艦これ バッドエンド 風味
げんぶ
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す︒
小説の作者︑﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます︒
︻ あ ら すじ ︼
艦これのバッドエンド等を短編形式で投稿していきたいと思います︒
タグにもありますが︑残酷な表現︑他の提督の嫁艦などが轟沈したり︑他の艦娘に殺
されたり︑腹黒かったりします︒
そう言うのでも良ければ︑読んでください︒
※pixiv様︑暁様にもマルチ投稿します︒
目 次
│││││││││││││矢矧
1
│││││││││││││大和
10
│││││││││││││鳳翔
22
│││││││││││金剛姉妹
27
││││││││││││││電
35
││││││││││││││漣
45
矢矧
私は﹃阿賀野型﹄軽巡三番艦︑矢矧︒
第二次大戦の終盤︑坊ノ岬海戦の際︑戦艦大和を守る為に乗組員共々奮戦して︑沈ん
だ︒
けれど︑私は大和を守ることが出来なかった︒
その無念が私の胸の奥底に燻っている︒
それを隠して︑私は今日も自分たちを指揮する提督の執務室へ向かう︒
私の上司の提督はお世辞にも優秀とは言えない人物だ︒
彼は不器用で小心者で見栄っ張りでそして︑意地っ張りだ︒
いつも何かに怯えている︒
ううん︑ずっと秘書として脇に控えている私には分かる︒
提督の指揮する艦娘たちが無事に帰ってくるか︑誰も欠けることなく鎮守府に帰って
こられるか︑ずっと心配している︒
そのくせ︑帰ってくればあのビッグ7の長門︑日本の期待を一身に背負った超弩級戦
艦︑私が身を挺して守ろうとした大和にも罵声を浴びせる︒
1
そんなことをしているから︑艦娘たちから嫌われる︒
中には彼の本質を知っている娘もいるみたいだが⁝⁝⁝︒
ほら︑今日も⁝⁝⁝︒
﹁ふざけんな︑弾薬も燃料もただじゃねえんだ︒あれだけ大口叩いといて生き残った
駆逐艦も落とせねえのかよ︒なにが﹃栄光のビッグ7﹄だよ︒大体︑赤城も赤城だ︑回
避もろくにしねえで何が﹁一航戦の誇り﹂だよ︒てめえの誇りは敵の攻撃で大破するの
が誇りか︑わらわせるz⁝⁝⁝ぐぇっ
!﹂
提督の言葉は途中で遮られる︒
長門の拳を顔面に喰らったからだ︒
椅子から転げ落ち︑床を転がった提督を見る長門の目は冷ややかで上司を見る目では
なかった︒
隣に立っている赤城は自身の誇りを否定され静かに泣いていた︒
﹁自ら前線に出る勇気もない無能な奴にどうこう言う資格は無い︒もう限界だ︒出て
いかせてもらう﹂
2 矢矧
本来︑提督から艦娘たちを解雇することはあっても︑艦娘たちから出ていくと言う宣
言は無い︒
それほどまでに長門は憤慨しているのだろう︒
口を出さず︑見ていると提督は顔を真っ赤にして立ち上がり︑長門の顔をぶん殴った︒
﹁おう︑出てけ出てけ
!てめえみたいなのはいらねえよ
!確か新任の提督にお前を欲
しがっている奴がいるからさっさと荷物まとめてここから出てけ﹂
﹁⁝⁝⁝⁝﹂
殴られた長門は提督の言葉を聞いて︑何も言わず部屋を出て行った︒
あの一件から︑私のいる鎮守府では艦娘たちの離反が相次いだ︒
もう私たちの鎮守府に残っている艦娘は片手で数えるほどになってしまった︒
提督は口では﹁ああ︑清々する︒五月蠅い奴らがいなくなってくれて︒これで安心し
3
て眠れるぜ﹂と言ってはいるが︑夜になると︑いなくなった艦娘たちの写真の前で泣き
ながら謝っているのを私は知っている︒
その頃から︑私は訳の分からない感情に襲われていた︒
この気持ちを私の知っている言葉で表すなら﹁保護欲﹂ではないだろうか︒
提督の泣いている姿を見ると︑今すぐにでも抱きしめてどこかへ連れて行ってしまい
たいと思う︒
そんな気持ちを抱えて私は日々を過ごしていた︒
だが︑予想だにしない出来事が起きてしまった︒
いつものように部屋へ入ると︑提督はいなかった︒
だが︑机の上に何か紙が置いてあるのに気が付いた︒
気になって手を取って︑中身を読む︒
そして︑後悔した︒
内容は︑艦娘の離反を咎める内容で︑提督の無能を延々と批判し続けるものだった︒
長ったらしい手紙の最後に﹃貴官を近日中に提督から解任︑更に降格させることとなる
だろう︒﹄
そう書いてあった︒
4 矢矧
読んだことを後悔しつつ︑手紙を元の場所へ戻そうと思った時︑提督が部屋に入って
きた︒
提督は私の手の中の手紙と私の顔を交互に見ると︑ため息を吐いた︒
﹁読んじまったんだな︒ったく︑勝手に読んでんじゃねえよ﹂
いつもならもっと罵倒されるのに︑今日は言葉にも力がなかった︒
﹁ま︑見えるとこにおいてた俺も悪いんだろうけどよ︒矢矧︑今日の業務は終わりだ︒
部屋に戻れ︒あと︑厨房にいる鳳翔にも行っておけ﹂
﹁は︑はい︒﹂
何故か ・・・ そう言うと︑提督は軍帽と勲章︑階級章を机に置くと︑部屋を出て行った︒
私は︑手紙を畳んで机に置くと︑フラフラと部屋を出た︒
この時私は気が付くべきだった︒
なぜ提督の声が優しかったのか︑提督が得たもの︑大切な物を自身から離したのか︒
彼はこの手紙を読んだときに決意し︑決断した︒
5
私は彼をちゃんと見ていなかった︒
〝小心者〟な彼ではあるが︑彼もまた栄誉ある帝国海軍の一員であると言う事を完全
に失念していた︒
﹁提督︑遅いですね﹂
異常に気が付いたのは︑鳳翔だった︒
1900時︑提督が決めた夕食の時間に提督の姿が無かった︒
恐らく手紙の件で色々と悩んでいるのだろう︒
﹁私が呼んでくるわ︑食卓に並べるのをお願いしますね﹂
﹁はい﹂
私は鳳翔に食卓を任せ︑提督の私室へ向かった︒
本来︑提督の私室への出入りは秘書艦でも禁じられているが︑この場合は仕方がない
6 矢矧
だろう︒
そう言い聞かせながら︑ふと気が付いた︒
なぜ私は提督の部屋へ行くのを楽しみにしているんだろう︒
なぜ私は提督の事を考えるとこんなにも胸が苦しいのだろう︒
いくら考えても分からない︒
気が付けば︑提督の部屋の戸の前に立っていた︒
深呼吸をしながら︑戸をノックする︒
﹁提督︑いらっしゃいますか
?﹂
返事がない︒
もう一度︑今度は少し力を強めてノックする︒
﹁提督︑夕飯のお時間です︒早くしないと冷めてしまいますよ
?﹂
やはり返事がない︒
失礼かと思ったが︑この場合は仕方がないと割り切り︑ドアノブを回す︒
7
戸を開くが︑中は暗い︒
﹁電気のスイッチは⁝︑あった﹂
電気をつけると︑部屋の真ん中に提督が座っているのが見えた︒
丁度東の方向を向いている︒
だが︑体勢がおかしい︒
坐禅でもくみながら︑寝てしまったのだろうか︒
私は提督の後ろから肩をたたいた︒
反応がない︒
視界の端に見覚えのあるものがあった︒
そちらを向くと︑そこには刀の鞘だけがあった︒
じゃあ刀本体はどこに⁝︑と部屋を見渡すが︑どこにもない︒
ふと︑提督の体に見覚えのある物︑刀の柄があった︒
﹁
!!?﹂
8 矢矧
提督の体を起こしてみると︑提督の体はとうに冷え切っていた︒
そこから私の記憶は無くなった︒
﹁軽巡矢矧︑着任したわ︒提督︑最後まで頑張っていきましょう
!﹂
何か忘れているような︑そんな気持ちを抱え︑私は私を必要としている提督へ敬礼を
した︒
9
大 和
﹁超弩級戦艦︑大和︒ただいま︑着任いたしました﹂
敬礼をしながら︑私は提督に挨拶をする︒
彼も敬礼を返しながら︑挨拶を返してきた︒
この後はなんて言ったのだったか⁝︒
ああ︑確か⁝︒
娘 こ ﹁超弩級戦艦︑と言うから厳しそうなが来るかと戦々恐々だったけど︑可愛い顔をし
ているじゃないか﹂
何とも軟派な発言をしてきたのだった︒
私はこの時︑﹁ふざけないでください﹂と返した気がする︒
でも︑この時から私は彼の艦隊の一員になったのだった︒
10 大和
その日から︑私は提督の秘書艦として︑第一艦隊の旗艦として何度も出撃した︒
時には大けがを負う事もあったが︑誰ひとり欠けることなく鎮守府に帰還した︒
そして︑提督や艦隊に皆と大騒ぎをしたり︑時には大喧嘩をした︒
私は段々︑提督の人柄に触れ︑惹かれて行った︒
そう︑あの時までは⁝︒
﹁え
?﹂
﹁近々︑バシー島沖にある島に巣食っている深海棲艦の巣を殲滅することになった﹂
突然︑降りた任務︒
それはあまりにも簡単なように見えた︒
そう︑バシー島沖はすでに攻略している︒
戦闘力も大体わかっている︒
そう︑この時の私たちは慢心していたのだ︒
11
○月□日 天気:晴れ
海は穏やかで︑視界も良好︒
敵の姿もよく見える︒
私たちの艦隊も体調︑整備ともに万全だ︒
深海棲艦の巣を撃滅するにはいい日だ︒
今回は提督も何があるかわからないと言う事で︑駆逐艦に乗って指揮を執ると言う事
だ︒
提督の指揮に間違いはない︒
そう︑この戦いが終わったら︑私は提督に大事な事を話さなくてはいけない︒
﹁大和︑ちょっといいか
?﹂
戦闘準備を終え︑出撃までの時間を過ごしていると︑提督がやってきた︒
どこかそわそわとしていて︑落ち着きがない︒
12 大和
出撃前だから仕方がないだろうと︑私は結論付ける︒
﹁話が⁝あるんだ﹂
話があると︑私の目をまっすぐに見つめてくる︒
﹁ここで言う事じゃないかもしれないが⁝︑今言わないと後悔しそうな気がして⁝﹂
いつになく歯切れの悪い喋り方をする提督︒
﹁大和︒この戦いが終わったら︑俺と結婚してくれ︒返事は戦いが終わってからでい
い﹂
そう言うと︑提督は踵を返し︑足早に立ち去った︒
訳も分からず立ち尽くしていると︑後から言われた意味を理解し︑顔が熱くなった︒
﹁い︑今言う事じゃないでしょう
!!提督のばかーー
!﹂
13
照れ隠しに︑姿が見えなくなった提督に悪態をつく︒
それを龍田と扶桑︑山城に見られていて︑からかわれたのは完全に余談である︒
﹁見つけました
!!﹂
偵察機﹃彩雲﹄を飛ばした赤城が鋭い声を発する︒
いつもののほほんとした様子は一切見えない︒
﹁こちら天龍︒敵さんのお出ましだ
!交戦を開始する
!!﹂
﹁こちら暁︒敵の駆逐艦は私たちに任せて
!!﹂
接敵と同時に交戦を開始する︒
14 大和
﹁ビッグ7の力をなめるな
!!﹂
長門が砲門を開き︑敵の戦艦に大きな被害を与える︒
それに続いて︑扶桑︑山城︑金剛などと言った戦艦も砲門を開いて先行している軽巡︑
駆逐艦娘を援護し始める︒
正規空母︑軽空母︑水上機母艦が搭載する艦攻︑艦爆︑艦戦を出撃させ︑敵戦力に打
撃を与える︒
所々で大きな爆発が見えるのは︑潜水艦の伊168と58︑19の姉妹が敵にダメー
ジを与えているのだろう︒
重巡組は軽巡︑駆逐組が取りこぼした敵を確実にたたいていた︒
全ては順調に思えた︒
﹁提督︑五十鈴との連絡が取れません
!!﹂
﹁なに
!近くにいた奴は
!!?﹂
﹁近く⁝︑と言うと川内です
!﹂
﹁今すぐ連絡しろ
!﹃五十鈴に異状あり︑今すぐ確認されたし﹄と
!!﹂
﹁了解
!!﹂
15
雲行きが怪しくなり始めた︒
五十鈴との連絡が取れなくなった︒
﹁川内からの連絡です
!﹃五十鈴︑轟沈せり﹄︑繰り返します︒﹃五十鈴︑轟沈せり﹄
!﹂
衝撃の事実だった︒
さらに悪い事は続く︒
﹁第六駆逐隊との連絡途絶
!さらには愛宕との連絡も途絶
!!﹂
被害が増えていく︒
﹁赤城︑加賀︒偵察機を飛ばして︑あちらを見てくれないか
?﹂
﹁﹁諒解
!﹂﹂
16 大和
赤城と加賀が偵察機を飛ばし︑暁たちが沈んだ箇所を偵察させ︑提督は一旦現在交戦
中の艦娘たちに後退を命じた︒
その援護に私を含めた後方の戦艦組が後退を援護する︒
﹁くそっ
!何人やられた
!﹂
﹁はい︑暁型が全員と愛宕︑五十鈴︑球磨︑阿武隈︑北上︑大井の10人になります﹂
﹁撤退するべきなのだろうな⁝﹂
﹁⁝悔しいですが︑撤退しましょう⁝﹂
そう言うと提督は撤退の指示を出す︒
その時︑警報が鳴った︒
﹁て︑敵です
!総数︑50を超えています
!!?﹂
﹁くっ︑縄張りを侵したものを撃滅する気だな⁝︒仕方がない︑疲れているところ悪い
が︑簡易的な補給が終わったものは出撃しろ︒敵がこちらを追いかけてきている﹂
その言葉を聞いた︑私達はすぐさま疲労した体をおして出撃した︒
17
一体何体の敵を葬っただろう︒
もうすでに46㎝三連装砲は使い物にならなくなり︑15.5㎝三連装副砲のみで
戦っている︒
周囲を見ると︑幾人かいなくなっている︒
敵は撃破しても撃破してもいなくならない︒
むしろ増える一方だ︒
﹁負けちゃダメ
!﹂
自分にそう言い聞かせる︒
そうでもしないと︑自分の心が折れてしまいそうになるからだ︒
﹁あれ
?﹂
18 大和
弾が切れた︒
私が使える武器は何一つなくなってしまった︒
﹁このままでは
!!﹂
そう言った瞬間︑後方から轟音が聞こえてきた︒
慌てて︑後ろを振り向くと提督の乗っていた駆逐艦が炎上していた︒
﹁て︑提督
!!!﹂
慌てた私は頭部に強い衝撃を受け︑気を失った︒
艦 ふね 最期に見たのは︑提督のが大爆発を起こした所だった︒
次に私が目が覚めたのは昏い昏い海の底だった︒
19
﹁提督は⁝どこ
?﹂
浮上して︑提督の場所を確認するが︑そこには何もなかった︒
それからの私はずっと放浪を続けていた︒
仲間がいれば︑提督の事を聞こうとした︒
だが︑皆︑私に攻撃をしてくるばかりで話一つ聞いてくれない︒
いつしか私は提督を探すと言う目的の為に攻撃をしてくる艦娘たちを攻撃するよう
になった︒
20 大和
とある記録がある︒
名前はかすれて確認できないが︑とても優秀な提督がいたのだと言う︒
その提督のたった一度の敗戦︒
自らの命さえも奪った戦いだった︒
その戦いの中で一人最後まで戦い沈んだ艦娘がいたと言う︒
その艦娘の名前は﹃大和﹄︒
かつて第二次世界大戦末期に日本の威信を背負って就航した彼の戦艦︒
だが︑偶然生き残った﹃文月﹄と言う駆逐艦の証言によると︑提督の乗っていた艦が
沈んだのに気を取られ︑敵の砲弾が直撃︑そのまま轟沈したそうだ︒
だが︑その数日後にその海域で新たな深海棲艦が出現︒
遠征中の呉鎮守府の艦隊が全滅︒
ただ︑運よく生き残った艦娘たちの話を総合すると︑誰かを探しているらしい︒
戦う前にその口が﹁どこ⁝﹂と動いていたそうだ︒
現在もその深海棲艦は彷徨っていると言われている︒
もしかしたら︑彼女は自身の提督を探して彷徨っているのかもしれない︒
某月某日︵木︶ 筆者 ■■■■
21
鳳翔
俺が名前も知らない︑誰からも忘れ去られたような小島にある小さな鎮守府に左遷さ
れたのはいつの頃だっただろうか︒
何故左遷されたか
?
それはただ上官の命令に逆らった︑それだけだ︒
着任して驚いた︒
鎮守府とは名ばかりの小さな部屋︒
建造するための設備もなく︑辛うじて補給用の施設と入渠用の施設があるのみ︒
そして︑重要なのは与えられた艦娘だ︒
俺が与えられたのは﹃鳳翔﹄と呼ばれた軽空母一人のみ︒
彼女は何一つ文句も言わず︑俺に付いて来てくれた︒
俺の艦隊にいた他の艦娘たちは俺が左遷されることになって︑皆他の鎮守府に転任し
ていった︒
元気でやっているだろうか︒
話は変わるが︑この俺の鎮守府︵笑︶の海域には数多くの深海棲艦がいる︒
22 鳳翔
だが︑この深海棲艦たちは何故か島を襲ってこない︒
それどころか︑島の住民が漁に出ると︑近くに寄って行って興味深そうに覗き込んで
いるのだ︒
それを初めて見た時はとてもとても驚いたものだった︒
島の住民も彼女たちを﹃良き友人﹄と呼んでいた︒
俺たちも迂闊に攻撃できなくなり︑と言うか鳳翔だけでは物資の支給もない俺たちで
は攻撃できないのだが⁝︑非常にのんびりとした生活を送っている︒
﹁提督︑今日は村の方々から頂いた︑ニンジンやゴボウ︑里いもを使って芋煮汁をつ
くってみました︒﹂
﹁いつも︑すまないな︒﹂
﹁いえいえ︒﹂
こうして見ると︑なんだか夫婦みたいで照れ臭くなる︒
﹁冷めちゃいますから︑食べましょうか︒ほら︑ヲ級ちゃんもおいで︒﹂
23
﹁ヲッ
!!﹂
最近︑鎮守府に棲みつき始めた空母ヲ級も食卓に着き︑皆で夕ご飯を食べ始める︒
なぜか ・・・ 鳳翔はその雰囲気から村でも人気者で︑深海棲艦からも好かれている︵特に空
母ヲ級や軽空母ヌ級に︶︒
かく言う俺は村の男衆に交じって狩りや畑仕事をして︑日々暮らしている︒
本部からの連絡も全く来なく︑多忙な時を過ごしていたころに比べたら本当にのんび
りしている︒
﹁このまま︑ゆっくり過ごせればな︒﹂
﹁何か言いましたか︑提督
?﹂
﹁いいや︑何も︒﹂
今は︑この幸せを享受しよう︒
深海棲艦との戦いも俺にはもう関係ない︒
俺は鳳翔と時々深海棲艦と生活して行こう︒
24 鳳翔
︿鳳翔﹀
私の計画は成功しました︒
提督を私だけの提督にすると言う計画︒
その為に私は色々と手をまわしました︒
海軍の上層部に提督を左遷させてくれるようにお願いをして︑承諾させました︒
全く意地でも首を縦に振ろうとはしませんでしたね︒
その気持ちは分かります︒
だって︑私の提督はとても優秀な提督でしたから︑出撃すれば必ず戦果を挙げて帰っ
てきました︒
そんな提督を誰が好き好んで左遷させたがるでしょう︒
だから︑承諾させるのには少々骨が折れました︒
25
﹁また︑こんな電報を送ってきて︒﹂
私の手には救援を求める電報がありました︒
普通なら提督が処理をするべきものなのでしょうが︑生憎提督は村の人々と山に猟に
出かけています︒
なので︑この案件は全部私の手に委ねられていると言う事︒
だから︑握りつぶし放題︒
折角︑提督の頭から深海棲艦との戦いを追い出したのに︑また追い出す作業をさせる
のですか︒
思わず笑みを浮かべてしまいました︒
﹁完膚なきまでに消しますか︒﹂
救援を求めている艦隊と言うのは︑丁度ここの島の付近にいると言う事でしょう︒
だったら︑私が手懐けた子たちをけしかけましょうか︒
その為に深海棲艦をこの海域に集めてきたのだから︒
26 鳳翔
金 剛 姉妹
私︑青葉がこの鎮守府に着任したのは秋も深まる頃の事でした︒
提督がいる執務室に行けば︑扉には﹃入室禁止﹄の札が掛かっていました︒
首をかしげながらも︑戸を叩くと戸がほんの少し空きました︒
中からやつれた姿の青年︑第1種軍装を着ている事から恐らく提督でしょう︑が出て
きました︒
﹁ども︑恐縮です︑青葉です
!!﹂
﹁
!!?﹂
敬礼をしながら︑私は提督に挨拶をしましたが︑私の何かに気が付き︑息をのみまし
た︒
そして︑そのまま部屋に逃げ込み鍵をかけてしまいました︒
私は訳も分からず︑立ち尽くしていました︒
27
﹁おやぁ
?新しい娘
?﹂
少し間延びした声が聞こえ︑私はそちら側を向きました︒
そこにはへそだしセーラー服を着た少女が居ました︒
﹁あ︑貴女は
?﹂
﹁私は重雷装巡洋艦の﹃北上﹄だよ〜︒﹂
﹁あ︑先任の方ですか︒﹂
﹁うん︒﹂
挨拶を交わすと︑北上さんはそのまま歩いて行こうとしました︒
ですが私は︑気になっている事を聞こうと思い︑北上さんを呼び止めました︒
﹁聞きたいこと〜
?﹂
﹁はい︒﹂
﹁まあ︑いいかな〜︒じゃあ︑私の部屋に行こうか︒﹂
﹁よろしくお願いします︒﹂
28 金剛姉妹
こうして︑私は北上さんに連れられ︑彼女の部屋へと向かいました︒
││以下︑インタビュー形式︵になっているかはわかりませんがそんな感じだと思っ
てください︑また地の文が亡くなりますのでご了承ください︶││
青葉︵以下︑青︶;では︑お願いします︒
北上︵以下︑北︶;ん︑分かったよ〜︒
青;では︑この鎮守府の提督はなぜ部屋から出てこないのでしょうか︒
北;あらら︑それを先に聞いちゃうか⁝︒聞いたら戻れないけど︑いいの
?
青;⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝構いません︒
北;あの人はね︑ある艦娘たちの行動の所為で私たちが怖いのさ︒
青;ある︑艦娘たち⁝
?﹃たち﹄と言っていると言う事は複数と言う事ですね
?
北;そう提督はさ︑とっても優秀で︑優しかった︒数年前まではどうしても私たちは
29
兵器 ・・として見られていたじゃない︒最近はそう言うのも減ったって聞くけど︒
青;ええ︒
北;でさ︑ウチの提督はまだ私らが兵器扱いされている中でも﹁一人の人間﹂︑それも
ちゃんとした女の子みたいに接してくれた︒私らはさ︑演習とかで他の鎮守府の艦娘た
ち受けている仕打ちを見てこう思ったんだよ︒﹁ああ︑この鎮守府に来られてよかった
な﹂ってさ︒そうしている内に︑なんて言うんだろうね︑提督が好きになっちゃったん
だよ︒
青;提督を好きに⁝
?
北;言っておくけど﹁Like﹂じゃなくて﹁Love﹂の方だよ
?
青;わかりますが⁝︒
北;まあいいや︑そんな感じで皆アプローチを始めたのよ︒特にすごかったのが金剛
型戦艦の四姉妹︒
青;金剛型⁝︒あの高速戦艦のですよね︒
北;そうだよ〜︒話を戻すね︒
青;あ︑はい︒
北;初めのうちはね︑執務室で提督を巻き込んでお茶会をしたり︑提督の仕事を手伝っ
たりしてアプローチをしていたんだけど︑その内アプローチが激しくなって︑提督の私
30 金剛姉妹
室にまで侵入したりしていたよ︒一度だけ見たんだけどさ︑金剛が提督の下着を大事そ
うに抱えて提督の私室から出てきたこともあったんだよね︒聞いた話だけど︑金剛の他
にも比叡︑榛名︑霧島も同じような事をしていたって︒そして︑ある日事件は起きたん
だ︒
青;事件⁝⁝⁝ですか
?
北;提督が拉致されたんだよ︒
青;
!?だ︑誰にですか
!!
北;金剛たちだよ︒いつまで経っても自分たちの好意になびかない提督に業を煮やし
たんだろうね︒提督に飲ませる紅茶に睡眠薬を混ぜて︑攫った︒
青;ひっ︵北上の形相に恐れ戦く︶
北;あろうことかあいつらは提督を拘束して
!好き勝手に凌辱したんだ
!!私たちが必
死に捜索して見つけた時には提督の髪は真っ白で目は虚ろで
!
青;そ︑それで︑どうなったのですか
?
北;あの女どもはすぐに捕まって︑コロしたよ︒
青;殺⁝した
?
北;そう︑それはもう残酷にね︒体を少しも動かせないようにして︑指に五寸釘を打
ちつけて︑体の末端から細切れにして
!皆︑そうやって憎しみをぶつけたよ︒気が付い
31
たらアイツラの原型は無かったね︒まあ︑貴女がこれを聞いてどう思うかは分からない
よ
?でもさ︑私らにとって提督の存在って言うのはさ︑拠り所なんだよ⁝︒⁝⁝⁝⁝⁝
もういいよね
?
青;あ︑はい︒ありがとうございました︒
││インタビュー形式終了││
私が北上さんの部屋から出る際︑後ろを振り向くと今まで気が付きませんでしたが︑
そこには先ほどの提督の髪の毛がまだ黒い頃の写真⁝︑おそらく盗撮でしょう︑があり
ました︒
そして︑それに頬ずりをする北上さんの瞳は先ほどと違って昏く澱んでいました︒
気が付けば私は体が小刻みに震えているのに気が付きました︒
﹁なんで寒くないのに⁝︒﹂
寒さじゃない︑これは⁝⁝⁝恐怖からくる震えだと気が付くのにそう時間はかかりま
32 金剛姉妹
せんでした︒
﹁触らぬ神に祟りなし⁝⁝ですか⁝︒﹂
この鎮守府で生活するにあたって思い浮かんだ言葉はそれでした︒
はてさて︑どうなるんでしょう⁝︒
︿提督﹀
│提督が悪いんです︑姉さまをそして私たちを見てくれないから│
│私は提督にこんなにもLoveなのになんで振り向いてくれないデスか
!│
眠ろうと思って︑布団に入るといつもあの出来事を思い出してしまう︒
このせいで︑俺はここ数年まともな睡眠を取れていない⁝︒
33
誰か︑誰か助けてくれ
!
この金剛たちの呪縛から解き放ってくれ
!!
そんな悲痛な願いも通じることはない︒
34 金剛姉妹
電
﹁提督︑だーいすきなのです
!﹂ 電 いなずま ﹁ははっ︑ありがとうな︑︒﹂
私の大好きな提督さんはそう言って︑私の頭を撫でてくれました︒
それが嬉しくて︑思わず笑みがこぼれます︒
﹁じゃあ︑資源輸送任務よろしく頼むよ︒﹂
﹁はい
!なのです
!!﹂
私は笑顔で出撃しました︒
〜遠征中〜
35
﹁そう言えば知ってる
?﹂
﹁何がですか︑叢雲さん︒﹂
資源を輸送する船を護衛中にペアの叢雲さんが話しかけてきました︒
艦娘 ひと ﹁提督って︑好きながいるらしいのよ︒﹂
﹁へ︑へぇ〜︒﹂
内心ドキッとしました︒
︵まさか︑私の事を好きなのかな
?︶
私の淡い予想はすぐに外れました︒
﹁提督って︑あの加賀さんが好きらしいのよ︒﹂
﹁え
!?﹂
36 電
予想もしない名前︑あの何事にも無関心そうな加賀さん⁝︒
なんで提督がそんな人の事を好きになったのでしょう⁝︒
意を決して聞いてみました︒
﹁提督さんはなんで加賀さんを好きになったのですか
?﹂
﹁青葉の話だから信憑性はないんだけど︑前に提督と前線に出たことがあったじゃな
い
?﹂
そう︑今から半年前︒
深海棲艦 しんかいせいかん の拠点が見つかったのです︒
提督はすぐに攻撃を決意︑持てる戦力すべてをその攻略戦につぎ込んだのです︒
勿論私︑電もその攻略戦で敵駆逐艦5隻を沈める活躍をしました︒
﹁あの時︑提督の乗っている軽巡洋艦が敵の戦艦の砲撃を立て続けに喰らって︑轟沈し
たじゃない
?﹂
﹁はい︒﹂
37
そう︑あまりに戦局がこちらの思惑通りに進んだ事が私たちの慢心につながったので
しょう︑敵の戦艦三隻が提督の乗る軽巡洋艦の右舷側に出現︑それに気が付いた提督は
艦 ふねすぐに戦艦から離れましたが敵の方が早く提督の乗るは大破して︑提督も大けがを
負ってしまいました︒
それでも提督は攻略戦を続行︑無事にその戦艦も撃沈させ︑私たちは鎮守府に帰還し
たのでした︒
秘書艦 ひしょかん ﹁あの後︑床に臥せった提督の看病をしていたのが当時のの加賀さんだった訳︒
それ以来︑あの二人は意識しあっているのよ︒﹂
﹁そ︑そうなのですか︒﹂
意識しあっている ・・・・・・・ ﹁﹂︑その言葉を聞いた時︑私の心に黒い靄が出てきました︒
﹁ちょっと電
!?手から血が出てるわよ
!﹂
﹁え
?﹂
38 電
叢雲さんに指摘され︑私ははっと自分の手を見やりました︒
掌に爪が食い込んで︑少量の血が筋を作っていました︒
﹁どうしたの
?﹂
心配そうに私の顔を覗いてくる叢雲さん︑なんだか今の私にはうっとおしく感じたの
でした︒
でも︑私はそんな事を感じさせないように無理やり笑顔を作りました︒
﹁何でもないのです︒﹂
﹁そう⁝︒﹂
提督さん︑加賀さんが好きなんて嘘ですよね
?
ワタシハコンナニテイトクサンノコトガダイスキナノニ︒
39
〜遠征終了〜
遠征を終えた私は提督さんの姿を探して︑鎮守府を走り回っていました︒
しばらく走っていると︑見慣れた後姿を見付けました︒
提督さんです︒
提督さんはあまり使わない倉庫に入っていきました︒
扉が少し開いていたので中を覗いてみました︒
そこに私にとって信じられない光景が広がっていたのです︒
﹁加賀⁝︒﹂
﹁んっ︑⁝提督︒﹂
何度も口づけを交わす二人の姿がありました︒
そして︑提督さんは加賀さんの服を脱がし始めたところで私は逃げ出しました︒
私はショックだったのと︑提督さんや加賀さんに対しての怒りが心に積もっていきま
した︒
40 電
それから数か月後︒
﹁加賀︑俺と結婚してくれないか
?﹂
﹁はい︑喜んで⁝﹂
幸せそうに見つめあう二人︒
提督は懐から小さな箱を取り出すと︑中から指輪を取り出した︒
それを加賀の左手の薬指にはめる︒
本当に幸せそうに見つめあう︑だがその幸せもすぐに壊れてしまう︒
﹁私⁝⁝感情表現が⁝⁝その⁝⁝︒提督︑私︑これでも今⁝⁝とっても幸せなのですけ
れど⁝⁝﹂
﹁ああ︑君を絶対に幸せにする﹂
41
そう言って︑二人は抱き合う︒
そして︑どちらからとも無く唇を合わせると︑微笑みあった︒
次の瞬間︑加賀と提督の表情が一変する︒
﹁ぐ︑が⁝﹂
﹁あ︑ぐ⁝﹂
それもそうだろう︑二人の腹部には一振りの日本刀が刺さっていたのだから︒
﹁こんばんは︑なのです﹂
電 犯人 二人を刺したは張り付いた様な笑みを浮かべながら︑痛みに呻く二人に声を掛け
た︒
﹁いな︑づまっ
!おま︑え
!何をしているのか︑分かっているのか
!﹂
42 電
痛みに耐えながら︑提督は電を睨む︒
﹁分かっているのです︒提督は電のものにならない⁝⁝︒だから⁝⁝⁝﹂
そう言った電の目が怪しく光る︒
﹁まさかっ︑深海棲艦化
!!?﹂
提督の表情が恐怖に彩られる︒
そして︑それが提督の最後の言葉となった︒
異変に気がついた憲兵隊が現場に到着すると︑そこには一組の男女の死体が転がって
いた︒
上半身は吹き飛ばされ︑辺り一面に血や肉︑骨片が散らばっており︑死体を見慣れて
いない新人憲兵は夕飯を戻した︒
犯人 電 ベテランの憲兵ですら︑顔をしかめるような惨状の真ん中には立っていた︒
電は目の前の死体を見ながら︑ケタケタと笑い転げていた︒
それを目にした憲兵は戦艦﹃武蔵﹄︑﹃長門﹄︑﹃霧島﹄に応援を要請︒
43
戦艦三人がかりで電を押さえつけ︑拘束︒
拘束された電は全てを自供し︑雷撃処分となった︒
44 電
漣
草木も眠る丑三つ時︑セーラー服を着た少女│綾波型駆逐艦﹃漣﹄│が麻袋を引きず
り︑洞窟へやって来た︒
﹁やっぱ︑重いなぁ﹂
そう漣は呟くと︑ポケットから取り出したベルを鳴らす︒
すると︑洞窟の奥から下卑た笑みを浮かべた男が現れる︒
﹁やあ︑時間通りだね﹂
﹁こう見えて︑私は約束の時間までには来る主義なんで﹂
そう言うと︑漣は麻袋から手を離す︒
ご注文 ・・・ ﹁の〝曙〟は持ってきたわよ﹂
﹁じゃあ︑確認させてもらうね﹂
﹁どーぞ﹂
男はニヤニヤと笑いながら︑麻袋を捲り︑中を確認する︒
そこにはここに来る際︑身体中をぶつけたのか痛みに呻く綾波型駆逐艦﹃曙﹄の姿が
あった︒
45
﹁顔には傷はついてないはずだから︑後は好きにして﹂
漣がそう言った瞬間︑曙の表情が変わる︒
﹁ちょっと︑漣
!どういうことよ
!﹂
﹁どうもこうも︑曙︒あんたはこの人達の玩具になるの﹂
強気な態度の割に打たれ弱い性格の曙はすでにこの段階で泣きそうになっていた︒
対する漣の表情は冷たく︑麻袋から顔を出している曙の事を完全に見下していた︒
﹁お︑玩具って⁝⁝︒っ
!嫌
!嫌よ
!絶対に嫌ぁ
!﹂
玩具の意味を理解した曙は漣でも見たことがないくらい狼狽し︑暴れた︒
その表情を見た男は更に笑みを深め︑涙を流し始めた曙の頬を舐めた︒
﹁嫌って︑もう取り消せないよ︒このおじさんからお金貰っちゃってるんだもん﹂
﹁あ︑ぁあぁあぁあぁあぁ﹂
漣のその一言で曙は力なく声を上げる︒
﹁それに︑曙さ﹂
漣は呆然としている曙の耳元に口を寄せ︑言葉を紡いだ︒
﹁いつもご主人様の事︑﹃クソ提督﹄って言ってたよね︒漣さ︑ずーーーっと我慢して
たんだぁ﹂
﹁そ︑それは
!﹂
46 漣
﹁うん︑わかってるよ︒曙︑ご主人様に一目惚れして︑照れくさかったんだよね
?漣も
一目惚れだし﹂
﹁でしょう
!だから︑お願い
!今すぐ﹁だからって︑ご主人様に対する暴言は見逃せな
いなぁ﹂⁝⁝嫌︑嫌
!﹂
男の背筋を冷たいものが流れ落ちる︒
そう︑漣は笑っていた︒
嗤っていたのだ︒
男は何人もの壊れた人間︑壊された人間を見てきた︒
そして︑男が最も怖いと思うのは︑正常なようで壊れている人間なのだ︒
他人に壊れていることを見せない︒
それがどれだけ怖いか︑男は身を以て知っていた︒
﹁では︑そろそろ︑持って行かせてもらうね﹂
﹁あ︑はい
!﹂
男がソロソロと声をかけると︑漣は満面の笑みを浮かべて︑曙から離れた︒
﹁じゃあ︑皆待ってるから行こうか﹂
男が曙を肩に担ぎ︑洞窟の奥へと歩いて行く︒
﹁いや︑いやぁぁぁあ
!お願い
!いい子にするから
!もうクソ提督なんて言わないか
47
ら
!
だから︑助けてよ
!
い
やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
!﹂
曙の叫びは洞窟に反響し︑遠ざかっていく︒
完全に男の姿が見えなくなった辺りで漣は踵を返し︑鎮守府へと歩を進めた︒
翌日︑曙の姿が忽然と消えている事態に鎮守府は騒然となり︑捜索隊が編成されるが︑
結局見つからず︑捜索は打ち切りとなった︒
﹁て︑提督
!提督
!﹂
それから数ヶ月︑鎮守府内で提督が殺害された︒
見つかった時︑提督の頭部は何処にもなかった︒
急いで︑提督の頭部︑そして殺害した犯人を探すも見つからず︑結局事件は迷宮入り
し︑新たな提督が鎮守府に着任したことで忘れ去られていった︒
48 漣
﹁うふ︑うふふふ︒もう︑漣との仲を引き裂くひとは現れませんよー﹂
どこかの海域にある無人島の洞窟から幼い少女の声が響く︒
少女は半ば腐り肉が溶け落ちた男の頭部に向かって話しかけ︑時折︑見る影もなく
なった唇に自分の唇を合わせる︒
その表情は実に楽しそうで︑嬉しそうで︑幸せそうだった︒
49