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脳卒中の外科 38: 403 ~ 408,2010 原 著 脳動脈瘤 clipping 術における術中視覚誘発電位モニタリング 佐々木達也 1, 西嶌美知春 1, 金森政之 1, 川口奉洋 高沢弘樹 1, 米澤慎悟 1, 面高俊介 1, 板倉毅 佐藤拓 2, 佐久間潤 2, 齋藤清 In

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脳卒中の外科 38: 403 ~ 408,2010

 原  著 

脳動脈瘤 clipping 術における術中視覚誘発電位モニタリング

佐々木達也

1

,西嶌美知春

1

,金森 政之

1

,川口 奉洋

1

高沢 弘樹

1

,米澤 慎悟

1

,面高 俊介

1

,板倉  毅

2

佐藤  拓

2

,佐久間 潤

2

,齋藤  清

2

Intraoperative Monitoring of Visual Evoked Potential in

Aneurysmal Clipping

Tatsuya SaSaki, M.D.,1 Michiharu NiShijima, M.D.,1 Masayuki kaNamori, M.D.,1

Tomohiro kawaguchi, M.D.,1 Hiroki Takazawa, M.D.,1 Shingo YoNezawa, M.D.,1

Shunsuke omodaka, M.D.,1 Takeshi iTakura, B.S.,2 Taku SaTo, M.D.,2

Jun Sakuma, M.D.,2 and Kiyoshi SaiTo, M.D.2

1Department of Neurosurgery, Aomori Prefectural Central Hospital, Aomori, and 2Department of Neurosurgery, Fukushima Medical University, Fukushima, Japan

Summary: To clarify the usefulness of intraoperative monitoring of visual evoked potentials (VEPs) in aneurysm surgery, we examined the correlation between the VEP amplitude and postoperative visual function in patients who underwent aneurysmal clipping.

We developed a new light-stimulating device and introduced electroretinogram (ERG) to ascertain retinal light stimulation under total venous anesthesia. The new stimulating device consists of 16 red light-emitting diodes embedded in a soft silicon disk to avoid deviation of the light axis after frontal scalp-flap reflection. Under total venous anesthesia with propofol, ERG and VEP were recorded in 50 patients who were at intraoperative risk for visual impairment. Stable ERG and VEP recordings were obtained in 98 eyes. In one eye, stable ERG was recorded but VEP could not be obtained, because the eye manifested severe preoperative visual dysfunction. In the another eye, the disappearance of ERG and VEP after frontal scalp-flap reflection suggested technical failure attributable to deviation of the light axis. The criterion for amplitude aggravation was defined as a 50% decrease in amplitude compared to the control level. Of 93 eyes without amplitude changes, 2 manifested improved visual function postoperatively and 91 showed no change. Of 3 eyes with intraoperative VEP deterioration and subsequent recovery upon changing the operative maneuver 3 exhibited no change. The VEP amplitude decreased without subsequent recovery to 50% of the control level in both eyes of 1 patient, and she developed homonymous quadrant hemianopsia postoperatively.

With the strategy introduced here it is possible to record stable VEP in almost all cases without severe visual dysfunction. In some patients, postoperative visual deterioration can be avoided by intraoperative VEP monitoring. All patients without an intraoperative decrease in the VEP amplitude were without postoperative deterioration in visual function, suggesting

Key words:

・visual evoked potential ・intraoperative monitoring ・visual function

・electroretinogram ・propofol Surg Cereb Stroke (Jpn) 38: 403–408, 2010

1青森県立中央病院 脳神経外科,2福島県立医科大学 脳神経外科(受稿日 2010. 1. 4)(脱稿日 2010. 6. 17)〔連絡先:〒030–8553 青

森市東造道 2–1–1 青森県立中央病院 脳神経外科 佐々木達也〕[Address correspondence: Tatsuya Sasaki, M.D., Department of Neurosurgery, Aomori Prefectural Central Hospital, 2–1–1 Higashi-tsukurimichi, Aomori 030–8553, Japan]

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は じ め に 脳動脈瘤 clipping 術の術後に視力視野障害が出現する ことがあり,失明した症例の報告も散見される1)4).また, 脳動脈瘤の mass effect や破裂によって視機能障害を呈す る症例1)10)では視機能の回復や温存が重要な課題である. このような症例において視覚誘発電位(visual evoked potential, VEP)の術中モニタリングが可能であれば,視 機能障害を回避できる可能性があると思われる.われわれ は新しい光刺激装置を開発し,網膜電図(electroretino-gram, ERG)を導入し,propofol による全静脈麻酔を使用 することにより,臨床的に有用な VEP モニタリングが可 能になったことを報告してきた6–9).今回は脳動脈瘤 clip-ping 術における術中 VEP モニタリングに焦点を絞り,術 中 VEP 所見と術後視機能の相関について検討したので, 若干の考察を加え報告する. 対象および方法 2004 年から 2009 年までに脳動脈瘤開頭 clipping 術を施 行した 50 例 100 眼において術中 ERG および VEP のモニ タリングを施行した.動脈瘤の部位は内頚動脈瘤 28 例, 前交通動脈瘤 14 例,中大脳動脈瘤 5 例,多発性脳動脈瘤 3 例であった.内頚動脈瘤の 28 例中 8 例は前床突起の削 除および視神経管の開放を施行した眼動脈瘤または上下垂 体(superior hypophyseal artery, SHA)動脈瘤であった. 光刺激装置は独自に開発したものであり,赤色の 100 mCd の 高 輝 度 発 光 ダ イ オ ー ド(light emitting diode, LED)を 16 個並べ,刺激装置の出力は可変式で,光刺激 装置の表面の照度を 500–20,000 Lx まで変化させうるもの とした.また,前頭部の頭皮翻転の際に刺激装置の光軸が ずれにくいように,LED を固定する基板には柔らかい直 径 2 cm の円形のシリコンを用いた.また,刺激回路の故 障により光刺激が持続的になった場合,4 秒で回路が切れ るような安全装置を付けた(Fig. 1 upper left, ユニークメ ディカル,東京,薬事承認番号 220AGBZX00297000). 麻 酔 は propofol(1.5–2 mg/kg)お よ び fentanyl(2 μg/ kg)の静注で導入し,propofol(6–10 mg/kg/hr)で維持し, fentanyl(2 μg/kg)または remifentanil(2 μg/kg)を 1 時 間ごとに追加し,吸入麻酔薬は使用しなかった.麻酔導入 後に両側の眼瞼を閉じ透明な eye patch を貼り,その上 に LED の光刺激装置を装着し,さらに透明な eye patch で密閉した(Fig. 1 upper right).ERG の記録は外眼角皮 下の針電極から導出し,対側の外眼角の電極を基準電極と した(Fig. 1 lower).VEP の記録電極は外後頭隆起より 4 cm 上方,4 cm 外側の両側後頭部の皮下に針電極を刺入 し,基準電極は両側乳様突起部の皮下に刺入した針電極と した(Fig. 1 lower). 加算はシグナルプロセッサー(Synax 1100,NEC メ ディカルシステムズ,東京,または Neuropack,日本光電, 東京)を用い,刺激の持続時間は 20 msec で,刺激頻度は 1 Hz,加算回数は 100 回で,1 回の記録に 1 分 40 秒を要 した.分析時間は 200 msec で,フィルターは 20–500 Hz とした. 手術開始前に左右の眼を別々に刺激し,control 波形を 記録してから手術を開始した.光刺激の強度は ERG が最 that intraoperative VEP monitoring may help to prevent postoperative visual dysfunction in

aneurysmal clipping.

Fig. 1 upper left: Our light-stimulating device contains 16 red high-power LEDs (100 mCd) embedded in a 2-cm diameter soft silicone disc.

upper right: The stimulating device is placed on the closed eyelids, and needle electrodes for ERG recording are inserted subcutaneously at the 2 lateral canthi.

lower: Schematic drawing of setting for ERG and VEP recordings.

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大振幅となる刺激強度とし,通常 2,000–5,000 Lx の照度を 用いたが,皮弁翻転後に ERG が消失したり,振幅が低下 する場合には ERG を観察しながら照度を 20,000 Lx まで 上昇させ,かつ軟らかい基板の方向を変化させ control 波 形と同様の波形が得られるまで皮弁を少しずつ移動し状態 の良い所で固定した.記録は 2 回以上行い,波形の再現性 を確認した. VEP の評価は,100 msec 前後の多相波のうち最大振幅 を有する陰性頂点に注目し,その前の陽性頂点との電位差 を振幅と定義した.振幅悪化の判断基準は 50% 以上の低 下と定義し,振幅の 50% 以上の低下を認めた場合に術者 に警告を発した.振幅が悪化した症例では最大陰性頂点の 潜時の変化についても検討した. 検討項目は,1)ERG および VEP の記録率について,2) 再現性のある VEP が記録できた症例における,術中 VEP 所見と術後視機能との相関についてである.術後視機能は 術後約 2 週間の神経眼科的検査によって評価した.なお, 本稿における視力の記載はすべて矯正視力とした. 結   果 1.ERG および VEP の記録率 100 眼中 98 眼で再現性のある ERG および VEP が記録 可能であった.術中 VEP が記録できなかった 2 眼中 1 眼 は術前の視力が指数弁であった内頚動脈眼動脈分岐部動脈 瘤症例であった10).ERG は再現性良好であったが VEP は 最初から平坦であった.ERG の再現性が良好で,網膜に 十分な光刺激が到達していることを確認できたことを考え ると,VEP が記録できなかった理由は,技術的な問題で はなく,視神経の障害によるものと判断できた.残る 1 眼 は皮弁翻転後に ERG,VEP ともに消失した症例で,光刺 激装置の光軸を調整中に光刺激装置に故障をきたし,記録 ができなかった technical failure の症例であった. なお,ERG および VEP 記録による合併症は皆無であっ た. 2.術中 VEP 所見と術後視機能との相関 再現性のある VEP が記録でき,モニタリング可能で あった 98 眼中,振幅が増大した症例はなかった. VEP 振幅が不変であったのが 98 眼中 93 眼であった. 93 眼の術後視機能は改善 2 眼,不変 91 眼であった.改善 した 2 眼中 1 眼は直径 16 mm の未破裂左内頚動脈眼動脈 分岐部動脈瘤の症例で,術前に左眼の視力視野障害を認め た.左視神経は動脈瘤により挙上され菲薄化していた.左 前床突起および左視神経管の削除を行い,左頚部内頚動脈 を確保し suction decompression を用い,clipping した. 術中 VEP 振幅は drilling 後も clipping 後も変化を認めな かったが,術後に左視力視野障害は完全に回復した.改善 を示したもう 1 眼は直径 35 mm の巨大血栓化前交通動脈 瘤の症例であった.術前には右眼の視力視野障害と左眼の 軽度視野異常を認め,術中所見では脳動脈瘤は視交叉から 右視索にかけて強く癒着していた.VEP の振幅は不変で あったが,剝離操作は危険と考え,血栓除去による減圧に とどめた.術後動脈瘤は造影されず,右眼の矯正視力およ び視野の改善が得られ独歩退院した7).なお,眼動脈瘤ま たは SHA 動脈瘤で前床突起の削除および視神経管の開放 を施行した 8 眼で削除中に VEP 振幅が変化した症例は皆 無であった. VEP の振幅が低下したが,その原因と思われた手術操 Table 1  Profiles of 4 patients in whom the intraoperative VEPs deteriorated

Case Age/Sex Lesions Side Amplitude (control%)/ Final amplitude (control%)/ Cause of VEP Postoperative No. Latency (delay) Final latency (delay) deterioration visual function Transient deterioration

1 48/M rt ICA-SHA AN rt disappeared/NA 70%/no change clipping no change (non-ruptured)

2 36/F rt ICA-SHA AN rt disappeared/NA 80%/10 msec clipping no change (ruptured)

3 64/M rt ICA-OphA AN rt 50%/10 msec 100%/no change rt optic nerve no change

(non-ruptured) dissection

Permanent deterioration

4 72/F rt ICA-PcoA AN rt disappeared/NA 40%/no change TO of neck ICA lt upper (ruptured) (90 sec×3) quadrantanopsia

lt disappeared/NA 40%/no change and clipping lt upper quadrantanopsia AN aneurysm, NA: not available due to remarkable waveform changes, TO: temporary occlusion, ICA: internal carotid artery, SHA: superior hypophyseal artery, OphA: ophthalmic artery, PcoA: posterior communicating artery

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作を中止または変更することにより回復したのが 3 眼で, 術後視機能は 3 眼とも不変であった(Table 1).3 眼中 2 眼は SHA 動脈瘤の症例で,clipping により SHA の血流 不全をきたし,その結果視神経の虚血をきたしたものと思 われた.clip を抜去することにより 2 眼ともに VEP 振幅 は回復し,SHA を microscope 下に確認し,温存するよう な形で clip をかけ直し,VEP の振幅も低下せず,術後視 機能障害も出現しなかった.他の 1 眼は内頚動脈眼動脈分 岐部動脈瘤の症例で,動脈瘤と視神経の剝離操作中に振幅 が低下し,剝離操作の中止により振幅は改善し,術後視機 能障害はきたさなかった(Table 1). VEP 振幅が低下し,手術終了時まで回復が不良であっ た 1 例(2 眼)は破裂右内頚動脈後交通動脈分岐部動脈瘤の 症例で,術後 CT にて右内包膝部に梗塞巣が出現し,中心 視野を含む 1/4 左上同名半盲を認め,回復しなかった. VEP 振幅低下の原因は頚部内頚動脈の圧迫と clipping 操 作によるものと思われた.なお,術中運動誘発電位は一過 性の消失で改善し,術後に一過性の軽度の片麻痺(MMT Fig. 2 left: 3D-CTA showed a right IC-SHA aneurysm projecting medially (poor study due

to motion artifact). center: An anterior-posterior view of right CAG revealed the aneurysm. right: A lateral view of right CAG revealed the aneurysm.

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4/5)を認めたが,翌日には改善した(Table 1)7)

以下に代表症例を呈示する.

case 2(Table 1):36 歳,女性.破裂右内頚動脈 SHA 分岐部動脈瘤の症例である(Fig. 2).VEP モニタリング下 に開頭 clipping 術を施行した.頚部頸動脈を圧迫できる ように頚部を術野に出しておいた.頚部で右内頚動脈を圧 迫したのちに straight の clip で動脈瘤を clipping した. 内頚動脈の圧迫は 3 分間で解除したが,clipping 後に右眼 刺激 VEP の振幅が左右ともに徐々に低下し,20 分後には 平坦になった(Fig. 3).なお,左眼刺激 VEP にはまった く変化を認めなかった.動脈瘤の proximal neck を観察 すると clip により SHA が閉塞していた.ただちに clip を rotate するようにして clipping しなおすと,SHA の血流 が戻った.20 分後には右眼刺激 VEP の振幅は左右ともに control の 約 50% ま で 回 復 し,30 分 後 に は control の 約 80% まで回復した.術後に視力視野異常を認めなかった. 考   察 術中 VEP モニタリングに関する初めての報告は,1973 年 Wright ら13)が眼窩内腫瘍の症例に視神経障害の予防の ために応用したものである.その後も VEP の術中モニタ リングが試みられてきたが,術中に安定した電位の記録が 困難で,視覚路以外の手術操作時にも著明な変動をきた し,最も信頼できないモニタリング法のひとつであった. われわれも 1987 年以来術中 VEP を施行してきたが,前 頭部の皮弁翻転後に VEP が消失したり,視覚路周囲の操 作をしていないにもかかわらず,VEP が変動することが 頻繁にみられた5).われわれが当時使用していた光刺激器 は,LED を取り付けた基板が硬い平板状でまったく flexi-bility がなかったため,頭皮翻転などにより光軸がずれて しまい,十分な光量が網膜に当たらなくなったことが考え られた.そこで,まず光刺激装置の改良を行った.次に, 網膜に光刺激が到達していることを持続的に確認できる ERG の記録を追加した.ERG の追加により皮弁翻転後の VEP の消失は網膜に光刺激が到達しなくなったためであ ることが確認できるようになり,視機能障害が高度の症例 で ERG が 記 録 で き て VEP が 記 録 で き な い 場 合 に は, VEP が記録できない理由は視神経より中枢の視機能障害 のためであることを理解できるようになった.また,吸入 麻酔薬による VEP の変動を防ぐために propofol による全 静脈麻酔を採用したところ,再現性が非常に良好になり, VEP の軽微な変化をとらえることが可能となった.以上 の工夫により精度の高い VEP モニタリングが可能となり, 臨床的に有用といえる段階にきており,VEP により視神 経から後頭葉に至る全視覚路の障害を探知することが可能 となった6–9).血流不全としては視神経を栄養する SHA2)3)8) 9)や後大脳動脈3)の血流不全をとらえられることが報告さ れている. われわれの症例では,術中 VEP の振幅が低下したもの の手術操作の中止・変更により振幅が回復したのが 3 眼 で,術後の視機能は全例不変であった.これら 3 眼では VEP をモニタリングしていなければ,術後に視機能障害 をきたしていた可能性があり,モニタリングが有用であっ た症例と思われた.振幅低下をきたした理由は視神経の剝 離操作による機械的な障害が 1 眼,SHA の血流不全と思 われたのが 2 眼であった.これらの 3 眼では VEP 振幅低 下をきたしたことを術者に伝え,手術操作を中止または変 更することにより振幅が改善していた.特に Goto らの報 告2)と同様に SHA の血流不全を VEP にてとらえた症例が 2 例あり,VEP をモニタリングしていなければ高度の視 機能障害が出現した可能性11)があったものと考えている.

このように術中 VEP の変化により手術操作に feed back できる点がモニタリングとして有用な点と考えられる. 症状が残存した 1 例 2 眼は視索の虚血をとらえた症例 で,後交通動脈の穿通枝である前視床穿通動脈の閉塞を否 定できないが,頚部内頚動脈を圧迫した際に同時にモニタ リングしていた運動誘発電位が一過性に消失したため,前 脈絡叢動脈末梢部の細い枝の虚血をきたした可能性がある と考えている. 記録された VEP の評価に関しては,100 msec 付近に出 現する最大振幅の陰性波に着目してその振幅の変化につい て検討した.VEP の波形は個人差が大きく,また視機能 障害により大きく変化するので,症例間での波形の比較検 討は不可能であった.しかし,同一症例の同一側の術中 VEP に限ってみると再現性は非常に良好であり,今回記 録可能であった 98 眼では振幅の低下を明確にとらえるこ とが可能であった.潜時についても同様に検討したが,振 幅を保ったまま潜時のみが変化した症例はなく,振幅低下 をきたした場合,波形の変化や再現性が不良になり潜時の 評価が困難になった症例を多く認めた.それゆえ現段階で は術中変化の指標は振幅の増減に注目すべきと考えてい る. われわれはこれまで経験した 50 症例において前述した 刺激および記録条件でモニタリングを施行してきた.pro-pofol による全静脈麻酔により軽微な振幅の低下をとらえ られるようになったが,術中に 20% 程度の振幅の変動が みられる症例もあり,文献的にも吸入麻酔薬よりは変動が 少ないが,いまだに再現性に問題があるという指摘もあ る12).また,1 回の記録に 1 分 40 秒を要しており,real time モニタリングには程遠いという問題もある.手術中 には bipolar forceps の使用など VEP の記録ができない状 況もよくあり,手術操作によっては 1 回の記録に 5 分以上

(6)

を要することもあった.今後は刺激および記録条件の再検 討を行い,なるべく短時間で再現性の良好な波形を得られ るような工夫が必要であると考えている. 結   論 新しい光刺激装置を用い,ERG の記録を加え,propofol による全静脈麻酔を用いた結果,術前から高度の視機能障 害を認める症例を除けば,ほぼ確実に VEP のモニタリン グが可能となった.VEP 振幅に変化がない場合,術後に 視機能障害は出現しなかった.VEP の術中モニタリング により視機能障害を回避しえたと思われる症例を 3 例経験 した.術中 VEP の振幅が低下し回復しなかった 1 例 2 眼 では術後に視野障害が出現した.以上より,種々の工夫を 加えた本モニタリング法は,脳動脈瘤 clipping 術後の視 機能障害の防止ために有用な方法であると思われた. 文   献

1) Day AL: Aneurysms of the ophthalmic segment. A clin-ical and anatomclin-ical analysis. J Neurosurg 72: 677–691, 1990

2) Goto T, Tanaka Y, Kodama K, et al: Loss of visual evoked potential following temporary occlusion of the superior hypophyseal artery during aneurysm clip place-ment surgery. J Neurosurg 107: 865–867, 2007

3) 児玉邦彦,後藤哲哉,佐藤 篤,ほか:脳動脈瘤クリッピ ング術における術中視覚誘発電位モニタリングの有用性. 脳卒中の外科 36: 350–354, 2008

4) Rizzo JF 3rd: Visual loss after neurosurgical repair of paraclinoid aneurysms. Ophthalmology 102: 905–910, 1995 5) 佐々木達也,佐藤正憲,鈴木恭一,ほか:上位脳神経の術 中モニタリング.脳神経外科ジャーナル 10: 99–103, 2001 6) 佐々木達也,市川 剛,佐久間 潤,ほか:視覚誘発電位 . 麻酔 55: 302–313, 2006 7) 佐々木達也,鈴木恭一,佐久間 潤,ほか:種々の術中モ ニタリングを用いた脳動脈瘤術後の虚血合併症の予防.脳 卒中の外科 37: 79–86, 2009

8) Sasaki T, Itakura T, Suzuki K, et al: Intraoperative monitoring of visual evoked potential: introduction of a clinically useful method. J Neurosurg 112: 273–284, 2010 9) 佐々木達也,西嶌美知春,板倉 毅,ほか:視機能の術中 評価.臨床脳波 51: 737–746, 2009 10) 佐藤 拓,佐々木達也,佐久間 潤,ほか:視神経を分割 していた内頚動脈─眼動脈動脈瘤の 1 破裂例.脳神経外科 37: 375–380, 2009 11) 田中雄一郎,徳重一雄,本郷一博,ほか:両側上下垂体動 脈閉塞で視障害を生じたと考えられる 2 症例.脳卒中の外 科 37: 133–136, 2009

12) Wiedemayer H, Fauser B, Armbruster W, et al: Visual evoked potentials for intraoperative neurophysiologic monitoring using total intravenous anesthesia. J Neuro-surg Anesthesiol 15: 19–24, 2003

13) Wright JE, Arden G, Jones BR: Continuous monitoring of the visually evoked response during intraorbital sur-gery. Trans Ophthalmol Soc UK 93: 311–314, 1973

Fig.  1 upper  left:  Our  light-stimulating  device  contains  16  red  high-power  LEDs  (100  mCd)  embedded  in  a  2-cm  diameter  soft  silicone  disc.
Fig.  3 Intraoperative  changes  of  right  stimulating VEP  in  Case  2.

参照

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