子宮頸がんとHPVワクチン
産婦人科 長治 誠
2020年度モーニングレクチャー
子宮頸がんの発症数と死亡数
1年間に11,283人の女性が子宮頸がんを発症 (2016年)
1年間に2,871人の女性が子宮頸がんで死亡 (2018年)
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
死亡者数
年
子宮頸がん死亡者数
生涯で76人に1人が子宮頸がんになる
312人に1人が子宮頸がんで死亡する
子宮頸がんの年齢階級別罹患率
0 20 40 60 80 100 120 140 160
罹患率(対人口10万人)
年齢
1985 2015
近年は20~44歳にピーク 上皮内がんを含む
AYA世代の年齢階級別罹患率
0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0 600.0
15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳
罹患率(対人口100万人)
年齢
卵巣 乳房 子宮頸部
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0
20-24歳 25-29歳
罹患率(対人口100万人)
年齢 卵巣 乳房 子宮頸部
AYA世代:Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の略 15歳~39歳くらいまでの世代
世界各国の子宮頸がん検診受診率
(OECD加盟国における20~69歳の女性)
対象者:12,896人 注1
受診者数:32,138人
受診率:24.7%
要精密検査率:0.92%
精密検査受診率:87.1% 注2
がん発見率:0.09%
注1:20歳以上のうち職場等で受診機会のない者として厚生労働省が示す算式により算定した推計数 注2:国の指針 精検受診目標値90%以上
鳥取県がん検診実績報告書
鳥取県の子宮頸がん検診受診実績
(20歳以上の女性 平成29年度)
鳥取県における子宮頸がん検診の 年齢別受診状況
鳥取県がん検診実績報告書
0.0
10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0
20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-
受診率%
年齢
25年度 27年度 29年度
平成29年度鳥取県における各市町村別 子宮頸がん検診の受診状況
鳥取県がん検診実績報告書
41.2
38.8 34.9
33.1 32.7
31.7 31.4
28.3 27.7
26.8 26.3 25.6
24.7 24.3 23.0
21.0 20.5
19.2 19.1
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0
受診率%
市町村
子宮頸がんの原因はHPV
ヒトパピローマウイルス(HPV)には
100種類以上 の「型」がある
Human Papillomavirus ヒトパピローマウイルス
がんを引き起こす可能性がある ヒトパピローマウイルス(HPV)
子宮頸がんの原因となるHPVの代表
HPVは一般的なウイルスで,性交渉の経験がある女性の約 80%が,一度は感染する
感染しただけでは自覚症状はない
HPVの感染経路
性的接触
性交渉、口と性器 1–3
・コンドームを適切に使用しても完全には感染を防御できない 4
母子感染
出産時に母体から新生児へ感染する 5 報告はHPV6,11 型に多い
1. Winer RL et al. Am J Epidemiol. 2003;157:218–226.
2. Fairley CK et al. Epidemiol Infect. 1995;115:169–176.
3. Herrero et al. J Natl Cancer Inst. 2003;95:1772–1783.
4. Manhart LE et al. Sex Transm Dis. 2002;29:725–735.
5. Smith EM. et al. Sex Transm Dis. 2004;31:57–62.
HPVは多くの疾患に関連する
頭頸部がん(16型など)
再発性呼吸器乳頭腫症
(6,11型など)
子宮頸がん(16,18型など)
腟がん・外陰がん(16型など)
陰茎がん・肛門がん(16型など)
尖圭コンジローマ(6,11型など)
World Health Organization. International Agency for Research on Cancer. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans. Volume 90. Human Papillomaviruses. 2007.
Available at: http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol90/index.php. Accessed July 10, 2008.
子宮頸がんになるまで
子宮頸がんの初期にはほとんど症状はない
初期には症状がほとんど現れない
気付いたときにはすでに進行していた,というケー スも少なくない
病気が進行してから現れる症状として
不正性器出血
性交渉時の出血
茶色の帯下の増加,悪臭など
下腹部痛,腰痛など
子宮頸がん予防HPVワクチン
サーバリックス
® 2009年10月承認高リスク型
ガーダシル
® 2011年7月承認高リスク型
低リスク型
+
2010年公費接種
2013年4月より定期接種
(対象者・・・小学校6年生~高校1年生相当の女子)
現在,日本で承認されている子宮頸がんの予防HPVワクチ
ンは2種類ある
ワクチンの十分な効果を得るためには,
必ず3回接種が必要
接種スケジュール:初回接種、1~2ヶ月後、6ヶ月後
初回接種 初回接種 1~2ヵ月後
初回接種 6ヵ月後
十分な予防効果を得るために必ず同じ種類のワクチンを3回 接種することが必要
ワクチンは初回接種(1回目),1~2ヶ月後(2回目),6ヶ月後(3回目)に 筋肉注射する
3回接種することで十分な予防効果が得られるため、3回目まできちんと
接種することが必要
接種後の副反応は?
ワクチンを接種する時期は?
高リスク型HPVに感染する前,10代前半に接種する とより効果が高く期待できるといわれている
成人女性でも再感染を防ぐことができる
2018年5月:WHO事務局長が子宮頸がんの排除のための行動を呼びかけた
70カ国以上が,WHO事務局が以下を策定する決定を支持
子宮頸がんの排除に向けた世界的戦略
2019年1月:第114回WHO理事会
2018年の子宮頸がんの全年齢に対する年齢調整罹患率の推計
年齢調整罹患率(100,000人あたり
)
子宮頸がん罹患率の不均衡が広がっていき,公衆衛生の脅威となっている(GLOBOCAN 2018)
WHO LIFE COURSE APPROACH TO CERVICAL CANCER CONTROL
Primary Prevention Secondary Prevention Tertiary
Prevention
一次予防
9-14歳の少女に対して
・HPVワクチン接種 少年少女に対して,適宜
•
健康に関する情報とたばこの使用 についての注意•
年齢と文化に合わせた性教育•
性的に活発になる時期にはコンドー ムの啓発/支給•
男子への包皮環状切除二次予防 三次予防と緩和ケア
30歳以上の女性に対して
“検診と治療”ー1回の受診で行う方 法
•
ハイリスクのHPVタイプのための(その場で手軽に実施可能な)迅速 HPVテスト
•
続けてすぐに治療を行う•
検診のその場で治療をするどんな年齢でもすべての女性に必要
・浸潤がんへの治療
・手術
・放射線治療
・化学療法
・緩和ケア
HPV 感染
前がん病変
がん
人
口 罹 患 率
( ス ケ ー ル な し )
WHOの提唱する子宮頸がん排除のための生涯にわたる対策
世界各地・各国の子宮頸がん罹患率の違い
南アフリカ 東アフリカ 西アフリカ メラネシア 中央アフリカ 東南アジア 東ヨーロッパ カリビアン 南アメリカ ミクロネシア/
ポリネシア 南アジア 中央アメリカ 東アジア 北ヨーロッパ 南ヨーロッパ 北アフリカ 西ヨーロッパ
北アメリカ オーストラリア/
ニュージーランド 西アジア
日本: 14.7 ⋆
⋆http://gco.iarc.fr/today/fact-
sheetscancers→http://gco.iarc.fr/today/data/factsheets/cancers/23 -Cervix-uteri-fact-sheet.pdf
http://gco.iarc.fr/today/online-analysis-tableにより検索
年齢調整罹患率(/10万人対)
子宮頸がんの排除介入方法ごとの経過の予想
現状のワクチン接種と検診
徹底的な検診とワクチン接種 徹底的なワクチン接種
10 万人あたり の子宮頸がん 症例数
2030年にHPVワクチン,子宮頸がん検診,子宮頸がん治療のそれぞれの介入が,増加した場合の変化
ワクチン 検診 治療
排除基準に達する
10 万人あたり の子宮頸がん 症例数
国の予防接種プログラムとしてHPVワクチンが導入された92カ国 (2019年2月)
現在導入済(部分導入を含む)(92カ国:47%)
利用不可・未導入・未定(102カ国:53%)
不明
ボツワナ モーリシャス ルワンダ セーシェル サウジアラビア ウガンダ アルゼンチン バルバドス ベルギー ブラジル カナダ チリ コロンビア エクアドル ホンジュラス メキシコ パナマ パラグアイ ペルー スリナム アメリカ ウルグアイ オーストリア ベルギー デンマーク フィンランド フランス ドイツ ハンガリー アイスランド アイルランド イタリア ラトビア マカオ マラウイ ノルウェー ポルトガル スロベニア スペイン スウェーデン スイス イギリス ブータン オーストラリア ブルネイ クック諸島 フィジー マレーシア ニュージーランド パレスチナ
全年齢のHPV ワクチン接種率 (2014-2016)
90% の接種率は実現可能であるが、多くの国で大きく下回る
日本: 0.6%
https://www.kango-roo.com/work/6135/
HPVワクチンの有効性と安全性の評価 のための大規模疫学研究
NIIGATA STUDY:Niigata clInIcal Group for AssessmenT After HPV vaccination
ワクチンと検診により
子宮頸がんが予防できるはずだった?・・・
ワクチンの接種中止までの経緯
https://csis-prod.s3.amazonaws.com/s3fs-public/legacy_files/files/publication/140605_Wilson_HPVVaccination_Japanese_Web.pdf
CRPS:Complex Regional Pain Syndrome(複合性局所疼痛症候群)
ワクチンの積極的接種勧奨の中止
https://japan-indepth.jp/?p=46264