0.098 W 比率 2.6% 2.8% 1.7% 2.6% 2.0% 2.2% 2.6% 4.0% 5.6% 3.5%

    残差  

情報による影響 報道による不安 度数 26 109 403 337 647 1160 2907 2746 1685 10020 0.035 比率 9.6% 2.5% 3.7% 5.3% 4.4% 4.1% 4.3% 5.0% 3.2% 4.1%

  残差

デマの拡散 度数 3 99 197 70 127 217 3278 1383 775 6149

0.057 W 比率 1.1% 2.3% 1.8% 1.1% 0.9% 0.8% 4.8% 2.5% 1.5% 2.5%

    残差      

  ケース数 度数 271 4282 10964 6363 14718 28597 67785 55422 53318 241720

†:△は有意に高い比率,▼は有意に低い比率(p<0.05)を示す

††:Mは中程度(V0.1),Wは弱い(V0.05)関連の効果量を示す.

表 2 各種の コードの出現状況の一覧

ス,それらの影響に関する先行きへの不安がみら れ,対象期間の後半にかけて増加する傾向がみら れた.学校での感染を危惧する声は比較的早期か ら一定数みられたが,2月

27

日の政府の休校要 請を機に児童生徒や家庭への影響について関心が 高まったと考えられる.

4.3 政治、経済への不安(図 4-c)

政府の対応に対する不安については,2月

26

日の基本方針の発表までの関心が高く,政府の具 体的な方針が示されないことに対する不安や焦り があったと考えられる.それに対し,自粛要請に よる経済活動の停滞やその長期化への恐れから,

経済への影響に対する不安が徐々に高まっていた と考えられる.

4.4 情報による影響(図 4-d)

報道による影響に関する投稿は比較的早期から

(12)

みられ,不安を煽る一因として認識されていたと 考えられる.デマの拡散に関する投稿の増加は,

3

月上旬のトイレットペーパーの品薄騒動を反映 していると考えられる.

4

の結果を図

1,図 2

と併せて考察すると,

人々の関心の中心は感染への不安に関する内容か ら時期が進むにつれ多様化し,余暇活動の制限や 社会的な影響に関する不安やストレスのへと推移 していたと解釈できる.

Ⅳ 総合的考察

1. 不安とストレスの要因

本研究の結果から,新型コロナウイルスの感染 拡大に伴う不安やストレスの要因は多岐に渡るこ とが示唆された.また,感染への不安が続くこと に加え,日常生活や余暇活動の制限に伴うストレ スや疲れが増大していったことが示唆された.も っとも,感染の不安に関する投稿数の減少が不安

の解消を意味するわけではなく,相対的に生活環 境の変化や制限,その長期化に対するストレスや 疲れ等が増大,多様化したことによると考えられ る.運動を含む余暇活動の制限によるストレス も感染対策の長期化とともに増大していたこと は,ストレスマネジメントの点で深刻である.運 動はストレスや不安等のマネジメントおよび心 身の健康に効果があることが知られている(Fox,

1999; Salmon, 2001).余暇活動もストレスを低減

しネガティブな出来事から気を逸らせる効果があ る(Caldwell, 2005).運動や余暇活動が制限され た中で,不安やストレスの対処をすることは容易 ではない.ウイルス感染拡大期のような生活環境 が大きく変化した状況で日常生活の中で可能な身 体活動やリラクセーションの様々な手段に対する 関心が高まっていたと考えられる.実際,本調査 のデータでは自宅でできる運動を紹介する記事や 動画が共有されていた.日本以上に急速な感染拡 大が深刻化している海外でも関心が高く,BBC,

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9

比率

週数 a. 感染への不安,予防

感染への不安 体調への不安 免疫, 体力への意識

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9

比率

週数 b.生活への影響

日常生活の制限 余暇活動の制限 休校による影響 仕事, 働き方への影響 先行きへの不安

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9

比率

週数

c.政治,経済への不安 政府の対応 経済への影響

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

20%

W1 W2 W3 W4 W5 W6 W7 W8 W9

比率

週数 d.情報による影響

報道による不安 デマの拡散

図 4 各週のコードの出現率の推移

(13)

769

新型コロナウイルスによる不安やストレスの実態

CNN,WSJ

等の大手メディアも自宅でできる運

動の例を紹介している15).国内でも

3

月以降に 健康の保持増進を企図した運動の動画を配信する 自治体が増えている(朝日新聞,2020).地域の 状況を踏まえ感染のリスクを拡大しないような自 宅や公園での運動の実践を支援することが求めら れるといえる.ただし,こうした運動を紹介する 事例が増えつつあるものの,心身への効果や安全 性,継続的な動機づけなどについて検討する余地 は残されているだろう.また,運動不足による心 身への影響について,環境改善の難しい状況で専 門家が警鐘を鳴らすことが健康への不安をさらに 煽る恐れもあることに留意が必要といえる.

2. 情報による不安の増大

ウイルス感染に関する報道やデマの拡散が不安 を生じさせていることも示唆された.

デマ情報は,購買行動の混乱ばかりでなく,危 険な行動を引き起こすこともある.実際,イラン ではメタノールが新型コロナウイルスの治療に 効果があるというデマが拡散し,500人以上が死 亡したと報じられている(ABC NEWS, 2020).

東日本大震災のデマの拡散を分析した梅島ほか

(2011)は,「不安を煽る」,「行動を促す」,「ネガ ティブな」情報ほど拡散しやすいこと,訂正情報 は拡散されにくいことを報告している.国内でト イレットペーパーの購入に殺到した事例はこの特 徴と合致する.不安やストレスが高まっている状 況では,こうしたデマの拡散や行動への影響に繋 がりやすいと考えられる.

他方で,災害直後のような社会的混乱期のデマ の拡散には,マスメディアの報道による影響が大 きいことも指摘されている(濱岡ほか,2013).

実際,新型コロナウイルスによるトイレットペー パーの購入騒動について,全国紙やテレビではイ ンターネット上のデマを原因と報道されていた が,ネットメディアでは

SNS

データの分析から テレビ報道がデマの拡散と過剰な購買行動を招い たことが指摘されている16).デマの拡散による 混乱と不安の増大は,関東大震災,オイルショッ ク,東日本大震災,新型インフルエンザ流行でも

繰り返されてきた.さらに現代では,SNSの隆 盛により,デマに惑わされるばかりでなく,誰 もがその拡散者になる可能性がある.それゆえ,

SNS

の時代に即した情報の受け手,発信者のリ テラシーが求められる(濱岡ほか,

2013

;梅島ほか,

2011).また,連日の感染者数や死亡者数の報道

SNS

の情報に過剰に曝され続けることでメン タルヘルスの問題が生じる懸念も指摘されている

(Gao et al., 2020; Li et al., 2020; Rathore and Farooq,

2020)

注 17)

これらは,科学的な情報を判断するリテラシー やメディアの過剰報道によるストレスを減らすよ うな判断力を身につけることがこれからの時代で は一層求められることを示唆している.もっとも,

一般の人々に限らず,報道機関,政府や自治体に も人々の受け止め方を考慮した情報発信が求めら れる.すなわち,正確な情報の重要性と不安を煽 る内容に関して,社会的混乱期の報道のあり方に ついても議論が必要だといえる.この点に関し,

蝦名(2020)は,新型コロナウイルスの感染拡大 初期(1月末頃)の政府の発表と報道内容,SNS の投稿内容から,リスクコミュニケーションの視 点が不十分であることを指摘している.本調査の 政府の対応や報道への不安や不信感も,こうした 課題を示唆していたといえる.

3. 保健教育および健康教育の視点

新型コロナウイルス感染拡大に伴う不安やスト レスの増大からは,学校の保健教育および社会的 な健康教育への課題も示唆された.

2018(平成 30)年改訂の高等学校保健体育科

の学習指導要領解説では,「現代の感染症とその 予防」において,「感染症のリスクを軽減し予防 するには,衛生的な環境の整備や検疫,正しい情 報の発信,予防接種の普及など社会的な対策とと もに,それらを前提とした個人の取組が必要であ ることを理解できるようにする」(文部科学省,

2019,p.201)と示されている.従前の 2009(平

21)年の学習指導要領に基づく高等学校の保

健体育科教科書(大修館書店)では,感染症の流 行の際に「情報不足や誤った情報の流布により,

参照

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