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ワークショップ「虚偽情報の科学と哲学の現在」企画趣旨 植原亮(

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ワークショップ「虚偽情報の科学と哲学の現在」企画趣旨

植原亮(Ryo Uehara)

関西大学総合情報学部

陰謀論や疑似科学をはじめとする虚偽情報は、しばしば科学哲学における批判的検 討の対象になるとともに、批判的思考や科学リテラシー教育の題材として取り上げら れてきた。また近年では、そうした虚偽情報は、ときにSNSを通じたフェイクニュ ースの拡散という形で深刻な社会的・政治的影響をもたらしかねない事象として論じ られるようになっている。このような状況を鑑み、科学と哲学の観点からあらためて 虚偽情報に現代的な考察を加えることが本ワークショップの目的である。

はじめに、オーガナイザ・提題者の植原が、陰謀論を中心とする虚偽情報をめぐる 哲学的な議論の現状を概観し、主要な論点を整理する。陰謀論はポパーによって哲学 上の問題として論じられたが、現代において活発な議論が始まったのは、およそ世紀 の変わり目ごろである。とりわけ、ここ十年ほどは陰謀論を哲学的関心から扱ったモ ノグラフや論集も出ており、また認知科学・社会心理学においても知見が蓄積されつ つある。哲学上の代表的な論点を列挙すると、陰謀論への公的機関の規制や介入の是 非、陰謀論者に対する非難可能性および認識的不正をめぐる問題、陰謀論を信じるこ とと認識的な悪徳の関係に迫る悪徳認識論の試み、共同的営為としての人間の認識と いう観点からの陰謀論の検討などが挙げられる。提題を通じて、陰謀論が哲学的にも 真剣な検討に値する重要な主題であることを示すのが、ここでの目標である。

二人目の提題者である笹原は、計算社会科学の観点から虚偽情報の特質を明らかに する。計算社会科学とは、コンピュータが可能にする人間行動と社会的相互作用の実 態に、コンピュータシミュレーションやビッグ・データの分析によって定量的に迫ろ うとする学際科学のことをいう。この提題ではまず、デジタル・テクノロジーの普及 と発達によって、われわれを取り巻く情報環境にどのような転換がもたらされ、また それとともにフェイクニュースをはじめとする虚偽情報の伝播や拡散の仕方がいかな る変貌を遂げたかを描き出す。次いで、そうして変容した情報環境が人間のもつ認知 的な特性と作用し合うことで出現した虚偽情報の新たな側面に光を当てる。そのうえ で、虚偽情報と向き合うために求められる制度的・技術的な方策について考察する。

最後に、飯塚の提題では、陰謀論に対する検討からいかなる認識論的意義が引き出 せるかを論じる。近年では、徳認識論の応用的な課題として陰謀論が検討の俎上に挙 げられており、具体的には、陰謀論に陥らないようにするために備えていなければな らない知的徳は何か、また陰謀論の信者はいかなる認識的な悪徳によって陰謀論を信 じるに至っているのか、といった問いへの取り組みが始まっているのである。飯塚は こうした問いへの解答の方向を示すとともに、そこから今後の課題と認識論上の新た な展望について論じる。

参照

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