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物理量と単位についての一考察

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Academic year: 2021

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― ―

物理量と単位についての一考察

安藤 雅夫(物理学)

1 はじめに

 単位と物理量の取扱いについて,これまでに 多く議論されてきた.しかしながら,例えば教 科書などを調べると必ずしも一貫しているとは 言えない.そのため,今回改めて教科書等を見 直してみると同時に,高校生が物理量と単位に 対してどのような考えを持っているかを探るた め,速度の単位の変換についての調査を行った.

2 物理量と単位

 物理量の値は,数値と単位の積で表される

[1,2].

すなわち,

 物理量=数値×単位 と,表現される.

 また,「いかなる物理量も,またそれを書き 表す記号も,特定の単位の採用を意味するもの であってはならない」し,「演算は代数学にお ける通常の規則に従う」とされる[1] .  また,物理量の取り扱いについては,これま で多く議論されてきた[3-7].

 高校教科書[8]の取扱いを見てみよう.

一直線上に物体に一定の大きさの力 の 力をはたらかせて,その力の向きに距離 だけ動かすと,

をその力のした仕事,または,力を加え たものが物体にした仕事という.

上の例では,物理量を表す記号には単位が含ま れているとして記述されている.しかし,同じ 教科書の別の箇所では,

速度は毎秒 [m/s] ずつ大きくなり, [s]

後には [m/s] だけ増加する.よって,

時刻 [s] における速度 [m/s] は次のよ うに表せる.

のように,単位は[ ]の中に入り,記号には 単位が含まれていない流儀となっていて,物理 量の表し方は,異なっている.

 また,例題の解答では次のように扱われている.

進んだ距離を [m] とすると,

ゆえに,

この例では,初めの物理量は単位を含んでいな いが,答えでは含んでいると解釈できる.

また,以前の教科書[9]では,

・・ 質量 [kg] の物体にはたらく力 [N]

とそのときに生じる加速度 [m/s2] との 間には,直線上の運動と同じように,次 に示す関係がなりたつ.

のように,単位は[ ]で囲まれている.

 一方,別の教科書を見ると[10],

一直線上に物体に一定の大きさの力 の 力をはたらかせて,その力の向きに距離 だけ動かすと,

をその力のした仕事,または,力を加え たものが物体にした仕事という.

時間 だけ経過すると(加速度)×(時間),

つまり だけ速度が増えるので,速度

(2)

東海学院大学短期大学部紀要 第 38 号 (2012)

― ―

は次の式で表される.

のように,多くのページで物理量は,物理量=

数値×単位 として扱われている.

 アメリカの教科書[11]では,

のように,式の変形にも単位記号を省略せずに 使われているのが普通である.

3 調査

 物理の授業が始まったばかりの段階(1 年後 期から物理の授業が始まるクラスを選んだ)に,

物理量について学習したクラスと学習しなかっ たクラスで,速度の物理量を変換する課題から,

その違いを検討した.

3.1調査時期  2011 年 11 月

3.2 調査対象

 G 高等専門学校 1 年生 79 名(A クラス 40 名,

B クラス 39 名)

3.3 調査方法

  教 科 書 の 練 習 問 題「18km/h は 何 m/s か 」 を解かせて,その解答を分析した.ただし,A クラスでは,物理量=数値×単位の意味を学習 したが,具体的な演習問題で,どのように単位 の取り扱いをするかの指導はしていない.一方,

B クラスでは学習しなかった,

3.4 調査結果

 答えだけをみると,正答率は 97%であった.

しかし,計算過程を検討するといくつかに分類 される.

(1)計算過程には単位をつけず,答えだけに付 加する(A クラス 12 名,B クラス 9 名)

  (例) = 5 答 5m/s

(2)単位の変換をしているが,計算過程には含 まれていない(A クラス 17 名,B クラス 8 名)

(例)1h=3600 秒 ,1km=1000m,18000÷3600

=5.0 答 5m/s

(3)計算過程に単位が含まれているが,適切で ない(A クラス 1 名,B クラス 5 名)

(例)18km/h÷3.6km/h=5.0m/s 答 5m/s

(4)計算過程で単位を入れたり入れなかったり する(A クラス 1 名,B クラス 6 名)

(例)18km/h=18000m/h=18000÷3600=5m/s 答 5m/s

(5)計算過程に単位が含まれている(A クラ ス 7 名,B クラス 11 名)

(例)18km/h=18000m/3600s=5.0m/s 答 5m/s

 途中の式の変形には,全く単位をつけないタ イプ(1)の割合が 26.6%いるものの,逆に単位 をつけるタイプ(5)が 22.8%と両者は近い割合 を示した.

 物理量の意味を学習したクラスでも,計算式 に単位をつける指導はしなかったため,タイプ

(5)では,物理量の意味を学習していないクラ スの占める割合が高かった.

 その一方で,タイプ(2)でわかるように物理 量=数値×単位 を学んだクラスの方が,単位の 変換を忠実にしている割合が高かった.

4 まとめ

 2009 年に新高等学校学習指導要領が公示さ れ,2012 年度より入学生に対して適用される 予定である.この新学習指導要領での新しい科 目「物理基礎」には,「物理量の測定と扱い方」

が含まれている.この物理量については,有効 数字等が含まれているが,物理量=数値×単位 の取扱いについては,かならずしも明確でない.

厳密に計算過程での扱い方で単位をつけるとす ると式が煩雑となってしまうが,物理量の概念 は指導するほうが望ましいと考える.

(3)

物理量と単位についての一考察

― ―

[6]江沢洋:『物理は自由だ 1』, 日本評論杜 ,1992

[7]青野修:「物理量の記号」, 大学の物理教育 , 3,p.64,2000

[8]國友正和他:『改訂版 高等学校物理Ⅰ , Ⅱ』, 数 研出版 ,2010

[9]斉藤晴男・兵藤申一他:『物理Ⅱ』, 啓林館 ,1998

[10]和田三樹監修:『高専の物理[第 5 版]』, 森 北出版 ,2005

[11]Serway R.A., Beichner R.J.,: Student So1utions Manual and Study Guide for Physics for Scientists and Engineers,Harcourt College Publishers,2000

参考文献

[1]M.L.McGlashan(関 集三伯訳):『SI 単位と 物理・化学量』,化学同人 ,1974

[2]森川鉄朗,室谷利夫:「中等物理化学教育に おける物理量の表現とその導入について」, 上 越教育大学研究紀要,19,No.1,pp.68-80,1999

[3]青野修:「電磁気量の単位」(『間違いだらけ の物理概念』), 丸善 ,1994

[4]小林幸夫:「物理量の概念の誤解と混乱」, 物 理教育 ,47,pp.338-340,1999

[5]阿部修:「『単位』の教育の重要性について」, 物理教育 ,52,pp.30-33,2004

参照

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