クールノー競争集団ゲーム
―生産技術が 2 つの場合―
慶 田 收
1 .はじめに 2 .モデルの構成
3 .フルポテンシャルゲームとしてのクールノー競争
4 .市場需要と生産技術の特定化のもとでのクールノー・ナッシュ均衡 5 .対平均ペイオフ比較プロトコルによるシミュレーション
6 .おわりに
1 .はじめに
本論文は生産者の限定合理性と集団ゲームの視点からクールノー競争分析へのアプローチであ る.
通常,経済学では主体的最適化行動仮説が前提されていて,生産者の場合,利潤最大化を目指す となっている.市場や生産に関して十分な情報が得られる場合には,利潤最大化を目指して生産量 を決定することは可能であろう.しかし市場に関する情報を得ることが難しい場合,例えば小企業 の場合,人的資源や経営資源の制約のために利潤最大化を目指そうとしてもその生産量を実行する ことは難しいかもしれない.利潤最大化に代わるものとして「より大きな利潤を目指す」ことが考 えられる.本論文では生産者はこの基準に沿って行動するとして分析を進める.
本稿では集団ゲームの視点からクールノー競争を検討する.この集団ゲームはプレーヤーである 生産者は多数いると想定される.生産者は戦略として離散的な数量の中から生産量を決定する.集 団ゲームの特徴は,戦略である数量を選択する生産者の集団が戦略ごとに形成され,すべての戦略 に関する集団規模の分布状態に利潤が依存することである.よって生産者がある数量の生産を決定 したとしても,生産者全体の分布の違いが供給量の多寡を左右し,価格が高くもなるし低くもな る.その結果,利得(利潤)の大きさにも影響する.
ここで検討する集団ゲームはフルポテンシャルゲームとしての性質をもつ.フルポテンシャル ゲームとは,戦略の状態変数に関して連続微分可能な関数(ポテンシャル関数)が存在して,その 偏微分が集団ゲームの利得に等しくなるときをいう.この定義はSandholm(2001)に従う.離散 変数としての戦略によって定義するポテンシャルゲームとしてMondererandShapley(1996)が
知られている.この結論の 1 つに各プレーヤーの戦略がある連続区間の変数であるとき,ゲームが 連続変数としての戦略に関してポテンシャルゲームになる条件を導いている.この条件を用いて Dragone et al. (2012)は,非線形市場需要をもつクールノー寡占競争ゲームで,限界費用がゼロ であるとき,最適反応関数が線形二次であるような最適反応ポテンシャルゲームとして再構成され ることを示している.MondererandShapley(1996)やDragoneetal.(2010)は離散的な個人が 連続的な戦略を扱うのに対して,Sandholm(2001)や本論文は連続的な個人(連続体)が離散的 な戦略を扱う点で対照的である.本稿は後者のケースで分析をおこなう.
限定合理性のために生産者は戦略(生産量)選択に関する学習を繰り返すという側面がある.
Vega-Redondo(1997)によると,より優位な生産量が決定され次第に市場を支配し,長期的には 一意で対照的なワルラス均衡に至ることが示されている.そこでは,プレーヤーは最も大きな利得 をもたらす戦略を次期に選択するとしている.その研究を端緒に均衡への収束に関しては,さまざ まな研究がなされているが,その中でもValleeandYildizoglu(2009)は,戦略変数それ自体が連 続であることを用いていて,社会学習(sociallearning)はワルラス均衡をもたらし,個人学習が クールノー均衡に収束することを示している.本論文では,学習行動として,プレーヤーは利用可 能な戦略集合のもとで候補戦略の利得が平均より大きいならば,戦略を候補戦略に転換するという 対平均ペイオフ比較を用いる.
本論文はSandholm(2010)に従って,プレーヤー全体の規模が有限な連続的プレーヤーから構 成され,プレーヤーは離散的戦略からの選択をおこなってプレーヤーの集団が構成されるという集 団ゲームである.拙稿(2019)では,クールノー競争に関して生産技術が 1 つのケースにおける クールノー・ナッシュ均衡を分析した.市場需要関数が線形で,費用関数が 2 次のケースに特定化 したとき,ナッシュ均衡は高々 2 個で隣り合うことを示した.本論文でも,市場需要関数の線形,
費用関数の 2 次を仮定しながら,異なる技術体化を表すパラメータを導入して,異なる生産技術の もとでのクール―ノー競争分析をおこなった.
本稿の分析目的は,異なる生産技術がある場合,どのようにクールノー・ナッシュ均衡が形成さ れるのか,その経路を明らかにすることである.以下では,生産技術を前提にして戦略選択をおこ なうケースを短期,生産技術も含めて戦略選択をするケースを長期と呼ぶことにした.これらの分 析の前に,クールノー競争集団ゲームにはナッシュ均衡が存在することを角谷の定理によって証明 をおこなった.長期均衡の比較静学やシミュレーション等によっていくつかの結果の導出と発見が あった.中でも,新鮮な発見は長期の均衡に至る過程の中で 1 つの技術のもとで 2 つの短期均衡戦 略が現れ,しばらくの期間併存することであった.
本論文の構成は次のとおりである.第 2 節でクールノー競争集団ゲームのモデル設定をおこな い,第 3 節ではクールノー競争集団ゲームがポテンシャルゲームであること,ナッシュ均衡解の存 在の証明をおこなう.第 4 節では,短期のクールノー競争集団ゲームを短期の場合と長期の場合に
ついて分析をする.長期の場合については,パラメータの変化が長期均衡に及ぼす効果を分析して いる.第 5 節は,戦略状態分布について初期状態を与え,対平均ペイオフ比較による短期のシミュ レーション分析をおこない,続いて技術転換を伴う長期のシミュレーション分析をおこなってい る.最後に第 6 節では,本論文の分析結果・課題について述べている.
2 .モデルの構成
クールノー競争集団ゲーム(populationgame)として次のような短期と長期の生産者間の競争 を想定する.生産者は戦略として離散的な生産量の選択をおこなう.生産者は,短期には生産技術 を前提として従来の生産量を維持するか,それともより大きな利潤を可能にする別の戦略を選択す るかを決定するために,他の生産者の利潤と比較考量する.このような戦略選択をとおして生産者 がもはや生産量を変更しようとしない状態に至る.同時に,他の生産者も戦略としての生産量を変 更しなくなるとき,クールノー競争集団ゲームはナッシュ均衡に至る.このときナッシュ均衡戦略 を選択する生産者数ももはや変化しない状態(ナッシュ均衡戦略状態)になる.これが短期のナッ シュ均衡である.異なる技術を有する集団でそれぞれ達成されるナッシュ均衡では,短期の利潤は 異なる.長期には技術見直しの機会が与えられるために,生産者は技術制約を乗り越えてより大き な利潤を可能にする技術への転換を目指す.長期均衡に至る過程では,生産技術見直しによりその 集団規模の大きさが変化していく.技術見直しの都度,短期の競争がなされる.短期ナッシュ均衡 が達成されても異なる生産技術間のもとでの利潤がなお異なるならば,さらに技術の転換が進む.
やがて長期均衡に至り, 2 集団の利潤が等しくなって 2 集団が併存するか,あるいは 1 つの生産技 術に生産者が集中することになる.
生産される財は同質で,生産者は生産量hiを,n個の離散値の生産量集合(戦略集合)H={h1,
…,hn}の中から選ぶ.生産者の行動原理は,利潤最大化ではなく「より大きい利潤を追求する」
ことである.よって生産者は確実な情報としての利潤をもとに自らの利潤Fhi(x)を他のライバル の利潤と比較考量して,より大きな利潤を可能にする戦略としての生産量の選択をおこなう.
財を生産する技術aが 2 つあり,生産者はいずれかの技術を用いる,すなわち,a(a=1,2)であ る.技術は長期には変更可能であるが短期には変更できない.よって生産者は短期には技術を前提 としてより良い生産量の決定を目指し,長期には規模の変更を含む生産量の決定をおこなう.ここ では生産技術は費用関数に体現されるものとする.技術aのもとでの生産量hiの費用関数を
C(ha i)によって表す.C(ha i)は連続微分可能で凸な増加関数であるとする.
生産者全体は規模mの連続体とし,生産者はその要素で連続的であるとする.生産者は技術 1 , 2 のいずれかを用いる集団に分かれる.各々の生産技術集団の規模をm1,m2によって表すと,生 産者全体の規模はm1+m2=mである.生産量hj∈H を選択し,生産技術a(a=1,2)の生産者の
数をxja≥ 0で表すと
hj∈Hxja=ma (a=1,2) ( 1 ) である.( 1 )を満たすn次元ベクトルxa=(x1a,…, xna)の集合をaの戦略状態分布集合X(a=1,a
2)と表す.このときXaはn-1次元単体である. 2 つの戦略状態分布集合の積をX=X1×X2,と 表し,その要素をx=(x1,x2)と記す.
ある戦略集団状態分布x∈Xでの市場供給量q(x)あるいはq(x1,x2)は,q(x)= hi∈Hhix1hi+
hi∈Hhix2hiと表される.市場の逆需要関数をp(q(x))またはp(q)で表す.通常仮定されるよう にp(q)は市場供給量qの連続な減少関数とする.p(q)はqに関して連続微分可能と仮定する.
戦略集団状態分布xのもとで生産量hiからもたらされる利得(利潤)は
Fi(xa )=hi p(q(x))-C(ha i) (a=1,2) ( 2 ) である.技術aのもとでの利潤ベクトルは,F(x)a =(F(x),…,1a Fn(x))a と表され, 2 つの生産技術 集団からの利潤ベクトルはF(x)=(F(x1 ),F(x2 ))である.
生産者は確実な情報としての利潤をもとに自らの利潤Fi(xa )を他のライバルの利潤と比較考量 して,より大きな利潤を可能にする生産量の選択をおこなう.
3 .フルポテンシャルゲームとしてのクールノー競争
はじめにクールノー競争集団ゲームがフルポテンシャルゲームであることを確認し1),その性質 を示す.その後,ナッシュ均衡解の存在を証明する.
関数(xf )を次のように定義する.
f
(x)= 0q(x)p(z)dz- hi∈H xiC(h1 i)- hi∈H xiC(h2 i) ( 3 )
( 3 )を戦略集団分布xiaで偏微分すると
∂(xf )
∂xia =∂q(x)
∂xia p(q(x))-C(ha i) ( 4 ) =hi p(q(x))-C(ha i) (forallhi∈H,a∈{1,2})
よって∇(xf )=F(x)(for all x)なので,関数(xf )はF(x)のポテンシャルである.逆需要関数 をさらに次のように仮定する.
1 ) Sandholm(2009)pp.1713-1714.
仮定 1 逆需要関数p(q)は供給量qに関して線形である.すなわち,
∂q(x)
∂q =-β (β:正定数)
である.
利潤関数について仮定 1 から
∂Fi(xa )
∂xjb =∂Fj(xb )
∂xia
が成り立つ.よってクールノー集団ゲームはフルポテンシャルゲームである.
ポテンシャル関数(xf )は消費者余剰と生産者余剰の和を表す総余剰である.フルポテンシャル ゲームの性質によって,集団ゲームの中で生産者がより大きな利得(利潤)の追求をすることは,
市場全体での総余剰の最大化に他ならず,生産者の私的利益の追求は市場全体の余剰の追求に合致 していることを意味する.ポテンシャルを最大にする戦略集団分布xを求めることは,生産者の 利潤を最大にすることに他ならない.
最適な戦略集団分布xは次のように求められる.
maxx∈X f(x) subjectto hi∈Hxia=ma, xia≥ 0 foralla∈{1,2}
クーン・タッカー条件は,すべてのhi∈H,a∈{1,2}に対して
∂(xf )
∂xia -μa+λia≤ 0 xia
(
(
∂∂(xfxia)-μa+λia⎞
⎠
=0,λiaxia=0, xia≥ 0, λia≥ 0 ma- hi∈Hxia=0, μ≥ 0,
が導出される.μa, λiaはラグランジュ乗数である.戦略集団分布がxia> 0 の場合
Fi(xa )=μa, μa> 0 (foralla∈{1,2}) ( 5 ) となる.μaは短期におけるナッシュ均衡での利得(利潤)を表す.
クールノー競争集団ゲームは,また安定ゲームという性質を備えていて,この性質から,クール ノー競争集団ゲームのナッシュ均衡戦略状態が大域的中立安定であることが,拙稿(2019)の場合 と同様にして示される.本論文では安定ゲームの定義と大域的中立安定の定義を掲載し,クール ノー競争集団ゲームがこれらの性質をもつことを述べるにとどめる.
定義 1 安定ゲームとは,集団ゲームF: X→Rnが条件
(y-x)(F(y)-F(x))≤ 0 for all x , y∈X ( 6 ) を満たすならば,安定ゲーム(stable game)である.不等式が等号を伴わないとき,強安定ゲー ム(strictly stable game)である.
定義 2 x∈Xがすべてのy∈Xに対して(y-x)F(y)≤ 0ならば,大域的中立安定である.x∈ Xがすべてのy∈X-x に対して(y-x)F(y)< 0ならば,大域的漸近安定である .
次の補題 1 および定理 1 が導びかれる.
補題 1 クールノー競争集団ゲームは安定ゲームである.
定理 1 クールノー競争集団ゲームのナッシュ均衡戦略集団状態は大域的中立安定である.
定理 1 はナッシュ均衡解が存在すれば,大域的中立安定であることを表す.もし狭義の不等式
(y-x)F(y)< 0が成り立つならば,大域的漸近安定である.拙稿(2019)では,定理 1 は均衡解の 存在を前提として議論の展開がなされた.本論文では,ナッシュ均衡解の存在について議論する.
その証明は角谷の不動点定理を用いてなされる.
生産者は同一技術を有する生産者の間で良い大きな利潤を求めて競争する.利潤の式( 2 )から わかるように,利潤計算のためには市場価格が必要であり,その価格は他の技術集団の戦略集団分 布が必要である.よって短期の生産者の利潤は他の技術集団の戦略分布を所与として決定される.
そこで他の生産技術 2 の集団の,ある戦略分布x2∈X2に,生産技術 1 の生産者集団全体の戦略状 態分布集合X1を関連付ける対応をφ(x1 2),すなわち,φ(x1 2)=X1とする.次に所与のx2∈X2のも とで生産技術 1 の生産者にとって最大利潤が可能になるX1の部分集合を関連付ける.この対応を μ(x1 2)={x1∈X1|max
x1 F(x1 1,x2)}とする.
同様にして技術集団 1 の戦略分布x1∈X1に,生産技術 2 生産者集団の全体の戦略状態分布集合 X1を関連付ける対応をφ(x2 1)=X2とする.所与のx1∈X1のもとで技術bの生産者にとって最大利 潤が可能になるX2の部分集合と関連付ける.この対応をμ(x2 1)={x2∈X2| max
y2 F(x2 1,x2)}とす る.μ(x2),μ(x2 1)について次のように仮定する.
仮定 2 対応μ(1 x2),μ(2 x1)は空でない.
補題 2 対応φ(x1 2)=X1,φ(x2 1)=X2は連続対応である.
証明 対応φ(x1 2)はx2∈X2に関係なくx1の集合全体X1への対応なので,明らかに連続である.
φ(x2 1)も同様である. ■
補題 3 対応μ(x1 2)={x1∈X1 | max
x1 F(x1 1, x2)},μ(x2 1)={x2∈X2 | max
y2 F(x2 1, x2)}は優半連 続である.
証明 利潤関数F(x1 1,x2)は式( 2 )で表され ,積集合X1×X2上で連続である.φ(x1 2)はx2∈X2 において連続である.よってDebreuの補題2)によってμ(x1 2)はx2において優半連続である.同様 に,μ(x2 1)も優半連続である.
定理 2 クールノー競争集団ゲームにはナッシュ均衡解が存在する.
証明 補題 3 によって,X2からX1への対応μ(x1 2),X1からX2への対応μ(x2 1)はそれぞれ優半連続 である.するとHildenbrandandKirman(1988)3)から合成対応μ2°μ1,すなわちx1→μ(1μ2
(x2))は優半連続である.M1=μ2°μ1とすると,対応M1:X1→X1は優半連続である.
X1の任意の点x1ついて,M(x1 1)を検討する.まず対応μ2によってμ(x2 1)となる.μ(x2 1)は,
x1に対してX2上で各戦略hi∈H のFi(x2 2)を最大にする要素x2の閉凸集合である.μ(x2 1)が凸 集合であることの証明は付録に示す.同様にして各x2∈μ(x2 1)に対して定まるμ(x1 2)はX1に含 まれるコンパクト凸集合である.すると対応μ1による集合μ(x2 1)の像μ(1μ(x2 1))=∪x2∈μ(x2 1)μ(x1 2) はコンパクト集合である4).以上から対応M1はX1からX1への凸な対応でそのグラフは閉じてい る.角谷の不動点定理よりx1*∈M(x1 1*)となる不動点x1*が存在する.
いまx1*不動点なので,x1*∈μ(y1 2*)となるようなあるμ2∈μ(x2 1*)を選ぶことができる.
X1における像μ(x1 2*)をμ2によって対応すると,対応の合成の順序を入れ替えて,M2=μ1°μ2
を作る.すると対応M2はX2からX2への凸な対応でそのグラフは閉じていて,x2*∈M(x2 2*)と
なる. ■
以上から,クールノー競争集団ゲームのナッシュ均衡解の存在が示された.この証明は,逆需要 関数として線形の減少関数,費用関数として連続微分可能で凸な増加関数を仮定していた.第 4 節 以降ではこれらの関数をさらに特定化してクールノー競争集団ゲームの解の特徴を調べる.
4 .市場需要と生産技術の特定化のもとでのクールノー・ナッシュ均衡
これまでは逆需要関数については仮定 1 から線形減少関数で,費用関数は戦略(生産量)に関し て連続微分可能な凸な増加関数として分析をおこなった.本節では,具体的に費用関数を 2 次増加 関数と仮定してクールノー競争の市場構造の分析を進める.
2 ) Debreu(1959)p.19.
3 ) HildenbrandandKirman(1988)p.262.
4 ) HildenbrandandKirman(1988)p.264.
4.1 関数の特定化と短期均衡
はじめに線形逆需要関数p(q)を次のように表す.
p(q)=α-βq, α> 0,β> 0 ( 7 ) αは市場の規模,βは逆需要関数の傾きを表すパラメータである.費用関数については,費用関数
C(h)をhの 2 次関数
C(h)=rh2+sη, 0 <r≤ 1,η> 0 ( 8 ) で表す.生産量hは戦略集合H からの生産量である.h2は可変費用,ηは固定費用であり,rとs はそれぞれ生産効率性(限界費用)と固定費用に関わるパラメータである.一般に生産技術の進展 に伴って,生産は効率的になって限界費用は低下する.このとき固定費用が増加あるいは減少する かは技術に依存する.よってパラメータの範囲として生産の効率性パラメータrを0 <r≤ 1,固 定費用パラメータをs> 0と仮定する.比較の基準となる生産技術の費用関数については効率性 パラメータと固定費用パラメータをそれぞれr=1, s= 1 とする.すなわち,
C(h)=h1 2+η ( 9 )
これを生産技術 1 の費用関数と呼ぶ.比較対象となる生産技術の費用関数を式( 8 )で表し,生産 技術 2 の費用関数をC(h)2 と記す.すなわち,C(h)2 =rh2+sηである.比較対象の生産技術は,
生産性の効率パラメータからわかるように限界費用がより小さい効率的な生産技術である.
逆需要関数が戦略(生産量)に関して線形関数,費用関数が戦略の 2 次関数なので,利潤の式は 戦略に関する 2 次関数になる.これは拙稿(2019)で分析に用いた利潤関数と同じであり,ナッ シュ均衡をもたらす最適戦略(生産量)は高々 2 であることが示された.ナッシュ均衡最適戦略が 2 つの場合は, 2 戦略からの利潤が均等するという限られた条件のもとで導かれた.費用パラメー タr, sが少しでも変化すると利潤均等の条件が乱され,ナッシュ均衡の最適戦略が 1 個のケースに 帰着する.よって,以下ではナッシュ均衡戦略は 1 個のケースを前提して分析を進める.
本稿における短期均衡戦略の分析は,生産技術を前提にナッシュ均衡を検討するので,拙稿
(2019)の分析がそのまま適用される.短期にはそれぞれの生産技術 1 , 2 のグループの中で,よ り大きな利潤を求めての戦略(生産量)選択による競争がおこなわれる.その結果,それぞれの生 産技術のもとでのナッシュ均衡戦略は 1 つ導かれる.生産技術 1 の戦略をh*i,生産技術 2 の戦略 をh*j,(i<j)とする.このとき生産者の均衡戦略分布状態はx*=(x1*,x2*)で,x1*はナッシュ均 衡戦略i番目の要素がm1で他の要素は 0 をとるn次元ベクトル,x2*はナッシュ均衡戦略j番目の 要素がm2で他の要素は 0 をとるn次元ベクトルである.このとき利潤はそれぞれ次のように表さ れる.
Fi(x1 *)=p(q(x*))h*i-h*2i -η, (10)
Fj(x2 *)=p(q(x*))h*j-rh*2j -sη (11)
生産技術 2 は 1 からさらに進歩した費用効率的な技術と想定しているので,短期のナッシュ均衡戦 略状態では,技術 2 のもとでの利潤が技術 1 のそれより大きいと仮定する.すなわち,
仮定 3 ナッシュ均衡戦略hi,hjについてFi(1 x*)<Fj(2 x*)である.
短期のナッシュ均衡戦略状態のもとでは,各生産技術グループの生産者は全員,それぞれhi*, h*jの戦略を選んでいる状態であり,各生産者にとっては技術を前提としたとき生産行動として最 も望ましい状態が実現されている.
4.2 技術選択と長期均衡
短期には生産技術グループ内でのナッシュ均衡,つまりクールノー均衡が実現する.短期均衡は 通常のクールノー市場均衡が生産技術を所与とした数量競争の均衡なので,これに対応する.けれ どもクールノー均衡が達成されたとしても,生産技術が異なれば利潤が異なる.長期の視点から は,利潤が小さい生産技術の企業にとっては,より大きな利潤を求めての競争が繰り広げられるで あろう.そこで本論文では,長期の分析として異なるグループ間でのナッシュ均衡に向けて,異な る生産技術を有する企業間での競争を検討する.
長期の競争では,生産者は自らの利潤を他のグループの利潤と比較する機会が確率的に与えられ る.その機会を得た生産者は利潤を比較し,自らの利潤が大きいか等しければ,現在の生産技術の もとでの生産を維持する.逆に自らの利潤が小さければ,他のグループの生産技術を採用した生産 活動に転換する.利潤比較の機会を与えられた者が生産技術 1 の生産者ならば,仮定 3 から,より 大きな利潤を求めて生産技術 1 から 2 に向けての技術転換がなされる.これによる生産技術 1 のグ ループ規模と生産技術 2 のグループ規模の変化から供給量が変化して,市場の財価格にも変化が起 こりその結果,各生産技術集団内での短期のナッシュ均衡に向けた競争も起こる.生産技術グルー プ 2 の生産者に技術の見直しが与えられた場合,自らの利潤が大きいので,現在の生産技術を維持 する.けれども,生産技術 2 の集団でも規模が変化するので,長期的な競争過程の中での短期の ナッシュ均衡戦略に向けた競争がなされる.
技術 1 のグループでは,利潤見直し機会を得た生産者全員が技術を生産技術 2 に転換することに なる.やがて,この繰り返しの中で 2 つのグループでの利潤が等しくなり生産技術の見直し機会が与 えられても,生産技術の転換がなされない状況に至る.この状況は,各技術グループではナッシュ 均衡が成り立ち,技術間では技術の見直しが起こらない状態である.これが長期均衡といえる.
定義 3 クールノー競争集団ゲームの長期均衡は,次の(ⅰ)あるいは(ⅱ)が成立するときをい う.
(ⅰ)異なる生産技術の間での利潤が等しいとき,ある戦略分布状態x1*, x2*において Fi(x1 1*, x2*)=F(xj2 1*, x2*)
あるいは
(ⅱ)すべての生産者が 1 つの技術を選択する状態で Fi(1 x1*, x2*)<Fj(2 x1*, x2*)
のときをいう.
(ⅰ)は,生産技術 1 のグループの規模がゼロにならずに,長期均衡が実現するケースである.
(ⅱ)は,生産技術 1 グループの全生産者が移動しても生産技術 2 のグループの利潤が大きいため に,長期均衡では生産技術 2 のナッシュ均衡しか存在しないケースである.
以下では,生産技術の見直し機会が与えられる生産者の数を∆τ> 0として議論を進める.な お,技術 1 から 2 へ転換をおこなった生産者全体の数をτで表す.
生産技術 1 の生産者による技術見直しによって生産技術 1 と 2 のグループ規模に∆τの変更が生 じる.見直し後のグループ規模は,生産技術 1 の規模はm1-∆τ,生産技術 2 の規模はm2+∆τと なる.戦略状態の変化分をn次元ベクトルとして∆τ1=(0,…,0,∆τ,…,0)(i番目の要素が∆τである),
∆τ2=(0,…,0,∆τ,0,…,0)(j番目の要素が∆τである)とする.生産技術見直し後の戦略状態分布は,
生産技術 1 の場合x1*-∆τ1,生産技術 2 の場合x2*+∆τ2になる.注目すべき点は,各集団の新た な規模の変化によって価格が変化するので,戦略(生産量)h*i,h*jが短期ナッシュ均衡戦略であり 続けるのかである.準備として生産技術集団の規模変化によって価格がどれだけ変化するかを調べ る.
p(q(x1*-∆τ1,x2*+∆τ2))=α-β{h(mi 1-∆τ)+h(mj 2+∆τ)} =α-β{him1+hjm2}-β∆τ(hj-hi)
=p(q(x1*,x2*))-β∆τ(hj-hi) (12)
価格は集団規模が∆τ変化する前と比較してβ∆τ(hi-hj)の大きさだけ下落する.以下では,ナッ シュ均衡戦略に関して
hi*<h*j (13)
と仮定する.すなわち,効率的な技術ほど短期ナッシュ均衡生産量は大きくなると仮定する.
まず生産者集団 1 のケースについて検討する.比較すべき戦略は,戦略hi-1<h*i <hi+1の間で の利潤の大小の比較検討である.∆τが変化すれば,最大利潤が実現するのは隣り合う戦略hi-1か
hi+1のいずれかになる5).
生産技術集団 1 の場合,第i戦略の利潤は
Fi(x1 1*-∆τ1,x2*+∆τ2)=p(q(x1*-∆τ1,x2*+∆τ2)h*i-h*2i -η,
=Fi(x1 1*,x2*)-β∆τ(hj-hi)h*i (14a)
であり,戦略hi-1,hi+1の利潤はそれぞれ次のようになる.
F1i-1(x1*-∆τ1,x2*+∆τ2)=F1i-1(x1*,x2*)-β∆x(h1 j-hi)hi-1, (14b)
F1i+1(x1*-∆τ1,x2*+∆τ2)=F1i+1(x1*,x2*)-β∆τ(hj-hi)hi+1 (14c)
技術転換前のナッシュ均衡戦略状態のもとでは,生産技術 1 のナッシュ均衡戦略はhiなのでFi1
(x1*,x2*)>F1i-1(x1*,x2*),Fi(x1 1*,x2*)>F1i+1(x1*,x2*)である.また戦略に関してhi-1<h*i < hi+1なので,技術転換後のhiとhi+1の利潤に関して(14a)と(14c)から,Fi(x1 1*-∆τ1,x2*+∆τ2)
> F1i+1(x1*-∆τ1,x2*+∆τ2)である.よってhi*とhi+1では,技術転換前と後もナッシュ均衡戦略 hiの利潤が常に大きい.
hi-1,hiの利潤の大小関係についてはβ∆τ(hj-hi)hi-1<β∆τ(hj-hi)h*iなので,どちらの戦略の 利潤が大きいか調べる必要がある.
技術転換後の戦略h*iの利潤と戦略hi-1利潤の差をとる.(14a)と(14b)から F1i-1(x1*-∆τ1,x2*+∆τ2)-Fi(x1 1*-∆τ1,x2*+∆τ2)
=F1i-1(x1*,x2*)-Fi(x1 1*,x2*)-β∆τ(hj-hi)(hi-1-hi) =(hi-1-h*i){p(q(x1*,x2*))-(hi-1-hi)-β∆τ(hj-hi)}
となる.右辺の(hi-1-h*i)は負なので,h*iが短期ナッシュ均衡戦略であるか否かは,{ }の符 号に依存して決まる.
補題 4 生産技術 1 のグループ規模が∆τの大きさ縮小後も,戦略h*iがナッシュ均衡戦略としてあ り続けるための条件は,
p(q(x1*, x2*))-β∆τ(hj-hi)-(hi-1+hi)> 0 (15)
である.
5 ) 拙稿(2019)46-47頁.
式(15)は,技術転換後の価格(技術転換前の価格から技術転換による価格の下落を差し引いた後の 価格)が, 2 つの戦略の限界費用の平均値を上回ることを求める.
生産技術 1 の集団規模が∆τ減少した後,式(15)が満たされないときには,もはや戦略hiがた だ 1 つのナッシュ均衡でないことを意味する.よってhiが生産技術 1 の集団における唯一のナッ シュ均衡戦略としての継続が終了するまでの転換数τを求めることができる.τは(15)を変形する ことで導かれる.
τ=p(q(x1*,x2*))-(hi-1-hi)
β(hj-hi) (16)
生産技術 2 においても,戦略h*jが引き続きナッシュ均衡戦略を維持できる条件として,生産技術 1 の場合と同様な議論により,補題 4 を導くことができる.
補題 5 生産技術 2 のグループ規模が∆τの大きさ拡大後も戦略h*jがナッシュ均衡戦略としてあり 続けるための条件は,
p(q(x1*, x2*))-β∆τ(hj-hi)-(hj-1-hj)> 0 (17)
である .
式(17)が求めることは,技術転換後の価格(技術転換前の価格から技術転換による価格の下落を差 し引いた後の価格)が, 2 戦略の限界費用の限界費用の平均値を上回ることである.
生産技術 2 のグループ規模が∆τの大きさだけ拡大した後,式(17)が満たされない場合,式
(16)と同様に,h*jが生産技術 2 のグループで唯一のナッシュ均衡であり続ける規模τを求めること ができる.
τ=p(q(x1*,x2*))-(hj-1-hj)
β(hj-hi) (18)
ナッシュ均衡戦略が生産技術 1 から 2 への技術転換がおこなわれた後も,引き続きナッシュ均衡で あるための条件として,補題 4 ,5 が導かれた.長期均衡の定義 1 条件(ⅱ)のもとで,生産技術 1 からすべての生産者が生産技術 2 転換するとき,戦略i, jがナッシュ均衡戦略でありうるだろう か.その条件は,補題 4 の式(15),補題 5 の式(17)に∆τ=m1を代入することで得られる.生産 技術 1 を採用する生産者がなく,すべての生産者が生産技術 2 の戦略hjを選択する状態で,つま りhjの分布状態がm1+m2で,他のすべての戦略の分布状態が 0 であるとき,
p(q(0,…0,0…0,m1+m2,0…0))-(hi-1-hi)> 0 p(q(0,…0,,0…0,m1+m2,0…0))-(hj-1-hj)> 0 が成り立つことである.
4.3 長期均衡におけるナッシュ均衡戦略とパラメータの変化
生産技術 1 の生産者による生産技術 2 への技術転換はどこまで進むのか.言い換えると,生産技 術 1 の生産者がある規模になった時点で転換が終わるのか,それとも生産技術 1 の生産者がゼロに なるまで転換が進むのか.これはそれぞれの生産技術のもとでの利潤の大小が関係する問題であ る.以下では,この問題を検討する.
仮定 3 により,当初の短期ナッシュ均衡では生産技術 2 の戦略hjの利潤Fj(x2 1*,x2*)が生産技 術 1 の利潤Fi(x1 1*,x2*)より大きい.よって生産技術 1 の生産者の一部∆τ> 0に生産技術の転換 を含め戦略変更の見直しが与えられたとき,∆τの生産者は生産技術 2 に技術の転換を図る.
4.2での設定と同様に,戦略状態を表すn次元ベクトルについて第i要素がτ,他の要素が 0 であ るベクトルをτ1,第j要素がτ,他の要素が 0 であるベクトルをτ2で表す.ナッシュ均衡戦略hi,hj の利潤の差Aは次のようになる.
A=Fj(x2 1*-τ1,x2*+τ2)-Fi(x1 1*-τ1,x2*+τ2)
=p(q(x1*-τ1,x2*+τ2))h*j-rh*2j -sη-p(q(x1*-τ1,x2*+τ2))h*i+h*2i +η
=-βτ(-h*i+h*j)2+{α-β(hi*m1+h*jm2)}(h*j-hi*)-rh*2j +h*2i -η(s-1) (19)
(19)の右辺から,利潤差Aは技術転換をする生産者数τの 1 次の減少関数であることがわかる.
よって 2 つの生産技術について次のようにいえる.
図 1 クールノー競争集団ゲームの長期均衡(LE)
B1
0 τ* m1 τ
LE
B={α-β(him1+hjm2)}(hj-hi)
C=rhj2-hi2+η(s-1)
-βτ(hj-hi)2
LE1
* *
* *
* *
*
*
収入差,費用差
出所)筆者作成
補題 6 短期のナッシュ均衡戦略がh*i,h*jであり続けるならば,生産技術 1 から 2 への転換数の 増加に従い,生産技術 1 と技術 2 の利潤差は次第に縮まる.
生産技術 1 の利潤と生産技術 2 の利潤が等しくなるとき,長期均衡が実現される.長期均衡の条 件は,式(19)を変形して
-βτ(-h*i+h*j)2-{α-β(h*im1+h*jm2)}(hj*-h*i)=rh*2j -h*2i +η(s-1)
となる.左辺は戦略iとjの間の収入の差,右辺は戦略iとjの間の費用の差である.左辺の収入
差をB,右辺の費用差をCと表す.技術転換が進むとき,短期均衡が他の戦略に移動しないなら
ば,短期均衡戦略はh*iとh*jのままである.このときには左辺Bはτに関しての 1 次の減少関数,
右辺Cはτに関して一定である.すると,長期均衡LEは図 1 のように示される.
長期均衡は 2 つに分類される.技術 1 の生産者がすべて技術 2 に転換するときの収入差B(m1) をB1とすると,次のような結果が得られる.
命題 1
① B1<C ならば,長期均衡のクールノー競争集団ゲーム戦略は,生産技術 1 のh*iと生産技術 2 のh*jからなる.h*iの戦略分布状態はm1-τ*,h*iの戦略分布状態はm2+τ*となる(図 1 のケー ス).
② B1≥C ならば,長期均衡のクールノー競争集団ゲーム戦略は,ただ 1 つの生産技術 2 のh*jか らなる.h*iの戦略分布状態はm1+m2となる.
生産技術 2 の総費用が生産技術 1 のそれより小さいときは,生産技術 2 は常に利潤の視点で優れて いるので,技術 1 の生産者はすべて技術 2 に転換する.命題の②に対応する自明な解である.
市場規模や生産技術が異なれば,長期均衡も異なる.そこで生産規模α,限界費用tなどのパラ メータの変化が長期均衡に及ぼす効果を検討する.
そのために式(19)を変形する.
τ= 1
β(h*j-h*i)2[{α-β(hi*m1+h*jm2}(h*j-h*i)-{rh*2j -h*2i +η(s-1)}]
この式をパラメータで偏微分する.市場規模パラメータαに関しては次のようになる.
∂τ
∂α= 1
β(h*j+h*i)> 0 限界費用パラメータrについては,
∂τ
∂r= -h*2j β(h*j-h*i)2< 0
となり,固定費用パラメータsについては
∂τ
∂s= -η β(h*j-h*i)2< 0
となる.よって市場規模が大きくなる,限界費用パラメータが小さく(効率的)になる,あるいは 固定費用パラメータが小さくなることのいずれかが起こるとき,長期均衡を実現する生産技術 2 へ の転換数が大きくなる.言い換えると,長期均衡での生産技術 1 の集団規模はより小さく,生産技 術 2 のグループの規模はより大きくなる.
生産技術の進歩が起こる場合には,限界費用だけでなく,固定費用も変化することが考えられ る. ∂τ/∂rの符号から生産の効率性が上昇するとき,技術 2 への転換数がより大きく進行するとい える.ただし,技術進歩が固定費用を引き上げるような技術になる場合,固定費用増加が限界費用 の減少に歯止めをかける効果をもつ.その結果, ∂τ/∂rと∂τ/∂sの関係により,技術 2 への転換が 促進される場合とそうでない場合に分けられる.例えば,
dτ= -h*2j
β(h*j-h*i)2dt+ -η β(h*j-h*i)2ds
dt=-1,ds=1の場合,h*2j -ηが正ならば,技術 2 への転換が進み,負ならば転換が遅くなる.
5 .対平均ペイオフ比較プロトコルによるシミュレーション
拙稿(2019)では生産技術が 1 つのケースでは,ナッシュ均衡戦略への収束過程のシミュレー ション分析をおこなった.分析では戦略見直しの基準として対平均ペイオフ比較(comparisonto
theaveragepayoff)プロトコルを用いて,ナッシュ均衡に至る動学過程を明らかにした.本論文
においても同様に対平均ペイオフ比較プロトコルを用いて長期の技術転換に関する動学過程を調べ ることにする.
5.1 生産者の戦略見直しプロトコルとシミュレーション分析の前提
対平均ペイオフ比較プロトコルは,見直しが現在選択している戦略に依存せずに候補戦略に依存 するというターゲットプロトコル(targetprotocol)の 1 つである6).対平均ペイオフ比較プロトコ ルは,候補戦略の利得と平均利得との差によって定義される.対平均ペイオフ比較プロトコルρij は次のように定義される.
ρi(F, xj )=ρ(F, xj )=[F̂j]+= Fj-
h∈Sxh Fh
+
6 ) Sandholm(2010)p.124およびpp.128-129.