■ 短 報
キーワード:看護学生、よい看護師、行為、倫理原則
Key words
:nursing students, good nurse, action, ethical principles
1 前富山福祉短期大学 Former Department of Nursing, Toyama College of Welfare Science 2 富山福祉短期大学 Department of Nursing, Toyama College of Welfare Science
看護学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為を明らかにし、「よい看護師」と捉えた行為がどのような根 拠で判断されたのかを倫理原則の枠組みを用いて明らかにすることを目的とした。対象者
34
名のうち、同意が得られた
31
名の学生が選んだ「よい看護師」は31
名、学生が記述した「よい看護師」の総行為数は40
で、学生 が「よい看護師」と捉えた看護師の行為は、【患者のニーズを探る】【患者のニーズに応えようとする】【社会人 としてあるべき対応をする】【患者と誠実に関わる】【死者への配慮】【プライバシーを守る】【危険を回避す る】【患者の意思を確認する】の8
カテゴリに分類された。また、学生が「よい看護師」と捉えた看護師のこ れらの行為は、倫理原則からは、善行の原則、誠実・忠誠の原則、無害の原則、自律尊重の原則が価値判断の 根拠と見ることができる。看護学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為
−倫理原則の視点から−
Action of the good nurse perceived by nursing students:
From the perspective of ethical principles
今川 孝枝
2Takae IMAGAWA
谷 優美子
1Yumiko TANI
Ϩ .はじめに
本間1は、人の価値観や理想は、様々な経験を重 ねる中で形成され、社会的規範や他者から与えられ る価値によって影響を受けていると述べている。筆 者は、実習先で看護師のよい看護行為に居合わせた 看護学生(以後、学生)が「あの看護師のようにな りたい」と影響を受ける場面にしばしば遭遇した。
梶田2は、様々な体験の一部が意識化され自己意識 となると述べている。つまり、学生は、よい看護行 為(以後、行為)を行う看護師を「よい看護師」と 自己意識化している可能性がある。その際の「よ い」は、学生の体験の中で意味づけられた価値観に 照らして判断を下し、評価したと考える。和泉3 は、原則の倫理という考え方のなかでは、専門領域
の中で重要な意味をもつ価値(倫理原則)を明らか にし、それを判断の拠り所とすると述べている。つ まり、看護師の倫理的行為を判断する根拠として倫 理原則があるといえる。本研究は、学生が「よい看 護師」と捉えた看護師の行為を明らかにするもので あるため、倫理原則の視点が適していると考えた。
「よい看護師」の先行研究は、患者4、患者家族5、 看護師6、学生7の視点、教科書の変遷8などが存在 するが散見するのみである。看護学生の視点からの 先行研究は、山口ら (p.122)7が、学生からみた「よ い看護師」の特質は、看護師の持つ『印象』、看護 師の『行為』、『行為』を行う看護師の『姿勢』、そ の奥にある『能力』であると報告している。先行研 究では、看護師の行為は、学生が「よい看護師」と 捉えることに影響していることを明らかにしている
3
.倫理的配慮研究者である教員が調査することで、対象者にバ イアスがかからないように研究者が担当する科目が 終了した後に行った。学生には口頭にて研究目的を 説明し、自由参加であること、参加・不参加により 不利益がないこと、得られたデータは個人が特定さ れないこと、研究目的以外には使用しないこと、研 究結果の発表・論文掲載等を所属施設の倫理綱領に 沿って説明し同意を得た。また、所属施設の倫理審 査委員会で承認を得た。(H23−001, 005)
Ϫ .結果
対象者のうち、31名から同意が得られた。学生が 選んだ「よい看護師」は31名、学生が記述した「よ い看護師」の総行為数は40で、15サブカテゴリ、8 カテゴリが抽出され、カテゴリ内の記述内容数と全 体に占める割合を算出した。以下、本文中の【 】は カテゴリ、『』サブカテゴリを示す。
1.【患者のニーズを探る】(10:25%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、患者に バイタルサインを測定しながら体調を聞き、患者の 反応や表情を見ながら情報収集を行っていた。ま た、ロビーに座っている患者に「大丈夫?」と声 をかけたり、悩んでいる患者にさりげなく声をかけ たりしていた。さらに、患者とコミュニケーション をとりながらケアをしたり、医師の診察介助をしな がら患者の気持ちを捉えたりしていた。それを基 に、患者に何が必要かアセスメントし、患者にとっ てどのようにしたら一番良いのかを考えていた。学 生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為は、『多 面的に観察』『患者の状況をアセスメント』で構成 された。
2.【患者のニーズに応える】(9:22.5%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、喘息発 作で辛い患者に安楽な姿勢がとれるように支えた り、冬でもベッド柵に触れている患者に「寒いだろ うから」と手袋を膨らませて患者に握らせていた。
また、患者に退院指導をする際には家での生活を質 問しながら行ったり、医師の説明を患者にわかりや すく繰り返し説明したりしていた。さらに、ナース コールが鳴った時には仕事を中断してすぐ対応して いた。学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為 は、『意図的に患者に寄り添う』『患者にわかりやす く説明する』『ナースコールを優先する』で構成さ れた。
が、「よい看護師」の具体的な行為は言及されてい ない。本研究ではまず、学生が「よい看護師」と捉 えた看護師の行為を明らかにする。次に、学生が、
「よい看護師」と捉えた行為がどのような根拠で判 断されたのかを倫理原則の枠組みを用いて明らかに することを目的とした。これは、教員が、学生の倫 理的行動の4つの要素9, 10(倫理的感受性、倫理的推 論、態度表明、実現)が向上するように支援するた めの基礎資料になると考える。
ϩ .研究方法 1
.研究デザイン本研究は、学生が「よい看護師」と捉えた看護師の 行為の記述から、学生が捉えた「よい看護師」の行 為と、その行為を倫理原則の枠組みを用いて分析 し、どの倫理原則が判断の根拠になったかを明らか にすることである。そこで、質的帰納的研究デザイ ンを用いた。
2
.対象者および研究方法対象者は、A短期大学看護学科2年生34名とし た。対象者は、1年次に選択科目として「倫理学」、
2年次に必修科目として「看護倫理」を履修し、倫 理原則や看護者の倫理綱領を中心に学習している。
臨地実習は「基礎看護学実習Ⅰ・Ⅱ」「高齢者実習
Ⅰ」「小児看護学実習Ⅰ」を履修している。調査期 間は、2010年10月。調査方法は、同意の得られた対 象者に自記式質問紙を配布し、「あなたが実習で出 会った看護師で、「よい看護師」と思った看護師の 行為について具体的に記載をお願いします」と質問 した。「よい看護師」については、研究者から定義 づけせず、対象者が捉えるままに記述してもらっ た。分析方法は、まず、学生が「よい看護師」と捉 えた看護師の行為の記述を読み返し、意味内容が類 似するものを集約しサブカテゴリとした。意味内容 を表す名前をつける作業を繰り返し、最終的に学生 が「よい看護師」と捉えた看護師の行為をカテゴリ として抽出した。また、カテゴリ内の記述内容数が 全体数に占める割合を算出した。次に、学生が「よ い看護師」と捉えた看護師の行為がどの倫理原則の 視点から判断されたのか明らかにするために、「よ い看護師」の行為の意味と倫理原則の枠組みを用い て分析し、分類した。分析作業は共同研究者と検討 を重ね、全員の同意を得ながら分析を進め、信頼性 の確保に努めた。
表:学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為と倫理原則の視点からみた価値判断の根拠
「よい看護師」の行為と捉える根 拠とみられる倫理原則/割合
カテゴリ(8)/
記述内容数:割合 サブカテゴリ(15)/記述内容数
善行の原則(47.5%)
患者のニーズを探る
(10:25%)
多面的に観察する(7)
患者の状況をアセスメントする(3)
患者のニーズに応える
(9:22.5%)
意図的に患者に寄り添う(3)
患者にわかりやすく説明する(5)
ナースコールを優先する(1)
誠実・忠誠の原則(35%)
社会人としてあるべき 対応をする(5:12.5%)
接遇ができている(4)
仕事をやり遂げる(1)
患者と誠実に関わる
(7:17.5%)
患者と目線を合わせる(3)
患者と笑顔で接する(4)
死者への配慮
(1:2.5%) 死亡した患者との関わりも配慮がある(1)
プライバシーを守る
(1:2.5%) 面会者へ患者のプライバシーを守りながら対応する(1)
無害の原則(10%) 危険を回避する
(4:10%)
周囲の状況に気を配っている(2)
転倒予防のための患者指導(1)
家族にも協力を求める(1)
自律尊重の原則(7.5%) 患者の意思を確認する
(3:7.5%) 意思疎通が困難な患者にも積極的に関わる(3)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、面会者 へ患者のプライバシーを守りながら対応していた。
学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為は、
『面会者へ患者のプライバシーを守りながら対応す る』で構成された。
7.【危険を回避する】(4:10%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、看護師 が廊下あるいは病棟を歩くときは病室の外から患者 が転倒していないか、患者がベッド居るか、医療機 器のアラームが鳴っていないかを見ていた。また、
患者が医師の許可がないのに車いすで移動し、転倒 しそうになったときは注意をし、それでも患者に危 険が及びそうなときには家族に状況を説明し協力を 求めていた。学生が「よい看護師」と捉えた看護師 の行為は、『周囲の状況に気を配る』『転倒予防のた めの患者指導』『家族にも協力を求める』で構成さ れた。
8.【患者の意思を確認する】(3:7.5%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、病気の ためうまく話せない患者の意図を確認したり、意思 疎通ができない患者にも積極的に話しかけていた。
学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為は、
3.【社会人としてあるべき対応をする】(5:12.5%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、病院で すれ違う人に挨拶をし、患者の布団をめくるときに は「寒くないですか?」と声をかけていた。また、
自分の体調がよくない日でも仕事をやり遂げてい た。学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為 は、『接遇ができている』『仕事をやり遂げる』で構 成された。
4.【患者と誠実に関わる】(7:17.5%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、患者の 相談に目線を同じにして親身に聞いていたり、一人 ひとりの患者の目線に立ち会話していた。また、自 分が忙しくても、患者が不機嫌でも笑顔で接してい た。学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為 は、『患者と目線を合わせる』『患者と笑顔で接す る』で構成された。
5.【死者への配慮】(1:2.5%)
学生が「よい看護師」と捉えた看護師は、死亡し た患者に生きている人のように対応していた。学生 が「よい看護師」と捉えた看護師の行為は、『死亡 した患者との関わりも配慮がある』で構成された。
6.【プライバシーを守る】(1:2.5%)
は、専門職として守るべき基本的な患者の権利であ り、これが保障されない限りは患者との信頼関係は 得られないという意味で、誠実・忠誠の原則に分類 した。学生は、看護師は社会人としての振る舞い と、専門職としての振る舞いの両方が必要であると 価値づけ、【社会人としてあるべき対応をする】【患 者と誠実に関わる】【死者への配慮】を示す看護師 の行為と、【プライバシーを守る】看護師の行為を
「よい看護師」と捉えたと考える。つまり、学生が
「よい看護師」と捉えた看護師の行為【社会人とし てあるべき対応をする】【患者と誠実に関わる】【死 者への配慮】【プライバシーを守る】は、倫理原則 からは、誠実・忠誠の原則が価値判断の根拠と見る ことができる。
3
.無害の原則無害の原則 (p.38)3 は、患者に対して害を及ぼす べきでないという看護師の責務を要求している。学 生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為【危険を 回避する】は、患者に起こりうる害を未然に回避す るという意味で無害の原則に分類した。無害の原則
(p.38)3 は医学の中では第一原則である。学生は、
看護師は患者の危険を回避することが重要であると 価値づけ、予測される【危険を回避する】看護師の 行為から「よい看護師」と捉えたと考える。つま り、学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為
【危険を回避する】は、倫理原則からは、無害の原 則 が 価 値 判 断 の 根 拠 と 見 る こ と が で き る。 害
(p.39)3 には積極的で意図的な害と、派生的な害の 両方が含まれる。学生は、看護師が患者に害を及ぼ さない行為からは「よい看護師」と捉えなかった。
学生は、看護師が患者に害を及ぼさないことは当然 として価値づけ、今後起こりうる危険を予測し、未 然に回避する看護の質を問う行為をする看護師を
「よい看護師」と捉えたのではないかと考える。
4
.自律尊重の原則自律尊重の原則 (p.41)3 は、患者が自由に自己決 定し、選択できることを尊重することを要求してい る。学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為
【患者の意思を確認する】は、患者の自己決定を支 援するために患者の意思の確認をすることは不可欠 な行為である意味で、自律尊重の原則に分類した。
大出12は、自律が難しい患者であっても耳を傾け、
できる限り意思を理解するようにすることがその人
『意志疎通が困難な患者にも積極的に関わる』で構 成された。
ϫ .考察
学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為を8カ テゴリに分類した。この行為の意味と倫理原則の枠 組みを用いて分析し、分類した結果から検討する。
1
.善行の原則善行の原則(p.39)3 は、患者の利益(その人が恩 恵をこうむること全般を含む)を意図した行為をな すことを要求しており、看護師がよく言う「患者の ために」がこれにあたるといわれている。学生が
「よい看護師」と捉えた看護師の行為【患者のニー ズを探る】【患者のニーズに応える】は、患者の最 善の利益を達成する行為という意味で善行の原則に 分類した。学生は患者にとって何が最善の利益であ るのか【患者のニーズを探る】ことを行い、意図的 に【患者のニーズに応える】看護師の行為を「よい 看護師」と捉えたと考える。つまり、学生が「よい 看護師」と捉えた看護師の行為【患者のニーズを探 る】【患者のニーズに応える】は、倫理原則から は、善行の原則が価値判断の根拠と見ることができ る。学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為 で、善行の原則に分類された記述内容の割合は全体 の約50%を占めた。学生が「よい看護師」と捉えた 看護師の行為は、善行の原則を価値判断の根拠とす る傾向があると考える。太田ら11は、学生は患者の 利益を第一に優先し、患者の立場に身を置いて倫理 問題を捉える傾向があったと述べている。学生は看 護師の行為が良きにつけ悪しきにつけ、善行の原則 を根拠として価値判断をする傾向があると示唆され た。
2
.誠実・忠誠の原則誠実・忠誠の原則 (p.42)3 は、患者との信頼関係 を築くうえで、誠実で正直であり続けることを要求 している。学生が「よい看護師」と捉えた看護師の 行為【社会人としてあるべき対応をする】【患者と 誠実に関わる】【死者への配慮】は、一人の社会人 としてのモラルをもって患者と誠実に関わること は、患者との信頼関係を築き、それは、患者の生死 に係らず行うべき行為であるという意味で、誠実・
忠誠の原則に分類した。また、学生が「よい看護 師」と捉えた看護師の行為【プライバシーを守る】
Ϭ .結論
1 .学生が「よい看護師」と捉えた看護師の行為 は、【患者のニーズを探る】【患者のニーズに応え ようとする】【社会人としてあるべき対応をする】
【患者と誠実に関わる】【死者への配慮】【プライ バシーを守る】【危険を回避する】【患者の意思を 確認する】の8カテゴリに分類された。
2 .学生が「よい看護師」と捉えた看護師のこれら の行為は、倫理原則からは、善行の原則、誠実・
忠誠の原則、無害の原則、自律尊重の原則が価値 判断の根拠と見ることができる。
ϭ .本研究の限界と今後の課題
本研究のデータは、一短期大学の看護学生から得 られたものであり、倫理原則の視点からのみ分析し たものであり限界がある。今後は、他の視点からの 分析も必要である。
引用文献
1 . 本間玲子:自己形成過程に関する倫理的考察―理
想自己の問題を中心に―,自己意識研究の現在 2,53−76,京都,ナカニシヤ出版,2005.
2 . 梶田叡一:自己意識の心理学 第2版,78−94,
東京,東京大学出版会,1988.
3 . 小西恵美子編集:看護倫理 よい看護・よい看護
師への道しるべ,37,東京,南江堂,2010.
4 . 小西恵美子,和泉成子:患者からみた「よい看護
師」 その探求と意義,生命倫理,16 (1), 2006,
46−51.
5 . 倉林しのぶ:「よい」という概念の探求 死別を体
験した患者家族にとっての「よい看護師」とは,日 本看護倫理学会誌,2 (1),2010,23−29.
6 . 小西恵美子,小野美喜:喜び・苦悩・学び 若手
看護師のよい・よくない看護師の体験から,日本 看護倫理学会誌,3 (1),2011,11−18.
7 . 山口香里,安部恭子,小西恵美子:臨地実習を通
して看護学生がみた「よい看護師」,日本看護学 論文集(看護教育),38,2008,120−122.
8 . 小野美喜,小西恵美子,八尋道子:明治から現代
までの教科書に記載された「よい看護師」の変遷,
日本看護倫理学会誌,2 (1),2010,15−22.
9 . 高田早苗:看護倫理をめぐる論議,平成15年版看
護白書,4−15,日本看護協会出版会,2003.
10 . Waithe, M.E., et. al. Developing Case Situations for Ethics Education in Nursing, Journal of Nursing Education, 28 (4), 175−180, 1989.
の尊厳へのケアであると述べている。学生は意思疎 通が困難な患者に耳を傾けることがその人の自己決 定を支えると価値づけ、できる限り【患者の意思を 確認】し、理解しようとする看護師の行為を「よい 看護師」と捉えたと考える。つまり、学生が「よい 看護師」と捉えた看護師の行為【患者の意思を確認 する】は、倫理原則からは、自律尊重の原則が価値 判断の根拠と見ることができる。佐藤13は、基礎看 護学実習を終了した看護大学の1、2年生が捉えた 倫理問題から、個人の尊厳を守ることや自分の身体 に起こる事柄を決める権利などが多く抽出されたと 報告している。つまり、先行研究からは、学生が捉 えた倫理的問題は、自律尊重の原則の視点が多かっ たといえる。本研究結果から、学生は、倫理的問題 だけでなく、「よい看護師」を捉えるときも自律尊 重の原則を根拠に価値判断の根拠と見ることができ る。
5
.公正・正義の原則公正・正義の原則 (p.42)3 は、どの患者にも平等 に看護を提供することだけでなく、患者の正当な持 ち分を公平に分配するということを要求している。
公正・正義の原則に分類された「よい看護師」と捉 えた看護師の行為はなかった。つまり、学生が、倫 理原則からは、公正・正義の原則を価値判断の根拠 として「よい看護師」と捉えた看護師の行為は表れ なかったと見ることができる。学生は、実習では大 部分の時間を一人の受け持ち患者と関わっている。
学生は、自分の受け持ち患者に対する看護師の看護 行為を見学する機会がある。その中で、看護師が患 者に対してどのような看護行為をしているのかにつ いては、十分に体験していると考える。しかし、現 在の実習方法では、学生が他の患者に対する看護師 の看護行為を見る機会は少なく、公正・正義の原則 の葛藤が起きる可能性が低いと考える。また、シャ ドウ実習等で、看護師が複数の患者に看護している 姿を見学する機会があっても、学生はその看護師が 担当する複数の患者の情報や経過、看護について理 解することは難しいと推察される。そのため、看護 師がどの患者にも平等に看護を提供すること、患者 の正当な持ち分を公平に分配することに配慮してい ることを実体験する機会は少ない傾向にあると考え る。そのことが、公正・正義の原則に分類された
「よい看護師」と捉えた看護師の行為はないという 結果につながったと示唆された。
察―,日本看護倫理学会誌,4 (1),2012,43−45.
13 . 佐藤友美:学生が捉えた倫理的問題―基礎看護学
実習の体験の中で―,日本看護科学会誌,25 (3),
2005,92−95.
11 . 太田浩子,真壁幸子,古城幸子,白神佐知子,土
井英子,栗本一美,他:看護学生の倫理的感受性 の変化への臨地実習の影響(その1)MSTを用い た分析,臨床看護研究,11 (1),2004,3−8.
12 . 大出順:尊厳と QOL ―一つの事例を通しての考