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毎月5日・15日・25日発行(但し1月5日、5月5日は休刊)           ISSN 1347-9814

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毎月5日・15日・25日発行(ただし1月5日、5月5日は休刊) ISSN 1347−9814

ロ シ ア

東 欧

経 済 速 報

(社)ロシア東欧貿易会 2004年(平成16年)8月25日号 No.1304

活況が続く2004年上半期のロシアの乗用車市場

...坂口 泉 1 エトセトラ ...10 ロシア、カザフスタン商業銀行向け輸出クレジットライン/10 キーパーソン ...10 トルクメニスタンの政権人事/10 ロシア東欧貿易会関連の行事予定 ...11 CIS・中東欧諸国通貨の為替レート ...11

活況が続く2004年上半期のロシアの乗用車市場

はじめに

2004年に入ってからも、ロシアの乗用車市場は外国新車部門を中心に引き続き好調で、日 本メーカーは軒並み大幅に販売台数を増加、ロシアの純国産メーカーも堅調な生産を維持し ている。本稿では活況に沸いた2004年上半期のロシア市場の概況を数字を中心に紹介するほ か、2004年初頭時点のロシアの乗用車の登録台数とその内訳に関する情報、今後のロシアの 乗用車市場に大きな影響を及ぼす可能性のある様々なファクターをめぐる最新の動きも紹介 する。

1.乗用車の登録台数

(1)全国の数字 以下は『ザルリョム』誌ホームページ(原データは国家道路交通安全監督局)の数字であ る。 2004年初頭時点のロシアの乗用車登録台数は、前年比約6%(約90万台強)増の2,338万3,126 台となっている。メーカー別の登録台数の内訳は、第1表のとおりであるが、圧倒的にAvtoVAZ

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(ボルガ自動車工場)車のシェアが大きく、全体の約半分を占める。モスクビッチは生産中 止になっており、ZAZ(ザポロジエ自動車工場:ウクライナ)の車は現在ほとんど輸入され ていないので、この2つのメーカーの登録台数は減少傾向にあるが、その他のメーカーの車 の登録台数は程度の差こそあれ増加傾向にある。なかでも外国車は、このところ登録台数の 伸び率が目立ち、2000年初頭から2002年初頭にかけては、年間20万台程度しか登録台数が伸 びなかったものが(2000年:282万255台、2001年:301万8,810台、2002年:325万3,307台)、 2002年には約46万台、2003年には約55万台も登録台数が増加している。2002年と2003年は新 車の販売も好調であったが、中古車の個人向け輸入関税率引き上げに伴い、輸入中古車に対 するいわゆる駆け込み需要が増大したことが、外国車の登録台数の大幅な伸びに貢献したも のと推測される。 製造年別に見ると製造後10年超の車が圧倒的に多く、全体の50%を占める。以下、5∼10 年が30.5%、5年未満が19.5%となっている。連邦管区別にみると中央連邦管区の登録台数が 最も多く全体の28.7%、同区のなかで最も登録台数が多いのはモスクワ市でロシア全体の約 10%を占める。次いで多いのはモスクワ州で、同約6%である。 中央連邦管区に次いで登録台数が多いのは沿ボルガ連邦管区で19%を占める。以下、南連 邦管区:14.2%、シベリア連邦管区:12.7%、ウラル連邦管区:8.6%と続く。極東連邦管区の 登録台数はロシア全体の5%強とそれほど大きくないが、周知のとおり、外国車(特に右ハ ンドル車)の占める割合が極めて大きくなっている。たとえば、沿海地方では右ハンドル車 の占める割合が77%を占める。その他、サハリンおよびハバロフスクでも、それぞれ75%、 63%を占めている。極東に登録されている外国車の大半は輸入中古車である。 (第1表) ロシアの乗用車の登録台数 (単位 台) メーカー名 2003年 初頭時点 2004年 初頭時点 VAZ2101-07 VAZ2108-09 VAZ2110-12 NIVA 7,525,657 2,284,893 634,370 919,917 7,606,554 2,439,534 859,672 910,812 AvtoVAZ車合計 11,364,837 11,816,572 モスクビッチ GAZ(ゴーリキー自動車工場) UAZ(ウリヤノフスク自動車工場) ZAZ(ザポロジエ自動車工場) オカおよびその他 外国車 2,541,629 1,540,920 672,067 1,273,926 1,356,417 3,718,655 2,367,236 1,556,333 682,911 1,162,229 1,510,283 4,274,408 ロシア合計 22,468,451 23,383,126 (注)2004年の数字に関しては、個々の数字と累計の数字が一致しない。 不整合の理由は不明。 (出所)『ザルリョム誌』2003.5、2004.4。原データは国家道路交通安 全監督局。

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(2)モスクワに登録されている乗用車の内訳 2004年初頭時点のモスクワ市の乗用車登録台数は243万8,019台となっているが、外国車の比 率が高いのが特徴であり、約37%に達する(89万9,000台。Chevrolet-NIVAを含む)。これは極 東地方の沿海地方やサハリン州と比較すると小さな数字に思われるが、ロシアの平均値18% を大きく上回っている。 モスクワに登録されている外国車の国別内訳は、①ドイツ:43.7%、②日本:21.3%、③米 国:11.5%、④韓国:10.9%、⑤フランス:5.4%、⑥スウェーデン:4.6%、⑦イタリア:1.2%、 ⑧英国:1.1%、⑨その他:0.3%。 また、主要なモデル別登録台数(単位は1,000台)は、①VWパサート:52.4、②大宇ネクシ ア:32.1、③BMW5:27.3、④ベンツE:26.6、⑤VWゴルフ:25.1、⑥アウディ80:19.8、 ⑦BMW3:17.5、⑧アウディ100:16.7、⑨アウディA6:14.5、⑩シュコダ・フェリシア:12.8、 ⑪オペル・オメガ:12.6、⑫ベンツS:12.5、⑬三菱パジェロ:12.3、⑭トヨタ・カローラ: 12.1、⑮日産アルメーラ:11.4、⑯シュコダ・オクタビア:10.6、⑰オペル・アストラ:10.0。 比較的新しい車の比率が多いのもモスクワの特徴で、製造後5年未満の車の比率が35%、 5∼10年の車の割合も36%と高く、製造後10年以上経過した車の比率は29%にすぎない。

2.市場の概況

2004年第1四半期の市場規模は、金額ベースで約34億ドル、台数ベースで約35万台であっ た(PricewaterhouseCoopers発表の数字)。同期のロシア乗用車市場の最大の特徴は、輸入中古 車のプレゼンスが急激に低下したことである。2004年第1四半期の中古車の輸入量は前年同 期の約半分の4万1,000台にとどまった。その結果、2003年通年の実績で27%であった市場シ ェア(台数ベース)が約12%にまで落ち込んだ。2002年秋と2003年夏に実施された中古車の 個人向け輸入関税率の大幅引き上げの影響が本格化してきたとみてよいであろう1) 一方、中古車の輸入量の大幅減少の恩恵を受け、純国産車や外国車の市場シェアは大幅に 上昇した。純国産車の場合、2003年には58%であった台数ベースのシェアが、2004年第1四 半期には68%に、金額ベースのシェアも33%から41%に上昇した。現地生産の外国車 (Chevrolet-NIVAを含む)の台数ベースのシェアも4%から7%、金額ベースのシェアも5% から11%に上昇している。さらに、輸入新車の台数ベースのシェアは11%から12%、金額ベ ースのシェアは31%から34%にそれぞれ微増した。

3.主要メーカー別の生産および販売台数

ASMホールディング(ロシア版自動車工業会のような組織)によれば、ロシアの2004年上 半期の乗用車生産量は、前年同期比16.5%増の53万4,457台とされている2)。第2表からわかる

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とおり、どのメーカーも生産および販売台数を伸ばしているが、特に外国車を生産している メーカー(GM-AvtoVAZ、Avtotor、TagAZ、フォード)の伸びが著しい3) 純国産メーカーの中では、新型モデルGAZ-31105の販売が好調なGAZや、AvtoVAZから部品 の供給を受けアセンブリーを行っているVAZ-2106の人気が堅調なIzh-Avtoが生産量を大幅に 増加させた。一方、軽乗用車「オカ」を生産している2メーカー(KamAZ、SeAZ)、2004年 よりVAZ-21093の生産を中止したLosladaは生産量を落とした。さらに、ロシアの乗用車生産 量の約65%を占める最大手メーカー「AvtoVAZ」の場合も、生産量こそ前年同期比で9%増加 したものの、販売台数(輸出分含む)は1.8%の伸びにとどまった。後述するが、同社の乗用 車は最近値上がり傾向が著しく、その結果売行きが鈍化している可能性もある。 (第2表)2004年上半期のロシアの主要メーカー別乗用車生産・販売実績 メーカー名 生産台数 販売台数 AvtoVAZ Izh-Avto UAZ GAZ GM-AvtoVAZ KamAZ SeAZ Loslada Avtotor TagAZ フォード・ロシア 349,200( 9%) 53,700( 19%) 36,058( 132%) 34,556( 44%) 24,000( 336%) 20,040(▲22%) 8,635(▲7%) 6,042(▲65%) 6,399( 71%) … … 356,397( 1.8%) 45,843( 22.1%) 15,856(▲1.9%) 32,666( 55.1%) 24,793( 4.4倍) 20,040( 6.6%) 8,898( 4.3%) … … 8,255( 3倍) 10,752( 59.5%) 合 計 534,457( 16.5%) 537,599( 9.6%) (注)カッコ内は前年同期比の増加率。販売台数の数字には輸出分も含ま れている可能性が高い。国内販売台数は50万弱だと推測される。 (出所)gazeta.ru(2004.7.23)、autonews.ru(2004.8.6)。源データはASMホ ールディング。

4.外国新車の販売状況

(1)メーカー別の販売状況 2003年通年の外国新車(輸入新車+現地生産の外国車)の販売実績でトヨタがトップに立 ったのは周知のとおりであるが、2004年上半期も同社がトップの座を維持した。第2位は現 代で、ロシアのTagAZで現地生産を行っているアクセントとソナタ、輸入車ではあるが価格が 1万ドル前後と安いゲッツ(TB)の売上げを伸ばした。また、日産も2004年1月よりロシア に販売会社を設立するなど販売体制を強化すると同時に、ユーロ建てだった販売価格をドル 建てに変更し割安感を出すことに成功し、2004年上半期に販売を急激に伸ばした(特に第2 四半期の伸びが顕著であった)。 2003年は、ドル安ユーロ高の影響を受け、ドル建てで輸入を行っている日本メーカーや韓 国メーカーの躍進、ユーロ建てで輸入を行っている欧州メーカーの不振という傾向が顕著で

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あったが、2004年上半期も同様の傾向が見受けられ、日本メーカーや韓国メーカーが売上げ 上位10社のうち6社を占めた。その他、フォード、ルノー等、ロシア国内で現地生産を行っ ているメーカーの健闘ぶりも目立ち、ベスト10に4社(ウズベキスタンで現地生産を行って いる大宇も含めると5社)が名を連ねた。 (第3表)主要外国メーカー別の新車販売台数 (単位 台) メーカー名 2004年上半期 2003年下半期 2003年上半期 1.トヨタ 2.現代 3.フォード 4.大宇 5.三菱 6.日産 7.起亜 8.ルノー 9.オペル 10.プジョー 12.ホンダ 13.スズキ 14.マツダ 21.レクサス 22.スバル 19,404( 19%) 18,217( 107%) 16,574( 24%) 15,953( 56%) 12,208( 15%) 10,319( 97%) 9,895( 42%) 7,311( 21%) 5,123( 13%) 4,223(▲13%) 2,960( 33%) 2,843( 36%) 2,591( 123%) 1,633( 59%) 1,568( 104%) 16,263 8,782 13,337 10,231 10,581 5,237 6,968 6,067 4,514 4,877 2,232 2,088 1,161 1,027 767 8,812 5,708 7,375 10,024 7,082 4,233 4,578 5,290 2,793 3,905 1,342 1,956 701 370 505 (注)1)カッコ内は、2003年下半期と比較しての伸び率。2)この表ではト ヨタとレクサスを別々に標記している。 (出所) gazeta.ru、2004.7.12 等。 (2)車種別の販売状況 (第4表)2004年上半期の主要車種別の販売状況 (単位 台) モデル名 クラス 2004年 上半期 2003年 下半期 2003年 上半期 価格 (ドル) 1.フォード・フォーカス 2.大宇ネクシア 3.現代アクセント 4.三菱ランサー 5.トヨタ・カローラ 6.大宇マチス 7.現代ゲッツ 8.トヨタ・カムリ 9.起亜リオ 10.日産アルメーラ C C C C C A B E B C 12,037 10,987 8,409 6,861 5,390 4,966 4,548 4,545 4,246 4,062 10,632 7,989 3,612 2,758 5,826 2,292 2,724 4,050 2,902 1,140 5,244 6,783 2,586 − 2,946 3,241 1,408 2,354 2,577 1,447 13,174∼ 8,600∼ 12,090∼ 15,490∼ 15,400∼ 6,700∼ 9,990∼ 29,400∼ 10,767∼ 15,500∼ (出所)gazeta.ru, 2004.712 等。 2004年上半期の売上げ上位10モデルは第4表のとおりであるが、価格1万6,000ドル未満の Cクラスの乗用車の人気が最も高いことがわかる。ベスト10に入っている車のうち、6モデル

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がその範疇に属する。Aクラス、Bクラスでベスト10入りしている車は、さらにそれより価 格帯が低く、1万1,000ドル未満となっている。 2004年に入ってからの顕著な傾向としては、フォーカス、ネクシア、アクセント、マチス、 リオといった、ロシアもしくはウズベキスタンで現地生産する割安感の高いモデルの売上げ の伸びが目立つ点が挙げられる。その他、輸入車としては破格の安さを誇るゲッツ(TB)の 売行きの急伸も見逃せない。これは恐らく、国産新車の値上がり傾向、割賦販売の普及、中 古車の輸入台数の減少といった要因を背景に、従来なら国産新車もしくは輸入中古車を購入 していた人々が、外国新車市場に流入してきているためだと推測される。 外国新車の場合、Dクラス、Eクラス、SUVに属するモデルになってくると、価格は2万 ドルを超えるのが普通となってくる。2万ドルを超える市場セグメントでは、全般的に嗜好 の多様性が顕著で、1モデルで年間5,000台以上の販売実績を上げるのはかなり困難となって いる。トヨタのカムリ、ランドクルーザー、アベンシス、RAV4、日産のプリメーラ等は2 万ドル以上のモデルにもかかわらず、2004年上半期だけで2,000台以上の売上げを記録し、年 間の販売実績が5,000台を超える可能性が高いが(外国新車の場合、モデルチェンジ等の影響 がない限り、年後半の方が販売台数が多いのが普通である)、それはむしろ例外的な事例であ ると思われる。

5.今後に大きな影響を及ぼす可能性のあるファクター

(1)投資契約の現状 ロシアには、自動車生産分野への直接投資誘致策として、「投資契約制度」が存在する。こ の制度の骨子は、概略、以下のとおりである。 ①投資総額が最初の5年間で15億ルーブルを超える自動車あるいは自動車部品生産プロジ ェクトの場合、その投資家がロシア政府と投資契約を締結すれば、優遇措置が供与される。 ②当該の優遇措置は、プロジェクト実施期間中(最高7年間)、ロシア国内の当該生産施設 を保税倉庫扱いとし、さらに、そこで生産される製品をロシア原産のものと認めるという形 で具現化される。 ③投資契約を締結した投資家は、15億ルーブル以上の投資を行うことの他に、製品のロー カル・コンテンツの割合を5年で50%にする義務を負う。その際、ローカル・コンテンツの 義務は1年毎にチェックされる。つまり、2年で20%、3年で30%、4年で40%をそれぞれ 達成する必要がある。 現在、ロシア政府と投資契約を締結しているのはフォードだけであるが、GM-AvtoVAZも Chevrolet-VIVAの生産プロジェクトについては投資契約を締結する意向を表明している他、ロ シアでの現地生産を検討している複数の外国メーカーも、この投資契約制度に関心を示して いるといわれる4)。ロシアの自動車生産分野への直接投資を考える上で極めて重要な意味を有

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する制度といえるが、最近、ロシア経済発展貿易省の通商交渉部次長のアンドレイ・クスニ レンコが、この投資契約制度に関し次のような主旨の発言を行った。 「現在、フォードが投資契約を締結し、保税倉庫システムを利用している。また、GMも当該 システムの利用を希望している。保税倉庫システムは全く合法的なものである。しかし、我々 がWTOに加盟すると話は違ってくる。我々の交渉相手たちは、その種の個別的特典供与が WTOの規則に違反しているとの見解を示している。彼らの見解は大筋で正しい。したがって、 ロシアがWTOに加盟すれば、新しい投資契約が締結されることはないであろう。ただ、加盟 前に締結された投資契約に関しては、所定の期間(最高7年間)、優遇措置が供与される」(ヴ ェードモスチ紙付録「フォーラム『ロシアの自動車産業と自動車市場』」、2004年7月)5) つまり、ロシアがWTOに加盟すれば、充分な額の投資を行っても、投資契約を締結し特典 (保税倉庫のステイタス)を獲得することが困難となる可能性が高いというのである。この 発言が、ロシアの自動車生産分野への直接投資を躊躇している外国企業の決断を促す目的で 行われたものである可能性も否定できないが、関税上の特典廃止の可能性を政府関係者が明 言した事実は注目に値する。 (2)カリーニングラードを巡る動き カリーニングラードは特別経済ゾーン(保税地域)のステイタスを有している。Avtotorと いうロシア企業は同州に2つの自動車アセンブリー工場を保有しており、輸入部品を用いて 起亜車、BMW車およびGMのハマー「H2」という大型SUV6)のアセンブリーを行っているが、 同地でアセンブリーされた車はロシア製とみなされ、ロシアの他の地域に移出しても関税は かからない。つまり、フォードの工場とほとんど同じ特典が供与されているわけである。し かも、カリーニングラードの特別経済ゾーンでは、フォードの場合と異なり、ローカル・コ ンテンツに関する明確な義務は存在しない。 ただ、カリーニングラードの特別経済ゾーンに関する連邦法は時限法であり、2006年2月 に失効することになっている。カリーニングラードはロシアにとって政治的に極めて重要な 意味を有する地域であるため、2006年2月以降も同州が特別経済ゾーンとしてのステイタス を維持する可能性は高いといわれている。しかし、カリーニングラード以外の地域の生産者 (特に家電メーカー)の間で、カリーニングラードにだけ関税上の特典が与えられているこ とへの不満が高まっており、2006年2月以降、カリーニングラードでアセンブリーされた乗 用車や家電製品を他のロシアの地域に移出する際、当該の乗用車や家電製品の輸入部品部分 に対し関税を課すという措置がとられる可能性もある7) (3)ユーロ2およびユーロ3 現在、ロシアではユーロ1の基準が適用されているが、2002年に採択されたロシアの自動 車産業発展構想によれば、今後、ユーロ2、ユーロ3の段階を経て、2008年までにユーロ4

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の基準を満たすことが目標とされている(2008年までにユーロ4に移行するのは極めて困難 だと思われるが)。その第1歩として、2004年10月1日から生産される国産車にユーロ2基準 の適用を義務づけることが決定した(『イズベスチヤ』紙、2004.7.26)。 一説によれば、ユーロ2への対応を行った結果、純国産車の1台あたりの単価が500∼1,000 ドル程度上昇したといわれているが、今後、ユーロ3やユーロ4への適応を迫られることに なれば、純国産車の価格はさらに大幅に上昇する可能性が高い。価格の安さが純国産車の主 要なセールスポイントであることを勘案すると、多くの国産メーカーが戦略の抜本的見直し を迫られるだろう。 (4)純国産車の値上がり傾向 (第5表)VAZ車の価格の推移(ロシア平均値) (単位 ドル) モデル・タイプ 2004年8月17日 時点の価格 3カ月前の 価格との比較 6カ月前の 価格との比較 クラシック・シリーズ サマラ・シリーズ 2110シリーズ 4,250 6,410 7,720 ▲2.3% △2.9% △4.2% △9.9% △7.7% △11.5% (出所)ladaonline.ru。 上記のユーロ2への対応の他、原材料費や光熱費の値上がりといった要因があり、純国産 車の値上がり傾向は2003年あたりから顕著となっている。一説によれば、2003年だけで、ロ シアの純国産車の平均価格は5,000ドルから6,000ドルと約20%も上昇したといわれている。 2004年に入ってからも純国産車の値上がり傾向は続いており(第5表)、純国産車としては最 も高価格帯に位置するVAZ-2110シリーズの乗用車(現在、年間約22万台強生産されている) と、外国車としては最も低価格帯に位置する乗用車(ネクシア、TB、フォーカス等)との間 の価格差が急激に縮まりつつある。 (5)ルノー・ロガン、VAZ-2170およびKalina ロシア・ユーザーの購買力は全般的に上昇してきているが、現時点では、ロシアにおける 大衆車(年間数万台の販売が可能なモデル)の価格の上限は8,000∼9,000ドル程度と認識され ている。今後、この上限値がどこまで上昇するかについては見解がわかれているが、ルノー やAvtoVAZは、当面大きく変化することはないとみており、低価格の新モデルの投下を検討し ている。以下、それらのモデルの概要をごく簡単に紹介しておく。 ルノー・ロガン ルノーが所得水準の比較的低い市場を対象に開発した低価格戦略車。これま でX90というコードネームで呼ばれていたが、2004年6月初めに、その概要とモデル名が公表

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された。1999年にルノーが買収したルーマニアのダチアで、すでに生産が開始されており、 9月より本格的量産が始まるようである。ダチアの工場の設計生産能力は年産20万台、アセ ンブリー用部品は年間15万台分となっている。ルーマニア製のロガンの小売販売価格は5,000 ユーロ以上に設定されている。 ロシアでは、ルノーとモスクワ市の合弁企業「アフトフラモス」が年内中に試験生産を開 始し、2005年夏からの量産開始を予定している。アフトフラモスの設計生産能力は当面は6 万台/年で、将来的には12万台/年にまで拡大される可能性がある。部品の大半はダチアよ り供給されると思われるが、サイドガラス、車体用部品等一部の部品は当初よりロシア国内 で調達されることになっている。ちなみに、アフトフラモスは、2006年末までにローカル・ コンテンツ20%の達成を当面の目標としているようである。 アフトフラモスによれば、ロシア製のロガンは寒冷仕様車で車高が高いといった特長を有 しており、小売価格は7,000∼1万ユーロに設定される見込みである。なお、ロガンは、ルー マニアとロシアの他、モロッコ、コロンビア、イランでも生産される予定となっている(そ の他、中国やインドでの生産も検討されているようである)。 VAZ-2170(Priora) 1990年代半ばより量産が行われているVAZ-2110の後継車として位置づ けられるモデル。ユーロ3対応車(2110はユーロ2対応車)ということもあり、小売価格は 2110よりもかなり高く、8,000∼9,500ドルと見込まれている(『ヴレーミャ・ナヴァスチェイ』 紙、2004.8.11)。量産開始時期ははっきりしないが、2005年下半期が現時点での目標となって いるようである。 VAZ-1117∼1119(Kalina) AvtoVAZが1990年代半ばごろより開発を始めたユーロ3対応の 小型車。現在、トリヤッチのAvtoVAZの敷地内で、Kalina専用の生産施設8)の建設が行われて いる。この施設が完成すれば、AvtoVAZの生産能力は現在の約75万台/年から約100万台/年 に増加することになる。Kalinaの生産は2004年11月より開始されるが、当初はセダン・タイプ のVAZ-1118のみが生産される予定となっている。その後、ハッチバック・タイプのVAZ-1117 とワゴン・タイプのVAZ-1119の生産も開始され、2007年ごろに設計生産能力(22万台/年) を達成することが目標とされている。小売販売価格に関しては明確な情報がないが、AvtoVAZ の幹部は8,000ドル未満に抑える必要があると再三発言している。

【注】

1)2003年中は、関税引き上げ前に輸入された中古車がまだ市場に出回っていたので、輸入中古車の販 売量の減少幅は15∼20%の水準にとどまった(2003年の輸入中古車販売台数は約40万台)。ただ、2003 年後半より中古車の輸入量の減少傾向が顕著になってきており、2004年の輸入中古車販売量は、前 年比40∼50%減の20万∼24万台の水準にとどまると予測される。 2)ロシア国家統計庁発表の数字によれば、2004年上半期のロシアの乗用車生産量は、前年同期比15%

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増の53万6,000台とされている。 3)ただし、GM-AvtoVAZなどでは、当初の生産計画を下回っている事実も考慮する必要がある。当初 の生産計画では、2004年の生産量は6万台に設定されていたが、その後、約5万5,000台に下方修正 された。フォードやGM-AvtoVAZの生産量が急増しているのは、前者が2002年7月に、後者が同年9 月にそれぞれ立ち上げた現地生産プロジェクトが拡大フェーズに入っているためでもある。ちなみ に、フォードの工場の設計生産能力は2万5,000台/年(3交代制を導入すれば年産3万台の達成が 可能といわれている)、GM-AvtoVAZの設計生産量は7万5,000台/年とされている。 4)もっとも、ルノーは現在のところ投資契約の締結に消極的である。この件に関し、アフトフラモス (ルノーとモスクワ市の合弁企業)のジャリーネ社長は、「将来的には投資契約を締結する可能性は あるが、現時点では考えていない。ローカル・コンテンツの計算方式や、ローカル・コンテンツに 関する義務を遂行できなかった場合、具体的にどのようなペナルティーが科せられるかという点が 不明確なままとなっているからだ」という主旨の発言を行っている(『ヴェードモスチ』紙、2004.7.6)。 5)その他、ヴェードモスチ紙の当該付録の紙面上で、国家関税委員会の関税・非関税調整部長のアン ドレイ・クドリャシェフも同様の見解を示している。 6)ハマー「H2」の他、シボレー・タホー(大型SUV)およびシボレー・トレイルブレーザー(中型SUV) のアセンブリーも行われる予定となっている。 7)注5で紹介した国家関税委員会のクドリャシェフ氏は、ヴェードモスチの当該の付録の紙面上で、 そのような可能性を示唆する発言を行っている。 8)溶接ラインには、AvtoVAZとドイツのKuka社が共同で設計・製造した設備が採用されている。溶接 ラインと組立ラインには、ドイツのEisenmannの設備が採用されている(『アフト・イズベスチヤ』 誌、2004.12)。 (ロシア東欧経済研究所 次長 坂口 泉)

エ ト セ ト ラ

◇ロシア、カザフスタン商業銀行向け輸出クレジットライン このほど、国際協力銀行(JBIC)よ り、ロシアおよびカザフスタン商業銀行向けの輸出クレジットラインの利用に関するご案内 をいただきました。ロ東貿のホームページに情報をアップしましたので、ご利用下さい。 →http://www.rotobo.or.jp/jouhoukan/bankloan/index.htm

キ ー パ ー ソ ン

◇トルクメニスタンの政権人事 トルクメニスタン内務省第一次官のゲルドゥムハメド・アシル ムハメドフ氏が8月12日、内務大臣に就任した(トルクメニスタン元帥・大統領記念政治ア カデミー総長を兼務の予定)。また、同月14日、トルクメニスタン文化・情報省およびトルク メニスタンテレビ総局を基礎に設立されたトルクメニスタン文化・テレビラジオ省の大臣に マラル・ビャシモヴァ氏(BYASHIMOVA, Maral。2004年8月現在31歳)が就任した。 アシルムハメドフ内務相(ASHIRMUKHAMMEDOV, Gel'dymukhamed):1957年生まれ。バルカン 州カラカラ地区生まれ。1979年トルクメン国立大学物理学部卒業。1979年バルカン州ハザル

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市第二学校物理教師。1982年国家保安委員会(KGB)高等コースに採用。1992∼1997年トル クメニスタン大統領保安局。1997∼2002年トルクメニスタン国防省陸軍司令官。2002年3∼ 9月トルクメニスタン国家保安委員会副議長。2002年9月∼2004年8月トルクメニスタン内 務省第一次官。

ロシア東欧貿易会関連の行事予定

◇9月6日16:00∼18:00:カザフ・ウズベク・トルクメン・アゼル経済委員会合同定時総会・交流会 (於:如水会館) →経済協力部 ◇9月27日∼10月5日:ロシア極東家電ミッション(ハバロフスク地方、沿海地方) →http://www.rotobo.or.jp/activities/kaden.pdf

CIS・中東欧諸国通貨の為替レート

(2004年8月24日現在) 国・通貨単位 $1= Eur1= 国・通貨単位 $1= Eur1= ロシア・ルーブル ウクライナ・グリブナ ベラルーシ・ルーブル モルドバ・レイ カザフスタン・テンゲ キルギス・ソム ウズベキスタン・スム トルクメニスタン・マナト タジキスタン・ソモニ アゼルバイジャン・マナト アルメニア・ドラム グルジア・ラリ 29.22 5.313 2,159 12.05 136.5 42.07 1,032 5,200 3.033 4,905 516.1 1.805 35.96 6.531 2,654 14.77 167.8 52.03 1,269 6,417 3.752 5,956 632.2 2.218 モンゴル・トゥグリク 1,192 1,448 ポーランド・ズオティ チェコ・コルナ スロバキア・コルナ ハンガリー・フォリント ルーマニア・レイ ブルガリア・レバ アルバニア・レク セルビア・モンテネグロ・ディナール ボスニア・ヘルツェゴビナKM マケドニア・ディナール クロアチア・クーナ スロベニア・トラール エストニア・クローン ラトビア・ラッツ リトアニア・リタス 3.649 26.10 32.95 205.4 33,758 1.611 … 60.56 1.611 50.50 6.069 197.7 12.87 0.543 2.808 4.435 31.68 40.08 249.8 41,045 1.956 … 73.67 1.956 61.30 7.381 239.8 15.65 0.668 3.453 発行所

(社)ロシア東欧貿易会

http://www.rotobo.or.jp 〒104-0033 東京都中央区新川1−2−12 金山ビル Tel(03)3551-6215 編集担当部署 ロシア東欧経済研究所 Tel(03)3551-6218 Fax(03)3555-1052 * * * * * 年間購読料 eメール配信 18,000円 ハードコピーの郵送 23,000円 購読のお問い合わせ・お申し込みは ロシア東欧経済研究所 Tel(03)3551-6218 sokuho@rotobo.or.jp(本アドレスは購読のお問い合わせ・お申し込み専用です) * * * * * Copyright©ロシア東欧貿易会 2004 掲載記事の無断転載を禁じます

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