1
多変数関数■記号 実数全体の集合を
R
で表すことにする*1.さらに,正の整数n
に対して,n
個の実数の組全体の集 合をR
n と書く*2:R
n= { (x
1, . . . , x
n) | x
1, . . . , x
n∈ R } .
とくに
R
は数直線,R
2は座標平面,R
3は座標空間とみなすこともできる.集合R
n の要素のことを“R
n の点”
と呼んだりする.■多変数関数 集合
R
n のある範囲D
(すなわちD
はR
n の部分集合*3)
上の各点(x
1, . . . , x
n)
に対して 実数f (x
1, . . . , x
n)
を対応させる規則f
をD
上で定義された関数という*4.とくにn = 2
のとき多変数関 数,それに対してn = 1
のとき(
高等学校で学んだ関数)
を1
変数関数と言うことがある.「f
はD ⊂ R
n 上 で定義された関数である」ということをf : D −→ R
と書く.例
1.1.
点(x, y) ∈ R
2 に対してf (x, y) = √
x
2+ y
2 とおくとf
はR
2 上で定義された関数である: f : R
2→ R
*5.この規則をf : R
23 (x, y) 7−→ f (x, y) = √
x
2+ y
2∈ R
などと書くことがある*6.とくにf (0, 0) = 0, f (1, 0) = 1, f ( − 1, − 1) = √ 2
である.例
1.2.
東経x
度,北緯y
度の地点の標高をf (x, y)m
とすると,f (x, y)
はx
とy
の2
変数関数である.た とえばf (
富士山頂の経度,
富士山頂の緯度) =
富士山の標高 である.例
1.3.
いまこの瞬間の,東経x
度,北緯y
度の地点の地表における気圧をf (x, y)hPa
とすれば,f (x, y)
はx
とy
の2
変数関数である.2011年4月6日(2011年4月13日訂正)
*1 太字の“R”.手で書くときはRのように書くのが普通.テキストではこれを用いている.
*2 “x∈R”は“xは集合Rの要素”と読む.この場合は“xは実数”と同義.
*3 “D⊂Rn”と書く.この授業ではDとしてあまり変な部分集合は考えない.D をRn「領域」(ちゃんとした定義のある言葉 である)とするのが妥当だが,その定義を述べるのにはすこし手間がかかるので,いまはあまり気にしないことにする.テキスト 7ページ,脚注4参照.
*4 テキストでは「函数」と表している.本来は「函」が正しいのだが,最近は「関」が多数派.
*5 2変数関数の場合,R2 の点を(x1, x2)と書くかわりに(x, y)と書くことがある.このとき“f(x, y)はxとyの2変数関数 である”ということもある.この講義では,簡単のため,主に2変数関数を扱うが,ほとんどの場合,一般の多変数関数に拡張す ることは容易である.
*6 矢印“→”と“7→”の使い分けに注意.
■グラフと等高線
2
変数関数f : D → R (D ⊂ R
2)
に対して,R
3 の部分集合{ (
x, y, f (x, y) )
| (x, y) ∈ D }
を
f
のグラフという.関数f
が“
性質のよい”
関数ならばそのグラフは座標空間R
3 の曲面になる.一方,
2
変数関数f : D → R
と定数c
に対して,集合{ (x, y) ∈ D | f (x, y) = c }
を,関数f
の高さc
の等高線という.2
変数関数のグラフや等高線は関数の変化の様子を表しているといってよい.■スカラ場 例
1.2, 1.3
のように,関数f
が「座標平面R
2 の各点に対して実数が対応している」とみなせ るとき,f
をR
2上のスカラ場*7 または平面のスカラ場という.同様に,3
変数関数が,座標空間の各点にた いして実数を対応させているとみなせるとき,空間のスカラ場という.問題
1-1
身の回りの現象の中で,2
変数関数,3
変数関数. . .
で表されるものの具体例を挙なさい.1-2
身の回りで,平面のスカラ場,空間のスカラ場とみなせる量の具体例を挙げなさい.1-3 2
変数関数f (x, y) =
2xy x
2+ y
2( (x, y) 6 = (0, 0)
のとき)
0 (
(x, y) = (0, 0)
のとき)
に対して,次の値を求めなさい:
• f (0, 0), f (1, 1), f(1, 2), f (1, 3).
• f (2, 4), f (3, 6), f(4, 8).
• f (a, ma) (m
は定数, a
は0
でない定数).
1-4
例1.1
の関数f
のグラフを描きなさい.また,高さ1, 2, 3 . . .
の等高線を描きなさい.1-5
関数f (x, y) = x
2− y
2 のいろいろな高さの等高線を描きなさい.また,この関数のグラフを描きな さい.1-6
例1.2, 1.3
の関数f
の等高線は何か.また,例1.2
の関数f
のグラフは何か.1-7
問題1-3
の関数f
の等高線を描きなさい.1-8
次のような意見に対して,有効な反論をなるべくたくさん挙げなさい:3
変数関数, 4
変数関数. . .
のグラフは描くことができない.したがって,このような関数を考えることに実用的な意味はない.
*7 Scalar field. 「スカラー場」と書くこともある.
2
偏微分2.1
一変数関数の微分(
復習)
区間
I ⊂ R
上で定義された一変数関数f
とa ∈ I
に対して極限値(2.1) lim
h→0
f (a + h) − f (a) h
が存在するとき,
f
はa
で微分可能であるといい,極限値(2.1)
をf
のa
における微分係数とよんでf
0(a)
で表す.定義域I
上のすべての点でf
が微分可能ならば,新しい関数f
0: I 3 x 7−→ f
0(x) ∈ R
が定まる.これをf
の導関数とよぶ.例
2.1. • f (x) = | x |
で与えられる関数f
はx = 0
で微分可能でない.• f (x) = √
3x (x ∈ R)
で与えられる関数f
はx = 0
で微分可能でない.f
のグラフは滑らかな曲線で あることに注意しよう.•
正の実数α
に対してf (x) =
x
αsin 1
x + 1
2 x (x 6 = 0)
0 (x = 0)
で与えられる関数
f
はα > 1
のとき0
で(
したがってR
で)
微分可能で,f
0(x) =
αx
α−1sin 1
x − x
α−2cos 1 x + 1
2 (x 6 = 0) 1
2 (x = 0)
となる.
微分可能な関数
f
をy = f (x)
と書き表したとき,f
0(x) = dy dx
と書くことがある.この記号は,合成関数・逆関数の微分公式を覚えるのに便利であった.
さらに
f
0(x)
が微分可能なとき,f
0(x)
の導関数f
00(x)
をf
の2
次導関数(2
階微分)
,f
00(x)
の導関数を3
次導関数. . .
とよぶ.一般にf (y = f(x))
のn
次導関数をf
(n)(x) = d
ny dx
n と書く.ここでf
(0)(x) = f (x)
と約束しておく.2011年4月13日(2011年4月27日訂正)
2.2
偏微分係数と偏導関数領域
D ⊂ R
2 で定義された2
変数関数f : D 3 (x, y) 7−→ f (x, y) ∈ R
を考える.点(a, b) ∈ D
において,極限値∂f
∂x (a, b) = lim
h→0
f (a + h, b) − f (a, b)
h , ∂f
∂y (a, b) = lim
k→0
f (a, b + k) − f (a, b) k
がともに存在するとき,
f
は(a, b)
で偏微分可能であるといって,∂f
∂x (a, b)
( ∂f
∂y (a, b) )
を「
f
の(a, b)
におけるx
に関する(y
に関する)
偏微分係数」という.さらに
f
がD
の各点で偏微分可能なとき,∂f
∂x : D 3 (x, y) 7−→ ∂f
∂x (x, y) ∈ R
は
D
で定義された2
変数関数を与える.これをf
のx
に関する偏導関数という.同様にf
のy
に関する 偏 導関数 ∂f∂y も定義される.注意
2.2 (
記号の注意).
•
偏導関数の記号 ∂f∂x の∂
はディーまたはラウンド・ディーと読むが,d
と書くことはない.• 2
行にまたがるのがいやな場合はf
x= ∂f
∂x , f
y= ∂f
∂y
という記号を使う.■偏導関数の計算 関数
f (f (x, y))
のx
に関する偏導関数は,y
の値を止めたままx
を変化させて得られ る1
変数関数の導関数とみなすことができる.したがってf (x, y)
がx, y
の式で与えられているとき,f
xはf (x, y)
のy
を定数としてx
に関して微分したもので与えられる.2.3
高階の偏導関数関数
f (x, y)
の偏導関数f
x(x, y), f
y(x, y)
がそれぞれ偏微分可能ならば4
つの2
変数関数f
xx= ∂
2f
∂x
2= ∂
∂x
∂f
∂x , f
xy= ∂
2f
∂y∂x = ∂
∂y
∂f
∂x , f
yx= ∂
2f
∂x∂y = ∂
∂x
∂f
∂y , f
yy= ∂
2f
∂y
2= ∂
∂y
∂f
∂y
を考えることができる.これらをf
の2
次偏導関数という.例
2.3. 2
変数関数f (x, y) = x
3+ 3x
2y + y
2 に対してf
x(x, y) = 3x
2+ 6xy, f
y(x, y) = 3x
2+ 2y.
さらにこれを微分して
2
次偏導関数f
xx= 6x + 6y, f
xy= 6x, f
yx= 6x, f
yy= 2
を得る.この例では
f
xy(x
で偏微分して,そのあとy
で偏微分したもの)
とf
yx(y
で偏微分して,そのあとx
で 偏微分したもの)
が一致する.これは偶然ではなくよく使われる状況では
f
xy とf
yx は一致する.これを偏微分の順序交換定理という.この「よく使われる状況」は次回にきちんと説明しよう.問題
2-7
はf
xy とf
yx が一致しない例(
病的な例)
である.問題
2-1
例2.1
を確かめなさい.2-2
関数f (x, y) =
2xy x
2+ y
2( (x, y) 6 = (0, 0) )
0 (
(x, y) = (0, 0) )
の偏導関数をすべて求めなさい.2-3
変数(t, x)
の2
変数関数u(t, x)
に関する関係式( ∗ ) ∂u
∂t − ∂
2u
∂x
2= 0
を熱方程式という
(
暇な人はこのいわれについて調べなさい)
.関数u(t, x) = 1
√ t e
−x2 4t
は方程式
( ∗ )
を満足することを示しなさい.2-4 2
変数関数f (x, y)
が関係式f
xx+ f
yy= 0
を満たしているとき,
f
は調和関数であるという(
暇な人はこのいわれについて調べなさい).
次の関数 は調和関数であることを確かめなさい:f (x, y) = log √
x
2+ y
2, g(x, y) = tan
−1y x .
また,x, y
の3
次以下の多項式で調和関数となるものをすべて求めなさい.2-5 3
変数関数f (x, y, z)
が関係式f
xx+ f
yy+ f
zz= 0
を満たしているとき,
f
を(3
変数の)
調和関数という.一変数関数F (t)
を用いてf (x, y, z) = F( √
x
2+ y
2+ z
2)
という形でかけるような
3
変数関数f
が調和関数となるようなF
を求めなさい.2-6 2
変数関数f (x, y)
に関する関係式∂
∂x
f
x√
1 + f
x2+ f
y2
+ ∂
∂y
f
y√
1 + f
x2+ f
y2
= 0
を満たすとき,関数
f
のグラフで与えられる曲面を極小曲面という(
暇な人はこのいわれについて調 べなさい)
.次の関数(
定義域はどこと考えるのがよいか)
のグラフは極小曲面であることを確かめな さい:f (x, y) = log (√
x
2+ y
2+ √
x
2+ y
2− 1), g(x, y) = log cos x cos y . 2-7
関数f (x, y) =
xy(x
2− y
2) x
2+ y
2( (x, y) 6 = (0, 0) )
0 (
(x, y) = (0, 0) )
は
2
階偏微分可能であることを示し,2
次偏導関数を求めなさい(cf.
テキスト21
ページ問い7)
.2-8
一般にn
変数関数の2
次導関数は何通りあるか.偏微分の順序交換ができる場合と,順序を入れ替えた偏微分を区別しなければならない場合について考えなさい.
3
連続性・微分可能性3.1
一変数関数の連続性と微分可能性(
復習)
■連続性と微分可能性 区間
I ⊂ R
で定義された1
変数関数f
がa ∈ I
で連続であるとはx
lim
→af(x) = f(a)
が成り立つことである.例
3.1. •
実数全体で定義された関数f (x) = {
1 (x 6 = 0)
0 (x = 0)
は
0
で連続でない.実際lim
x→0
f (x) = lim
x→+0
f (x) = lim
x→−0
f (x) = 1
であるが、f (0) = 0
である.•
関数f (x) = {
sin
1x(x 6 = 0)
0 (x = 0)
は
0
で連続でない.実際x
n=
[(
2n + 1 2
) π
]
−1, y
n= [(
2n + 3 2
) π
]
−1(n = 1, 2, 3 . . . )
に よ り 数 列{ x
n} , { y
n}
を 定 義 す る とlim
n→∞
x
n= 0, lim
n→∞
y
n= 0
で あ る が ,lim
n→∞
f (x
n) = 1,
n
lim
→∞f(y
n) = − 1
となるのでlim
x→0
f (x)
は存在しない.定理
3.2.
一変数関数f
がa
で微分可能ならばa
で連続である.証明
. (
x
lim
→af (x)
) − f (a) = lim
x→a
( f (x) − f (a) )
= lim
h→0
( f (a + h) − f (a) )
= lim
h→0
( f (a + h) − f (a)
h h
)
= (
lim
h→0
f (a + h) − f (a) h
) ( lim
h→0
h )
= f
0(a) × 0 = 0.
■
C
r-
級関数 区間I
で定義された一変数関数f
に対して• f
がI
で連続である,とはI
の各点で連続なことである.このときf
はI
でC
0-
級である,という.• f
がI
で微分可能であるとはI
の各点で微分可能なことである.このときf
は自動的にI
で連続にな る.またf
の導関数f
0 は,区間I
で定義された関数となる(f
0 が連続であるとは限らない)
.• f
がI
でC
1-
級である,とは,f
がI
で微分可能で,かつ導関数f
0 がI
で連続であることと定義する.•
正の整数r
に対してf
がI
でC
r-
級であるとは、f
のr
次導関数f
(r)が存在してI
で連続となるこ とと定義する.•
関数f
が全ての負でない整数r
に対してC
r-
級であるとき,f
はC
∞-
級であるという.2011年4月20日(2011年4月27日訂正)
■平均値の定理 多変数関数の微分を議論するのに必要なので,平均値の定理を思い出しておこう.証明は後 期の微分積分学第二で与える:
定理
3.3.
関数f
が区間I
で微分可能であるとき,点a ∈ I
とa + h ∈ I
となるようなh 6 = 0
に対して,f (a + h) − f (a) = f
0(a + θh)h (0 < θ < 1)
を満たすθ
が存在する*8.3.2
二変数関数の連続性と微分可能性■極限 2変数関数
f
に対してlim
(x,y)→(a,b)
f (x, y) = A
である,とは
(x, y)
がどのような経路で(a, b)
に近づいてもf (x, y)
の値がA
に近づくことである*9. 注意3.4. (i) lim
(x,y)→(a,b)
f (x, y) = lim
(h,k)→(0,0))
f (a + h, b + k).
(ii) lim
(h,k)→(0,0)
f (a + h, b + k) = A
とは,√
h
2+ k
2 が0
に近づくときにf (a + h, b + k)
がA
に近づくこ とである.(iii) lim
(h,k)→(0,0)
f (a + h, b + k) = A
とは,h = r cos θ, k = r sin θ (r > 0)
とおいたとき,
r
が0
に近づくならばf (a + h, b + k) = f (a + r cos θ, b + r sin θ)
がA
に近づくこと である.(iv)
二つの2
変数関数α(h, k), β(h, k)
がlim
(h,k)→(0,0)
α(h, k) = 0, lim
(h,k)→(0,0)
β(h, k) = 0
を満たしていると する.さらに2
変数関数f
がlim
(x,y)→(a,b)
f (x, y) = A
を満たしているならば,lim
(h,k)→(0,0)
f (
a + α(h, k), b + β(h, k) )
= A
である.(v) lim
(x,y)→(a,b)
f (x, y) = A
ならば,0
に収束する2
つの数列{ h
n} , { k
n}
に対してlim
n→∞
f (a +h
n, b+ k
n) = A.
(vi) “ lim
(x,y)→(a,b)
f (x, y) = A”
でないための必要十分条件は, 0
に収束する2
つの数列{ h
n} , { k
n}
をうまく とるとf(a + h
n, b + k
n)
がA
に収束しないようにできることである.例
3.5. •
関数f (x, y) = 2xy/(x
2+ y
2)
を考える.h
n=
1n, k
n=
n1 とするとlim
n→∞
f (h
n, k
n) = 1
であ るが,h
n=
n1, k
n= −
n1 とするとlim
n→∞
f (h
n, k
n) = − 1
である.したがって,極限値lim
(x,y)→(0,0)
f (x, y)
は存在しない.一方,x
lim
→0(
y
lim
→0f (x, y) )
= 0, lim
y→0
(
x
lim
→0f (x, y) )
= 0
*8 関数f を与えたとき,θはaとhに依存して定まる.与えられたa,hに対して具体的にθの値を求めることはそれほど重要で はない.
*9 このことのもう少しきちんとした定義は後期に紹介する.
である.
• f (x, y) = (x
2− y
2)/(x
2+ y
2)
は(x, y) → (0, 0)
としたときの極限値を持たない.一方,x
lim
→0(
y
lim
→0f (x, y) )
= lim
x→0
x
2x
2= 1, lim
y→0
(
x
lim
→0f (x, y) )
= lim
y→0
− y
2y
2= − 1
である.• f (x, y) = xy(x
2− y
2)/(x
2+ y
2)
は(x, y) → (0, 0)
のとき0
に近づく.実際,x = r cos θ, y = r sin θ
とおくと( ∗ ) f (x, y) = f (r cos θ, r sin θ) = r
2cos θ sin θ(cos
2θ − sin
2θ) = 1
2 r
2sin 2θ cos 2θ = 1
4 r
2sin 4θ
だが,| sin 4θ | 5 1
だからr
24 sin 4θ
5 r
24
すなわち− r
24 5 r
24 sin 4θ 5 r
24
なので( ∗ )
の右辺はr → 0
とすると0
に近づく.■連続性
定義
3.6.
領域D ⊂ R
2 で定義された2
変数関数f
が点(a, b) ∈ R
2 で連続であるとは,lim
(x,y)→(a,b)
f(x, y) = f (a, b)
が成り立つことである.例
3.7. (1) R
2 で定義された関数f(x, y) = {
2xyx2+y2
( (x, y) 6 = (0, 0) )
0 (
(x, y) = (0, 0) )
は
(0, 0)
で連続でないが,f
は(0, 0)
で偏微分可能でf
x(0, 0) = f
y(0, 0) = 0
である.(2) R
2 で定義された関数f (x, y) =
{
xy(x2−y2) x2+y2( (x, y) 6 = (0, 0) )
0 (
(x, y) = (0, 0) )
は(0, 0)
で連続である.一般に,多項式であらわされる関数は連続,有理式,すなわち多項式の商で表される関数は分母が
0
となら ない点で連続である.■微分可能性
定義
3.8.
領域D ⊂ R
2 で定義された関数f (x, y)
が(a, b) ∈ D
で微分可能であるとは,うまく定数A, B
を選び,(a + h, b + k) ∈ D
となるような(h, k)
に対して(?) f (a + h, b + k) − f (a, b) = Ah + Bk + ε(h, k) √ h
2+ k
2 とおくときlim
(h,k)→(0,0)
ε(h, k) = 0
となるようにできることである.命題
3.9.
関数f (x, y)
が(a, b)
で微分可能ならば,f
は(a, b)
で偏微分可能であって,(?)
の定数A, B
はA = f
x(a, b), B = f
y(a, b)
でなければならない.証明
.
式(?)
のk = 0
としてf (a + h, b) − f (a, b)
h = Ah + ε(h, 0) √ h
2h = A + ε(h, 0) | h | h
だが,−| ε(h, 0) | 5 ε(h, 0)
|hh|5 | ε(h, 0) |
,かつh → 0
とするとε(h, 0) → 0
だからA = lim
h→0
f (a + h, b) − f(a, b)
h = f
x(a, b).
一方
h = 0
とすることでB = f
y(a, b)
も得られる.命題
3.10.
関数f
が(a, b)
で微分可能ならば(a, b)
で連続である.証明
.
式(?)
の両辺で(h, k) → (0, 0)
とすればよい.注意
3.11.
命題3.9
の逆は成立しない.実際,例3.7 (1)
の関数f
は(0, 0)
で偏微分可能であるが連続でな い.したがって,命題3.10
の対偶から微分可能でない.■微分可能性の十分条件
命題
3.12.
領域D
で定義された二変数関数f
がD
の各点で偏微分可能,かつ偏導関数f
x, f
yがD
で連続 ならばf
はD
の各点で微分可能である.証明
.
点(a, b) ∈ D
で微分可能であることを示そう.(?)
のA = f
x(a, b), B = f
y(a, b)
としてε(h, k) → 0 ((h, k) → (0, 0))
を示せばよい:
ε(h, k) = f (a + h, b + k) − f (a, b) − f
x(a, b)h − f
y(a, b)k
√ h
2+ k
2 とおく.いま,k
を一つ固定してF (h) := f (a + h, b + k) − f (a, b + k)
とおくと*10
f
の偏微分可能性からF
はh
の微分可能な関数でF
0(h) = f
x(a + h, b + k), F(0) = 0
が成り立 つ.そこでF
に平均値の定理3.3
を適用するとF(h) = F (h) − F(0) = F
0(0 + θh)h = F
0(θh)h = f
x(a + θh, b + k)h (0 5 θ = θ(h, k) 5 1)
を満たすθ
が存在する(θ
はh
とk
を与えるごとに決まるので(h, k)
の関数である)
.同様にG(k) = f (a, b + k) − f (a, b)
とおくと,G(k) = G
0(δk)k = f
y(a, b + δk)k (0 5 δ = δ(k) 5 1)
を満たすk
の関数δ
が存在する.したがってε(h, k) = F(h) + G(k) − f
x(a, b)h − f
y(a, b)k
√ h
2+ k
2= (
f
x(a + θh, b + k) − f
x(a, b) ) h
√ h
2+ k
2+ (
f
y(a, b + δk) − f
x(a, b) ) k
√ h
2+ k
2*10 記号“:=”は(ここでは)左辺を右辺によって定義するという意味を表す.
と な る が ,
0 < θ < 1, 0 < δ < 1
だ か らθh → 0, δk → 0 ((h, k) → (0, 0))
が 成 り 立 つ こ と と ,| h/ √
h
2+ k
2| 5 1, | k/ √
h
2+ k
2| 5 1
であることから,右辺は(h, k) → (0, 0)
のときに0
に近づく.注意
3.13.
命題3.12
の逆は成立しない.実際,f (x, y) =
{ (x
2+ y
2) sin √
1x2+y2
( (x, y) 6 = (0, 0) )
0 (
(x, y) = (0, 0) )
は(0, 0)
で微分可能であるがf
x, f
y は原点で連続でない.■
C
r-
級関数 領域D ⊂ R
2で定義された二変数関数f
に対して• f
がD
で連続である,とはD
の各点で連続なことである.このときf
はI
でC
0-
級である,という.• f
がD
で微分可能であるとはD
の各点で微分可能なことである.このときf
は自動的にD
で連続,また
D
の各点で偏微分可能になる.またf
の偏導関数f
x, f
y は,D
で定義された関数となる• f
がD
でC
1-
級であるとはD
の各点で偏微分可能で,f
x, f
y がD
で連続となることである.• f
がD
でC
2-
級である,とは,f
の2
次導関数f
xx, f
xy, f
yx, f
yy がD
上で定義されていて,さらに それらがすべてD
で連続であることと定義する.3.3
偏微分の順序交換定理定理
3.14 (
偏微分の順序交換).
領域D ⊂ R
2で定義された二変数関数f
の2
つの2
次偏導関数f
xy, f
yxが 存在して,ともに連続であるとき, f
xy= f
yx が成立する.証明は,テキスト
20
ページ,定理7
.後日,時間があれば紹介する.とくに
f
がC
2-
級であればf
xy= f
yx である.問題
3-1
実数α
に対して,次の条件を満たす整数k
を求めなさい:関数f (x) =
{
x
αsin
x1(x 6 = 0)
0 (x = 0)
は
R
でC
k級であるがC
k+1-
級でない.3-2
平均値の定理3.3
の絵をh > 0, h < 0
の場合にそれぞれ描きなさい.3-3 2
変数関数が連続であること,偏微分可能であること,微分可能であること,C
1-
級であることの間の関係を整理しなさい.
例:微分可能
⇒
連続;連続6⇒
微分可能.実際f(x, y) = √
x
2+ y
2 は(0, 0)
で連続だが微分可能で ない.3-4 2
変数関数がC
r-
級であることを定義しなさい.またC
r-
級の関数は,任意のr
以下の任意の負でない 整数k
に対してC
k-
級であることを確かめなさい.3-5 2
変数関数がC
∞-
級であることを定義しなさい.4
全微分・方向微分■微分可能性の復習
定義
4.1.
領域D ⊂ R
2 で定義された関数f (x, y)
が(a, b) ∈ D
で微分可能であるとは,うまく定数A, B
を選び,(a + h, b + k) ∈ D
となるような(h, k)
に対して(?) f (a + h, b + k) − f (a, b) = Ah + Bk + ε(h, k) √ h
2+ k
2 とおくときlim
(h,k)→(0,0)
ε(h, k) = 0
となるようにできることである.命題
4.2.
関数f (x, y)
が(a, b)
で微分可能ならば,f
は(a, b)
で偏微分可能であって,(?)
の定数A, B
はA = f
x(a, b), B = f
y(a, b)
でなければならない.以上から,次のことがわかる:
定理
4.3.
領域D ⊂ R
2 で定義された関数f (x, y)
が(a, b) ∈ D
で微分可能であるための必要十分条件は,f
が(a, b)
で偏微分可能で,lim
(h,k)→(0,0)
f (a + h, b + k) − f (a, b) − f
x(a, b)h − f
y(a, b)k
√ h
2+ k
2= 0
が成り立つことである.
■全微分 関数
f (x, y)
がP = (a, b)
で微分可能であるとき,(df)
P= ( ∂f
∂x (a, b), ∂f
∂y (a, b) )
で与えられる
2
次列ベクトル(df)
P を関数f
の点P
における全微分または微分という.さらに,(x, y)
に 対して2
次行ベクトル(
f
x(x, y), f
y(x, y) )
を対応させる規則
(4.1) df =
( ∂f
∂x , ∂f
∂y )
を
f
の全微分または微分という.例
4.4.
関数ϕ(x, y) = x, ψ(x, y) = y
に対してdϕ = (1, 0), dψ = (0, 1)
である.このことをdx = (1, 0), dy = (0, 1)
と書く.
2011年4月27日(2011年5月4日訂正)
この記号を用いれば
(4.1)
は(4.2) df = ∂f
∂x dx + ∂f
∂y dy
と書くことができる.これが通常の全微分の表し方である.命題
4.5. 2
変数関数f
が点P = (a, b)
で微分可能なとき,f (a + h, b + k) − f (a, b) = (df)
Ph + ε(h) | h | h = ( h
k )
, | h | = √ h
2+ k
2 と書くとlim
h→0
ε(h) = 0
が成り立つ.ただし(df)
Ph
は行ベクトルと列ベクトルの積として得られる1 × 1
行 列で,これをスカラとみなしている*11.■曲線にそう微分 数直線上の区間
I
上で定義された1
変数関数x(t), y(t)
の組(
x(t), y(t) )
は
I
から座標 平面R
2への写像と思える:γ : I 3 t 7−→ γ(t) = (
x(t), y(t) )
∈ R
2.
このような写像を曲線あるいは曲線のパラメータ表示という.以下,曲線と言えば
x(t), y(t)
が微分可能とな るもののみを考える*12.このことをとくに断るときは“γ
は微分可能”
という.曲線
γ(t) = (
x(t), y(t) )
に対して
˙
γ(t) = dγ dt (t) = (
˙
x(t), y(t) ˙ )
= ( dx
dt (t), dy dt (t)
)
を曲線上の点
(
x(t), y(t) )
における速度ベクトルという*13. さて,
2
変数関数f (x, y)
と曲線γ(t) = (
x(t), y(t) )
に対して
(4.3) F (t) = f (
x(t), y(t) )
は,1
変数関数を与える.命題
4.6. 2
変数関数f (x, y)
と曲線γ(t) = (
x(t), y(t) )
がともに微分可能であるとき,
(4.3)
は微分可能でdF
dt (t) = ∂f
∂x
( x(t), y(t) ) dx
dt (t) + ∂f
∂y
( x(t), y(t) ) dy dt (t)
が成り立つ.*11 ここで(x, y)の(a, b)からの変化(h, k)を,行ベクトルではなく列ベクトルt(h, k)で表すことに注意.“行列を掛ける”とい う文脈ではベクトルは普通列ベクトルで表す.この記法に合わせるならばx=t(x, y)と列ベクトルで表し,f(x, y)の代わりに f(x)と書くのが自然.このとき,命題の式は
f(a+h) = (df)ah+ε(h)|h|
と書ける.この方がすっきりするはずだが,座標平面上の点の座標を横に並べる高等学校の教科書の記号を慮って,ここにあるよ
うな“まぜこぜ”な記号を用いた.
*12 だからといってγが“なめらか”な曲線になるとは限らない.おなじみのサイクロイドを思い出そう.
*13 速度velocityと速さspeedの違いは説明しなくてよいですよね.
証明:実数
t
を一つ固定してε
1(δ) := x(t + δ) − x(t)
δ − x(t), ˙ ε
2(δ) := y(t + δ) − y(t) δ − y(t) ˙
とおけば,x, y
の微分可能性よりδ → 0
のときε
j(δ) → 0
.さらにh(δ) := δ (
˙
x(t) + ε
1(δ) )
, k(δ) := δ (
˙
y(t) + ε
2(δ) )
とおけば,
δ → 0
のときh, k → 0
が成り立つ.これらの記号を用いて,f
の微分可能性に注意すれば,F (t + δ) − F (t) = f (
x(t + δ), y(t + δ) )
− f (
x(t), y(t) )
= f (
x(t) + h(δ), y(t) + k(δ) )
− f (
x(t), y(t) )
= ∂f
∂x
( x(t), y(t) )
h(δ) + ∂f
∂y
( x(t), y(t) )
k(δ) + ε (
h(δ), k(δ) )√
h(δ)
2+ k(δ)
2となる.ただし
ε(h, k)
は(h, k) → (0, 0)
のときに0
に近づく関数である.この式の両辺をδ
で割ってδ → 0
と すると結論が得られる.命題
4.6
の結論の式はdF dt = ∂f
∂x dx dt + ∂f
∂y dy
dt = (df ) ˙ γ
などと書くことができる.ここで,速度ベクトル
γ ˙
は列ベクトルとみなしている.■方向微分 ベクトル
v =
t(v
1, v
2)
と点P = (a, b)
に対してγ(t) =
t(a+tv
1, b+tv
2) = a +tv (a =
t(a, b))
とおくとγ(t)
はt = 0
で点P
を出発し,一定の速度v
で動く運動とみなすことができる.このγ
と,点P
のまわりで定義された2
変数関数f
に対して(4.3)
で定義されるF(t)
を考えると,(4.4) F
0(0) = ∂f
∂x (a, b)v
1+ ∂f
∂y (a, b)v
2= (df)
pv
となることがわかる.この右辺の量を,関数
f
の点P
におけるv
方向の方向微分という.■勾配ベクトル 点
P = (a, b)
の近くで定義された微分可能な関数f
に対してベクトルgrad f
P:=
( f
x(a, b) f
y(a, b) )
のことを
f
のP
における勾配ベクトルgradient vector
という*14.これを用いると,方向微分(4.4)
は(df)
Pv = (
(grad f )
P) · v
と内積
“ · ”
を用いて表すことができる.問題
4-1 2
変数関数がf
が“
標高を表すスカラ場”,
曲線γ(t)
が,時刻t
とともに移動する人の運動と思うとき,式
(4.3)
で表される一変数関数はどのようなものか,説明しなさい.4-2
平面上の点(x, y)
における標高が,多項式f (x, y) = x
2+ xy + y
2 で表されているような世界がある とする.この世界を,原点を中心とする半径1
の円に沿って,反時計回りに速さ1
で歩くとき,この 旅はどのようなものになるか.すなわち,上り坂,下り坂になる区間を指摘しなさい.ヒント:考えて いる旅はγ(t) = (
cos t, sin t )
となる.
*14 全微分(df)P は行ベクトルだったが,それを“縦に並べかえた”だけ.
4-3
点P = (a, b)
を含む領域で定義された2
変数関数f
のP
における全微分(df)
P は(0, 0)
でないと する.このとき,f
の点P
における単位ベクトルv
方向の方向微分(df)
Pv
が最大になるのはv
が(grad
f)
P と同じ向きに平行なときである.このことを示しなさい.ヒント:v
は単位ベクトルであることに注意.
v =
t(cos t, sin t)
と表される.4-4
点P = (a, b)
を含む領域で定義された2
変数関数f
のP
における全微分(df)
P は(0, 0)
でないとす る.点P
を通るf
の等高線をγ(t) = (
x(t), y(t) )
(γ(0) = P )
とパラメータ表示するとき,t = 0
にお けるγ
の速度ベクトルγ(0) ˙
は(grad f )
P に直交することを示しなさい.すなわち,“
等高線は勾配ベ クトルに直交する”
.4-5
関数f
を次のように定義する:f (x, y) = {
1 (y = x
2 かつx 6 = 0)
0 (otherwise) .
すると,
v =
t(v
1, v
2)
に対して, f
の原点におけるv
方向の方向微分d
dt
t=0
f ( tv
1, tv
2)
は