九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
超幾何級数の3項間関係式とその応用
蛭子, 彰仁
https://doi.org/10.15017/1441039
出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(数理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
氏 名:蛭子 彰仁
論文題目:Three term relations of the hypergeometric series and their applications (超幾何級数の3項間関係式とその応用)
区 分:甲
論 文 内 容 の 要 旨
超幾何級数F(a,b;c;x)は、次のような重要な性質を持っている:整数の三つ組(k,l,m)を与えたとき、
F(a+k,b+l;c+m;x)=Q(x)F(a+1,b+1;c+1;x)+R(x)F(a,b;c;x)
を満たすような唯一つの関数の組(Q(x),R(x))が存在する。ここで Q(x)と R(x)は、パラメータ a,b,c と独立変数xに関する有理関数である。この3個の超幾何級数の間に成り立つ関係式を「超幾何級 数の3項間関係式」と呼ぶ。本論文の目的は、この3項間関係式に現れるQ(x)とR(x)の表示を明示 的に与え、さらにはそれらの結果を用いて超幾何級数の特殊値を求めることである。
第1章で、Q(x)とR(x)は、xの整数乗と(1-x)の整数乗と多項式の積で表せ、さらにこの多項式は 超幾何級数の積の和によって表せることを見る。
R.W.Gosper は、彼自身が発明した手法を用いて多くの超幾何級数の閉形式を得た。ここで閉形
式とは、初等関数とガンマ関数を有限回組み合わせたもののことである。第2章では、その中の1 つである
F(a,2;c;(c-2)/(a-1))=(a-1)(c-1)/(a+1-c)
を別の手法を用いて再発見し、さらには第1章で得た結果を用いて一般化を行っている:x に関す るl次超幾何多項式F(1-a,-l;2-c;x)の根をλと置いたとき、F(a,1+l;c;λ)はλの多項式によって明示 的に書けるというのが結果である。
超幾何級数 F(a,b;c;x)のx=1 における値は閉形式を持つことは良く知られている。また、x=1 以 外の点でもパラメータa,b,cにある制限を与えれば閉形式を持つことが知られている。第3章では、
第1章で得られた3項間関係式の結果を用いることによって、超幾何級数の「特殊値」という概念 を定義し、さらにその「特殊値」を系統的に得る手法を開発し、実際に「特殊値」のリストを挙げ ている。このリストには、今まで知られていたほとんど全ての超幾何級数の閉形式が載っており、
さらには多くの新しい超幾何級数の閉形式が挙げられている。