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H28オープンイノベーション(ドローン探知システム)講演用資料

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(1)

平成

28年7月

発注者のエンジニアリング

澤 田 雅 之

澤田雅之技術士事務所(電気電子部門)

〜 零戦と都心部用ドローン検知システムをモデルとして 〜

オープンイノベーションを成功させる

所長

(2)

オープンイノベーションとは

技術革新が著しい分野で、優れた特注

品を創り出す場合に大変役立つ。

特注品の研究開発を

広く外部に求めること

自社内で研究開発体制を整えるよりも

効率的で、結果も早く出せる。

(3)

オープンイノベーション成功の鍵

研究開発に最適なベンダー

を、早く見つけ出すこと

これが、

発注者のエンジニアリング

これには、

発注者ならではの

技術的な手腕の発揮

が必要

(4)

発注者のエンジニアリング

ニーズとシーズをベストマッチング

できる技術仕様書の作成が鍵!

ニーズ

: 発注者が特注品に求める機能と性能

シーズ

: ベンダーが保有する詳細設計と製造

のノウハウ

(5)

技術革新が著しい分野で、

優れた特注品を創り出すには、

適切な『発注者エンジニアリング』

が欠かせません!!

過去最大の成功事例は、

『零戦』

(6)

『零戦』

は、20世紀の世界地図を

塗り替えた、純国産の工業製品

昭和15年から約2年間、 零戦は欧米の

戦闘機を圧倒

東南アジアから欧米

の軍事力を駆逐

第二次大戦後、アジ

アの諸国が欧米の植民地から独立

(7)

『零戦』

は、20世紀の世界地図を

塗り替えた、純国産の工業製品

発注者【旧日本海軍】 が、

ベンダー【航空機メーカー】 に求めたのは、

実現が容易ではないが不可能ではない高性能

理想的な発注者エンジニアリング!

(8)

旧日本海軍の発注者エンジニアリング

種類

海軍航空技術廠の技術将校(大学の航空工学科

出身)が作成した詳細設計図(構成、構造の設計図)

に基づき、航空機メーカーに製造を発注

実現を求める機能要件と性能要件を網羅した計画

要求書を海軍が作成し、航空機メーカーに詳細設計

と製造を発注

1 海軍で詳細設計して製造を発注

2 海軍で計画要求書を作成して詳細設計と製造を発注

艦上爆撃機「彗星」、 陸上爆撃機「銀河」

「零戦」

、一式陸上攻撃機、局地戦闘機「紫電改」

(9)

海軍航空技術廠の技術将校(大学の

航空工学科出身)が作成した詳細設

計図(構成、構造の設計図)に基づき、

航空機メーカーに製造を発注

1 海軍で詳細設計して

製造を発注

(10)

出典 : Wikipedia

(11)

海軍航空技術廠の技術将校(大学の航空工学

科出身)が作成した詳細設計図(構成、構造の

設計図)に基づき、航空機メーカーに製造を発注

1 海軍で詳細設計して製造を発注

海軍が求める性能を実現する責任は、

詳細設計を行った海軍自らに在る。

社内研究開発と同じ

航空機メーカーは、海軍の詳細設計図

どおりに製造すれば良い。

(12)

実現を求める機能要件と性能要件を

網羅した計画要求書を海軍が作成し、

航空機メーカーに詳細設計と製造を

発注

2 海軍で計画要求書を作成

して詳細設計と製造を発注

零戦

(13)

1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史

零戦の計画要求書(=技術仕様書)

(14)

実現を求める機能要件と性能要件を網羅した計画要求書を海

軍が作成し、航空機メーカーに詳細設計と製造を発注

2 海軍で計画要求書を作成して

詳細設計と製造を発注

海軍が求める性能を実現する責任は、詳

細設計を行った航空機メーカーに在る。

オープンイノベーションと同じ

海軍は、最先端の技術動向と現場が抱え

る課題を踏まえ、性能要件間のトレードオ

フ関係も考慮して、実現が容易ではないが

不可能ではな

い計画要求書を作成した。

(15)

1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史

零戦の計画要求書(=技術仕様書)

(16)

零戦の計画要求書から学ぶべき点

発動機出力、翼面積、機体重量、機体寸法など、

詳細設計の

範疇については一切言及していない

計画要求書の作成時点では

実現が極めて困難と思われるほ

どの、世界最高水準の性能を求めている

航空機メーカーが

詳細設計する上で必要十分となる性能要件

が、具体的な数値目標としてリストアップされている

計画要求書の「

2. 最大速力」、「4. 航続力」及び「8. 空戦性能」

については、

互いにトレードオフの関係にあることをよく踏まえ

て、実現が不可能ではないぎりぎりの性能要件を掲げている

数値目標を掲げることが困難な「

8. 空戦性能」については、計

画要求書の作成時点において

空戦性能に最も優れていた国産

機を例示することにより、設計目標を具体的に示している

(17)

発注者に欠かせない技術的な力量

ニーズの把握力

今日の技術を用いれ

ば解決できる発注者側の課題を把握する力

シーズの把握力

最先端の技術動向を

把握する力

シーズとニーズのマッチング力

課題解

決に適する技術を選択し、 その活用で期待

される効果を的確に予見する力

これが、『発注者のエンジニアリング力』

(18)

1.用途:掩護戦闘機として敵軽戦闘機より優秀な空戦性能を備え、要撃戦 闘機として敵の攻撃機を捕捉撃滅しうるもの 2.最大速力:高度4000mで270ノット以上 3.上昇力:高度3000mまで3分30秒以内 4.航続力:正規状態、公称馬力で1.2乃至1.5時間(高度3000m)/過荷重状 態、落下増槽をつけて高度3000mを公称馬力で1.5時間乃至2.0時間、巡航 速力で6時間以上 5.離陸滑走距離:風速12m/秒で70m以下 6.着陸速度:58ノット以下 7.滑走降下率:3.5m/秒乃至4m/秒 8.空戦性能:九六式二号艦戦一型に劣らぬこと 9.銃装:20mm機銃2挺、7.7㎜機銃2挺、九八式射爆照準器 10.爆装:60㎏爆弾又は30㎏2発 11.無線機:九六式空一号無線電話機、ク式三号無線帰投装置 12.その他の装置:酸素吸入装置、消化装置など 13.引き起こし強度:荷重倍数7、安全率1.8 出典 :戦史叢書95海軍航空概史

理想的な技術仕様書(シーズとニーズのベストマッチング)

(19)

発注者である旧日本海軍は、

① 最先端の技術動向と現場が抱える課題の双方をよく研究し、

② 性能要件間のトレードオフ関係をよく勘案し、

③ 実現が決して容易ではないが不可能ではないぎりぎりの性能

要件をよく見究めて、

零戦の計画要求書を作成した。

零戦が成功した最大の秘訣

正に理想的な発注者エンジニアリング!!

零戦は、海軍による理想的な発注者エンジニアリング

があったからこそ、受注メーカーが詳細設計において

創意工夫を凝らすことができた賜物

(20)

*理想的な技術仕様書を作成するポイント*

詳細設計には踏み込まない

踏み

込めばベンダー側の設計自由度を狭め、 性能要

件の達成責任が不明確になる虞れ

詳細設計に欠かせない性能要件を全

てリストアップ

性能要件間のトレードオ

フ関係上も、実現が不可能ではないこと

事前に概要設計書を作成して発注者

側の意志を統一

概要設計書には、①

解決したい課題、②技術的な解決方策の概要、③

課題解決により期待される効果、を分かり易く記載

(21)

都心部の重要防護施設に適する

ドローン検知システムの

(22)

テロ手段としてのドローンの脅威

(1) 目立たずに発進可能

小型であれば、家や車の窓からでも発進可能

(2) 自律航行で目的地に到達可能

目的地の位置情報をドローンにセットして発進さ

せれば、

GPS衛星からの信号電波を受信して、自

動的かつ

m単位の誤差で目的地に到達可能

(3) 長距離を高速飛行可能

10km以上の距離を、時速50km以上で飛行可能

(23)

ドローンの飛行形態

(1) ラジコン装置を用いた無線操縦

操縦者がドローンの飛行状況を直視して、又は、ド

ローンに取り付けたカメラの映像を見ながら、ラジコン

装置でドローンを操縦。操縦用電波が届く

1〜2km程

度が無線操縦の限界。

(2) GPS信号を用いた自律航行

ドローンに到達させたい目的地の位置情報をセット

してドローンを発進。ドローンは、

GPS衛星からのGPS

信号電波を受信し続けることにより、自機の現在位

置と目的地の方位を自動的かつ連続的に確認しつ

つ、目的地まで自動的に航行。

(24)

夜間に飛来するドローンの検知方法

(1)

音響センサー

(2)

サーマルカメラ

(3)

レーダー

マイクで拾った周囲音の中から、ドローンのローター回転音に特有な音源 パターンをコンピュータで識別する仕組み。小型のドローンであれば100m程 の距離で、大型のドローンであれば500m程の距離で検知可能。 また、複数のマイクを組み合わせて、検知した連続音(ドローンとは限らな い)の到来方向や高度を判別する仕組みもある。 サーマルカメラで捉えた映像の中から、飛行する物体を自動的に検出する 仕組み。高精細なサーマルカメラを用いれば、数百m先を飛行中の小型の ドローンを20度程度のカメラ画角で目視判別可能。捉えた物体の形状を自 動的に解析してドローンか否かを判別する仕組みは未だ実現していない。 数km先を飛行中の小型のドローンの方位、高度及び距離を高精度で検知 可能。しかし、レーダー画像からは、捉えた物体がドローンか否かを判別で きないため、望遠レンズ付きのサーマルカメラを連動させてカメラで捉えた映 像から目視判別する必要がある。

(25)

Blighter

社のドローン検知・追跡・妨害システム

出典 : Blighter社のWebサイト

フェーズドアレイレーダー

(Kuバンドで出力4W)で検知し、

サーマルカメラ

(冷却型でVGA画質)で追跡・確認して、

ジャミングにより航行を妨害

(26)
(27)

DroneShield

社のドローン検知システム

出典 : DroneShield社のWebサイト

音響センサー

(無指向性又は指向性)で飛行音

を検知し、音響解析により機種まで判別

(28)
(29)

沖電気工業

(

)

のドローン検知システム

出典 : 沖電気工業(株)のWebサイト

音響センサー

(無指向性マイクを4本組み合わせ)により

連続音の飛来方向を判別し、ドー

ム型カメラの映像により目視確認

表示内容

(30)
(31)

パナソニックのドローン検知システム

出典 : パナソニック システムネットワークス(株)のWebサイト

32チャンネル集音アレイマイクで飛行音の方位を検知し、

(32)
(33)

セコムのドローン検知システム

出典 : セコム(株)のWebサイト

24GHz帯レーダー(特定小電力無線局)

で検知し、

3D指向性マイク(24個の無指

向性マイクで構成

)の音と、HDデイナイ

トカメラ

(近赤外照明付)の映像で確認

(34)
(35)

ドローン検知システムに、

発注者が最も求めたい性能要件

ドローンの阻止手段を発動できる時

間的余裕をもって、どんなドローンで

もその飛来を確実に検知できること。

費用対効果の観点から、非現実的

(36)

では、どのようなドローンを対象とするか

ドローンの機体の対角径が小さい程、機体重量やペ

イロード搭載量が減少するとともに飛行速度も遅くな

るため、全速でビルに突入して窓ガラスを突き破る

等のテロ敢行手段としての脅威は減少。

ドローンの機体の対角径が小さい程、また、ドローン

までの距離が遠い程、音響センサーやレーダーによ

る検知が困難。サーマルカメラのライブ映像によりド

ローンの機影であるか否かを識別することも困難。

小さいドローンほど発見が困難

小さいドローンほど脅威は減少

(37)

では、どのようなドローンを対象とするか

小さいドローンほど発見が困難

小さいドローンほど脅威は減少

都心部の重要防護施設へのテロ敢

行手段として脅威となる大きさと飛

行速度のドローンを、確実に発見で

きることが重要!!

(38)

都心部でのドローン検知の困難さ

レーダーでは、ビルによるレーダー波の反射でレーダー画

像が乱され、ドローンの判別に支障。

2 常に交通雑音が発生

1 ビルが林立

音響センサーでは、ドローンが発する特有の連続音を、交

通雑音の中から判別する仕組みが必要。

音響センサーでは、ドローンのローターの高速回転に伴い

発生する高周波領域の連続音がビルに反射し、ドローンか

らの直接音の到来方向を検知する上で支障。

レーダーでも音響センサーでも、ビルに遮蔽されたドローン

の検知は困難。

(39)

「発注者のエンジニアリング」の必要性

どれ位の大きさと飛行速度のドローンをどれ程

の距離で検知するか

→ 実現を求める性能要

件を、具体的な数値で技術仕様書に示す必要。

どのような性能数値であれば実現可能か、また、

その性能数値で現場のニーズに応えられるの

か、技術的に見極める必要。

求める性能数値を決定する技術的な力量

の発揮が、

『発注者のエンジニアリング』

(40)

都心部に適するドローン検知

システムに必須の条件

阻止手段を誤発動させないよう、

ドローンの飛来をサーマルカメラ

の映像により目視確認した上で、

阻止手段を迅速かつ確実に発動

できること!

(41)

阻止手段の迅速かつ確実な発動

これには、検知システムで、

ドローンの飛来を素早く検知

して、

飛来する方位を瞬時に判別

して、

ドローンの機影であるか否かを映像で識別

することが必要。

検知装置の性能とサーマルカメラの性能を

ベストマッチングさせる必要!

(42)

効果的なドローン検知システムの実現には

全体最適なコンセプト!

部分最適なコンセプト

×

検知装置とサーマルカメラに求める性能要

件を個別に規定するのではなく、システム

全体を捉えて、システムに求める性能要件

として規定することが極めて重要!

(43)

部分最適化から全体最適化へ

システムを構成する各部分毎に最適化を図れ

ば、最適化された各部分を纏め上げた全体が

最適化される?

これまでは部分最適化を追求

技術革新が緩やかに進む中で既に確立した技

術を用いてシステムを構成する場合には、部分

最適化の積み上げが全体最適化に繋がった。

(44)

部分最適化から全体最適化へ

技術革新が急激に進む中で最先端技術を用い

てシステムを構成する場合には、部分最適化の

積み上げでは全体最適化には繋がらない。

これからは全体最適化を追求

部分最適化を図るのではなく、システムの目的

を見据えて、システム全体の最適化を図る。

ここが、価格と技術の両面での競争原理

を働かせるための、最も重要なポイント!

(45)

都心部に適する『ドローン検

知システム』の実現

ドローン検知システムの概要設計書

を作成して、発注者側の意志を統一

ドローン検知システムの技術仕様書

を作成して、ベンダー側に価格と技

術の両面での競争を促進

(46)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

1/8

1 現状の課題

重要防護施設への物理的なテロ手段については、我が国ではこれまで長 年にわたって、射程が数kmに及ぶ時限式の飛翔弾発射が主であった。しか し、今日ではドローンの進歩発展が著しいことから、ドローンを用いた重要防 護施設への物理的なテロを最も警戒しなければならない。これには、ドローン の飛来を早期に検知して、重要防護施設へのドローンの突入を阻止する手 段を直ちに発動する仕組みが必要である。 ドローンは、機体の対角径が数cmで飛行速度が数km/hに過ぎない極小タ イプのホビー用ドローンから、機体の対角径が数十cm超、機体重量及びペイ ロード搭載量がそれぞれ数Kg超、飛行速度が数十km/h超の業務用ドローン まで、実に様々な機種が開発されている。ドローンの技術革新は著しく、飛行 速度、飛行の安定性、滞空時間、ペイロード搭載量などについては、年を追う 毎に飛躍的な進歩発展を遂げている。 ドローンについて特筆すべき点は、その飛行制御である。ドローンの飛行状 況を直視しながらのラジコン操縦に加えて、ドローンに搭載したビデオカメラ のライブ映像を遠隔で監視しながらのラジコン操縦も可能である。この場合に は、ラジコン電波がドローンに届く限界である1〜2kmの遠方からドローンをラ ジコン操縦できる。

(47)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

2/8

1 現状の課題(続き)

ドローンの飛行制御としては、ラジコン操縦の他に、GPSを用いた自律航行 が可能である。到達させたい目的地の位置情報をドローンにセットして発進さ せれば、ドローンは、GPS衛星からの信号電波を受信し続けることにより、位 置情報がセットされた目的地にm単位の誤差で到達する。この場合には、ド ローンの滞空時間の限界まで、10kmを超える遠距離を自律航行できる。 従来のラジコン飛行機であればその飛行制御は、操縦者が飛行状況を直 視しながらのラジコン操縦のみであり、操縦者が飛行状況を目視確認できる 距離は数百mが限界であった。そこで、ラジコン飛行機の飛来を検知するに は、ラジコン電波の発信を検出する方法が最も簡便かつ効果的であった。 しかし、遥か遠方から自律航行で飛来するドローンに対しては、ラジコン電 波検出の試みは無意味であり、飛来するドローンそのものを検知する必要が ある。検知する手段として、音響センサーやレーダーが有力候補となるが、検 知した物体がドローンであるか否かを確認するには、昼夜を問わず使用でき るサーマルカメラを併用するのが効果的である。 ところで、ドローンまでの距離が遠い程、また、ドローンの機体の対角径が 小さい程、音響センサーやレーダーによる検知が難しくなるとともに、サーマ ルカメラのライブ映像の中からドローンの機影を識別することも難しくなる。

(48)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

3/8

1 現状の課題(続き)

一方、ドローンの機体の対角径が小さい程、機体重量やペイロード搭載量 が減少するとともに飛行速度も遅くなるため、全速でビルに突入して窓ガラス を突き破る等のテロ敢行手段としての脅威は減少する。 そこで、都心部の重要防護施設へのテロ敢行手段として脅威となる大きさと 飛行速度のドローンに対して、突入阻止手段の発動に必要な時間的余裕を 持って、飛来を検知し機影を目視確認できることが肝要となるのである。 都心部の重要防護施設では、周囲にビルが林立し交通雑音も少なくない立 地環境に特段の注意が必要である。どのような検知手段を用いても、周囲の ビルに遮蔽されたドローンの検知は困難である。また、ドローンによるレー ダー波の反射を検知して方位を判別する場合には、周囲のビルによるレー ダー波の反射についての対策が必要となる。ドローン特有の連続音を音響セ ンサーで検知して方位を判別する場合には、周囲の交通雑音及び周囲のビ ルによるドローン特有の連続音の反射についての対策が必要となる。 このようにして、都心部の重要防護施設に夜間に飛来するドローンに対して、 突入阻止手段の発動に必要な時間的余裕を持って飛来を検知し、その機影 を目視確認できるシステムを実現できる。 ここで注意すべき点は、検知装置の機能・性能・検知特性が、ベンダー各社

(49)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

4/8

1 現状の課題(続き)

毎に異なることである。前記のシステムを実現するには、検知装置の性能と サーマルカメラの性能をベストマッチングさせる必要がある。これには、検知 装置とサーマルカメラに求める性能要件を個別に規定するのではなく、システ ム全体を捉えて、システムに求める性能要件として規定することが極めて重 要となるのである。

(50)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

5/8

本システムは、周囲にビルが林立し交通雑音も少なくない都心部の重要防 護施設に夜間に飛来するドローンに対して、突入阻止手段を誤発動させるこ となく、かつ、手遅れとならないよう発動させるために、飛来を迅速に検知する とともに、飛来物がドローンであるか否かを迅速に確認可能とすることを目的 とする。 このため、本システムは、検知装置、サーマルカメラ、警報監視装置を、通 信回線で接続して構成する。検知装置は、レーダー又は音響センサーを用い てドローンを検知して警報監視装置に通知するとともに、検知したドローンの 方位を判別して、その方位をサーマルカメラと警報監視装置に通知する。 サーマルカメラは、検知装置から通知された方位に向けて、パン・チルトを 行ってドローンの機影を捉えて追尾し、その映像を警報監視装置に送信する。 警報監視装置は、検知装置からの検知の通知を受けて視聴覚に訴える警報 を発するとともに、検知装置から通知される方位及びサーマルカメラから送信 される映像を、モニター画面に表示する。また、本システムは、検知装置によ るドローンの検知から、警報監視装置による機影追尾映像の表示までの一連 の動作を、自動的に行う。 本システムは、周囲にビルが林立し交通雑音も少なくない環境で確実に運

2 システムの概要

(51)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

6/8

用可能とするため、検知装置にレーダーを用いてドローンによるレーダー波 の反射を捉える場合には、周囲のビルによるレーダー波の反射について、十 分な配慮と対策を講ずる。また、検知装置に音響センサーを用いてドローン 特有の連続音を捉える場合には、周囲の交通雑音及び周囲のビルによるド ローン特有の連続音の反射について、十分な配慮と対策を講ずる。 また、都心部の重要防護施設で想定し得る気象条件下において、電気的・ 機械的な性能劣化を生ずることなく、長期間にわたり連続して運用できる信頼 性を確保する。 本システムの飛来検知性能は、都心部の重要防護施設に時速60kmで飛来 する機体の対角径が50cmの業務用ドローンに対して、検知装置からドローン までの距離が300m以遠においてドローンの飛来を検知して警報監視装置で 警報を発することができることとする。 本システムの機影捕捉性能は、ドローンの飛来を検知後、2秒以内にドロー ンの機影をサーマルカメラで捕捉して警報監視装置のモニター画面に映像を 表示し、サーマルカメラの視野から外れないように機影の移動に応じて自動 的に追尾するととももに、サーマルカメラの映像はドローンの機影であるか否 かを容易に識別できる品質とする。

2 システムの概要(続き)

(52)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

7/8

本システムは、周囲にビルが林立し交通雑音も少なくない都心部の重要防 護施設に夜間に飛来するドローンに対して、突入阻止手段の発動が手遅れと ならないように、飛来を迅速に検知することができる。また、突入阻止手段を 誤発動させないように、飛来物がドローンであるか否かを、昼夜を問わず使 用可能なサーマルカメラのライブ映像により迅速に確認することができる。 本システムは、時速60kmで飛来する機体の対角径が50cmの業務用ドロー ンであれば、本システムの検知装置からドローンまでの距離が300m以遠にお いて、飛来を検知してその機影をサーマルカメラで捉えることができる。見方 を変えれば、重要防護施設への突入を企図して時速60kmで飛行する機体の 対角径が50cmのドローンを、突入の約16秒前には発見できる。即ち、突入阻 止手段を発動するための約16秒の時間的余裕を確保できるのである。機体 の対角径がより大きなドローンであれば、あるいは、飛行速度がより低速なド ローンであれば、この時間的余裕は更に大きくなる。逆に、機体の対角径が より小さなドローンであれば、あるいは、飛行速度がより高速なドローンであ れば、この時間的余裕は小さくなる。かくして、本システムでは、突入阻止手 段を発動するための時間的余裕は一定ではないが、あらゆる種類のドローン

3 期待される効果

(53)

都心部用ドローン検知システムの概要設計書例 (

8/8

に対応することができる。 このため、本システムは、都心部の重要防護施設を、あらゆる種類のドロー ンによるテロ攻撃から防御するシステムの中核として活用できる。具体的な活 用イメージであるが、本システムのサーマルカメラの映像によりドローンの飛 来であることを目視確認し次第、ドローンの飛来方向に対して、ドローンの遠 隔制御や自立航行に用いる信号電波をジャミングする、ネット発射機で捕獲 用のネットを発射するなどの阻止手段を直ちに発動して、重要防護施設への ドローンの突入を阻止するものである。

3 期待される効果(続き)

(54)

都心部用ドローン検知システムの技術仕様書例 (

1/4

1.目的

:

周囲にビルが林立し交通雑音も少なくない都心部の重

要防護施設に夜間に飛来するドローンに対して、突入阻止手段

を誤発動させることなく、かつ、手遅れとならないよう発動させる

ために、飛来を迅速に検知するとともに、飛来物がドローンである

か否かを迅速に確認可能とする。

2.機能要件

:

(1)

構成

:

検知装置、サーマルカメラ、警報監視装置を、通信回

線で接続して構成する。

(2)

検知装置

:

レーダー又は音響センサーを用いてドローンを検

知して警報監視装置に通知する。次に、検知したドローンの方位

を判別して、サーマルカメラと警報監視装置に方位を通知する。

(3)

サーマルカメラ

:

検知装置から通知された方位に向けて、パ

ン・チルトを行ってドローンの機影を捉えて追尾し、その映像を警

報監視装置に送信する。

(55)

都心部用ドローン検知システムの技術仕様書例 (

2/4

(4)

警報監視装置

:

検知装置からの検知の通知を受けて、視聴

覚に訴える警報を発する。また、検知装置から通知される方位及

びサーマルカメラから送信される映像を、モニター画面に表示す

る。

(5)

動作

:

検知装置によるドローンの検知から、警報監視装置に

よる機影追尾映像の表示までの一連の動作を、自動的に行う。

3.性能要件

:

(1)

環境条件

:

本システムは、周囲にビルが林立し交通雑音も少

なくない環境で確実に運用可能とするため、検知装置にレーダー

を用いてドローンによるレーダー波の反射を捉える場合には、周

囲のビルによるレーダー波の反射について、十分な配慮と対策を

講ずること。また、検知装置に音響センサーを用いてドローン特

有の連続音を捉える場合には、周囲の交通雑音について及び周

囲のビルによるドローン特有の連続音の反射について、十分な

(56)

都心部用ドローン検知システムの技術仕様書例 (

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配慮と対策を講ずること。

(2)

信頼性の確保

:

本システムは、都心部の重要防護施設で想

定し得る気象条件下において、電気的・機械的な性能劣化を生

ずることなく、長期間にわたり連続して運用できること。

(3)

飛来検知性能

:

都心部の重要防護施設に時速

60kmで飛来

する機体の対角径が

50cmの業務用ドローンに対して、検知装置

からドローンまでの距離が

300m以遠において、ドローンの飛来を

検知して警報監視装置で警報を発することができること。

(4)

機影捕捉性能

:

検知装置による検知後、

2秒以内にドローン

の機影をサーマルカメラで捕捉して警報監視装置のモニター画面

に映像を表示できること。また、サーマルカメラの視野から外れな

いように機影の移動に応じて自動的に追尾できること。更に、

サーマルカメラの映像は、ドローンの機影であるか否かを容易に

識別できる品質であること。

(57)

都心部用ドローン検知システムの技術仕様書例 (

4/4

4.設置工事

:

(1) :

事前承認

:

本システムの設置工事に先立ち、システムの各

構成要素の詳細、各構成要素の設置の工法及び工程を明記した

承認図書を作成して、発注者の承認を得ること。各構成要素の設

置場所は、別添する現場の見取り図及び現場の写真に示す。

(2) :

実施上の留意事項

:

本システムの設置工事は、既設物等

に損害を与えないように、また、第三者に危害を及ぼさないように、

十分に安全を確保して実施すること。

(3) :

竣工検査

:

設置工事の終了後、発注者は、本仕様書及び

承認図書に基づき検査を行う。検査に必要な準備は全て受注者

が行うこと。検査において不備が明らかとなった場合には、受注

者は速やかに改善し、再度検査を受けること。

(58)

特注品の研究開発を広く外部に

求めるオープンイノベーション

技術革新が著しい分野で、優れた特注

品を創り出す場合に大変役立つ。

自社内で研究開発体制を整えるよりも

効率的で、結果も早く出せる。

これからの事業成功の鍵!

(59)

ニーズとシーズをベストマッチング

できる技術仕様書の作成が鍵!

ニーズ

: 発注者が特注品に求める機能と性能

シーズ

: ベンダーが保有する詳細設計と製造

のノウハウ

オープンイノベーション成功の鍵

研究開発に最適なベンダー

を、早く見つけ出すこと

(60)

部分最適化から全体最適化へ

技術革新が急激に進む中で最先端技術を用い

てシステムを構成する場合には、部分最適化の

積み上げでは全体最適化には繋がらない。

これからは全体最適化を追求

部分最適化を図るのではなく、システムの目的

を見据えて、システム全体の最適化を図る。

ここが、価格と技術の両面での競争原理

を働かせるための、最も重要なポイント!

(61)

概要設計書で組織内の意志を統一

いきなり技術仕様書を作成したのでは、実現を

目指すシステムの意義・目的、システムの実現

により期待される効果について、発注者側の組

織内で認識が統一されず齟齬を来す恐れ。

技術仕様書の作成に先立ち、概要設計書を作

成して、組織内の意志統一を図る。

概要設計書は、①現状の問題点、②システムの

概要、③期待される効果、の三点について、一

読すれば理解が得られるように、簡潔明瞭な文

章で作成する。

(62)

価格と技術の両面で競争原

理が働く技術仕様書の作成

詳細設計には踏み込まないこと。

踏み込

んだ場合には、受注者側の設計上の自由度を狭め

るとともに、性能要件に掲げた数値目標の達成責任

の所在が不明確となる恐れが生じる。

詳細設計に欠かせない性能要件を漏れなくリ

ストアップすること。

性能要件に掲げる具体

的な数値目標については、性能要件間にトレードオ

フの関係が生じる場合においても、達成が不可能で

はない数値とすること。

(63)

平成

28年7月

発注者のエンジニアリング

澤 田 雅 之

澤田雅之技術士事務所(電気電子部門)

〜 零戦と都心部用ドローン検知システムをモデルとして 〜

オープンイノベーションを成功させる

所長

参照

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