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第  章

2

外国旅行の動向

豪州 カナダ 米 国 ロシア ドイツ フランス 英 国 イタリア スペイン

2-1

外国旅行の現状と展望

2015年のスペインの外国旅行者総数は1,514 万人*1 で、国内を含む旅行者数全体の約 10%に相当する。 経済不況の影響で旅行意欲が減退した 2013 年に 1,124 万人まで減少したが、その後経済状況が好転し た 2014 年に前年比 4.8% 増、続く 2015 年も 8.8%増と 順調に伸び続けている。旅行者数の増加と並行して スペイン人による国外での消費総額も年々増大して おり、2015 年にスペイン人旅行者による外国での消 費総額*2 は前年比 18.1%と大幅に伸び、約160 億 ユーロに達した。旅行者数、消費総額共に大きな成 長を遂げていることについて、旅行業界デジタル ニュースサイト HOSTELTUR は「この数年間にわ たる経済不況と雇用の不安により支出(外国旅行) を手控えていた消費者の反動が、外国旅行者増加の 主な要因の一つである」*3 と分析している。国家経 済の動向と外国旅行者数、消費総額が連動して増減 する様子が見受けられるが、実際の一般世帯におけ る平均収入額は経済危機にあった時期よりも減少 (2010 年の 1 世帯当たり平均収入 2 万 8,206 ユーロに 対して、2014 年 2 万 6,092 ユーロ)しており、旅行や 消費意欲は実際の世帯収入よりも心理的な景況感に 大きく左右されていると考えられる。 旅行地別ではヨーロッパ域内が約 8 割と大半を占 めている。特に陸路で国境を接しているフランスへ の旅行者が多く、2015 年は 256 万人が同国を訪れて いる。続いて同じく陸続きのポルトガルへの旅行者 が 196 万人となっている。ヨーロッパ域外では北米 および中南米地域への旅行者数が多く、北米 ・ 中南 米全体で約 134 万人(2015 年推計値)である。内訳 は、北米への旅行者数が 75 万人*4 、メキシコへの旅 行者数が 33 万人*5 となっており、この 2 地域が大き な割合を占めている。アフリカ地域も北米および中 南米地域に次いで外国旅行者が多く、約 99 万人が訪 れている。このうちの約 7 割が、北アフリカにある スペインの飛び地領であるセウタとメリリャの両市 と国境を接しているモロッコに集中している。 アジア方面への旅行者総数は約 64 万人で外国旅行 者総数の 4.2%を占め、地域別シェアでは最も少ない が、近年の動向として 2014 年に前年比 53.3%、2015 年に 23.7%と大幅な増加を続けている。2015 年にア ジアでスペイン人旅行者を 10 万人以上受け入れてい るのはタイ(15.1 万人、前年比 29.0%増)と中国(13.6 万人、前年比 2.9%増)の 2 カ国である。日本は 7 万 7,200 人(前年比 27.5%増)で、2015 年にインド(6 万 6,000 人、前年比 1.2%減)を抜いて三番手に浮上 している。 スペイン人訪日客は、2006 年の 1 万 5,706 人から 2010 年に 4 万 4,076 人に達するまで順調な成長を見せ ていたが、2011 年に東日本大震災と東京電力福島第 1 原子力発電所の事故を受けてスペイン外務省が渡 航自粛勧告を発令、旅行会社もこれに従って同年 8 月までツアーの催行を中止する事態となった。同時 期にスペインでも経済危機が深刻化したこともあい まって、同年のスペイン人訪日客数は 2 万 814 人(前 年比 52.8%減)まで落ち込んだ。しかし、1 年後の 2012 年 4 月にスペイン人訪日客数(単月)が 3,358 人 に達し、前年同月比 256%増と大きく成長を見せて おり、立ち直りも早かったと言える。それ以降は 2015 年の 7 万 7,000 人に至るまで、例年 20%を超え る伸率を維持している。 2014 年から 2015 年にかけて JNTO がスペインの 主要ホールセラー 10 社へ訪日客の増加要因につい てヒアリングを実施したところ、①日本の認知度の 向上(複数回答可で 10 社中 6 社が訪日客増加の要因 として挙げた)、②円安ユーロ高による旅行費用の 低下(割高感の払しょく、5 社)、③旅行会社による 商品内容改善やキャンペーンの実施(4 社)、④訪日 旅行経験者からの好意的な口コミ(3 社)、⑤震災の 反動(2 社)などが回答として寄せられた。これら が複合的に絡み合って一種の訪日旅行ブームを引き 起こされたものと考えられる。 上記の要因①「日本の認知度向上」については、 2013 年 と 2014 年 に か け て 両 国 の 官 民 学 が 一 体 と なって行われた日本スペイン交流 400 周年記念事業 の貢献度が高かったと言える。記念事業では、両国 合計で 571 件におよぶ交流事業を実施された。日本 の皇太子殿下のスペインご訪問を始めとして、美術 展や演劇の公演、映像・出版事業、スポーツや食文 化の交流など、様々な分野で文化および人的交流が なされ、両国間の相互理解の深まりと相手国に対す る関心を呼び起こす効果があった*6。同交流年事業 は「東日本大震災からの復興」を重要テーマの一つ としており、福島第 1 原子力発電所事故の初期対応 にあたった自衛隊や警察、消防隊員といった、通称

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られた。観光分野においても同年のマドリード国際 観光見本市(FITUR 2014)や、バルセロナ観光展 (SITC 2014)へのブース出展が交流年事業の一環と して実施され、積極的な観光誘致が行われた。 ②「円安ユーロ高」については、2012 年年初に 1 ユーロ= 100.18 円と、円高ユーロ安が頂点に達して 以降、2015 年年初に 143.85 円に至るまでの約 2 年間、 継続的に円安ユーロ高傾向が続いた。この期間、日 本のデスティネーション・マネジメント・カンパ ニー(DMC)から円建てで訪日旅行商品を仕入れ る旅行会社にとっては有利な状況であったと言え る。このような為替の動向に 2012 年に始まった原油 価格の低下に伴う航空運賃の値下がりも加わって、 往復航空券込み 9 泊の訪日旅行で 2,000 ユーロを切る 商品が複数の大手旅行会社のカタログ(2014 年版) に掲載された。その結果、他のアジア競合国(特に 中国)と同等またはそれ以下の商品も見受けられる ようになった。このため、それまでスペイン人の間 で根強かった訪日旅行の割高なイメージの払しょく が進んだ。ただし、2015 年から 2016 年は再び円高 ユーロ安傾向が見受けられる。特に英国の EU 離脱 を問う国民投票で離脱支持派が勝利して以来円高 ユーロ安に拍車がかかり、2016 年 9 月 21 日時点で 1 ユーロ= 113.58 円まで下落している。日本政府観光 局(JNTO)による旅行会社へのヒアリングでも、 2017 年以降訪日旅行商品の値上がりを予測する見方 が強く、日本のイメージが従前の割高な旅行地に 戻ってしまうことを懸念する声が聞かれている。 ③「旅行会社による商品内容改善やキャンペーン の実施」に関して、商品面では日系 DMC によるス ペイン語ガイドの充実や、スペイン人旅行者の嗜好 に合致した旅行地(熊野古道、高山市など)の開拓 といった取り組みが進んだことがあげられる。この ようなことで訪日旅行の利便性やカスタマイズ性が 高まり、顧客満足度を向上させ、ひいては要因④「訪 日経験者の口コミ」にもポジティブに作用したと言 える。キャンペーンに関しては 2014 年に JNTO パリ 事務所主導で行なった地場大手旅行会社との共同広 告キャンペーン(訪日単体カタログの制作、ラジオ 番組における宣伝広告、オンラインを含めたメディ ア媒体への広告掲出など)が、事業対象企業の訪日 旅行者数を前年比約 4 倍に引き上げるといった絶大 な効果を生み出した。このキャンペーンは訪日客の 増加に寄与すると共に、スペイン市場に潜在する訪 *1: 国立統計局スペイン居住者旅行アンケート調査  「E T R / F A M I L I T U R」:h t t p : / / w w w. i n e. e s / j a x i T 3 / Ta b l a . htm?t=15797&L=0 *2: スペイン銀行統計官報(2016年7月):   http://www.bde.es/f/webbde/SES/Secciones/Publicaciones/ InformesBoletinesRevistas/BoletinEstadistico/16/Fich/be_julio2016_ es.pdf *3: HISTELTUR(2016年8月10日):   http://www.hosteltur.com/117505_viajes-espanoles-como-es-posible-crecimiento-21.html *4: 訪問先国当局発表値:   http://travel.trade.gov/outreachpages/inbound.general_information. inbound_overview.html *5: 訪問先国当局発表値:   http://www.datatur.sectur.gob.mx/SitePages/Visitantes%20por%20 Nacionalidad.aspx *6: 在スペイン日本国大使館「日本スペイン交流400周年記念事 業実施報告」より:   http://www.es.emb-japan.go.jp/japones/download/Spain_ Japan_400_Final_Report_Japanese.pdf

2-2

外国旅行の旅行形態別特色

スペイン国立統計局の調査(2015 年)によると、 スペイン人外国旅行者(年計 1,514 万人)の 84.7%が 個人手配による旅行を実施しており、パッケージ旅 行の利用者は少ないとされる。ただし、ヨーロッパ や北米・中南米地域および地理的に近いアフリカを 除く、「その他世界(アジアが含まれる)」に限定し た場合、パッケージ利用率は 27.4%(約 64 万人中、 17.6 万人)*7 まで割合を伸ばしており、文化慣習の 違いや言語の面で不安のある旅行地については、 パッケージ旅行の利便性と安心感を求める旅行者も それなりに多いことが分かる。 スペインにおいて取り扱われるオールインクルー シヴ型の訪日旅行商品は基本的に①「東京と京都に のみ宿泊(6 泊程度)」、②「ゴールデンルート・昇 龍道(9 泊程度)」と、③「ゴールデンルート・中国 地方・熊野古道(13 泊程度)」の 3 種類が主流である。 大手ホールセラーはこれら全てをカタログに掲載し ており、特に②のタイプに人気が集中している。1 社が 6 本以上のツアーをカタログに掲載することも 珍しくないが、造成・仕入れ元が異なるだけで内容 は酷似しており、前述の 3 種類のいずれかに該当す ることが多い。宿泊地が商品ごとで異なる場合もあ るが、訪問先は基本的に変わらず、バリエーション の乏しさが目立つ。このような旅行地の偏重はスペ インの旅行者層およびその属性と密接に関係してい

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第2章 外国旅行の動向 豪州 カナダ 米 国 ロシア ドイツ フランス 英 国 イタリア スペイン る。旅行会社からは「スペインはまだ初回旅行者が 多く、定番都市の需要が高い」といった見方や、「ス ペイン人旅行者には保守的な側面があり、リピー ターでも同じ都市を訪問したがる傾向がある。その ため、定番都市以外はエクステンションや二次的な 立ち寄り地となってしまう」という説明があった。 旅行会社スタッフの知識もこれまでに取り扱った 商品内容に基づいていることと、定番都市のリピー トを好むスペイン人旅行者の性格を考慮した場合、 新規旅行地に特化した商品を造成して他社との差別 化を図ることは、潜在的な顧客の目を引く点では有 用であるが、販売員の知識不足による顧客に対する 説得力の低下や、定番都市への滞在がなくなる(も しくは減る)ことによる顧客の不満といった、一定 のリスクが存在することに留意すべきである。 2015 年のスペイン人による外国旅行の平均滞在日 数は 8.8 日であるが、旅行目的によって滞在日数は 大 き く 異 な り、 旅 行 者 数 の 53.6 % を 占 め る「 レ ジャー・バケーション」は 6.0 日で最も短いのに対 して、「家族・友人を訪問」を主目的とした旅行(全 体比 26.0%)は 13.7 日に及ぶ。この旅行目的による 滞在日数の差は利用宿泊施設の違いに結びついてお り、外国旅行においても家族や友人宅に宿泊するこ とが多く、これら個人宅など非商用宿泊施設の利用 率は約半数に近い 47.8%に上る。比較的在住スペイ ン人が少ないと思われる、ヨーロッパ、アメリカ、 アフリカ以外の地域でも、この目的の旅行では非商 用施設の利用率が 24.4%に達すると推計*8されてい る。習慣の違いや言語面の不安を「現地に住む知人 に頼る」ことで克服し、また旅行費用を抑えると いった旅行方法が主要スタイルの一つとして定着し つつある様子がうかがえる。 スペイン人旅行者の旅行形態は個人手配によるも のがほとんどで、訪日外国人消費動向調査(国土交 通省観光庁、2015 年、アンケート形式)によると、 訪日したスペイン人の 86.4%が「個別手配」で日本 を訪れている。 スペインの個人旅行者の旅行計画段階における情 報源は主にインターネットであり、民間大手コンサ ルタント会社 Brain Trust 社が実施した調査*9 によ ると、「観光当局サイト」、「レビューサイト」、「オ ンライン旅行会社(OTA)サイト」「ブログ」、 、「SNS」 などオンライン媒体の利用者割合は 47%に上る。一 方で「家族・友人の口コミ」も 33%を占め、単独項 目で最も多く、訪日経験者が初回旅行者に対して強 い影響力を有していることが分かる。日本旅行は、 旅行会社へのヒアリングでも全体的に「主だった顧 客クレームはない」という結果が出ており、満足度 が高い。このような満足度の高さは訪日旅行の大き な強みである。家族・友人以外にもレビューサイト やブログ、SNS も口コミの情報源となり得るため、 これらの媒体を通じて、訪日経験者から得た良い評 価を一般層に向けて発信・アピールするのも有効な 手段であると言える。 *7: 国立統計局の推計値から算出、参考値とする。  http://www.ine.es/jaxiT3/Datos.htm?t=15797 *8: 同上。

*9: Brain Trust社調査(旅行業界誌Agenttravel記事から引用):   http://www.agenttravel.es/noticia-021186_Los-amigos-y-familiares-son-la-principal-fuente-de-informacion-para-preparar-el-viaje.html

2-3

観光関連政策

1.

外国旅行関連規制 スペインでは、スペイン国籍を有する同国居住者 に対して外国旅行を制限する規制はない。災害や紛 争地域への渡航制限(勧告レベル)はスペイン外務 協力省が適宜、事案別に発令している。 スペインは 1991 年にシェンゲン協定に加盟してお り、ヨーロッパ域内 26 カ国へ、パスポートまたは国 民身分証(DNI)で渡航可能である。またシェンゲ ン協定国以外の第三国への渡航は欧州委員会規則 (CE)539/2001 号に基づいており、原則として入国 に査証申請が必要となる国は EU 加盟国と同様であ る。

2.

旅行業法 スペインにおいて旅行業に関連する法規類は欧州 理事会指令、国内法、自治州条例の 3 段階になって いる。欧州理事会指令はパッケージ旅行に関する加 盟国の法制度の統一(90/314/EEC『パッケージ旅 行に関する EC 理事会指令』)を主旨とし、また国内 法も商業取引全般の大枠(1992 年 5 月 27 日第 12 号 『代理店契約法』)と、消費者保護の中で旅行会社が 負うべき責任について言及した政令(2007 年 11 月 16 日第 1 号『消費者および利用者保護基本改正の王 政令』)の大枠を定めるものであり、旅行会社の登 記や事業の範囲、営業免許要件などの具体的な項目 は自治州がそれぞれ、州条例により統制を行なって いる。 なお、2007 年まで国内法として「1995 年 7 月 6 日 パッケージ旅行統制法」が存在していたが、同年 12

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よびリテーラーは等しく消費者保護の責任を負う」 (162 条第 1 項)、「パッケージ旅行商品は税込みの最 終価格を表示し、オプショナルツアーについても想 定額を表示する。またパッケージ旅行に含まれる サービスのうち、消費者がオーガナイザーまたはリ テーラーを介さず、直接支払いを行う項目について、 その費用項目が存在することを明記し、また既知の 範囲で価格の目安を提示する」(第 152 条第 1 項 -F) など、特に旅行会社が消費者保護の観点から履行す べき義務が導入された。当時、法改正の内容につい ては旅行業界から大きな反発はなかったが、改正法 可決から施行までが約 2 週間しかなく、既に配布さ れたカタログなどの改訂が追い付かないとした苦情 が寄せられたとのことである。 スペインの観光政策は、スペイン産業エネルギー 観 光 省 に 属 す る 国 家 観 光 事 務 局(Secretaría de Estado de Turismo)が主管であるが、その権能お よび活動主旨は国内の観光資源の整備やインバウン ド誘致に向けられており、スペイン人による外国旅 行の増進を図る政策、事業などは見当たらない。ス ペイン人旅行者の動向に関する統計調査も国立統計 局に移管されている。国外におけるインバウンド誘 致事業は、国家観光事務局に属する独立行政法人ス ペイン政府観光機構(TURESPAÑA)が担当機関 である。同機関は民間も参加する理事会(11 名)に よって運営されているが、現行の理事長職は国家観 光事務局長の兼任であり、実質的に政策や活動方針 を同じくする組織として見なすことができる。スペ イン独特の取り組みとして古城や修道院といった建 造 物 を 改 装 し、 高 級 ホ テ ル と し て 運 用 す る 「PARADORES DE ESPAÑA(行政法人の国営ホテ ルチェーン)」が興味深い。

2-4

日本の競合旅行地

スペイン市場における、日本の主な競合旅行地は 以下のとおりである。

1.

タイ ● 2015 年スペイン人旅行者数 15 万 940 人・前年比 29.0% 増・アジア地域 1 位 ①日本との競合部分 バンコクなどの大都市で見られる「伝統と現代の 文化」などが、日本との競合要素として挙げられる。 また地元民の親しみやすさや、接客サービスの質の 高さに「微笑みの国」という呼び名を与えて観光魅 力に昇華している点も日本の「おもてなしの文化」 と共通していると言える。 ②主な観光魅力 エキゾチックな大都市(例:バンコクやチェンマ イ)、歴史を感じられる観光資源(例:アユタヤ)、 ビーチリゾート(例:プーケット、サムイ島、クラ ビー)など具体的な旅行地のほか、ショッピングや 多彩な食文化など、スペイン人のアジア方面旅行者 の嗜好に合致した要素を全て兼ね備えていると言え る。全般的にコストパフォーマンスが高く、スペイ ン人外国旅行者の一日一人あたりの平均支出額 90 ユーロ(ヨーロッパなど近距離含む)に対して、訪 タイスペイン人旅行者の 1 日 1 人あたり平均支出額 は 94 ユーロとほぼ同等であり、一般的な旅行予算の 範囲内に収まることがタイの大きな強みである。 ③観光インフラ バンコク都市部の高架鉄道(BTS)や主要観光地 (バンコク、チェンマイ、プーケット)の国際空港 など既存の交通インフラの拡大に加えて、高速鉄道 の建設計画が進行しており、近い将来に旅客運輸能 力の大幅な向上が期待される。またホテルのコスト パフォーマンスが高く、広いスペース、ダブルベッ ド対応、アメニティやカップル優待プラン(ウェル カムドリンクやサービスクーポンなど)などサービ スも充実している。これらの項目はスペインから新 婚旅行客を誘致する場合に不可欠であるとされ、旅 行会社から「カップルを対象としたサービスは、タ イと比較して日本に不足している点である」との指 摘もあった。 ④マイナス要素 2014 年 5 月の軍事クーデターや、2015 年、2016 年 の爆破テロ事件など、政情不安や宗教紛争が挙げら れるが、スペイン当局による渡航自粛勧告にもかか わらず、スペインからの旅行者が大幅に減少すると いった事象は見られていない。 ⑤政府観光局による外客誘致活動 タイ国政府観光庁はスペインの観光コンサルティ

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第2章 外国旅行の動向 豪州 カナダ 米 国 ロシア ドイツ フランス 英 国 イタリア スペイン ング会社(マドリード)にレップ事業を委託してお り、地元のマラソン大会への協賛や、ストリート フードイベントへの出展、住宅街に近いショッピン グモールでのタイ文化周知および物産イベントの開 催など、地域に密着した形の誘致活動を多く行なっ ているのが特徴である。 ⑥旅行業界などによる外客誘致活動 スペインにおける訪タイ商品の展開は 90 年代から 活発化し、遠距離旅行を取り扱う旅行会社の多くが タイを近年の人気ナンバーワン旅行地として挙げて おり、安定した需要がある。長年にわたる安定した 現地企業との取引から、地場ホールセラーが直接現 地サプライヤーと交渉を行うことも珍しくないこと から、旅行者がホテルや滞在地、現地出発ツアーを 選んで組み合わせられるといった高いカスタマイズ 性を有する商品が旅行会社のカタログに多く見受け られる。

2.

中国 ● 2015 年スペイン人旅行者数 13 万 6,300 人・前年比 2.9%増・アジア地域 2 位 ①日本との競合部分 「重みのある歴史と現代的な大都市のコントラス ト」、「発達した交通機関」、スペインで認知度の高 い「食文化」といった要素が日本と競合する部分で あると言える。また、「ビーチリゾートの少なさ」 や「地場企業との交渉の難しさ」といった、マイナ ス要素についても日本と共通していると言える。 ②主な観光魅力 北京、上海など、一般的に認知度の高い大都市を 有し、「万里の長城」や「兵馬俑」、「京杭大運河」 など、イメージをつかみやすい観光資源が強みであ る。これらの観光魅力が、遠距離旅行において「異 文化体験」重視するスペイン人旅行者を惹きつけて いる。年次のスペイン人旅行者総数については公式 な資料が乏しく、民間の推計も含むが、2015 年に 2004 年の津波から息を吹き返したタイに首位を譲る まで、例年 10 万人以上のスペイン人旅行者が訪れ る、アジア地域のナンバーワン旅行地であったこと が報告されている。 ③観光インフラ 主要観光地が広大な国土に点在しているため、旅 行計画において各地の空港、高速鉄道の駅の把握は 不可欠であると言える。大手旅行会社のカタログで は上記交通手段を半々といった割合で使い分けてい る印象である。 ④マイナス要素 サービスの正確性や品質に難があるとされてお り、顧客の満足度が相対的に低く、「日本とは比較 にならないほどクレーム件数が多い」との所感も旅 行会社から聞かれる。また、2012 年にスペインの大 学が実施した調査で、中国への旅行想起を妨げる要 因の一つに「公害問題」(中国への旅行を迷ったと する回答者約千人の 75.4%を占め、最も多い「旅行 費用が高額」の 83.3%に次ぐ)が挙げられており、 保健衛生、環境の面でネガティブなイメージがある。 ⑤政府観光局による外客誘致活動 中国当局(CNTO)はマドリードに事務所を設置 し て い る が、 活 動 の 内 容 は 国 連 世 界 観 光 機 関 (UNWTO)やスペイン当局、企業団体との調整を 主旨としたものが多く、スペイン人消費者への情報 発信や、地場旅行会社とタイアップといった活動事 例は少ない。 ⑥旅行業界などによる外客誘致活動 訪中スペイン人旅行者は多いが、遠距離旅行を取 り扱う旅行会社のカタログにおいて訪中商品のバリ エーションは日本と同等以下である。特定の旅行 シーズンや客層に向けたキャンペーンが見受けられ ることもあまりなく、積極的な誘致活動が行なわれ ているとは言い難い。

3.

インド ● 2015 年スペイン人旅行者数 6 万 5,694 人・前年比 1.2%減・アジア地域 4 位) ①日本との競合部分 インド政府観光当局によると、2013 年から 2015 年にかけてインドを訪れたスペイン人旅行者数は年 間 6 万人台を推移しており、この数年にわたって伸 び悩んでいる様子が見受けられ、2015 年に前年比 27.5%と大きく成長した日本にアジア地域第 3 位の 座を譲った。エキゾチックな旅行地としての認識は 当然あるものの、日本およびタイ、中国などの競合 国と比較して具体的な PR ポイントやイメージは捉 えづらく、日本との競合部分を見い出すのは困難で ある。

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手旅行会社のカタログではネパールやモルディブな ど近隣諸国との組み合わせで催行されるツアーが多 く見受けられ、スペイン人旅行者の求める神秘的な 異文化体験やビーチリゾートといった要素を補強し ている。 ③観光インフラ 中国と同じく、観光地が広大な国土に点在してい るが、鉄道や空港による移動は便利とは言えず、旅 行会社のカタログでも移動時は「プライベートコー チで 5 時間∼ 7 時間」といった表記も目立つ。スペ インとは社会常識がまったく異なっており、例えば 「寺院内での写真撮影は禁止または有料」といった 注意書きも多く見受けられるなど、文化・習慣の違 いが敷居を高くしている印象がある。 ④マイナス要素 2012 年にニューデリーで起きた集団強姦事件をは じめとして、女性への暴行が頻発している。観光客 も被害に遭っていることが地元メディアで報じられ ており、女性旅行者の身の安全(特に一人旅)につ いて不安視する声が多い。 ⑤政府観光局による外客誘致活動

スペイン国内にインド観光局(India Tourism: In-credible India)の事務所はなく、スペイン語の情報 サイトやソーシャルメディアなども見当たらない。 一方で、スペイン最大の国際旅行博 FITUR におい ては例年アジア諸国で最大のスペースを占有するな ど、特定の機会にまとめて大々的な誘致活動を実施 している。 ⑥旅行業界などによる外客誘致活動 上記のとおり、同国政府観光局による誘致活動へ の支援は基本的に本国主導で進められているものと 推察される。官民共同の誘致活動は国際的な大企業 を対象とすることが多く、スペインの地場企業は基 本的に独自の販促活動を行なっているものと考えら れる。近年はインセンティブ旅行やスポーツ(特に ゴルフ)をテーマにした商品も発売されるように なった。

4.

その他 各国観光当局の発表によると、上記に続く人気旅 13.6 % 増 )、 モ ル デ ィ ブ(17.0 % 増 )、 ミ ャ ン マ ー (15.1%増)が好調である。またインドネシア当局の 統計が「スペイン・ポルトガル」を一括りにしてい るため実態は掴みづらいが、バリもビーチリゾート を求めるスペイン人の人気目的地として知られてお り、2014 年はスペイン、ポルトガル合計で 6 万 8,373 人が記録されている。

2-5

訪日旅行の価格競争力

2013 年から 2015 年にかけて円安ユーロ高傾向に あった期間中の訪日旅行価格は、大手旅行会社 3 社 平均 2,052.33 ユーロ、1 泊あたり 228.03 ユーロまで下 がり、同時期の中国(同 1,935.33 ユーロ、1 泊あたり 215 ユーロ)とほぼ遜色のないレベルに迫った。し かし、2015 年から円高ユーロ安が進み、現時点で訪 日旅行は、アジアでは韓国に次いで 2 番目、以下の 表に挙げた旅行地の中では 4 番目に高額である。カ タログ更新時期の関係(年末、または 3 月が多い) で、英国の EU 離脱を問う国民投票結果によるユー ロ下落が反映されていないカタログも市場に多く出 回っている可能性も否めず、次年度はさらに価格が 上昇するものと予測される。今後は他国との比較で はなく、食事やショッピング、ジャパンレールパス の活用による旅行価格の低減など、国内で割安感を 伝えられる項目の情報を発信する必要がある。また、 治安の良さやサービスの正確性も大きな付加価値が あり、有力な説得材料になり得る。

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第2章 外国旅行の動向 豪州 カナダ 米 国 ロシア ドイツ フランス 英 国 イタリア スペイン 地域 旅行地 宿泊数 (国内) 平均価格 (€) 平均価格 (¥) 1泊単価 (€) 1泊単価 (¥) アジア 日本 9泊 2759.00 31万7,230 306.56 3万5,248 タイ 9泊 1828.00 21万,222 203.15 2万3,358 中国 12泊 2286.00 26万2,806 190.47 2万1,900 インド 12泊 2084.00 23万9,618 173.67 1万9,968 ベトナム 8泊 1805.00 20万7,501 225.58 2万5,938 インドネシア 7泊 2085.00 23万9,733 297.86 3万4,248 韓国 7泊 2895.00 33万2,867 413.57 4万7,552 ミャンマー 9泊 2645.00 30万4,122 293.89 3万3,791 北・中・ 南米 北米(東海岸) 9泊 2486.00 28万5,783 276.17 3万1,754 メキシコ 12泊 2229.00 25万6,290 185.75 2万1,358 ペルー 11泊 2395.00 27万5,415 217.76 2万5,038 ブラジル 8泊 2019.00 23万2,087 252.31 2万9,011 アルゼンチン 8泊 2485.00 28万5,687 310.58 3万5,711 ヨーロッパ・ 地中海 沿岸国 フランス 7泊 1245.00 14万3,150 177.86 2万450 英国 6泊 1182.00 13万5,868 196.94 2万2,645 ドイツ 7泊 1200.00 13万7,976 171.43 1万9,711 イタリア 7泊 1112.00 12万7,819 158.81 1万8,260 ギリシャ 6泊 1041.00 11万9,694 173.50 1万9,949 トルコ 7泊 1020.00 11万7,280 145.71 1万6,754 オセアニア オーストラリア 8泊 2859.00 32万8,689 357.33 4万1,086 注1: 「平均価格」はスペインの売り上げシェア上位を占める店舗 型旅行会社3社のカタログに掲載された当該国ツアー商品最 安値の平均を算出した。 注2: 旅行商品は同条件(出発地からの往復航空券込み、スペイン 語ガイド帯同、国内の主要観光地3カ所以上を訪問)のもの を選定した。 注3: 「旅行地」は2015年のスペイン人旅行者が多かった主要旅行 地とアジア競合旅行地を中心に記載した。ただし、上記旅行 会社のうち1社も注2に該当する商品を取り扱っていない旅 行地は除外した(例:現地発ツアーのみのポルトガル、モ ロッコ、1都市のみのシンガポール、ドミニカ共和国は除外 した)。 注4: 日本円への変換は2016年8月31日の日本銀行金融市場局外 国為替市況の中間レートに基づき、1ユーロ=114.98円で換 算した。

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評価の高い日本の旅行地

パッケージ旅行、個人旅行のいずれにおいても、 旅程から東京と京都の 2 都市が外れることはまずあ りえない。大手旅行会社 7 社がカタログに掲載する 33 の訪日旅行商品で上記 2 都市が宿泊地になってい ない商品は皆無であり、宿泊日数も上記以外が 1 ∼ 2 泊であるのに対して、東京 ・ 京都では概ね 3 泊と長 めに設定されている。東京では銀座、新宿、渋谷(ス クランブル交差点が有名)といった近代的な大都市 の雰囲気とショッピングを楽しめるエリアや、浅草 や明治神宮、皇居など歴史を感じられる観光スポッ トの人気が高い。また、秋葉原や原宿などポップカ ルチャー色の強いエリアや、築地市場など食文化に 結びついたスポットも認知度が高い。京都は金閣寺 と伏見稲荷がカタログやパンフレットの表紙に使用 されることが多く、日本の象徴的なイメージとして 知れ渡っている。ガイドブックやカタログに祇園の 街並みと、芸妓・舞妓の画像が使用されることも少 なくない。 東京と京都以外では大阪(他の観光都市への交通 拠点となり得る)、奈良(大仏殿の壮大さ)、広島(新 天地など観光地化されていないエリア)と宮島(厳 島神社)、日光(東照宮)、箱根(芦ノ湖)の認知度 が高く、これらに含まれる史跡が訪日経験者から印 象に残ったとされることも多い。 ゴールデンルート以外で、特筆されるのは岐阜県 高山市である。2015 年に高山市を訪れたスペイン人 旅行者(宿泊者)は 1 万 6,084 人でヨーロッパからの 旅行者中最も多く、統計からは訪日スペイン人旅行 者の約 2 割以上が同市で宿泊していることが分かる。 主要スポットを徒歩で散策できる手軽さ、混雑しす ぎない適度な落ち着き、雰囲気を楽しみながら買い 物もできる上三之町などの古い街並み、自然に囲ま れた環境などが高評価の要因と推察される。

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訪日旅行の有望な旅行者層

スペインで有望な訪日客層は① 30 歳∼ 44 歳(全 年齢層中 35.5%を占め、最も旅行出発率が高い)、② 45 歳∼ 64 歳(①に次いで 33.7%を占め出発率が高 く、宿泊日数が①よりも若干(0.5 日分)長い)、③ 高学歴(大卒以上の旅行出発率 47.9%)である。ま たインバウンドに対してアウトバウンドが多い(旅 行意欲が高い)地域としてマドリード州、バスク州、 ナバーラ州、ムルシア州、カタルーニャ州が挙げら れる。特に上位 3 州(バスク、ナバーラ、マドリード) は 1 人当たり平均所得が高く、有望であると言える。 ■一般的に旅行出発率が高い旅行者の属性および 人気旅行地 属性 ・大都市に居住(マドリード、カタルーニャ) ・ も し く は 平 均 所 得 の 高 い 都 市( バ ス ク、 ナ バーラ)に居住 ・高学歴、中∼高所得者 ・30歳∼64歳の就業年齢層 ・子どものいない(または手を離れた)カップ ル、夫婦 旅行形態 ・手配旅行はオールインクルーシヴ、スケルト ン、テーラーメイドのいずれも販売されてい る。 ・家族・親族あるいは知人などからなる数人単 位の個人手配旅行

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費用など ン語ガイドを含むオーガナイズドツアーは 2,500ユーロ∼3,000ユーロ ・外国旅行者(遠距離)の平均滞在日数は17.9 日、1人 当 た り 平 均 消 費 額2,052ユ ー ロ(23 万5,938円) 選定の 背景 ・公式資料から平均的な旅行出発率、旅行日数 の割合が高い層を抽出した。訪日旅行につい て、旅行会社ヒアリングから人気商品、旅行 地を聞き取った。 効果的な 宣伝方法 ・旅行想起段階は「口コミ」の影響力が強いた め、訪日客の経験に基づいた宣伝広告(一般 旅行者やブロガーの招請、レビューサイトの 活用など)が有効。 ・旅行計画段階は「インターネット」を活用す ることが多いため情報サイトをスペイン語化 するなど、検索に掛かりやすくする。 ※ 1ユーロ=114.98円で換算(2016年8月31日の日本銀行金融市場 局外国為替市況より) 近年は日本が新婚旅行の目的地として急激に成長 していることが旅行会社から報告されており、日本 のゴールデンルートにバリ島や仏領ポリネシア、モ ルディブ、タイなどのビーチリゾートを組み合わせ た商品が人気を呼んでいる。2015 年にスペインの簡 易裁判所(婚姻証明の届け先)に登録された新婚者 は 16.6 万組で、時期として 6 月、7 月、9 月がいずれ も 2 万組以上で月間平均(1.4 万組)を上回っている。 平均的な結婚年齢が男性 37.3 歳、女性 34.1 歳で相対 的に遅く、前述の有望な旅行者層と年齢属性が一致 する。

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訪日旅行の買い物品目

「訪日外国人消費動向調査」(2015 年)によると、 「食料品、飲料、酒、たばこ」の購入率が最も高く、 訪日スペイン人旅行者の 59.6%がこれらに該当する 品目を購入したと回答している。当該項目の購入者 単価は 1 万 2,201 円であった。続く「和服(着物)、 民芸品」の購入率は 37.3%、購入者単価は 1 万 9,684 円である。電気製品の購入率は 9.4%で他と比較して 少ないものの、購入単価は 3 万 1,344 円で最も高額で ある。 JNTO による旅行会社ファムトリップへの帯同な らびに日本におけるスペイン人旅行者対応の経験で は、具体的な購入品項目として、食品では持ち運び が簡便で日持ちする乾物類(野菜、干物、海藻など) やインスタント食品(フリーズドライの味噌汁な ど)、茶類の購入率と評価が高かった。工芸品では 扇子や手ぬぐい、箸など軽量で日本的な装飾が施さ ホンなど)の購入率と評価が高かった。上記以外で スペインにないステーショナリー(針なしステープ ラーなど)や 100 円ショップの生活雑貨も購入率が 高い。

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日本の食に対する嗜好

スペインにおける日本食の普及は急速に進んでお り、2013 年と 2015 年のわずか 2 年間で国内における 日本食レストランの店舗数が 444 軒から 1,037 軒に増 加したとする統計*10 がある。(ただし、公式資料で はないため参考値とする)。日本食はヘルシーでお しゃれな料理として認識されている。特に寿司はテ イクアウトやデリバリーを主体としたチェーン店が 増加したことで、ファーストフードの手軽さとカロ リーの低さ(同ジャンルのハンバーガーやピザと比 較される)を兼ね備えた料理として人気が高まって いる。 大皿料理をシェアしたり、小皿の一品料理を数多 く注文したりする日本の食習慣もスペインのバルお よびタパス文化に共通する点があり、またスペイン 料理が食材そのものの味を重視したシンプルな調理 方法を特徴としていることも、スペイン人が日本食 に馴染みやすい理由として挙げられる。 スペインは他のヨーロッパ諸国と比較して食材の バリエーションが広く(例えばウニやシャコなども 生鮮市場に並ぶ)、パエリアに代表されるように米 食にも馴染みがあるなど、料理に使用される食材に ついてスペイン人旅行者の障壁となるものはほとん どないと言える。ただし、魚を生食する習慣はほと んどなく、高齢者を中心として抵抗があるスペイン 人も多いことから、寿司や刺身以外の魚料理につい ても情報を提供できれば、上記の嗜好や食材への抵 抗感の少なさを最大限に活用することができる。 *10: 社 会 実 情 デ ー タ 図 録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0209a. html)より。出典は「農水省」と記載されているが、原典 が見当たらない。

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接遇に関する注意点

①食 前述のとおり、食習慣、食材で日本と多くの共通 点を有するスペインであるが、床に座って食事を摂 る習慣や、箸の使用、食器へ口を付ける作法、麺類

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第2章 外国旅行の動向 豪州 カナダ 米 国 ロシア ドイツ フランス 英 国 イタリア スペイン をすする、など食べ方の面では馴染みの薄いものも 多くある。特に座敷などで床に座る(あぐらも含む) ことは人によって膝に負担がかかるなど身体的苦痛 を伴うこともあるため、注意が必要である。従って、 日本文化の体験を本旨とする場面以外の食事では、 テーブル席やナイフ・フォーク類など代替案が準備 されていることが望ましい。また、スペインの食事 時間は日本と比較して遅い(ピークは昼食で 15: 00、夕食 21:00)。スペインと他国の時間帯のずれ はスペイン人も自認しており、基本的に問題へと発 展することは少ないが、旅程を組む際に多少食事時 間を遅くできれば、スペイン人への特別な配慮とし て好印象を得られると考えられる。また、食事およ び食後の歓談をゆっくりと楽しむ(スペインでの外 食は 2 時間∼ 3 時間におよぶことも多い)傾向があ るため、退店や会計を急かすことは不快に思われる 恐れがあり、注意が必要である。 ②交通 スペインの交通機関の運賃は総体的に安く(例: マドリード市内の地下鉄で 10 回券を購入した場合、 市内一律、乗り継ぎ回数不問で 1.20 ユーロ= 138 円、 タクシー初乗り 2.40 ユーロ= 276 円、以後 1㎞あたり 1.05 ユーロ= 121 円)、また、高速道路も自治体が運 営するものを除いて基本的に無料であるため、日本 における移動は割高に感じられる。ジャパンレール パスや各都市の 1 日乗車券など、リーズナブルなチ ケットを事前に案内できることが望ましい。また、 バス停や駅のホームで電車などの扉が開く位置に並 ぶ習慣がなく、順番を抜かしたり人の流れを阻害し たりすることがある。基本的に悪意はないため、ガ イドや駅員が手柔らかにルールを説明し、注意を促 せば大体の場合は納得してもらえ、衝突は回避でき る。併せて日本の交通機関の正確性(時間、扉位置 など)について認識を得ることができれば、問題発 生のリスクを訪日旅行の魅力の一つに逆転すること も可能である。 ③宿泊 商習慣上、基本的にスペインのホテルが「1 名あ たり」の料金を表記することはなく、宿泊料金の表 示は「1 室あたり」が大前提であるため、1 名あたり の料金を提示する場合はその旨、明記することが必 要である。また「サービス料」の勘定項目はスペイ ンになく、何を指しているのか疑問に思う旅行者は 多い。説明の手間を考慮した場合、税金およびサー ビス料を含めた、最終価格を提示できることが望ま しい。また、スペインのハネムナーや夫婦、カップ ル旅行者にとって、ダブルベッドの有無はホテル選 定の大きな判断基準となり得る。ツイン、ダブルい ずれも選択が可能な場合はその旨を明示できると良 い。 スペインは宿泊施設のコストパフォーマンスが高 く、マドリード市内の 5 つ星ホテルでも 1 室あたり 200 ユーロを切ることがある。そのため、ホテルの クオリティの要求レベルは他のヨーロッパ諸国より も高いことに留意すべきである。「伝統的な宿泊施 設」(旅館、民宿、古民家など)といったキャッチ コピーは、スペインにある古城や歴史的建造物を豪 奢に改装した国営ホテルチェーン「パラドール」を 想起させ、その価格が日本の旅館の料金と同水準で あるため、「期待していたよりも質素」と思われる などの誤解を生じさせる恐れがあり、注意が必要で ある。従って、旅館など伝統的な宿泊施設の魅力を 伝える場合は、「高級」といった文言を避け、食事 が付いていること、日本的な接客を体験できるなど、 異文化体験を楽しめることを強調した方が良い。 ④その他 ● 和室などで履物を脱ぐ習慣についてはある程度周 知されているが、「汚れを室内に持ち込まない」 という、履物を脱ぐ根本的な理由については知識 がなく、土間を素足で踏みながら履物を脱ぐ旅行 者が多い。駅の並び方同様、理由を説明できれば、 このことも旅行者にとっても日本文化体験の一つ となり得る。 ● 温泉や銭湯などの施設における入れ墨客の入浴制 限について、「現地(日本)で初めて知った。温 泉に入れず残念だった」とする旅行者は少なから ず存在する。スペインでは 18 歳∼ 29 歳の若年層 でタトゥーを彫っている人口は 26%と言われてお り、上記のように現地で制限を初めて知るといっ た事例は決して少なくないと予測される。絆創膏 やテーピングで対応できる場合は、それらのグッ ズを用意する、または近辺で購入できるドラッグ ストアなどを案内できれば、これらの旅行者の不 満を軽減できると思われる。 ● 全体的に、スペイン人は「欧米人」という括りを 嫌うとされており、英語による案内や情報提供の 際は安易な「欧米人=英語」といった姿勢は避け るのが望ましい。スペイン語で案内や情報提供が できるのが理想的ではあるが、案内の際に「英語 での対応(文書)でも良いか」と尋ねるだけでも、 印象はかなり良くなると思われる。

参照

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