平成
28年7月
発注者のエンジニアリング
澤 田 雅 之
澤田雅之技術士事務所(電気電子部門)
〜 零戦と都心部用ドローン検知システムをモデルとして 〜
オープンイノベーションを成功させる
所長
オープンイノベーションとは
技術革新が著しい分野で、優れた特注
品を創り出す場合に大変役立つ。
特注品の研究開発を
広く外部に求めること
自社内で研究開発体制を整えるよりも
効率的で、結果も早く出せる。
⇨
⇨
オープンイノベーション成功の鍵
研究開発に最適なベンダー
を、早く見つけ出すこと
これが、
発注者のエンジニアリング
⇩
これには、
発注者ならではの
技術的な手腕の発揮
が必要
⇩
発注者のエンジニアリング
ニーズとシーズをベストマッチング
できる技術仕様書の作成が鍵!
ニーズ
: 発注者が特注品に求める機能と性能
シーズ
: ベンダーが保有する詳細設計と製造
のノウハウ
技術革新が著しい分野で、
優れた特注品を創り出すには、
適切な『発注者エンジニアリング』
が欠かせません!!
過去最大の成功事例は、
『零戦』
☆
☆
☆
☆
『零戦』
は、20世紀の世界地図を
塗り替えた、純国産の工業製品
昭和15年から約2年間、 零戦は欧米の
戦闘機を圧倒
→
東南アジアから欧米
の軍事力を駆逐
→
第二次大戦後、アジ
アの諸国が欧米の植民地から独立
『零戦』
は、20世紀の世界地図を
塗り替えた、純国産の工業製品
発注者【旧日本海軍】 が、
ベンダー【航空機メーカー】 に求めたのは、
実現が容易ではないが不可能ではない高性能
理想的な発注者エンジニアリング!
旧日本海軍の発注者エンジニアリング
は
2
種類
海軍航空技術廠の技術将校(大学の航空工学科
出身)が作成した詳細設計図(構成、構造の設計図)
に基づき、航空機メーカーに製造を発注
実現を求める機能要件と性能要件を網羅した計画
要求書を海軍が作成し、航空機メーカーに詳細設計
と製造を発注
1 海軍で詳細設計して製造を発注
2 海軍で計画要求書を作成して詳細設計と製造を発注
艦上爆撃機「彗星」、 陸上爆撃機「銀河」
「零戦」
、一式陸上攻撃機、局地戦闘機「紫電改」
海軍航空技術廠の技術将校(大学の
航空工学科出身)が作成した詳細設
計図(構成、構造の設計図)に基づき、
航空機メーカーに製造を発注
1 海軍で詳細設計して
製造を発注
出典 : Wikipedia
海軍航空技術廠の技術将校(大学の航空工学
科出身)が作成した詳細設計図(構成、構造の
設計図)に基づき、航空機メーカーに製造を発注
1 海軍で詳細設計して製造を発注
⇨
海軍が求める性能を実現する責任は、
詳細設計を行った海軍自らに在る。
⇨
社内研究開発と同じ
⇨
航空機メーカーは、海軍の詳細設計図
どおりに製造すれば良い。
実現を求める機能要件と性能要件を
網羅した計画要求書を海軍が作成し、
航空機メーカーに詳細設計と製造を
発注
2 海軍で計画要求書を作成
して詳細設計と製造を発注
零戦
1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史
零戦の計画要求書(=技術仕様書)
実現を求める機能要件と性能要件を網羅した計画要求書を海
軍が作成し、航空機メーカーに詳細設計と製造を発注
2 海軍で計画要求書を作成して
詳細設計と製造を発注
⇨
海軍が求める性能を実現する責任は、詳
細設計を行った航空機メーカーに在る。
⇨
オープンイノベーションと同じ
海軍は、最先端の技術動向と現場が抱え
る課題を踏まえ、性能要件間のトレードオ
フ関係も考慮して、実現が容易ではないが
不可能ではな
い計画要求書を作成した。
⇨
1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史
零戦の計画要求書(=技術仕様書)
零戦の計画要求書から学ぶべき点
2
発動機出力、翼面積、機体重量、機体寸法など、
詳細設計の
範疇については一切言及していない
。
3
計画要求書の作成時点では
実現が極めて困難と思われるほ
どの、世界最高水準の性能を求めている
。
1
航空機メーカーが
詳細設計する上で必要十分となる性能要件
が、具体的な数値目標としてリストアップされている
。
4
計画要求書の「
2. 最大速力」、「4. 航続力」及び「8. 空戦性能」
については、
互いにトレードオフの関係にあることをよく踏まえ
て、実現が不可能ではないぎりぎりの性能要件を掲げている
。
5
数値目標を掲げることが困難な「
8. 空戦性能」については、計
画要求書の作成時点において
空戦性能に最も優れていた国産
機を例示することにより、設計目標を具体的に示している
。
発注者に欠かせない技術的な力量
ニーズの把握力
→
今日の技術を用いれ
ば解決できる発注者側の課題を把握する力
◎
◎
シーズの把握力
→
最先端の技術動向を
把握する力
◎
シーズとニーズのマッチング力
→
課題解
決に適する技術を選択し、 その活用で期待
される効果を的確に予見する力
⇨
これが、『発注者のエンジニアリング力』
1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史
理想的な技術仕様書(シーズとニーズのベストマッチング)
発注者である旧日本海軍は、
① 最先端の技術動向と現場が抱える課題の双方をよく研究し、
② 性能要件間のトレードオフ関係をよく勘案し、
③ 実現が決して容易ではないが不可能ではないぎりぎりの性能
要件をよく見究めて、
零戦の計画要求書を作成した。
零戦が成功した最大の秘訣
正に理想的な発注者エンジニアリング!!
零戦は、海軍による理想的な発注者エンジニアリング
があったからこそ、受注メーカーが詳細設計において
創意工夫を凝らすことができた賜物
*理想的な技術仕様書を作成するポイント*
2
詳細設計には踏み込まない
→
踏み
込めばベンダー側の設計自由度を狭め、 性能要
件の達成責任が不明確になる虞れ
1
詳細設計に欠かせない性能要件を全
てリストアップ
→
性能要件間のトレードオ
フ関係上も、実現が不可能ではないこと
3
事前に概要設計書を作成して発注者
側の意志を統一
→
概要設計書には、①
解決したい課題、②技術的な解決方策の概要、③
課題解決により期待される効果、を分かり易く記載
都心部の重要防護施設に適する
ドローン検知システムの
テロ手段としてのドローンの脅威
(1) 目立たずに発進可能
小型であれば、家や車の窓からでも発進可能
(2) 自律航行で目的地に到達可能
目的地の位置情報をドローンにセットして発進さ
せれば、
GPS衛星からの信号電波を受信して、自
動的かつ
m単位の誤差で目的地に到達可能
(3) 長距離を高速飛行可能
10km以上の距離を、時速50km以上で飛行可能
ドローンの飛行形態
(1) ラジコン装置を用いた無線操縦
操縦者がドローンの飛行状況を直視して、又は、ド
ローンに取り付けたカメラの映像を見ながら、ラジコン
装置でドローンを操縦。操縦用電波が届く
1〜2km程
度が無線操縦の限界。
(2) GPS信号を用いた自律航行
ドローンに到達させたい目的地の位置情報をセット
してドローンを発進。ドローンは、
GPS衛星からのGPS
信号電波を受信し続けることにより、自機の現在位
置と目的地の方位を自動的かつ連続的に確認しつ
つ、目的地まで自動的に航行。
夜間に飛来するドローンの検知方法
(1)
音響センサー
(2)
サーマルカメラ
(3)
レーダー
マイクで拾った周囲音の中から、ドローンのローター回転音に特有な音源 パターンをコンピュータで識別する仕組み。小型のドローンであれば100m程 の距離で、大型のドローンであれば500m程の距離で検知可能。 また、複数のマイクを組み合わせて、検知した連続音(ドローンとは限らな い)の到来方向や高度を判別する仕組みもある。 サーマルカメラで捉えた映像の中から、飛行する物体を自動的に検出する 仕組み。高精細なサーマルカメラを用いれば、数百m先を飛行中の小型の ドローンを20度程度のカメラ画角で目視判別可能。捉えた物体の形状を自 動的に解析してドローンか否かを判別する仕組みは未だ実現していない。 数km先を飛行中の小型のドローンの方位、高度及び距離を高精度で検知 可能。しかし、レーダー画像からは、捉えた物体がドローンか否かを判別で きないため、望遠レンズ付きのサーマルカメラを連動させてカメラで捉えた映 像から目視判別する必要がある。英
Blighter
社のドローン検知・追跡・妨害システム
出典 : Blighter社のWebサイト
フェーズドアレイレーダー
(Kuバンドで出力4W)で検知し、
サーマルカメラ
(冷却型でVGA画質)で追跡・確認して、
ジャミングにより航行を妨害
米
DroneShield
社のドローン検知システム
出典 : DroneShield社のWebサイト
音響センサー
(無指向性又は指向性)で飛行音
を検知し、音響解析により機種まで判別
沖電気工業
(
株
)
のドローン検知システム
出典 : 沖電気工業(株)のWebサイト音響センサー
(無指向性マイクを4本組み合わせ)により
連続音の飛来方向を判別し、ドー
ム型カメラの映像により目視確認
表示内容パナソニックのドローン検知システム
出典 : パナソニック システムネットワークス(株)のWebサイト